奴隷で恋愛なTVアニメ動画ランキング 5

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68.2 1 奴隷で恋愛なアニメランキング1位
現実主義勇者の王国再建記 第二部(TVアニメ動画)

2022年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (193)
688人が棚に入れました
異世界に召喚された相馬一也は、エルフリーデン王国の王位を譲られて以来、辣腕を発揮し、王国の政治・財政を立て直していった。そして、三公の反乱とアミドニア公国の侵略を鎮圧したソーマは今、新たな問題に直面していた。 アミドニアの首都ヴァンを失い敗走した公太子ユリウスが復権を狙い、人類宣言の盟主たるグラン・ケイオス帝国に助けを求めたのである。始まる女皇マリアの妹ジャンヌ・ユーフォリアを代表とする帝国との交渉。それはエルフリーデン、アミドニアだけではなく、大陸全体の運命をも左右するものとなろうとしていた――。

声優・キャラクター
ソーマ・カズヤ:小林裕介
リーシア・エルフリーデン:水瀬いのり
アイーシャ・ウドガルド:長谷川育美
ジュナ・ドーマ:上田麗奈
ハクヤ・クオンミン:興津和幸
トモエ・イヌイ:佳原萌枝
ポンチョ・パナコッタ:水中雅章
カルラ・バルガス:愛美
ロロア・アミドニア:M・A・O
マリア・ユーフォリア:金元寿子
ジャンヌ・ユーフォリア:石川由依
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

現在の国際情勢からも、考えさせられる21話目

あにこれはアニメを楽しむサイトなので、あまり政治的なことは書きたくない(し、書いてきていない)のですが、流石に今回は看過できないですね。

本作の21話目。東西の争いを寓話的に表していました。レビューではアニメ内の寓話を要約して引用し、私感を述べます。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
東の神様は言いました。世界は平等なのだ。人間よ、同じ分働き、同じ作物を得なさい。

西の神様は言いました。世界は自由だ。人間よ、自由な時間に働き、自由に作物を採りなさい。

困ってしまったのは、その境界付近の国々です。その2つの神様を信じる国々が争ったら、真っ先に被害を受けるのは自分達だからです。

そこで、3つの取り決めをしました。

1つ。武力で国境線を変更するのはやめましょう。

1つ。それぞれの国の民族に自分のことは自分で決められる権利を与えましょう。

1つ。東西の国の文化交流をはかって仲良くなりましょう。

この寓話の結末は、東の神の勢力が力を失い、全面戦争にはなりませんでした。しかし、後に多民族国家で、ある民俗が独立をはかります。これを認めれば、「武力による国境線の変更」を認めることになり、認めなければ「民族自決の原則」に反する。この矛盾に、ルールを定めた国々は身動きがとれなくなります、、、。


このアニメでは、主人公の国が人類宣言に加盟していないため、人類宣言加盟国から侵略され、撃退したことで1都市の統治を獲得。しかし、大国の要請によりそれを変換。後に、返還後の圧政に苦しんだその都市が主人公サイドの治世を求めて国を変える。それに他の都市も連鎖的に主人公サイドに流れ、結果として、国家が併合されてしまいます。

アニメが放送されたのは、一昨日の2月27日。

びっくりするくらい、今のウクライナの情勢に近いんですよね。ただし、プーチンには正当性が全くなく、単なる侵略戦争ですが、本作には、主人公サイドに正義があり、併合される国の国民もそれを望んでいるように描かれている点が違いますが。

これは、アニメの制作サイドも気を遣ったのだろうと思います。あまりにもタイムリー過ぎる上に、主人公が(結果的には)ほぼロシアと同じことをしているのだから。

資本主義と共産主義の戦いなんて、目には見えないものの戦いなんだから、紙とペンで存分に行えば良い。議論をすること自体は悪いことではない。

ただし、それを暴力によって押し通そうとした時点で、言論や思考の戦いは放棄した=負けを認めた ということになる。

「暴力とは弱さの1つの形である」D・ロシュトー

フランスのサッカー選手の言葉だが、真実を捉えていると思う。それが戦争であれ、私たちの身近な人であれ、暴力に訴える人は本質的には弱い。

それは間違いのない真実だが、暴力の恐怖というのはその理不尽なまでの威力にあって、いくら自分が正しいことを言い、相手が間違っていたと証明しても、ナイフで刺されたら死んでしまう。死んでしまっては、いくら正しくたってなんにもならない。まさに、今、ウクライナの方々はそういう理不尽さと戦っているのだと思う。

今回の戦争は、ロシア国内でも批判されているという。そりゃそうだ。ロシア人でも戦争を望まない人の方が多数ではあるだろう(と信じたい)。

私の知り合いに、柔道で全日本3位になった人がいて、昔、プーチンと練習試合をした(リアルに)。プーチンも全く弱いわけじゃなかったが、全日本選手権に出たら1回戦負けかなという感じだったらしいが、結局彼は投げることは出来ず、判定で負け(てあげ)たらしい。

やはり、こういう状態が良くないんだと思う。

「人間の行為のなかで、何がもっとも卑劣で恥知らずか。それは、権力を持った人間、権力に媚を売る人間が、安全な場所に隠れて戦争を賛美し、他人には愛国心や犠牲精神を強制して戦場へ送り出すことです」

「何百年かにひとり出現するかどうか、という英雄や偉人の権力を制限する不利益より、凡庸な人間に強大すぎる権力を持たせないようにする利益のほうがまさる。それが民主主義の原則である。」

「民主共和政治の建前──言論の自由のおかげである。政治上の建前というものは尊重されるべきであろう。それは権力者の暴走を阻止する最大の武器であり、弱者の甲冑であるのだから。」
 
「戦争の90%までは、後世の人々があきれるような愚かな理由で起こった。残る10%は当時の人々でさえあきれるような、より愚かな理由で起こった。」

全て、「銀河英雄伝説」の「ヤン・ウェンリー」の言葉です。彼の言葉を借りるのなら、正に今、「残る10%」の戦争が行われているわけです。

「私は少し歴史を学んだ。それで知ったのだが、人間の社会には思想の潮流が二つあるんだ。生命以上の価値が存在する、という説と、生命に優るものはない、という説とだ。人は戦いを始めるとき前者を口実にし、戦いをやめるとき後者を理由にする。それを何百年、何千年も続けて来た……」

1日も早く、この戦争が終わり、ウクライナに、そして世界に平和が訪れることを願っています。
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目 ☆4
交渉になかなか見所があった。引かないところは引かない。交渉だけで1話使うのは、転スラ2に通ずるな。アニメスタッフの気概は感じる。

2話目 ☆3
ジャンヌ、以外に抜けている。普通、魔族が魔獣を食べた段階で、2つの種族が異なる、もしくは主従の関係にあることくらい分かるだろ。魔族は少数民族。結局、現代無双はあるな。

3話目☆3
アニメだからだが、即決即断だな。王女、恋のライバルかな(笑)? 

4話目 ☆3
あの王様、やり手なのか? ちゃんと死んだ? 実は生きてる感じかな。

5話目 ☆4
ガッツリ殺したな。残虐の使い方。そしてラブコメ(苦笑)

6話目 ☆2
これは、、、かなりチートが進みそうだな。

7話目 ☆3
ジーニャの存在は、この作品のバランスを崩しそうだな。あ、逮捕案件だw まあ、今併合しなくても、結果的に3国と国境は接するわけだから、とりあえずもらえるもんはもらっといた方がデメリットは少ないわな。人材活用は良いけどね。

8話目 ☆4
人材を集めるのは良いけど、わりと使い捨てなのがな。資本主義と共産主義の争いと、そこに挟まれた国。狙ったわけじゃないだろうけど、ウクライナ問題にタイムリーだな。んで、今回ウクライナが最大の被害者であり、どう考えても無理筋なロシアの言い分なのに、拒否権でそれを通せるという、絶望感。やはり、大国の枠組みだけで物事を決めると歪みがでるよな。

9話目 ☆


10話目 ☆
ちょっとあれだな、抗生物質とかまではご都合主義になるな。北斗(笑)

11話目 ☆


12話目 ☆

{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 17

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「さあ、交渉をはじめよう」革新的な勇者の改革は外交の舞台へ――。

この作品の原作は未読ですが、TVアニメ第1期は視聴済です。
第1期と第2期の放送間隔が半年しか空いていないので、最初から第2期ありきで制作されたのでしょう。

異世界の召喚された主人公ソーマを演じるのが小林裕介さん、そのソーマを召喚したエルフリーデン王国の王女…一番ソーマに近しい存在であるリーシア・エルフリーデンを演じていたのがいのりちゃんという、リゼロにおけるスバルとレムりんという間柄をどうしても思い出さずにはいられませんでした^^;

ソーマとスバルはキャラ設定が大きく異なっていますが、リーシアとレムりんの一途で一本筋の通ったところが似通っていたからかもしれません。


異世界に召喚された相馬一也は、エルフリーデン王国の王位を譲られて以来、
辣腕を発揮し、王国の政治・財政を立て直していった。

そして、三公の反乱とアミドニア公国の侵略を鎮圧したソーマは今、
新たな問題に直面していた。

アミドニアの首都ヴァンを失い敗走した公太子ユリウスが復権を狙い、
人類宣言の盟主たるグラン・ケイオス帝国に助けを求めたのである。

始まる女皇マリアの妹ジャンヌ・ユーフォリアを代表とする帝国との交渉。
それはエルフリーデン、アミドニアだけではなく、
大陸全体の運命をも左右するものとなろうとしていた――。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

この作品を視聴する人なら一度は脳裏をよぎる疑問があると思います。
既にご存じの方以外ですけど…
それは、「マキャヴェッリって誰?」です。

事あるごとにソーマは「マキャヴェッリ」という単語を口癖のように連発していましたから…
思わずググらずにはいられませんでした^^;

以下はwiki先生からの抜粋です。

名前は、ニッコロ・マキャヴェッリという、イタリア、ルネサンス期の政治思想家、フィレンツェ共和国の外交官だったそうです。

主な著書に『君主論』や『戦術論』があります。
理想主義的な思想の強いルネサンス期に、政治は宗教・道徳から切り離して考えるべきであるという現実主義的な政治理論を創始したとの事です。

『君主論』では、君主の在り方や権力を保持し続けるための方法が論じられていることから、現代主義の古典として位置付けられているそうです。
また、『戦術論』についても後世の軍事学の研究に影響を与えた一冊になっているとか…

確かに現実主義を基調とした思想は、この作品のタイトルとの合致していると言えます。
ですが、個人的には一つの思想に傾注し過ぎるのはある意味危険なことだと思います。

今、置かれている状況がマキャヴェッリの提唱した理論に合っていれば問題ないんだと思いますが、無理矢理その理論に嵌め込むこと必ず歪が起こると思うんです。
色んな思想や考え方があります。
無数にある選択肢の中からの最適解がマキャヴェッリの提唱した理論なら良いんですけどね。

