2019年度の京都アニメーションおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの2019年度の京都アニメーション成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月04日の時点で一番の2019年度の京都アニメーションおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

87.4 1 2019年度の京都アニメーションアニメランキング1位
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ‐永遠と自動手記人形‐(アニメ映画)

2019年9月6日
★★★★★ 4.3 (524)
2609人が棚に入れました
……大切なものを守るのと引き換えに僕は、僕の未来を売り払ったんだ。良家の子女のみが通うことを許される女学園。父親と「契約」を交わしたイザベラ・ヨークにとって、白椿が咲き誇る美しいこの場所は牢獄そのもので……。未来への希望や期待を失っていたイザベラの前に現れたのは、教育係として雇われたヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。

声優・キャラクター
石川由依、寿美菜子、悠木碧、子安武人、内山昂輝、遠藤綾、茅原実里、戸松遥
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

全ての面において極めて高い完成度(舞台挨拶レポート加筆)

TVシリーズの外伝にあたる作品です
例の事件のおかげで正当な続編映画
劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン
は来年一月と発表されていた公開予定を白紙に戻されることになりました

続編映画製作の支援の意味も含めて
3週間の限定公開期間の中で
土日土日土日と6回
うち3回は舞台挨拶付きで観てきました

当初は短いOVAを予定していたこの作品ですが
原作の短編の一つだったお話を
オリキャラ投入して膨らませまくる京アニお得意の手法で
しっかりと見ごたえのある一本の映画作品として仕上げてきました

前回暫定でレビューを上げた際は
物語のみ4.5のトータル4.9で登録しましたが
繰り返してみればみるほど味がある作品で
細かい演出意図に気が付くほどに
物語も含めてよく作りこまれた作品であると気が付いたため
総合5.0へと変更しました

そもそも冒頭のシーンからして
{netabare}アニメオリジナルキャラであるテイラーが
エイミーの名をつぶやいているシーンを無音でやってる{/netabare}くらいなので
しっかりと味わうためには複数回の視聴は絶対条件です

さらに1週目ではなく3周目
つまりは当初予定されていた最後の週の来場者特典に
イザベラ・ヨークと花の雨という
外伝のメインキャラに関する小説がついてきて
読む前と後とではまた違った感覚で本編を楽しむことができる仕掛けになっていました

夏の青ブタ映画もそうですが
期間限定の特典小説が本編の解釈に影響を及ぼすような内容で
しかも品薄でプレミアがついちゃうくらいしか刷ってない
っていうのは昨今の劇場アニメ特典商法の構造的欠陥という気がしますね・・・

~・~・~・~・~・~舞台挨拶レポート(ネタバレ有)~・~・~・~・~・~
{netabare}初週土曜日(石川・茅原・斎藤滋プロデューサー)
初週日曜日(石川・茅原)
2週目土曜日(石川・悠木・寿・内山)
の舞台挨拶に行ってきました

作品に関連したいろいろな話を聞けたので
かいつまんで載せておきます

ヴァイオレット・エヴァーガーデン役
石川由依

ヴァイオレットの役は一目ぼれで
絶対この役をやりたいと思ってオーディションに臨んだので
受かったときはとても嬉しかったそうです

原作のヴァイオレットは短編連作になっていて
それぞれの話の登場人物から見たヴァイオレット像が描かれ
それらをつなぎ合わせることで
ヴァイオレットの全体の人物像が見えてくる
あくまで一人一人の主観の入ったヴァイオレットなので
整合性が取れない部分も別の側面と考えることができる
それに対してアニメは客観的な三人称視点から見たヴァイオレットで
ある程度一貫性を持たせる必要があった
さらに時間とともに少しずつ成長させていく必要があり
時間とともに変わっていく部分と
時間がたっても変わらない部分を
バランスを取りつつ表現していくのがとても難しかったと話していました

映画で一番のお気に入りシーンを聞かれると
イザベラに手紙を渡すシーンで
茂みでこっそり見ているテイラーの横顔が
キラキラ輝いてて見ている方も胸がいっぱいになった
と答えていました
確かにあそこは名シーンですね!

エリカ・ブラウン役&主題歌「エイミー」作詞・歌唱
茅原実里

声優としてというよりは
主題歌アーティストとして呼ばれている感じで
斎藤Pがいたこともあって自然と
「エイミー」についての話が中心になりました

エイミーの歌詞を書いて提出したところ
藤田春香監督から一つ一つの言葉にたいして
細かく意図を聞かれたり改善案を出してもらって
念入りに詰めていって完成した
最後は藤田監督に
「茅原さんの作品なのにたくさん口出ししてごめんなさい」
って謝罪されたものの
みのりんはいいものができて満足しているとのことでした

映画で一番のお気に入りシーンを聞かれて
ダンスシーンと答えていました
前半ラストのイザベラとヴァイオレットのダンスシーンですね
「煌びやかなドレス姿も奇麗だし
流れる音楽も素敵だった」
という発言に対して
「踊るダンスが3拍子のワルツなのも
3という数字に意味を持たせるためだった」
と斎藤Pからも補足が入っていました

ベネディクト・ブルー役
内山昂輝

今回の外伝は最初は2~30分の短編を予定していたそうです
テイラーがらみの後半部分はアニメオリジナルなので
前半部分だけのアニメ化という感じだったのでしょう
ベネディクトの出番はほとんどなく
顔見世程度の役だと思って台本を受け取ったら
まず厚い!
短編の台本とは思えないほど台本が分厚い
しかも中を開いたら後半は自分が準主役になってて
セリフ多!
と驚いたそうです

原作改変にうるさいファンが増え
原作に忠実に作ることを是とする風潮の中
時には原作の原型すら怪しいレベルに魔改造し
なおかつ高い評価を受け続けている
京アニならではのエピソードですねw

イザベラ・ヨーク(エイミー・バートレット)役

寿美菜子

TVシリーズからのメインキャスト陣と比べて
外伝だけのゲストキャラ担当の二人は
舞台挨拶もお祭り感たっぷりというか
終始軽いノリだったのが印象的

三週目特典の外伝小説ががイザベラの内面を描いたお話で
それを舞台挨拶の直前に読んだと
興奮気味に話していました

三週目特典のイザベラ・ヨークと花の雨は
{netabare}イザベラの初恋相手がヴァイオレットだった{/netabare}
っていう内容なので
演じた後であれを読んだら衝撃を受けるのはわかるんですが
逆に言うと演技してる間は知らされてなかったってことですよね?
外伝の内容が公式であるならせめて録る前に教えてあげようよ!(--;

テイラー・バートレット役
悠木碧

テイラーの三つ編みが
はじめはヴァイオレットに手伝ってもらってきれいにできてるのが
少しするとへたくそなぐちゃぐちゃになって
ラストシーンではだいぶうまくなってるのが好き

というお話でしたが
その後繰り返し注意して見てみたものの
いまいち違いが判りませんでした(><;

三つ編みはこの作品のメインとなるモチーフで
ヴァイオレットの真似をして編み込みを作ろうとして失敗するテイラーに
「2つだとほどけてしまいます、テイラー様
3つを交差して編みこむと、ほどけないのです」
というセリフが
二人だけだとほどけてしまったエイミーとテイラーの関係が
ヴァイオレットが間に入ることによって
ほどけない絆になったことを暗示してる
という説明を舞台挨拶のたびにやっていました

