2024年度の友達アニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の2024年度の友達成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2025年03月22日の時点で一番の2024年度の友達アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

67.2 1 2024年度の友達アニメランキング1位
ふれる。(アニメ映画)

2024年10月4日
★★★★☆ 3.5 (17)
60人が棚に入れました
同じ島で育った幼なじみの秋と諒と優太は、東京の高田馬場で共同生活を始め、20歳になっても親友同士。それは趣味も個性も違う彼らを、島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」がテレパシーのような力で結びつけていたから。彼らは身体に触れてお互いの心の声を聴いていたが、ある事件をきっかけに聴こえなくなる。「ふれる」に隠されたもう一つの力が徐々に明らかになり、3人の友情は大きく揺れ動く。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

私にとっては地味にフィフスインパクト

【物語 4.0点】
監督・長井 龍雪氏、脚本・岡田 麿里氏、
キャラクターデザイン・総作画監督・田中 将賀氏。

『あの花』など秩父を舞台にした青春三部作を終えた同チームが、
次に挑んだのは、東京の古民家でルームシェアする20歳の男女5人が織り成す人間ドラマ。

孤島の不思議生物“ふれる”の力により、互いの心が読めるようになった男子3人。

不思議生物“ふれる”はSNSをキャラクター化した側面もあるでしょうか。
心の声を波風立てないように取捨選択して、わざわざ口に出して、相手の腹を探る。
リアルの面倒なコミュニケーションの手順をすっ飛ばして、
男子3人が心の声で繋がって友情を育めてしまう。

しかも“ふれる”は(※核心的ネタバレ)ネタバレレビューを読む 超高性能&余計なお世話なSNS媒体。

“ふれる”が便利過ぎて、男子3人は、狭いフィルターバブルの中に閉じこもりがち。
本作に登場する3人以外の他者は、平気で猫を被るし嘘も付く、目的のためなら打算で他人を利用する。
腹の内では何考えているか分からない。一般社会における“普通の人間”たち。
リアルの人間関係の怖さの好表現により、“ふれる”に依存していたい男子3人の尻込みに説得力を持たせています。

そんな男子3人の元に、“ふれる”なんかに頼らずに友情を築いて来た幼馴染の女子2人、秋の空の女心が来訪。
年頃の男女が、ひとつ屋根の下で、混ざり合うことで、恋の予感も醸される中、
“ふれる”を介した3人の関係性にも変化が、便利な“ふれる”に頼り続けて来たしっぺ返しが訪れる。


終盤には“ふれる”の機能の核心に迫るファンタジー展開もありますが、
主軸はリアルで他者と関わる憂鬱さを描いた、
胃もたれしそうな人間ドラマ。

展開は地味だったはずなのに、私は結構惹き込まれました。


【作画 4.5点】
アニメーション制作は『空青』からこの座組と関わっているCloverWorksが続投。

メインの男子3人の表面上の関係性は“ふれる”を介して明快に説明される。
が、それ以外の人間関係については、例えば意味深な表情から、読み解く労力を、
鑑賞者の側も要求されます。

本音を示唆する表情描写という要求にも同スタジオは流石の解答。
取り扱いに難儀するリアルの他者の気持ち悪さが作画でも詳述されており、私も冷や汗をかきました。

料理の作画、プロップデザインを通じたルームシェアの生活感の変化も味でした。
女子2人が加わると、洗面所に歯ブラシが増え、台所に従来レパートリーになかった新たな調味料が加わる。
その過程が何かエロかったですw

この感度で、小物や、男女の生活ルールにまつわるシチュエーションの変化なども捉えると、
説明セリフなど無くとも、恋愛の進展なんかが、ちゃんとアンテナに引っかかって来る。
終始とても読み解きがいのある背景、作画でした。


不思議生物“ふれる”。
トゲをワサワサと震わせながら、動き回る“ふれる”の挙動には、
セリフがない生物とは思えないほどの存在感はありました。
恋愛の波動を媒介したら赤面する様子も愛らしかったです。

