Witch さんの感想・評価
3.0
(最終)カタルシスが不足している『なろう』は『なろう』といえるのか
【レビューNo.131】((最終レビュー)初回登録:2024/6/29)
ラノベ原作(なろう発)で2024年作品。全12話。
今期も異世界なろうっぽい作品が多く、ほとんどタイトル切りですが、本
作は「鑑定スキル」が「何の鑑定やねん?!」と気になったので視聴。
出来れば「イセレべ」っぽい「ネタ実況枠」のレビューをやっていきたい
のですが、そこまで香ばしさがある作品かどうかw
(ストーリー)
異世界に転生した主人公アルス・ローベントは、小さな領地を持つ弱小貴
族の子として生きることになった。
アルスには特別な知力や武力はないが、生まれながらにして他人の能力・
ステータスを見抜く“鑑定スキル”を手にしていた。
そのスキルを活かして世に隠れた「逸材」を発掘し、弱小領地から最強の
領地へと変貌させていく。
心優しいアルスと、個性豊かな逸材たちの出会いと成長を描く異世界統一
記が今始まる!
(作品情報より)
(評 価)
・第1話:ゲーム「信長の野望」などを下敷きにした作品かな
{netabare}・1話の大まかな流れですが、
・主人公が現実社会で心臓麻痺っぽい死に方(過労死?)。
→ 田舎貴族のローベント家に「アルス・ローベント」として転生。
・3歳になったアルスは鑑定スキルで、ある兵士の鑑定を実施。
槍より弓矢の適性が高いので、そちらへの転属を勧める。
→ 試してみると一同「おおー!!」
・この世界の文献を調べると、中央政権の腐敗が進み、今後動乱の時
代を迎えそう。
→ 領地を守るためにまずは優秀な人材を集めねば!
・町で鑑定スキルで人材を物色していると、武力が高いマルカ人の少
年リーツを発掘。
(マルカ人は通常奴隷等で差別対象)
→ 当然登用は周りから大反対。
・アルスの熱心な説得の末、この領地最強の父・レイヴンが試験する
ことに。
→ リーツは才能の一端を示し、父や部下たちも彼の才能を認め、
無事アルスの家臣に。
リーツは自分を見出してくれた大恩に報いるためにアルスに忠
誠を誓うのだった。
(まだ大したことをしていないということもありますが)3歳で異常に
しっかりしている点を除けば、悪くない無難な滑り出しだったのでは。
・個人的には光栄ソフトの歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」や
「三国志」を下敷きにしてるのかなっという印象ですね。
これらゲームも武将の能力・ステータスが数値化されていて
・有能な人材を発掘し登用していく
・知力や政治力の高い武将で国力を上げたり、謀略で他国の戦力を削っ
たりしながら戦争準備を整えつつ
・武力の高い武将で周辺国に攻め込んでいく
って感じなので。
この手のゲームは今でもたまにやっているので、なんか愛着が持てた
というのも大きいですかね(笑)
・でも当面は人材発掘でエピソードが創れそうですが、このターンが終
わるとどうみせていくのでしょうか?
発掘した家臣は見せ場がありそうですが、アルスをどう扱っていくの
かがちょっとわからないんですよね。
・ひたすら「アルス様にために!」で担がれる神輿になる
・「鑑定スキル」の拡大解釈でガバガバ設定にw
・現実世界の知見を活かした「領地改革」
(それじゃ劣化「現実主義勇者の王国再建記」になりそうですがw)
まあその辺含め、今後も見守りたい作品ではありますね。
個人的には「イセレべ」のような香ばしい作品になればという感じで
すが、そこまでのパワーはないかもですね。{/netabare}
・第2-3話:早くも手詰まりの予感。大丈夫か?!
{netabare}2人目の人材発掘は、魔法の才をもつシャーロットでしたが・・・
正直2話かけてやるほどの内容ではなかったなっと。
・1話は時間配分がちょうどよく面白く視聴できた
・今回は(極論でいうと)1話と同程度の内容を2話に引き延ばした感じ
→ そりゃ内容も薄くテンポも悪くなり面白くなくなるよね
例えば象徴的なのが2話の冒頭のシーンですが、
・この国の歴史や現状の説明
→ 1話の説明と大分被ってるし、全体的に無駄に長いよね
って感じなんですよね。まあ一事が万事こんな感じで・・・
仮に1クールを12話と考えると
・5話位まで人材発掘に使いたいよね
→ 5人ほど逸材を発掘するぞ!
