天使アニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の天使成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年01月25日の時点で一番の天使アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.4 1 天使アニメランキング1位
ドラえもん のび太と鉄人兵団(アニメ映画)

1986年3月15日
★★★★☆ 3.8 (148)
887人が棚に入れました
夏休み--。のび太の家の庭に巨大な機械のパーツが降って来た。家の中では狭すぎると、のび太はドラえもんの助けを借りて“逆世界入りこみオイル"で鏡の中の世界へと運びこんだ。その後からも次々と降って来るパーツを全部集めて組み立てると、何と巨大ロボットができあがった。のび太たちは、ザンダクロスと名付けたそのロボットで鏡の中を遊び回る。そんなある日、町に不思議な少女が現われた。リルルという名のその少女が、ロボットの持ち主だと知ったのび太は、鏡の中の世界の入口ごとリルルに返した。数日後、ロボットのことが気になったドラえもんとのび太は鏡の中に入ってみた。そこは現実の街並みが鏡に写った世界とは似ても似つかない、機械された基地だった。

いっき さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

鏡の中の世界に憧れたあの時代

リメイクは無しの意見で旧作の感想を書きます。

宇宙の中のとある惑星メカトピア、その世界ではロボットが支配反映していて強者が弱者が従うという、シンプルな弱肉強食のシステム。

その強者ロボットたちが、地球を支配してくるという話。

そのロボットのヒロイン''リルル''

リルルと鉄人兵団と戦うドラえもんのび太たちの戦いと価値観や変化を描いた作品。

この頃のドラえもん映画作品は藤子・F・不二夫さんが総指揮者として関わっていますので、兎に角'藤子ワールド'が前面に出ている雰囲気が魅力です。

SF要素、こどもアニメには似つかわしくないリアル描写、恐怖と不安を存分に味あわせる展開、でもそこがドラえもんだし恐怖や不安を乗り越えて感動を感じる過程はこの旧作ドラえもんならではで、これぞ名作という内容は不動なものだとおもいます。

子供ながら恐怖したし、不思議な話で、なんといってもSF要素、鏡の世界で全てがあべこべで誰もいない世界なんてワクワクしたしそんな世界があったらなとか自ずと感じられる新鮮感がある魅力要素がふんだんにある。無人スーパーで無料買い物とか最高だと思いました。現実ではやってはいけませんwそんな判断は子供ながら思っていました。あの世界だからこそです。そういう壮大な欲望描写があるけど現実と区別できる判断を与えたのも旧作ドラえもんでした。

どのシーンも面白かったし、考えさせられた。なんでリルルが消えるのか、それは過去を変えたら存在が無くなってしまう。しかしその次元のリルルはいなくなるけど、別のリルルが生きているという可能性がある。それはEDでの描写で物語っています。

そのハッピーエンドで記憶に残る描写ばっかりなので今でも名作なのはこれからも揺るがないです。ポケットの中にもやEDのわたしが不思議など歌も記憶に残る名曲です。

こういう子供の一度はやって見たいことを分かっていて、それを更に不思議なSF描写の感動ストーリーを完璧に描いた作品でした。

そして三ツ矢雄二さんの声も忘れられませんw

投稿 : 2025/01/25
♥ : 12

takato さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

旧ドラ最高傑作。ドラえもんとジブリで育った日々。

 私はとにかくビデオを見る子供だった。幼少から小学生までとにかくビデオ、ビデオの日々だった。ドラえもんは藤子不二雄先生が亡くなるまで、ジブリは「もののけ姫」までの作品こそ私のバイブルといいたい。


 新ドラえもんになってからはちゃんと見てないのにあれこれ言うのはフェアではないので旧ドラについて今後レビューを書いていこうと思います。


 旧ドラ、即ち「のび太の恐竜」から「創世記」までの多くの作品の中で実質しずかちゃんが主役といっていいくらいな作品がある。中でも本作「鉄人兵団」は、ほどしずかちゃんとリルルの物語として数少ない百合な作品であり、タイムパラドックスの利用や鏡面世界など適度にSFを利用しつつも、最期はロマンで終わる辺りドラえもんというプログラムピクチャーの中でも秀逸である。


 旧ドラにおいてはゲストキャラが非常に秀逸な例が多いが、中でもリリルは美しさといい、その命運といい、シリーズの中でもずば抜けている(しずかちゃん以外で全裸が出る貴重なキャラでもある)。


