ロードムービーで旅なおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのロードムービーで旅な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月22日の時点で一番のロードムービーで旅なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

75.7 1 ロードムービーで旅なアニメランキング1位
キノの旅(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (639)
4025人が棚に入れました
『キノの旅』の世界には様々な「国」(実態は都市国家)が世界中に散在している。「国」はそれぞれまったく違った文化をもっており、技術的な格差もきわめて大きい。
しかし、各国とも言語は統一されている様子(ただし、1巻「平和な国」では隣国と「言語も違う」と書かれている)。
たいていは高い城壁に囲まれており、城壁内は各国の法律が機能して比較的秩序が保たれている。しかし、城壁の外は盗賊などにも遭遇することがある無法地帯である。
ネタバレ

sukesuke さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

レールの上の三人の男 -On the Rails- について

ストーリーがとても良かった。
各話毎に旅する国が変わっていき、テンポのいい構成。
それでいて、とても深い内容の物語ばかりなのだ。
よって、好きな回は何度か見直した。

2003年なので、いまから十五年も前のアニメ。
やはり作画については見劣る。そして声優の棒読み感。
主人公などの重要なキャラは、まぁまぁ棒読みじゃないのが救いだろう。


さて、あまり書かない感想を書くまでに至った経緯は、
第5話 レール上の三人の男の回 のせいだ。
グーグル検索で感想ブログなどを見ても、いまいち……いや、私が読みたい解説がないのだ。
よってエゴだが、私がここに書き記そうと思った。
きっと私のように感じた人は、私だけじゃないはずだ。
是非、これを読んだ数奇な人は、このアニメの5話まで観てほしい。



以下ネタバレ。
見た人にわかる程度に書く。
                                      
                                      
       {netabare}                              
                                
                                      
                                    
                                  
まず、登場する三人の爺さん達は、全員無意味な仕事をしているが、全うに働いてる事を念頭に置いて欲しい。

一人目のレールを磨く爺さん。
その爺さんの仕事の経緯を聞いたあと、キノが以前旅した国の話しをする。
仕事をしなくていい国だけど仕事をする、という国の話しだ。
それを聞いた爺さんは無意味な事だと捉えた。
爺さんは最後に問いかける。
「ああ。旅人さん。旅人さんは、どこへ――行かれるのかな?」
この言葉の後、意味深な演出と同時にキノの戸惑いの表情が映ってAパートが終わる。

二人目三人目の爺さんも、ほとんど同じ経緯を辿る。
ここでも「ああ。旅人さん。旅人さんは――」(どこへ行かれるのかな)
という爺さんの言葉に同じ意味深な演出が入っている。



この演出はキノの旅について、無意味な仕事を続ける爺さん達と同様、無意味な事だと暗示していると私は解釈した。



そして二度三度とみると、深い気づきへと辿り着いた。
仕事をしなくていい国に出てくる男の話しだ。
しなくてもいい仕事だが、その辛さに応じてポイント(富)が与えられるため、仕事をしなければいけないと教えてくれる。

男は「人をぐうたらにしない何かが人生に必要なんだ。それが仕事だよ」と言う。
それを聞いたキノは皮肉る。「この国での暮らし、気に入っていますか?」と。
キノは爺さん達と同様、この国の仕事は無意味だと感じたということだ。

しかし、この国の話しはキノの旅を擁護している。
ぐうたらにしない何かとは、キノの旅に当てはまるからだ。



我々視聴者は、爺さん達の無意味な仕事や、仕事をしなくてもいい国の話しを無意味だと強く感じた。(はずだ)
さらに演出効果によって、キノの旅も無意味じゃないのかと暗示された。

つまり何が言いたいのかというと、皮肉にも我々やキノや爺さん達に無意味だと揶揄されていた、仕事をしなくてもいい国。
それだけがキノの旅を必要な事だと言ってくれているのだ。
なんてことだ。{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 4

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

「人は誰でも空を行く鳥を見るとさ、旅に出たくなるそうだ…。」

10年ぐらい前だったかな、原作が流行っていたのを覚えています。

当時の私は「ラノベなんて邪道!」と思っていたので、まったく関心がなく。

アニメ化もしてたのかーと知り、アニメを観るようになってからはずっと気になっていた作品でした。

アニメを観終わり、流行っていた当時、なぜ原作を読まなかったのか、とひどく後悔しました。

偏見は自分の人生を不毛にするなあと反省しました。

全13話です。


● ストーリー
モトラド(二輪車)のエルメスと旅をするキノ。

1人と1台が、いろいろな国を旅するお話。

「人の痛みが分かる国」「本の国」「平和な国」など、

ちょっと不思議な国々を短編小説のように訪れていきます。

キノたちの滞在期間は3日と決まっている。

その3日で見えてくる、その国の本質や人々。


淡々とした、物静かなストーリー。

だけどものすごく惹きつけられました。

ファンタジー要素が強いです。しかし、それ以上に伝わってくる人間性。メッセージ性。

寓話的な要素も非常に強いです。

☆寓話…比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭す事を意図した物語。

↑私はこの作品で「寓話ってこういう作品を言うんだ。」とわかりました。笑


物静かで不思議な雰囲気が漂う中、

内容はなかなかむごくて無常です。

しかし、どこか現実の未来の世界を見ているような。

未来の世界、人間のエゴ、きれいごと、理想、闇、隠された本性…。

そんな本質が深くぐっさりと描かれています。

どんなにきれいな理想の世界を追い求めても、

結局世界は救われないんだなーと思ってしまう。

完璧な人間や完璧な世界なんて存在しない。そんなもの無理なんだ。

だからこそ世界は美しい。

救われない世界の、儚い美しさが心にしみました。


この作品を観始めたとき、心が現実に帰ってこれませんでした。心が旅に出てしまいます…。旅に出たくなります…。

このなんともいえない不思議で魅力的な世界が心をとらえて離しませんでした。

これでキノがイケメンだったら、間違いなく私は現実に戻ってこれませんでしたね。そんな自信があります(笑)


● 作画&声優
作画と声優さんは気になるところがあります。

好きになれない、もしくは、観るのをやめてしまう人もいるでしょう。

私も初めはちょっと抵抗がありました。

作画は我慢するとして、

声優さんは聞き続けていると、これはこれで味があるのかなーと思ったりもします。

エルメスの声と話し方だけは最後まで好きになれませんでしたが。笑


マイナスポイントがもったいないですが、

それを上回るストーリーだけで私は十分満足でしたよ。


● 音楽
【 OP「all the way」/下川みくに 】
この曲大好きです!たまりません。

旅する2人にはぴったりの、心地よい曲。

この曲を口ずさみながら原付乗ると旅に出ている気分になって最高に気持ちいい。笑

OPを観てすぐにこの作品が好きになりました^^

EDも旅の夕暮れを連想させる、いい感じの曲でした。


● まとめ
作画等にはくせのある作品ですが、

私は大好きになりました。

これは原作を読まないといけない。

旅物語が好きな人には間違いなくおすすめしたい作品です^^

投稿 : 2024/12/21
♥ : 33

もちすい さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

あなたにとっての“本当の蒼い空”ってなに?

主人公で旅人であるキノが相棒のエルメス(二輪車)と世界を旅するお話で、そのキノを視点にして、国毎に多種多様で一風変わった文化や風習、価値観を描く、という寓話的な物語です。

キノは、ただの視聴者の視点であり、あくまでも傍観者という立場なので、各国を旅しますが干渉はしませんし、基本的に大活躍したりするわけでもありません。

そして、この構図が、視聴者に対して、強くて明確なメッセージ性はないけれど、何らかの波紋を投げかけます。


『キノの旅』は、こんな感じの構造の作品で、人によっては“厭世観たっぷりの人間批判がテーマ”と感じる人も多そうですが、私としては、観た人を考えさせるということ自体がテーマになっていると考えます。

多くの評価されてるような作品において。
難解なテーマ、深い考察をして理解できないと面白くならない。
描かれているテーマに共感、登場人物に感情移入できないと
感動できない。

このように、どんな名作と言われる作品でも、それを楽しめないものに対して排他的な側面を持ちますが、この作品は、視聴者に考えさせること自体が目的で、それを実にわかりやすく、とてもシンプルに描いているので、少なくとも人としての道徳感を形成しているものならば誰しもが平等に「それについてどう思う?」というテーマを(それに対してのリアクションを自分の中で言語化できるできないは別にして)共有できるのではないでしょうか。

・厭世的で観ていて気分が悪い
・キノの達観した人生観に憧れる
・何が言いたいのかよくわからない

などなど、他にも様々な感想があるでしょうが、この作品のテーマはそれらをすべて包んでいるわけです。

面白いとか面白くないとか、そういうことじゃなくて、こういった“作品の持つテーマを誰しもが平等に共有できる”という理由から、この作品を高く評価しています。


なんか変なレビューですいません。
すごく好きな作品なので、
「もっと多くの人が評価してくれたらいいな」
という願望全開のもと、“押し売りセールス”みたいなレビューになってますw

投稿 : 2024/12/21
♥ : 22

83.7 2 ロードムービーで旅なアニメランキング2位
少女終末旅行(TVアニメ動画)

2017年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (974)
3916人が棚に入れました
繁栄と栄華を極めた人間たちの文明が終わりを迎えてから長い年月が過ぎた。人間たちのほとんどが死に絶え、生き物さえもいなくなった終わりを迎えた世界。複雑に建造された都市はまるで迷路のような廃墟となり、整備するものがいなくなった機械たちは徐々にその動きを止めていく。いつ終わってしまったのか、いつから終わっているのか、そんなことを考えることさえなくなった終末の世界であてのない旅を続ける二人の少女。チトとユーリは今日も愛車ケッテンクラートに乗って廃墟の中を彷徨っていた。

終末の世界をほのぼのと生き抜くディストピアファンタジーが今、幕を開ける。

声優・キャラクター
水瀬いのり、久保ユリカ
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

その先にあるのは希望か、絶望か?

原作未読。最終話まで視聴。

【物語】
終末を思わせる風景の中を、二人の少女が旅をする物語。

何故、世界は終末を迎えてしまったのか?
何故、チトとユーリは二人きりで旅を続けているのか?
何故、何故、何故・・・?