みのりんも「エイミー」のサビの歌詞に
編むという言葉をどうしても入れたかったと言ってましたね{/netabare}

~・~・~・~・~・~作品雑感~・~・~・~・~・~

茅原実里が歌唱だけでなく作詞にも携わった
ED曲の「エイミー」の歌詞は
本編とのシンクロ率が非常に高いです
短い歌詞の中に作品の主題をこれほど見事に凝縮しているのは
創聖のアクエリオンやコネクトといった
アニソン史に残る名曲に匹敵するレベルだと思います
{netabare}
鎖で繋がれてた
一人ぼっちの僕達
今宵もあなた想う
永遠に光る ふたつ星

“元気ですか?”
“笑ってますか?”
四角い空眺め
ふわりよぎる
おどけた顔 甘い香り
僕の宝物

編み続けた願いが
届きますように
生きる意味をくれた
希望よ

巡り廻る季節に
負けないように
いつでも この名前を
呼んで欲しい
call my name

小さなビー玉揺れる
白い鳥が 飛び立つ朝

心踊る あぁ、私も
幸せ運びたい
くるくるまわる
風に舞うステップ
花束を 抱いて旅に出よう

編み続けた願いが
叶いますように
魔法かけて
逢いに行くから

遠く遠く離れた場所に
いても聞こえる
この名前が 響いている
call your name

満天の星空
もう離れないように
寄り添って瞬く
ふたつ星

編み続けた想いが
届きますように
歩いて行く 僕も 私も

巡り廻る季節に
負けないように
魔法を唱えてみよう
永遠に愛しい
call my name

1番の歌詞はテイラーを思うイザベラのもの
「鎖でつながれていた」「四角い空」
といったフレーズは全寮制の学園に軟禁された状態を意味しており
テイラーのことを「僕の宝物」「生きる意味をくれた希望」と呼び
―これは、あなたを守る魔法の言葉です。エイミー、ただそう唱えて―
彼女に送った短い手紙に込められた思いが歌詞に凝縮されています

2番の歌詞は「私も幸せを運びたい」
と孤児院を飛び出したテイラーのもの
call my name私の名前を呼んで!というエイミーの願いにたいして
(I)call your nameあなたの名前を呼ぶよ!と返しています

そしてcメロ
「もう離れないように」というフレーズからは
一度は離れてしまった二人の絆が
ヴァイオレットを通じて再び結び直されたのがうかがえます

大サビは「僕も」「私も」という一人称からわかる通り
二人の気持ちを歌ったパートです
―私はテイラー・バートレット。エイミー・バートレットの妹です―
call my nameは離れ離れになった二人の共通の願いとなり
手紙を受け取ったエイミーがテイラーの名前を呼ぶところで物語は終わります{/netabare}

一つだけ残念だったのは
公開の一週間前にアニサマで生で聴く機会があったのですが
奇麗な曲だなという印象はあったものの
もっと思い入れの深い楽曲が目白押しだったこともあり
深く感動するには至りませんでした
あと一週間早く公開していて
映画の内容までしっかり咀嚼した状態で
アニサマのステージで披露される「エイミー」を聞けていたなら
感動もひとしおだったことでしょうね・・・

さて、三つ編み以外にもこの作品では
キャラクターの心情を描くのに
直接的な描写ではなく
間接的に暗示する手法がとられています

その一つが{netabare}天候に関して

アニメがまだ存在しなかった大昔から
芸術作品において天候に関する描写は
登場人物の心の動きを表すものでした

今年公開された同じ京都アニメーションの劇場版作品
イザベラ役の寿美菜子も出演していた
響けユーフォニアム誓いのフィナーレでは
雨の中で口論する久美子と奏が印象的でした
そして口論が終わると同時に晴れ間が出て光が差してくる・・・
このような心象風景と実際の天候とのリンクが
こちらの作品でも印象的に使われていました

劇中で悪天候のシーンは3回

一つ目は授業をサボってどこかへ行こうとと浮かれるイザベラを
「どこへも行けませんよイザベラ様」
とバッサリ斬り捨てるシーン

それまでは木漏れ日の中を歩いていたのに
直後にアングルが変わり
牢獄のように覆い茂る木々に遮られ
光りがまったく届かなくなります
そしてその直後の場面転換で
土砂降りの中で雨宿りをするホッジンズのシーン

この大雨まで含めてイザベラの心を投影している
と考えるべきでしょうね

ふたつ目のシーンは雨ではなく雪
回想シーンの中で
エイミーがテイラーの手を取るシーン

大きなボタン雪がふわふわと降っている中
手の甲に落ちた一粒がすぅっと溶けて水滴に変わります

戦争ので荒んで凍てついたエイミーの心が
テイラーとの出会いによって温められ解けていく様が
見事に表現されていました

そして最後はテイラーのシーン
テイラーが苦手な文字の勉強をしているときは雨が降っており
ベネディクトが午後の配達の時間に迎えに来た途端
空には青空が広がり雨露に濡れた町がキラキラと輝きだし
テイラーの心情と天候のリンクが見て取れます

天候変化のみではなく
同じような効果を狙った演出に
光の使い方があげられます

ヴァイオレットが去っていく日
テイラーに宛てた手紙の代金の受け取りを拒否したヴァイオレットが理由を聞かれ
「自分でもよくわかりませんが受け取りたくないのです」
と答えるシーンでそれまで日陰にいたヴァイオレットに
ゆっくりと光が差し込めていきます

さらに続けてヴァイオレットが去った後の学園の中で
イザベラが日陰から日向に向かって歩き出すと
そこにアシュリー・ランカスターが現れるシーン
「家柄ではなくあなた個人とお話してみたいのです」
と言いながらアシュリーが一歩前に出たことで
彼女の顔が日陰から日向に移動し明るく照らし出されます

この演出はまさに
心象風景の投影そのもので
明るさがそのまま心の距離感を表しているんですね

ヴァイオレットとアシュリーの顔に光が当たっていく様は
同じ京都アニメーションの劇場版作品
テイラー役の悠木碧も出演している聲の形で
主人公が苦手な人物の顔に×印がついて
ラストシーンでそれが一気に剥がれ落ちていくシーン
に通じるものがあると感じました{/netabare}

最後にこの映画のもう一つのテーマについて

{netabare}三つ編みの絆で結ばれた三人とは別に
物語を牽引するもう一人の主人公ベネディクト
もともとの原作にはなかった物語後半部分は
テイラーの物語であると同時に彼の物語でもあります

映画の後半はベネディクトのモノローグから始まりますが
その中に

「時代が変わっても
郵便配達の仕事は何も変わらない
つまんねー仕事」

という一節があります
ポイントとなるのは彼の仕事に対する考え方
つまりは職業観です

職業観は大きく分けて4つのグループがあります
イソップ物語にある3人のレンガ職人という話が
現代版としてアレンジされて4人のレンガ職人という話になって広まっています
少し長いので折りたたんでおきましょう

{netabare}旅人がある国を旅していると開けた土地にたどり着きました
そこでレンガを積んでいる職人たちに遭遇しました
おもむろに旅人は職人の一人に尋ねました
「そこで何をやっているのですか?」

職人は答えました
「見てわからんのか
俺はレンガを積んでいるんだ
暑い日も寒い日も、毎日毎日目の前にあるレンガを積んでいるだけだ
まあそれが俺の仕事だからな」

「それは大変な仕事ですね」
旅人が慰めの言葉をかけると職人は
「なんで俺はこんなことをやらなければならないのか
もっと楽している奴らもいるというのに
まったくついていない人生だ」
と吐き捨てるように言いました
その言葉を背にしながら旅人はさらに歩みを進めました