ただ、田中 将賀氏が最初に書いた一発で、制作チームの内輪であっさり決まったと言う、
黄色いハリネズミみたいな“ふれる”のキャラデザ。
私はもっと各方面と突き合わせて試行錯誤して、
“ふれる”自体が鑑賞動機になり得る位のマスコット性を追求して欲しかったかなと、
売れ残った“ふれる”ピンズセットを眺めて思いました。


【キャラ 4.0点】
小野田 秋
BARでアルバイトする長身男子。よく鴨居に頭をぶつけている。
両親不仲な家庭環境のギスギスから、口に出して伝えることに徒労感を覚える生い立ち。
他者と仲良くなりたいと思っていても、口より先に手が出てしまう典型的なヘッジホッグジレンマ。
喋りたくないけど繋がりたい。その想いが“ふれる”を呼び寄せる。

祖父江 諒
体育会系な不動産屋で叱り飛ばされる新人サラリーマン。
何とかなるさという感じで3人の関係性を見守る兄貴分なムードメーカーだが、
その軽さがクレームや人間関係トラブルを招くことも。

井ノ原 優太
デザイナー志望の専門学校生。
口に出して伝えるのも面倒だが、手も出せずに卑屈になってしまう。
秋とは違ったタイプのこじらせボッチ気質。

以上のメイン3人に、
姉御肌の樹里さんと、八方美人なトラブル引き寄せ気質の奈南(なな)さんが、関わってトライアングルなどを絡めて来る構図。


“ふれる”バブル内の人間以外は腹の底が読めないのは上述の通りですが、
それ以上に読めないのは人々を媒介してきた“ふれる”の真意。
登場人物の本音は、言葉にすることで概ね解答されますが、
“ふれる”は無口なので、行動については、最後まで鑑賞者の想像に委ねられる形。

ここでどれだけ“ふれる”含めて感情移入できるかが、終盤ファンタジー局面での感動度を左右しますが、
私は少しは言ってくれなきゃ分からないのでイマイチ感動できず。
この辺りが、人間のみならキャラ4.5点だった評点が4.0点に落ち着いた理由です。


【声優 3.5点】
主演・小野田 秋役・キンプリ・永瀬 廉さん。
祖父江 諒役・俳優・坂東 龍汰さん。
井ノ原 優太役・俳優・前田 拳太郎さん。

メイン男子3人のキャストは若手俳優、タレントをオーディション選出。
永瀬さんは映画『ドラえもん のび太と空の理想郷』でアフレコ経験もあり。
近年、若手俳優らを選りすぐると、自分は声優にも憧れていました、
秩父三部作も観てましたとアニメに理解がある才能が集うので確率が高い。

演技はややたどたどしい面もありましたが、
前向きな姿勢が3人の掛け合いからも伝わって来たのでそこは好感しました。

もっともタレント俳優キャスト陣の中で一番良い味出していたのは、
メイン3人の小学校時代の担任・脇田役の皆川 猿時さんの呑んだくれ演技でしたが。


一方で、樹里役には白石 晴香さん、奈南役には石見 舞菜香さん。
男子3人と交錯する女子2人には実力者声優を配する。
普段なら実力差が引っかかる所ですが、
本作は男子より女子の方が一枚上手なので不思議と違和感は少なめでした。

脇で最近もP王国・異端審問官として活躍されている津田 健次郎さんも登場。
お馴染みのネットリボイスで(※核心的ネタバレ)ネタバレレビューを読む とか言わせちゃイケマセンw(一応褒め言葉のつもりですw)


人気タレント俳優陣をメインキャストにすることで、
朝の情報番組でも取り上げられ、まずまずの上映館数と、
私が行った映画館では1番スクリーンもおさえることができた本作。
が、公開初週日曜の席はガラガラ……。

こんなことならキャスト全員アニメ声優でも変わらなかったのでは?
ちょっと親しげにおしゃべりできたからって樹里さんも、奈南さんも
すぐに次の段階に進める程、人間関係は単純ではありませんし、
イケメンアイドルや俳優でホイホイ客が釣れるほど興行は簡単ではありません。
女子はそんなに甘くないと思います。

