広島で家族なアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の広島で家族な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年03月03日の時点で一番の広島で家族なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

83.0 1 広島で家族なアニメランキング1位
この世界の片隅に(アニメ映画)

2016年11月12日
★★★★★ 4.2 (702)
3114人が棚に入れました
18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。

ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。

声優・キャラクター
のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、牛山茂、新谷真弓、澁谷天外
ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

日常のレトリックに覆われたアンビバレントな交錯

考察、専門用語あり。
難易度中。

本作は初回を劇場で鑑賞。
その後、マスコミで騒がれたからか、妻も観たいという要望がありiTunesストアでビデオを購入した。
つまり、いつでも鑑賞可能な状態にある。

☆制作情報

▼原作者:こうの史代
▼アニメーション制作:MAPPA

▼話数:劇場版129分
ネタバレレビューを読む

【物語】
《反戦とシナリオに潜む唯物史観》
本作はあにこれに限らず、既に多くの場所で様々な評価をがされているが、未だに「反戦」であるとか否かという論争もあるようだ。
本作において「反戦」をメッセージの一つとしていることは、鑑賞をすれば一目瞭然だろう。
メディア作品は「印象」が全てであり、多くの方々が「すず」に共感や同情をしつつも、けっして同じ時代で同じ境遇を送りたいとは思わないだろう。
そう思った時点で本作の「反戦」メッセージはあなたに届いているのだ。

本作が今までの反戦作品と異なっているのは、唯物史観(自虐史観)の教条に満ちたイデオロギーが過去作(はだしのゲンなど)と比して、プロットで日常バイアスをかけることで反戦メッセージの希釈化とエンタメ指向を高め、鑑賞者に対し導入のハードル下げる誘導を行うなど、独特の印象操作により「反戦」がレトリックされている点であろう。

私はここで本作が「反戦」であるか否かのロジックを立ててまで分析をする気はない。
既に左翼は本作を反戦作品と認めているからだ。
左翼ネットメディアの「LITERA(リテラ)」の記事が的を射た左翼の代弁をしているので紹介する。

『この世界の片隅に』に「反戦じゃないからいい」の評価はおかしい! “戦争”をめぐる価値観の転倒が
https://lite-ra.com/2016/11/post-2722_3.html
(引用)
>「反戦じゃないからいい」とうそぶいている人たちにも、この映画は、確実に戦争への恐怖を刻み込んでいるだろう。

私は理系であるゆえに帰納的に観測される他の方々のレビューに記述されている事後評価と「LITERA」の主張を照合することで、概ねその主張は実態に即していると結論している。

何も難しく考えることはない。
本作が「反戦」であれば、そのように素直に認めればいいのだ。
あとは鑑賞者が「戦争」をどう考えるのかに委ねればよい。
そこで表明された意見こそが、その人の思想の発露なのであり、その意味で本作はリトマス試験紙の役割も兼ねているのだ。

ネタバレレビューを読む

《物語まとめ》
ネタバレレビューを読む

以上、本作を手放しで評価はできない理由は上記に集約される。
反原発の『みつあみの神様』のように、反戦アニメでも是非私を唸らせる作品に巡り会いたいと思う。
映画で出来ることはアニメでも可能なはずだ。
したがって、評価の分母が時代とその背景をより精密に描写し、隙がない反戦メッセージを発している五味川作品であるので、低評価となることは悪く思わないでいただきたい。

なお、五味川作品も本作も敵視をしているのは「ある時代の日本」である点が共通である。
本作が従前の反戦作品のフレームに囚われず、自分達の生命を狙った「米国」を批判対象としたなら、最大限の賛辞を捧げたであろう。

『トラ・トラ・トラ!』でも述べたが映像メディアは政治ではないのだから自由なのだ。
言論、表現は旧弊や政治に囚われず自由闊達に行うべきであり、原爆も空襲も本来怒りをぶつける相手は「米国」ではなかろうか。