しばらく行くと別のレンガ職人に出会いました
旅人は尋ねました
「そこで何をやっているのですか?」

「ああ、俺はここで大きな壁を作っているんだよ
これが俺の仕事だ」
「それは大変な仕事ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけました

すると「なんてことはないさ
この仕事のおかげで俺は家族を養っていける
ここでは家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ
俺はここでこうやって仕事があるから
家族全員が喰いっぱぐれずに済んでる
俺はついている方だ」

「そうですか、がんばってください」
旅人は男に励ましの言葉を残して歩き続けました

またもう少し歩くとさらに別のレンガ職人に出会いました。
「ここでいったい何をしているのですか?」旅人は尋ねました。

「ああ、俺達のことかい?
俺たちは歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」

「それは大変な仕事ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけました

「いやいや、これは俺たちの仕事が後世まで語り継がれる可能性がある大事業だ
俺たちは名声を得ることになるし
この大聖堂はいつまでも歴史に残るだろうな
すごい仕事ができているよ
大したものだ」

「そうですか、がんばってください」
旅人は男に励ましの言葉を残して歩き続けました

さらに少し歩くと4人目のレンガ職人に出会いました
「ここでいったい何をしているのですか?」
旅人は尋ねました

「ああ、よく訊いてくれたね
この場所は素敵なところだ
今ここに大聖堂を造っていてね
完成すればこの国の誰もが祈りを捧げる素晴らしい場所になるだろう!」

「それは大変な仕事ですね」
旅人はいたわりの言葉をかけました

「とんでもない!
ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うことになる
何と素晴らしいことだろう!」

旅人はその男にお礼の言葉を残してさらに旅を歩き続けました{/netabare}

最初の職人の労働観がlabor
労働を逃れられない苦役と捉えるグループで
このグループの特徴は労働をとてもネガティブに捉え
辞められるならやめたいが辞めたら生きていけない
あるいはやめたところで別の苦役が待っているだけ
と考え苦しい状況から逃れられずに
鬱病を発症したり自殺したりする割合が最も高いグループです

二番目の職人のグループjobはもう少し割り切っており
お金をもらうための対価として労働を提供するのは仕方ないと考えつつも
できるだけ簡単にたくさんお金がもらえる仕事がいい仕事と考えます
そのため労働に対する金銭的報酬が割に合わない
という不満を持つ人が多いグループでもあります

その次の職人のグループがcareer
careerのグループは仕事を自己実現の手段とみなしています
金銭的な見返りは当然のものとして
それに加えて自らの成長や社会貢献等が不可欠であり
なりたい自分になるための過程に仕事があると考えます
この人たちが嫌がるのは価値を見出しにくい小さな仕事
あるいは代り映えのしないルーチンワーク

冒頭で引用したベネディクトのセリフから
彼のイメージする理想的な仕事像がcareerに近いことと
郵便配達の仕事はその要件を満たしていないと考えていることが伺えます

最後のグループはcalling
もともとはキリスト教において聖職者たちを
神様から声を掛けられた人たちと考えたところに端を発しますが
ルターやカルヴァンが宗教改革の際に
聖職者以外の職業も神様がお与えくださったものである
と考える職業召命の考えを提唱したところから来ています
日本語にすると天職という言葉が当てはまりますね

神様から授かったと考えているかどうかはともかく
この部類の人々は労働そのものが幸せであると考えています
そのためこのグループの人たちは
ただのワーカホリックとみられがちですが
仕事をすることが幸せなのではなく
自分がやっていて幸せだと感じることを仕事にしている
というほうがより適切な認識だと思います

米イエール大学の研究によると
callingに属する人の働く動機は
「社会の役に立っている」
「自分の仕事には意義がある」
という実感だそうです

「郵便配達人が運ぶのは幸せだから」
作中のテイラーが郵便配達人に持っているイメージが
まさにこのcallingなのだと思います
ただし実際に社会に出て働いたこともない10歳の少女の職業観というのは
実体を伴わないある種のファンタジーでしかありません
小学生がプロ野球選手になりたいとかケーキ屋さんになりたいと言っているのと同レベルです

しかし、そのテイラーの純粋な職業観に感化されたベネディクトが
「届かなくていい手紙なんてねぇからな」
と、たった一枚の手紙を届けるために四苦八苦した末に
「郵便配達人が届けるのは幸せ・・・なんだろ?」
と少女の夢想する職業観を肯定するようになりました

ところで、このテイラーという少女ですが
原作にはイザベラに妹がいることがちらりと出てくる程度で
名前すら出てきていません
つまりこの後半の物語はほぼ京アニオリジナルといって良いでしょう
したがってこの作品の職業観は
京アニの職業観に近いと考えても良いかもしれません

徹底的にクオリティにこだわった京アニの制作姿勢には
京アニを離れたアニメーターや同業者から
「やりがい搾取である」
「要求されるレベルが賃金に見合わない」
といった批判が寄せられているのも耳にします

それでも京アニが妥協を許さぬ
高品質な作品を次々世に出しているのは
作り手たちの意識がお金を稼ぐことよりも
自分の仕事が誰かを幸せにするという考え方に基づき
少しでもいい作品を世に送り出して
ファンのもとへ幸せを届けたいという思いで
作品を作り続けているからではないでしょうか?{/netabare}

ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝
この作品のサブタイトルは
-永遠と自動手記人形-
「君の名を呼ぶ、それだけで二人の絆は永遠なんだ」
そんなイザベラのセリフで締められた
この作品のエンドロールには
監督の意向で例の事件で亡くなった多くの方々の名前が
そのまま載せられています
彼らがが作品に込めた思いもまた
ファンが作品を愛し続ける限り永遠なのだと思います

~・~・~・~・~・~旧レビューというかただのお知らせ~・~・~・~・~・~
{netabare}
3週間限定上映だったこの作品ですが
4~5週目の上映が決定しました

行きたくてもスケジュールが合わなかった方は
この機会に劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
ちなみに4週目は書きおろしの色紙が新たな入場特典になり
5週目には初週に品切れでプレミアのついていた特典小説も再配布される模様です

外伝と銘打たれてはいますが
TVアニメシリーズを見ていなくても
これ単体でも十分に楽しめるつくりになっています
もちろんTVアニメと連動した仕掛けなども多く
セットで観ればより深く作品を味わうことができると思いますが
期間限定の上映ということもありますし
先にこの外伝を見たうえで
あとからTVシリーズを見るという楽しみ方もできますよ
・・・と舞台挨拶で話題に上がっており
SNS等でぜひ宣伝してね!
と言われたので上映期間が終わらないうちに取り急ぎ筆を執った次第です

・作品に関する感想・レビュー
・舞台挨拶レポート

を予定していますが
明日も4本アニメ映画を見に行く予定で
(この作品のリピートを含む)
きっちりレビューを仕上げられるのはしばらく先になりそうなので
先に作品の宣伝だけさせていただくことにしました{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 28
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

シリーズ最高傑作 ※当社比

「届かなくていい手紙なんてないのです」

 そして

「私は…愛を知りたいのです」

作品を紐解くキーワード。
TV本編は一話完結型。一話一話の質は高いが全体の繋がりに欠ける。アラカルトだったら美味いのにコース料理になるとまとまりが悪い。私の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』評です。

裏を返せば、事前に劇場版に対する不安はありませんでした。なぜか?