物語が進むにつれて増えていく疑問点。

そして、それらが一気に解き明かされる{netabare}最終話{/netabare}。

素晴らしい物語・演出だったと思います。

【作画】
ほのぼのしたキャラデザと、すっかり荒廃した近未来の風景のミスマッチが良かった。

私もチトちゃんと同様に高所恐怖症なもので・・・。
第8話のらせん階段の迂回路のくだりは、見ているだけなのに心臓がバクバクしちゃいました(笑)
見ているだけなのに・・・。
本当に見事だったと思います!

【声優・キャラ】
水瀬いのりさんと久保ユリカさんの好演が光ります。
時折、暴走しすぎるユーリが評価の分かれ目か?

【音楽】
物語には合っていたと思います。
私の好みではありませんでしたけど・・・(笑)

投稿 : 2024/12/21
♥ : 91

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

終末旅してますか? 燃料ありますか? ごはんもらっていいですか?(3の倍数になると「短編映画」になっちゃう!)

同タイトルのマンガ原作は未読です。

第1話を観た限りでは、なんで世界が「滅んで」いるかは視聴者には良くわからないまま、少女ふたりが世界をさまよう「日常」を追いかけるお話のようです。

背景とか物とか人物の動きとか、作画はけっこう良いですね。

なんで乗り物がケッテンクラートとか、ふたりの服は軍服っぽく見えるし銃器もあるけど元軍人というわけでもなさそうだしとかツッコミどころはありますが、ツッコんだら負けな感じですね。

基本的に「生産」というものが行われていない世界のようで、食料も燃料も基本的には遺物に頼るしかなさそうな世界観。

一応、世界が滅ぶ原因は戦争だったようなことは風景やふたりの会話の内容でわかりますが、どんな戦争だったのかは謎でした。

頭脳担当のチトと体技担当のユーリ、非日常的世界のなかでの「日常」を描く物語のようで、この先も楽しみです。

2017.10.14追記:
「エンディングアニメーション: つくみず」- 原作者本人、マジか(笑)!

2017.10.16追記:
原作マンガを読み始めたら止まらなくて一気読みしてしまいました。ちなみに未完です。どこまでアニメ化されるんでしょうね。あと、原作のこの先も楽しみ。

2017.11.4追記:
第5話、音響最高! 演出最高!! 特殊ED最高!!!

2017.12.23追記:
最終話まで視聴完了。うーん、「アート」だなあ…。

シリーズ構成でわざとそうしたのかたまたまなのか知らないんですけど、3の倍数回はわりとその1話でも観れてしまうような「短編アニメ映画」的になっています。

アバンタイトルからのタイトルの出し方や、EDでのクレジットの出し方、脚本(本編中でのイベントの配置)…。

これはやっぱり、狙ってやっていると考えた方がしっくりきますね。

やー、こいつはスゲーや…。

2018.7.18追記:
情報更新。原作は全6巻で完結しています。それと、公式アンソロジー・コミックが1巻出ていて、つくみず先生本人の8ページ作品も収録されています。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 86
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

上を向いて歩こう

WHITE FOX制作。
文明が崩壊し全てが滅んでしまった世界。
チトとユーリは愛車ケッテンクラートに乗り、
瓦礫と化した廃墟を当てもなく彷徨う。

陰鬱でディストピアな世界で、
ゆるいキャラのゆるい会話が心地良い。
BGMは芸術点高し。
登場人物も少なく静かな時間が流れています。

戦争後の瓦礫の山、
放置された機関銃、砲台、戦車。
2人の少女が多層構造の都市を彷徨い、
「戦争」について「食料」について、
そして「生命」について学んでいく。

真っ暗な世界を照らす月明り。
満点の星空を明るいねと言った、
ダイアローグがとても印象に残りました。

5話視聴追記。
{netabare}人が「音」の素晴らしさに気づく。
その対比としての静かな終末世界。{/netabare}
設定の持ち味が存分に活きた素晴らしい演出でした。

最終話視聴追記。
生命の営みに欠かせないものが、
シンプルな形で提示され、
壮大なシナリオでもないのに染みる。
この静寂の世界が如何に雄弁だったのか、
学ぶべきものが多い素敵な作品でしたね。

主役の声優2人に盛大な拍手を。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 105

78.8 3 ロードムービーで旅なアニメランキング3位
キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series(TVアニメ動画)

2017年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (755)
3315人が棚に入れました
主人公の人間キノと言葉を話す二輪車エルメスは、目的もなく、世界をあちこち旅している。世界のあちこちには個性豊かな国があり、人々は自分たちなりの法や常識をもって暮らしていて、キノとエルメスはそんな国々を訪れ、基本的に3日間だけ滞在し、また次の国へと旅立っていくのだ。そんなキノとエルメスの旅の話は、時に優しく、時に哀しく、時に滑稽で、時に胸に突き刺さる。そして、珠玉の物語たちは、一言では言い表せない鮮烈な光景を読者に見せてくれるのだ。“美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい"世界を。

声優・キャラクター
悠木碧、斉藤壮馬、梅原裕一郎、松田健一郎、佐倉綾音、Lynn、興津和幸
ネタバレ

阿紫カービィ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

美徳 悪徳

可愛い?作画なのに

毒のある作品…良心が悲鳴をあげた!



好きなエピソード順に
感想を。



『迷惑な国』
これは…見事な風刺に 開いた口が塞がらなかった。

巨大なキャタピラで、移動をし続ける国と
「通せんぼの国」のお話。

移動を続ける国は
動力炉からでるエネルギーを発散させる為に移動をせざるを得ない、
国民が 色々な景色を楽しみながら旅をしたい、その2つの理由で移動を続けている。

豊富なエネルギーがあるからなの?
この国の民は皆笑顔。

無邪気で 大きな声で挨拶をする子供達、
生活に全く不満がない故、おおらかな大人達、

その皆の笑顔が…とにかく奇妙。

目の前に「通せんぼ」の国が現れる。
通せんぼの国の将軍は、移動する国に当然反発するのだが…

「皆さん 退いてくださーい!怪我をしますよ。」
と普通に注意をするのです。

笑顔の国と怒れる国
どちらが「迷惑な国」なのでしょう…

たとえ「通せんぼの国」が、
他国にとって、キノにとって不都合な国だとしても、
そこで生活をし 農作物を作っている人達も いるのです。



『嘘つき達の国』
とても哀しく あたたかい。
人の心は一体 何なのでしょうか…

心に傷を負った元革命家と
彼を「大切」に思う 人々、身分を隠して「彼」のお世話をする女性のお話。

皆が それぞれの想いを持ち
「彼」を護る為に 嘘をついている

優しさや愛に溢れている嘘つきの国

普遍的でなくとも 幸せというのは容を変えて存在している。
自分にとっての幸せとは何か を考えさせられました。



『羊たちの草原』
いく通りにも考察できて、面白い!
羊を擬人化させての風刺に胸がスカッとします。

「君たちは 何故…そうまでして闘う?」

ほんとだよね。

そして人間はいつから…都合良く勝手に自然を壊し始めたんだろう。。
後始末もろくに出来ないのに。



『雲の中で』
これは「奴隷の少女」と 一人の男性のやりとりで物語が始まり、終わりを迎えます。

「奴隷の少女」の言葉に何を思うか。

{netabare}「私は 人を恨んだり憎んだりしません。人を殺そうと思う事は 悪 です。その様な事を思ってはいけません。それが 真理 ですから。私は今、将来を試されているのです。」{/netabare}

腐った世界で
人でなしだけが 生き残れる世界で

少女はその言葉を心から信じて 守って すがって 生きてきたのでしょう。

しかし
人の心には…どうしても迷いや矛盾が生じる時がある。
辛いけれど…



『人を殺す事ができる国』
1話目に このお話をもってくるとは…凄いと思います。
「屁理屈」に クスッとなる、ある意味、爽快なお話。
瞬時に 心、掴まれました。



全体を通して思ったのは…

謎を少しだけ残して『ん?』と思わせ
後にその謎が解る、というミステリー的な要素もあり、軽く笑えるお話もあり。


「伏線回収」がきちんと成されています。


これは私の我儘なのだけど

「キノの正体」「キノの過去」のお話…
知りたくなかった…です…まだ。




私も旅をしたい!
ブラフ・シューペリアに乗りたい!無理だけど…


人は
いつだって自分の特別な場所を探してるもので。
自分の「国」を作ろうとしてる。




私も頑張ってみようか…な

投稿 : 2024/12/21
♥ : 48
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

モーターサイクルダイアリーズ

時雨沢恵一原作、電撃文庫人気シリーズ。

物語は寓意に満ち溢れた童話短編集、
キノとモトラドのエルメスによる諸国放浪記。

原作の表紙にずっと惹かれていたのですが、
イメージとは違い凄惨な話が続きますね。
キノが銃を握りしめて眠るのが印象的でした。

ここには様々な都市国家が存在していて、
原始的なものから、近代的なものまで、
文化の成熟度まで違います。
様々な人と交流しながら、
街を散策し、人と世界を理解する、
キノを徹底して、傍観者にすることで、
視聴者を舞台に上げることに成功しています。

評価は上がったり下がったりなのですが、
作品を正しく理解するには、
ここで描かれていない、余白にこそ、
真実があるのでは、ないでしょうか。

最終話視聴追記。
最後は不思議な物語で締めましたが、
{netabare}人の身勝手さに皮肉と言った所でしょうか。
11話「大人の国」が良かったですね。
願わくば好きなことをして生きる、
キノの過去が描かれ興味深いものとなりました。{/netabare}
動き出したものだけに世界は開かれるのです。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 71
ネタバレ

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

トータル、前作と同水準

<2020/6/13 追記>
評点4.0→4.2に修正です。
どうやら入力ミスしてたようで。

<2017/12/23追記>
最終回を見終えました。
これまで↓に書いてきたレビューと印象は変わらず。
・声はキャラクターにぴったり
・キャラクターの絵柄は少し馴染めなかった
・お話は好みの分かれる感じの寓話
なので評価は4.2のままとしました。
最終回は大人の国のがしっくりきたような。
なぜ羊(笑

<2017/10/9初レビュー>
最初のアニメと比べると
声は、キノは同じくらいの好感度。エルメスは圧倒的に今作の方が◎。
キャラクターは前作の様にぼんやりしてた方が好みだったな。特にキノが{netabare}女の子に{/netabare}しか見えない(いや{netabare}女の子{/netabare}なんですけどね)のは、物語のあやふや感が減って少し残念。