我が国では「ポツダム宣言」に基づき戦争犯罪者を「平和に対する罪(A級戦犯)」(事後法遡及適用)、「通常の戦争犯罪(B級戦犯)」戦時国際法違反、「人道に対する罪(C級戦犯)」(事後法遡及適用)を処罰の対象とされた経緯がある。
なお、極東国際軍事裁判ではC級戦犯の訴追事実はない。
「人道に対する罪」はニュルンベルク裁判においてナチスによるユダヤ人絶滅(ジュノサイド)を裁く目的で設けられた事後法である。

大日本帝国時代をことさら悪のように強調する目的で朝日、毎日等の左派の報道そして日共のプロパガンダではBC級戦犯という表現を使用し、悪意あるミスリードで自虐史観の刷り込みを誘う作為的な誤りであり、C級戦犯判決の事実は存在しないことを強調しておく。
極東国際軍事裁判の話しをすれば長くなるので、ここでは必要なことだけを記す。

まず、裁かれたのは全て第二次世界大戦の敗戦国であり、裁いたのは戦勝国であることを再認識して頂きたい。
要するに、戦勝国の戦争犯罪は裁きたくても裁けない状況下にあったのである。
ここで問題にするのは、米軍による原爆投下を含む日本本土空襲である。
我が国が受けた空襲は全て軍事目標だけであったのだろうか。
否である。

1945年3月10日の下町一帯を目標とした東京空襲をはじめ、原爆投下を含めほとんどの空襲は軍事目標とはいえない地域を対象に行われた。
これは、大東亜戦争時に有効であった「ハーグ陸戦条約(陸戦の法規慣例に関する条約)」違反であり、米国も本来裁かれるべき行為であるのだ。
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条約附属書(陸戦の法規慣例に関する規則)
第二五条
防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何ナル手段ニ依ルモ之ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス
----------------------------------
我々はそのことをけっして忘れてはいけないし、戦争とは勝てば官軍であり、勝利者の論理が正義となる不条理な状況を生むのだ。
自虐史観は誰にとって都合が良いものなのか、賢明な閲覧者の皆様はここに答えを記述しなくても分かっていただけるだろう。

原爆死没者慰霊碑に刻まれている「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」には主語がない。
「過ちを繰り返しませぬ」は「米国」に向けてのコンプライアンスでもあるのだ。

少し物足りないないが『俺は、君のためにこそ死ににいく』(2007 新城卓監督 東映)は大東亜戦争のもう一つの主役である名も無き兵士達が、特攻で死地に赴く際の本音から、間接的に米国批判を行っている稀有な作品であり、この作品のベクトルを担う作品こそがポスト反戦なのだろう。
そろそろ勝利者側の論理、東京裁判史観の自虐から脱皮し、本音をぶつける反戦作品が出て来ても良い頃ではなかろうか。

テーマとメッセージ
★★★★★☆☆☆☆☆2.5(五味川二作品を5とした場合の評価点)

※エンタメ性と表裏一体する参考評価
思想の刷り込みなどマインドコントロール技法
(評価が高いほど悪質である。)
★★★★★★☆☆☆☆3.0(五味川二作品を4.5とした場合の評価点)
5-3=2

プロパガンダ性
(評価が高いほど悪質である。)
★★☆☆☆☆☆☆☆☆1.0(五味川二作品を3.5とした場合の評価点)
5-1=4

エンタメ性
五味川二作品は重厚である分、エンタメ性には難がある。
その点本作は、前半部分では親しみ易い日常光景からキャラへの共感を誘導する。
ネタバレレビューを読む高クオリティな描写を演出している。

★★★★★★★★☆☆4.0(五味川二作品を2とした場合の評価点)

(2.5+2+4+4)/4=3.125≒3.0(物語)

(★は一個0.5点)
物語★★★★★★☆☆☆☆3.0(評価点)
作画★★★★★★★★☆☆4.0(評価点)
声優★★★★★★★★★☆4.5(評価点)
音楽★★★★★★★☆☆☆3.5(評価点)
キャラ★★★★★★★★☆☆4.0(評価点)

平成30年(皇紀2678年)12月8日大詔奉戴日初稿

投稿 : 2025/03/01
♥ : 62
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

本作自体は良作と思いますが、本当に考えるべきことは別にあるのでは?