 本編と切り離した外伝だし
 一話完結なら得意領域でしょうよ

作品のファンならまだしも、アニメファン全般いや普段アニメを観ない層の方でも劇場に足を運ぶ理由ができてしまった作品です。もし仮にTV本編がかみ合わなかったことを理由に躊躇っている方でもあまり心配しなくてよいでしょう。

本編と独立していることは初見さんいらっしゃいでもあります。人物背景を知らなくとも楽しめると思われます。ぜひご家族・ご友人誘って一緒に劇場でガン泣きしましょう。

私が鑑賞したのは平日夜の時間帯ということで、半分ちょっと上回るくらいの入りだったでしょうか。ソロの方以外でも、娘さんと一緒のお父さん。学生同士。年配の方は少ないようでしたが万遍ない層が足を運んでおりました。なんかいいですよね、こういうの。女性もけっこうな割合。作品の持つ美しさのなせる業だとブランド力も感じたところです。



さて、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ‐永遠と自動手記人形』であります。
TV本編で何回かあった良回をさらにその4倍以上の尺を貰ってじっくり描いたと言うべき劇場版でした。
映画全体はAパートBパート構成でもあり、TVっぽさを感じもしました。
前半の主役はキービジュアルにある眼鏡をかけた女性イザベラ・ヨーク(CV寿美菜子)。
後半はテイラー・バートレット(CV悠木碧)。
豪華ゲスト声優のお二人とも当たり前のように作品に馴染んでおります。もう凄いのに慣れてしまって麻痺してますね。

実際観ていたら、前半部分だけでも話としては纏まっており、「あれ そろそろ終わりかな?」と軽く勘違いしそうでした。
この前半部分。公式にもある通り、良家の女子ばかりが通う寄宿学校を舞台に物語は進むわけですが、イザベラの心象を表すかのように沈鬱な雰囲気で統一されてます。
それとは対照的なときおり差し込んでくる光の表現がとても印象的でした。窓から差し込む太陽の光。木々を通り抜けた光の筋。月明りに照らされた夜。こういうのこそまさに「劇場に足を運ぶ価値がある」作品ということになるんだと思います。

後半以降は劇場でお確かめくださいませ。※視聴済の方用にネタバレ感想を後述


細かいところでは、エンドロールで流れる茅原実里さん作詞・歌の主題歌『エイミー』が物語に合っていてかつ物凄く良い曲だったのが嬉しかったです。プレッシャーもあっただろうに。そう、物凄く良い曲だったのが嬉しかったのです。
※注 これでも私、『みちしるべ』は作品の世界観に合ってたと思ってる人です。

キャストのどなたかが言ってたと思うのですが、この作品はTV本編後を描いているとのこと。
戦後の混乱から復興。新しい時代の息吹を感じながら、いつものそして新たな一面を見せるヴァイオレットちゃんにあなたも会いに行ってみませんか?


観終わってひとこと・・・

{netabare}「やっぱ届かなくていい手紙なんてないよなあ」{/netabare}




※ネタバレ感想~軽め~

{netabare}■動かしたヴァイオレット 繋げたベネディクト(CV内山昂輝)

起床時間。昔の夢を見たエイミーは寝ぼけ眼で目の前に佇むヴァイオレットにテイラーの姿を重ねる。
また別の場所、別の時。過日のエイミーと同じように今度はテイラーがヴァイオレットにエイミーの姿を重ねる。

一方は心の奥に閉じ込めた想いを、また一方はおぼろげな記憶に小さく留まってた想いを手繰り寄せるきっかけをくれたのはヴァイオレットちゃん。

「手紙を書いてみてはいかがでしょうか?」

エイミーに両の手を握られたヴァイオレットは初めて人の手の温もりを知る。巡り巡って今度はテイラーがヴァイオレットの両手をその小さな手で握り満面の笑みを見せる。

自動手記人形が心と心を結ぶ装置なんだなあ、をあらためて気づかされる場面でした。
物理的に繋ぐのは郵便配達人のベネディクトさんだったりするわけで、ドールと配達人の両輪あってやっと手紙が届くわけですね。

同じ目的「届かなくていい手紙なんてない」を共有している仲間という感じがして、ちょっとばかりお仕事アニメ風な展開にぐっときました。{/netabare}


{netabare}■二人ともよかったね

公式サイトではイザベラとテイラー表記だったのが、エンドロールでは

 エイミー・バートレット 寿 美菜子
 テイラー・バートレット 悠木 碧

と仲良く並んでいました。キャラクターへの気配りが行き届いているところにいつも感心します。{/netabare}




■藤田春香監督

初監督作品とのこと。
TV放送当時にたまさか石立太一さんと藤田春香さんへのインタビュー記事を拝見しました。
冠は石立さんですけど、作業の大半を権限移譲している印象をその記事から受けました。
そして今回。人材育成というキーワードが飛び交っていた制作会社で一つの具体例を目の当たりにした気分です。
調べてみたら別作品ですが、『響け!ユーフォニアム』1期の第8話の演出を担当されてもいますね。言わずもがなファンの間では語り草になっている記憶に残るエピソード回です。

こうして新たな才能が出てきたことはファンにとっても喜びです。と言いますか、初監督作品でこのクオリティはないわー(褒)

外伝は好評のうちに期間限定上映を終えるでしょう。次は正規ルート石立監督の続編です。

 {netabare}“ 鋭意制作中 ”

 座席の下で小さくガッツポーズ!{/netabare}



視聴時期:2019年9月 劇場

-----
2019.10.09追記

二回目行ってきました。三週間期間限定の当初予定が延長されたのです。
初見より、“手紙に込められた想い”を見逃すまいと作品に集中できてよかったです。

{netabare}髪の束は二つでは結べない、と三つ編みをテイラーに施してあげるヴァイオレットが素敵でした。

想いを結ぶ人(配達人やドール)の重要性がわかる演出です。
ふむふむ、なるほど、と。さすが二回目はいろいろと見えてくるものです。


そしたらエンディングで

「編み続けた 願いが 叶いますように」

と詞が耳に入ってきてあえなく撃沈しました。
こんなん泣くやろが(T_T)

二重三重に攻めてこられると防衛しきれません。{/netabare}



2019.09.11 初稿
2019.10.09 追記
2021.08.09 タイトル修正

投稿 : 2024/11/02
♥ : 84
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

幼少期の記憶を思い出させる作品

世界観:8
ストーリー:7
リアリティ:6
キャラクター:7
情感:7
合計:35

<あらすじ>
……大切なものを守るのと引き換えに僕は、僕の未来を売り払ったんだ。
良家の子女のみが通うことを許される女学校。
父親と「契約」を交わしたイザベラ・ヨークにとって、
白椿が咲き誇る美しいこの場所は牢獄そのもので……。
未来への希望や期待を失っていたイザベラの前に現れたのは、
教育係として雇われたヴァイオレット・エヴァーガーデンだった。
(公式サイトより)


相変わらずの業務多忙と家庭事情により、アニメ視聴があまりできない状況ですが、本作は劇場で鑑賞すべきと判断し、何とか時間を作って観ることができました。京アニを応援する面でも、本作は成功してほしいとの思いもありました。

また、個人的な視聴動機は「響け!ユーフォニアム」8話の演出で注目した藤田春香さんの初監督作品という点。あにこれで高得点評価が多かったのは、当然だろうと思っていました。百合がどうのといったツイートを見ていて心配しましたが、全く問題ないので一般の方にもおすすめできます。

