奴隷で暴力なTVアニメ動画ランキング 2

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76.3 1 奴隷で暴力なアニメランキング1位
ハッピーシュガーライフ(TVアニメ動画)

2018年夏アニメ
★★★★☆ 3.6 (535)
2000人が棚に入れました
松坂さとうには、好きな人がいます。その人と触れ合うと、とても甘い気持ちになるのです。きっとこれが「愛」なのね。彼女はそう思いました。この想いを守るためなら、どんなことも許される。騙しても犯しても奪っても殺してもいいと思うの。戦慄の純愛サイコホラー。

声優・キャラクター
花澤香菜、久野美咲、花守ゆみり、花江夏樹、洲崎綾、石川界人、井上喜久子
ネタバレ

東アジア親日武装戦線 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

にがみのエッセンスが醸し出す「フロイト」的な世界観が気に入った!!

作品概要
▼原作:月刊ガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)
▼原作者:鍵空とみやき
▼アニメーション制作:Ezo'la(ディオメディア)
▼話数:全12話{netabare}
▼総監督:草川啓造(ディオメディア)
・実績
(監督)
『魔法少女リリカルなのはA's以後のシリーズ』『迷い猫オーバーラン!』『ロウきゅーぶ!』『艦隊これくしょん』『風夏』『アホガール』他
▼監督:長山延好
・実績
(監督)
僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件
▼シリーズ構成:待田堂子
・実績
(シリーズ構成)
『らき☆すた 』『ティアーズ・トゥ・ティアラ』『おおかみかくし』『THE IDOLM@STER』『Wake Up, Girls!』
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『はるかなレシーブ』他多数
▼キャラクターデザイン:安田祥子
・実績
(キャラクターデザイン)
『銃皇無尽のファフニール』『sin 七つの大罪』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』
▼音楽関係
音楽:亀山耕一郎
OP曲:「ワンルームシュガーライフ」(ナナヲアカリ)
ED曲:「SWEET HURT」(ReoNa)
挿入歌:「カナリア」(ReoNa)第9話
▼キャスト
【声優】項へ{/netabare}

原作未読
リアルタイム視聴済

☆エピローグ
普通のアニメは見飽きたぜ!糖質サイコホラーはドツボだ。
清々しいほどのバッドエンドや、スクイズやヨスガが大好物な私にとって、やっぱねーっ!これぐらいサイコパスで頭逝ってる作品がないとアニメはつまんねぇw
王道や名作、勧善懲悪ばかりじゃ肩が凝るもんね。
本作は世界線やら異世界やらと物理学分野のSFフアンタジー全盛なトレンドに対し、精神医学を世界観の基軸に据えた稀有な作品だ。
したがって、擬似リアリズムであっても、健常な精神感覚では一切のカタルシスを承認しない作品である。

異常心理に興味があったり、最近では『フリップフラッパーズ』を理解できる方々には面白いかも。
本作はストーリーが安定しているから分かり易い。
『ガリナン』もだが、アホアニメ制作会社の評価が定着して社会的には評価が厳しいディオメディアだが、たまに私のツボに入る作品を出すから、目を離せないw

主要キャラでマトモなのは「しょうこ」だけ。
他のキャラは悪い意味で個性が凄まじく、心の闇という健常と異常の行き交う「境界線」の想像どころではなく、真性の「精神病疾患者」であり、ペドフィリア、エフェボフィリア、パラノイア、火病、発達障害etc全員閉鎖病棟の患者でも不思議ではないような連中が繰り広げる異常人格者による基地外純愛群像劇(草)
共感できるキャラが見事に誰もいない稀有な作品ゆえに、様々な矛盾も精神異常が織りなす現象と見ているので許容の範囲であり、作中何が起こっても感情移入が生じることなく、エンタメとして割り切り楽しむことができた☆

タイトルの「フロイト」は精神医学の始祖。
世界的な心理学者「ユング」や「アドラー」の師匠でもある。
原作者はフロイト入門書の『精神分析入門』や『夢判断』を読んでいるな。
フロイトを読むと、読んだ側も精神をやれかねない危険物。
本作も視聴すると、そうなる方向性で演出されている。
異常心理の描写が精神医学的に考察されて「超自我」のメッセージがしっかりプロットされている。
さすがに1クールで精神医学界の巨匠フロイト的世界観を表現するのは厳しいのだが、そこに挑戦したことは評価されよう。
精神分析学的視点に立った考察はメンドクサイし、レビュー読まれる方々の気分を害するからしない。(いや、でも、気が向いたら追記をするかもw)
キャラ設定のベースがフロイト的価値観だから、基地外とは何かを問うているのと同様で、そりゃ陰鬱な世界観にもなるな。

とにかく可愛いOPや絵柄に騙されてはいけない。
マトモな神経では視聴できない作品だから、そこは覚悟した方がいいデス。はい。

それにしてもジエンコって『serial experiments lain』以来、この手の一風変わった作品のプロデュースが好きなんだな。
提供にバップもあったが、ジエンコ+バップ、あーあれか!w

ところで、最近ディオメディアはいろんな名義を使っているね。
「doA」に続いて今度は「絵空」か。
『BEATLESS』は綱渡りだったし、万策(略)に備えて、リスク分散でもしているのか?

【音楽】
OP曲はとてもインパクトがあり癖になる電波ソングだ。
不詳私、DLをいたしました。
OPの作画と楽曲『ワンルームシュガーライフ』で本作の世界観をしっかり視聴者に伝えた(伝わったかは別にして)好演出だ。
ED曲『SWEET HURT』は『GGO』の神崎エルザの曲を歌ったReoNa。
彼女のなんとも言えない切ない声質が、本作の無情で悲惨な末路を暗揄していてなかなか良い。これもDL。
EDの作画は折しも同じ精神異常系の『フリップフラッパーズ』と同様の演出。
「さとう」と「しお」が抱えている闇と二人の関係性を1分30秒でしっかりと表現している。
{netabare}「さとう」の幼少期から現在の描写、そこに「しお」が現れて、二人で城に向かって歩く。
ハッピーシュガーライフの描写と、スキップしながら城から旅立ち、二人で躓いたところで「さとう」が消える(さとうの死)でも「しお」の心には「さとう」が生きている、とこんな感じでEDはこの物語の顛末を分かり易い暗喩で演出している点は視聴者に優しい。{/netabare}
{netabare}しょうこが殺される{/netabare}9話の挿入歌『カナリア』も歌詞に込められたメッセージがそのシーンの演出にしっかりと映えていて良い曲だ。

{netabare}本作、9話は「しょうこ」の恋もあり内容が濃く相当の字数が必要だが、割愛して、挿入歌まで用意された「しょうこ(小鳥)」は本作にとって、さとちゃんの狂気を強調する意味でも重要なキャラだったし、彼女の存在が無ければ、ただの基地外ドラマで終わったな。
(7話の展開が殺される伏線だが)さとちゃんと向き合うタイミングを逸したとはいえ、幼女を「彼氏」として拉致しているさとちゃんの素顔を知った「しょうこ」がとった選択は極めて常識的だが、基地外相手には通じず、理不尽な結果となったが{/netabare}共感シーンが皆無な本作にとって唯一の救いだった。