(2018.12.8 戦争名称と戦争原因について補足説明を追記)

登場人物の手が顔と同じくらいの大きさに描かれていて、明らかに作画ミスってると思われるシーン等、ちょくちょく作画・演出が乱れている箇所があった他は、概(おおむ)ね丁寧に作られていると思いました。
シナリオも、ネタバレレビューを読むで思いがけない感動を覚えるなど、最初から最後まで飽きずに楽しめました。
ということで、まず良作認定しておきます。

・・・でも、個人的に本作を鑑賞していて改めて強く感じたのは、

戦争の悲惨さ残酷さを確り描き出して、視聴者に「二度と戦争を起こしてはならない」という"メッセージ"を繰り返し喚起するのは、それはそれで意味のあることなのだろうけれども、

責任ある大人が本当に考えるべきは、そういう戦争の「結果」の方ではなくて、

「そういう誰も望まないはずの戦争がなぜ起きてしまったのか?」
「なぜそういう悲惨で残酷な戦争に我が国が巻き込まれてしまったのか?」

という戦争の「原因」の方を、史実に即して冷静に見極めていく、ということなのではないか?ということでした。

とくにここで「巻き込まれてしまった」という私の受動表現に抵抗を感じてしまった方は要注意です。

・戦前の日本は暗愚で粗暴な軍国主義のファシズム国家だった。
・中国や朝鮮半島やアジア各地に醜い侵略を仕掛けた果てがあの悲惨な戦争だ。

↑みたいな話をNHK夏の恒例の「太平洋戦争(*3)」特集番組では今も延々とやってるそうですが(※これって終戦後にGHQ進駐軍にそういう番組を作るように命令されて以来ずっとやってるそうです)、こんな話を今でも信じ込んでいる人ってどれくらいいるのでしょうか?(まだまだ沢山いそうな気もしますけど)

但し、上に書いた「誰も望まないはずの戦争」という表現には例外があって、実は「日本とアメリカが全面戦争に突入し、その結果として、国力の大幅に劣る日本が壊滅的な敗戦を迎える」というシナリオを事前に描いて、そのシナリオが実現すべく画策した人々ないし組織が(日本側にもアメリカ側にも、そしてこの両国の外側にも)いた、という話は一度検証してみる価値があります。

◆戦争「原因」の一考察

社会科の教科書には、第一次世界大戦の混乱のさなかに誕生したソ連の指導者が、ソ連一国だけの革命ではなく“世界革命”を目指した、ということまでは書かれていますが、その“世界革命”が具体的には“敗戦革命”という戦略プランに基づいて、各国に思想的共鳴者や工作員を扶植・養成し、ことに政府部内や報道関係者に内通者・協力者を獲得ないし送り込むことにより、時間をかけて実際に着々と遂行されていった(*1)、ということまでは書かれていません(※なぜ書かれていないか?は(*4)へ)。

もう少し詳しく説明すると、この“敗戦革命”というのは、

(1) かってソ連が、帝政ロシアが第一次世界大戦でドイツに敗戦を重ねて国内に生じた混乱(既存支配層の権威失墜と国民各層の窮乏・社会不安の増大)に乗じて、まんまと革命を成功させ発足したこと、をモデルとして、
(2) 革命対象国を何らかの形で悲惨な敗戦に追い込み、その混乱に乗じて革命を成功させる、とする冷酷な戦略で、
(3) 具体例として、第二次世界大戦での枢軸国側の敗戦に乗じて枢軸参加国であったハンガリー・ルーマニア・ブルガリア・チェコ等で共産主義/社会主義政権が成立、敗戦国ドイツも東半分が共産化、また東アジアでは敗戦国日本に協力していた満州国や南モンゴルの自治政府が倒れ、また日本と戦って消耗していた蒋介石率いる国民党政府がその後の国共内戦に敗れて共産主義中国が成立、日本と合邦していた朝鮮半島でも北半分で労働党政権が成立しています。

