宮沢賢治でファンタジーなアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の宮沢賢治でファンタジーな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月24日の時点で一番の宮沢賢治でファンタジーなアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.8 1 宮沢賢治でファンタジーなアニメランキング1位
銀河鉄道の夜[グループ・タック](アニメ映画)

1985年7月13日
★★★★☆ 3.9 (116)
524人が棚に入れました
宮沢賢治の同名小説をますむらひろしがマンガ化し、それを原作として映画を制作したファンタジー。登場人物のほとんどが猫の姿で描かれている。監督は杉井ギサブロー。音楽を元YMOの細野晴臣が手掛けた。まだ小さいジョバンニは苦しい家計を助けるために、学校が終わってから町の印刷所で働いている。遠洋漁業に出ている父が帰らないこともあり、クラスの友だちからいじめられたりもしている。星祭りの夜、ジョバンニは届かなかった牛乳をもらうため、町はずれの牧場へ行き、そこで夜の空から突然降りてきた行き先の分からない汽車“銀河鉄道”に乗ってしまう。汽車にはすでに幼なじみのカンパネルラが乗っていた。ふたりは廃墟の駅“白鳥ステーション”で古代の動物の骨を発掘している現場を見たり、氷山に衝突して沈んだ豪華客船の乗客だった少女らに出会ったりしながら、不思議で幻想的な銀河の旅を続ける。だが、巨大な十字架の前を通り過ぎたとき、カンパネルラが思わぬ告白を…!?

声優・キャラクター
田中真弓、坂本千夏、堀絢子、一城みゆ希、島村佳江、槐柳二、八代駿、新村礼子、大塚周夫、菊池英博、渕崎ゆり子、中原香織、梶哲也、青野武、倉崎青児、仁内建之、納谷悟朗、金田龍之介、常田富士男

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

宮沢賢治に出会わせてくれたアニメ

宮沢賢治の童話が原作の劇場用アニメです。
私は小学生の頃にBS2で観たのですが、当時はこのアニメのイメージに圧倒されて、
「注文の多い料理店」や「よだかの星」など宮沢賢治の童話を読み耽ったものです。


このアニメは登場キャラクターの9割は猫の姿で描かれていますが、
残り1割として列車で席を同じくする姉弟とその家庭教師が出てきます。
彼らが銀河鉄道に乗車した経緯の中に現実的な描写が多い分、
他のキャラクターとイメージの対比が出来て、幻想的な世界観を
構築するのに一役買っているのではと思いました。


作画は、日常シーンは少しパッとしない感じがありますが、
銀河鉄道乗車後のシーンはセル画アニメの吸い込まれるような美しい色彩で表現されていて、
鳥を捕る人や南十字のシーンはレビュー前に観直すまでしっかり目に焼き付いていました。
劇中の音楽も映像の独特の雰囲気にしっかり合っています。


物語はジョバンニ(CV:田中真弓)とカムパネルラ(CV:坂本千夏)の二人を中心に描かれます。
全体を通して落ち着いた表現のアニメですが、命の廻りや本当の幸せがどこにあるのかを
真摯に描写しているストーリーに引き込まれました。
南十字の駅を過ぎてからのシーンはやはり涙腺に訴えかけるモノがあります。
特にジョバンニの叫びが哀しく響きます。


「銀河鉄道の夜」を知る人、知らない人問わず、オススメしたいアニメです。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 13
ネタバレ

ポロム さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

幻想的なFantasy

今まで金曜ロードショーで観ようとすると終わりの10分前だったということが2回あり、初めて最初から最後まで観ました。
(スカパーキッズステーションの映画特集ありがてぇ・・・)

序盤の30分がイマイチ集中出来なくて、
「何故登場人物ネコなんや・・動物ばかり・・あ、いつの間に人間いた」
なんて、感じで観ていましたが、これでジョバンニやカンパネルラが人間で描かれてたら少し生々しくなるかなと思いました。(これで良かった)

銀河鉄道の夜の影響を受けた”輪るピングドラム”に影響され視聴しましたが、他にも影響を受けた作品が沢山あるほど、影響力のある作品だと存じます。
感情の起伏や物語の起伏、展開が激しい作品ではなくて、
あまりに感動して号泣するとかは無いかもしれませんが、
不気味ながらも幻想的で優しいBGMから始まり、別れを激情的に描きながらひっそり静かに終わるストーリーが心に焼き付きます。