 クライマックスの件はいまでも無条件に涙が止まらなくなる…。タイムパラドックス的におかしいとか、冷静に考えるとツッコミどころがなくもないが、そんなのを超えた力があるこそ傑作である。


 ヤンサンドラえもん回でリルル=綾波説が出てきて目から鱗が落ちました!。

 それ以外にも鉄人兵団との悲壮な決戦や、決戦前の豪遊の件も実に印象深い!。特に後者は私の中では「ゾンビ」の有名なショッピングモールでの豪遊シーン以上に上がるシーンである。


 オールドスタイルな作品だけに作画や色彩は派手じゃなくても、内容が最高で誠実だから子供向け作品としては最高。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 9

76.2 2 天使アニメランキング2位
SAND LАND(アニメ映画)

2023年8月18日
★★★★★ 4.1 (39)
119人が棚に入れました
水のない砂漠で幻の泉を求めて旅に出た、悪魔の王子ベルゼブブ、魔物のシーフ、人間の保安官ラオのトリオを描いた鳥山明の同名漫画を映画化。
『COCOLORS(コカラス)』の横嶋俊久がメガホンをとり、サンライズ、神風動画、ANIMAの3社が手を組み制作を担当した。
主人公のベルゼブブの声を「小林さんちのメイドラゴン」の田村睦心、ラオの声を「PSYCHO-PASS サイコパス」の山路和弘、シーフの声を「ONE PIECE」のチョーが務める。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ちょいワル&パンツァー

人と魔物が併存する砂漠の世界。
水不足に喘ぐ窮状打破のため、老人保安官・ラオが幻の水源を求めて、
魔物の王子・ベルゼブブとお目付け役・シーフと共に旅に出る。
鳥山 明氏の原作コミック(全1巻未読)の劇場アニメ化作品。

【物語 4.0点】
単純明快。だが深い。

水源を独占する国王軍が{netabare} 飛行機と船も禁止している{/netabare} という時点で、
大体真相は先読みできる。
児童でも楽しめる勧善懲悪のシナリオ。

それでいて、大人が観ても考えさせられる要素もある。
一部の人間だけが情報や資源の供給を操作して富を独占する世界のクソゲー感には心当たりがありますし。

同族で殺し合うのは人間だけ。
戦争やら自然破壊やらを繰り返して自らの首を締めていく人類。
人間たちは魔物をスケープゴートにして罪を正当化して来たが、
これではどちらが悪魔か分からない。
ベルゼブブ王子「悪魔よりワルだなんてゆるされるとおもうか?」との決め台詞は言い得て妙。
この作品の土台となる哲学の上で自身の罪について葛藤する元兵士とか。

かと言って、ディストピアで陰鬱になり過ぎることもなく。
基本線は老人と魔物の珍道中を軸にした、
メカありバトルありの痛快冒険活劇ロードムービーで後味はさわやか。


総じて気楽に挑めるエンタメ作。
ただし作中登場したスライムみたいに溶解しそうになる酷暑が続く今夏の日本。
砂漠の熱戦は納涼には向かないのが難点と言えば難点w


【作画 4.0点】
アニメーション制作・サンライズ、神風動画、ANIMA
加えて配給は東宝と旧来の鳥山 明氏原作アニメとは異なるライン。

ゲーム版『ドラゴンボール』を数多く手掛けてきたバンダイナムコの企画・制作の元、
神風、ANIMAとゲーム業界でトゥーンレンダリングを駆使して来た実績もあるチームも巻き込んで構築されたCG志向の強いアニメーション。

原作者執筆の主たる動機の一つとなった戦車など、メカの再現性は上々。
戦車の他、飛行船や空中母艦も登場してワクワクさせてくれますが、
私は主人公たちが乗り回した戦車・104号車に一番興奮しました。
胴長のボディの覗き穴から老保安官やら魔物やらがデカい顔出しながら、
突進していく様が絵になります。

レーダーを駆使する敵戦車部隊に対して、
104号車がベルゼブブ驚異の視力や聴力などで対抗していく戦車バトルも独特かつ本格的。
これは4Dで体感したかったと私は後悔していますw


【キャラ 4.0点】
老人保安官ラオが出会う悪魔の王子・ベルゼブブ。
表層はチョロそうなピンク肌のガキンチョ。
普段はお付きのシーフと次は自分に車を運転させろと揉める童心が可愛らしい。
にも関わらず名のある荒くれ者たちがベルゼブブの名を耳にするだけで恐れおののく定番コメディパターン。
だがピンチになる程ブチ切れて恐ろしい底力を発揮。
キーーンって感じで脚力も人知を越えている。
ベルゼブブは鳥山ワールドのキャラ作りの集大成であり色々混ざっているとも言えます。