やはりこのキャスト布陣はベストではないとの私の邪念は消えずこの評点。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は横山 克氏とTeddyLoid氏。
最近の横山氏はピアノ、ストリングス、エレクトロの中でも、
エレクトロ成分アレンジへの傾倒が目立つ印象ですが本作でも同様。
今回は電子サウンドを得意とするTeddyLoid氏と再び絡み、
渋い人間ドラマとは裏腹に、サウンドは意外と気分爽快。

EDはYOASOBI「モノトーン」で初の劇場アニメ主題歌を担当。
今回も脚本・岡田麿里氏書き下ろしの“原作小説”「ふれる。の、前夜」から
歌詞を書き起こしているため作品解像度は上々。

この原作小説、HPでボイスドラマ配信されているので、
本編ではダイジェストされた学生時代の男子3人、
優太が急激に太って、また元に戻った経緯などを知りたい方は、
一聴されてみてはいかがでしょうか。


【余談】
20歳の男子3人メインのビジュアルに今ひとつ鑑賞欲求が湧いてこなかった俺氏。
引っかかったのが“ふれる”の刺々しいデザイン。
これTVアニメ版『エヴァンゲリオン』でも登場したヘッジホッグジレンマ(ハリネズミのジレンマ)を具現化したような風貌だな。
それで気になって劇場に足を運んだ次第。

『エヴァ』は数次に亘るインパクトの末、
大人になったシンジ君が他者との関係に向き合う覚悟が決まっていくお話でしたが。
大人になり切れない自分にはシンジ君に取り残された感も抱えていまして(苦笑)

そんな私にとって完全に分かり合えない他者の気持ち悪さや、
他者との心の境界が無くなる恐怖などに、改めて向き合った本作は、
東京の一角、相当、小規模ながらフィフスインパクトだったのかなとも感じました。

投稿 : 2025/03/22
♥ : 10

あと さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人は1人では生きていけない、それでも1人で生きていく

 「超平和バスターズ」最新作。今まで思春期の男女関係の衝突やすれ違いを描いてきた岡田麿里さんが描く青年期に変化する人間関係と心の触れ合いのヒューマンドラマ。主人公秋くんが察しの悪いコミュ障で人に触れ合うことが苦手ながら寂しさを嫌う、という現代の若者らしい設定。されどイケメン。タイトルにもあるふれる。という可愛い謎生物によって秘密を共有しながら相手に自分の心を伝えられる能力で男3人組の仲を強固にし、田舎の島から上京し新生活を始め、環境や人間関係、やりたいことが変わってくる変化の過程が丁寧に描かれる。ファンタジーを生かした設定や生々しい会話をするキャラクターたち、コミュ障故になかなか表現もままならず言いたいことも伝えられず、何をやっても上手くいかない生活が続き衝突の末、絶望的な状況にまで陥る。ここまでストレスを溜めるのも今までないが、あくまでこの主人公たちの衝突はふれる。により起こるものというのも面白い。
 作品自体は田中将賀さんのいつものキャラクターデザインで非常に見覚えがある絵なのだが、キャラに魅力がないというか、可愛いキャラがいないのは女性向けなのかとも思うが、それであっても女性キャラの性格が悪い意味でいい感じ(見ればわかります)なのはちょっとキツいんじゃないのか。終盤にかける盛り上がりは新海誠風味なんだけど、あくまでローファンタジーでエンタメ映画にはならないところはあった。岡田麿里さんの脚本は100点。これまた素晴らしい人間関係の衝突にどうにもならない苦悩。まとめ方もメッセージ性も上手く畳んだ印象だった。
 総評としては抜群に面白い映画では無いけど何か世界の見方が変わる映画だった。良作ではあるけど、まあおすすめはできないし、何度も見れるような映画でもない…。

投稿 : 2025/03/22
♥ : 3

75.9 2 2024年度の友達アニメランキング2位
ロボット・ドリームズ(アニメ映画)