【物語とキャラ】
キャラは本作一番の問題提議点だろう。
{netabare}よくもまー、あるゆるタイプの基地外を設定したものだと感心した。
しかし、「さとう」の叔母と「しお」を除き他のキャラのサイコパスの根源は抑圧され無意識下に封印された記憶、いわゆる「トラウマ」だ。
「さとう」、「太陽」、「あさひ」は過去エピソードの描写があるから分かり易いだろう。
今では「トラウマ」という言葉は普通に用いられるが、その概念を提唱したのがフロイトだ。{/netabare}
現在フロイトの【精神分析学】はポパーの科学定義にぶった斬られて【非科学】とされているが、なお、その研究は医学のほか哲学としても各方面に多大な影響を与えている。
因みに「トラウマ」と似た概念で「PTSD」があるが、こちら医学的な診断名、つまり科学。
医学的なフレームで論じるのが「PTSD」であると理解したらいいだろう。
そして、この三者の異常行動は明確に「PTSD」である。
「さとう」叔母は「トラウマ」の過去描写がないので、その異常性の因果関係は判別しないが、他人への関与が異常な博愛が動機である点から、所謂「離人性人格障害」であることは確かだろう。
{netabare}「しお」は年齢的に幼くまで認知能力が完成されてはいなから、母親との関係や「さとう」の死をきっかけとし「PTSD」を発症するのは想定内だろうし、「さとう」の狂気の正統後継者となるだろう。{/netabare}
基地外の成長物語を望むか望まないかは視聴者しだい。私は(怖いもの見たさで)今後も観察してみたいものだが。

以上、キャラの性格設定を多少考察したが、個人的に気になっているのはネーミング。
ここ突っ込んだレビューが少ないだよね。
物語と主人公とヒロイン?他女の子キャラのファーストネームの関係だが、「さとう」と「しお」。
これは、第三者視点で物語を俯瞰したときに醸される、二人のイメージなんだろう。
{netabare}さとちゃんの心が至福に満たせるときは「あまーい」、ストレスを感じたら「にがーい」と味覚で心理描写をしているのも本作の特徴だ。
これは丁度可知差異(物理学用語)が「フェヒナーの法則」による感覚量でも定式化されており、物理でメシを食っている私の心を擽った直喩だ。
「しお」の存在を「さとちゃん」から見た場合は「あまーい砂糖」だが、第三者視点ではさとちゃんに試練を与える文字通りの【塩】な存在。
自らの「あまーい生活」を守るためにさとちゃんは、せっせとバイトで生活費を稼ぎ、脅迫、傷害、詐欺、挙句の果てには殺人までやってのけた。
ある意味、これほどの純愛ドラマはスクイズ以来かもね。
これが、「しお」が【塩】である所以である。

そして「さとちゃん」の光に立候補し、人の道に戻そうとした「しょうこ」は「胡椒」の捩りで、そのお節介は、さとちゃんにとっては「辛い」味覚、はた迷惑で排除すべき存在として描かれているのではないのだろうか。{/netabare}

次に、苗字についてだが、「神戸」と「飛騨(飛騨しょうこ)」に共通するのは高級和牛ブランド。
さとちゃんの苗字「松坂」を「松阪」とすると、やはり高級和牛だが、これは作者の誤字なのかな?
他にサブキャラの宮崎すみれ、但馬みとりも高級和牛ブランド。
本作と高級和牛の相関関係は謎だが、キャラネーミングには法則があるようだね。

で、本作のキャラ設定だが、精神疾患と異常心理の掘り下げに作者の知識の限界からか詰めの甘さが残るが、これだけの基地外キャラをクリエイトし、物語をプロットした点は評価されよう。

{netabare}最終回はオリジナル展開だが、さとちゃんを「あさひ」に殺させ、それでも「しお」に切られ、自殺を図る展開も悪くないと思ったが、さとちゃんを死なせて、「しお」を生き残らせ、「あさひ」を切った展開は前述のとおり、{/netabare}これからの「しお」の異常人格発揮を十分妄想できる余韻を残した意味でも評価できる。

あと「しお」の失踪だが、{netabare}物語の通り捨て子であっても「しお」は小学生だ。
失踪すれば、社会的に何らかにリアクションがあるはずだが「あさひ」が述べたように警察で相手にされないのは不自然すぎる。{/netabare}
欠席が続けば「しお」の担任教師が家庭訪問をするし、親に不審な点があれば、児相とも連絡を取り合い世間にバレるはず。
その過程で事件性があれば警察が動くが、事件性はないとする裏設定でもあるのかな。
「しお」の境遇を考えると、無戸籍である可能性もあるが、視聴者が納得できる線で簡単にでも触れておくべきだったろう。

【作画】
全般的にディオメディアクオリティであり、動かす場面も少ないから、ボロも出ず可もなく不可もなくといったところだが、シャドーの用い方、基地外の表情など、サイコホラーとしての演出は頑張っていたと思う。
ただし、9話は{netabare}本作の神回であるにもかかわらず、作画が演出についていけていない。
挿入歌とナレーションを背景にCVを入れずに「さとう」と「しょうこ」の葛藤シーンが描かれた。
前述したとおり、演出は素晴らしかった反面「しょうこ」の表情が「棒」であり、迫力が全く伝わってこなかった。
基地外表現の作画に手一杯で、健常者の必死の訴えの表情演技まで手が及ばなかったようだ。
CVなしで映像表現のみを用いて視聴者へ訴えるのは、自信と相当の作画センスが要求される。
試しに、スクイズとの見比べで「誠」殺害後の「言葉」と「世界」の葛藤シーンを音声なしで視ると分かるが、迫力が全然違う。
ディオメディアの作画センスの限界が、この素晴らしい演出を削いでしまったと思うと残念でならない。

ただ、小鳥の演出を含めてだが「さとう」が文化包丁を「しょうこ」の首に突き刺し殺す描写は、頸動脈からの血飛沫には違和感を感じつつも、「さとう」を引っ掻き断末魔に喘ぐ描写や小鳥の死を比喩した痙攣描写など殺人過程はしっかり描ききっている。
ただし、グロ描写を強調し過ぎたことで視聴を打ち切った方々を出したという負の作用もあったが、{/netabare}これを斟酌して私的には高い評価をしたいと思う。