一方、物語の方ではソーマのハーレムが着々と出来つつある感じがしましたね。
現在のところ、辛うじて片手で収まる範囲に留まっていますが、きっとそのうち片手だけじゃ足りなくなるんでしょうね。
まぁ、それだけの実績を積んできた人格者ですから違和感はありませんでしたけどね。

この様な作品を見ると「ハーレム良き…」と思ったことが無い訳じゃありません^^;
でも、それと同時にそれだけの人を養えるほどの甲斐性が無いことも自覚しましたけど…
まぁ、私の様な一般人には無縁の世界ということですね。

物語は内政から外政に軸足を移しましたが、個人的には第2期の方が俄然面白いと思いました。
外政に精を出すためには国内基盤が盤石でなければなりません。
その点においてもしっかり描かれていたのは良かったと思います。

これからソーマが何人の妻をめとるか…じゃなく、今後のフリードニア王国行く末が楽しみです。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、いのりちゃんによる「REAL-EYES」
エンディングテーマは、あいみんによる「LIGHTS」
どちらの楽曲も大好きでした…というより、どちらの声優さんも大好きなので耳が幸せでした。
一つ気になるのがあいみん…
持病の治療に専念するため、活動を制限されているとのことです。
たいしたことなければ良いのですが…

1クール全13話の物語でした。
最終話にはトンデモ展開が用意されていましたね。
でも、これで色々と腑に落ちた気がします。
原作は未だ連載が続いているようですが、原作のストックも十分残っているようです。
ここで終わったら悲しいので、是非続編を制作をお願いします。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 13
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

君主論信者の王国粛清記

同期に放送している天才王子~と内容が完全に被っているのですが、作画やデザインは天才王子のほうが出来がいいので見た目で負けています。
ただ、天才王子のほうは天才とは名ばかりなので、中身はこっちのほうがまともかも。

現実主義勇者は高校生の秀才が国動かしていて、周りがそれに合わせて無能になっている感じ
天才王子は凡人が国動かしていて、周りがそれに合わせて無能になっている感じ。
五十歩百歩?

1期と良いところも悪いところも一緒。

良いところはヒロイン可愛いのと、国の内政や外交を自由に動かせる立場で王国再建するという設定が面白い

【悪いところ】
作画以外は天才王子よりマシですが、やっぱりこんなんでうまくいくわけないっていうのがあるので素直に見れないところありますね。

・困難はいっぱいあるけどあまりにもうまくいきすぎで、シミュレーションゲームのイージーモードを見ているみたい。
・作画がかなり悪い。
・テンポが悪い
・主人公は頭良いと思うけど、知識の応用とか経験から学んだこととか考察とかがなくて、マキャベリの君主論をそのまま引用するだけで創意工夫がないところなど見ても一生懸命教科書読んで勉強しましたーって感じがするんですよね。

君主論を崇拝しているのはわかったから、ソウマ自身はどうしたいの?ってコト。
君主論に操られているようではとても英雄にはなれない。

こういう人は天才じゃなくて秀才って言う。
よく勉強してて偉いねーっておじいちゃんおばあちゃんから褒めてもらえるやつ。
天才として描きたいなら、「教科書」の枠を出ないと無理だと思う。

{netabare}
・腐敗に関わった貴族の粛清が最後は雑すぎたかな。
今までの内乱も裁判も貴族の腐敗が根源にあるとわかっていて、なんとかするために1クール以上使って動いてきたのに
最後の最後に「斬れ」の一言で片づけていました。
君主論に出てくる残虐性を見せるパフォーマンスとしての意味が強かったと思うけど
そんな強引な粛清ができるなら、腐敗を調べさせてもっと早くやれば良かったのでは?

・他国の君主に説教するところは主人公の株まで下げたかな。
一応は国のトップ同士の交渉なので、挑発や説教は権威を下げるだけかと。
恰好はラフだったし最初から貴賓との会談っていう気持ちはなく見下していたんだろうと思いますが。
そうなると主人公の人間性に共感できなくなってくる。
{/netabare}
・安易にハーレムになるのでラブコメの面白さがない。
可愛いヒロインいるんだから、そっちをもっと大事に扱えばいいのに。

【シナリオ】
わかりやすくて見やすいのはいいと思いました。
{netabare}
でもヴァン領土を1期の時に手に入れた時の感じから、今後帝国が干渉してきて返還することになるけど、主人公の統治のほうが良かったってなって問題が噴出する流れかな?と思っていたら、長い時間かけてだいたいその通りになってひねりがないなあって思った。{ne {/netabare}


【感想】
シナリオは主人公の有能さがあまり感じられず残念ですが、滅亡寸前の王国を立て直すというコンセプトは面白いですね。
細かいことを気にしなければ普通に面白いアニメだと思います。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 19

80.8 2 奴隷で恋愛なアニメランキング2位
魔法使いの嫁(TVアニメ動画)

2017年秋アニメ
★★★★☆ 3.6 (975)
4372人が棚に入れました
羽鳥チセは15歳の少女。
彼女は帰れる場所も、生きる理由も、そのための術も、何も持ち合わせていない。
ただひとつ、生まれ持った特別な力を除いて。

そんなチセを弟子として、そして将来の花嫁として迎え入れたのは、
異形の魔法使い・エリアス。
自然と寄り添い、悠久の時を生きる魔法使いの暮しの中で、
チセは大切な何かを少しずつ取り戻していく…。

これは、世界の美しさを識る為の物語。

声優・キャラクター
種﨑敦美、竹内良太、内山昂輝、遠藤綾
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

異形の魔法使いに落札された『見える子ちゃん』の再生物語

性格俳優、という言葉があります。
これ、もともとはcharacter actorsという言葉の邦訳なのですが、
日本では概ね、英語本来の意味とは違う使われ方をしているみたいですね。

英語でのニュアンスは『名脇役・助演者』に近いものです。

役者本人の名前が大々的に宣伝される主演俳優たちとは違い、
鬼看守、薬物中毒者、狂気的信奉者など、
特殊な役柄に完璧になりきり作品を成立させる役者さんたち。
  名前は知らないけど見たことあるある、
そんな名助演者に対し、尊敬の念を込めて使われる言葉なのだとか。

それに対して日本では、主演・助演を問わず、
  『特徴的な芝居に秀でた役者さん』
のことを、芸を褒めるニュアンスで指し示す場合が多いようです。
『個性派俳優』という言葉と混同気味、みたいな。

もちろん英語的な意味あいでの使い方をするケースもあり、
あくまでも傾向としての話ですが。
ちなみにネットで検索を賭けたところ、
いまのところ『性格声優』という言葉はないようですね、僕調べ。


さて、そんななか、本作『魔法使いの嫁』で
主人公の羽鳥智世(ちせ)を演じた種﨑敦美さんは、
特定の方向をもったお芝居で僕が強く惹きつけられる役者さんの一人です。


で、まずは作品本編のお話から。

{netabare}
智世は幼いころから『この世ならざるものが見える』体質でした。
ぶっちゃけた言い方をすると『見える子ちゃん』だったわけです。
それは血筋的なもので両親もそうだったのですが、
周囲から気味悪がられ、家族以外に心を通わせられる人はいませんでした。

そして、父親が弟を連れて家を出てから、人生が大きく崩れていきます。

母子に対する『この世ならざるもの』の悪意ある手出しが激増し、
女手一つで智世を育てる母親は心身ともに疲れ果て、
わが子を殺すことだけは寸でのところで思いとどまるものの、
智世の目の前で飛び降り自死をしてしまいます。

その後、引き取り手である親族を転々とするものの、
誰とも心を通わせることができません。
それどころか『薄気味悪いやっかいもの』扱いを受け、疎まれ続けます。

実の母親に殺されかけたトラウマ、周囲からの冷たい視線。
居場所や存在理由を全く見いだせず傷つき果てて自暴自棄になった彼女は、
自分の身を『闇のオ-クション』に出品してしまいます。

  智世は、特殊な魔法体質を持つ『スレイ・ベガ』という希少種でした。
  それがゆえに、好事家たちから注目され、
  日本円で億単位の競りが展開していきます。

そして500万ポンド、約七億五千万円という価格で、
異形の魔法使いエリアスに落札されたことから、
幻想的で時に美しく、時に切なく、時には目を背けたくなるほど残酷な世界で、
智世の第二の人生が幕をあけます。
{/netabare}

物語は、傷つき、疲れ果て、絶望の淵に立ちすくんでいた智世が、
この世ならざるものたちと触れ合っていくうちに、
少しずつ自我を取り戻し、
おそるおそるながらも新しい人生を歩み始めていく様が、
濃密に、そして繊細に描かれています。

物語そのものは美しくて心温まるお話ばかりではありません。
陰惨であったり残酷であったり、
ふわふわした幻想物語とは一線を画す厳しい仮想現実がそこにあります。

それでも、個々のエピソードが終わったとき『嫌な感じ』が残りません。
むしろ、美しさや癒しといったプラスの余韻が漂います。

  それは智世が持つ非現実的なまでの基礎性質、
  『善』と『母性』を合わせ持つ、
  全てを許してしまう美しき器のなせる業なのかな、と。
{netabare}
一般的な感覚では恐ろしい怪物であるエリアスの真の姿を見ても、
恐怖するでも嫌悪するでもなく、
ただあるがままを受け入れ、慈しみをもって抱擁します。

個々のエピソードに登場する異形たちも、
智世によって許され、荒ぶる魂を鎮めていきます。

なんせ最後には、
諸悪の根源だったカルタフィルスまで許してかくまっちゃうのですから、
もはや『お人好し』なんてレベルではなく、
慈愛に満ちた『神』の領域に踏み込んじゃっています。

最初は飼い主・指導者じみていたエリアスが、
いつの間にか母親に甘える子どもみたくごろにゃんとなってみたり、

  いやほんとすげえなこの人、

と感心させられるシ-ンが随所に出てきます。
{/netabare}

特筆すべきは、
智世自身はあくまでも自己主張の少ない『ふつうの女の子』だということ。
正統派ヒロインみたく大層な正義感や使命感をもっているわけでなく、
単純に、そのときの『心の赴くまま』に振舞っているだけなんですよね。

  ようするに、
  単に目の前の相手が『かわいそう』だから『助けたい』と思うだけ。

世の中のかわいそうなものを全部なんとかしたいとか、
世界から邪悪なものを排除したいとか、
そういう大それたことは全く、一切考えていないんです。

だから、鼻につくような『あざとさ』がありません。
「みんながいるから、私、がんばれるっ!」なんてことも言いませんし、
実に安心して見ていられるヒロインです。

{netabare}
そして物語終盤、智世は自分の過去と対峙することになります。
そこで思い出したのは、
両親から十二分に愛されていた幼き日の自分自身の姿。

その愛情が彼女の基礎性質を形作っていることに疑いの余地はありません。
また、その日々を思い出したことで、
自分が『生まれてきたこと』を心から肯定できるようになります。