紅い苹果が出てくるシーンを見てあまりにも美味しそうで、途中中断してスーパーに買いに行って苹果を切って齧りながら観たほどです。
{netabare} やけて死んださそりの火のエピソード(蠍の火)や車窓に現れた石炭袋、ジョバンニに別れを告げるカンパネルラのシーン、胸に迫るものがありました。{/netabare}

プラネタリウムで”銀河鉄道の夜”を楽しめるそうなので近々行ってみます。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 26

じょーささ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ジョバンニ!!!

みなさんご存知賢治の作品のアニメ。
登場人物がネコ。
めっさかわいい。

で、ストーリーですが、アニメだとどうしても
「読観とって」的なところも出てくるので、
先ず原作読んでからのが面白いかも。
あ、でもどっちでも楽しめます。
てかアニメからで全然OK。

そして評価ですが、
細野晴臣さんが音楽やってます。
劇中の音楽も凄く耳に残る印象深い、どこかノスタルジック
で不思議な感じになっていますので注目です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 1

57.0 2 宮沢賢治でファンタジーなアニメランキング2位
グスコーブドリの伝記(アニメ映画)

2012年7月7日
★★★★☆ 3.3 (59)
284人が棚に入れました
グスコーブドリ(ブドリ)はイーハトーブの森に暮らす樵(きこり)の息子として生まれた。冷害による飢饉が招いた一家離散、火山噴火の影響による職場の閉鎖などといった苦難を経験して育った彼は、イーハトーブ火山局の技師となり、噴火被害の軽減や人工降雨を利用した施肥などを実現させる。ところが、ブドリが27歳のとき、イーハトーブはまたしても深刻な冷害に見舞われる。火山を人工的に爆発させることで大量の二酸化炭素を放出させ、その温室効果によってイーハトーブを暖めよう。───ブドリは解決法としてそのように提案したがしかし、彼の案を実現するためには自らの犠牲を覚悟した誰か一人が最後まで火山に留まる必要があった。年老いたペンネン技師が最後の一人になろうとするが、ブドリはそれを引き止めた。そうしてブドリは、皆に黙って自分が最後の一人として残る。決死のブドリが火山を爆発させると、見事に冷害は食い止められた。イーハトーブは救われたのだった。

声優・キャラクター
小栗旬、忽那汐里、佐々木蔵之介、榎本明、草刈民代、林隆三、林家正蔵

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

雨ニモマケズ 風ニモマケズ

宮沢賢治原作の物語。

雰囲気はジブリに近いものがあったかな。

途中で何回か出てくる,「雨ニモマケズ」の詩。

これが,このアニメの主題なのかなと思います。

「そういう人に,私はなりたい。」

世界観は大好きです。

宮沢賢治独特の,意味がよくわからない世界観も感じることができました。
↑誉めているんですよ!それが好きなのです。


●ストーリー
イーハトーブの森に暮らす,ブドリとその家族。

とても幸せな家族。

しかし,何年も続く冷害によって家族は離れ離れになってしまう。

森を出て,旅をするブドリ。

あらゆる場所で出会った優しい大切な人たち…。

1人の少年の決意と勇気の物語です。


●タイトル
この映画のこと何にも知らなくて,とりあえず「宮沢賢治原作」という言葉だけで見ようと思いました。

「グスコーブドリの伝記」というタイトルだけでは,一体何の話なのかちっとも想像がつかず…。

見終わったら,このアニメにふさわしいタイトルを考えてみよう,なんて思っていました。

でもね,見終わった今では,「グスコーブドリの伝記」が1番ふさわしいタイトルだと思っています。

宮沢賢治に勝てるわけがなかった!笑

グスコーブドリ=主人公・ブドリの本名。

伝記=個人の記録。

うん,ぴったり。

そういうお話です(笑)

原作は読んでいませんが,原作のあらすじを読んでいると,どうも削られているシーンが結構あるみたいですね。

ラストもかなり省略されています。

1番印象強いだろう,と思われるところが省略されていて…。

人の生き方について1番考えさせられる場面のはずなのに。

個人的にはとても残念でした。


●キャラクター
登場人物は,全て擬人化されたねこです。

ねこが嫌いな人にとっては,見るのは辛いかもしれません(笑)

そしてあまりかわいいとは言えない…。

なんでねこなんだろう?