【声優】
原作を読んでいる方々には花澤さんはミスキャストだとの意見も多いが、原作を読んでいない私にとって可もなく不可もなしだ。
寧ろ、客寄せパンダ役も兼ねて、演技力が要求される「さとちゃん」役には適任だったのではないだろうか。
個人的には「しお」役の久野美咲さんの演技が輝いていた。
『WIXOSS』や『LOST SONG』でも思ったが、主役よりも準主役や重要キャラをやらせると巧いタイプかもしれない。
さとうの叔母役の井上喜久子さん。
『らんま1/2』から活躍しているだけあって、ベテランらしく味のある演技でサイコパスを演じていたのが印象的だ。
難しいキャラの「三星太陽」を演じた花江夏樹氏も好演だった。

ゆえに総じて高評価とする。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 62
ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

コドモのセカイ

【視聴完了して改稿】*誤字訂正

特別なひととの「ハッピーな」甘い生活を守ろうと奮闘する女子高生。


{netabare}どう見ても猟奇的な生活を「シュガーライフ」と称するのは、主人公と監禁される少女が、虐待の被害者である必然なのだろう。
虐待を受ける子供は、「虐待」の事実を否認して、自分は愛されているのだと思い込もうとするものだという。
主人公が楽しげに唱える「ハッピーシュガーライフ」という言葉は、現実の悲惨を「否認」する、虐待被害者の心性を表現している。
決して、サイコパスの「モンスター」性の表現ではない。

現実の事件でも、しばしば、「被害者」に対して「どうして脱出しようとしないのか」「自分ならもっとうまく立ち回る」「被害を受けるのは能力が足りないせいだ」と、被害者へのバッシングが起きることは稀ではない。

だが、危ういバランスで猟奇的な生活を維持する主人公が、障害が立ちふさがるたびに、子供が鉛筆で紙を塗りつぶすように、心が黒く塗りつぶされる描写は、監禁されている少女が決定的な場面で「頭がグルグルする」と思考を続けられなくなる描写とともに、彼女たち虐待被害者の内面がどのようなものであるのか、視聴者に有無を言わせずに突きつけてくる。


友人が、仕事の都合でアメリカの警察で射撃訓練を受講させられたことがあり、話を聞かせてもらったことがある。

通常、銃の操作レバーやボタンは片手で容易に操作できる位置に配置され、アクション映画などでも、いかにも手馴れていることの表現として、指先で素早く軽快に操作する描写が多い。

が、訓練コースでは、両手を使って大げさな動きで操作するメソッドを教えられるという。

強度のストレスに晒された状況下では、人間は、普段は当たり前に行える細かい操作や判断ができなくなるからだ。

銃の撃ち合いと言えばストレス状況の最たるもので、普通であれば子供でも行える簡単な指先の操作ですらできなくなることを、アメリカの警察は豊富な事例から研究し尽くしているという。
したがって、アマチュアに対しては、ストレス下でも行える大げさな動作をあらかじめフォームとして体に覚えこませようとする。


心が「塗りつぶされ」たり、「頭がグルグル」する描写は、彼女たちの心性が異常であったり劣っているという表現ではなく、虐待という強度のストレス下で「正常な」判断が行えなくなったという表現だ。
彼女たちを、異常だ、対応能力がないのだと見下す視点は、自分ならこのようなストレス状況でも的確に判断できる、という思い込みが支えているのだろう。
が、それは撃ち合いになった時に普段通りの操作ができずに撃ち殺されるまでの空想的な自己満足に過ぎない。
撃ち殺される瞬間に自己満足の妄想であったと気づいても手遅れであるように、たとえばブラック企業で過労死するまで「彼女たち」と自分は変わりは無いのだと気づかないのだろう。

「被害者」を攻撃して恥じないのは、同情心やモラルの欠如といった価値観の問題ではなく、相手の状況を考慮する「知力」に欠けている、要するに頭の悪さを露呈している知能の欠陥だ。

自分の知識だけで世界のすべてを知ったような全能感から他人を評価してしまえる「浅知恵」は、言ってみれば子供の属性のようなもので、未知のものを処理する大人の知力が備わっていないことを示している。

こうした、「大人」が見えなくなっている現実が、本作の背景をなしているのだろう。

その表れとして、本作の「背景」には、たとえ繁華街のシーンであってさえ、すべて学生か若者=子供しか描かれていない。
オジサンやオバサンといった「大人」は、モブとしてすら描かれることはない。

生物の本質はDNAを伝えることであり、次世代へDNAを伝えることが成熟ということだが、人間のように社会性の動物においては、自分の子であるかに関わりなく、「子供」を社会の成員=大人に育て上げてこそ「大人」として成熟しているといえる。

その意味では、虐待を止められず育児放棄する主人公や監禁少女の母親も、虐待する「親」も、見ないふりで面倒を避けようとする近所の主婦たちも、すべて「大人」ではない。

主人公に接近する教師やバイト先の店長が、主人公にいいように「処置」されてしまうのも、彼らが「大人」ではない、オトナの皮をかぶったコドモであるからだ。
子供と目線を合わせるのではなく、子供と「対等」に付き合おうとする「大人」は、得てして「自分が」子供と同化したい=大人の責任を放棄したいという欲望にかられたコドモであるという現実を、正確に写し取っている。

「大人」のいない「世界」は、作者や製作者によって切り取られた「現実」か、主人公から見た「世界」に大人が存在しないことを表しているのだろう。

あやうく空想的な子供の「ハッピーシュガーライフ」が何とか維持されていくのは、このように自覚的に「大人」を排除したコドモのセカイを作り上げることに成功しているからだ。


コドモのセカイで「お城」を守ろうと奮闘する主人公だが、コドモのセカイを特徴付ける原則は「交換」であるように見える。

何かを手に入れるためには何かを差し出す。

当たり前だ、と納得しそうになるが、「子供」が何かを手に入れるのに「対価」は必ず必要なものだろうか。
もしも本作を視聴する前に『甘々と稲妻』を視聴していた視聴者ならば、ひょっとするとこの違和を共有してくれるかもしれない。

「子供」性をすりつぶす虐待の経験が、主人公に「交換」の原則を内面化させる。

「お城」を維持するための様々な交渉だけではない。もう一人の被虐待幼女と出会う前、次々と交際相手を取り換える遍歴も、愛情と「引き換え」に肉体関係を提供していたと暗示されている。
「お城」の所有者との出会いにおいても、まず「何もしなくていいの?」と肉体を提供しようとするのは、利益を入手するために対価を提供するという「交換原理」が思考の様式を支配していることを示している。

「交換」に支配され、内面化した思考は、判断や決断をゆがめてゆく。

主人公が「二人のお城」を守るために殺人を重ねる展開に、不快を感じる視聴者も多いかもしれない。
が、ここはコドモのセカイだ。現実の反社会性を根拠に不快を訴えても意味はない。

これらの「殺人」は、刑法上の犯罪として持ち込まれているのではない。
「ハッピーシュガーライフ」の絶対的な幸福の純粋性と「交換」に「差し出さねばならない」ものとして、「絶対性」につりあう「究極的」な「負債」の象徴として持ち込まれている。
究極の「負債」であるのは、「引き換え」に究極の「罰」=「怒られる」が与えられるものであるという、これまた「コドモ」の「交換原則」が根拠づけているからだ。