2024年11月8日
★★★★☆ 4.0 (10)
22人が棚に入れました
第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされた、サラ・バロンのグラフィックノベルが原作の長編アニメーション。1980年代のニューヨークを舞台に、一人ぼっちで暮らす犬とロボットの友情をセリフやナレーションなしで描く。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

寂寥(せきりょう)感を抱き続ける人生を語った深イイ作品

独り身の寂しさに苛まれるドッグが、
購入した友達ロボットと、“二人”で過ごす日々の悲喜交交などを描いた、
サラ・バロン氏作の同名グラフィック・ノベル(マンガ形式のビジュアルブック。劇場鑑賞後にKindleセールで購読)
のスペイン・フランス合作による長編アニメ映画化作品(102分)


【物語 4.0点】
原作は約200ページ。これを原作同様セリフ、ナレーションなしのアニメーション作品にしても30分程度。
長尺化に当たって、相当なアニオリシーン、設定が追加される。

追加要素を通じて、テーマとして掘り下げられたのが、
人が抱く寂しさへの向き合い方について。

よく青春アニメ何かで、仲間に囲まれている“カースト上位”の“リア充”
“陰キャ”の“ぼっち”が羨望し、奮起して出会いを勝ち取り“リア充”にランクアップ。
このかけがえのない絆は永遠さ。
というテンプレがあって、私も、この種の作風で好きなアニメも多々ありますが。
それは未来が永遠と思える元気な若人だから成立する筋書き。

本作は大人になった擬人化アニマル・ニューヨーカーのドッグのお話。
ドッグを始めとした“ぼっち”は、家族や仲間とつるんでいる“リア充”を見かけては、
自分は何て孤独で寂しい奴なんだと、こじらせがちですが。

現実には永遠の友情だの、愛だの、まずないでしょう。
パートナーと過ごして幸せそうなあの人だって、出会って始まった瞬間から、いつか別れて終わる日を迎える宿命を抱えて生きています。
誰かといたって、いつか関係が霧散するのではとの焦燥で心が休まることはない。
結局、人はどうあがいても孤独なのです。
そして、離別で味わう寂しさと言うのは、“ぼっち”が独り身の孤独に耐えている時の寂寥感とは比較にならない痛みを伴います。

それでも、人が新たな出会いを求めて、誰かと共に何かをして過ごす日々を求め続けることには意味がある。
全編通じて、キチンと苦みも織り込んだ人生訓として価値ある逸品だと思いました。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・BTeam Pictures(西)&Wild Bunch(仏)

シンプル。だが力強い。

作画、背景美術共に、あまりゴチャゴチャと描き込まず、塗りも簡素な2Dアニメ。
が、それだけに、訴えたい心情が明快に伝わって来る作風。

スペインの実写映画監督パブロ・ベルヘル氏は本作がアニメ映画監督初挑戦だったそうですが、
アニメーションへの情熱は本物。

監督の“十戒”なる決意表明がパンフレットに記載されていますが、
2つ目の「この作品では、アニメーションが持つ無限の物語表現の可能性を探求したい。
アニメーションはすべてが可能であり、形式的な制限が存在しない媒体である」
との文言が激烈。

セリフなしの物語を作画で表現せねばならない上、
ネタバレレビューを読む ロボットが見る、現実離れしている夢の映像の実現など、
高ハードルな映像表現が必須な本作でしたが、
映画愛、アニメ愛に燃える監督にとっては望む所だったのかもしれません。


原作がアメリカであり、キャラデザの見てくれから、
オーバーアクション、ギャグ重視なアメコミ風との事前の印象を抱いていましたが、
実際には、むしろ繊細な瞳の動きで心情を訴える、ジャパニメーション寄り。
因みに監督の奥さんは日本人で、本作でもミュージックエディターを務める原見 夕子氏。


監督も実写映画畑を歩んで来たとあってか、アングルへのこだわりも半端なかったです。
“被写体”を多彩な“カメラワーク”で捉えるだけならまだ良作レベル。
本作ではドッグとロボットの周りで活動する動物たちの視点に“カメラ”の焦点を移しつつ、
アングルを切り替える手法が多用され、作品に、賑やかさとリズムを生み出していて。
こういうカットを見る度、私は上手いな~と唸らされました。