{netabare}縁あって貴族の身分となった(親のいない)姉妹。ヴァイオレットが、まずは嫁入り修行のサポートとして姉(イザベラ・ヨーク=エイミー)に出会い、彼女の妹(テイラー)のことを知って、姉が妹に送る手紙を代筆、それを読んだ妹がヴァイオレットに会いに行き、妹が姉に手紙を送るといった物語でした。

錨を降ろす所を水中から見せるアングルなどは藤田さんかなと思いましたが、焦点の当て方や画面の細かな動きなど、1回では見落としも多かったと思われます(もう一度見たい)。姉妹が引き離されて独りぼっちとなった所や、時間の経過をタイムラプスにした表現も良かったです。

リアリティの面で、今回はヴァイオレットの無双シーンがなく、姉妹の親愛が中心に描かれていて良かったです。一方、ヴァイオレットが学園で騎士姫と呼ばれ、苦手そうなダンスまでも完璧にこなす姿(本を何冊も頭に乗っけていたのはコメディでしたね)が、ちょっともったいなかったように思われました。

ヴァイオレットは武器として育てられたので、それ以外の能力は人並み以下としたほうが彼女の個性が活きるように思っています。髪の色や髪型からどこかのアーサー王が想起されてしまうのでね。

彼女は人間らしい感情、感受性が薄いところに個性がありましたが、本作では姉から妹への手紙に、困った時は訪ねるようにとの手紙を加えたり、お代をいただきたくないと言うまでの配慮ができるようになっています(作中、やさしいとの言葉に「真似ているだけ」と返したり、また会えるか問われ、「お客様がお望みなら…」と毎度の台詞を言うシーンはナイスセンス)。

また、テイラーが貴族の捨て子であることをなぜわかったのか、なぜ捨てられたのか(1回の視聴では不明)、エイミー自身も幼いのにテイラーを育てることが可能だろうかといった点は疑問で、リアリティが下がっています。

あと、妹が姉のことを結構忘れてしまっている点。小さい頃に引き離されてしまったため、「エイミー」すら姉の名前であることをはっきりと覚えていない(いるのかもしれないけど微妙な)様子でした。

幼い頃の記憶はノスタルジックですね。私はあまり覚えていないほうで、幼稚園の頃の記憶が一番古いのですが、ということは4~5歳。確かに、それくらい小さければ忘れても仕方がないのかもしれません(テイラーの年齢が不明ですが)。私の場合はどうでも良い記憶なので、これが例えば若くして亡くなった親の記憶などであれば、共感できる人に響くだろうと思います。{/netabare}

映像美は言わずもがな素晴らしかったです。台詞も所々美しく(ベネディクトが男を上げていました)、本編同様に視聴者の心の清らかさを試される気がしました。ヴァイオレット・エヴァーガーデンらしいですね。
ホッジンズの「ヴァイオレットちゃん」はなぜか相変わらず気持ち悪いのですが、ヴァイオレットが大人っぽすぎるからなのでしょう。
音響はランプの灯の音にこだわりを感じました。EDもヴァイオレット・エヴァーガーデンらしく。
声優は、テイラー役が{netabare}鹿目まどかっぽくて(まどマギの見過ぎということかもしれないが){/netabare}、やや集中力をもっていかれたのはやや減点。

他の方も指摘されている通り、1話完結型の作風のため、90分という時間がひとつの物語として最適で無駄なくテンポ良く構成されていました(これが藤田さんの強みかも?)。
本編が普通に楽しめた方になら、当然おすすめできる作品です。

<2021.11追記>
TV初放送を視聴し、評価を微修正しました。
エイミーの一人称の「僕」が少し浮いていて気になりましたが、全体的には初見時よりも心情描写を理解でき、改めて良作と思いました。
テイラーが姉に会わないのもそのほうが自然ですし、将来を想像させる見せ方として良かったです。

(参考評価:4.3→調整4.1→再調整4.2)
(視聴2019.9→再視聴2021.11)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 37

87.5 2 2019年度の京都アニメーションアニメランキング2位
劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~(アニメ映画)

2019年4月19日
★★★★★ 4.3 (423)
1951人が棚に入れました
昨年度の全日本吹奏楽コンクールに出場を果たした北宇治高校吹奏楽部。2年生の黄前久美子は3年生の加部友恵と、4月から新しく入った1年生の指導にあたることになる。全国大会出場校ともあって、多くの1年生が入部するなか、低音パートへやって来たのは4名。一見すると何の問題もなさそうな久石奏。周囲と馴染もうとしない鈴木美玲。そんな美玲と仲良くしたい鈴木さつき。自身のことを語ろうとしない月永求。サンライズフェスティバル、オーディション、そしてコンクール。「全国大会金賞」を目標に掲げる吹奏楽部だけど、問題が次々と勃発して……!?北宇治高校吹奏楽部、波乱の日々がスタート!

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、石谷春貴、藤村鼓乃美、山岡ゆり、津田健次郎、小堀幸、雨宮天、七瀬彩夏、久野美咲、土屋神葉、寿美菜子、櫻井孝宏

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

群像劇としての厚みを出す為に台詞は一言もいらないということを学びました【LIVE ZOUND&イオン幕張ULTIRA感想追記】

※以下の本文では2018年の映画『リズと青い鳥』の略称を“映画『リズ』”、劇中に登場する楽曲「リズと青い鳥」の略称を“「リズ」”、劇中劇としての童話「リズと青い鳥」の登場人物は“リズ”と表記しています


2015年の第1期テレビシリーズ、
2016年の劇場版総集編『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と第2期テレビシリーズ、
2017年の劇場版第2作『届けたいメロディ』、
2018年の映画『リズと青い鳥』、
それらに続く『響け!ユーフォニアム』シリーズの完全新作長篇映画


結論から先に言ってしまうと、【『届けたいメロディ』と『リズと青い鳥』は本作やテレビシリーズとはパラレルワールド】と割り切ってください
本作の世界観は【テレビシリーズ第2期の続き】になりますので特に映画『リズ』との整合性は一致しません
メインスタッフはテレビシリーズでお馴染み、石原立也監督、花田十輝脚本、池田昌子キャラデザ、音楽は松田彬人、京都アニメーション制作


昨年度、全国大会出場を果たすも銅賞に終わった北宇治高校吹奏楽部
ユーフォニアム奏者の黄前久美子は同級生でトロンボーン奏者の塚本秀一の告白を受けて付き合いだす
久美子達は2年生となり、新たな体制となった吹奏楽部で改めて全国大会金賞を目指すことに
昨年度の全国大会出場と、顧問の滝昇先生の人気も相まって新入部希望者は潤沢
低音パートにも4人の1年生が入ってきた
しかし新入生でチューバ担当の鈴木美玲は卓越した演奏技術を持っているものの協調性が無く、同じ低音パート部員達にも馴染めていない
さらに久美子の直接の後輩に当たるユーフォニアム担当の1年生、久石奏もまた社交的な表の顔とは裏腹に部活動そのものに含むところを持っているよう
1年生の指導員を兼任する久美子は1年生の抱える問題を「めんどくさいな~」と口にしながらも積極的に支えていくことになる…


『リズと青い鳥』を除けば『ユーフォ』シリーズにとっては初の完全新作の長篇
劇中ではかなり長い年月の多岐に渡る出来事を合間合間を区切りながら描いており、非常に濃厚な内容の映画と言えるでしょう
具体的には起承転結が3回以上繰り返すと思っていただいて結構です