ラオと因縁を持つボスキャラ・ゼウ大将軍など、じっちゃんが元気なのも
原作者の趣味が全開になってる感。
反動で?亀仙人がぱふぱふしたがりそうな美女は雑誌写真にある{netabare} ラオの奥さん{/netabare} くらい。
あとは魔物と炎天下の砂漠で何故か海パン姿で襲撃してくるスイマーズなど、
暑苦しい男どもしかいません。


【声優 4.0点】
ベルゼブブ役・田村 睦心さん、保安官ラオ役・山路 和弘さん、シーフ役・チョーさん。
キャスト陣は経験豊富な声優、俳優陣で固め盤石。
人生の苦味を噛みしめる山路さんの演技にはいぶし銀の渋さを感じました。

そんな中ベテラン・大塚 明夫さんがベルゼブブの父王・サタン役で悲願の?鳥山 明氏原作アニメ初出演。
威厳のある声で「ゲームは1日1時間まで」と釘を刺されたらワルでも従わざるを得ませんw


【音楽 4.0点】
劇伴担当は菅野 祐悟氏。
ディストピアを深刻化させるハードな楽曲にも定評がある同氏ですが、
本作ではとぼけた木琴も交えたコメディ曲なども提供し曲調もまた明るい。

ED主題歌はimase「ユートピア」
こちらも厳しい砂漠世界の締めくくりにしてはノリが軽すぎるのでは?と思うほど明るいナンバー。
テーマやシナリオの熱量を反映してというより、終わったので肩の力を抜かせるタイプの主題歌。

音響監督には岩浪 美和氏。
『ガルパン』の砲撃音も調整してきた同氏ならば戦車戦も万全です。
ここもスタッフ名見てDolby Atmosとかで体感すれば良かったと後悔した部分ですw

投稿 : 2025/01/25
♥ : 17

68.9 3 天使アニメランキング3位
On Your Mark(アニメ映画)

1995年7月15日
★★★★☆ 3.7 (190)
995人が棚に入れました
劇場版アニメ『耳をすませば』と同時上映で公開された短編アニメで、同映画の制作スタッフだった宮崎駿が監督を務めた。内容は、人気アーティストであるCHAGE and ASUKAの、アニメ映像を用いたプロモーションフィルムである。 汚染が進み、地表に人間が住むことは叶わなくなった未来の地球。カルト教団を殲滅するべくその本拠地に突入した武装警官隊は、施設の奥深くに翼の生えた少女を発見した。その姿から何かを感じた警官二名は、彼女を空へと返すために行動を開始する……。 企画自体はアーティスト側からスタジオジブリに持ち込まれており、本来はコンサートツアーのオープニングフィルムとして制作されたものだった。その完成度の高さから、万人の目に触れるようにと発表されることになったのだ。

ふもふも さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ジブリの力がいかんなく発揮された短編

チャゲアスとジブリのコラボで作られた短編。というかPVかな?これちょっとマイナーなのかな?


 短い時間の中にジブリがギュッとつまっています。とても短いのに広い世界観を感じることができる。世界をついつい想像してしまう。それにチャゲアスの歌が、またカッコいいんですよこれが。


ちなみに主人公二人、じつはチャゲとアスカがモチーフなんすですよ。


宮崎×チャゲアスの世界、ジブリ好きは必見です。必見です(大事なので2回言いましたw)。

投稿 : 2025/01/25
♥ : 5
ネタバレ

ぶらっくもあ(^^U さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

宮崎駿演出珠玉の7分

1995年「耳をすませば」同時上映の作品、
とりあえず心真っ白にして観られる事をお勧めしたいです、
未来少年コナンやラピュタ、ナウシカも、
詰まってる感じします、
宮崎駿氏らしい演出も嬉しい、
{netabare}
翼の少女を空に帰す、
{/netabare}
ラストも気持ちいいです、

でも、、、、

7分ものですし何度か見返すうち、

いろんなものが観えてくるかも知れません、
{netabare}
田園風景にそぐわない建物は何だろう?
核施設マーク付いたジャイロヘリや施設、
堕ちてゆく三人、
失敗?
フラッシュバック?
EXTREME DANGER?最終警告?
立ち並ぶ核炉、放射能汚染地域?
{/netabare}
これって単純なハッピーエンドなのかな?
それとも、
過酷な現実と夢?
現代社会風刺?アンチテーゼ?
予言?ロマン?