ちなみに,私が見た映画は2012年版でしたが,1994年版もあるみたいです。

そちらは,人間がキャラクターです。

台本も違うようなので,ぜひそちらも見たいなあと思っています。


●音楽
もうね,始まったその時から引き込まれました。

素晴らしい!!!

テーマ曲がいいなー。サントラ買おうかしら…。

主題歌は,小田和正さんの「生まれ来る子供たちのために」。

これがまたいい曲。

この曲聴きながらアニメの映像見ているだけで何度もこの世界に浸ることができます。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 13
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

意味分かんないところもアリ(๑•́ ₃ •̀๑)

宮沢賢治の童話が原作のアニメです☆彡
これを知ったのはCMがきっかけで,まさに一目惚れ。
原作は知らなかったのですが,キャラクターを猫の姿で描いていることからすぐに宮沢賢治原作なんだろうなって。

一目惚れっていうだけあって絵がほんとに綺麗です~。
キャラクターも猫でカワイイ(♡>ω<♡)
これってますむらひろしの漫画版からくるものなんですって。
よく猫にしようと思ったよなぁ。
「銀河鉄道の夜」もそうだけれど,猫で描くことによってファンタジックな宮沢賢治の世界観がよりファンタジックになりますよね。GJです!!
あと,宮沢賢治の作品って童話にしては意外とヘビーだったりするんですが,それがまろやかになると思います。
うん。ほんと,童話にしてはヘビーなところをファンタジックさでうまく誤魔化してるって言うと言い方悪いですけど,描き方が上手いなって思います。

でもですね,この話は暗くてやっぱり観ててしんどかったです。
{netabare} お父さんが居なくなって,次はお母さんも居なくなって,あまつさえ妹とも引き離されて…。{/netabare}
生きるのが精一杯っていう状況。
でも,その中でもブドリは意外とうまくいってる。
{netabare}たまたま良い人に出会って,農業をしながら生きていけてたし,その後もお金もないのに何故か大学みたいなところで勉強できて,研究者になれてる。 {/netabare}
そんなにうまくいかないですよね,普通は。

あと,時間の経過がナゾでしたね。
序盤はブドリは子どもだったんですよ。
でも,観ていくうちにいつの間にか青年になってて…。
それがまた猫なんで,見た目が変わらないから分かりづらい!!
あっという間に青年になっちゃうんで(ブドリの言動が子どもじゃない。),やっぱ猫時間なんでしょうね。
作品内で1年とか言ってたりするんですが,その1年で人間以上に成長してたりするんだろうなぁ。。

あと,作品内はファンタジックで灯りはランプだったり西洋レトロなのに研究所でコンピュータらしきものが使われていたり,ちょっとちぐはぐな印象はもちましたね。

お話についてに戻りますが,
なんか光がぱぁってなったり,夢の中の出来事なのかな?っていうような所もあったりで意味が分からないところが度々あってちょっとストレスでした。
宮沢賢治の作品って意味分からないところがよく有って(造語が頻繁に使われたりね。),不思議感を出すのに一役買ってて嫌いじゃないんですが,映画でもその意味分からなさを踏襲してるんですかね?
原作読んでないから分かりかねるんですが…。
その意味分からなさのせいで途中つまらなくなって断念したのですが,後日再開って形で見終えました。
{netabare}あと,最後までブドリはネリに会えませんでしたよね。どうやら原作では再会できるみたいなので,それが残念でした。
あたしは再びネリと会って一緒に暮らせるっていうハッピーエンドを期待してたので,終わり方は納得いかない!!
これは原作へのクレーム(?)になっちゃいますけど…。
あと,最後ブドリは死んじゃったんですかね?
原作ではそういうことなんですよね?
はぁ。これほんとに童話か!?悲しすぎるでしょ!!{/netabare}

あと,ブドリって小栗旬が中に入ってたんですね!!
全く気付かなかったけれど,言われてみればって感じですね。
小栗旬あまり好きじゃないのだけれど,ブドリの声合っててまぁ良かったと思います☆
ちょっと癪ですけどね(^-^;
忽那汐里も気付かなかったけれど,佐々木蔵之介はまんまだな(笑)。
もう佐々木蔵之介の顔が浮かんでしょうがなかったです。
これはジブリにも言えることですけど,俳優・女優使うのって一長一短ですよね。