そうした、日本の「誰も望んでいなかったはず」の戦争突入とその必然的な敗戦、そしてその結果としての戦後の東アジアの激変という状況証拠から見て、

<1> 戦前は「ソ連を盟主とする共産主義勢力の東アジア浸透の防波堤」になっていた日本をアメリカとの全面戦争に追い込み、
<2> この防共の防波堤を決壊させるとともに、あわよくば日本にまで“敗戦革命”を引き起こそう、と策動する勢力が、
<3> 我が国の内外に(※日本だけでなくアメリカや蒋介石の国民政府の側にも、また政治指導者だけでなくマスコミ・言論人にも)浸透していて、
<4> そうした策動に免疫のない我が国の政府や国民が相手の仕掛けに右往左往するうちに「誰も望んでいなかった戦争」にまんまと引きずりこまれていってしまった、

・・・と考えると色々と辻褄が合う所があります。

→つまり、先の戦争で結局誰が一番得をしたのか?という観点から逆算して、その原因を作った者を考える、という視点を持つ。
→あるいは、先の戦争の「成果」を現在、誰が一番固守しようとしているのか?という観点から逆算して、その黒幕を考える、という視点を持つ。

・・・ということで、この辺の話は興味があればネットや書籍で色々と調べて検討していただきたいのですが、要は、

「戦争は悲惨で残酷だ、二度と戦争を起こしてはならない」

とせっかく思うのならば、上で指摘したように

「では何故戦争が起きてしまったのか?」

というところまで、真剣に考えるのでないと片手落ちですよ、ということです。

※そうした視点の欠落を考慮して本作の評価点数を少し低く付けています。
※本作のような話は今までも色々と作られてきたと思うし、今後も作られてマスコミの陰/日向のバックアップ(*2)もあってヒットもすると思いますが、もうこういう「戦争は悲惨で残酷だ。二度と戦争はしてはいけない」と何となく思う段階で思考停止するのは止めませんか?

※レビュー本文ここまで。

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※以下、補足説明。
ネタバレレビューを読む

投稿 : 2025/03/01
♥ : 55
ネタバレ

Seven_7G3A さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

リアルバトルは日常系のなかで

観終わった直後の感想
「やばい。かなり良かった。涙が止まらなかった。胸が痛かった、まるでナイフで刺されたように。
動物に人間が作ったどんな綺麗な服を着せても、どこか野暮ったくなってしまうように、この作品を野暮にならずに語る言葉が見つからない。只々作品世界に飲み込まれてしまい、心地よさと切なさが入り混じる何とも言えない想いをお土産としてもらった、そんな感じです。」

正直、この作品は非常に前評判が良かったが、戦争モノという事で視聴後感がどうしても物悲しく暗くなってしまうと予測できてしまうので、避けていました。
まぁ、わざわざ視聴後にどんよりした気持ちになるために見たくはなかったのです。評判良くても。
しかし、機会があったので視聴してみると、暗く重苦しく切迫した空気を予測していた自分の考えを裏切るように、朗らかで明るくて優しい世界が迎え入れてくれました。舞台が戦時下であるのに、です。 
この物語は、主人公の女性の幼女時代から青年期までの日常を描いた「日常系物語」で、その主人公の女性の人柄がその優しい世界の源で、のんびり屋でおおらかなで働きものな性格の彼女の幼女時代、結婚、嫁入り、婿家族との2世帯同居生活を追いかけていきます。戦時下という環境ではあるが、そんな事を忘れさせてくれるような暖かい空気感で、「ノスタルジックな生活もの(恋愛もの?)」を見ているような印象を受けました。
特に、ますます配給が少なくなり、ネタバレレビューを読む
そして、そのおっとりはしているが強かに朗らかに生きていく姿の主人公に深く感情移入している自分がそこにいました。そして、その後はその感情が乗っている主人公やその周辺の優しい人々に降りかかる出来事に心揺さぶられっぱなしでした。

本当に良かったです。第二次大戦が描かれる作品の中でもトップクラスに良かったです。「火垂るの墓」は絶望感にどんよりしますが、本作は前向きになれる作品です。老若男女、特に女性にはおススメできる作品です。


