妖艶で幼女なアニメ映画ランキング 1

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81.7 1 妖艶で幼女なアニメランキング1位
傷物語Ⅲ 冷血篇(アニメ映画)

2017年1月6日
★★★★☆ 4.0 (525)
3515人が棚に入れました
〈III 冷血篇〉は暦と怪異の別れを描く

ドラマツルギー、エピソード、そしてギロチンカッター―
怪異の専門家・忍野メメの助力も得て、3人の強敵との戦いに勝ち抜いた阿良々木暦。

彼はついに、吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの
四肢を奪い返すことに成功する。
すべては、普通の人間に戻るため……。

しかし再びキスショットのもとを訪れた暦は、吸血鬼という存在、
その恐るべき本質を知ることになるのだった。
決して取り返しのつかいない自分の行為を悔やみ、そしてその顛末に困惑する暦。
後悔にさいなまれる彼の前に現れたのはほかでもない、暦の「友人」羽川翼だった。
そして彼女が暦に告げた、ある提案とは……。

声優・キャラクター
神谷浩史、坂本真綾、堀江由衣、櫻井孝宏、入野自由、江原正士、大塚芳忠

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

化物語の前日譚の「第3弾」に該当する本作は「赤く濡れて黒く乾いた血の物語…決して癒えない僕たちの大事な傷の物語…」

ここまであっという間…気が付いたら第3弾に到達してしまった気がします。
これまで視聴してきた2作はどちらも1時間そこそこ…
実質2時間ちょっとしか経っていないのだから当然といえば当然なのですが、内容の濃密さが余計に体感時間を加速させるのでしょう…

阿良々木 暦とキスショットは可能性の低いと思っていた賭けに勝利しました。
これもキスショットの持つ吸血鬼としての能力が結果的に功を奏した訳ですが…

キスショットが歩んできた道程…
時折見せるキスショットの本気の笑顔がとても印象的だったと思います。

でも、心に沸々を湧き上がる違和感が払拭できない…というか徐々に大きくなっていくんです。
それは化物語で最初に見た忍とのギャップです。

本作に登場するキスショットは大人…けれど、化物語に登場する忍はどうみても子供…
そう、容姿にギャップが有り過ぎるんです。

だから本作の一番の見どころは、傷物語がどの様に化物語に繋がっていくのか…という点に尽きると思います。
でも物語の展開上その予兆は一切無く…心の折れるような出来事が突然やってくるんです。
心の準備なんてしている余裕は微塵もありませんでした。

少なくてもこれまで間違った事をしているとは思わなかった…
振り返っても決して間違った行いは無かったと思います。
唯一違うとすれば、たまたま立場が違っただけ…
ただそれだけ…
なのに、僅かなその違いはその後の道筋を真逆に違えるに十分足り得た…という事実だけが取り残されてしまうんです。
そしてその事実は一人の人間が背負うにはあまりに重すぎました…
だから自分の良心への呵責に悩まされるかは別にしても、逃げてもきっと誰も文句は言わなかったと思います。

ううん、正直軸足はだいぶそっち側に向いていたように思います。
だから思います…
彼の友人である彼女は心底優しいと…
言っていることだけなら残酷にも捉えられるその一言一句の裏には、彼の未来に禍根を残したくない、という何とも彼女らしい優しさが感じられるではありませんか…

だから彼女も全力全開で彼に挑みました。
言い方はとてもソフトだったけれど、微塵の隙間もなく否応なしに納得せざるを得ないロジックが展開されたと思います。
彼女の言動の理由は、それがお互いがお互いのままでいられる唯一無二だときっと知っていたから…
ちょっぴりへたれだったのは間違いなく彼の方…
でも、勝機ゼロの戦いに向かおうと決意させてもらったのは事実です。

次の瞬間、画面いっぱいに広がる死闘…死闘…死闘…
その死闘を見ていて思いました…
「これじゃ誰も報われない」という事を…
だからこんな感じでは絶対終わって欲しくないと思っていました。
だって私の愛すべきキャラ像とかけ離れていましたから…
こんな風に壊して欲しくないよ…

阿良々木 暦とキスショットが紡ぐ決意と懇願の物語…
そして死闘の裏に潜む真実に気付いたのは彼女…
どこまで行ったら立ち止まれるのだろう…
どれだけ血を流したら優しさに気付くのだろう…
今言わなきゃ絶対後悔する事を悟った彼女は事態に対して身を呈する事を厭いませんでした。

本懐は遂げられなかったのかもしれない…
この結末は残酷だったのかもしれない…
でも、彼の目から溢れる無色透明な血液は、彼の優しさの証だったと信じています。
だから一緒に歩んでいくと決意した…
ラストの笑顔にそんな彼の強い意志を感じた気がします。
きっとこれ以上無い最高の形で化物語に繋がったと思います。

この作品を視聴したら、化物語がもう一度見たくなりました。
化物語に登場するキャラをもう一歩深掘りしながら視聴できる事に喜びが感じられると思うから…
視聴して良かった…待って良かったと思えた作品でした。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 22

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

Film noir directed by 尾石達也 これが【死闘】である

西尾維新の物語シリーズの全ての始まり、『傷物語』の映画3部作の最終作
過去最長の83分で監督は『化物語』の尾石達也
キャラデザと総作監に守岡英行
シリーズで唯一PG12指定


前作『熱血篇』で眷属の力を駆使した阿良々木暦は、紆余曲折ありつつも見事ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターに勝利を収めました
キスショットの四肢を取り戻し完全体への復活=暦が眷属から開放される時も目前に迫っていました
しかし忍野メメから衝撃の真実が口にされます
元々のキスショットの実力を持ってすれば、三人のヴァンパイアハンターは敵ではなかったはず
キスショットを弱体化させたのは、メメがキスショットの心臓を密かに奪ったからだと・・・
そう言ってメメは暦にキスショットの心臓を差し出し、そして去っていくのでした
「仕事は失敗に終わった」と、意味深な暗示を口にして・・・
完全体となり満足げなキスショット、これでようやく全てが終わると安堵する暦
しかし暦は最も重大な事実を見て見ぬ振りをしていたことに気付かされます
そう、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードは「鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼」であるという事実を・・・