ストーリー的には好きなエンドじゃなかったけれど,世界観・作画・猫のキャラデザどれもとっても素敵でこの評価です♪
特別ドラマティックなことが起こるような感じじゃないので,世界観を楽しむってだけじゃ満足できない人には向かないかな。。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 6
ネタバレ

ゅず さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

宮沢賢治が好きな人にはいい

宮沢賢治のアニメの総集編って感じ。
昔のアニメのほうがよかったらしいからそっちが気になる。
具体的にいうと
めんどくさいからコピペ&自分の考えで解説。
{netabare}
グスコーブドリ(主人公)は。
冷害による飢饉で両親を失い、妹と生き別れ、
農業に携わったのち、学問の道に入る。

って部分は賢治の生い立ちとほぼ一緒なので
賢治が心の中で思っていた自分だと思う。

彼はイーハトーブ火山局の技師となり、また深刻な冷害に見舞われる。
火山を人工的に爆発させることでイーハトーブを暖められないか。

ブドリは飢饉を回避する方法を提案するがしかし、その実現には犠牲となることを覚悟した誰か一人が最後まで火山に留まる必要がある。

ブドリが最後の一人として残り、火山を爆発させる→死んで星になる。

冷害は食い止められイーハトーブは飢饉から救われたのだった。

ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

けれど結果、人から尊敬や感謝される人として
文学の中で生き続けてる
{/netabare}
総集編って思った部分
{netabare}
・ブドリが宮沢賢治自身の心の中の自分であり、なりたかった自分だと思う
・細かい背景のいたるところや作品のストーリーの小さな部分に「セロ弾きのゴーシュ」「風の又三郎」「どんぐりとヤマネコ」「銀河鉄道の夜」を思い出させる部分があった。

{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 8

67.9 3 宮沢賢治でファンタジーなアニメランキング3位
イーハトーブ幻想〜KENjIの春(アニメ映画)

1996年12月14日
★★★★☆ 3.7 (28)
238人が棚に入れました
周囲に認められない詩や童話の創作を行っていたケンジは、農村の小学校の教師となり、生徒達に自然との対話を説いた。しかし退職後、過酷な自然環境の中でケンジの理想は揺らぎ、挫折しかけた彼は不思議な世界に幻惑される……。宮沢賢治の自叙伝的ストーリーをデジタル技術を駆使した美しい映像で描いたファンタジー・ロマンで、宮沢賢治生誕100周年を記念して制作された。『超時空要塞マクロス』シリーズや『地球少女アルジュナ』などで知られる河森正治が監督・脚本・絵コンテを手がけている。

あーるぐれい さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

『新しい時代のコペルニクスよ、あまりにも重苦しい重力の法則から、この銀河系統を解き放て!』

『雨ニモマケズ』や『銀河鉄道の夜』で有名な宮沢賢治の半生を描いた作品。所要時間は1時間程度。

宮沢賢治生誕100周年記念の作品なので、
大前提として、賢治の人生や作品についての予備知識がないと楽しみ半減です。
というか、きっと意味不明です。
Wikipedia等で予習してからの視聴をオススメ。

劇中では、明治の貧しい岩手の農村風景と、
童話作家である賢治のファンタジックな空想シーンの対比が印象的。
中盤のペンシルアニメーションを使った空想パート、
そして終盤のCG銀河鉄道の発車シーンは、まさに圧巻のひとこと。
未来を担う若者に向けた『生徒諸君に寄せる』という詩の一節『新しい時代のコペルニクスよ~』の引用は、教育者としての彼の人生、理想、想いをすべて込めた、未来へ贈る魂の一撃。
鳥肌立ちました。

キャラが擬人化猫である点は好みが別れそうですが、仮にシリアスなキャラデザだったら、
きっと重すぎて見てるのが辛くなる物語なので。。。
「にゃ♪」が可愛いし。。w






ここからひとりごと。

大人になって改めて宮沢賢治作品を読み返しましたが、独特の世界観に改めて衝撃を受けました。
そこらに落ちてるステレオタイプなファンタジーとは違って、彼の確かな世界観と天性のセンスに溢れています。
『銀河鉄道の夜』だけでも、白鳥の停車場、プリオシン海岸、アルビレオ観測所、蠍の火、などなど、ネーミングだけで幻想的に感じません?