トータルで見ると前作と同水準を維持。

なので今期楽しみな作品の一つです。

<2017/10/14追記>
読み返したら中身に全く触れてなかったので追記です。以下は前作のレビューからの抜粋コピペです。

あてのない旅を続ける{netabare}少年の様な少女{/netabare}キノと喋るバイク、エルメスのお話。

1話完結というかショートショートの趣ですね。
旅先の国々にはそれぞれ独自の事情があります。
それは風習だったり、ルールだったり、歴史だったり、技術だったり。
現実の世界では当たり前すぎる常識なはずのものを一個だけひっくり返したり、ずらしたり、といったものです。
そうした国でキノとエルメスは何を観て何を感じるのか。
ある種、思考実験じみたお話です。
なんか、そう。
星新一のショートショートの様。

こういうお話は好きですね。

<2017/11/19追記>
評価デフォルト3にしてましたが、今期も半分超えたので評価値付けてみました。
現時点では4.2。
全般的には割と好きなんですが絵が少し苦手かも。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 53

68.8 4 ロードムービーで旅なアニメランキング4位
WOLF'S RAIN-ウルフズレイン(TVアニメ動画)

2003年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (234)
1418人が棚に入れました
200年以上も前に絶滅したと言われる伝説の獣・狼。

しかし、実は狼は時折その姿を人へと変え、人間たちの目を騙しながら、密かに生き延びていた…。そんな狼の若者の1人であるキバは、狼を狼だけに許された世界・“楽園”へと導くという“月の花”の匂いを追い求めていた。そんな中で、ツメ、ヒゲ、トオボエら狼の仲間達、そして楽園一面に咲き乱れると言われる“月の花”より貴族が作り出した“花の少女・チェザ”と出会い、キバは彼らと共に“楽園”を目指すべく、荒廃した世界を舞台に、長く過酷な旅に出る。

nani-kore さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

死ぬ前に観れて良かった!!29話までに泣かない人は人間では無い=^..^=;;

こんなスゴイ傑作アニメがあったなんて~!!
自分、ちょうどアニメから離れていた時期に放映してたから、全然知らなかった。。今ようやく、棺桶に入る前に観られて良かったよ~;;
10年前のアニメだが、画がすごくキレイで、音楽もキャラも声優さんも、みんなみんな素晴らしいよ~~

ストーリーも、もちろん何より素晴らしい。
狼と花と月。。なんて詩情に溢れたキーワードでしょう!
ロマンチックで詩情に溢れた、とっても美しい物語。でも、ちゃんと骨太の近未来(過去??)SFです。
展開がまったり過ぎるってご意見もあったけど、ドタバタ慌てず、無駄にドキドキハラハラ(最近多いなぁ)させられず、ちょうど良いストーリー展開だと私は思うけどな~
ただ途中、4話にまたがる総集編は、たしかに要らんわな~3

パラダイスを求めて旅に出る、4人(匹)の少年狼たち。
4人とも、それぞれがカッコいい!
キバ、すっごくキレイ♪白狼ぴったり♪♪
ツメ、ツンデレ不良少年(ちょっとゲイ受けしそう)。灰狼。
ヒゲ、見た目はフツーだけど、性格がカッコ良すぎる男の子。ちょいポチャ茶狼。
トオボエ、きゃわいい~~!!泣かせるなよ;; 茶子狼。
狼バージョンの4匹も、リアルに描かれつつ、動物の可愛らしさカッコ良さが120%溢れてマス。
動物好き、特に犬好きのヒトにはたまらないんじゃないかなぁ~
イケメン萌えのみならず、動物萌えもできるアニメは、本作だけじゃあなかろうか。

美女達もいますが、ちょっとアダルト。
チェザだけじゃあ、美少女萌えにはちょと足りないかな~
アニメに美少女萌えを求める男性には、ちょっと残念カモね。
他の投稿者の方も書いておられますが、基本、大人向けのアニメだと思う。お話もシリアスで、ギャグ要素はありません。
結構サクッと人が殺されるけど、ショッキングなグロさもなく、あくまでも話の進行上、淡々と死ぬだけ。
この辺りが、昨今のドタバタ・ショッキング・グロい殺人等の表現に慣らされた側から観て、展開がまったりといわれる由縁ではないかと思われる。
エンディングも全てのナゾが解かれたワケではなく、ふんわりと詩情豊かに終わっているので、中途半端というご意見もあるが、何もかもハッキリ解明されて良くも悪くもすっきり終わっちゃったら、詩情豊かでロマンチックな作風全体がぶち壊しになってしまうじゃないか~!コレでいいの=33
ラストは切ねえ;29話までに泣かない人は人間では無い;;

さて、ちょっと古い作品だけに、無料動画で本作を追うのはムズかしかった;
日本語で本作が観たいのなら韓国の動画サイト、YOUでは外国語の吹き替えサイトしか無いのではないか。
実は本作「Wolf's Rain」、海外ではケッコー人気作とみえて、英語のみならず、イタリア、スペイン、フランス、ロシア語まで吹き替えバージョンがある。
仕方なく英語吹き替えバージョンで観たら、アツいレビューが最近まで、一話ずつに何百も書きこみされていた。
「俺は狼になりたい」だの「トオボエ超可愛い」だの「ティッシュをボックスで用意しろ」だの。。世界中で、未だこんなに多くの人に愛されている本作が、日本では影薄く消え去りそうになっているのは、何だかとても寂しい。

ちなみに英語版の声優さん、なかなか素晴らしかった!
日本のアニメの雰囲気を、壊さないようにする努力が伺える。いかにジャパニメーションが愛されているのか、しみじみ分かるようで、なんだかとても嬉しい ^ ^
大人の女性の声はちょっと低め。日本女性の声はカン高くて、外国人からするとヘンらしいからかな?
私もインドでバカにされたことがあるよ。。鼻から抜けたような、カン高い声で歌うインド映画の女優さんを観るかぎり、インド人は言われたくないけど~3
怪我の功名で観た英語バージョン、なかなか良いので、英語の勉強がてら、みなさんも是非お試しあれ♪♪

死ぬ前に出逢えて良かった、心からそう思える良作でした~
もっともっと、キレイなモンに逢ってから逝きたいですよね。。。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 17

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

生き続けるため、行かなければいけない場所がある

人々の暮らす世界で人を惑わし、人の姿を使って生きていた4匹のオオカミ。
主人公のオオカミ、キバを中心に楽園を求めて旅する彼らが、
花の少女、チェザと出逢い人間達の思惑、想いに巻き込まれていく全30話の物語。

カウボーイビバップ制作時に信本敬子さんがオオカミものをやりたいと
言ったことがきっかけになって2003年に制作されたアニメとのことです。
BONSE制作で岡村天斎監督と聞くと後のDARKER THAN BLACKを思い出したりします。


何といっても上記の2作と同じく音楽が菅野よう子さん。
OP「stray」の担当がスティーブ・コンテさんでED「gravity」を
まだ菅野さんの音楽プロデュース中だった坂本真綾さんが歌い、
劇中BGM、挿入歌もシーンごとに感情を惹き込まれるような良曲揃いと、
音楽面での本気っぷりはイヤというほど伝わってきます。

川元利浩さんのキャラクターデザインは人物、動物とも魅力的なキャラが多く、
アニメ本編ではオオカミ達のリアル指向でデフォルメされていないのに感情の動きが
わかりやすく伝わってくる様々な表情、仕草にスタッフの仕事の精密さを感じます。

建物と狭い路地で圧迫感を感じる人間の街や空虚で寒々しい貴族の建物、
旅の中で各々のキャラクターが感情を吐露していく自動車内の雰囲気など
場所、状況の持つ印象をうまく利用した心理描写も良い点だと思います。


さて、本作は菅野よう子さんの音楽が大好きな弟が愛しているアニメで、
数年前からDVDが全巻揃っていたのですが、私は今回初めて最終話を観ました。
ずっとDVDがあったのに、いつも途中で断念してしまっていたのです。
何度観ても本作のイメージが私の中でもやもやして定まらず、
15話から4話続く総集編で飽きがきてしまうんです。
正直総集編は坂本真綾さんがとても好きな方だけ、挿入歌「cloud 9」が
流れる17話Aパートあたりを聴けばいいのかなと思います。
そのパート以外は再生する必要皆無なので14話視聴後はすぐに19話を観ましょう。

19話以降はイメージが固まってきて、かなり物語に引き込まれましたし、
ラスト数話はとても切ない展開で、よくアニメで涙を流す私の中でも
過去に例が無いくらいボロボロ泣いてしまったシーンがありました。


物語全体の完成度というとお話にならないアニメなのかもしれませんが、
最終話視聴後の感慨深さだけは素晴らしいアニメです。
アニメで泣きたい方はなるべく短期間で観れる状況を作って
最後まで鑑賞してみてはいかがでしょうか。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 19
ネタバレ

かんぱり さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

雰囲気やキャラが素晴らしい隠れた良作

遠い昔にあった戦争か何かで滅びかけ、荒廃している世界。
そこでは絶滅したと思われている狼たちが、人間の姿へ変えて生き延びていた。
これは狼たちが幸せに暮らせる「楽園」を求めて旅をする物語です。
全30話。15話~18話が総集編(それぞれ4匹の狼の視点で語られる)になっています。

あにこれでレビューを見て結構古い作品だけど面白そうなので見ることにしました。

キャラデザは結構好きかも。作画もとても良くて、動物たちの動きとかよく描かれていました。
OPやEDはもちろん、劇中曲もなかなか良くて、クレジットを見て納得♬さすが菅野よう子さんです。

この物語の世界観がなかなか掴めなくて、謎が多いまま物語が進んでいくんですが、作品全体に流れる退廃的な雰囲気や渋めだけど温かみも感じるキャラたちに魅力を感じて、最後まで面白く見ることができました。

キバ、ツメ、ヒゲ、トオボエの狼たち。
誰よりも一番「楽園」に行きたいと望んでいるクールな雰囲気のキバ。
他人をあまり信用せず冷たい態度をとるけど、実は仲間思いなところもあるツメ。
鼻が利いて食べ物と女性が好きなムードメーカーのヒゲ。
人懐っこくて優しい性格で4匹の中で一番幼いトオボエ。
狼たちの中ではトオボエが好きでした。彼がいたから4匹はバラバラにならなかった気がします。