受け手の自由もジブリらしいですが、
この作品ジブリの隠れた名作として、
大作化望む人も多かったとか、
実際作られてたら、、、、、

面白かったと想うな~。


1995年スタジオジブリ制作の短編アニメーション、
(チャゲ&飛鳥の楽曲のプロモーションフィルム)
監督 宮崎駿氏

投稿 : 2025/01/25
♥ : 26
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

7分弱を真剣に見る

 初見でした。7分くらいのミュージックビデオ。
 他の方のレビューがきっかけとなって視聴しました。
 最初に通しで見たときは、何が何やら分からないままに、あっという間に終わってしまいました。2回目以降は、一時停止しながら見ていたんですが、結局かなりの時間を費やしてしまいました。30分以上はは確実に画面とにらめっこしていました。

 相当面白い作品です。宮崎駿監督が描く、清々しくも悲しい世界を堪能できます。短編にもかかわらず、長編と遜色ないメッセージ性があります。時間も短いですし、何回でも何十回でも見て、ストーリーと世界観を把握することに努めてみると、この作品の良さを知ることが出来るのではないでしょうか。理解するためには、一時停止が必須レベルです。

対象年齢等:
 音楽や雰囲気を楽しむためならどなたでも。解釈をするのならば、最低限の知識は必要とされますので、子供には難しいかもしれません。中学生か高校生くらいからがいいと思います。

 以下のレビューは、かなりのネタバレです。未視聴の方は、一度以上視聴したうえで読むことをお勧めします。というか、余計な先入観を持たないように、ネタバレ耐性があっても読まない方がいいと思います。


結局どんなストーリー?:{netabare}
 あるカットの解釈に明確な結論を出せていないために、そこで分岐する二つのストーリーを挙げます。
 一つ目は、「助けられなかった翼の女の子を助けることを想像する話」です。
 二つ目は、一つ目を前提に「翼の女の子すら想像だったという話」です。
 個人的には、二つ目だと思っているのですが、ここではその原因も結論も述べずに、後述することにします。ただ、どちらもこの作品の大半が想像により成り立っているという姿勢は変わりません。翼の女の子が亡くなっていると解釈しているのも同様です。以下の考察では、一つ目を前提として進めていき、最後に二つ目の解釈を追加します。
{/netabare}

世界観:{netabare}
 この世界は、原発がメルトダウンをした後の世界です。核戦争後ではありません。正確に言うとするならば、メルトダウン後にも原発に依存している世界です。根拠となるカットを挙げておきます。

①オープニングに描かれている草原と朽ちた鉄線、無人の民家、民家の後ろの巨大な建物
②頻出する放射能のハザードシンボル
③重装甲の車両
④人類の居住空間が地下になっている
⑤居酒屋のメニューで、合成食料が安く、天然ものが時価となっている
⑥地上にたくさんの原発が並んでいる

 ハザードシンボルといくつかの標識から、地上に人が住んでいないことが分かります。人が住んでいないために手入れがされず、草が生い茂り、鉄線が朽ちています。民家が壊れていないのは、爆発性の災害(核戦争・核爆弾)ではなく、放射線の影響だけがあるからだと思われます。
 民家の後ろにある巨大な建物は、おそらくメルトダウンした原発です。原発がメルトダウンを起こしたために周囲を塗り固められた姿です。いびつな形で塗り固められているのは、その際の緊急性と人間が味わった恐怖の表現なのかもしれません。
 地表が汚染されてしまったため、人類は地下に逃げ込みました。耐放射線の装甲車でなければ、地上には出れなくなっています。また、海も汚染されています。安全な天然食品が貴重になり、やきとり・めざしが時価になっています。合成の塩サバとバイオ酢だこは比較的安価に食べられるようなので、人工的な食料の生産体制は確立されているようです。
 地下世界にもかかわらず、電気が煌々と灯されています。また、食料の生産も潤沢に行われているようです。これらを支えるエネルギーはおそらく複数の原発によるものです。
 人類は、原発の恐怖を知ったにのも関わらず、原発の依存から抜け出すことは出来ませんでした。

 こんな感じだと思います。地上の民家に比べ、地下世界はかなり広大で、かつ、発展しています。つまり、地下に進出してから長い時間が経過しているわけです。地上の別の場所に避難しているのではなく、地下の生活が基本となっているってことです。一基の原発がメルトダウンして、地上の全てが壊滅状態ということは考えづらいので、多数の原発がメルトダウンをしているのかもしれません。翼の女の子が飛び立つ最後のシーンで、もう一基塗り固められた原発が写っているように見えます。メルトダウンをした原発は、海洋汚染が進まないように最低限の封印を施して終わりにしているのではないでしょうか。
{/netabare}