理想と現実に苦しんだインテリっぽい生き様ですが、死の前夜まで農民の相談に乗り続けた彼の人生は
まるで気高く静かに燃えあがる、青白い炎のよう。
そして『雨ニモマケズ』で語られる、平凡にして完成された理想の人間像。

もちろん美化されてる部分は多々ありますが、100年も前に、こんなに美しく幻想的な物語を書いた人って、すごいと思いません?

投稿 : 2024/11/23
♥ : 17

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

心の中に輝く鉱石

宮沢賢治 生誕100年を記念して制作されたアニメ映画。

バッハのアヴェ・マリアが流れる冒頭。
病床の妹・トシに聞かせる話の、幻想的でスピード感あふれる映像には、
べートーヴェンの月光から始まる数々の名曲。
耳と目で精一杯、宮沢賢治の世界を楽しみ、
観終えた後は不思議に勇気が湧いてくる、そんな作品だった。

川原の石ころを見ても、ただの石ころとせず、
そういった様々な「物の見方」を子どもたちに教えていく姿や、
春の野原をスキップしながらも、何かを発見しては手帳に書き留めている賢治。

当時の周囲からは奇人変人と映るような姿も、
人や自然、それらを取り巻く世界をも深く愛してることが伝わってきて、
現代の教育現場とその事情を思うと、彼の教え子たちがとても羨ましい。

また、教師である姿だけでなく、なかなか認められなくても己を信じる姿や、
農民となってもなお、偏見や迫害に遭い苦悩する姿も描かれ、なかなかシビア。
登場人物を、猫などの動物たちに擬人化することで、
それぞれの性格づけもわかりやすく、セリフに集中しやすかったのは不思議。
賢治の夢見た理想の幻想的要素を高めると同時に、
現実的な事実の過酷さをうまくオブラートに包んでいたと思う。

特筆すべきは、賢治の心象世界のファンタジックな描写。
ペンシルアニメやCGで表現されるそれは、とても見応えがあり必見。
そして終盤の銀河鉄道はいろいろな意味で、涙なくしては見られなかった。

声は、賢治を佐野史郎、妹を国府田マリ子さんが演じているのだが、
この妹の奥ゆかしいかわいさといったら!
透明感のある声も雰囲気も、とてもピッタリだった。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 28
ネタバレ

ビアンキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

宮沢賢治のことも、宮沢賢治の作品も大して知らないけど

2015年の12月頃にDVDを購入して、何度か視聴。

1996年に放送されたテレビスペシャルアニメ
全1話

宮沢賢治生誕100周年を記念して制作された、宮沢賢治の自伝的一作。
監督・脚本がマクロスシリーズの原案者であり、メカモノ・ロボットモノのアニメでメカデザインとしてよく名前を見る河森正治氏だったりする。
まぁこの作品ではロボット出てきませんが。


じゃ久々に感想を


まず見て印象に残ったのが、作中ケンジが想像し創造するシーン。

主人公のケンジは作品中で何度も詩的な空想や想像を行うのだが、その空想や想像を見事に映像化している。

教師である主人公が生徒を引き連れ外に飛び出し、いきなり大きな木の前で立ち止まり手帳を出し、「鳥とは青い紐である」
と言うシーンでの多数の鳥が飛び回り、青い紐になるイメージ

主人公が妹のトシと一緒に綺麗な石を光に当てて覗き込み「この石がまだ宇宙に漂うガスだった時…」と言うシーンでの、ズームした石の結晶のイメージから宇宙に銀河のような光の粒が飛んでいるイメージ

特に「鳥とは青い紐である」のイメージでは、大きめの音楽や効果音を付けつつ、映像は3DCGを駆使し飛んでいる多数の鳥が青い紐になっていく様を見事に描いており、
「この石がまだ宇宙に漂うガスだった時…」のイメージは、このあとのシーンの妹の歌が被るように作られており、絵だけでも美しい結晶や銀河の美しさや神秘性をさらに上げている。