人間たちもそれぞれ味があるキャラたちでした。
元警官のハブと狼を殺すために追うクエントのおじさん2人旅の13話は会話ややりとりが面白くて良質なロードムービーを見ているみたいで好きな話でした。

あと次回予告で色んなキャラたちがしゃべるんですが、セリフが洒落てて地味に面白かったです。

終盤、{netabare}キャラたちが次々と亡くなっていくんですが、ちょっと強引な展開もあったりしてそこはもう少し丁寧に描いて欲しかったです。
見終わってもたくさんの謎は結局明らかにされることはなく、ラストも分かりにくかったです。{/netabare}
私のラストの解釈は・・{netabare}選ばれた狼の血によって花の子チェザから種ができ、それから月の花が咲き乱れ、楽園が作られた。未来で生まれ変わった狼たちはそこで幸せに暮らしている{/netabare}・・かな。

世界観が分かりにくいし、貴族とかの描写が弱いのでなぜ?と思うところが多いのはマイナスですが、冒頭でも書いたとおり、作画や音楽も含めた作品の雰囲気の良さや魅力的なキャラたちが素晴らしくてちょっと古いですけど、もっと知られてもいい隠れた良作だと思います☆

投稿 : 2024/12/21
♥ : 23

65.4 5 ロードムービーで旅なアニメランキング5位
ミチコとハッチン(TVアニメ動画)

2008年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (234)
1254人が棚に入れました
舞台は、太陽と原色に溢れる国。そこは貧困によって街は荒廃している上に、国を出た先は荒野が広がる危険な無法地帯。そんな中で、人々の心は欲望に満ち溢れていた。その国で暮らす少女ハナ・モレーノス(通称:ハッチン)は、養家の家族から酷い仕打ちを受けており、密かに家を出て自由に暮らす事を望むが、自ら行動を起こせず、ただ、いつか誰かが迎えに来てくれる事を祈るばかりであった。しかしある日、ハッチンの前に脱獄不可能と言われた監獄要塞を突破した謎の美女ミチコ・マランドロが、突如現れる。彼女はハッチンの母親を名乗り、ハッチンを誘拐して逃亡。訳も分からず、ミチコに着いていくハッチンは、彼女に翻弄されつつ、旅に同行する事になる。

声優・キャラクター
真木よう子、大後寿々花、坂井真紀、津田寛治

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

バカで、かわいくて、かっこいい

 とにかく、スタイリッシュな映像を見る快楽にひたりたいのであれば、これほどのアニメに出会える確率はごく稀なことだろう。



 ミチコはどこまでバカで、ハナの後日談もいい。ハナの声優を大後寿々花が担当している、というのはアニメの作法からすると、いささか違和感も残る。けれども、大後寿々花のキャラ自体が非常にたっている女優なので、大後寿々花が声をあてている、と思うとそのこと自体にも味を感じる。

 ヘタレは、やっぱりヘタレでクズとして描きながらも、それでもその一方でヘタレをどうしようもなく愛するという眼差しもすばらしい。

 とにかく格好のいい映像をつくった。日本のアニメのなかにこういうものがキチンとある、というのは実にすばらしいことだと思う。

■関連推奨作品

 バカかわいいヤンキーの暴力女と、理知的で気丈ながらも頭のネジがどこかはずれている女の子…という組み合わせは、『下妻物語』を彷彿とさせる。未見の方はぜひご覧あれ。

 一方で、丁寧に描かれた南米の風景は、『City of God』『City of men』『Carandiru』といったロクデナシだらけのブラジル映画を見ているような気分にもなる。ブラジルをスタイリッシュに描いた作品、ということではここらへんの映画がネタもとになっているのではないだろうか。

 また、アニメとしては、これに先行するかっこいい作品としてはやはり『cowboy bebop』を挙げないわけにはいかないだろう。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 10

ソーカー さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

これぞ大人の嗜み、もっと評価されて欲しいアニメNo.1

舞台は南米。
脱獄囚ミチコは、養家で虐待を受けていた娘ハッチンを救いだす(誘拐?w)
そのまま一緒に父親を捜すため逃走劇をくりひろげる。
全22話のアクション・ロードムービー風アニメである

スタイリッシュなOP、渋くてクールな作風から
「カウボーイビバップ」と比較されやすいが、ビバップとは全く違うものとして見た方がよい
ビパップはハードボイルドを突き詰めた作品で娯楽性も抜群だが
「ミチコとハッチン」は全然違った趣向の作品です
迫力と疾走感溢れる描写も結構あるので
単純な娯楽作品としても見れなくもないが、クールでかつ趣深い作品。

バイオレンスなシーンは多いが、爽快感が得られるアクションはむしろ少ない
そういったカタルシスを得るアニメではないということです
むしろ、ミチコとハッチンの二人を中心とした人間ドラマを描いた作品です
各エピソードは不意に終わったり、しみじみとした終わり方だったりする。
もちろん大筋のストーリーはあるが、繋がりの薄いところもあるので、ひとつひとつの物語を噛みしめて見るべき。

ミチコとハッチンは二人とも非常に人間味溢れる魅力的なキャラクター
世間の理不尽さをかっとばしながら、ぎこちなくも親子愛を育んでいく
そんな人間味溢れる二人を中心に人間を描き出す

愚かな大人と無垢な子供、どうしようもない世の中と二人の絆
これらを巧みに対比をして人間を描いたハートフルな物語である
しかし、必要以上に視聴者に感情移入は求めない。
暗い話しみじみとした話が多いが、しつこくもなく重く感じることもなく、むしろ心地良い。

声優に俳優を使っていることに否定的な意見が多いが、個人的はむしろ味があって良かった。
人間味溢れる独特なキャラクター性を作り上げていて、悪くない
もちろん拙い場面もあるが、徐々に上達していくので問題ないw

これだけ独自のスタイルを貫いたアニメは本当に珍しいし
あらゆる面において非常に完成度の高い作品で、
もっと評価されてほしい作品の筆頭ですが、あまり万人受けはしないかも。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 26

ヌンサ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

そんなヒロシに騙されて

「カウボーイビバップ」→「サムライチャンプルー」→今作→「LUPIN the Third -峰不二子という女-」と並べると、世界観や作風の流れが非常にスムーズにつながっているなと感じます。

特に前2作と、プロットは良い意味で"まんま"です。ビバップはジュリアを探すのが目的ではありませんでしたが、
フウの父を探す(「サムライチャンプルー」)=ヒロシを探す、ミチコ=フェイ、ハナ=エド(性格は違いますが、孤児院出身という設定などが特に)。後に峰不二子を描くことになるのも納得です。

大好きな渡辺信一郎監督の弟子筋にあたる(多分)山本沙代さんが監督を務め、
ナベシンさんも音楽プロデューサーとして弟子をサポート(?)しています。
彼女は、岡村天斎さんと並んでナベシンさんの作風の一端を継ぐ存在だと思い、注目しています。

今作最大の注目ポイントはキャスティングでしょう。真木よう子さんという方は、名前は良く見聞きしたことはあったのですが(主にスキャンダル・・・)、調べてみたところ出演作品は一つも見たことがりませんでした。
顔写真を検索してみても見覚えはありませんでした。
しかし、めちゃくちゃいい声ですね!もちろん、プロの声優ではないので絵との距離感や、
息の演技などはたまに聞いてて厳しいものがありました。それでも話数を重ねるごとに、
大後寿々花さんと並んで演技の上達が感じられたのも興味深かったです。

坂井真紀さんの声は、少し朴璐美さんを思わせる感じがあって非常に味がありました。

そして今作全体を通して、有色人種(特に黒人)が登場人物の多くを占めているというのは
いかにも「マングローブだな」って感じです(日本を舞台にした作品以外で)。
この空気感が大好きだったので、倒産してしまったことが非常に悔やまれます・・・。

渡辺信一郎さんのDNAは確実にアニメ界で息づいているな、と感じられて非常にうれしい作品でした。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 7

77.8 6 ロードムービーで旅なアニメランキング6位
すずめの戸締まり(アニメ映画)

2022年11月11日
★★★★☆ 4.0 (275)
1010人が棚に入れました
九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、
「扉を探してるんだ」という旅の青年に出会う。
彼の後を追うすずめが山中の廃墟で見つけたのは、
まるで、そこだけが崩壊から取り残されたようにぽつんとたたずむ、
古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが...

やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
その向こう側からは災いが訪れてしまうため、
開いた扉は閉めなければいけないのだという。

――星と、夕陽と、朝の空と。迷い込んだその場所には、
すべての時間が溶けあったような、空があった――

不思議な扉に導かれ、すずめの“戸締まりの旅”がはじまる。
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

テレビで視聴。恋愛要素は入れないほうが分かりやすかった?

 24年4月今回円盤持ってるのになぜかテレビで見てしまいました。10回目かそれくらいだと思いますが、CM中に咀嚼が出来るのでまた違った感覚になるので良かったです。

 その中でちょっと思ったのが、恋愛要素がないほうがひょっとしたらテーマ性が明確になったかなあという気もしました。

 というのは、環さん→鈴芽への「うちの子になる?」と鈴芽→ダイジンの同じセリフを考えると、震災によって救われなかった子供、残された家族というテーマ性が浮き立つような気がしたからです。そして、最後の明日を信じるというセリフにもつなげるために、鈴芽の旅は自己救済あるいは家族為の旅か、恋愛目的でなくダイジンとの何かを解決する旅にした方が明確になったかなあ、と思いました。

 別に本作の価値を下げるわけではないですが、この作品の賛否が分かれる理由として恋愛の不自然さというより、恋愛が大きなテーマを見えなくしている気がしました。


23年11月レビュー

「かえるくん、東京を救う」のリメイクという見方が正しいかも

 最近、輪るピングドラムの劇場版「RE:cycle of the PENGUINDRUM」を見まして、そこで村上春樹氏「かえるくん、東京を救う」を探す場面がわざわざ追加されていました。それで本作を思い出しました。

 この作品は短編ですが震災文学の最高峰ともいえる話です。かえるくんが東京で起きるだろう震災を防ぐために地下で暴れるミミズと戦いに行く話です。まさに宗像氏のことですね。

 当然この本は何度も読んでいるので本作がオマージュしていることは意識していましたが、それどころか「すずめの戸締り」は同作のリメイクなのではないか?