【キャラ 4.0点】
原作では舞台はアメリカのどっかの街。
映画化に際して、1980年代の大都会NYに設定を具体化。

主人公・ドッグ。
冒頭アニオリとなった、ドッグが孤独を噛みしめるカットが秀逸で、一気に引き込まれます。
80年代。ひとりの夜など、数チャンネルしかないテレビに面白い番組なければ一瞬で詰むし、
ネタバレレビューを読む
そこへ、寂しいあなた、友達ロボット要りませんか?とCM入れば、そりゃ飛び付きます。

と、同時に、私は、あの80年代世界に、もしインターネットがあったらとの恐怖?も抱きました。
今の世界ってネットの仮想空間が広大過ぎて、独りで、いくらでも時間溶かせてしまうのですよね。
ドッグはロボ購入の他にも、ネタバレレビューを読む
“ぼっち”の中でもかなり行動派。
ですが、こうしたドッグのリアルで出会いを求める勇気も、
ネットSNS上で欠けた心を補完されてしまったら、かき消されて物語が始まらない。
登場しなかったネットの存在の大きさを逆に痛感させられた劇場鑑賞でもありました。


パートナーの友達ロボット。
技術的な原理へのツッコミなど意に介さず、人間の心を深く理解できるロボ設定。
だが立場は所詮、人権もないロボ玩具扱い。
例えネタバレレビューを読む されようと文句は言えない立場。
序盤、ネタバレレビューを読む を見て、
察してしまうロボットの表情が切なかったです。

が、それでも本質的にこのロボットの性根が善性なのが救いでした。
ネタバレレビューを読む にはホッコリさせられました。


アニオリNY設定により、原作からキャラデザもスタイリッシュなニューヨーカーにバーッジョンアップ。
特に凧揚げのダッグは、ただのアヒルさんから、イカしたバイク乗りのダッグへと華麗にイメチェンw


【声優 4.0点】
セリフ無しで字幕版、吹替版の区別すらない。
こんなアニメに声優・基準点3.0ではなく4.0点付けるのは正気の沙汰では無いことは分かっていますが。

アニメ映画制作エピソードで、アフレコ素人の俳優・タレントが、
声だけで演技する難しさ、特に息遣いだけで感情を表す困難性を吐露しているのを、よく見かけます。

その観点から、本作のドッグたちの、
この息遣いなら、もはや言葉は要らないと思わせる演技。
私は率直に巧いと感心してしまったんですよね。


【音楽 4.5点】
劇伴担当はアルフォンソ・デ・ヴィラロンガ氏(西)

クールジャズを多用して80年代NYの喧騒を好演出。
地下鉄で、即興でドラマーがパフォーマンスを披露する様も、
如何にもといった感じで良き。

作品通じてメインフレーズとなったのが、
アース・ウィンド&ファイアーによる往年のR&Bのヒット曲「セプテンバー」(1978)
(私にとっては巨人・阿部 慎之助監督の現役時代の入場曲という印象も強いですがw)
ドッグとロボットの楽しい思い出を繋ぐ。
音楽の記憶は、時に言葉以上に心情を表す好例を示す。


オマージュ、ノスタルジーには懐疑的な見方をしがちな私。
ですがアニメ映画版『スーパーマリオ』や本作などを観ていると、
洋画が世界を再び一つにできる鍵は80年代にあるのでは?
と懐古をこじらせてしまいます。

投稿 : 2025/03/22
♥ : 12

70.0 3 2024年度の友達アニメランキング3位
がんばっていきまっしょい(アニメ映画)

2024年10月25日
★★★★☆ 3.7 (14)
41人が棚に入れました
敷村良子氏による同名私小説を題材にした劇場アニメ化作品となる。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

頑張るってなんですか?(CV.雨宮 天アンニュイモード)

