えたんだーる さんの感想・評価
4.3
漫才のビジュアライズって、こういうことだよね!(個人的納得)
最終話まで観終わりました。
本作は上方漫才のスピリットをアニメという媒体に見事に落とし込んだ快作で、ノリや勢いが重視されがちな現代の笑いに反したロジックの積み上げによる丁寧な昭和の笑いを提供しています。
漫才が日常をデフォルメして「あり得んやろ」とツッコませつつ、それでもどこかで見たような風景や会話をベースに成り立っている、綿密な脚本によって作られた笑いであることを思い出させてくれるような、古典的な漫才のスタイルを本作は体現していました。
それでいて舞台はしっかりと現代であり、社会状況や作中のガジェットはそれを踏まえたものになっている名作です。
ただ、刺さらない人には全く刺さらない作品でもあるようには思われます。
なお、漫画『てっぺんっ!!!』は時系列的に本作の前日譚ということのようでした。
== [以下は第9話視聴終了時のレビュー] ==
漫画『てっぺんっ!!!』には同じヤングワイワイが出ていますが、直接的なストーリーとしての原作ではなさそうです。
一時お蔵入りが危惧された第2話は9/10に放送・配信されることになったようです。良かった良かった。
アニメでネタにされている事象はちゃんと現代を踏まえたものですけど、ホン(漫才の台本)的には古典的なものを感じるというか、笑いの方向がけっこう昭和を感じさせるものになっています。
同じく女子高生のお笑い芸人が出てくる『まえせつ!』は「お笑い芸人を目指す女子高生の青春ストーリー」を志向していると思いますが、本作では各話ストーリー自体がいわば「漫才をビジュアル化した」ような物なのです。
古典落語を落語家が語っているのに合わせて役者が口パクで演じたドラマを見せるNHK「超入門!落語 THE MOVIE」という番組があるのですが、方向性としてはそれに近い物があるかもしれないです。
つまり、このアニメで各キャラがドタバタ動いているのはその世界で本当に発生している出来事ではなくて、漫才として語っている内容が誇張された表現されたものと考えるととてもしっくりします。
上沼恵美子さんの設定として「淡路島全島を所有している」という物があって、そういう体(てい)でバラエティー番組などに出演して喋ったりしますが、もちろん実際に所有しているわけではありません。
各メンバーのキャラ付けをそうした視点で見てアニメ本編を見るととてもしっくりきます。関西人が日常会話でもいろいろと「盛ってくる」のとも感性的には近いかもしれないです。
というわけで私はこのアニメがものすごく好きですが、まあそんな人がたくさんいるとも思えないのでお勧めできるかどうかは微妙なところですね。