・ちょっと待て!OP映像では3人しかいなくないか?!
→ 1人を登用するのに2話使うしかなくない?!
しかも
・鑑定スキルって、一目で適正見抜くのですぐに終わるよね
→ よっぽど上手く話を創らないと2話分引っ張るって無理があるやろ!
結構構造的に詰んでいるのかなあって感じがするんですよね。
更に前回懸念事項に挙げたように
・人材発掘した後、鑑定スキルどうするの?
→ 出オチで終わるのか?!
(敵の弱点や外交交渉時の突破口捜し等に使えるかもしれないが)
・逸材3人で回すのキツないか?
等疑い出すとキリがないんですよね。
まあ始まったばかりなので、これからを信じて待ちたいと思いますが。
ただ1話の好調の滑り出しから一転、評価は急降下で次回も構造的に詰んで
ないか?という不安を感じる展開だったかなっと。{/netabare}
・第4話:テンポは戻ったが、今度は作画が・・・
{netabare}前回から3年が経ったようです。
シャーロットも魔法の才能を磨き、ランベルク軍のエースに成長したよう
です。
成長といえば食生活がいいのか、奴隷時代の貧相な体からこちらも立派に
育ったようですが、「とりあえず胸は爆盛りにしとけばいいやろw」みた
いなセンスはどうにかなりませんかね。
またアルス様に双子の弟妹できたようで・・・
2人とも将来有望で、なるほどそういう逸材発掘もあるんかと。
3人目の逸材は、知力の才を持つロセルでした。
まあ攻撃力の高い2人を登用したので、軍師ポジの人材は妥当なところで
すね。
今回はロセルの2人の兄も武人としての才ありというオマケ付きです。
(元々2人の噂を聞きつけて訪問したのがきっかけ)
これを今回は(予想に反して)1話で収めてくれたので、テンポはよく面
白かったですね。
やはり2話構成だと、それなりに緻密に物語を創り込まないと厳しいです
からね。
ただ今度は作画が・・・
元々低予算アニメということもり、作画は多少やむを得ないところはあっ
たのですが、「前回こんなに酷かったっけ?!」という感じで。
特にシャーロットなんか、美少女キャラ台無しだよ!!
今後が不安ですね。
次回はEDを歌ってるリシア回でしょうか。
しかしサブタイの「嵐、来る!」って何なんや?!
まあここまでは「なろう原作」と思えないほど、実直に創られているとい
う印象なので、ここらで1発はっちゃけるのもいいかもしれません。{/netabare}
・第5話:アルス様とリシアの相乗効果を生み出した、いい回だった
{netabare}今回は許嫁のリシア回でした。
サブタイ「嵐、来る」から、周りをひっかき回す”とんでも娘”を予想して
いましたが、
・政治力やコミュ力が高く、思慮深く行動できる
(外面を繕うしたたかさも持ち合わせている)
・観察眼の鋭さや野心の高さから、アルス様を見定めようとしていたが
・アルス様のを本質的な人間性を見極めて、きちんと内面を好きになる
(打算ではなく、純粋に人を愛する真っすぐさもある)
・民のことを慮れる優しさや上に立つ者の器も持ち合わせている
・(今は弱小貴族だが)アルス様の将来性もしっかり見抜いている
本質的な人間性に優れた、好感度爆上がりなキャラでしたね。
”脳筋・シャーロット”との対比も面白く描かれていましたし。
またアルス様の鑑定スキルも人材発掘だけでなく、今後の外交交渉等でも活
躍しそうかなという期待も膨らみましたし。
(またリシアの鋭い観察眼との相乗効果も期待できそう)
ただリシアにドギマギするアルス様は、一見年齢相応で可愛げがあるのです
が、中身は「DTおじさん」だからなあ・・・
まあそれはさておき、リシアをしっかり描くことでアルス様との相乗効果を
生み出した、いい回だったのではないでしょうか。
前回酷かった作画も持ち直していたように思いますし。
人材発掘のターンは終了し、ここから動乱の時代に向けての準備が始まるの
でしょうか。
それに父・レイヴンの病は何かのフラグなんでしょうか。とりあえず介抱に
は向かったようですが・・・
これ無関係だったら逆に何なんやって話ですが。{/netabare}
・第6-7話:ついにアルス様の時代来たる!