これまでのシリーズを踏まえた作品なので、最低でも総集編映画である『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』と『届けたいメロディ』の2作はご覧になってから今作をご鑑賞いただくことをオススメします
と、言うのも今作の久美子はとても主人公らしい牽引力を持った人物として描かれますが、それは久美子が1年生の時に“アレだけ色々な事件を経験してきた”からなのです
特に印象的な部分で一人になった久美子が「響け!ユーフォニアム」という楽曲を演奏してあすか先輩のことを思い出したり、吹奏楽の原初的体験である姉との思い出を振り返ったりするシークエンスは、そのシークエンスが持つ久美子の心理描写をセリフや表情だけでは読み取れない形にした高尚な演出になっていると感じることでしょう


また劇中でコンクールの自由曲として選ばれる「リズと青い鳥」という童話をモチーフにした組曲が持つ物語性については、映画『リズと青い鳥』の中で詳しく描かれているので興味があればそちらも是非どうぞ
ただし先述の通り映画『リズ』はパラレルワールドであり、今作と整合性は一致しません
具体的には映画『リズ』劇中の傘木希美だと、ソリストになるだけの実力に及んでいないこも
映画『リズ』劇中で本来はオーボエとフルートが掛け合いをするパートを、(遊び半分だと思うが)久美子と麗奈が練習していたシークエンスが今作には存在しないこと
今作の鎧塚みぞれの性格が明るめに描写されているのでシリーズでは比較的に最も好転的なみぞれが描かれた『テレビ第2期』或いは描写が無かっただけで可能性としては存在する『届けたいメロディ』の世界観の続きと考えるのが自然なこと
この3点から映画『リズ』はパラレルワールドだと推測が出来ます


さて、「リズ」という楽曲を踏まえた上でクライマックスの演奏シークエンスまでに描かれる“群像劇としての『ユーフォ』”について話したいと思います
よくオイラは群像劇が好きだという話をするんですが、『ユーフォ』って登場人物が多い割りにスポットが当たるキャラが非常に搾られていて、ソレはソレでまとまっているという肯定的な観方も出来るんですが、登場人物は多ければ多いほど物語に厚みが欲しい派なんです、オイラは
そういう意味で『ユーフォ』は諸手を挙げて絶賛出来る作品では無かったのですが今作で少し考え方が変わりましたね
と、いうのも劇中では度々にみぞれと希美という2人が見切れるカットがあり、この2人がメインストーリーライン上はともかく、北宇治高校吹奏楽部の、特に「リズ」という楽曲に関しては欠かすことの出来ない重要な人物であることが多くを語らずに表現されているのです
「リズ」の第3楽章が始まるとオーボエとフルートがそれぞれ青い鳥とリズを表現する掛け合いパートがあり、それがこの楽曲において最も印象的なフレーズとして幾度か登場します
そこでこの掛け合いを演奏するのがみぞれと希美というわけ
ですがこの超重要人物2人、なんと台詞が一切として無いんですよね
声優もクレジットされてないのでガヤ等も含めて台詞ゼロは間違いなさそうです
この2人の関係性についてはテレビ第2期、或いは映画『リズ』で散々語られているので今更何か付け加えたところでメインのストーリーラインが散ってしまう恐れもあり、あえてモブの一部として扱っているということなのでしょう
そうまでしてもみぞれと希美を登場させているのは、この2人の存在こそが「リズ」という楽曲の物語性を引き立てているのだと、クライマックスで気付かせる為なんですね
台詞の無い登場人物から物語の厚みを感じるとは…いやはや恐れ入りました
思わず演奏シークエンス中に泣いてしまいましたからね;;


メインのストーリーライン上かかすことの出来ない人物として新1年生も加わり、物語は新しい局面を迎えます
特に鈴木美玲は卓越した演奏技術を持ちつつも孤立しがちな高坂麗奈と似た様な側面を持ちつつも、実際は麗奈ほど孤独を愛しているワケではない“弱い麗奈”とも言える存在であること
そして久石奏もまた、他人との距離感を計ることが得意ながら性根が捻じ曲がった“歪んでしまった久美子”と言える存在であることなど、久美子達2年生世代との対比になるキャラとして設定されてるのが面白い


原作では3年生になった久美子達の物語がいよいよ始まったようですが、3年生篇のアニメ化は正直難しいかもしれませんね…
今作では1年生指導員になったことでまるで悟りを開いたかのような落ち着いた様子で物事に対処する達観した態度の久美子が徐々に見受けられるようになっていきます
でもそれってつまり久美子にその任を指名した、恐らく吉川優子部長と中川夏紀副部長の才なんだと思うんですよ
久美子世代が入学する前に部の雰囲気を険悪にしてしまったのは優子世代ですし、麗奈と香織先輩のソロ争いに物申したのも優子自身、今作で奏ちゃんが途中憤慨するキッカケは夏紀ですし、映画『リズ』の主役は言うまでも無く優子世代
これまでの北宇治の事件には、常にその中核に優子世代がいたわけです
実は物語上の最大のキーパーソンは優子世代だったということになりませんか?
“なかよしがわ”と“のぞみぞれ”がいなくなった北宇治はあんま観たくない…;
というのがオイラの本音ですね


(とか言ってる間に3年生篇のアニメ化が決定しました、オイラが言いたいことは上記の通りなのであとは原作がめちゃくちゃ面白い、とかそういった不確定要素に期待しています)


ところで早見沙織に二言しか喋らせないアニメってなんだよwww


本日、2019/6/5までに4回ほどリピートしましたが4回目に数多くの『ユーフォ』ファンが“最高”と賛辞を贈る川崎チネチッタの8番スクリーン、通称“LIVE ZOUND”が今週で上映終了とのことで初めて足を運んでみました
いや~、本当に最高です!
関東近郊で『ユーフォ』を観る上でこのLIVE ZOUNDを超える劇場は存在しないと断言できます
剥き出しのウーファー2基にフロント左右に吊り下げられたラインアレイスピーカー、と仕様自体は立川シネマツーaスタに似ています
が、箱が正方形の為、音の定位が非常にハッキリしています
環境音、つまり川のせせらぎや人混みの喧騒などに広がりが感じられますし、演奏シークエンスではドコで何の楽器が鳴っているのか、一音一音がよ~く聴こえます
低音や高温が中音にかき消されて無いんですね
序盤の「それが私の生きる道」で左手に夏紀先輩のエレキ、右手に緑輝のベースがいるのが瞬時にわかりますし、クライマックスの「リズと青い鳥」に至っては、もはやこの劇場でなければ100%の音を聞き分けるのは難しいのでは?とすら感じます
セリフ類の音量も確実に上がっているのに、不自然な圧力や歪みは感じられませんので他の上映より数段セリフが聴き取り易いと思います
メインのキャラにセリフが被ってしまっているバックのモブが、何を言ってるのかが明白に解ります
唯一、このLIVE ZOUNDについて注意が必要な点ですが、後ろの席ほど傾斜が付いていて観易く聴き易くはなっているものの、最前列になるとスクリーン位置やスピーカー位置が高いこともあってかなり観上げることになってしまう点です
最前列ではLIVE ZOUNDの真価を体感することは出来ないと思って頂いて結構でしょう


イオンシネマ幕張新都心にてセカンドラン上映が決定し、イオン幕張が誇る8番スクリーンULTIRAで鑑賞してきました
正直音の定位はまぁまぁですかね
音の定位に関しては川崎チネチッタ>幕張≧新宿ピカデリー≧その他という感じです
低音は重く響くまさに重低音という感じですが歪んだ印象は無くクリアです
でも肝心の大型スクリーンが3Dに対応する為にシルバースクリーンなんですよね…『幼女戦記』の時にも同じことを書きましたシルバースクリーンだと色調が暗めになる上に霞が掛かったような靄が掛かった様な映像になります
これはちょっと僕の好みから外れる、というのが結論です

投稿 : 2024/11/02
♥ : 21
ネタバレ

シン☆ジ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

響け。。奏(かなで)の心と、全国大会の空に!