◆◇◆以降は、良作に多弁になってしまう悪癖です◆◇◆
◆◇◆視聴後の方でお暇な方はどうぞ...◆◇◆

視聴時に気になった点ネタバレレビューを読む

◆◆追記◆◆
すず、周作(臭素)、哲(鉄)、リン、径子(ケイ素)、晴海(アルミ)、すみ(炭素)、浦野(ウラン)、北条(ホウ素)、サン(酸素)、要一(ヨウ素)などなど

◆◆追記◆◆同じ原作者作「夕凪の街 桜の国」を読みました。
「この世界の片隅に」が、あまりに良かったので読んでみました。
同じく広島が舞台ですが、戦後10年目と現代での物語です。原作者初の戦争ものだそうで、本作があって「この世界の..」につながる意味深い作品です。個人的には「この世界の...」の方が好きです。これは明らかです。ですが、「夕凪の...」も、「この世界の..」の時間軸的に後の話なので、広島原爆に関わった人の後日談的な物語として非常に興味深く見させて頂きました。

もっと「こうの史代」の世界に浸りたい方にはオススメです〜。

投稿 : 2025/03/01
♥ : 14

64.4 2 広島で家族なアニメランキング2位
ももへの手紙(アニメ映画)

2012年4月1日
★★★★☆ 3.7 (278)
1315人が棚に入れました
「お父さん、ほんとうはなんて書きたかったの?」 いちばんそばにある愛が、いちばん見えにくい愛かもしれない。父が遺した書きかけの手紙。そこには、ただ、「ももへ」という一言があるだけだった。「何を伝えたかったんだろう」 心ない言葉をぶつけ、仲直りしないまま父を亡くしたももは、11歳の夏、その想いを抱えたまま、母と、瀬戸内の島に移り住む。そこで待っていたのは、おかしくも、不思議な出会いだった。豊かな自然と、やさしい人々が生きる小さな島を舞台に、いま、いちばん大切にしたい、家族の愛の物語が生まれる。

声優・キャラクター
美山加恋、優香、西田敏行、坂口芳貞、谷育子、山寺宏一、チョー
ネタバレ

ユニバーサルスタイル さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

今、生きている人へ。

亡くなったお父さんの遺した手紙。そこには「ももへ」の一文しか書かれていませんでした。
父亡き後、お母さんの実家の島へ引っ越ししてきたももちゃん。
お父さんの言いたかった言葉を考えながら、島での不思議な生活が始まります・・・。


島に着いたばかりの頃は無愛想で笑顔も見せないももちゃん。
能面みたいなその顔に最初は怖ささえ覚えました。
でも、仕方ないですよね。お父さんが亡くなった直後に家を離れて田舎暮らしなんて、心の整理が追い付かないと思います。

一方のお母さんは元気いっぱいで「さあ働くぞー!」と張り切っていました。
まだまだ健在に見えますが、笑った時の皺とか時折苦しそうに咳をするところなんかを見て少し悲しくなったり。

お父さんはあんまり出ないけどやっぱり家族を支える柱ですよね。一番存在感が強いのはお父さんだと思いました。



雰囲気としては子供向けアニメらしく、陽気で軽快な感じで動いていくので子供は楽しく見られるでしょう。
子供に今人気な妖怪も出てきますし(笑) 可愛くてほのぼのします。


でも親御さんくらいの年齢の方が見るとまた違った見え方があるんじゃないかな、と思います。
冒頭からお父さんの死が描かれる辺りから、身近な生き死にを意識させられます。
残された家族の想い、これからの暮らし・・・。失った分、より強く支え合って生きていかなきゃならない。
ファンタジーな世界に包まれているけど、このアニメが見せているのは極めて現実的なテーマでした。


正直見ていてちょっと苦しかったんですよね。こんなに可愛い絵なのに、生々しすぎて。

ようやく最後まで見て、「手紙」で伝えたかった意味を理解したときやっと楽になれました。
ああ、厳しい現実を突きつけるだけじゃなくて、そういうことが言いたかったのか、って思いました。