{netabare}中央では総督が暗殺され、後継者争いが本格化。
それに伴い、各地にも戦火が及ぶ事態に。
一方のランベルク領も
>それに父・レイヴンの病は何かのフラグなんでしょうか。
やはりレイヴンの病は回復せずに悪化した模様です。
そんな中、レイヴンの代わりに戦場で指揮を取る決意をしたアルス様で
したが、レイヴンの与えた試練
・目の前で罪人の処刑を見ても平常心を保てるか
→ 初めての衝撃的なシーンに耐えきれず
で、戦場にはレイヴンが出陣。見事敵を蹴散らすもレイヴンも病に没し、
ついにアルス様が当主として立つことに。
ようやく1話冒頭のシーンを回収ですね。
「鑑定スキル」自体は単なる「情報収集」のスキルにしか過ぎないので
・その情報をどう活かし見せ場をつくれるか
って話になるのですが、(スキルの性質上地味な印象は否めませんが)
地に足がつき、実直に創ってるなあという印象ですね。
(試練で挫折を描くなども真面目だなって感じですし)
また動乱の時代に突き進むところで、アルス様が当主になるもの上手い
切り替えだと思いますし。
ただここからの「成り上がり」展開をどうするのか。
物語的には一応
・総督の後継者争いの”兄”側につく
という世界観なので、ここでいう「成り上がり」とは
・自らが天下を統一することではなく、”兄”を総督の座につけるため
奮闘することで認められるってこと?
ってところに留まるのかなっと。
(将来的には天下統一ルートもあるかもしれないが)
尺的にも”兄”の要請に呼応し進軍して、強敵と対峙して「俺たちの戦
いはこれからだ!」位で終わりそうなんですよね。
よくも悪くも実直な作品なので、予想を超えてくるのは難しいのかも。
となると創り込みの丁寧さでポイントを稼げるかという感じでしょうか。{/netabare}
(最 終)
1クール使ってまさか人材発掘だけで終わるとは・・・
よく言えば”実直で丁寧”なんですが、このテンポの悪さはさすがにダレる
かなっと。
それに丁寧というよりは、無駄に間延びしている感じもしますしね。
個人的には
・人材発掘以外のエピソードに面白みを感じなかった
・「鑑定スキル=情報収集」ってだけの能力なので、人材発掘以外の見せ
場が創りづらい
「鑑定、この領主さまは凄い人物だ!」→それで?!って感じ
・主人公に魅力を感じなかった
・ただの「いい人」ってだけ
・それに「信長~!」とか叫ぶだけで転生要素が必要だったのかと
・また普段は(中身はおっさんなのに)10歳児のリアクションしてるのも
どうなのかと
・発掘した人材も魅力がイマイチ
・やっぱ戦がないと見せ場がないよね
『なろう』ってかなりガバガバでも、
「チート能力をぶっ放して、有無を言わさず(力業で)解決」
というカタルシスを得ることで、作品のバランスが取れてるように思うので
すが(ガバガバ設定へのツッコミを入れるところも込みでw)、本作はそう
いうのが圧倒的に不足している感じなんですよね。
ではその分(コミック原作のような)話が創り込まれているのかといえば、
そこは”所詮は『なろう』”という感じで、薄っぺらいという印象ですね。
なので通常の『なろう』なら
「ガバガバで都合主義のサクサク展開が『なろう』の醍醐味」
で笑って許せるところを、中途半端に実直に創っている分逃げ場がないって
感じなんですよね。
2期も決定したようで、次は戦のシーンもあるだろうから、そこで発掘した人
材が躍動すれば評価も変わってきそうですが、1期はあまりにもテンポが悪く
個人的には5話の「リシア回」がピークだったかなっと。
・チートで無双すれば「これだから『なろう』は┐(-。ー;)┌ヤレヤレ」と叩かれ
・チートせず実直に創れば「カタルシスが不足している」と文句をいう
視聴者ってホント面倒臭いなあ(笑)