 地震と戦う何万人の命を担う存在ですが誰からも知られない、そしてかえるくん自身も戦いは怖いといいます。でも彼は戦います。そこに「なぜ?」はありません。ただ、戦わなければならないと思うから戦います。つまり、宗像氏です。
 その大きな理由は、主人公のように善良な市民がいるからだといいます。悪い人間がいるのはわかっているけど、それでも主人公のような存在がいるから戦いに行く。だから、主人公には応援してほしいといいます。


 本当に震災と戦っている存在はいないでしょう。かえるくんというのは超常的なものと考えることもできます。文明の進化に対する警鐘としてかえるくんを忘れると地震は起きる、と。
 でも、もっと運命論的にとらえたほうが正しい気がします。ですので、本当はかえるくんでも震災は止められません。ただ、その場にいた震災に対処した人々、例えば自衛隊・消防・警察・救援活動に参加した善意の人たちや、率先して協力しあった人たちを思い出せばいいと思います。そういうモノの象徴でもあると思います。

 主人公は両親を亡くしており、弟と妹のために懸命に働きます。でも感謝もされません。これって環さんのことですよね?

 家族というか守るべき人がいれば、自分の人生を犠牲にしても守る。そこに不満がないわけじゃないし、もし、ということも考えてしまう。でも、それはそれで自分の人生だったんだと思うこと。これは是か非かわかりませんが、震災国の日本においては誰でも経験する可能性があることです。


 となると鈴芽という存在ですね。この子の意味がわかりづらくなりますが、この子は我々の象徴でしょう。震災孤児でもあるし、善良な大衆でもある。でも、いつ助ける側にまわるかもしれないということかもしれません。

 さらに「かえるくん…」の主人公の様に、そういう存在を知って応援する、つまり理解してあげる人なのかもしれません。知られずに死にに行く孤独にとって、応援してもらうことは単なる行為ではありません。
 そして鈴芽の存在は、そういう仕組みや存在を理解し、犠牲になった人を思いだす。それが「悼む」ということなのかもしれません。

 こうやって考えると本作の宗像氏や要石のダイジンなどに理由をつけなくていいことになります。彼らは震災と影ながら戦う運命を担った人であり、いつ自分がそうなるかもしれないという象徴でもあります。

 だから「かえるくん、東京を救う」は単なるモチーフやオマージュではなく、本作はそのリメイクという見方が正しいかと思いました。「海辺のカフカ」のモチーフもいっぱいあるのでやっぱりそっちも読み返して考えてみたいところです。

 23年11月。RE:cycle of the PENGUINDRUMを見て、また考えてしまい追記しました。



23年9月記載 東日本大震災後はどうやってテーマを語ればいいのか?

 円盤を買いました。映画は結果6回見ているのに、試しに見たら止まらなくなって7回目を本日見ました。
 小さな画面と音響だと、特に中盤の東京の場面が今一つですが、気になる場面を止めたり戻ったりできるのはうれしいです。

 何度も映画館に通った理由の一つは、この中盤10分程度の東京の場面を見るためです。私は映画史上もっともこの10分に心を動かされました。なぜかは言いませんが、あの場面こそが今この映画を見る大きな価値だと思います。


 本作を見て、やはりはっきりしているのは、東日本大震災以降新しい物語論が必要なんだろうということです。
 実存主義から構造主義、ポスト構造主義。脱構築。第2次世界大戦、安保闘争、経済成長、バブル崩壊、ウーマンリブ、フェミニズム。そういう旧来の文脈とは違った新しい作劇方法が、新海誠氏の3部作なんだろうなあと思います。
 宮崎駿氏の「君たちはどう生きるか」が問いかけてきたものが、既に古い感じがするのは、旧来の作劇法、過去の文学や映画その他を「教養」だと言いきってきた時代の作品に見えます。旧来のデータベース的な教養を語る不毛さが本作と比較すると感じられます。

 いまやコンテンツが巷に溢れ、教養の前提となる共通基盤が若い人ほどありません。となった時に、何をもってテーマ性を出すのか?というと、震災以後の日本の現状とAI・SNS等々がメインにならざるを得ないと思います。

 そして、メッセージ性は共通基盤が希薄な以上、暗喩やアナロジーではなく、感情の動きつまりエモさで表現するしかない気がします。
 もちろん、本作には宮崎駿氏のオマージュはあります。が、宮崎駿氏のオマージュは旧作劇法の否定=古い日本からの脱却を言っていました。つまり、震災前の老害ということです。ユーミンのルージュの伝言を初め、あの青年のオープンカーやタバコ、懐メロというノスタルジーが何を表していたのかは自明でしょう。

 村上春樹の影響は見られます。ここは氏が阪神淡路以降、文学と震災を融合させた唯一と言っていい存在だからリスペクトしたのかなあと思います。

 本作のストーリーについて批判はあると思います。いつ鈴芽は宗太を好きになったのか。行く先々で人に助けられるのはなぜ?など、いろんな指摘を見ました。中には鈴芽の体力が有りすぎだろうとかいうのまでありました。

 これらの指摘は、作中の時間の経過速度に対して事件の頻度が激しいのが原因かと思われます。鈴芽の東京までの旅が数日ではなく1か月なら納得感があるのではないでしょうか。まあ、3本脚のイスとどこかであったことが…から考えることもできます。

 それと、ミカンがなぜ転がったのか?雨が急に降ってきたのは?を考えると、鈴芽あるいは宗太が要石であるダイジンとの接触で「神性」を帯びたのでしょう。SNSで注目される、2人の行くところに人が集まるなども、超常的な要素です。

 そんな説明はメッセ―ジに関係ない部分なので「どうでもいい」と切り捨てた部分でしょう。それよりも、鈴芽が通った道筋は、南海トラフ、阪神淡路、東海道、富士山、そして東京と東北と、地震がいつ起こってもおかしくないルートだということです。
 そんな日本に生きているからこそ、災害で犠牲になった人を悼み、自分もいつ犠牲になるかもしれないという覚悟の元、人とは正直に誠実に利他の心で触れ合って行こうという話だったと思います。

 いま、考えるべきはなのは旧来の資本主義的な価値観での閉塞感に日本は苦しんでいます。その時代の価値観を持ち込んで日本は駄目だという映画を作っても仕方ないでしょう。
 ですが、震災後助け合う土壌は日本にはまだ残っています。であれば、新しい日本を作るためには、どうすればいいかを問いかけた映画だったと思います。

 震災文学、ポスト震災のアニメ映画。その視点をもつことが本作を観賞するポイントではないでしょうか。




以下、劇場公開中に書いたレビューです。
 
 結局5回見ました。最高に面白かったです。もう終わりそうなので考察を少々。

 もう公開も終わりそうな雰囲気なので、いろいろ考察を残しておきます。考察すべきではない感じる映画だと思っていましたが、読み取れる部分が多い作品だし、やっぱり自然と考察してしまいました。なので気が付いたところです。

ダイジンについて
{netabare} ダイジンですが子供ですよね。やせ細っていることから飢えて人柱になったのか、愛情のアナロジーなのかは分かりません。スキじゃないという言葉でやせ細るところを見ると、どうも母親の愛情に飢えていて「ウチの子になる?」で鈴芽になつくわけです。子供としてじゃれついていました。

 東北までの道のりですが、鈴芽を導いていたニュアンスがあります。つまり、鈴芽の子供時代が常世にいることを知っていて、鈴芽の魂を救済するために連れて行ったととることができます。
 鈴芽が死んでもいい、というのは半分常世に魂を置いてきているからだと思います。

 一方で、鎮魂ということを考えると鎮魂が住んでいない東北に大きなミミズがいるので、ダイジン、サダイジンとも東北に移動する気だったとも取れます。宗太のアパートで要石は移動している、というセリフがありました。
 本当は自分で要石として移動しようと思っていたら、思わず鈴芽に優しい言葉をかけられて、ああいう我儘になったということでしょう。
 鈴芽の子供になれなかった、つまり自分の誤解だと気が付いた。だけど、鈴芽からどこかに行けといわれたので一旦離れた。もともとの計画通り要石に自分でなろうということでしょう。ダイジンは本当は要石には戻りたくなかったんでしょうけど最後は鈴芽から優しくされて救済を得たことで納得したんでしょう。{/netabare}

サダイジンについて
{netabare} サダイジンが登場したときに、環さんに本音を語らせます。ということはサダイジンとダイジンの関係は、環さんと鈴芽の関係なのでは?と思います。要石としての先輩なのでしょう。サダイジンだけ巨大猫になれるこということはもう神になっています。ダイジンは子供でもあり成長中なんでしょう。自分の今のポジションに対する疑問があったのかもしれません。つまり鈴芽です。

 サダイジンは要石に戻るために東北に行くから協力してほしい、という感じでした。そして捕まえるときは厳しかったですが、ダイジンを舐め回していました。つまりサダイジンは環さんの側。子供がいない女性だったんでしょう。{/netabare}

鈴芽が宗太を好きになった理由
{netabare} 鈴芽が宗太をなぜ好きになったか、です。一つ目は四国につくときの「ドキドキする」というセリフです。つまり吊り橋効果です。閉塞した田舎にいた田舎娘が旅先でとなりにいた宗太を好きになる。
 イスであったこと。母親の作ってくれた大切なイスです。その姿をしているので愛着がわいた。
 あるいは温もり…温度について何度もセリフがありました。鈴芽は環に育てられたかもしれませんが、温もりが無かったのかもしれません。それで、初めての温もりに惹かれたのか。
 神聖です。ダイジンも宗太もSNSに非常に沢山アップされていました。宗太は不思議なのもありますが、人を惹きつけるという表現でしょう。それで鈴芽が惚れたのか。子供はどうも何かに気が付くようで神戸はもちろん新幹線の中でもガン見されてました。
 初めに「どこかで会った事が」というセリフがありました。母と間違った自分の横に立っていたのが宗太なのでどこかで惹かれていたのか。 {/netabare}