二人の男と彼らの現実:{netabare}
 二人の男は、主題歌を歌っているチャゲとアスカだと思われますが、先入観を除くためグラサンとイケメンと呼称します。この二人は警察の中でも下っ端の存在だと思います。ほぼ最下層と言っていいと思います。根拠は二つです。
 一つ目は、地上のパトロール的な任務に就いていることです。世界観で述べたように、地上は汚染された世界です。そこに行く仕事をしていることから、相当下位の立場であることが伺えます。
 二つ目は、指揮官ではなく、戦闘の最前線に立っていることです。前線のどの位置にいたかというと、突入の先端を担う戦闘のエリートではなく、そのあとからついていく補助的な役割だと思われます。

 おそらく初陣だったのでしょう。凄惨な現場にショックを受けてしまったのが彼らです。兵士が女性を持ち上げて死亡を確認するシーンがありますが、この時に部屋の外から部屋の中を見ていたのがこの二人だと思われます。このシーンでは、背後は光で満ちています。つまり、光の世界にいたと思っていたけれど、現実の闇の部分を見てしまったという描写です。

 ここまでが実際に起こった現実のシーンです。つまり現実はパトロールと襲撃と飲み屋だけ。それ以外は想像の中の世界です。
{/netabare}

翼の女の子:{netabare}
 彼女が亡くなっているのは確定だと思います。
 注目すべきは、彼女が初めて登場した時のカットです。壁を見て欲しいのですが、頭の高さの位置くらいのところから、床の位置まで何かの跡があります。その先にあるのが翼の女の子の頭で、その手前に赤い缶が転がっています。
 このカットでは、赤い缶以外の色が消されています。つまり、赤い缶に注目してくれというメッセージが込められています。赤い缶はコーラだったわけですが、当たり前ですがこれがメッセージのはずがありません。見ろと指示したところにメッセージがないんです。
 これは、「メッセージを隠しましたよ」ということがメッセージになっているんです。「赤い缶で隠しましたよ」というメッセージです。
 赤い缶によって隠されたのは何か。それは「血」です。赤い缶によって「血」を隠したんです。壁の跡も、赤い缶も「血」を描いているけれど、それを隠している。つまり、彼女の「死」を隠したというわけです。壁の跡と頭と赤い缶を直線に並べているのも、血の流れを暗喩しているからです。イケメンが彼女に近づき、死を確認するときには、周囲の色が復活しています。「死」を隠す必要がなくなったから、色が戻ったというわけです。翼の女の子の頭の周りは、赤いもので満ちています。

 他にも根拠はあります。
 宗教ビルの目のマークが動いていますが、これも目を見てくれというメッセージで、死んだ女性と翼の女の子の目の類似性(生気のない目)をアピールしているように思えます。瞬きをしていない彼女らは、死を担っているというです。
 翼の女の子が水を飲むシーンがあります。このシーンでは、胸が大きく動いています。これは鼓動が復活した、つまり、生き返ったという表現です。
 また、装甲車に翼の女の子を乗り込ませるシーンでは、ぞんざいに扱われ、脚が出てしまっています。生きていることを前提とすれば、このような雑な扱い方をするはずがありません。しかも、翼の女の子の身体が固いんです。くてっとならずにピンと張っている。これは死後硬直の描写です。
{/netabare}

襲撃後の展開:{netabare}
 翼の女の子の死亡の描写後に繰り返される映像は、想像のものだと述べました。単に想像しているというよりは、イケメンが考え、口に出したことについて、グラサンが現実的な指摘をすることで、想像の世界をより現実的に修正していっているのだと思います。つまり、会話の映像化です。この作品はミュージックビデオなので、会話をさせることが出来ません。そこを逆手に取ったのだと思います。
 イケメンが話しているのは、「あの翼の女の子がもし生きていたら」という内容です。このイケメンの考えに対して、グラサンが現実的な指摘(否定)をするたびに、想像が頓挫しています。何度も会話を続ける中で「翼の女の子が助けられる出口」を探しているのだと思われます。

 想像だと確信できる理由は、「素顔」です。イケメンとグラサン以外の人物はマスクをしているか、防護服を着ているかで、顔を出していません。つまり、危険な環境下にあるということです。そんな中で彼らだけが素顔を晒しているのは、危険がない想像の世界にいるからです。