 
はあ・・遂に視聴できた・・
劇場版外伝の『リズと青い鳥』を視聴後、配信まで待てず、いつか観なきゃと思っていましたが・・
↓↓ネタバレじゃないけど作品に関係ないので畳んでおきます↓↓
~{netabare}
2020年某月某日。
まとまった自由な時間がとれることになり、5本で安くなるTSUTAYAレンタルで映画を観よう!と、思い立ちました。
でも・・

とあるキャッチユーザのレビューを拝見して、まさかとは思ってたけど・・そのまさか。
最寄りのTSUTAYA泉古内店に置いてないじゃん・・・orz

となり街の蔦屋書店仙台泉店まで行ってもいいんだけど、ある確証はないし、泉古内店にこの後探しに来る人もいるかも知れないし・・と思い、店内の専用端末で取り寄せしました。多分取り寄せたらその店に置くんだと思うし・・

で、今になってサイト検索してみたら、蔦屋書店仙台泉店にも取り扱いなし・・ちょっとちょっとTSUTAYAさん!京アニなめとんのw

自分みたいに探して諦めてる人って結構いるんじゃないかな。
なんだかなーだよ・・
やはりここは取り寄せて正解ですよね。

ちなみに、この日レンタルした5本は・・
■冴えない彼女の育て方 fine
■青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない
■劇場版 メイドインアビス-深き魂の黎明-
■この世界の(さらにいくつもの)片隅に
■サイコパス3 FIRST INSPECTOR
 (ユーフォがなかったために急遽選定。
  後にアマプラで配信されてることが判明w)
{/netabare}~

さ、いよいよ黄前ちゃんや麗奈との再会です・・

■エピソード
おっとおおーっ!
のっけからそうきますか!ww
~{netabare}
いきなりの、告白シーン・・
久美子の困り顔いただきました(^^)/

で、久美子もOKしたみたいですねw

ユーフォって百合要素あるし恋愛エピソードないのかと思ってたのでびっくり。でも、たまこまーけっとの例もあるし、大歓迎ですよー ^^

まずは新入生の勧誘ですね。
またもやエレキギターやドラムの演奏が・・
吹部って軽音楽もやるんですね。

うへぇ・・1年めんどくせぇw
今回は彼女らが引っ掻き回してくれそうですね ^^;

劇場版『リズと青い鳥』のヒロイン、みぞれと希美は・・
ちゃんといたw

顧問の滝が選択した自由曲は・・リズと青い鳥!
やっぱそうこなくちゃね ^^

今回は吹奏楽部の生々しいドロドロも健在(?)で、本当に部活青春してました。

恋バナの展開も楽しみでした。
ひょっとして、『ちはやふる』的な展開も!?なんて期待してたんですが。
花火大会のあと、恋人関係解消って・・・・
それほど吹奏楽に打ち込みたいってことね。
さすが。この作品は一味ちがうw

コンクール会場にあすか登場。
ちょっと鳥肌が立って、ジワっときた。
魔法のチケットってなんだったのw

この作品のために書き下ろされたという楽曲『リズと青い鳥』。
演奏シーンはヘッドホン推奨です。
衣擦れの音や繊細なハープの音、全体の強弱がよく聞こえます ^^
演奏シーンは凄かった・・・
特にみぞれの演奏シーン、ジーンと来ました (;_;

なのに・・なのに。
みぞれもいるのに、麗奈もいるのに・・
『リズと青い鳥』を最高の演奏をしたのに、金賞なのに・・
全国大会行けないんですか・・
いまの今まで、金賞=優勝だと思ってました。
金賞は何校もあるんですね。
より優秀な高校が多かったってことか。

観直してみれば、演奏終わりのシーンの演出が抑え気味だったかな。
ちょっと力強さが足りないというか。

そして、そういえば、劇場版『リズと青い鳥』はこの話の並列進行なんですね・・

帰りのバスににて・・
奏:
 頑張るってナンですか。
 だからいやだったんです。
 結局ナンにもならなかったじゃないですか。
 あんなに練習して、ケンカみたいなこともして、
 夏休みなのに毎日学校来て。
 バカみたいです、こんなの。

ナンにもならなくはないよ。
でもその価値に気付くのはもう少し後かな。

あの黄前ちゃんも、遂に三年に。そして部長!
みぞれは卒業かぁ・・
でも・・この悔しさを胸に、今度こそ・・・
{/netabare}~

期待に違わぬ絵と音楽の美しさでした。
これまであまり触れられることのなかった、久美子と秀一の関係も気になりました。
やはり1年の新入部員がいい具合にかき混ぜてくれました・・

そして・・これぞ青春! ^^;


■キャラ/キャスト
新キャラ中心に・・
~{netabare}
久石 奏(ひさいし かなで): 雨宮天
1年生。ユーフォニアム担当。
遂に天ちゃんも、京アニに。
七つの大罪から注目してます。
今回、可愛いけどカワイクない、
クセのある個性的なキャラで、
しっかりイライラさせて頂きましたw
これからのキャラなので大いに期待してます ^^

鈴木 さつき(すずき さつき):久野美咲
1年生。ツインテール。チューバ担当。
ええと、どっかで聴いた声。
無彩限のファントム・ワールド(熊枕久瑠美)、
3月のライオン(ヒロインの妹、モモ)、
む、七つの大罪(ホーク)これだ・・

鈴木 美玲(すずき みれい):七瀬彩夏
1年生。高身長でチューバ担当。
cv七瀬さんは・・
慎重勇者(フラーラ)、
お!サクラクエストのヒロイン(木春由乃)、
と、まちカドまぞくの猫(メタ子)・・
今回はおとなしいキャラでしたね。

黄前ちゃん:黒沢ともよ
声優さんの中でも個性的な
セリフの言い回しですね。
声を聴くのは『宝石の国』以来かな・・
第十二回声優アワード主演女優賞受賞の
貫禄すら感じるのは気のせいでしょうか。

麗奈:安済知佳
黒髪ロングなので作中キャラでは最もタイプかな。
安済さんは・・
灰と幻想のグリムガル(メリイ)、
クズの本懐(安楽岡花火)、
サクラクエスト(緑川真希)、
刻刻(佑河樹里)、
ハクメイとミコチ(セン)、
荒ぶる季節の乙女どもよ。(菅原新菜)・・
メインも多いですね ^^

加藤 葉月(かとう はづき):朝井彩加
2年生。チューバ担当。ちょい刺さるキャラw
浅井さんは・・
え。カリメロ(カリメロ)!
スクスト(降神陽奈)・・
お世話になってます。
元気なキャラが多いですね ^^