鈴芽はなぜ助けられるか
{netabare}  鈴芽がなぜ助けられるのか。スナックにも民宿にもなぜお客さんが集まったのかは、鈴芽が原因なのか宗太が原因なのか判然としませんが、助けたくなるんでしょう。ただし、ヒッチハイクは苦手なところを見ると危機になると助けたくなる、でしょうか。
 いろいろ考えられますが、アマノウズメ設定もあるみたいですので、神性が正解なんでしょう。つまり常世に言った事があるので、神聖を帯びているという意味なんだと思います。それは宗太がもてる設定とも重なります。{/netabare}

芹沢は捨てるものの象徴
{netabare} 芹沢は捨てるものの象徴でした。外車のオープンカー、懐メロ、タバコ、茶髪、そして宮崎駿。環さんの「いい先生になれる」というのは、そういう捨てるものを捨てれば中身はいいという意味でしょうね。宮崎駿は捨てるべきものの中に含まれています。{/netabare}


 鈴女の周りにいる2匹の蝶は本当の父母の魂なんでしょう。死んでもいつも見守っているということだと思います。

 結局5回みました。さすがに今後は円盤にします。それにしてもここまでレベルが高い作品を見せられると他の映画やアニメが退屈に感じてしまい困ってしまいます。
 キャラ、演出、テンポが最高でした。鈴芽はすばらしいキャラ造形でした。

 テーマ性云々は別にして、地震大国に住む日本人論としてこんなに優れているものはないと思います。なぜ、隣人に優しくすべきか。そして過去を悼むのか。それを深く考えてしまいました。
 未来に命が繋がる人は、明るい明日を信じて生きよう。残念ながら死んでしまった人たちは、ちゃんとその人を思い出してあげよう。日本に住んでいる以上はその覚悟を持つべきだと思いました。


4回目レビュー

 結局4回目見ました。キャラの魅力と面白さにやられました。

 また見てしまいました。RRR見に行ったのにふらふらとこちらに…結局4回見ています。2月にもう1度見に行くかもしれません。なぜこれほどまで心を掴まれたのか。

 震災とか廃墟とか鎮魂とか、そういうテーマ的なものを当初はいろいろ考えましたし重要な要素ですが、本作は映画の原点である「キャラの魅力」「面白さ」この2つにやられました。

 キャラは、この作品魅力的でないキャラが一人も出てきません。そして性格や言動と設定が極めて自然です。なので、ちゃんと演技していると思います。これは稀有な事です。ですので、ともすれば退屈になりがちな人間と人間が会話しているシーンがどれも本当によく描けていました。
 でまあ、やっぱり鈴女の魅力です。言葉にすると安っぽくなるので語りませんが、とにかくこのキャラは素晴らしかった。

 面白さは、スピード感、演出、無駄を省いた編集、幻想的な部分とリアリティの使い分け、映像美など映画としての要素がどれも素晴らしいです。特に中盤の東京のシーンの緊張感。これがいいですね。今まで見たどんなハリウッド映画よりも心理に訴えかけてきました。

 俯瞰すると、結局描いているのは「日本」ですよね。地震も廃墟も人の優しさも神も懐メロもすべてが我々が住んでいる国ですね。新幹線と富士山もそうです。
 なるほど「鎮魂」というのはそうかもしれません。いつ南海トラフや関東直下が起こるかわからない国土である以上、どこかが破壊され人が死んでゆく。だからこそ生きている人は…ですね。
 九州から東北までどこでも地震は起きます。作中旅をしながらそれを表現したのは素晴らしいと思います。

 映画の出来とスケール感という点では「君の名は。」なんですけど、面白さとテーマの重要性、キャラの魅力からいうと本作だなあ。

 なお、設定うんうんという考察をユーチューブでいっぱい見ましたが、ほぼ参考になりませんでした。ほとんど私が作中の表現で納得したところを上げ足とりしているだけでした。
 新海誠監督作品の設定は、すべて省略があるし無理な言い訳をしないのでおかしく見えるところもありますが、普通に行間を咀嚼すればそこに理由やバックストーリーが見えてくると思います。まあ、人それぞれなのでそれが気に入らないのなら仕方ないですね。それも一つの見方です。

 劇場アニメ映画で4回いったのは初めてかなあ。うーん。面白さでは過去最高…と言ってもいいかなあ。4回目でもまったく飽きませんでした。

 なお、原作読みましたが、ほぼシナリオという感じで深掘りや詳細設定等はありませんでしたね。それでいいんでしょう。映画は映画でその範囲で行間を読むべきでしょう。




1回目レビュー

{netabare} 初めの一瞬だけまた映像美かなと思いますが、すぐに完全に忘れます。新海誠ブランドということすら忘れます。とにかく展開につぐ展開で、びっくりするくらい面白かったです。
 誇張抜きで本当にあっと言う間に終わったという感覚ですが、後から考えると密度が濃いという感じでした。情報を完全にシャットアウトしていたのも良かったのかもしれません。

 映画館に行って良かったと心の底から思いました。多分今週…は無理でも来週くらいにまた見に行くと思います。

 で、いわゆる設定の考察を完全に封じる映画です。もちろんテーマ性の奥行きはありますが、それよりも「感情」の映画でした。たかぶる感情の先にもちろんテーマ性はありますが、この作品は見たときの感情、思考ではなく感覚的に何が頭をよぎったのかを大切にしたい映画だと思います。
 含意としてのメッセージやテーマはもちろん大いに考察すべきでしょうが、矛盾がどうとか、マネがどうとか、この設定は実は…みたいな考察はやるだけ惨めになるくらいの力強い映画でした。

 新海誠3作目の超メジャー作品で、ブランドありきでくるだろうなあという諦めというか、斜に構えて見に行った自分が恥ずかしくなるくらいいい映画でした。

 5点満点は思考停止でつけたわけでなく、これ以外ないと思います。まあ22年度…というかここ数年の映画の中ではNO1だと思います。

 完全ネタバレ封じをお勧めです。冒頭12分とか見る必要はないでしょう。私は見なかったのが良かったです。冒頭からワクワクしました。この先は閉じておきますので、是非、先に見てきてください。


 初見での第1次のひっかかりポイントです。今後、この作品を考える上でのメモ程度です。(当日考えたことを若干追記しました)

「すずめ」という名前ですが、これは日本で最近スズメを見なくなったという話があります。いつの間にか気が付かないうちに日本が変わっているのだ、ということかもしれません。
 また、すずめはありふれた人の象徴というレビューを拝見しました。たしかにその意味は大きいと思いました。

「しゃべるイス」ふたりのイーダという児童文学があります。これが原爆によって死んだ家族がモチーフになっていたので、椅子がしゃべった瞬間不穏な感じがありました。

「蝶々」です。これは喰霊ゼロでも出てきますが、魂の象徴です。2匹飛んでいるということは親のことでしょう。つまり、死者の魂=両親の気持ち、死んでも見守っているということだと思いました。

 神戸ですね。もちろん阪神淡路です。すずめが移動した、愛媛のあの尖った半島から四国を横切って淡路島のルートって、地下構造線があって、直下型地震が起きやすいとされているルートな気がします。

 ご都合主義のように、いろんな人が不自然にすずめを助けるように見えますが、これは震災の時の人のつながりを感じました。困っている人がいると助けたくなる日本の田舎に残る古い気質を表していたんでしょうか。初めはまあ、お話だからと思ってましたが、すずめが神戸に来た時にそういう無償の人助けの印象を持ちました。一方でスマホで写真を撮る場面も沢山ありました。

 旅の中でこの親切な人たちは親子の家族でした。そしてヒロインは叔母と2人。イスはお爺ちゃんと。いろんな家族の形がありました。

 廃墟は人口が減り、過疎化が進み、古い日本が死んでゆく。そしてその一方で、いつどんなときに大地震が起こるかわからない日本。人とのつながりが最後は大切だよ、というかとでしょうか。
 廃墟にも人の思い出が詰まっているというのも大事でしたね。廃墟をみて何を感じるのか。昔の人の想いを受け止める。それは「懐メロ」にも通じています。 
 大地震に至らなくても、大雨が降るのも不吉な何かを感じました。

 そして東京です。これは言わずもがな、ですね。のんきに暮らしていても大地震はいつでもきますよ、ということでしょう。
 東京は地下をいじくりまわしていますからね。その辺の意味もある気がします。神田川も確か大地震を起こした断層だった気がします。

「戸締り」は防災というのは短絡ですけど、心構えかもしれません。むしろ過去の自分に対する何かなんでしょうか。ドアを閉めないと不吉なものが…そして死者の世界かあ。次回視聴時の宿題にします。

 教師になるという夢と日本に夢を絶たれて石になってしまうというのも何かを感じました。日本を守る人が、教育者を目指しているというのもちょっと意味を感じました。

 おばさんの言葉ですね。愛情も憎しみも本音ということでしょう。コミュニケーションを絶ってはだめで、話をしようということでしょう。また、震災は犠牲者だけでなく、それを助けた人たちの中にも苦しんでいる人がいるということもあるのでしょう。

「懐メロ」ですね。80年代以前の音楽だと思いますが、ルージュの伝言はまあ宮崎駿に対するちょっと皮肉なメッセージなのか、あの魔女の宅急便のような牧歌的な少女の夢が見られなくなったという事なのか。
 まあ、それは考えすぎにしても、80年代の曲を聞いて、感動していた人たちがもうこの世にいない、という少しノスタルジックな気分になりました。
 阪神淡路が1995年です。そして東日本大震災が2011年。魔女の宅急便は1989年ですね。
 時代を超えて曲が愛されるということで、昔も今も同じ人間だよ、という意味もあるんでしょうか。廃墟の記憶とも重なります。

 とにかく日本の現実と過去の現実で、打ちのめされるくらい「つらい」感情を持ちました。ただ、その「つらさ」をどう受けとめ、今後訪れるだろう「つらい未来」にどういう心構えでいるのか、ということが「戸締り」なんでしょう。

 恋愛部分ですけど、ここも考えすぎかもしれませんが、滅びゆく日本の中に、男女でもっと恋愛しようよ、夫婦で子供を残そうよ。困っている子供に手を伸ばしてみんなで育てようよ。だって、人間だから、というメッセージも感じました。