子供向け、って親御さんも一緒に見て考えて、お互いにそれを思い出に残すことに意味があるんじゃないかって思います。
「ただ子供に見せるだけじゃなくてお母さんなりお父さんなり、隣に座って一緒に見て下さい!」って言葉が聞こえてくるような映画でした。
主題歌もとっても元気がもらえる曲だと思うので是非聴いてください。



ここからはネタバレありの、感想です。
ネタバレレビューを読む



蛇足です。
ネタバレレビューを読む

投稿 : 2025/03/01
♥ : 21

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

気がつけば、私、ひとりじゃなかった。

この作品は、まだ、あにこれのチャット部屋が賑わっていた頃、キャッチしている方からお勧めされた作品でした。
中々視聴する機会がありませんでしたが、この度ようやく視聴することができました。


”ももへ”とだけ書かれた手紙を遺し、お父さんは天国に旅立ってしまった。
「ほんとうはなんて書きたかったの?」

心ない言葉をぶつけ、仲直りしないまま父を亡くしたももは、その想いを抱えたまま、
母いく子と瀬戸内の島に移り住む。

慣れない生活に戸惑うももだったが、不思議な妖怪”見守り組”のイワ、カワ、マメと出会う。
食いしん坊でわがまま、でも愛嬌たっぷりの彼らには、実は大切な使命があった・・・・・・。
もものために明るく振舞いながら忙しくする母いく子。

そんな中、ちょっとのすれ違いからももといく子はケンカをしてしまい、さらにいく子は病に倒れてしまう。
母が自分の為に無理をしていたこと、母の想いに気づいたももは、
”大切な想いを伝える”奇跡を起こしていく――。


公式HPのSTORYを引用させて頂きました。

2012年に公開された作品なので、もう8年以上前になりますが、公式サイトが残っていてくれるのは、本編とは違った角度から見ることができるのでありがたい限りです。

物語の舞台は、「汐島」という瀬戸内海に浮かぶ小島で、広島県呉市の大崎下島がモデルになっているのだそうです(wikiより)。
島の景色、街並みや佇まいが物語のあちこちに散りばめられているので、聖地感が半端ないんです。
今はコロナ禍なので遠出はできませんが、フラっと訪ねてみるのも悪くないかも…
気の向くまま、足の向くままの散策…山の頂上からの景色は格別らしいので。

例え道に迷ったとしても大丈夫…
「道に迷ったら海を目指せ」
この島の外周は道路が一周しているのだそうです。
だから外周の道路に出られれば、方向を見誤ることはありません。
こんな風に思えるのも、作品の中でこの島の美しさが謳われているからなんでしょうけど…

作風にはちょっぴりジブリ感を感じましたが、その理由も公式サイトのINTRODUCTIONをみて納得。
アニメーション制作のProduction I.Gさんに加え、「もののけ姫「「千と千尋の神隠し」を手掛けられたスタッフが集結していたそうなんです。

声優陣は、声優業に特化した方が少ない印象でした。
主人公のもも役を演じたのは美山加恋さん。
アニメより女優としての活躍の方が幅広の方で、アニメもプリキュアやアイカツシリーズなどの出演が多いので、個人的には馴染みが薄いのですが、最近では「ハイキュー!! TO THE TOP」にも出演しているとか…
他には優香さん、西田敏行さん、山寺宏一さん、チョーさんなどなど…

一方、物語は「家族の在り方」がテーマになっていました。
勢いに任せて口にしてしまった一言が取り消せなくなってしまった…
相手はどう思っているかは分からないけど、少なくても自分の心にはトゲとして残り続け、時折思い出してはチクチクと胸が痛む…
きっと誰にでもこういう経験はあると思います。

本当はこんな展開なんてこれっぽっちも望んでいなかった…
ただサプライズをあげたかっただけなのに…
良かれと思ってやった筈なのに優しさが空回り…
それが子供ならなおのこと心の持ちようが分からないと思います。