主人公に確かな「罰」が下されないことに不全感を感じる視聴者は、このコドモの交換原則の圏内にいるのかもしれない。
内田樹が、現代人は「等価交換原理を過剰に内面化している」と10年以上前に喝破したように、こうした主人公の感覚は現実でも共有されているのだろう。

「交換」の絶対化は、〈ゼロ-サム〉の、相手の損は私の得/相手の得は私の損、といった二者択一の判断に傾きがちになる。
そして「内面化」は、損得の「計算」ではなく、「快/不快」の感情として価値判断を誘導する。他人の損は「快」、自分の損は「不快」、と。

主人公の「罰」の不在への「不快」は、主人公が罰を受けないのは「得」をしている=自分が「損」をしている=「不快」、の回路に捉えられているのではないだろうか。


ブッフェ形式のランチを食べに行ったとき、「こっちの方が原価が高いよ」という会話を聞いた。
原価が高い=店の「損」=私の「得」=気持ちいい、の回路が作動しているのだろう。

台風の夜にピザを注文する人がいる。
配達員が特別に苦労する=特別に「損」している=特別な「得」をした=気持ちいい、の回路が作動したのだろう。

どちらにせよ、「得」などどこにもない。
架空の損得に誘導される気分が支配する判断が、現実にも蔓延している。

が、こんな「気分」の無意味さを指摘することができるのも、「現実」の関係性においては「交換」とは無関係に、利益や不利益が生じることがあると知っているからだ。
一方的に与えることもあれば、理由なく消失することもある。

「交換」の明瞭性からすれば、こうした「贈与」や「蕩尽」は不合理で不可解に見えるだろう。
不明瞭の排除として、本作の「コドモのセカイ」の設定がある。
現実世界には存在する児童保護施設のような子供の救済機関の不在が、コドモのセカイを支えている。

そうした救済機関の実効性や運営の仕方に不満の人もいるだろう。
しかし、そうした機関が存在し、子供の救済に従事する大人がいることは確かだ。

(子供に対しては)「無償」で保護を与える大人の不在が、コドモのセカイを支える。

この「コドモのセカイ」によって、虐待によって「交換」のみが行動原理となった少女の物語を、より鮮明に描き出し得ているといえるだろう。
そして、この「セカイ」は、交換の内面化において、現実と地続きであると示してもいる。

終幕で、新たな「お城」を目指して旅立とうとする主人公と監禁幼女は、置き忘れた指輪のために脱出を果たし得ない。
「交換」に貫かれた主人公の行動が、「かけがえのない」指輪=「交換」できないもののために頓挫する展開は、ついに「交換」の向こうへ、「セカイ」の拘束の向こうへの視線を獲得した希望なのだろうか。

追い詰められ、屋上から飛び降りる二人は、死において「愛」が成就するロマン主義の純愛をなぞったように見える。

心中や殉死に愛の超越性を見るロマン主義は、しかし、土壇場で幼女を救う主人公の自己犠牲によって、絶対的な犠牲と「引き換え」に絶対的な愛を差し出す「交換」の現代性に敗れ去ったようだ。

ラストで、他者を拒絶して主人公との「愛」に閉じこもる監禁幼女は、このセカイの交換原理を受け入れ、超越の契機は閉ざされたように思える。
主人公の生命という絶対性は、幼女を解放する「ギフト」ではなく、絶対の愛を「引き換えに」捧げる、交換媒体にしかならなかったのだろうか。

絶対的な犠牲と「引き換え」に絶対的な「愛」を応答させて自己という球体に引きこもる幼女は、相手を絶対的に受け入れる「引き換え」に相手の全存在を収奪する主人公の叔母の陰画のようだ。


無償で与えられる何ものかが存在する「現実」を慎重に作り替える「コドモのセカイ」が、「与えられるもの」が奪い取られた虐待を強力に浮かび上がらせる。

コドモの「ハッピーシュガーライフ」」を理想郷とみなして肯定しまうのも、登場キャラは「異常者」だと断罪してしまうことも、「大人」からかけ離れた「浅知恵」になってしまうようだ。

モブにすら大人のいないセカイでは、警察官もまた子供じみて、形式的につじつまが合えば明らかに不審のある住居を捜索することをしない。
自分が「怒られない」形式が整っていれば明白な異常を見逃す職業人が、必ずしも空想的には見えない現実が、このコドモのセカイを一蹴できない救われなさを支えているようだ。

このもどかしさを、もどかしさのまま引き受けることが大人なのだろうと思うと、なんとも切ない。{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 14
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

満面の笑みで胸糞を楽しむ

1話感想{netabare}
ミザリーというか…ストックホルム症候群的な話なんだろうか。
シオが事実を知ってからどうなるかが気になるがずっと後になりそう、ってよりもそこまでやってくれるんか?

にしてもやっぱこういう作品も生まれるよなぁ、ってのも思ったり。
今期先に放送始まった“すのはら荘~”見てると「そのうちヒゲ生えたり声変わりして「こんなのアキちゃんじゃない」と管理人が狂気に走らないかのう?」とついつい思ってしまったり。
さすがにそれは天邪鬼すぎだろー、逆張りしすぎだろーとあんま考えないようにしてはいるけどね。
けどやっぱそっち方面を望む声ってのはあって、それが形になった、みたいな。
“からかい上手の~”を見て「西片もうちょい突っ撥ねても良いのに」と思ってたら“あっくんとカノジョ”が始まった時と似た感覚(こっちは極端過ぎていや待てって感じだけど)。
ネタ被りとは違う…カウンターというか、アナザーアンサーとでも言えば良いのか?
もうね、放送してるアニメの作品数多いからこういった補完する・対極に位置するような作品もバンバン出てくるのは…良い事なのかなぁ?
ってことで“すのはら荘”と並行して見ると楽しさが増すかも、これ単体でも結構面白いけど。

追記
この作品を棚に入れる際アニコレ側から「こんな作品もおすすめにゅ」と紹介されたのがシャッフルとギフトと未来日記。
ええい、3つ目はスクールデイズじゃないのかい!
ってよりもこれってどうやって判定してるんだか未だに不明、結局この作品はソレ系なのかい?{/netabare}