この2つだけでも、映像的・演出的に中々レベルの高い作品なのが分かって頂けるかと思うが、極めつけは物語中盤のペンシルアニメーション。

ケンジが妹に自分の書いた物語を語るところからイメージが広がり始め、主人公の語りが切れると
そこからクラシック(?)音楽に乗せて、ケンジの創造した世界、イメージの広がり・暴走が
ほぼ色鉛筆やクレヨンのみで創られたアニメーションで約3分ほど展開される。

これがシュールで、そして美しい。
…なんかもうハイレベルすぎて細かく語れない。
気になった方は是非見て頂きたいです、ほんと凄いので。

ちなみに私が挙げた3つ以外にも主人公のイメージのシーンはたくさんある上、どれも印象的で良い出来なのでご安心?を。


そういった演出的・作画的な部分もさることながら、物語も良く出来ている。

主人公が教師で、時折妙な行動を取る人物であることと、身内や友人との関係性や過去をうまく物語に練り込みつつ説明。
そして紆余曲折を経て教師を辞め農業に勤しむことを決意。
農民に馬鹿にされつつも、新たな農業を模索し努力していく。
 
という物語。
細かくは書かないが起伏がありテンポも良く、見応えのあるシナリオになっていた。

しかし終盤
正直どういう意味なのか何度見ても分かりそうで分からない。
{netabare} 力尽き畑に倒れこむ主人公、そして幻想・幻覚を見る。
幻想の中で長いこと自問自答し、妹の最後の言葉を聞いた結果立ち直り、自分が躓いた石を持って道を走りながら「俺はひとつの修羅なのだ」という結論を出し
{/netabare}
終わり。

…という流れなのだが
{netabare}この主人公の自問自答の意味。
そして畑に倒れているはずの主人公が、死ぬ寸前の?妹に雨雪を持っていくシーン
立ち直る寸前というか立ち直った直後の、2つの汽車が空へグルグルと螺旋状に上っていくクライマックス的なシーン{/netabare}

もっと言うと本作の冒頭のシーンが終盤と似たシーンでありながら、色々微妙に違うというのも…

様々なシーンやセリフが繋がりそうで繋がらない。
色々と解釈を考えてみたりしたが、どれもなんか腑に落ちない。

もしかしたら「何が起きたのかは主人公が分かっていればそれでいいもの」つまり視聴者には理解させる気の無いものなのかもしれない。
主人公が立ち直るときのシーンのクライマックスぶりから見て、ただ単に「色々ウダウダ悩んでたけど吹っ切れた」ってだけなのかもしれない。

この感想を書きながら改めて終盤を見返しているが、やっぱりよく分からない。

宮沢賢治本人や、宮沢賢治作品に対して詳細な知識をお持ちの方なら、はっきりとした意味や解釈が分かるのかもしれないが…
どうなんだろう?


でも意味や解釈は分からなくとも
主人公の自問自答というタメからの、
立ち直る寸前というか立ち直ったシーンには勢いや強いカタルシスがあり、圧倒的で素晴らしかった。

そのシーンと、あとスタッフロールで流れるアヴェ・マリアでもう、終盤のよく分からん部分もひとまず置いといていつも気持ちよく見終わっちゃう(笑)

終盤なにが起こってるのかほとんど意味分かってないですが、私のようなはっきり分かってない奴でもスッキリ見終われる凄く良い終わり方だったと思います。



宮沢賢治の半生を描いた一時間ほどのテレビスペシャルアニメ。
物語はテンポよく起伏があり面白く、所々に挟まれる主人公の空想を見事に映像として視覚化しており非常に見応えのある一作。
終盤が抽象的で、私は正直良く分からなかったもののクライマックスのカタルシスは素晴らしい。

宮沢賢治のことやその作品をロクに知らない私が見ても、1時間ほどで凄く満足できて且つ何度も見返せる大傑作だったという評価なので、
宮沢賢治の作品が好きな方で見てない方は勿論、特別宮沢賢治が好きではなくてもこの作品に興味を持った方は見てみて下さい。
作画的にも全編安定していてスタッフも豪華でペンシルアニメーション凄いので、作画オタな方にも是非!


稚拙なレビューお読み頂きありがとうございます。

初投稿日:2016年8月2日

投稿 : 2024/11/23
♥ : 12
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