この映画は大体3つのパートに分かれています
元々『鉄血篇』でも、
①暦の人となりや羽川との関係を描くパート
②キスショットと遭遇するパート
③キスショットを救った暦の身に何が起こったのか説明されるパート
の3つ


さらに『熱血篇』でも
①ドラマツルギー戦
②エピソード戦
③ギロチンカッター戦
の3つに別けられていました


それが今作では
①完全復活したキスショットが過去を語る、キスショットをヒロインとして捉えたパート
②自暴自棄になった暦が羽川に【おっぱいモミモミ】を強要する、羽川をヒロインとして捉えたパート
③最終決戦パート
の3つに分割できます


そう、ここでやっとハッキリする
暦という主人公に対して、表と裏、光と闇、善と悪という対比的な二人のヒロインが並行している映画が今作なのだと
これは単に羽川を選ぶのか、キスショットを選ぶのかという男女関係の話だけでなく、暦のその後の人生(もはや“人”ではありませんが)を左右する決断を迫られる作品だ、という部分に被せてきているのですね
上手いなー


②パートだけ観ればポルノ映画のように観えますし、③パートだけ観ればスプラッター映画、特に『フレディvsジェイソン』とか『エイリアンvsプレデター』とか、悪趣味が極まったアクションスリラーのようにも観えます
数ある物語シリーズにおいて、なんで今作だけが映画なのか、はこの『冷血篇』でハッキリしました
【正直、心臓の弱い方にはオススメしかねる内容だからです】
ですが、テレビ放送で中途半端にやられても誰も満足しなかったことでしょう
血肉飛び散るまさに死闘、よくぞここまで派手にやってくれた!と“本気”のクオリティで描かれる大人の映画と呼べる仕上がりだからです


キスショットが室外機の上を両手を広げて子供のように歩くカットは林勇雄さん?
ブラジャー姿の羽川を真正面から見下すカットは木村貴宏さん?
斬りつけあいはウメンヅだな
吉成兄弟は・・・言わなくてもすぐわかるでしょ?www
ウエダハジメさんや高山カツヒコさん(相変わらず特撮パート担当w)も携わっていて、オールドシャフトの人脈大活用のオールスタースタッフ


とかく【血祭り】という表現が似つかわしい映画でしょう
それもこんな豪華原画陣、さらにはほぼ全ての背景がCGという特殊な作りをした映画、後にも先にも例がありません
映像表現として、とても貴重な一作になったと感じます


さらに人であることを失くしていく暦の絶望感、それを案ずる二人のヒロインの心境が、そこはかとない哀愁を漂わせていて、観終えた後も程よい余韻を味わえます


改めて言わせて欲しいです
尾石達也監督「おかえりなさい」と

投稿 : 2024/11/23
♥ : 12

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

21世紀の千夜一夜物語 第一幕の終演 良心の問題

2017年公開の劇場版アニメ 傷物語第3章 完結

原作 西尾維新 総監督 新房昭之 監督 尾石達也 制作 シャフト

2009年化物語冒頭で描かれたキスショットの壮絶な物語がようやく完結。
ついに物語シリーズは時系列的完成を見た記念碑的作品です。
初めて物語シリーズが世に出たのは、2005年の「ひたぎクラブ」で、
化物語の刊行は翌年2006年、「傷物語」は2008年に執筆刊行されたようです。

化物語の最終話(2010年)で傷物語制作発表されていたのにもかかわらず、
発表は2016年~2017年ということで、その間に大量の続編放送がありました。
わずか1年間の物語に、まるでシェエラザードの千夜一夜物語のような多様な語りで視聴者を虜にしたシリーズですが、
まずは一区切り、終わってはいませんが。

阿良々木暦が「ドラマツルギー」「エピソード」「ギロチンカッター」を倒したため、
今回の登場人物は非常に少ない。

阿良々木暦 CV神谷浩史
羽川翼   CV堀江由衣
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード CV坂本真綾
忍野メメ  CV櫻井孝宏

そして、化物語につながる物語の最終章が始まるわけです。
他人を救うための自己犠牲で負った傷は現実はともかく、物語内では勲章です。
この作品は10年近く前に書かれた前作品の序章と言う位置づけの、
あまり挑戦的な作風ではありませんが、自己犠牲という名の良心を問われる物語です。
しかし、グロに次ぐグロ、その先にある心の優しさなどまともな感覚ではないとも取れます。

人は人を食らう人ならざるものを許すという感覚を持つことが出来るのか?
その答えは「化物語」から続く長い一年間で考えされされることになります。

シェエラザード(シェヘラザード)は7世紀ササン朝ペルシアの女性。
ペルシアのシャフリアール王は処女を集めてハレムを造り関係したのちに殺していた。
シェヘラザードは王のハレムに志願し、王の閨で一つの物語を語ると夜が明けた。
彼女は千一夜のあいだ物語を語り続け、王の子を3人作り、王は人の優しさを学んだという。
これは、「千夜一夜物語」の外枠物語で「シンドバット」や「アリババと七人の盗賊」などは内枠物語。

追記
大人気の羽川翼と阿良々木暦の乳に触る触らないのシーンですが、
吉川英治の「宮本武蔵」の巌流島の戦い直前の武蔵とお通の発情シーンを思い出したのは私だけでしょうか?

投稿 : 2024/11/23
♥ : 27
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