それが、最終話Bパ-ト、智世の決断へと繋がります。
自らの意志で『まほよめ』になることを選択した智世の花嫁姿には、
物語序盤で彼女を覆っていた影やよどみが一筋もありません。

  よかったね、と心から祝福してみたり、
  なんでこんなやつと、とやっかんでもみたり。
  まあ、このひとらしい選択ではあるのだけれど。
{/netabare}

僕的な作品のおすすめ度としては、Aランクです。

ただし、中二的な能書き魔法バトルが好きでたまらない方や、
アニメのヒロインはきゃぴきゃぴしてなんぼ、
みたいに考えている方には、全く、これっぽっちもおすすめできません。

この作品は異形の世界をモチ-フにしていますが、
ダ-クファンタジ-にありがちな
「オレかっけぇ」「オレつえぇ」的要素がほとんどないんです。

物語の骨格を成しているのは、
異形によって家族や居場所を損なわれ自我を見失ってしまった少女が、
その異形と暮らし様々な経験を重ねることによって、
自己の本質に還り、失われた自我を少しずつ取り戻していくという、
けっこう王道的な『再生物語』なのです。

  そういうのはめんどくさくていやだ、
  わかりやすくバトってデレて谷間とかパンツ出して欲しい、
  そういう方は見るだけ時間のムダではないかと。

  逆に、アニメにもきっちり『人のカタチ』を求める方には、
  なかなか骨のある作品に仕上がっています。


映像もほぼほぼきれいで、
カットによっては息をのむほど幻想的で美しく、迫力もあり、
鑑賞に値するレベルにあると思います。

ただ、残念ながらときおりは
  もうちょっと頑張ろうか、原画さん
とか感じさせられたり、あるいは
  総作監のキャラデ無視してんじゃね~ぞ、原画
とか思わされたりしますが、それはまあ、飲み込むしかありません。


音楽に関しては、前期のOP、
JUNNAさんの『Here』が出色のできですが、
劇伴やEDも、世界観をしっとり表現していて一聴の価値ありかな、と。

それでも僕が音楽に3.5という渋めの評点をつけたのは、
後期OPがあまりにも残念だったからです。
なんというのか、May'nさんに仕事をあげるためねじ込んだ、みたいな。
{netabare}
  他の方のレビュ-を拝読していても、
  後半ダレた、失速したという声がわりとあって、
  実を言うと僕も、初見のときは同じ印象を受けていました。

  後期のOPがあまりにも凡庸というか、
  既視感ばりばりのありきたりな世界観というか……
  単にそれを視聴しているだけで
  前期で構築したエッジみたいなものが霧散していく感じがしました。
  あ~、なんかその辺のファンタジーと一緒になっちったなあ、みたいな。

  で、二周目に思い切ってOPを全飛ばしして視聴したところ、
  え゛、作品のテンションぜんぜん落ちてないじゃん、と気づきました。
  ウソだと思う人、いっぺんやってみてくださいまし。

  May'nさんを悪く言うつもりは毛頭ありませんし、
  曲そのものの良し悪しの話でもありません。
  ただ、ひたすら、あまりにも、作品の世界観とかけ離れすぎです。
  なにしてくれてんだFlyingDog。

  ニセコイの二期と同じように
  (あれも決してLiSAさんのせいじゃないですが)
  OP楽曲が作品の世界観をチ-プにしてしまった代表例ではないかと。
  そういえば『くまみこ』もひどかったなあ。
{/netabare}


そして、僕的に、この作品の最大の魅力は
種﨑敦美さんによる智世の演技、人物造形です。
ああ、やっとマクラとつながった。

物語序盤で種﨑さんの演じた智世の語り口調は、
心が傷付いた少女のそれではなく、
もっと直接的な『身体的な重傷者』のそれであり、
包帯ぐるぐる巻きの少女が喋っているような響きがありました。

  僕はまず、この人物造形に鳥肌が立ちました。

おそらく種﨑さんは『本当に心が傷付き果てた人』がどうなるのか、
ものすごく深くシミュレートしたのだと思います。
そして『心の傷』と『身体の傷』の境界線が曖昧になるところまで、
行きついたのでしょう。
だからあの、包帯ぐるぐる巻きみたいなお芝居になったのだと愚考します。

その後、智世が回復するにつれて種﨑さんの芝居も変化していきます。
この繊細な使い分けがなんとも素晴らしい。

第一話で自分の『見える目』に関し、
「よかったことなんて一度もないっ!」と血を吐くような声で叫んだ智世。
それに対してエリアスが言った。
「いつか君がよかったと思えるようにしよう」という言葉。
それが『約束』として少しずつ果たされていく経過が、
種﨑さんによる繊細なお芝居によって見事に表現されていきます。

  最終話Bパ-トの台詞を聞いていると、
  前半~中盤と同じような話し方をしているにもかかわらず、
  そこにあった『戸惑い』や『自我のうすさ』が消え、
  ただの口ベタになっているのがよくわかります。

智世の周りを取り巻くキャラも、実力派・ベテラン勢がびっしりです。
さして出番の多くない役柄にだって、
森川智之さん、梅津秀行さん、浪川大輔さん、石田彰さん、諏訪部順一さん、
井上喜久子さん、三石琴乃さん、大原さやかさん、早見沙織さんなどなど、
ものっそいメンツが普通にキャスティングされています。

だからもう、作品としてお芝居の安定感がハンパない。
荘厳なものは荘厳に、思慮深いものは思慮深く、
台詞の奥にある心のヒダみたいなものがびしびし伝わってきます。

だけど、そんな中においても、
種﨑さんの演じた羽鳥智世は出色の出来でした。
この作品は種﨑さんなくして成立しなかった、と言っても過言ではないでしょう。

ちなみに種﨑さんは僕にとって、
『となりの怪物くん』夏目あさ子役で「おおっ」と思わされ、
それ以来、気になって注目している役者さんです。

あさ子のような三の線からおねいさん、少年役まで幅広く演れる方なのですが、
とりわけ僕が強く惹かれるのは、
やっばり特徴ある『ボソボソ系』のお芝居です。

代表的なところで言うと、
  『残響のテロル』 三島リサ
  『響けユーフォニアム』 鎧塚みぞれ
  『青ブタ』 双葉理央
  『ファントムトリガー』 ムラサキ  などかな。

種﨑さんの特徴は、それぞれの「ぼそぼそ喋る」理由を咀嚼して、
個々の役柄を繊細に演じ分けているところです。
つまるところ役柄に対する理解・解釈がとてつもなく深い。

  だから、似たようなお芝居をしていてもテンプレが一切ありません。
  リサ、みぞれ、智世あたり、
  全部一緒になってもおかしくないのに、全部違う。全然違う。

  また、同じようなアンニュイ調の役どころでも、
  理央とムラサキでは、やっぱり、まるっきり違っています。

いやほんとすごい人です。
もちろん他の役どころがダメなわけじゃないのですが、
このテの役どころを演らせたら当代随一なんじゃないのかな、と。


ちなみに、雨宮天さんが演っている『見える子ちゃん』ですが、
KADOKAWAが原作のボイス付き試し読み動画をネット公開してまして、
そっちは種﨑さんが見える子ちゃんを演じております。

Youtubeなので簡単に視聴できますので、
興味のある方はぜひ、お試しあれ。
けっこう、というか、かなりイイです。種﨑さんらしいや。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 25
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

温かい

人身売買でとある魔法使いエリアスに買われたチセが彼との生活や周囲に発生するできごとによって心を取り戻していくハートフルな物語。
命の危機に何度も晒されつつも、彼との絆を深めていく。
それに、時折助けてくれる仲間がいてまた心が温まる。

ドラゴンとのやり取りも良い。

個人的に一番心に残っているのはリャナン・シーの話。
{netabare}人間の命を奪う存在なのに、とあるリャナン・シーは老人ジョエルを殺さず、ずっと見ている。リャナン・シーの姿は通常人間に見えない。しかし、純粋に体が弱って寿命が近いジョエルに対して、チセがなんとかしようと奮闘する。リャナン・シーとジョエルの間の愛に感動した。{/netabare}

あとはチセと母親について
{netabare}夫が消えて精神的に追い込まれた母親(チセと同じく普通の人間が見えない物を見ることができたような気がする)がチセを殺そうとしたことがあり、そのことを悔いて自殺したような節があった。話の詳細は忘れてしまった。確か彼女は親に捨てられ恨んでいたが、本当は愛をもらっていたと気付いたという内容だったはず。{/netabare}


OP
Here 歌 JUNNA
You 歌 May'n
ED
環-cycle- 歌 糸奇はな
月のもう半分 歌 AIKI & AKINO from bless4
The Legend of "The Ancient Magus Bride" 歌 Jessic
挿入歌
リベロアーラ 歌 坂本美雨
君の行方 歌 KOCHO
精霊の舞 〜Dance of the Spirit 歌 KOKIA
アンノドミニ 歌 北條響
イルナ エテルロ 歌 竹中大地
Rose 歌 Kaco
花数え 歌 新居昭乃
Story 歌 コトリンゴ
主題歌は岩里祐穂さんの作詞多め。さすがです。
糸奇はなという歌手が出てきてびっくり。どんな人なんだろう。不思議な歌声。
bless4はやはり好き。2人のハーモニーは心地よい。


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
1. April showers bring May flowers.
この世界で生きることを投げ出そうとした15歳の少女、羽鳥チセ。彼女はオークショニアの誘いに応じ、自分自身を商品とし、闇の競売会へ出品する。ヒト為らざる魔法使い、エリアス・エインズワースに500万ポンドの値で買われ、将来の「花嫁」として迎えられたとき、チセに見えていた世界の姿が変わり始める──。

2. One today is worth two tomorrows.
ロンドンの片隅にある古書店。その本当の姿を知るものは少ない。エリアスに連れられ、彼が古くから取引を続ける魔法道具の工房を訪れたチセ。工房の女主人アンジェリカは、チセにささやかな魔法を教えるが……。夜の愛し仔(スレイ・ベガ)のまことの力が、彼女の記憶の一欠片を水晶細工として蘇らせる。

3. The balance distinguishes not between gold and lead.
教会の命を受け、エリアスを監視する聖職者サイモン。彼はエリアスたちに、3つの案件を伝える。そのひとつを解決するため、最果ての地に赴むいたチセとエリアス。そこではエリアスの師、リンデルと、滅びに瀕した旧き種族が待っていた。今まさに大地に還らんとする古の者と共に、チセは天空を馳せる夢を見る。

4. Everything must have a beginning.
猫の集う街、ウルタール。その昔ウルタールでは、人と猫との間に悲しい出来事があった。惨禍の中心にいたものの魂は澱みとなり、代々の猫の王により封印され続けている。ふたつ目の案件を解決するため、この街を訪れたチセとエリアスは、そこに残る妄念を浄化しようと試みるが……。