2話感想{netabare}
やっべ、面白い。
“表向きの顔”を演じてる最中の他の人の表情の僅かな違いを読み取ろうとしたり、女あるある過ぎて、もう…うひっ。
愛とか言ってるけどOPで暗示されてるように現状サトウはお人形遊びしてるのと大差無く(理想の像を相手に押し付けてるだけ)、更にはシオは演技してるんじゃないか?と確かめる辺りなんて、もう…ウヒヒ。
ってかあれはシオが演じきったってことでいいのかな?理想像を裏切るとヤバいと本能的に悟って。
サトウは疑心暗鬼に囚われるというか、深淵を覗いたら覗き返されてた方向(いわゆる自爆)でもいいけど、シオはシオでなーんかありそうよね?
いくら幼いからといってずっと部屋に閉じ込められてることに疑問抱いてないし。
ってか出てくるキャラがみんなキの字で、近所に頭を狂わす電波発する隕石でも落ちたんじゃないか?と思わせるくらい(誉めてる)。
同じ感じでキの字博覧会になってた“魔法少女サイト”も、これを見て思い返すと女臭さが全然無かったと思い知らされる。
あの、その…同期に放送してる“殺戮の天使”よりよっぽどコワイ(誉めてる)。

この作品は下卑た笑み浮かべてニヤニヤしながら視聴する(誉めてる)のが正解な気がする。{/netabare}

6話までの感想{netabare}
サトウは、ぼんやりプチトマト眺めてるのを目ざとく気付いたり、バイト先ロッカー内のネクタイとピンの配置がズレてることに気付くとか、深入りされたくない相手を脅すのではなく気持ちいい思いをさせて阻止するとか。
女ってこええええ、ってのを非常に良く描けてると思う、ウヒィーッ。
シオはシオで、5話で咄嗟に嘘を吐いたのは頭で考えてってよりも本能的に・反射的にやったことなのかな。
なんか段々とシオが魔性の女に思えて来た…。
やっぱこれ、ご近所に毒電波発する隕石転がってるんじゃないか?w
相変らず面白いんだけど、ちょーっと陰りが見えて来たかも?いやそれでも面白いんですけどね。
嫌いな人はトコトン嫌いだろうなぁってのは分かった上で、じゃあなんで自分は好きなんだろうって考えてみた。
単に頭のおかしい人が出るだけなら「フーン」って感じで何とも思わない。
一方でこの作品見てる時のように下卑た表情で「ウヒヒ」と言いながら見てた作品は…あ、最近だと“URAHARA”の7・8話の時がそうだったわ(あれはもはやエロス)。
じゃあそれとこれとで共通点を探ってみると…こんな感じかな?

・「守りたいもの・大事にしてるもの(A)」があって、それが脅かされる・破壊される・もしくは異常に執着するが故にキの字になる。
・肝心の(A)が共感できる。

要はどこかに「あーその気持ちわかるわー」って思える…これ書くことで異常者に思われても困るんだけど、悪い言い方しちゃえば「自分にもそういう側面がある」って方向の狂気に対して見ててウキウキするっぽい。
まぁ深淵を覗く系は大好きですんで、ええ。
「結局共感できるかどうかだけじゃん」ってありきたりな結論になっちゃったけど、これ結構大事じゃないかなぁ?
また比較で挙げて恐縮だけど、同期放送作品で同じ感じでキの字博覧会をしてる“殺戮の天使”がホント退屈で…あっちは全っ然共感できない。
なんで共感できないんだろうって考えたら(A)が無いんだよね、あっちは。

で、陰りが見えてきたかも?って思ったのは、回が進むたびに変態キャラ増えてるけど(A)持ちはそんなに居ないような?
虐待されたとかのトラウマ持ちは(A)に固執する理由としてあった方がいいけど、(A)無しでただトラウマ持ちで頭オカシイだけなのは自分にはイマイチ。


ところで、先入観ってのは恐ろしいもので、総監督の草川啓造って「どっかで見たことあるなぁ」って程度で、作風もあっててっきり“シャッフル”や“GIFT”の人だと思い込んでて…実際は全然違ってたー!!
そっちは鈴木雅詞で、今期は“ロードオブヴァーミリオン”やってる方でした。
じゃあ草川啓造って何で見たんだっけ?って思ったら、ああ、“リリカルなのは”の人でした、あとは“ロウきゅーぶ”が有名?
…。
あれか、ロリっ娘なら任せろオラァァン!って人なんかね。
しっかしちゃんとスタッフ確認しないとアカンですね、アニコレで感想書いてなかったら勘違いしたまんまでしたよ。{/netabare}

最終回まで見て{netabare}
今期一番面白かった。
…が、表立って人には薦めにくい作品、あれー?前期の“ラストピリオド”に引き続き、どうにも語るのを憚る作品が続くなぁ…。
ぶっちゃけ言っちゃえば「頭のおかしい美少女を眺めてニヤニヤする下卑た趣味」を、余計な装飾しないでそのまんま下卑たモノとして描いた作品。
これが下手に気取って・着飾って高尚ぶり出すと自分は一気に冷めるので、最後の最後までヘンタイをやり通したのは感動すら覚える。
(これを書くに当たり「下卑た趣味を装飾して高尚ぶってる」某作品のタイトルを書き直しておきました)

「なにかやるんだったらリスクは承知するべき」ってのはどうしても自分は思ってて、しかもそれが人道に背くことなら尚更で。
この作品は狂人ばっか出るけど、基本これを踏まえてるのに好感を覚える。
顕著な例では北埋川先生のサトウに対する「自分以外の人間と秘密の共有するのが許せん→破滅する姿が見たい→警察に通報」って感情は全然共感できないけど、「それにより自分もタダでは済まない」と覚悟を決めてたのは非常に共感できる。
(一方でこれはTVアニメとしてしょうがないんだろうけど、エレクチオンして然るべきところをヨダレで婉曲表現してるのはどうなんかな、仕方ないんだけどさ)

そして自分的に最もタマランかったのは、サトウは秘密を隠すために普段から周囲に気を張ってて(頭が良いというのもあるが)、何か変化は無いか・悟られてはいないかと他人の顔色を伺うシーンがちょくちょくあるんですよね。
いやね、聡い美少女から「ふーん、それ本当ー?」と瞳を覗き込まれるようなことをされたら…ああもうっ、ああもうっ(北埋川先生が興奮してるのと同じ感じで)。
友人はそんなことされたらブン殴るかも知れんと言ってましたが、自分はエレクチオンしながらもんどりうつかも知れん。
これは…コンテ書いた人の手柄になるのか?いい趣味していらっしゃる。
で、そういう「探り」に対してシオはシオでナチュラルに演技(無意識な演技)をしてて──トラウマ故か無意識のうちにサトウにとって都合の悪いことは考えようにしてて──いつ機嫌を損ねる真似をしやしないかヒヤッヒヤでした。
後半とうとう隠しきれなくなって秘密を共有することになるけど、タイミング間違えてたら殺されてたんじゃないかな。
他の作品でも何度か書いてる「殺して剥製にして額縁に入れて飾っておけば満足」ってタイプだったので…途中までのサトウは。
それに耐えかねてシオが「お人形じゃない」って言ったときは、まぁそう言われるわなぁと強く共感したもんです。

