やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価
3.9
大罪を背負い生きる男・・・の物語
■評価
ストーリー : ★★★☆ 3.8
演出・構成 : ★★★★ 4.0
作画・映像 : ★★★★★ 5.0
声優 : ★★★☆ 3.3
音楽 : ★★★★☆ 4.5
キャラ : ★★★☆ 3.5
■ストーリー
現代よりも遠い未来が舞台。
人類の銀河探訪の旅が終結し、帰還を望む500億人の
人類が地球に殺到し、移住地を求めカム・ホーム戦争が
勃発。その後、地球は入居禁止惑星として地球連邦政府
から制定され帰る場所を失った人類は鬱屈した世界に
生きることとなります。
そんな世界で、連邦政府に反旗を掲げ抵抗する宇宙海賊
ハーロックと地球連邦政府:元老との戦い、そして
その狭間で翻弄されるイソラ・ヤマ兄弟の物語を描いた
劇場版SFアニメ作品。
■感想
原作は未読・未視聴、初心者レビューになります。
この作品は何故か心に引っかかるものがあり
気になって仕方なかったので、2回目の視聴を
完了してきたのでレビューを更新します。
この作品は二回みても面白い作品でした!!
★★映像と音響★★
まずは作画・映像・音響が素晴らしいです。
3DCGで描ける限界まで挑戦したんではないでしょうか!?
戦艦、銃器類、ボディーアーマー、衣服類は錆び・傷・
質感など細部にわたって作りこまれていますし、今回は
人の表情(毛穴,皺)や効果音まで上手く表現されています。
何よりも、私にとってはアルカディア号を含む艦隊戦や
離発着シーンのデザインや表現はアニメ発想がなければ
描けない秀逸なものだと思ってます。
製作者の熱意を感じます。
★★ストーリーとキャラ★★
心配されるストーリーですが、ハーロックの戦う理由や
過去に犯した大罪、イソラ・ヤマ兄弟の葛藤や苦悩の
物語がテンポよく展開され、起承転結がちゃんと描かれ
てます。また、下記作品テーマが予想外に重く結構見応え
もあります。
『地球と命の輝き』
『人の尊厳と罪』
『人類の発展・繁栄とは何か?』
しかし、テンポやまとまりを意識しすぎたせいか、各キャラ
の背景説明や罪を犯した動機説明が不足しており、人物が
描ききれていないです。あと30分の延長を希望します。
また自分の求めるキャラ(人物像)が描かれているかで
この作品の面白さは大きく左右されます。
私が作品の登場人物に期待するものは、作品の『より厳しい
現実的なテーマ(問題)』に苦悩しながらも、彼らが何かしら
の答えを導き、乗り越える姿(希望)を見せてくれる事です。
そしてテーマ(問題)に対して明確な答えを提示している
もしくは意外性のある答えを提示してくれるものに、より
面白さや魅力を感じます。
本作は私の希望に合致していたので楽しめました!!
なので、ハーロックにダンディズムやストイックな強い漢
の姿を求める方、夢や浪漫を求めている方は、この作品の
ハーロックはただ暗くて鬱に見えてしまうと思うので
おススメしません。下手にみると火傷すると思います。
★★声優★★
一番心配である声優は想定通りハーロックと小栗旬さんの
声は全くあっていないので高評価はできないです。
(他のキャラは頑張ってます)
しかし、ハーロックは寡黙な男!!ほとんど喋らず…なので
大体OKぇぇ。原作ファンの方は怒ると思います。
★★考察★★
この作品は中身のある作品で感動できます。
心の引っかかりとなった要因ですが、私の勝手な
妄想ですが、この作品は今の日本社会がどんな状況で
あるのか分かりやすく教えてくれたのでは?と感じます。
これは原発問題を抱える日本の鬱屈した社会と、無知で
あり続けた私自身の罪を投影した作品にも感じました。
ハーロックは許しがたい人物かもしれませんが、私とは
違い自身の罪(真実)と向き合い、逃げずに100年間も後悔と
自責の念を背負い、けじめを付ける方法を探し続けた男です。
小さくても私に『希望』を与えてくれた彼らは、正しく
ダークヒーローです。どうも有難うと言いたいです。
総じて、ネット上の批評板でかなり叩かれている作品ですが
ちょっと可哀想になるくらい・・・です。
私個人としては監督・製作関係者の方々に、この作品に
込められたメッセージをしっかり受け止めました!!