5. Love conquers all.
魔法使いに騙された、哀れな少女。魔術師レンフレッドにはそう見えていた。だがチセは、エリアスの真意がどうあれ、彼から離れるつもりはなかった。なぜならエリアスは、初めて自分を必要としてくれた存在だから。チセは澱みの中に歩みを進め、惨禍の真相を知る。そして悲劇の裏側には、ひとりの少年の姿が──。

6. The Faerie Queene.
本来還るべきところに、還っていく魂たち。それを見送りながらチセは自身を想う。ウルタールの一件から10日と数日が過ぎても、チセは眠りに落ちたままだった。彼女を案じるエリアスとサイモンの前に、予期せぬ客が姿を現す。それは常若の国(ティル・ナ・ノーグ)の主。ブリテンの夜の一角を統べるもの。妖精たちの女王(ゲアラハ)、ティターニア。

7. Talk of the devil, and he is sure to appear.
たなびく漆黒の毛並み、燃えるように赤い目をしたその犬は、チセのことをイザベルと呼んだ。教会からの最後の案件は、とある墓地に現れた黒妖犬(ブラック・ドッグ)の検分。だが、見定めるべき彼の助けでチセはからくも難を逃れる。一方、レンフレッドの弟子アリスもまた、黒妖犬(ブラック・ドッグ)を手に入れるべく動き出していた。

8. Let sleeping dogs lie.
アリスは変貌したエリアスを見て、直感する。これは、けしてヒトには為り得ぬものだと。レンフレッドとアリスを操り、黒妖犬(ブラック・ドッグ)を手に入れようとしていた魔術師カルタフィルス。彼の「作品」にチセを傷つけられたエリアスは、今までとは違う異様な姿と力の片鱗を見せる。エリアスを知る魔術師たちは彼をこう呼ぶ。裂き食らう城(ピルム・ムーリアリス)、と。

9. None so deaf as those who will not hear.
教会の案件はすべて片付き、おだやかな日々が戻ってくるはずだった。だが最後の一件以来、エリアスの様子がおかしい。チセが初めてエリアスの部屋で一夜を過ごした翌朝、彼はこつ然と姿を消した。チセの身を案じるアンジェリカの言葉も、人より純粋なルツの言葉も、戸惑うチセの心を上滑りしていく。

10. We live and learn.
海豹人(セルキー)と共に竜の背に乗り、チセはリンデルの許へと向かう。自分だけの、魔法使いの杖を作るために。エリアスに「飼われるままでいる」ことを拒もうとしないチセを見かね、リンデルは夜の闇の中からエリアスを見出した頃の話を始める。そのころ、独り残るエリアスに魔術師たちの集う場、学院(カレッジ)からの便りが届いていた。

11. Lovers ever run before the clock.
ヒトのふりをしたがる、奇妙な為り損ない。いつしかエリアスが己のことを話さなくなったのは、師の教え故か、人への苦い記憶がそうさせるのか。リンデルの二つ名、百花の歌(エコーズ)の由来。その歌は雪解けの水音に似て、朗々と風に乗り、季節外れの開花と妖精たちの輪舞を現出させる。そして歌の魔力はチセが覗き込む水面(みなも)を水鏡に変えた。水鏡の向こう側に見える姿はもちろん──。

12. Better to ask the way than go astray.
完成した杖に触れた瞬間、チセは幻視する。無数の閃光の先に広がる、霧に包まれた巨木の群れを。縁(えにし)の糸が結ばれ、彼女はかつて見送った竜と再会する。自ら命を絶った母、自分を置いていった父。その本当の思いは、今となっては知る術はない。しかし今のチセには、伝えたい思いと言葉、そして伝えるべき相手がいる。切なる思いは彼女をはるか遠く、帰るべき場所へと運んでいく。

13. 「魔法使いの嫁」スペシャルダイジェスト
人間とヒトならざるものたちの交流。息を呑む幻想的な光景。ときに残酷さを突き付けつつも、どこか温かみのある世界と、そこに生きる者たちの心の機微-。10月から好評放送中のアニメ「魔法使いの嫁」。第13話の放送を前に、第1話~第12話の見どころを振り返ります!もう一度見たい方も見逃してしまった方も、どうぞお楽しみに!

14. East, west, home's best.
野に森に、夏の足音が聞こえだした頃。風に舞う綿蟲たちの毛刈りに追われるチセとエリアス。竜の国から急ぎ帰ったチセには、伝えたい想いがあるはずだった。しかし、それはいつ、どんな形で伝えたらいいのかが解らない。そしてエリアスもまた、己の中に芽生えた理解しがたい感覚に戸惑っていた……。

15. Looks breed love.
愛した相手に才を与える代わりに、命を奪う吸血鬼、リャナン・シー。彼女にとって愛すことと、大切な存在を失わぬため愛さぬことは、どれほどの違いがあるのだろう。彼女の想い人、ジョエルの命は尽きかけていた。その胸の内には、薔薇の園で見た一瞬の幻としてリャナン・シーの姿が焼き付いている。終わりが訪れる前に、惹かれ合う二人をひと目だけでも会わせたい。そう強く願うチセは、彼らの為に出来る事をやろうと決意する

16. There is no place like home.
行き過ぎた魔力の行使に悲鳴をあげるチセの体。チセの傷を癒やすため、エリアスは彼女を抱えて妖精の国へ向かう。ティターニアは問う。人の世で疎まれ、魔力に耐えられぬ愛し仔と、人の為りそこないと謗られる茨の魔法使いが、なぜ人の世に居続けるのかと。魔法使いという人と交わる生き方をエリアスが選んだ理由とは。

17. God's mill grinds slow but sure.
野山は雪をまとい、旧き女神と神獣が森を闊歩する最も昼の短き頃。クリスマスが近づき、活気づくロンドンの街で再会した魔法使いの弟子と魔術師の弟子。大切な人のためにプレゼントを選ぶ二人だが、何を贈ればいいものか、見当すらつかない。一日を共に過ごし、チセに心を開いたアリスは、レンフレッドと出会った頃を語り始める。

18. Look before you leap.
「弟なんていらない!」少女ステラが口にした心にもない一言は、恐ろしい出来事を引き起こす。弟イーサンは消え、父も母も弟のことを忘れた。イーサンを覚えているのは言葉を発したステラひとりだけ。弟を探すステラと出会ったチセたちは、灰ノ目が仕掛けた遊びに巻き込まれる。

19. Forgive and forget.
チセと友達になったステラは、すぐさまエインズワース邸を訪れた。彼女の子供らしい率直さが、チセには少しだけ眩しい。だがステラが来た直後から、エリアスの様子が落ち着かない。彼はその身を獣のような姿に変えると、逃げるように駆け去った。エリアスの中にまた新たに芽生えたもの。それは痛みにも似た、自分では抑えがたい感情だった。

20. Any port in a storm.
それは夢の中の出来事。しかしチセは確かに彼と会い、言葉を交わした。チセたちがカルタフィルスと呼ぶ魔術師と。そして彼の中で彼と共に在る、何者かとも。竜の国から連れ去られた雛たちを取り戻すべく、学院の魔術師たちと競売場に向かったチセとエリアス。希少な竜の雛を欲する者たちの熱狂が最高潮に達したその時、人間は自らの愚かさを知ることとなる。

21. You can't make an omelet without breaking a few eggs.
空覆う巨影。渦巻く炎の息。生きとし生けるものの恐怖を形にしたかのような古の姿を取り戻した竜は、ロンドンの空を舞う。だがチセにはそれが、戸惑う幼子のように感じられた。チセは竜の背に乗り、彼の魂を鎮めようとする。しかしその代償は大きく、彼女の身に異変が起こる。

22. Necessity has no law.
草色の蝋燭の灯り。塩入りの林檎酒。ローズマリーの枝と百合の花。それが秘密の集いに加わるための招待状。竜の呪いを解く方法を求め、チセとエリアスは古今の呪いに通じる魔女たちの集会に同席する。そして茨の魔法使いは立ち返る。命を繋ぐには、別の命で贖う他はないという真理に。

23. As you sow, so shall you reap.
たとえ自分のためだとしても。自分が求めていた答えが絵空事だったとしても。その人が為そうとしたことは、裏切りに他ならなかった。不死と噂される魔術師はチセに取引を持ちかける。彼がチセの眼前に差し出したもの、そして求めた対価とは――。

24. Nothing seek, nothing find.
人為らざる者の好意は必ずしも人のためになるとは限らない。自明だったはずの事を、己の身と魂で識ることとなった茨の魔法使いは独り荒れ野を彷徨う。ならば、人の好意は人ならぬ身に何をもたらすのか。救いを求めた者と、救おうとした者。カルタフィルスとヨセフの旧き記憶をチセは幻視する。

25. Live and let live.
この国に来て関わった大切な人々と妖精たち。彼らの力を借り、ついにチセは不死の魔術師と対峙する。ふたりの魂を苛んできた痛みや苦しみは、どこか似ていた。苦痛から逃れるために、一方はいつしか己の身を顧みなくなり、もう一方は他者を生贄にし続けた。その繰り返しに果てがないことを今のチセは識っている。少女の想いは、逃れがたき連鎖にひとつの区切りをもたらす。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 13
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

Beauty and the Wizard

[文量→大盛り・内容→感想系]

【総括】
なかなかジャンル分けの難しいアニメ。

ダークな雰囲気漂うファンタジーものだけど、メインは心理描写と、異形との恋愛。そういう意味で大別すると、「美女と野獣」系なのかなと思い、こんなレビュタイにしました。べ、別に格好つけてるわけじゃないんすよ(汗)

作画はかなり綺麗で、ファンタジーに格を与えていました。(1期、2期共に)OPも、何かを決意するような、願うような力強い歌で、作風にぴったりで素敵でした♪

ただ、テンポがかな~りゆっくりで、中盤は魔法にかけられたように、眠くなっちゃうかもしれません(汗) でも、そこを乗り越えてほしいとオススメできる作品です♪

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
異形を観ることが出来き、且つ、異形に好かれてしまう体質から、悲劇的な人生を送ってきた羽鳥智世。

彼女を嫁として弟子として実験台として「買った」(悪魔のような外見をした)エリアスとの、ゆったりとした恋愛ストーリー。

しかし、(少なくとも本作でアニメ化された部分においては)単なる恋愛モノで終わらなかったのが良かった。

これは、智世が自らの足で進む方向を決め、生きることを決意し、世界が美しいと感じられるようになるまでの物語。

5話や8話は、とても重く、悲劇的な死が描かれていた。その時点で智世は、他者の死を悲しみつつも、どこか(死に)惹かれている様子だった。

しかし、エリアスとの仲が深まり、「どうでも良い」ことがなくなっていく。(それが何に対してでも)「執着」とは、「生きる意思」だ。

「生きる意思」なんて、良いように聞こえるが、一方でそれは「エリアスへの依存」にもなっていく。「相手にとって都合の良い女でいるのが楽」なんて、なかなかアニメでは描かない部分だと思う。