愛媛県松山市。高校の女子ボート部5人+男子部員1人らの青春を描いた、
敷村 良子氏の同名原作小説(未読)の劇場アニメ化作品(95分)
実写映画、テレビドラマ版も未見。

【物語 3.5点】
淡々とした青春作品の佳作。

特に“泣ける”とか、カタルシスなどは狙わず、
後から振り返った時、心に大切な何かを残す志向の作品。
いわゆる“つまらない邦画”の良い部分が滲み出た渋い一本。

主人公“悦ネエ”は小学校の頃は発育で先行し、何でもトップ取れる、クラスのリーダー格として活躍。
が、中学以降は周囲に追いつき追い抜かれ、凡才化。
以後、何事に対しても諦め癖が付き、怠惰な高校生活を送っている。

そこへ埼玉から転校してきた同級生女子が立ち上げたボート部に、
巻き込まれるように入部し、ボートに打ち込む内に、
徐々に負けた時の悔しさとか、頑張る意義を思い出したり。
ちょっとした思い込みから、ボタンの掛け違いが生じて、仲間とのリズムが合わなくなったりして、
やっぱり自分はダメなんだと思い悩んだり。

主人公の葛藤がドラマチックというより等身大。
ヒロインの心情を我が事として糧にできる。
五人の心を一つにできなければボートが前に進まない「一艇ありて一人なし」の精神が好表現されている。
この辺りが、本原作及びメディアミックスが30年近く語り継がれている由縁なのだろうなとは思いました。

最初、伊予の青空や海を全面に強調したビジュアルから、
何で夏公開にしなかったのだろうと不思議に思いましたが、
結局、本作は感動の夏!というより、
じっくりと青春を味わう読書の秋といった風情の文芸作品なのだと感じました。


構成は1時間半の中に、復活したボート部女子5人+元々活動していた男子部員1人の約1年間を粛々と押し込む。
とは言え、序盤、ネタバレレビューを読む 秒で部員集結イベが終了しちゃった時は、
えらいハイテンポだなと、吹き出してしまいましたw


【作画 4.5点】
アニメーション制作・萌&レイルズ共作による3DCG作品。

複雑な水の表現はCGならでは。
水面に映る艇と人物の揺らめき、艇のオールの動きに合わせた波紋の動きなどにリアリティがありました。

後は、伊予の海岸の夕暮れは綺麗でしたね。
“海の見える駅”梅津寺駅の踏切は絵になります。
ただ終盤の重要局面で、松山市駅の観覧車にまで乗っちゃうのは、
ちょっと聖地巡礼狙い過ぎな感もありましたがw

それ以上に私が評価したいのが人物の表情描写による心情の掘り下げ。
ボートに打ち込むに連れ、瞳の輝きのレベルから、
吹っ切れた良い表情になっていく悦ネエはベタですが心地良かったです。
私はライバル校のエース・寺尾 梅子の、こっちを気にしている感じの表情が好きでした。
で、やっぱりネタバレレビューを読む

最初はバラバラだったオールの動きが、どんどん一体になっていくなど、
映像から言葉以上に、ボート部員たちの成長の手応えを感じられる。
こういうアニメーションには、つい加点したくなってしまいます。


【キャラ 3.5点】
原作から“悦ネエ”などのニックネームは継承するものの、
姓名は一新しているという劇場アニメ版。

原作でも“悦ネエ”以外は掘り下げも少なく、
実写映画、テレビドラマ共に他のボート部員など
主人公以外は比較的自由に改変されて来たという本コンテンツ。

地元の有力企業の令嬢として設定された、兵頭 妙子こと“ダッコ”と井本 真優美こと“イモッチ”は、
仲良く喧嘩する、財力をバックに夏休みは合宿場所を提供するなど、
深夜アニメでもよく出没するカップリング造形。

顧問のじっちゃんにしても、ずっと黙ってボート部員の練習を見守り続けて、
終盤に決定的なアドバイスをする。で、ネタバレレビューを読む
という如何にもスポーツアニメ物でありがちなコーチキャラ。

