てけ さんの感想・評価
4.6
誰もが一度は考えるテーマ性。緊張感が途切れない!
原作既読。実写映画視聴済み。
名前を書き込むと人を殺せる「デスノート」。
夜神月(やがみ らいと)は、ふとしたきっかけでデスノートを拾う。
「世の中を良いものにする」という信念の元、彼は犯罪者を次々に殺害。
やがて「キラ」と呼ばれるようになっていく。
対するは、世界最高の天才名探偵「L(エル)」。
キラを捕まえるために全力を尽くす。
お互い、正体も居場所も分からない状態から、相手を出し抜き、見つけ出す。
そんな両者の頭脳戦を描いた物語です。
テーマは「正義とは何か、裁きとは何か」と言ったところでしょうか。
犯罪者がいなくなるのは喜ばしいことです。
しかし、人の手で、犯罪を犯した人間を殺すことは正しいのか?
横から見て楽しむ話なのですが、見所がたくさんあります。
・目的は変わらないものの、その手段が徐々にゆがんでいく、夜神月の心理描写
・誰も思いつかないようなLの作戦
・両者だけではなく、私たち一般人に近い周囲の人々の行動
・スピード感のあるアクションシーン。
頭脳戦がメインにもかかわらず、緊張感がいつまでも途切れません。
【テーマ性について】
私は現在、法律関係の資格取得を目指しています。
法文を読んでいると、法律のもつ矛盾性が見えてきます。
例えば、
・人にウソをついてはいけない
・人を傷つけてはいけない
この二つの法律があったとします。
「人をかばうためにウソをついた人をどう裁くか」と言われたら、何と答えますか?
単純化してみましたが、このように法律は矛盾でいっぱいです。
むしろ、矛盾が無ければ弁護士も裁判所も必要ありません。
どこかに価値基準=正義の基準を置かなければいけません。
これらを指摘する言葉が作中にあります。
{netabare}
夜神総一郎「確かに、法律は完全ではない、それは、人間が不完全だからだ。今の法律は正しくあろうとした人間が積み上げてきたものだ」
{/netabare}
しかし、キラはその基準を自分自身に置いてしまっています。
誰もが抱く、「悪人はいなくなって欲しい」という気持ち。
これは、キラの価値観にもつながります。
そして、その価値観に共感させつつも、キラを悪役として描く。
それには、「命はかけがえのないものだ」といった「倫理観」「道徳観」と対立させる意味があります。
ただの天才同士の頭脳戦に留まりません。
自分の価値基準を判断する材料にもなる、良くできた作品だと思います。