そんな日々を送るなかで、ルツやアンジェリカ、リンデルらと出会い、少しずつ、世界の美しさを知る。あくまで、少しずつ。

12話で、智世は杖を作ったことにより、世界の本質と繋がる。ネヴィンとの会話により、自らが父や母らから愛されていたことに気づき、これまでのしがらみから自由になる。

ラストに、主題歌にのせて空を飛び回る智世の姿は、実によく自由を表していた。また、これまで通りの世界を美しいと感じられるようになった智世には、素直に感動した。

これはやっぱり、前半のダークな雰囲気があってこそ生きる最終回だったと思う。

あとは、原作でどうかは知らないけれど、途中途中に挟まれるディフォルメ絵やギャグ展開が凄く良かった印象。暗い作風の中、一種の清涼剤としてうまく機能していたと思う。もっと多くても良いくらいだと思う。

本当はこの作品には、「なぜか頭の上に乗っかってる可愛らしいマスコットキャラ」がいた方が良かったとは思う。せっかく面白い世界観やストーリーなのに、それに浸る前に(私含め)「疲れちゃう」人がいるのは、そういう「息抜き」が少ないからだと思った。

、、、って、2クールだったんか~い(笑)! いや~あまりにも良い12話だったんで、てっきり最終回かと(笑)

さて、2クール目だが、作品は益々暗い方向に進んでいく。

知世の身体は徐々に蝕まれていき、相変わらず、様々な陣営が知世を付け狙う。

そんななか、1クール目ではわりと「大人」として描かれていたエリアスが、実はただの「子供」であり、人間とは異なる価値観のもとで動いていることが分かってくる。その部分の、「通じあっていたと思ってたのが、ただの勘違い」だった切なさや不安感が、2クール目の見処となっている。

終盤は、完全にカルタフィルスとの決着をつける流れに。カルタフィルス、完全に悪役ではあるけど、確かに可哀想な面もあるよな。たかだか石投げたくらいで、2000年間も許されないなんてな。神様も、心が狭いw

最後はかなり綺麗だったかな。腹を貫かれながら、敵を抱き締めて子守唄を歌うとか、ドシリアスだったけど、死ねないカルタフィルスの呪いと、必ず死ぬ知世の呪いの力が相殺し合い、子守唄で眠るカルタフィルス。まあ、その程度でなんとかなるんだったら、カルタフィルスも2000年の中でなんとか出来たんじゃないかと、思わなくもないけれど。

んで、とりあえず中ボスを倒し、結婚式エンドは素敵でした。最後に思ったのは、知世は「夫」よりも「家族」を欲していて、エリアスは、「妻」よりも「母」を欲しているような気がしました。今のところ。それが、徐々に本物の恋愛感情に育っていくには、もう少し時間がかかるのかな? なんて思っていました。にしても、最近、涙腺が(笑)

とはいえ、やはり一番のクライマックスは、12話でしたね。2クールのこの暗い話のオンパレードは、流石に疲れました。2年後とかでも良かったかな。ホントは、16話みたいな平和な日常回が、もう少しあっても良かったと思います。

まあとにかく、よくは分からないけど、高級感があり、深そうな、本格ファンタジーのような、何かでしたw

あ~、我が家にもシルキーがいてほしい(笑)
{/netabare}

【視聴終了(要約バージョン小盛りレビュー)】
{netabare}
これは、智世が自らの足で進む方向を決め、生きることを決意し、世界が美しいと感じられるようになるまでの物語。

友愛、恋愛、家族愛。これまで得られなかった様々な得る知世。その中で、世界を美しいと感じ始めます。

深い物語ですが、終始重いので、もっと息抜き回やゆるキャラがいても良かったかもしれない。
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目
顔が骨で、エインズ様(笑) ちょとディフォルメw なかなか独特の世界観が面白かったけど、これって少女マンガ的?

2話目
人身売買。たとえ打算だとしても。魔法と魔術の違い。他力か自力かということ以上に、魔術はあくまで物理法則に縛られ、魔法は物理法則を無視できる、ということかな。重く暗い作風の中に、音楽とディフォルメが効果的。ハニームーン、ハネムーンね。

3話目
ドラゴンの里か。ハリウッド並みに金をかけられるなら、実写化してほしいな。還る、ね。これ、かわいいマスコットが必要なアニメだと思う。

4話目
猫の国、行きたい(笑) 飼い主が子供みたいなもん。影を叩くなよw

5話目
自由を、望むとは限らない。これは酷い話だな。グロいし、悲劇。ラストに救いがあったのが、せめてもの救いか。死の先、死に様、それが多いな。

6話目
おっ○いの作画、独特だなw 垂れてるからこぼれそうだw キリ○ト教批判w ややデレてる(笑)

7話目
そうそう、この展開だよ。絶対かわいい(マスコット的な)キャラは必要だよ。ブラックドッグ、、、ヘルハウンドか。会話と会話の間が長いから、ストーリー的にはあまり進まないな。

8話目
夫公認の浮気w 魂で繋がった相棒と、キメラとして使役した相棒との対比か。カルタフィルスにヨセフか。キリストをビンタして不老不死になり、悔いを改めてヨセフになったという人ですね。

9話目
ショーケースに写る風景、すげぇリアルだな。依存。あんまり良い子でいるんじゃないよ。ハンマー(笑) みんなに嫌われ、雑に扱われるサイモンが笑えるw なかなか素敵な恋愛話2つ。良い回だった。

10話目
マントというか、どてら(笑)? 都合の良い女でいることが楽、、、ということかな。回想。最近観たこともあるけど、「精霊の守り人」に似てるな。

11話目
とても優しく、美しい回だな~。エリアスも子供か。なるほど。

12話目○
そこなんだよね。智世の母さんは、結局、智世を殺すより、自ら死ぬ方を選んだんだよね。ラストに、これまで通りの世界を美しいと感じられるようになったんだね。

13話目
って、2クールだったんか~い(笑) ちょっと二人が前進。ちょっとね。不思議で、美しく、平穏な日々。まあ、悲劇への序章だろうけど。

14話目
人狼の件、意外と早く終息したな。ジョエルの件、切ないな。これは、(男女逆だけど)智世とエリアスの未来の姿でもあるのかな。

15話目
チェンジリングね。色々出てくるね。それを人間界でやると安っぽくなるけど、妖精界だからこそ成立する、素敵な治療法だね。バンシーの存在理由。妖精って、何かの為に生きているのかな?

16話目
平和な回だな。女子会(笑) 珍しく、少しだけ明るかったw

17話目
家族の定義。灰の目、魔法使いらしい魔法使いだな。言葉は大切に。

18話目
ムカつく奴は最後までムカつく(笑) まあ、日本人は、童顔だしねw 忘れがちだけど、エリアス、基本的に人間じゃないしね。精神構造や思考回路も。独占欲かな。それを愛情ととるなんて、怖い怖いw エリアス、子供か(笑) 自分的に、人間の感情で一番理解できないのが、嫉妬。これはガチで、多分私は人生でガチの嫉妬を抱いたことがない(ちょっと羨ましいな~くらいはあっても)。他人に興味が薄いとも言えるけど。やっぱり、たまにコメディ挟み込むの、大事だよね。

19話目
サブキャラで世界を広げていく展開が続くね。いやいや、グロいって(汗) ジョニーウォーカーのブラックラベルか。苦手な酒だな。カルタフィルス、さ迷えるユダヤ人か。下ネタ、珍しい(笑) 道程。闇堕ち?

20話目
ドラゴンの呪い。知世の誕生日知らず、家事達人のシルキー、ショック(笑)

21話目
知世を助けることが、生きる目的となった、エリアス。生け贄? 魔法も現実の一部。知世パンチ。

22話目
オッドアイにちゃんとした理由があるアニメも珍しい。こういうの(スレイベガ)って、専門の機関が守ってくれたりしないのだろうか? 情報がないって、怖いな。これは、超シリアス。母親、辛いよな。変に美化せず、リアリティを残しているしね。

23話目
森を破壊すると、城戸に殴られるぞ(笑) 妖精の愛し方、、、。確かに、石投げたくらいで2000年以上呪われたらな。

24話目
ガチガチのシリアスだな。腹を貫かれながら、敵を抱き締めて子守唄を歌うとか。まあでも、救いがあるオチだったかな。その後、ややコメディを挟んだのは良かった。このバランスだよね。
{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 38

69.9 3 奴隷で恋愛なアニメランキング3位
星界の紋章(TVアニメ動画)

1999年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (136)
747人が棚に入れました
『星界の紋章』は、森岡浩之によって執筆されたSF小説(スペースオペラ)、ライトノベル、及びそれを原作としたアニメ作品。また「星界の紋章」の番外編で、ラフィールの出生に関する話を描いた「星界の断章」がある。
 人類が、太陽から0.3光年離れたところに発見した「ユアノン」なる素粒子を利用した恒星間宇宙船を開発し、惑星改造により太陽系外に居住惑星を拡大し始めて何世紀も後のこと…。ハイド星系・惑星マーティンの政府主席の息子ジント・リンが幼少の頃、彼の故郷は「アーヴによる人類帝国」なる星間帝国の大艦隊によって侵略を受けた。彼の父ロック・リンは降伏と引きかえに貴族の称号を得、そのためジント自身も帝国貴族の一員となる。それから7年後、ハイド伯爵公子となったジントは、皇帝の孫娘ラフィールと運命的な出会いをする。 その時からジントは帝国貴族として生きていく事を決意する。

声優・キャラクター
今井由香、川澄綾子、高島雅羅、遊佐浩二、友川まり、陶山章央、藤貴子、千葉一伸、塩沢兼人、小杉十郎太、深見梨加、土井美加、鈴木英一郎、子安武人、日野由利加、石塚運昇、池水通洋
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

簡単にデレない娘さんの強烈な魅力

原作未読


劇場版控えてるとか祝円盤発売とかの商売っ気を感じない&空気を読まないラインナップが魅力のJ-COMさんの今クール再放送メニューのうちひとつ。
1999年1月~3月と“製作委員会”方式もまだまだおおっぴらになったかどうかな20年以上前の作品です。かつ衛星放送のみの On Air で知名度は底の底。

・WOWOW放送で認知度低め
・OPが服部克久のインストゥルメンタル
・Bパート終了。CM後のED。
・鬼籍に入られた声優さんらの在りし日のお姿

スペースオペラがどんなものか私はよく知りませんし、宇宙空間のあれやこれやで興奮する男の子でもなかったし、時系列でアニメ文化史を語れるほど造詣も深くありません。
どんな位置づけの作品か語る言葉は持ちあわせてませんが、上記4点をもって古い作品に価値を見い出してもいいかも。20年以上前の作品は視聴のハードルが上がるものですが古典もいいもんです。