最終回の飛び降りのシーン、高飛びが成功してたら「あったであろう未来」が背景に流れた時は涙出ましたわ、切ないのう。
決して許されてはいけない奴だったけど…ってか、元々高飛び失敗したのは指輪を忘れて取りに戻ったせいで、じゃあ何で指輪忘れたかといえば偽装のためにショウコの死体に制服着させる時に邪魔だったので外したからで…ああこれ、ショウコの呪いじゃね?
単に耳目を集めるためにセンセーショナルに殺されたんじゃなくて、ちゃんと意味はあったんじゃないかなーと思うと良く出来てるんじゃないかな。

そして最後、病室のシオ…シロッコに連れてかれたカミーユやーんw
「彗星かな?」って言い出したらどうしようかと思ったけどそうじゃなくてひと安心。
サトウをグッサリ心に刻み込まれてキチ化エンドだったけど、サトウ的にはそれが真の愛だったってことだろう。

最後の最後まで救いの無いドス黒い話だったけど、徹底しててある意味爽快でした。
けどなー、冒頭にも書いたとおり人には薦めにくい、ヘンタイ嗜好の作品です。
今期一番面白かったけど、万が一これが一番売れた作品になったりしたら、それはそれでイヤ~な気持ちになるでしょう。{/netabare}

追記{netabare}
あ、思い出したのでちと追記
“殺戮の~”ばっかり比較で槍玉に挙げてしまって恐縮だけど、あれとこっちでは何が違ったのだろう?ってのはずっと考えてまして。
と思ってたら別の作品がポンと思い浮かびました。
“ウィクロス”…の特にあきらっきー、あれは自分ダメでした。
「やりたいことのために人の迷惑顧みない」ってのは共通してるのだけど、自分に不都合が降りかかると「他人のせい」にしてばっかで…。
↑で書いたのと共通してしまうけど、「不都合起きることも覚悟した上でやってるんじゃないのかい」「自分棚に上げてよく言うわ」と不快感のが先に来てしまう。
(当然あきらっきーはそういうキャラとして描いてたんだろうけど)
でもってシュガーライフは覚悟してる、不都合が起きても自分が撒いた種と承知してる。
指輪を忘れて取りに戻ったせいで高飛び失敗&心中する羽目になっても「おのれショウコめー!」なんてことは言わない。
それどころか目的達成のためなら泥水を啜る覚悟まで決めてて…同僚としたくもないキスしたり嫌いなおばさんに頭下げたり。
ただキチだサイコだ言ってもそこら辺の線引きはしっかりしてて、それが不快感なく楽しく見れた部分なんじゃないかなー、と思ったり。
単純に「異常行動させればサイコが描けてる」と思ってるような浅薄なクリエイター…は居ないとは思いたいけど、そこら辺もちっと注意して描いてもらいたいところ、ね、ヴァーミリオン。
普通の中に潜む深淵だからこそサイコなんじゃねーのん?と。{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 15

62.6 2 奴隷で暴力なアニメランキング2位
奴隷区 The Animation(TVアニメ動画)

2018年春アニメ
★★★★☆ 3.1 (168)
694人が棚に入れました
『SCM』―それは他人を奴隷にできる器具。
勝負に勝てば主人となり、敗者は奴隷となる。
復讐、愛情、憎悪……
さまざまな思惑でSCMを手にした者たちが繰り広げる、欲望の群像劇。
勝利か、服従か。
壮絶なサバイバルゲームが幕を開ける。

声優・キャラクター
山村響、鈴木崚汰、千本木彩花、緑川光、木下鈴奈、小西克幸、興津和幸、森久保祥太郎、白井悠介、八島さらら、村瀬歩、稲田徹、宮田幸季、川津泰彦、西田望見、早川沙希、河西健吾、國立幸、堀内賢雄、上村彩子、結城光
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★☆☆☆ 2.0

科学的な設定は、諸刃の剣

[文量→大盛り・内容→酷評系]

【総括】
タイトル的には、なんかスッゴいエログロ感があるけど、別にそうでもない(原作は知らないけど)w

一応、「カイジ」「DEATH NOTE」みたいな知的バトル系には属するのかもですが、まあ、そこは大したことないです。特殊な設定下における人間ドラマを描きたかったんでしょうね。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
まず、ちょっとは誉めよう(笑)

奴隷化を、特殊能力や魔法じゃなく、一応、科学的というか、SCMという設定を作っているのはイイね。いくつか、「デスノート」みたく「ルールをしっかり知っているから勝てる」的な流れもあって、そこは良かった(勿論、デスノートには全然及ばないけど)。

でも、「魔法」ならどんな矛盾も「魔法だから」で逃げ切れるけど、「科学」なら、矛盾は命取りになる。トンデモ能力を「科学」にするとリアリティーは増すけれど、そういうリスクもあるんだよね。ルールも、後出しジャンケンが多かったし。

例えば、1話を観てまず思ったのが、SCMの弱点。SCM最大の問題点は、SCMを付けていない人物に対しては無力だということ。だから、人質からの解放なんてSCM装着者に頼むより、ヤーさん的な人に頼んでおいて、主人を拉致監禁、拷問でもぶちかまし、「人質解放」を宣言させれば済む話。んで、ヤーさんに金を渡す契約をしておけば良い(なんならチンピラでも可)。そこのところの説明をキチッとしないと、折角の設定が死ぬ気がする。だって、最強のSCM所有者だろうが、(終盤に登場した)ジャッジメントSCMだろうが、普通の人の拳銃1発に勝てないわけでしょ? なんでみんな、わざわざSCMで勝負したがるのかな? (作中何度かあったけど)単純な暴力×SCMのコンボが一番効率的だよね。

後は、勝負の内容が両者の同意によるなら、「どう勝負するか」より、「どんな勝負をするか」の方がずっと大事。だから、一番大事なのは下調べや勝負への持ち込み方が重要(な設定にしたのだから、そこをもっと丁寧に描いて欲しかった。それが出来ないのは、スマホと接近アラートがあったから。それにより生まれた良展開もあったけど、騙し討ちや調査の面白さを出せないことを考えたら、トータルではマイナスかな)。

パッと思い付くのは、拉致監禁して、命を脅しながら強制的に勝負に持っていく方法。まあ、それじゃああまりに安易だから(でも結構やってた)、正統派でいくなら騙し討ち。例えば私なら、(相手が素人なら)剣道勝負に持ち込めればまず負けない。まあ、剣道はなかなかやってくれないだろうけど、例えば漫画家が身分を隠し、「似顔絵対決」とか、アナウンサーが「早口言葉対決」なら、あり得るかな。そういう、「隠れた一芸」を身に付けるトレーニングを積み、勝負をしてくれる相手に出会うまで根気よく勝負を挑み続けるのが大切。つまり、地味な作品になる(笑)