 猫ですね。猫が愛情に触れると太り立派になり、悪意に触れるとやせ細ります。ここに人間の心の何かを象徴しているような感じはありました。神とはすなわち国土の意志と取ると、人間の心映えで国土の力が弱まっているという風にも感じられました。


 過去の自分に会いに行く。なんのオマージュとかは忘れましょう。それは重要ではありません。過去の自分に何を言いにいったのか。
 肝心なことを書き忘れました。一番恐ろしく、感情が動いたのが「黒く塗りつぶされたノート」です。ここが第1の嗚咽ポイントでした。(がまんしましたけど)もう、なんというか、真っ黒になった心…しかも子供の。この子供に対して、何を言えばいいのか。

 子供が繰り返し黒く塗りつぶすシーンがありますので、ここは子供の心が壊れて行く恐ろしさが一気に理解できました。
 そして震災の象徴である、あのビルの上の漁船の上の場面もありました。
 解答はもう少し考えたいですが、この昔の傷ついた自分に何を言いに行くのか。これは冒険の果てだったからこそ、おばさんと喧嘩し、恋愛したからこその言葉だったと思います。ここに「戸締り」の意味があるんでしょうけど、そこがピタッとまだ理解しきれてません。

 恋愛感情の持ち方の描写が弱いというレビューも拝見しました。これは「君の名は」でも言われたことだし、映画の作りとしてはもっともなご意見でしょう。
 ただ、私は新海誠氏は、好きになるプロセスより好きになった気持ちと行動を大切にする人なんだろうなあと思っています。そして、好きになるプロセスは自分なりの考えで補いたいです。

 船の中のでパンとジュースを買って2人で座っているシーンとかラブシーンとしては最高だったし、途中でイスにキスするシーンが見せてはないですけどありました。イスの上に立つシーンとかでちょっと恥ずかしくなりましたし。
 イケメン(死語?)に恋するのではなく、イスを好きになるというのもポイントでしょう。超美青年という設定はこのヒロインの恋心がルッキズムによるものではなく、純粋だという表現だと思います。
 初めは超イケメン好きだったのは冒頭でわかります。それがイスが好きになるプロセスで純粋さ(行動、使命、人柄、何より一緒に時を過ごす)を表すのに効いている気がしました。

 また、ドアというのは異世界とか時間を飛び越えるというのはありますけど、心の象徴ですから。2人で一緒に扉を閉める旅をしているということで…かつ、鍵をヒロインに預けるし、何より鍵と鍵穴が象徴するのは…もちろん相手はイスですからメタファですけど。

 イスがなぜ足が欠けているのかって、見逃したなあ。ありましたっけ?初めは障碍者を連想しましたが、むしろ家族が欠けるとか、心の何かが欠落しているイメージかなあ。次回確認します。

 要石とか、猫神とか、ナマズとかいろいろ調べようと思いましたが、そういう考察はやっぱり要らないかなあと思いました。


 ちょっと意地悪な見方ですけど宮崎駿氏ありますよね。魔女の宅急便とハウルの過去の部分とかみみずとか…オマージュかあ。

 廃墟=懐メロ=人々の記憶=宮崎映画=悼むもの?

 かなあ…



 とまあ、思いつくままのメモです。初見なのでまた追記するかもしれませんが。
 追記してもしても、書きたい事が出てくるので、2回目まで考えをまとめます。

 言い忘れました。映画館でなければ嗚咽してたかも。最後のスタッフロールが少しの時間ですが暗い画面になるのでハンカチを取り出せました。



追記 「岩戸」とパンフについて。

 配布のパンフは考察の邪魔。読まなくていいと思います。あるいは散々自分で頭を使ってから答え合わせをした方がいいと思います。そして、正解は作った側でなく、見た側だと思います。

 自分の受けた感動とか考えた結果とか何よりも感情を「正解らしきもの」で上書きするのが最悪な映画です。わかった気になって思考停止に陥る可能性を危惧します。

 そして、作品は制作者の手を離れればもう視聴者の判断にゆだねるべきものですし、複数のクリエータが時間をかけて作るものなので、個人の考えはそれが中心人物だったとしても参考でしかありません。
 制作するにも時間はかかるし、いろんな修正が入った結果、当初の意図を超えるのが「作品」です。
 何より、表現したいものは表現したようにしか現れませんが、表現した結果というのは個人の意思を超えるものなので、個人で作るコミック等でも例外ではないでしょう。
 ですので制作者が作品について語るのは見聞きしても放っておくのが一番で、自分の考えと感情を優先すべきでしょう。


 せっかくの名作なのに、余計な事をしてるなあ、というのが正直な印象です。自分で結論を狭めてるじゃん、という気がします。

 ほかのレビュアーさんを拝読して、岩戸ですからやっぱり意図としては当然「天岩戸」は関係あるみたいですね。

 岩戸という名前から当然連想はします。が「扉を開ける」は話でなく「扉を閉める話」だし、地震と太陽が隠れるというのが方向性が違います。モチーフというかイメージとして日本という国を守ると言う感じで単なる名前だけかなあと思ってました。

 ただ、そうか「黒いノート」の意味がそうなると分かる気がします。震災で「世界が暗くなった」=幼いすずめの心が黒く塗りつぶされたということなんですね。
 すずめが一般の人たちのメタファで、幼いすずめ=震災で傷ついた人たちと考えると、黒いノートの意味に背中がゾクリときました。
 そういう人たちは震災の時以来世界が真っ暗になったということでしょう。

 一方で、アマテラスオオミカミと幼いすずめがイコールだと思いません。なぜならすずめが救済のメタファになっているか読み取れないからです。もちろん、物語ですずめは扉を閉めて回る役割として、地震を防いではいますが、閉めると開けるはベクトルが逆の行為だし、そもそもそれはアメノウズメとアメノタジカラオの役割です。

 アマテラス=アメノウズメというのはちょっと無理があるかなあ。自己救済という意味ならまあわからなくはないですけど、地震=災害を絡めるとよくわかりません。

 ですので、みみず=震災を戸締りする=閉じ込めるという行為についてはもう少し考えたいです。これはやっぱり天岩戸とは方向性が違うので。

 すずめが過去の傷ついた自分を閉じ込めるのか、傷ついた世界から連れ出すのか。その結果世界が明るくなった…というにはミミズは退治したわけではないので、余韻としては地震がある国土に住んでいるという暗さが残った気もします。

 ここは岩戸という名前=「天岩戸」というフレーズに引きずられているところもあります。無理に天岩戸に重ねなくてもいいかなあという気はしました。
 あくまで今後起こる地震ではなく、東日本大震災からの救済だけの話なら、そろそろ岩戸から抜け出ようよ、という気もします。ただ、そうなるとみみずがなんのメタファなのか…東京のみみずはなんであんなに大きかったのか。
 東北のみみずの時、火が燃え盛っていましたが、あれは東日本大震災のイメージではなく、阪神淡路の光景です。

 岩戸かあ…余計な名前というか…うーん。やっぱり映画のテーマ性の考察はあまり余計な情報がないほうがいいですね。

 で、まあ、読まないようにしていたパンフを読んでみたわけですけど…うーん。大抵、クリエータってカッコつけるので、奇麗なことしかいいませんから。最終的には読み取れるもので判断した方が良さそうです。
 企画段階から話が変わったのか、あるいは大きなイメージだけは拝借した感じと捉えたほうがいいのかなあ。正直、読まなければ良かった気がします。
 別に映画の出来の良さに変わりがないのだから、語らなきゃいいのにと思いました。そして結果的には、やっぱり天岩戸と本作を無理に重ねなくても、読み取れるものだけ読み取ればいいと思います。

 イスが3本脚の理由もまた震災で傷ついたということでしょう。震災で壊れたんですね。そういえばイケメンは宗像姓かあ…宗像神社でしょうか。たぶん古い神社だから何かのメタファなんでしょうけど。
 草の字をわざわざ使ったのは、草薙剣かなあ。三種の神器だし「家」というフレーズから考察できなくはないですけど、不遜な答えになるので止めておきましょう。こういう設定考察は時間の無駄でしょう。
 やっぱりこういう名前からは「イメージ作り」だけで、物語と重なる部分が少ないかなあ。

 ただ、やっぱり彼が手力男というのはちょっと無理があるかなあ。



 追記 そうかあ、アナロジーでいうなら海辺のカフカ(村上春樹)ですかあ…他の映画のレビューサイトで見ましたけど。うーん。ありえるなあ…すっかり盲点でしたね。四国ですもんね。何よりもっと大きな意味でメタファを感じますね。それに気が付いたからと言って、上で書いた感想もレビューも変わりはないんですけど、天岩戸と言われるよりも、納得感があります。「海辺のカフカ」は「入り口の石」を「開けて閉じる」に「猫としゃべれる男」がでますからね。それに主人公というか母親は昔の辛い記憶の世界に入ることで救済を得ますから。昔の辛い出来事を記憶する。それが悼むということ、そして前を向こうと言う話です。何より「海辺のカフカ」とは絵画ですから=映画と考えるとまた一段と面白いと思います。

 確かにオマージュを感じます。設定を考察してもしょうがないとか言いながらも、このアナロジーに気が付いたのに感心してしまったし、考えるヒントになるので、追記しました。 {/netabare}



2回目視聴しました。一旦レビューはこれくらいにしておきます。

{netabare} いやー2回目はつまらなく感じるかなと思いながらも早々に再視聴。1回目より面白いのはなぜでしょう。

 話の結末が見えていると、カットカットの意味がなるほどということもちろんあります。展開が分かっているので安心して見てられるので、話の面白さがより味わえるのでしょう。とにかくエンタメとしての面白さを再認識しました。まず、これがすごいです。

 東京のシーンの出来は2回目見ても鳥肌でした。カットわり、演出、音楽、効果音すべてが最高…つまり最高に恐怖を感じました。モンタージュ効果というやつでしょうか。


 で、結局なにを感じたかというまとめです。上で書いたものはその通りでいいんですけど、付け加えみたいな感じです。
 まず、人間普通に生きたいという気持ちがある。それは結果的に今生きている人間も過去に不幸にあった人も一緒です。震災大国日本に住んでいる以上は、誰でも不幸は起こりえることです。だから、生きている人は懸命に生きましょう、死んだ人々に想いを馳せましょう。

 それとやはり2匹の蝶々は両親でしょうね。いつまでも子供を見守っていると。

 そうなったときにダイジンです。要石の役割というのは、日本を守るための犠牲でもあります。つまり本当はやりたくない役目です。ダイジンはやせ細っていたことと愛情に飢えていたことから考えて、つまり、貧困の中で不幸に死んだ子供、飢え死にでしょうか…それも親がいない状態で、ということだと思います。だから、鈴芽にご飯を貰って優しくしてもらって、鈴芽の子供になりたいと思ったのでしょう。

 そして鈴芽の不幸な過去を救済するために東北に導いた、のかはわかりません。地震が起こる土地土地に導いて地震を止めていたとも取れます。また、過去から要石は場所を変えていたらしいので、そういうバトンタッチがあって、お役目を終えることができると言う風にも取れます。

 東の要石はどうなんでしょうね。親目線なんでしょうか。親の愛情が理解できない人の魂なんでしょうか。だから、おばさんの本音がわかったようにも見えます。西と東で大小があるのは大人と子供なんでしょう。

 映画の意味として、確かに悼むという意味とか、親から子へ次の世代への気持のようなものとか、もちろん恋愛やホスピタリティと言ったものは感じます。ですが、根底にあるのはやはり、どこか地震と災害があり、夢を犠牲にして日本を支える人がいる、みたいな暗さは感じました。

 ですので、2回目を見て、ますます天岩戸…そうかなあ、という印象でした。

 あと首都高の途中の階段を見て、1Q84でしたっけ?村上春樹を感じたんですけど、どうでしょう?海辺のカフカ…そしてかえるくん、東京を救う?