今は配信会社。昔は衛星放送。聴けば一発でわかる曲の数々、服部克久氏。御年80歳を超えお見かけする機会もなくなり郷愁を誘います。OPインストとEDへの入り演出も最近は滅多に見ることはありません。
塩沢兼人、石塚運昇、鈴置洋孝。声を聞いただけでその人だと分かるのが声優さんという存在でした。
ためしに同時期の作品眺めたら、子供向けなキャラもの。頭身低めで目が大きい女の子を前面に出したもの。パッと見そんなのが大半ですね。「あー秋葉原にいる人こういうの好きそうだよねー」な作品群です。明らかにそれらとは違う匂いがします。
1999年は宇多田ヒカルのファーストアルバムが邦楽アルバム売上史上最高位を記録した年です。リアタイ時は家電買う以外の目的では秋葉原に目もくれない人生を歩んでおりました。


前置き長くなりましたが、普通に面白いですよ。
ハヤカワ文庫のSF小説が元ネタです。『グインサーガ』や海外の翻訳ものの堅いイメージがあってあまり読んだことのないレーベル。複数巻刊行済なので1クールで収まるわけないのですが、きちんと13話の中で一定の結論を用意してます。
最近「俺たちのなんとかは…」「大事なお知らせ!2期決定!」「続きは劇場で!」「この続きは3か月後だよん」とぶん投げエンドばかりに遭遇してたので、やや駆け足だったとしても作り手の誠意に静かに感動します。たまたまかは置いといて過去作品はきちんとけじめつけてるものが多い印象です。

画面比率ワイド(16:9)とスタンダード(4:3)の差も懐かしかったり、ここまではほぼ昔の作品の作り方ならではの部分しか書いてませんが、内容も古臭いって感覚は僕の場合ありませんでした。


では内容について。
地球ではない、とある人間の住む惑星に人外さん“アーヴ”が押し掛けて、降伏勧告みたいなことをするところから始まる物語。
で、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった.的な話に発展するのですが、この侵略する側のアーヴの皆さんが誇り高く聡明でこちらに感情移入してきます。それでいて“奴隷の平和”みたいなテーゼは微塵もありません。


 ね?わかんないでしょ?


基本は人間ジント♂(CV今井由香)と人外さんラフィール♀(CV川澄綾子)のボーイミーツガールなんです。
ヒロインのデザインは置いといてとにかくこのラフィールが魅力的です。「俺は女性を見た目ではなく性格で」とポイント稼ぎたい男子はぜひご視聴ください(適当)。

誇りが高く聡明で寿命の長い種族です。人間との寿命差が引き起こす哀感はあります。ここを全面アピールの『さよならの朝に約束の花をかざろう』という名作もありますが本作この1クールでの優先順位は高くありません。
むしろ“誇りが高く聡明”この種族適性を前面に出してくることで生じるジントくんとのすれ違いを楽しみ、徐々に絆を深めていくさまに目を細めることができると思います。

さらに

「そなた」「であろう」「するがよい」

が口癖のやんごとなきご身分のラフィールにひざまずく快感がありますね。これニッチなフェチシズムであるかどうかは現物を確かめていただければと。

{netabare}「ラフィールと呼ぶが良い」

と笑顔で語りかけた某シーンでは自分電気が走りました。{/netabare}

一見尊大に見えますが、本来の性格は素直。嘘がつけない性格でもあります。
簡単にデレないし、ほっぺ赤くしないし、ラッキーなんとかも皆無だし、サービスショットもありません。あの冴えないヒロインだって感情を爆発させたのにラフィールはそれがない。


耐えられますか?

1.好き好き光線だしまくりな女の子の好意に気づかない鈍感主人公を「ヘタレてんな~」とマウントとりながら睥睨することに

2.テンプレ化したツンデレ娘に「あーまたこのパティーンかよ」と辟易したフリして実は安心している自分に

慣れてしまっているそこのあなた!

簡単でない娘をいざ目の前にしたからって掌返しのクレームは受けつけません。…と煽っときます。



※オマケ

■子安さんとゲスキャラの好相性

いやもうこれはそれっぽいのが出てきた時にエンドテロップで答え合わせしましょう。
「あ~やっぱり!」となるかと思います。

{netabare}クロワールのことですよ。{/netabare}



■帝国軍の敬礼

誇り高く聡明なアーヴの皆さんの帝国軍。軍略は妥当性があり、リスクを一つずつ排除して合理的な判断を下そうと助力している描写あり。事にあたっての指揮官の覚悟と部下への命令内容もアツいものがある。上官も上官なら即座に意を酌む部下たちもかっこよい。
そんな彼らの敬礼。

{netabare}オリラジ藤森が「サンキューでーす」してるようにしか見えないという罰ゲーム{/netabare}



視聴時期:2020年1月~3月 地上波再放送

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2020.03.14 初稿
2020.09.27 修正

投稿 : 2024/09/07
♥ : 31
ネタバレ

芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

王道をゆくジュブナイルSF

私は放送当時のオタクではないし、オタク情報網もだいぶ低レベルなので多くを知らない。
しかし、最近、ちょっと昔の情報をちょろちょろ仕入れられ、このアニメも知るに至った。正確には前から名前は聞いていたのだが、まあ普通にラノベ原作ものにも、SFものにもそんなに興味はなかったのだが、界隈では有名らしいので視聴。

結果として期待通りであり、なるほど、これは有名になるじゃろという出来だった。うん、面白い。


昔のラノベって普通に臭さ薄めでラノベってよりジュブナイルなんだなあ。
現代で見て、これは、という目新しさはそんなに無いが、非常に丁寧に作られており、王道なSF作品と呼べる出来に仕上がっている。
なんというかラノベアニメにありがちなツッコミどころが少ないし、個性的とは言わないが作画も丁寧で、ちゃんとアニメを作っている感じがする。
上橋菜穂子系(守り人シリーズとか)とか思い出した(こちらについては原作しか知らん)。まあ刊行年代も近いか。

スペースオペラ系と呼ばれているが、宇宙船での戦争がメイン、という作品では無く、地球風の星に潜伏したり、独自の規律をもつ宇宙船に滞在したりといった内容が主。
正直あんまりロボットバトル要素とか、宇宙船バトルみたいなの好きじゃないので、その辺はよかった。同様に宇宙バトルモノ(?)系が好きでない人も楽しめると思う。
ただ、正直地上潜伏編は惜しい出来で、ああ、この人は宇宙を書くべき人なんだなと思った。遊園地の逃避行のシーンは演出が遊べばより面白いシーンにできたと思う。

もっとも特筆すべき点はやはり世界観の作り込みであり、架空の種族や星、国、制度、といった世界観全体が十分な説得力を持っていることか。架空の世界の設定ってあんまり現実感わかないから、説明されても面白く感じないのだけど(特に宇宙系はテンプレ感が強くて)、この作品では世界に引き込まれた。
あと、世界観が結構重厚な反面、外面も内面もキャラクタ造形は近現代のラノベやらアニメに近しい部分もあり、そのへんのズレも面白い。でもまあ、やっぱりラノベ作品という印象は薄いが。

残念な点は続編以降戦記メインになりそうなことか、普通にこのテイストで、主人公とヒロインの二人での権威のない冒険をもうちょっとみたかった。エピソードの数的には少ないので食い足りない感じ。
そして、見てみないことにはわからないが、私はあまり大規模な戦記はあまり好きではないので不安。

もう一つ残念な点を述べると、まあ世界観の説得力と、王道で面白いジュブナイル的ストーリー、より他の魅力はないということか。面白くはあるが、良くも悪くも王道、という感じはある。

でもまあ、名作だね。記憶の波に飲まれて消えるにはちょっと勿体無い作品かなと。



【戦争というテーマ】(どうでも良いので畳んだ)
{netabare}
詳しくはないのでわからないが、戦争モノというのは、もう廃れたが昔はだいぶ流行っていた。2000年前後のアニメ作品では司令官と部下など、ヒエラルキーのある組織での戦いの話はよく見受けられる。一方最近は個人の争いに焦点を合わすことは多くとも、こういった戦記もの、というのはあまり見ないように感じる。これを、戦争が終わってから時間が随分経って来たからだ、と私なんかは憶測するが、あんまり信憑性は持てない。
{/netabare}

-------------
追記
昔のラノベが全部良きジュブナイルだ、というのは暴論ですね。この時代のハヤカワで出版されたラノベっていうのでこの作品はむしろ特殊らしいし。昔、"吸血鬼ハンターD"とかいう昔のラノベを読んでクソほどつまらなかったのを思い出した(個人の感想)。アレを良きジュブナイルとは言いたくない。それに1990年にはスレイヤーズも刊行されているのだから。まあただ、ラノベ界隈の方向性がまだ今のように定まっていなかったのは事実だと思うが。

また、他方で著者がこの作品を"ジュブナイル"としてでなくやはり"ラノベ"として出版したかったのは概ね明白であり、そこを勘違いしてはいけないかもしれない。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 7

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ボーイ・ミーツ・ガール(SF風味)(2017.5.23: 大幅改稿)

視聴時点で原作小説(ハヤカワ文庫刊)既読。WOWOWでの有料放送だったため、たぶんアニメ自体の知名度は低めだと思います。

<星界>シリーズとして『星界の戦旗』へと続き続巻刊行中です。原作シリーズとして『星界の戦旗』は未完なのですが、その前日譚である本作はきっちりストーリーの区切りがついています。

原作のカバーイラストは、プリンセスメーカーなどで有名な赤井孝美さんです。そのままの絵柄だとアニメでは動かせません(笑)ので、アニメではそれなりに線の整理されたキャラクターデザインになっていますが、原作イラストの面影はなんとなく残っている気がします。

本作品世界では居住可能惑星の探査と亜光速宇宙船による宇宙移民により人類は銀河の各星系に広がっていますが、主人公ジントが居住するハイド星系は超光速航行の技術を持っておらず、惑星ハイドは独立した経済活動を行っている民主的な惑星国家です。

そんなハイド星系である日、宇宙空間での謎の爆発が発生して「アーヴによる人類帝国(フリューバル・グレール・ゴル・バーリFrybarec Gloer Gor Bari)」、通称「アーヴ帝国」に所属しているという宇宙船が出現して、ハイド星系の帝国への帰属を迫るのです。

その日から、ハイド国政府主席だった父の息子であったジントの数奇な運命が始まり、それから数年の時を経て皇女ラフィールとの運命的な出会いを果たすのです…。


<星界>シリーズはいわゆる「スペースオペラ」です。スペースオペラではどうやって星間航行を可能にするかが1つの課題だと思うのですが、本シリーズではそのアイディアがユニークで、またこの航行手段により宇宙船同士の戦闘が特殊なものになっています。この効果により、潜水艦での戦闘のような独特の緊張感が産まれ、かなり見ごたえある戦闘シーンとなっていると思います。

