Witch さんの感想・評価
3.9
「東京からきた好きになった男子が鈍すぎてツラすぎる」
【レビューNo.178】(初回登録:2025/4/6)
コミックで2024年作品。全12話。
(ストーリー)
東京から沖縄の学校に転入した主人公・中村照秋は、同級生となった喜屋武飛
夏(きゃんひな)に好意を寄せていた。
しかし彼女が話す「うちなーぐち」(沖縄方言)が強すぎて何を言っているの
かさっぱり分からない。
そんな照秋のために、喜屋武さんの友人である比嘉夏菜が通訳を買って出てく
れているのだが、実は彼女も照秋に絶賛片思い中で・・・
(評 価)
・「沖縄トレビア」が尽きることなく見事に完走
個人的に九州の人とは会社の新人研修の際話したことがありますが、大分の
人は割とまだ分かりますが、鹿児島だとかなりキツかったなあという記憶が
ありますね。
本作は更に独特の文化圏を形成している沖縄が舞台ということで、はじまり
から喜屋さんの「うちなーぐち」がマシンガントークの如く炸裂します。
いやーマジで同じ日本なのかとw
また作中では登場人物が
・中村照秋:てーるー
・喜屋武飛夏:ひーなー
・比嘉夏菜:かーなー
と呼ばれていますが、これも
・沖縄では「比嘉」とか同じ苗字の人が多いので”名前呼び”する
・また2文字の名前を呼ぶときはのばす
というのが慣例になっているようです。
例えば「かなさん」というと「うちなーぐち」では「愛してる」という意味
になるのだとか。
これもしっかり作中でネタとして使われていましたね。
ちなみに「うちなーぐち」はマスターするのに「聞き取り5年、喋り10年」と
言われているそうです。
そんな「うちなーぐち」や沖縄の日常文化等が作中で紹介されますが、正直
「出オチで終わってそのうち飽きるやろ」
と途中切りも視野に入れていたのですが、まあネタに事欠かないことw
「沖縄MEMO」ということで、沖縄トレビアが解説で入るのですが、その
数何と”65”!
1話辺り5個越えという計算になる訳ですが、ホント凄いなと。
これをしっかりコメディに繋げてくる構成が見事です。
エイサー祭りやユタ(霊媒師のような人)といった沖縄独特の文化を紹介し
つつ
・身近なところで「指笛」で1話のエピソードを創ったり
・高校野球ネタで「沖縄返還までアメリカ統治下であった」という歴史を
突っ込んできたり(だから甲子園の土は持ち込み禁止だった)
大小交えて飽きることなく1クールを完走してくれます。
・”てーるー”より”かーなー”の純愛物語
触れ込みは喜屋武さんに好意を寄せている”てーるー”の
「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」
となっていますが、実際は比嘉さんの
「東京からきた好きになった男子が鈍すぎてツラすぎる」
という感じの作品ですかね。
・喜屋武さんが「初恋もまだじゃねぇ!?」って感じの天真爛漫な女の子
・”てーるー”も距離を縮めるために何か積極的に動いている訳でもない
ということで、こちらの2人の仲は何一つ進みません。
なので、この2人だけなら作品として「詰んでる」という感じだったのですが、
ここに比嘉さんというキャラを放り込んだのが上手かったですね。
・彼女が通訳を買って出てるのは(もちろん困っている”てーるー”のためと
いうのもあるが)彼ともっと話したいから
・(今一つ勇気がなく積極的にアプローチはできないが)なんとか距離を縮
めたいという思いは伝わってくる
(手作りサーターアンダギーを渡したり、台風が心配で家に駆けつけたり
となんやかんやと”てーるー”よりは頑張ってるしね)
恋愛については、正直作品の8割以上は比嘉さんのパートじゃないかとw
観ていて「いじらしい比嘉さんカンバレ!!」と応援したくなる作品ですね。
{netabare}(最後にてーるーが比嘉さんを意識したような描写があり、これまでの比嘉
さんの頑張りが少し報われたような感じで終わります){/netabare}
サブキャラの中では、そんな比嘉さんの想いを察した友人・”やーえー”が
彼女のための名サポート役として暗躍するなどいい味出してましたね。
(まあ半分はからかいを楽しんでるという感じですがw)
作品全体としては「ラブコメ」というより上述の「沖縄あるあるの日常系」
という色合いの方が強い作品ですかね。
作中では沖縄文化色を演出するための三線の音色が印象的で、「本土」とは少
し違う時間の流れや空気感を上手く表現していたように思いました。
キャラデザもヒロイン2人や”やーえー”など女子キャラは、沖縄らしい顔立ち
を残しつつ可愛く描けており、作画も安定していたと思います。
爆発的な面白さはありませんが、毎週「沖縄気分」を味合わせてくれた癒し
や「沖縄愛」溢れるいい作品だったのではないでしょうか。
OP『大大大好き/HY』
ED『島人ぬ宝』『あなたに』『Best Friend』
(ともにひーなー & かーなーのカバー曲)
・「『オール沖縄』でしっかり固めました!」というラインナップでしたね。