 ということで3回目も多分行くとおもいます。できれば貸し切り状態で1回見たいなあ。最高の映画でした。{/netabare}
 


で、見てから1週間で3回目見てきました。若干考察らしきものをメモしておきます。

{netabare} やっぱり本作は、映画としてエンタメとしての面白さがまずすごい。ストーリーは当然で、作画・背景美術はもちろんですが、展開、構成、演出・演技・カット割り、間、エフェクト、音楽、音響、効果音すべてが素晴らしいと思います。

 で、テーマ性なんですけど、まずは1つめ。「がんばって生きよう」かなあと思います。「死と隣り合わせだからこそ」「不幸にも死んでいった人がいるのだから」がある気がします。そこには「利他の喜び、感動」もあるでしょう。

 2つめが「親子」でしょうか。「育てのと産みの親」みたいな部分もあるでしょう。ですけど「親は子供を気に掛ける…心配」かなあ、という気がします。やっぱり2匹の蝶々ですね。あれが両親だと思いますし、ダイジンの過去を想像すると、親の愛に飢えた子供をどうしても連想します。環さんの表裏の愛憎もそうですけど。

 もう1つ。キャラの深掘りとしては、鈴芽の行動です。どうも彼女は死を恐れていないという感じ、それが衝動的な行動につながっています。これは、彼女の半身である幼い子供時代が黄泉の国に残っているから…ともとれます。死の世界に半分足を突っ込んでいた。

 それと環のキャラ弁ですね。あれを見ると環との関係が重かったんだろうと言うのが分かるし、後半のセリフでもいいます。心の底でどこかに逃げたかったんでしょうか。

 草太への気持は、一緒に旅をする吊り橋効果とも取れますし、過去に会った事がある、使命感に惹かれた、イケメン等々あると思います。最後の「おかえりなさい」で気持ちが残っていたかどうかはちょっと考えなくちゃなりません。半年時間を置いた理由です。まあ素直に待ち続けているとも取れるし、戦友的な「おかえりなさい」とも取れます。

 結局本来はダイジンと入れ替わるのは鈴芽ということでしょうか?ただ、ダイジンは好きになっから鈴芽と一緒にいる草太を代わりの要石にした?

 旅館とスナックに客が集まった理由は、鈴芽がいるから?鈴芽を助けたくなる理由と一緒?ここのアマノウズメ設定が活きるということ?ここは少し考えたいですね。
 岩戸の中にいたのが鈴芽の幼いころ=アマテラスだとすると自己救済だです。黒い日記帳に対して、明るい未来というのは、なんとなくそのメタファな気がします。
 鈴芽が震災で生き残った人の気持ち=黄泉の世界にいると考えると自己救済です。

 とまあ、いくらでも考察できますけど、これくらいにしておきます。多分、次は円盤待ちか、年末年始にやってたら、どこかで4回目行くかもしれません。


 なお、他サイトその他でダイジンの件で目につく批判がありました。どうも有名なレビュアーがユーチューブで何か言ったみたいです。

 ダイジンまた要石になって、鈴芽は心が痛まないのかという話があります。
 まず、ダイジンと何のために相互理解したのか、そして左大臣を大きく描いて、親のような存在にしたのか。要石が昔から移動した設定。鈴芽が自分が犠牲になっても草太を助けたいという気持ちの後、やっぱり生きたいと言ったところ、何より新海誠映画の省略の読み取り方が分かると、いろいろ考えが及ぶと思うのですが。
 それと最後のスタッフロールで仲が悪かった3人が仲良くしているところとか、痛みもそうですけど草太がいない状態です。「わざと明るくしている」と考えれば、まったく不自然じゃないと思うのですが?
 まあ、人それぞれなのでいいですけど、あまり些事を拾ってもしょうがないし、鈴芽の過去と性格から補完できないかなあという気がしました。

 テーマ的には重要な要素なので、ここに視点をむけるのは良いと思いますが、しかし、ダイジンが要石に戻ることを不自然にとらえると、映画の始まりからダイジンのキャラ設定がかえっておかしくなる気がします。 {/netabare}






 

投稿 : 2024/12/21
♥ : 32

take_0(ゼロ) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

いわゆる大作、話題作なのでしょうが・・・。

残念ながら、今の私には合わなかったようです。



新海氏はキャラの感情の動きをグラフ化して、その動きを元に作画をしたり、物語の構成を考えたり、全体のバランスをとっていると小耳に挟んだことがあります。


そういう意味では波長が合わなかったという言い方ができるかもしれません。



伝えたかった思いや言いたかったことの方向性までもわからなかった、理解できなかったという事ではないのですが、どうにもしっくりと来ず、なんなら、薄っぺらにさえ感じてしまいました。


期待の反動だと自身でも思うのですが、キビシイ感想を書いてしまっています。



合わなかったと言うところをクドクド書いても仕方がありませんので、感想は以上です。

こればっかりは仕方がないです。



自然、天変地異に対しての人が出来ることって、大して無いのかもしれません。

「かしこみかしこみお頼み申す」

謙虚な祈りと、経験に基づいた準備だけかもしれません。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 22
ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

千引(ちびき)の岩、事塞(ことさえ)の神。

「扉の向こうには、すべての時間があった。」

このキャッチコピーの意味が、最終盤になって、ようやく明かされます。

その瞬間、カタルシスを得られるのなら、新海氏のメッセージがきっと伝わるでしょう。


3.11に、どれほど思いを寄せていたか・・・。

今も、3.11と同様に心を寄せているか・・・。

徐々に風化していく距離感と危機感とを、観る方の魂に、ダイレクトに問いかけているように感じました。



本作をひとことで言えば・・・「視聴者との対話に、重きを置いた作品」。

そんなふうに思うべきとの印象を持ちました。


~    ~    ~


というのも、

鈴芽(すずめ)が主人公である必然だったり、閉じ師と連れ合う命運だったり、九州から東北まで邁進する姿だったりは、

不思議とだれかに導かれるようにして、
果敢にみずからを鼓舞するようにして、

母を求める悲しみに屹立する過去の自分に、尊厳と愛情をもって向き合おうとする彼女の姿が、そこにはっきりと見てとれるからです。

だって、私たちは、嫌と言うほどそれを見てきているし、嫌でも体験していくだろうと思うからです。


~    ~    ~


本作には、地震を押さえ込む要石の下で、{netabare} 地獄の劫火が燃え広がるシーン {/netabare}が演出されています。

でも、よくよく考えれば、意味もなく劫火が立つわけはなく、要石があるからといって鎮火することもないのですね。

劫とは、目には見えないマイナスの因縁です。
目に見えるとしたら、それは "業" と言いかえられます。

業とは、人間の生業(日々のなりわいと暮らし向き、人への振る舞いとものの言いかた)から沁み出てくる "心の冷たさ、暗さ、重たさ" のことです。

それらが積みあがって "罪" となり、凝り固まって "穢れ" となり、ついには膨れ上がって {netabare} "異形のミミズ"{/netabare} と実体化するのかもしれません。



なれば、私たち一人ひとりはどうしたらよいのでしょう。

それは、自らを、鈴芽や閉じ師のように振る舞わせること。

千引きの岩のごとくに自分の甘さを押しとどめ、事塞の神と化身して我が身の怠りに防御の陣幕を張ることです。

そして、せめて目の前の海川山野をけがすことなく、どの人にも優しく接し、小さな声にも耳を傾けることに "本君" を置くべきなのではないでしょうか。


~    ~    ~


もう一つは、リアルに日本各地で起きている地震が気になります。

ブラジルの予言者、ジュセリーノ氏は、「11月16日に高知水道(徳島県と和歌山県の沖あい?)でマグニチュード9の地震が起きる」と著述しています。

でも、それは明日かも知れないし、クリスマスの日かもしれません。
とある田舎かも知れないし、大都会や地方都市なのかもしれません。

いざアラームが鳴ったときには、自分の勇気に対峙することになるでしょう。
また、過去の魂を修復し、未来の希望を構築する心意気も必要になるでしょう。

なれば、その前に、自衛のための準備、共助のための用意に尽力するのが人の道理かと。


~    ~    ~


すずめとは "市井の、無名の人々" の意味とも取れます。

「いってきます。」の戸締まりも、「おかえりなさい。」の戸開きも、いずれも誰ともない人たちへのエールです。

そのときのひとり一人は、きっと身近な人へのヒーローであり、遠い人へのヒロインにもなれるでしょう。



地域社会を、ひいては日本全体を守ろうとする姿勢は、どんなにカッコよく、ステキなことでしょう。

そんな暮らしが日々に送れたら、どんなに誰もが幸せになれることでしょう。


今、このタイミングだからこその "GJ" ですよ!

新海誠監督!!

投稿 : 2024/12/21
♥ : 21
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