またヒロインであるラフィールを含めて「<アーヴ>は宇宙での活動に適するような遺伝子改造により発生した種族で、ビジュアルが普通の人類と異なる」という設定があります。

逆に<アーヴ>が地上世界(惑星の地表)で生活することは皆無で、この辺りの生活習慣の違いから発生するジントとラフィールの常識のギャップもなかなか面白いところですね。もちろん、我々の常識はジントに近いわけですけれども。

<アーヴ>の設定に忠実なビジュアライズをすると、普通のアニメキャラ(髪や瞳が青くエルフ耳の美形キャラ)になるというのは、原作者が狙ってやっていることではあるのですが、これも面白いですね。

あと、言語オタク的には作中のオリジナル言語「アーヴ語」が面白いかもしれません。アニメでは、ストーリー冒頭のナレーションがアーヴ語です。

OPはオーケストラ演奏による雄大なもので、インストゥルメンタルです。いわゆる「主題歌」という奴ではありません。めっちゃカッコいい曲ですね。

SF、スペースオペラ好きにはお薦めです。ジュブナイルものとしても楽しめると思います。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 28

60.4 4 奴隷で恋愛なアニメランキング4位
DearS-ディアーズ(TVアニメ動画)

2004年夏アニメ
★★★★☆ 3.3 (99)
639人が棚に入れました
地球に不時着したUFOから宇宙人が現れた!?
人々は故郷に帰ることが出来なくなった彼女らを「ディアーズ」と呼称して、市民権を与えて温かく迎え入れたのだった。
そんなある日、平凡な高校2年生・幾原武哉はバイト帰りに偶然出会った全裸の美少女ディアーズ・レンを介抱することに…。
そして、レンは居候として武哉のアパートに住むことになる。 が、本来ディアーズは奴隷として他人に尽くすために作られた種族で、さらにレンには大きな問題が…。

Key’s さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

最初に見た深夜アニメだったな・・・印象深い・・・

あらすじ

宇宙からUFOが不時着した日本。
故郷に帰ることができなくなった宇宙人たちを
「ディアーズ」と呼んで市民権を与え
彼らをホームステイで迎えいれるようになる。

しかし本来ディアーズは他者に依存することで
種族の保存を図ってきた者たちであった…。
それから1年後、1人暮らしを満喫していた
高校生の幾原武哉はある日、ディアーズの少女と出会う。
地球の言語を話せず行き倒れていた少女を放っておけず
彼は少女を自室に連れて帰りレンと名付けて
しばらく面倒を見ることになる。

すると彼女は武哉を「ご主人様」と呼び、
そのまま彼の家に居候してしまう。
その上、手違いで彼と共に小春高校に通うこととなり、
それいらい彼の生活は一変する。
レンをライバル視するディアーズの正規留学生
ミゥも現れ、常に騒動の日々を送る羽目になる。

さらにレンには隠された秘密があって・・・
主人公の武哉とその周りのDearS達との
ちょっとエッチで騒がしい日々が始まっていく!



感想

最初に見た深夜アニメということもあり
印象深くて好きな作品なんだが
正直結構思い出補正されてるとは思うな~w

まず最初に何と言っても
キャラデザインが可愛く
超好みでしたね~♪
ときどきSD化するキャラも可愛くて好きですね!

エロい場面なんかも
結構あってそうゆう方向で
楽しみたい人も楽しめる作品ですね!

ただエロが嫌いとか要らないとか
思う人はいるかもしれないから
そこは好みが分かれるね


それに声優陣が
今見ると何と言ってもすごい豪華!
演技もキャラにそれぞれ合っていて良かったです!
特にレンのしゃべり方とか可愛くて好きだったな~

ギャグやセリフ回しひとつとっても、
光るものがあるし部分部分みればなかなか好きな部類である。

ありきたりな美少女コメディではありますが、
主人公とヒロインがラブラブな関係では無く
ヒロインから主人公への一方通行って所は気に入ってます

あとはOPやEDなんかも
何気にかなり好きで
当時から何回も再生してたな~♪
今でも聞いてますw


でもストーリーは
設定が特殊なこと以外は
結構平凡だったと思うな

昔はそれで十分楽しめていたが
今見ると少し物足りないな~

あと原作とは
構成なんかが違うらしく
原作のファンはがっかりした人が
多いらしいですね

作画崩壊とかも言われてましたが
自分は気にならなかったな~
ラストが少し消化不良気味で終わったので
矛盾というか謎が解明されなかったのは残念だったな

多分2期を想定していたんだと思うが
結局来なかったな…
2期楽しみに待ってたんですが…


まぁやっぱり
好き嫌いが分かれるというか・・・
苦手な人が多いのかな?

周りの評価と知名度は低いですが
個人的にはかなり好きな作品でしたね

ちょっとでも興味持った人は
見てほしい作品ですね!

投稿 : 2024/09/07
♥ : 30

チョコ太郎 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

不純異星(異性)交友なSFラブコメ^^

地球にやってきた宇宙人はディアーズと呼ばれて迎え入れてもらうのだが、実はディアーズは奴隷として他人に奉仕する種族。高校生の主人公は、ディアーズの一人 レンと同居することになり・・・。

基本はドタバタラブコメですが、露骨なエロ表現や主人と奴隷という設定が嫌いな方には非常に苦痛な作品かと思います^^;

原作が好きで観ていましたが、本作品では途中までのストーリーで終わっている為、物語としてきちんと完結していないところが非常に残念です^^;(原作の終わり方もどうかと思いますが^^;)

PEACH-PITさんの描くキャラは、ほんとにかわいいキャラが多くて大好きです^^

投稿 : 2024/09/07
♥ : 6

ネロラッシュ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

PEACH-PIT版

PEACH-PIT版ちょびっツかな?
美少女宇宙人にはしてるが。

見覚えのある商店街だと思ってみていたが、栃錦像だと?小岩じゃん!!それだけでなんか嬉しい(^^)

全体的に鈴木行監督のHAPPY☆LESSONのような感じであったが、懐かしいご町内でのドタバタ風でもあり良かったと思う。
露出狂の担任の先生であるが、ラストくらいは控えて欲しかったな…という演出面の不満もある。
愛ちゃん、まいまいは好きなCVだけど、ヒロインのレンがモモーイならもっと萌えたかな(笑)

投稿 : 2024/09/07
♥ : 1

65.7 5 奴隷で恋愛なアニメランキング5位
ブラック★★ロックシューター DAWN FALL(TVアニメ動画)

2022年春アニメ
★★★★☆ 3.4 (65)
217人が棚に入れました
2022年春

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

世界観が良い。バーチャル美少女を消費する日本のアナロジー…かも。

 ここまで作り込んだSFを作ったことは素晴らしいと思います。ストーリーもこじんまりと小さくまとめず、壮大な部分までもって行きました。キャラもなかなかバックグラウンドを描いていました。

 さて、本作を語るにはまず「ブラックロックシューター(以下BRS)」の名を冠するのに、ふさわしいか、ということでしょう。世界観やキャラ設定などは、あの名作のニコニコ動画の感じが出てました。ニコニコのBRSは挫折からの再生という感じのストーリーでしたので、完全ではないですが、前作のインナースペース的な訳の分からないBRSよりも格段に良かったです。

 キャラとしてのBRSですが、岩じゃないじゃん、という突っ込みはさておいて、キャラ造形は良かったですね。特に戦闘シーンはちょっと感動しました。黒い巨大な武器の雰囲気も出てます。
 室内のシーンは手足のCGが貧弱すぎるのはなぜかよくわかりません。この点だけ不満です。

 ということで、BRSの名を使った本作。かなり曲の世界観の再現が出来ていたと思います。

 で、本作について。話全体もそうですが、特に冒頭の2、3話はかなりセリフによる説明が多かったです。見てればわかるじゃん、いや、それはストーリーで表現しようよ、という印象です。
 さらに、構成として戦闘、エモいシーン、謎解き、施設の発見などを繰り返します。このパターンでの進行します。これはいくらなんでも視聴者をバカにしてるだろう、という印象を持ちかけましたが、考えなおしました。
 これは非常にゲーム的だし、説明がないと嫌になってしまう視聴者向けの配慮だろうなあ、という気はします。

 SFは設定や世界観の他、パズル、謎解き、考察を楽しむんですけど、他の作品を見ていると頭を使って読み解くのは忌避されるみたいです。設定の説明が冒頭に丁寧にされた上で分かりやすい展開にしないと、2020年代において作品として成立しないと考えたのでしょう。止むを得ません。
 が、そうはいってもラストに向かっていろんな事実が明らかになってゆく部分はうまく謎を織り込めていましたので、ここはわかりやすいながらも興味を持てる話になっています。

 次に過剰に性的な内容です。直接シーンとして見せるわけではありませんが、容易に性的な状況だとわかる表現、セリフが多用されていました。
 教育機関のスマイリー…これをなんのアナロジーとみるか、によると思います。ロリ美少女に性的な行為を繰り返す教師みたいにも見えます。が、実際は、マッチョな肉体にキューピー的な童顔は、身体は大人で頭は子供。「成長しない現代人」もっと悪意をこめれば「日本人」を表現しているのでしょう。
 自己主張を身体に文字で描いているのはSNSによる虚構のアイデンティティにも見えます。あるいは作り物のような肉体は拡張現実を想起させます。男性の部分がのっぺりしてました。本物がついているのかすらわかりません。性行為に見えて性行為でないことをしているという可能性もあります。
 教育機関=SNS、ユーチューブだとスマイリーみたいに育つという皮肉もあるかも知れません。
 
 お互いの意思を尊重しないで一方的にロリ美少女を性的に消費するアナロジーなんでしょうね。子供を作らなきゃといいながら、教育機関に赤ん坊の影はありません。美少女をさらって来ては消費する。これはこのアニメを見ているあるいはVチューバ―ばっかり見ているオタク層に対する皮肉になっている、と取るべきなのかもしれません。

 で、更に悪意があるとすれば、BRSは初音ミクの名曲・名作です。初音ミクはバーチャルアイドルですし、BRSも作られた美少女サイボーグ。ラスボスもAIの美少女です。
 皮肉な見方をすれば本作は、虚構のロリで性処理をしていると、子供を作れなくなると、世界が滅びるよ、という話につながります。
 最後、子供らしきものが現れていましたね。虚構の美少女が消えて初めて子供ができるという意味にも取れます。

 百合はまあ、ディズニーですから入れざるを得ないんでしょうね。百合も子供は作れないという意味にも取れますけど。

 AIや機械文明に対する警鐘的なものもあるかもしれませんが、そこはあまり深掘りされません。むしろ、性表現、作られたロリ美少女たちに込められたテーマを読み解くべきだと思いました。

