剣道部 さんの感想・評価
4.0
長崎リベンジャーズ
[文量→中盛り・内容→感想系]
【総括】
必殺仕事人をオマージュした作品。元ネタを知らない若い人はどう観るんだろうね?
といっても、私も、再放送を時々、祖父母と一緒に観た程度なので、あまり詳しくはないんですけどね。
アニメとしてのクオリティは高く、単なるモノマネには留まらない、キチンと真面目に作られている印象を受けました。
雰囲気としては、テレビアニメというより、映画のような感じです。最初から最後まで、ちゃんと暗いというか、作りたい作品を美学をもって作りきったという感じで、好感がもてました(世の中に迎合していない感じが)。
そのへん、流石、原案が虚淵玄さんだと思いました。
《以下ネタバレ》
【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
利便事屋で、リベンジ屋とは、ナイスなネーミングだと思った。金箔で人を殺せる理屈は、最後まで分からなかったけれど(笑)
ラストシーンを、どう考えるかで、その人における、本作の評価が決まるような気がする。
私は基本、ハッピーエンドが好きで、本作のように、主人公が死んでしまう展開は好きではない。
が、本作に関しては、なんだかしっくりきてしまった。
「無常」というか、「無情」というか。
繰馬雷蔵は、決して悪人ではないが、騙されたとはいえ、多くの者の命を奪っている。その対象は、悪人だったり愛する人だったり、金で雇われているだけの奴だったりもする。
でも、それが誰であれ、理由はなんであれ、きっと誰かの大切な人なのだろう。人を殺すということは、それだけ重い「業」を背負うことになる。
本作の上手いのは、絵描きとしての、ちゃんと明るい未来の可能性も見せたことだ。でも、雷蔵自身は、結局最後まで、自分を許せていなかった。
「正義と悪」「幸せと不幸」「生と死」
そんなシンプルな二択では割り切れないような、複雑に揺れ動く心情を丁寧に描いてきたからこそ、視聴者も(雷蔵の今後の人生について)迷うと思うし、迷って答えが出ないうちに、何気なく、呆気なく、主人公の命が奪われた。
その唐突な、不条理な感じは、ある意味でとてもリアルだった。
最後、雷蔵は多分、死によって救われた気になったと思う。でも、苦悩しながら、絵描きとして10年も生きたあとならば、死が救いになることはなかったかもしれない。
きっと人間なんてそんなもので、時間によって、環境によって、運によって、色々なことが変わっていく。
物語の最後を観て、私はモヤモヤを抱えてしまったが、なんか、雷蔵はスッキリしてたのかなと思うし、他の面々も、悲しみながらも受け入れ、普通に生きていき、どこかでそれぞれの死を迎える気がする。
本作はバッドエンドではなく、ビターエンド。余韻を楽しみ、想像を膨らますことができる展開。
こういう、ビターなラストが似合うように、脚本もシナリオも、逆算しながら、丁寧に世界観を作ってきた気がして、だから、私には珍しく、ビターエンドを受け入れたいと思った。
そんな作品は、久々だった。
{/netabare}