そして美少女5人に囲まれる爆発必至なポジションにも関わらず、
ボート一筋で鈍感力全開な男子部員・二宮くんw

主人公こそ悩みを口に出して相談しない、
真意についても、表情から推し量る必要があるなど、
文芸作品ならではの繊細な乙女心を体現しますが。

キャラクター全体で見ると、部活アニメ物の一式揃ってますって感じで、
意外と私のような深夜アニメ脳でも付いていけました。

だからと言って、エロいシーンとか期待しちゃダメですw
本作は水着回も温泉回もない真面目な部活物ですから。

とは言え、『ラブライブ!』などの西田 亜沙子さんがデザインしたJKは、
やっぱり艶めかしいです。


【声優 4.5点】
三津東高校ボート部員
艇の先頭から順に、

コックス・佐伯姫“ヒメ”……伊藤 美来
ストローク・村上悦子“悦ネエ”……雨宮 天
3番・高橋梨衣奈“リー” ……高橋 李依
2番・兵頭 妙子“ダッコ” ……鬼頭 明里
バウ・井本 真優美“イモッチ”……長谷川 育美
(以上敬称略)

ナチュラルな演技もできる声優を追求してオーディション選出した結果、
結構な豪華声優陣に。

主演の雨宮 天さんの、心のモヤモヤを言葉にできない感じなども伝わって来ました。
クドいようですが私は、“ナチュラルな演技”くらい、俳優やタレントじゃなくても、今のアニメ声優ならばできると思うんですよね。

アフレコ初心者がよく躓くという、飲む息の中に心情を込める芸当も、この布陣ならば容易い。
それでいて“イモッチ”役・長谷川さんの語尾「~ですわ」のセレブな言葉遣いなど、
濃い目のキャラ作りにも対応する。
何より、コックス・ヒメ役・みっくの「キャッチ、ロー」などの掛け声。
声を張り慣れたキャストの指示は、部員にも心にも良く響きます。

拡大を続けるアニメと実写の中間領域においても、
演技面におけるアニメ声優の優位性が着実に高まっていることを実感する作品でした。

ただ、初日初回の劇場内、私含めて観客3人だけでしたがw
有名タレント起用して宣伝してもコケる。人気声優で固めてもコケる。
アニメ映画興行はごく一部の大ヒット作以外は閑古鳥な難しい企画です(苦笑)


【音楽 4.0点】
劇伴担当は林イグネル小百合氏。
ベースとなる北欧音楽の優しい音色を軸に、
時に女性ボーカルバラードも交えつつ、伊予の風情を演出。
一方でボート競技シーンでは疾走感のあるストリングスで押して来る、
攻守にバランスの取れたBGM。

意外性は「野球拳」のフレーズが随所に挿入されたこと。
私も本作で聴いて調べて初めて知りましたが、
そもそも「野球拳」とは愛媛県松山市の伝統芸能が本元の踊り芸とのことで。
お馴染みのメロディが流れても誰も脱いだりしませんのでご安心?下さいw


主題歌は、僕が見たかった青空「空色の水しぶき」
個人的にプロデュースするアイドルのメンバーがピチピチ(死語w)の10代の内は、
作詞の筆も走る印象の秋元 康氏。
本曲も、オールや“がんばっていきまっしょい”を歌詞に入れて来るなど作品解像度もまずまず。
そんなに宇宙的に歌詞を捻らなくても、ベタな言葉で良い青春曲は書けるという感じの佳作。

秋元氏は、眩しいJKの青春劇に、さらに興が乗ったというわけでもないでしょうが、
同グループによる挿入歌「マイフレンズ」も作詞提供。


ところで脱線しますが、乃木坂の“公式ライバル”として昨年デビューしたという僕青。
乃木坂がAKBの公式ライバルという設定は一体どこへw(別に無くなったわけでもなくライバル設定は共存しているらしいですが)
私も、2.5次元ばかりに入り浸ってないで、3次元アイドルの方も、そろそろアップデートしとかないとと、ほんのり危機感を覚えましたw

投稿 : 2025/03/22
♥ : 13
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