こういう矛盾点を鮮やかに解決してくれたら、ググッと評価が上がるんだけど、、、結局、全く解決してくれなかったね(苦笑) なんか、登場人物バカばっかりに見えた(単純な暴力=簡単な最善策があるのに、それを使わず、SCM=次善の策で必死こいて考えているあたりがアホっぽく見えた)。

それどころか、キャラもほぼ使い捨て。キャラを記号としか扱っていない印象。奴隷として、たくさんのキャラが出てくるものの、そのキャラを生かそうという気がない。

ホスト、筋肉ダルマ、女装子、看護士、会社社長など、たくさんの特徴をもった人物がいるのに、「その人物ならでは」の戦略もバトルもない。看護士だから注射? 別に、薬さえ手に入れれば、刺すのは誰でも良いやん。女装子、普通の女子と何か違う扱いしてる? ホストなら、ホストの技能生かそうか。

基本的に、どのキャラも空気。登場時にちょろっと活躍し、過去回で人生紹介して終了。あとはモブに成り下がる人が多すぎる。いや~、「サクラダリセット」は上手かったな(全キャラ、全能力を生かしたからね)。

最終回も、微妙。アニオリらしいけど、この設定、作風なのに、美談にしてどうするんだろう? 無理矢理感のある大団円にハッピーエンド。う~む、普通に原作に繋げたり、更なる悲劇の予感でも良かったかな、この作品に関しては。

てか、アニメだから規制があるのかもしれないけど(ならムリにアニメ化するなという話だし)、もっと人間の欲望をリアルに描くべき作品なんじゃない?(私の好みは別として)その方が人気出た気がする。まあ、私みたいなパンピーに思い付くのは、エロいことと金銭的なことくらいだけど、もっとサイコパスな命令や欲求があっても良かったと思う(そうすると、私は視聴断念するけどw)。

つか、人を奴隷として扱おうなんてクズばかりの世界を描いておきながら、愛だの正義だのちゃんちゃらおかしく、サムさすら感じるんですよ。

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」は、その辺ちゃんとしてて、あれは芥川一流の皮肉。あれ、お釈迦様プレゼンツのムリゲーなんだよね。カンダタ含め、地獄に落ちたクズ人間に、蜘蛛の糸という僅かな希望を与えても、そもそも他人を優先できるような人間なら地獄に落ちてないって話で、結局全員地獄に落ちる。一見、良い話風にみせて、お釈迦様含めて全員をディスるとか、流石、人嫌いの芥川(笑) どうせやるならあそこまでやらないと。

「魔法少女サイト」「王様ゲーム」でも書いたけど、こういう悲劇的(残酷)な設定だけは思い付いたものの、それをキッチリ生かしきるだけの力がないままに、連載&アニメ化ってのが、最近多い気がする。なんだかな~。
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目
とんでも能力や魔法じゃなく、一応、科学的というか、設定を作っているのはイイね。SCM最大の問題点は、SCMを付けていない人物に対しては無力だということ。だから、人質からの解放なんて、SCM装着者に頼むより、ヤーさん的な人に頼んで拉致監禁、拷問でもぶちかまし、「人質解放」を宣言させ、ヤーさんに金を渡せば良いんじゃない? そこのところの説明をキチッとしないと、折角の設定が死ぬ気がする。さあ、どうなるかな? 期待ですね。

2話目
ゲーム自体は面白くもなんともない。心理戦も戦術もなく。となると、人間ドラマを描きたいわけね。

3話目
SCMを外して勝負できるんかい。これは、SCMの性能をより正確に理解している方が強いね。そういうのは、「デスノート」が最上位だけど。

4話目
まあそうだよね。こういう直接的な手段が一番強いわな。犬を使うというのはなかなか面白いが、同意形成はどうするんだろ? 餌あげて腹見せたら、直ぐに負けちゃいそうだし(笑) そこを説明してくれるなら良いな。散歩している犬のサイズ感、ぬいぐるみか(笑) まあ、こういう(どう勝負の土台にあげるか)アニメになるよね。

5話目
命は奪えないから、自作自演? ズシオウマル頭良すぎるし。そこまで人語を理解するズシオウマルなら、エイアがズシオウマルと勝負して上書きすれば良くない?

6話目
ほ~。SCM開発者ね。このSCMで人語を理解できたならまだわかるけど、SCM装着前から人語を理解できたんだな。つか、ユウガ弱すぎるし、結局、力業最強なんだよね。

7話目
た、大したことねぇ(笑) これ、二大勢力の決戦だよね? 1本とられた感がないバトル(苦笑) いや~、女子高生として潜り込むならまだしも、臨時の養護教諭はムリでしょ、正規のルートなら(養護教諭の免許使ったとあったし)。東京に養護教諭の資格をもっている人が何人いると思ってるのさ。つーか、なぜ「潜入」という危険な任務を、右腕に行かせるんだよ。リュウオウ、バカかな。その1000万が何らかの方法で無くなるのは予想できてたけど、そもそもバッグから金出されていたら負けやん。バッグから絶対に金を取り出さないような仕掛けがないのなら、ただのバクチ。「賭けグルイ」みたく、そのスリルを味わうのでないのなら、無意味。

8話目
ジャッジメントSCM、メッチャチートやん。大丈夫か? そんなん出して。

9話目


10話目


11話目
自ら弱点を話す、バカ。

12話目
この作風で、大団円、ハッピーエンドにする意味あるかな?
{/netabare}

投稿 : 2025/01/04
♥ : 18

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

奴隷の世界へ、ようこそ。

この作品完走後、レビューを書くためにwikiをチラ見しました。
小説、漫画とも刊行が終わった作品であり、2012年には映画で実写化もされたんだそうです。
ですが、私はどれも未読・未視聴です。

原作のタイトルを見て気付いたこと…
タイトルは「奴隷区 僕と23人の奴隷」なんですが、登場人物の苗字が、東京23区の区名に合致していることくらいです。

最近分かったのは、人の感情や意識を強制的に歪ませる作品…或いは、深層のプライベートエリアを土足で踏み荒らすような作品…どうやらこの手の作品は、私の苦手ジャンルみたいです。
もちろん、視聴に耐えられない…という事はありません。
ですが、物語が尺の都合上、中途半端に途切れた状態で次の話を1週間待つのは正直しんどいので、録り貯めして一気見した作品となりました。
毎期放送される作品が増大の一途を辿っており、タイムリーに視聴できない作品も出てきて残念な気持ちになってたので、一気見は気分的な救済措置にもなった気がします。

でも放送が終わってから一気見するということは、次の期の作品の視聴時間を削る事に直結しているのは認識していますが、敢えてそれには触れないでおこうと思います。

この作品は、人を奴隷にする物語…
ここで指している奴隷は、「主」に位置する人間に身も心も委ねる…そういう奴隷です。
日本には馴染みの無い制度ですが、この作品で登場する「SCM」という機械が、それを装着しある特定した条件下に陥った人の精神を強制的に屈服させる、という仕組みになっています。