①最初の想像は、翼の女の子の死を確認した後すぐに入ります。飲み屋のシーンが出てきていませんが、このシーンから既に想像に入っています。
 このシーンで描かれているのは、「理想」です。「もし死んでいなかったのならば、逃がしてあげたい」というイケメンの「理想」だけが描かれています。地上の背景を見て欲しいのですが、原発など描かれておらず、美しい自然の風景しかありません。翼の女の子も満面の笑顔です。これはイケメンの「理想」だからであって、現実が一つも介入してきていないということです。

②次の想像は、グラサンに「生きていたとしてどう助けるんだ」と指摘された後です。生きていたとしても、周囲にばれずに逃げることは出来ず、連れて行かれてしまうだろうという現実が入ってきています。

③「連れて行かれたのならばその場所から救出すればいい」と展開したのがその後のシーンです。グラサンが解除装置を作り、イケメンが場所を探し当てるという分担をしています。イケメンの周囲に花束が写っていますが、この世界では花自体が貴重なはずです。これも想像の中だからだと思います。もちろんチャゲアス人気のメタファーでもあるでしょう。
 施設に侵入した際には、ハザードシンボルを背に制服で悠々と歩いていますが、グラサンに「さすがに防護服はいるだろ」と指摘されたのだと思います。服装が突如防護服に変わります。
 防護服を着た職員が、風船のように膨らんだだけで倒されてしまうのは、そういう物質を注入したというよりは、「凄惨に人を殺したくない」という戦闘後の心理が影響したためだと思います。
 その後、装甲車に乗って地上に出ようとしますが、ここでグラサンの「追手が来るだろう」という指摘がなされて、作戦は失敗へと帰着します。
 翼の女の子の目や身体に生気がないのは死亡しているためで、彼女が一人で逃げずに懸命にイケメンを助けようとするのは、イケメンの中の彼女はあくまでも理想像であり、彼女を純真なものとしか捉えていないからだと思われます。自分たちを見捨てないだろうということです。また、テーマとも関係します。

④どう考えても成功しないため、ここで一旦当初の目的を思い返すカットが入ります。
 その後の想像で、装甲車が飛行機能を有するようになりました。現実的には救出が不可能だと悟り、当初の目的を達成するためにやや空想側へ寄ったのだと思われます。そもそも装甲車に飛行機能が付いていたのならば、③の時点で飛行していたはずです。飛行した装甲車が事故を起こすのは、グラサンの「飛ばし方が分からない」という現実的な指摘が入ったためでしょう。グラサンが重たいであろうタイヤを蹴飛ばせているのも空想の側面が強くなっているからだと思います。
 そして、オープンカーに乗って地上へと到達します。オープンカーの奪取シーンがないのは、地上が汚染されたこの世界にオープンカーが存在し得ないためか、少なくとも下っ端にはどこにあるのか分からないためでしょう。分からないから考えていないのだと思います。トンネル内で追手がかからないのも、空想に寄ったためにハッピーエンドを急いでいるからです。
{/netabare}

エンディングとテーマ:{netabare}
 ④のトンネルを抜けた先からがエンディングということにします。
 ①(④の当初の目的を含む)の理想とエンディングの描写の同異点を見て欲しいんですが、ここの変わったところと変わっていないところがテーマになりそうな気がします。

 変わっていないところ。翼の女の子が生きていることとオープンカーは変わっていません。あと、翼の女の子が遠くへ飛び立ってしまうのも変わっていないですね。
 翼の女の子は、地表に出て初めて目に生気が宿りますから、汚染された世界でのみ生きていける存在です。オープンカーは、人間にとっては、汚染されていない世界でのみ走れる車ですから、意義としては両者は真逆にあると思います。それの両立を目指している、つまり「叶わぬ夢」です。だから、彼女は遠くに飛び立ってしまうのではないでしょうか。

 変わったところ。背景を比較してほしいのですが、①は美しい自然の風景です。エンディングではトンネルの出口周辺の汚染とドライブ中の背後の原発が描かれています。それと翼の女の子の表情が、満面の笑顔から憂いを含んだ笑みに変わっています。ウインクと指へのキスが追加されています。
 背景の補足をすると、オープニングにもエンディングと同じ表現があります。車が通ったところは草がなく、人が入れないところは自然があふれています。人の通行はないはずですから、本来道は轍として描かれるべきだと思いますが、そうは描かれていません。
 このオープニングとエンディングの背景から考えられるのは、「人の近くからは自然が無くなる」ということだと思います。翼の女の子も、人ではない自然側のイメージを担っています。だからこそ、飛び立ってしまうとも考えられます。