 軌道エレベーターは外から入ってくる脅威のアナロジーなんでしょうか。そこばかり気にして作戦を立てていたら思わぬ方法で攻撃を受けますので、この軌道エレベーターが象徴するものは考えたほうが良さそうです。
 また、日本の技術ばかり吸い取られて、海外に逆転されている現状にも見えます。AIと核融合炉ですからね。
 そして、ラストはでかけて行って戦う。この結末が描かれないのは、結果よりも「日本人よ。子供をつくれ、海外と戦え」と言う風に感じました。


 類似性はいいでしょう。さまざまなSF的表現はどこかで見たものが多いですが、SFのセンスオブワンダーは今や組み合わせです。その点ではBRSというキャラありきの話をうまくストーリーに落とし込めていました。

 CGは良かったですね。一部あれ?という部分がなくはないですが、キャラ達はかき分けられてたしちゃんと美少女になっていました。日本の記号的美少女とCGというのはひょっとしたら相性がいいのかもしれません。武器やバイクなどの乗り物など、非常にSF的な映像表現になっていまいた。

 で、肝心の曲ですけど、前作があるから使われないのはしょうがない、さみしいけど、と思っていました。が、ここはまあ、見てください。

 総評すると、BRSの世界観を上手く使っています。SFとしての話も分かりやす過ぎという欠点はあるものの、ちゃんと尻つぼみにならず大きな方向に向かってゆくので面白いしワクワクもあります。キャラたちのデザインもキャラ造形も満足でした。
 性的な表現にテーマ性を見出せるかどうかで、ここで不快感を持つ人はいるかなあ、と思います。テーマについては私が考察しきれているかわかりませんので、もう1度見たい気もします。

 なお、こんな考察をしなくてもアニメ作品としてストーリーは結構面白いと思います。キャラもいいし、CGを楽しむだけでもいいと思います。曲が好きな人ならなおさらです。

 最後に、ユーチューブの無料1話見てがまんできなくなりました。ディズニー+独占かあ、と思いましたけど月990円ですからね。うまく乗せられて悔しいですが、昔のレンタルに比べれば全然お得かあと開き直って本作見られて良かったです。
 ネトフリのオリジナルもいいのが出てきてますから、それでアニメが進化するなら…でも…うーん。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 8
ネタバレ

CiRk さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

地味だけど結構よかった。

{netabare}
10年前ぐらいにやってた奴の続編かと思ったら、完全新作だった。
確か昔の奴は精神世界云々であまり面白くなかった記憶だけあるが、今回のはSF寄りで結構良かったかな。
ただ、ボカロが元の作品なのに何でまたもボカロ層に需要がなさそうな硬派アニメになってしまうのか()

序盤は戦闘メインが多く、個人的にこの作品の戦闘はあまり変わり映えせずあまり面白いとは思えなかったので、地味な印象だったけど、途中から話に力を入れてきて面白くなったという印象。
SF設定やディストピア系の世界観もしっかりとしていたし、ライトハウスNo.8に行くという分かりやすい目標もあり、徐々に謎や過去を明かしつつという謎解き風の見せ方もあって興味を保つことができたので良かった。

オチ関しても、強化学習のアルゴリズムがはっきりとしないことを考えると、テラフォーミングのために地球で人類の適応環境のデータを取ろうとしてしまったというAIルナティックの行動も整合性が取れてはいるかな。
結末自体は視聴者の想像に任せますオチだったけど、綺麗に話がまとまっていてSFとして優秀だった。
最終回での各キャラたちの未来の姿は、エンプレスの意思が受け継がれている感じがして良かったです。
中途は寄り道があったりで微妙な回もたまにありましたが、一話完結の話も基本的には完成度が高かった。
バッドエンド寄りの話が多めで余韻に浸れる回も多く、その面でも自分の好みと合致していた作品だった。
結構途中退場するキャラも多く、終始重い空気を崩さなかった印象で作品の雰囲気にも一貫性があったので世界観に入り込み易かった。

微妙だった点は最初に書いた通り、戦闘と、あとは会話が結構滑ってたところかな。

OPとEDじゃない時点で最終回で流れるとは思ってたけど、予想通り最終回の最高のタイミングでブラック★ロックシューターも流れたので満足。
正直昔の初音ミクの声は結構違和感あるから今の技術の上がったボカロで再調整してほしかった感はあるが。
CGの出来はかなりいい方だと思います。

↓一話毎メモ
{netabare}
1話 ☆6
一期の記憶、よくわからんかったこととどうしてマカロンぐらいしかないんだけど。けど、こんな世界観ではなかったなw
クレジットの出し方かっこいい。
なんかアニメってより映画っぽい雰囲気だな。
コロナ対策しろ。重量感が足りない。精神世界
うーんこの安っぽさ。ED神 ネトフリ感

2話 ☆6
会話がつまらない。キャラと演技が合ってない。
これブラックロックシューターである意味ないよなw
ストレングス君味方か敵かどっち? 次々と変な敵が。

3話 ☆8
エッッッ こいつも前作におったなたぶん。
戦闘の見せ方はかなりうまい気がする。左右の奴爆弾臭い。
知ってた。マモレナカッタ...

4話 ☆6
急な下ネタやめろや。早見に下ネタキャラさせるとほんときつい。
デッドマスター何がしたかったの? はわわかわいい。
指揮官重要キャラなんか。話せばわかる(フラグ)

5話 ☆5
どういう状況w なんで殺害方法が首つりなんだ。もう事後じゃん。
えろい。

6話 ☆6
エッッッッ エロだけだよなこの作品w どんな気分だよ。
また爆弾あるかもしれんしちょっとは警戒しろw
奪われたら意識が戻るんじゃなくてなんかの反応が起きそうだな。

7話 ☆10
他のユニットととあっさり合流協力するの草。東京24区要素。
ロボ死にそう。今回良かったな。

8話 ☆4
寒いノリ辞めて。東京24区 あっさりカルネアデスの板への解答を出すなw
これ本筋と関係ある?
唐突に出てきたよくわからんのと戦ってても面白くないんだよな。
言い回しがいちいち滑ってんだよこのアニメ。挿入曲いいな。

9話 ☆8
エッッッ キューピーみてえだな。声が可愛い。それ誉め言葉なのか?
ヘーミテオスって気づけんのか?父にも期待してやれ。全裸は基本。
結構面白いな。

10話 ☆8
目つぶしは基本。そういや一期がリョナアニメだったことを思い出した。
これ前回こんな流れだったっけ? どゆこと?
何でルナティックは二人を見逃してくれたの?
ルナティックをやった後他のヘーミテオスの記憶消去した?

11話 ☆8
こういうところで引き止めないのはしっかりしてるわ。
ロリじゃないんかよ。流星群かな?
てか鉄海は人を原料にするならこんな地球いじめていいんすか。
確かにテラフォーミングなら人類絶滅や文明発生の要因のデータを欲しがっても不思議ではない。

12話 ☆9
まあ死ぬよな。このビビり顔すこ 死亡ラッシュ始まった。
また200年後来るのか...。ヘーミテオスユニットって歳とらない感じ?
月面の処理までやるのか?
話自体は地味だったけど間違いなく良作だったな。
これ初音ミクのボイス、今ならもっと自然に調整できるんじゃないの? 

曲評価(好み)
OP「ASEED」☆7.5
ED「Before the Nightmare」☆9
12話ED「ブラック★ロックシューター」☆8
{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 3

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

闇を駆ける星、運命を打ち抜け

この作品の前譚となるOVAと、ブラック★ロックシューターの第1期は視聴済です。

元々、本作が放送されるのを知り、急いでOVAと第1期を視聴した訳ですが…
物語的には、殆ど繋がりはありませんでした。

なので、この作品から視聴しても十分通ると思います。
もちろん、前作から登場しているキャラもいるので、全くの別ものという訳でもありませんでしたけれど…


西暦2062年。
労働力の大幅な自動化プロジェクトの失敗後、
その中核となる人工知能アルテミスが人類との戦いを選んだ末、
荒廃した二十年後の地球。

とある基地の地下研究施設で、ひとりの少女、エンプレスが目覚める。
彼女は人類の守護者3人の生き残りのうちのひとりであった。
しかし彼女には以前の記憶がない。
そんなエンプレスに平和構築軍の大佐は告げる。

エンプレスには、現在、アルテミスが建設中の月と地球を結ぶ
軌道エレベーターを完成前に破壊する使命があることを。
完成すれば月で大量生産中の巨大機械軍が大挙して地球へやってくるからだ。

だが、その行く手を仲間であったはずのデッドマスターやストレングス、
アルテミスの手先である無人軍隊やカルト集団<教育機関>のスマイリーらが阻もうとする。

さまざまな思惑が交差する中、大佐らと軌道エレベーターを目指して進んでいくエンプレス。
その先で待ち受けるものとは……。


公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。

完走して振り返って思うこと…
第1期とは世界観がまるで違っていました。

第1期は、現実の世界とブラック★ロックシューターたちの住む虚の世界があって、現実世界に生きる少女たちの心のゆらぎに虚の世界が看過されていくような、そんな感じでしたが、今回はひたすらドンパチし続けていた印象がありました。

それに、声優さんも思いきり入れ替わっているんですよ。
例えば、主人公に位置付けられるブラック★ロックシューターですが、前作は香菜ちゃんが演じていましたが、今回は石川由依さんが演じています。
それに、今作では「エンプレス」と呼ばれていましたし…

その他、「かつて仲間だった」キャラクターも、立ち位置が思い切り変わっているんです。
もちろん、こちらのキャラの声優さんも変更されています。

前作とこれだけの違いがあったら、もはや別ものと言っても過言ではないのでは…
と思えてしまうレベルだったような気がします。

しかも、今回は軌道エレベーターに向かうという明確な理由もありましたしね…
ですが、wikiをチラ見した際に目にしたのですが、
今回はブラック★ロックシューターがカッコ良く戦って、暴れまくる「ストレート」な作風を目指していたそうなので、結果的に所期の目標を完遂したと言えるのではないでしょうか。

監督は天衝さん。
きんモザ、グリザリア、Rewrite、アズレンなど数々の名作を輩出してくれている監督さんです。
2022年夏アニメで放送されていて、現時点で私の中で高評価の「プリマ・ドール」の監督も務めていらっしゃいます。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、ZAQさんによる「ASEED」
エンディングテーマは、高槻かなこさんによる「Before the Nightmare」
どちらも甲乙付け難いくらい格好良い楽曲でした。
もちろん、supercell feat. 初音ミクによる「ブラック★ロックシューター」も、
ちゃんと準備されていましたので^^

1クール全12話の物語でした。
と思っていたのですが、wikiには「ep13 Memories of the Journey(総集編)」が6月26日に放送されたと記載がありました。
あれ…思いきり見逃しちゃったんですけど…
私的には結構楽しませて貰った作品になりました。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 10
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