小笠原 晴香(おがさわら はるか):早見沙織
コンサート会場に来てくれました。
早見さんもマジ天使w
{/netabare}~

水着シーン・・
宇治って泳げる川があるんでしょうか・・
これ、公園かな?
私、気になりますw

エンドロールに山田尚子さんの名前を発見・・
そういえば公開は事件前でしたね。

 原作:宝島社文庫の小説
 制作:京都アニメーション
 公開:2019年4月
 視聴:2020年11月DVDレンタル

ED後も忘れず観てください ^^
3期が待ち遠しいです。
 

投稿 : 2024/11/02
♥ : 35
ネタバレ

はあつ さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

響け!久美子

待ちに待ったテレビドラマの続編。
2年生になった主人公・黄前久美子を中心に、北宇治高校吹奏楽部の新年度の1年間が描かれます。

私は原作未読で、昨年鑑賞した映画「リズと青い鳥」以外、テレビドラマ以降のストーリー情報は一切入れず本作を鑑賞しました。

その上で、テレビアニメ版のファンの1人として素直に満足できたのは、映画の100分間という限られた尺の中で「期待していたモノ」を全て見せきってくれたこと。

「愛着あるキャラ達の個性的で愛嬌に溢れた数々の描写。」
「新しい部員達も含めて描かれる葛藤と熱い思い。」
「主人公・久美子の更なる成長。」
「物語中に組み込まれる心地好さと高揚感のある数々の演奏シーン。」

テレビドラマ(特に1期)で感じたハラハラ、ワクワクの「響け!ユーフォニアム」の魅力がギシギシに詰まっています。

そして更に今回の映画で加わった強い見応え感覚はニヤニヤです♪
同じ京都アニメーション制作の「たまこラブストーリー」のような恋のエッセンスが盛り込まれているのですが、作品の部活物としての熱い雰囲気を損ねる事なく本題のテーマにしっかりマッチした二人の爽やかな進展は、テレビドラマになかった味わいを絶妙に添えています。
本映画の脚本構成の中でもっとも個人的に秀一・・もとい、秀逸に感じました。(オッサンなんでお許しを^^;)

とまあ、映画としては満足するべきなんですが、2クールかけたテレビドラマに比べると、心情描写の時間が少なくキャラクターの掘り下げも不足しているため、テレビ版2期で感じた深みのある感動や余韻は得れたとは言いがたい・・・
欲を言えば、これだけ魅力的な部員達個々のドラマ要素があるのだから、もっと尺をとったコンテで登場人物の一人一人にじっくり感情移入して悲しみや喜びを味わいたかったです。
(テレビのクール放送が無理なら、映画を前後編の2本立てにすれば、本作を観る私のようなファンは必ず2本とも観るから興収も稼げたと思うのだが・・勝手な素人勘定かな・・・制作サイドはプロ集団。この美味しい題材をもっと上手く調理出来るのを承知の上で1本の映画に詰め込んだのは業界の大人の事情なのか?3期に繋げる為の戦略であって欲しい・・)

以下グダグダとネタバレ感想です
{netabare}
「好きなんだけど・・お前を!」
秀一の告白から始まる物語の開幕シーンは自分的にはややサプライズでしたが、それに合わせたオープニングの選曲はジャスト「いい感じ~♪」
交際に絡む反応には久美子らしさが出ててニヤニヤしまくりでした。
中学生でもさっさとキスをする恋愛物が多い中、「そういうことはしない・・」って、お前ら真面目かよっ!
ツッコミながらもラインのやり取りを見て清々しく感じます。
そんな二人のコンクールを前にしての一旦の決断にも純粋なひた向きさが伝わり胸が熱くなりました。
(父親的に将来の二人の結婚を認めます^^)

めんどくさい1年生筆頭、久石奏。

CV雨宮天さんの巧みにキャラの表裏さを感じさせる好演は魅力を引き出してました。
久美子役の黒沢ともよさんとの熱演、雨中での二人の本音をさらけ出した掛け合いは本作一番のエキサイティングなシーン。
「ボケっとした顔・・鏡貸しましょうか。」の奏の毒舌には久美子に悪いがニヤっとも。
相変わらずの熱い久美子節は冷めていた奏の心に火を着けます。
そうして受け継いだ熱い思いを感じさせる「悔しくて死にそうです!」は見事な締めでした。

不憫すぎる~加トちゃん葉月。

後輩の美玲にキツイ態度をとられ、挙げ句今年もオーディション落選。それでも「ゴメンねー」「やったじゃん」常に優しく振る舞います。
描写は少なかったけど、陽気さの影で1年の時から大きなチューバを背負い必死に練習してきた姿が偲ばれ健気さに泣けました。
さつきがなついてくれるのと、サンフェスで演奏する勇姿を映してくれたのがせめてもの救いですが、この娘をコンクールの舞台に立たすためにも続編切望です~

チョッと丸くなった?「特別」麗奈。

再び大吉山のシチュエーションでトランペットの音色と魅惑的な姿にご馳走さま♪
プロ奏者を目指すと言った彼女は、まだなりたい物を見つけていない久美子の良きナビゲーターであり相談友達ですね。
この娘も続編で先生へのLOVEを捧げる演奏をぜひ見届けたい~

「ハイっちゅーもーく!」の優子部長。

前年の晴香部長より貫禄があり堂々の部長ぶりでしたが、コンクールの結果に崩れ落ちる後ろ姿が切ない~~直後の、落ち込む部員達の前での発言は立派でした。
夏紀副部長との絡みと「マジ、エンジェルー♪」が聞けたのが幸いです。


やっぱり凄い!コンクールの演奏シーン

自由曲「リズと青い鳥」のフル演奏。今回も全奏者と楽器を映しだす圧巻の作画です。(風の音を出してた回転ドラムみたいのも楽器?)
みぞれのオーボエが際立つ楽曲は、その音色もさることながら彼女を一周するカメラアングルも巧みでシビれました。
素人の耳には前年の「三日月の舞」と遜色なく聞こえ、むしろ荘厳さを感じるくらい。
しかし全国大会の切符をつかんだのは昨年の北宇治のお株を奪ったかのような、新任ゲンちゃん先生(月永求の親戚?)の龍聖学園。
結果は次年度の展開を考えれば正直予想どおりでしたが、発表の瞬間はドキドキし北宇治の部員達と共に落胆しました~( ´△`)


最後に、押しも押されぬ北宇治高校吹奏楽部の顔に

かつて「ユーフォっぽい」と評された久美子。
ユーフォニアムの楽器紹介を見ると、
低音から高音まで色んなパートに顔を出し、メロディから伴奏までこなす何でも屋。
金管楽器から木管楽器まで幅広く音を合わす事が出来る。
とありました。(知名度が低く影が薄いとも^^;)
作品で映し出される彼女の成長は、まさにその楽器を体現していくかのようです。
テレビドラマでは色んなやっかい事に顔を出しては解決に奔走。
映画では気難しい後輩達を懐柔し、辛い先輩に寄り添う事で色んな人と馴染む術を身に付けます。
劇中、奏に指摘されて見せた本心、演奏を「上手くなりたい」の邪魔になるとわかりながら上手く立ち回ってでも皆と合わそうとする自分の事も認めようとする思いは、久美子自身がユーフォニアムのようでありたいと願っているのかも知れません。
そんな彼女が部長として率いる北宇治高校吹奏楽部の頂点への挑戦と、その先に待つ歓喜の光景が今から待ち遠しいです。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 39
ページの先頭へ