 で、これらの要素が集約されたのが翼の女の子の憂いの笑顔です。
 地上が汚染され、自然から隔離され、人間は地下へ逃げ込み、人を守るはずの警察が暴力をふるう。そんな閉塞の世界を自分たちで作っておきながら、夢を捨てることが出来ない。彼女の笑顔は、そんな人間に対して向けられた笑顔です。慈悲ではなく、憐みの笑顔だと思います。
 想像の世界だということを踏まえれば、二人の男が光を背負って闇を見てしまったときに、人間のエゴとか業というものに気付いてしまった。そんな話だと思います。
 ウインクと指へのキスが意味するところは挨拶だと思います。夢や理想との出会いと別れ、両方の意味が含まれているのではないでしょうか。

 タイトルの「on your mark」も、「位置について、よーい、ドン」の「位置について」なわけですが、「やっと現実というスタートラインに立った」みたいな意味かもしれません。オープンカーは最後に道を外れるわけですが、彼らは夢とか正義を求めたら道を外れる(死んでしまう)世界に生きているわけです。想像の世界でしか夢を語れない彼らは、日常に戻って淡々と日常を送ってから死ぬのか、将来革命家になって死ぬのかは分かりませんが、現時点ではスタートラインなんだと思います。まだ走り出してはいないんです。翼の女の子の憂いの笑顔は、そんな二人への憂いでもあると思います。
{/netabare}

二つ目のストーリー:{netabare}
 簡単に。初めて翼の女の子に会うシーンなんですけど、部屋に入るときにイケメンの姿が半透明なんです。つまり、もしこんな部屋があったら、という想像なのではないかと考えられます。
 兵士によって生死の確認をされた女性と翼の女の子の類似点で、目を挙げましたけど、ぞんざいに扱われていることも共通するんですよね。持ち上げ方と車への押し込み方。現実で見たものが想像の世界に影響してしまったのではないでしょうか。この作品で、素顔を晒している人物、つまり、アイデンティティを持った人物は、二人の男と女性と翼の女の子だけですし、女性の顔を見てしまったから、助けてあげたくなってしまって、この女性を翼の女の子に仕立てて想像を始めた、と展開したように思えたりします。
 もう一つ深読みすれば、女性が持ち上げられているのって、背中なんですよね。その位置から自由の象徴である翼を生やしたのが、翼の女の子なのではないかな、みたいに思ったんです。持ち上げられたシーンと翼の女の子の出会いのシーンにおける近影は、同じ構図のようにも見えます。この辺はちょっと深読みが過ぎるかもしれませんけどね。
 最初の直観がこっちだったというのもあるし、エンディングを見たら「理想なんか叶うわけねぇだろ、それでも夢を見るもんだ」、つまり「翼の女の子が幻想であっても、助けたくなるんだ」と言われた気がしたのもあるし、個人的にはこちらの解釈を押したいですね。ここまで状況証拠が揃えば、あながち突飛な意見でもないと思うのですが、いかがでしょうか。
{/netabare}

投稿 : 2025/01/25
♥ : 11

57.6 4 天使アニメランキング4位
BAYONETTA Bloody Fate(アニメ映画)

2013年11月23日
★★★★☆ 3.4 (63)
311人が棚に入れました
自分が魔女であること以外、記憶を持たない女がいた。彼女の名はベヨネッタ。襲い来る天使を狩る日々を送っていたが、突如舞い込んだ情報により、失われた記憶を求めて、宗教都市ヴィグリッドへと旅立つこととなる。過去の記憶を呼びさます数奇なる出会い。ベヨネッタの過去を仄めかす妖しい女、父の仇と追ってくるジャーナリストの男。そして彼女をマミーと呼び、慕う幼い少女。ベヨネッタの失われた記憶には、一体なにが隠されているのか。その先に待ち受けている、彼女の運命とは・・・?