大変お疲れ様でした!!…と言いたい作品です。
視聴前に以下用語は知っておくと良いと思います。
ネタバレはありません。
{netabare}
■デス・シャドウ級戦艦とは
カムホーム戦争時に、地球を防衛するために建造された
4隻の高性能・高出力戦艦の事を言います。
動力機関は古代異星人から伝授されたダークマター
機関を採用しており、銀河最強の戦艦と考えてます。
■ダークマター機関とは?
アルカディア号(デスシャドウ級)の動力機関の名前です。
この機関を使用する事で補給なし無限航行やワープ
艦体のシールド、自動修復機能を可能にしている動力
機関です。まさしく最強の動力です。
しかし、このダークマター機関も暴走すると惑星1個を
破壊・汚染するほどの危険な動力機関でもあるらしい…。
■ガイア・サンクション
銀河系に住む全人類を統治する機関になります。
日本で言うと国会や内閣にあたる機関です。
■ガイア・フリート
ガイア・サンクションを守護する専用の軍事組織です。
{/netabare}
■説明不足の補完
この作品はハーロックやイソラ・ヤマ兄弟には色々と
説明不足な点があり、誤解を招きやすいです。
この誤解を解くための情報をまとめたので、以下は
視聴した後にみて頂ければ幸いです。
”超長文”と”ネタバレ”になります!!
嫌な方はスルーしてください。
{netabare}
Q1:物語の序盤で、ハーロックは乗船希望者を船から
突き落として殺すなんて酷すぎるんじゃないのか??
A1:殺していません。湖??に落としただけです。
乗船希望を『名誉のため』と言っていた男が
湖から浮き上がっている姿が描かれています。
Q2:ヤマは何故あんな罪を犯したの?
A2:本編ではよく描かれていませんが、彼の母親は
生物観察官として、火星を第二の地球とし、わが
子達を鬱屈した世界から救済するために人生を掛けて
植物の研究をしていたと予想します。
そんな母から強い影響を受けていたヤマは、ナミと
一緒に母の夢を実現しようと日々研究に励んでいた
のでしょう。しかし、何かの悲劇が重なって母の
夢が実現できなくなった事に絶望し、あの様な事を
してしまったと考えています。
Q3:イソラは何をしたかったの?
A3:彼は一貫して地球を守ろうとしていました。
また地球を壊したハーロックと体の自由を奪ったヤマ
への憎悪に苦しみながらも、愛した人(ナミ)のために
意志を貫ぬいていました。
彼こそ隠れたヒーローだと思っています。
Q4:ハーロックは何故あんな大罪を犯したの?
A4:彼は一度は地球を見捨てた人類が都合よく地球に
戻ろうとカムホーム戦争をおこし、無益な殺し合い
をしている事を悲しみ、失望していたと予想しています。
だからこそ、争いの根源である地球を人類未踏の地と
するために必死に戦っていたのです。しかし、元老達
の行いにより再び争いの種が撒かれる事に怒り、絶望し
あの様な事をしたのです。
Q5:元老達はそんなに悪党か??そうは見えませんな!?
A5:悪党らしい悪党ではないですが、大罪人です!!
彼らは自分たちの利権と保身のために、不都合な
真実から目を背け続け、一般の国民に嘘の情報を
植えつけていました。
何よりも、カムホーム戦争時に和平交渉のため
という建前で、地球の利権を各惑星の上層部だけで
牛耳ろうと画策しており、ハーロックの怒りを
かってあんな事態を引き起こしています。
諸悪の根源と考えています。
Q6:ラストシーンでハーロックが二人になった!?
どういう事??何のこっチャイナ??
A6:ダークマターの呪縛から開放された元祖ハーロック
は最後の戦いで複数の弾丸を身に受け、致命傷を
受けており、自身の死を持って贖罪を終わらせる
事を心から願っていた事を考えると、あの後は
静かに息を引き取ったと妄想しています。
そしてヤマは新ハーロックとして、元祖から受け
継いだ意志とアルカディア号で、新たなる戦いの
ために旅立ちます。再び蒼い地球を取り戻すまで。
ここからが原作ファンの期待する真のハーロック
物語が始まると思っています。
この物語はハーロック・ビギンズだったのです。
{/netabare}
私の書ける事は全部書きました…ここまでが
私の能力の限界です。この作品のメッセージが
少しでも皆さんの心に届けば幸いです。
長文にお付き合い頂き、ご拝読有難うございました。