加えて東京の都会から瀬戸内海の離島という天地ほど環境差のある場所も、色々と受け入れられない原因の一つだったのではないでしょうか。

そんな四面楚歌のももに起こる奇跡とは…!?
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

主題歌は原由子さんの「ウルワシマホロバ 〜美しき場所〜」
メロディが綺麗…さすが原さんと納得できる楽曲だったと思います。

上映時間2時間の作品でした。
私にとって涙なしでは見れない作品でした。

投稿 : 2025/03/01
♥ : 13

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

不思議な清涼感に包まれたひと夏の物語

2012年4月公開。Production I.G制作。
沖浦啓之監督が家族の愛をテーマに描く劇場公開作品です。

父、カズオと交わした約束が果たせずに喧嘩になってしまった少女、もも。
仲直りを出来ないままに亡くなってしまった父の部屋には
「ももへ」とだけ書かれた手紙が残されていました。
父の死を受け入れられないままのももが、母のいく子が小さい頃に
住んでいた瀬戸内海のある島へ母とともに移り住むところから物語が始まります。


イワ、カワ、マメという3人?の愛嬌ある妖怪が登場することから
何だか妙なイメージを視聴前は持っていまいしたが、フタを開けてみると
とても夏らしい清涼感のある人間ドラマになっていました。

ももが島に移り住んだのは夏休み中とのことで、学校の存在は
あまり示唆されず、舞台は島の人々が暮らす風景の中に限定されています。
夏の太陽光の強さ、写真から切り取ったような懐かしさのある路地や
山の蜜柑畑の清々しさ、静かな温かみのある町の港など島の風景が
とても印象的に描かれているように感じます。

そんな風景も良いですが、本作は登場人物の表情や仕草に独特な魅力があり、
それが作品の雰囲気作りに最も役立っているように感じます。
登場人物の驚く表情や呆れた表情などで出てくるシワからは何とも言えない
愛嬌を感じますし、畳の上に仰向けに寝転がりながら足を使って
ズイズイ動いたりするももの仕草に等身大の少女らしさが見て取れたりします。
(この動作、文字で表現しづらいですが、肩に当たる畳の感触が気持ちよさそうです。)

あと、これは個人的な実感なのですが、ももという少女の描かれ方を見ていると
多少はっきりしない受け答えと少し遅れがちな反応が気になる部分が大きいです。
アニメやドラマのキャラクターはけっこう模範的というか型にハマった
感情表現を求められることが多いと感じているのですが、普通に生活している
人間がそんなにドラマチックな受け答えを出来ることは少ない訳で…。
そうしたところで、本作のもものちょっと戸惑ったり、事態を把握するのに
時間を使ってから何かしらリアクションをするような様は返って自然に感じました。

他にも島の少年、陽太の思春期らしい反応や郵便屋の幸市おじさんが
状況について行けずに表す戸惑いなど、登場人物の様々な反応に
ちょっと他のアニメでは感じないような親近感が湧くことがありました。
ただ、そこにいくとイワ、カワ、マメのコミカルな反応は他のキャラクターと
対照的に非常にアニメらしく見えて、変なところで妖怪らしさを感じます。
上記の印象は子供達の声優さんの素気ない素朴さを感じる演技と
妖怪役の声優さんの情感たっぷりな演技によるところもあるかもしれないです。

劇中のBGMはカレイドスターなどで音楽を手掛けられた窪田ミナさんとのことです。
原由子さんのEDテーマ「ウルワシマホロバ ~美しき場所~」と合わせて
舞台の穏やかなイメージに沿った音楽だったように思います。


物語の顛末については映画本編を観ていただくしかないですが、
終始、手紙の存在感を意識させられるということは言っておきます。

誰かに手紙を書くという事は、口に出して伝えるよりもよっぽど難しい。
書く側は想いをどう書き起こしても、その想いの何割も文字で表現出来ないし、
読む側だって書かれた内容から書き手の意図とは別の想いを抱くかもしれない。
そんな人の不器用さにジレンマを感じながらも、伝えたい想いの純粋さに
心を解きほぐされるような、そんな不思議な印象のあるアニメでした。

清涼感があると言うと裏返せばさっぱりしすぎているともとれますし、
お話の好みなどもあるかと思いますが、もしお時間が許すなら
観てみてはいかがでしょうか、とオススメします。

投稿 : 2025/03/01
♥ :
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