声優・キャラクター
田中敦子、園崎未恵、浪川大輔、沢城みゆき、玄田哲章、高木渉、若本規夫

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

「CARR-MMA BOWE- COOW!」 アダルティーでスタイリッシュでバイオレンスなアクションゲームの傑作、“まんまアニメ化”の成功に拍手

『バイオハザード』、『デビルメイクライ』、『ビューティフルジョー』、『大神』等数々の名作ゲームを手掛けた神谷英樹によるノンストップクライマックスアクションゲームを忠実にアニメ化した映画


天使と手を取り合う存在である「賢者」と悪魔に通じる存在である「魔女」との間に生まれた禁断の子、ベヨネッタ(以下、ベヨ姉さん)
彼女に隠された失われた記憶の謎と世界の命運を握る秘宝「レフトアイ」の秘密を巡るスペクタクルアクション作品です


公式に言及されたわけではないが『デビルメイクライ』と共通した世界観を持つという作品ですが、アニメ版DMCがハードボイルドを前面に押し出しているのに対し、こちらは耽美でダークネスな原作の雰囲気を追求
主人公ベヨ姉さんの妖艶な魅力、挑発的な言葉使い、一見するとギャグにも見えてしまう前衛的過ぎる乱舞(笑)
これらをまんまそのままにアニメ化したと言えます


基本的にゲームの内容に準拠したものでほぼ全体に渡って戦闘シーンが大部分を占めています
違うのはボスキャラの役割をしている「四元徳」を省略したこと、アニメオリジナルの愛銃「エルフィンナイト」の登場とゲームでの愛銃「スカボロウフェア」の入手方法、それとラスボスの倒し方ぐらい


重力や慣性を無視したベヨ姉さんのアクション、壁に張り付く走り方、両手足に装着された拳銃を用いた独特の格闘術など・・・
ゲームの動きを見事に再現してみせたのは『バジリスク』を手掛けた木崎文智監督とGONZOのタッグ


さらに肝心のベヨ姉さん役にはこれ以上に無い適役ってことで『田中敦子』さんを起用
エノク語の発音もゲームのイメージ通り、ちゃんと「かーまぼーこ」って言うとる(笑)
脇を固める声優陣も超豪華
ロダンに玄田哲章、ルカに浪川大輔、ジャンヌに園崎未恵、バルドルに若本規夫
極め付けはセレッサ(幼女)にみゆきち


BGMもゲームのモノは一切用いていないものの、作品世界観を意識したバロック調がベースのノリのいい曲ばかりでこちらも聞き逃したくない


もう少しオリジナルストーリーで攻めてくるのかと思いきや、純粋に名作ゲームのアニメ化という感じでした
ゲームの雰囲気やアツイ部分(特にセレッサ)がご理解いただける方には是非ご覧になっていただきたい

投稿 : 2025/01/25
♥ : 17
ネタバレ

テンガロン さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

作画は5.0以上のハイクオリティ映像!

ゲーム原作:未プレイ

私は一切この作品の事は知らない状態で視聴しました。

ですので物語は意味不明でした(笑)

全体的なテイストとしては
日本のアニメ会社が作るマーベルコミックアニメという
印象でした。

しかし映像のクオリティはとても素晴らしく
デザインも天野喜孝氏のような独特なイメージがあります。
(どことなくヴァンパイアハンターDを思い出しました)

主人公のベヨネッタ姉さんは
エロチックなSMボンデージ美女で
両手足に拳銃を装備し、
天使という名のEVA量産型のような敵と戦います。

映画「リベリオン」のガンカタのような
近接拳銃バトルのような戦い方はカッコいいです。

個人的にはベヨネッタ姉さんの声は
もっともっと「艶っぽい声」のほうが合ってると
思いました。

この映画を見てからゲームをすると
自分が下手過ぎて「全然違うじゃないか」となりそうなので
やめておきます(笑)

{netabare}
後半のラストバトルは完全に悪ノリです(笑)
木馬が出たときは笑っちゃいました(笑)
こういうエンターテイメント性がある作品は大好きです♪
良いセンスしてますねぇ♪(^^)
{/netabare}

投稿 : 2025/01/25
♥ : 22

サー(*´∀`*) さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

思ってたより悪くない(*´艸`*)

ゲームファンは観ることをおすすめします♪♪違ったシナリオと戦闘中BGMがゲームと同じなので、あのベヨネッタの世界に十分浸れますよ(*´艸`*)

ゲームには劣るだろうと期待してなかったのですが、見事に覆してくれました♪♪
ベヨネッタでは欠かせない、格好いいアクションシーンも普通のアニメのと比べると、
その出来は勝ってるかと♪♪作画も中々Goodでした☆

また、ゲーム未プレイの方でも、【声優、作画、音楽、キャラなど‥】
総合的に悪くない作品だと思います。(物語には若干説明不足を感じるかも‥^^;)
これを機に、ベヨネッタの爽快アクションを堪能してみてはいかがでしょう♪

投稿 : 2025/01/25
♥ : 4
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