そもそも奴隷の要件は以下の通りです(wikiより)
・人間でありながら所有物とされる者をいう。
・人間としての名誉、権利、自由を認められず、他人の所有物として取り扱われる人。
・所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡や売買の対象とされる人

物語の中で奴隷を求める理由は人それぞれ…
ですが、私にとってはどの理由も奴隷によって解決できるモノとは思えませんでした。

真っ当な理由に対しては、真っ当な理由以外で返すことなんかできません。
それに自己顕示欲を見える化したいと考える輩については論外以外のナニモノでもありません。
だって、本当に強い人間って、そういう小道具を頼りにしませんから…
だから物語の中で必死に奴隷を求める姿を見ると、違和感を感じずにはいられませんでした。

でも、状況を俯瞰してみると人の在り方は一つではありません。
それに「人間が平等である」を履き違えてもいけないと思います。

人の在り方については、自らの言動に責任を「取る人」と「取らない人」に分類できると思います。
殆どの大人は「取る人」に分類されると思います。
ですが、それ以外の人が存在するのも事実です。
「取らない人」については、「(年齢的などの縛りで)取れない」や「取り方を知らない」が含まれますが、「取りたくない人」が内在するんですよね。

誰だって責任を負いたくなんかありません。
でも、物事を動かそうとする時や新しい一歩を踏み出す時に伴う相応のリスクを責任という形で私たちは背負わなければなりません。
若しくは自分の代わりに背負ってくれた人に報いるため、私たちは全力で立ち回ります。

でも、「取りたくない人」って、私の経験上ですがそういう輪に入ってこないんですよね。
そういうのって見てる人がちゃんと居て、次第に相応の役割しか任されなくなって…
その結果をどう受け止めるか…そしてどう変えていけるかが鍵なんだと思います。

次に「人間が平等である」について
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」
これは福沢諭吉の「学問のすすめ」に記載された一節です。
これは、一般的に「人間はすべて平等であって、貧富・家柄・職業・社会的身分などによって差別するような偏見を、否定している言葉」と解釈されていますが、これには続きがあるのは有名な話です。
人間は全てにおいて平等になる権利がありますが、どの分野でその権利を会得できるかは本人の努力次第…なんですよね。

だからこの物語が指し示した出口…個人的にはそうあって欲しいと願っていた方向だったので、良い感じで纏められた作品だと思いました。

オープニングテーマは、阪本奨悟さんの「カラカラな心」
エンディングテーマは、Pileさんの「BJ」

1クール全12話の物語でした。
立場がコロコロ入れ替わるので、心は相応に荒むと思います。
この手のジャンルが好きな方には受け入れられる作品なんだと思います。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 9

TAMA さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.7

タイトル負けしてる作品だったなぁ

作品の要『SCM』(歯の矯正器みたいなやつ。これを装着すると宿主の分泌物から判断し脳に作用する)…
いや、はめなければコレって作品自体が簡単に瓦解するよね。最初にこの考えが浮かび全く作品を楽しめませんでした。


原作・未読。
アニメ・全話視聴。


基本ルール↓(公式より一部抜粋)

1.SCMを装着し、勝負を行う。勝負を申請された方に勝負の決定権があり、申請者には勝負の決定権は無い。

2.勝負内容は24時間以内に決定するものが好ましい。

3.決着した際、負けた方が奴隷(Mモード)、勝った方が主人(Sモード)になる。

4.Mモードは自身の主人である、Sモードの者に行動を捧げる絶対服従の奴隷になるが、主人は奴隷側の死活行動と感情までは操れない。

5.Mモードになった者は「外した時間の4分の1時間」SCMを装着していなければならない。(24時間外した場合は、およそ6時間)。24時間外し続けた場合、ペナルティが起きる。Sモードも同様の条件下のなかで取り外しを行わなければ、従属する奴隷側にペナルティが起こる。

etc…

…うん、ルールは面白そう。穴多いけどね。(etc…の中には『ルールには無い裏ルールも存在する』は卑怯だと思うけど。)

因みに…
『奴隷』(広辞苑より)↓
人間としての権利・自由が認められず、道具同様に持主の私有物として労働に使役される人間。「―解放」。転じて、あるものに心を奪われ、それにしばりつけられている人。


にしても、アニメの内容は本当につまらなかった。
ご都合主義はともかく、勝負が非常につまらない。
様々なキャラ(個性)が出てくるのにその個性を使ってない。
「え?だったら○○じゃなくても一般人でええやん?」ってなります。

後なんでバカの一つ覚えみたいに近くに居るの?
ルールを確認したけど『エリア』に関しては書いてなかった。なら日本の端や海外に逃げるキャラが出てきても良いよね?興味本位でやったけど現場を見たら怖くなって…ってなる人だって居る筈でしょ?
ま、「(参加者全員が)奴隷が欲しいから」って言われたら何も言えませんがルールやSCMの穴を見付けてしまったら違和感が勝ってします。

1番萎えたのは『ジャッジメントSCM』。

…は?…えぇ?

駆け引きもクソもねぇな。


あの、銃もヤーさんも出てたけど『SCM』をつけてないヤツに色々やらせればいいんじゃないか?ってなりません?そんなん出てくるんだったら脅迫でも陵辱でも薬でもやって無理矢理にでも…って思いつかないかな?場合によっては監禁。
肉体的とか精神的になどやりようはあるはず。変に科学を用いているから説明もなしなので違和感しかない。
ここら辺、ルールの穴過ぎて…ねぇ。
必勝法は他にもありますが長くなるので辞めときます。
なので『ジャッジメントSCM』出てきた時は使ってるヤツを「バカだな」ってのが第一印象です。
(ジャッジメントSCMについてはかなりのネタバレになるのでここでは伏せます)

キャラも使い捨てみたいな扱いも多く、勝負も緊張感さえない。駆け引きもチープ。心理描写もそこそこで『奴隷』って言うワードも重みが無い。
『SCM』を取り付ける駆け引きや緊張感さえない…アホなの?1番面白くなりそうなのに。
こーゆージャンルをやるならせめて他作品の『ダンガンロ○パ』や『賭○グルイ』等の駆け引きやハラハラ感を演出してほしかった。…もしくは『ようこそ実力至上主義○教室へ』くらいのルール開示(数秒で良いから全部)してほしかった。
よくコレここまで穴があるのに連載やアニメ化したな。編集部、編集者、編集長は気にならなかったのかな?売れたらそれで良いって感じなのかな?

良かったとこ…?
う〜ん…『ズシオウマル』かな。

私からは全くオススメしません!
本当につまらなかったです。ルールや『SCM』の穴に目を潰れるならアリ?かも?

ルールの後出し多め、『SCM』が科学者達が発明してたけど脳にどういう原理でどういう風に作用するのか等の説明もなし。うわぁ…。
え?累計320万部?(電子含む)。
マジか…。

投稿 : 2025/01/04
♥ : 3
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