takato さんの感想・評価
4.2
金平糖で出来てるような、小さくて甘い60分。
開幕、静かな曲と淡い美術と共に二人が付き合うようになるまでの過程がモンタージュで描かれるのだが、その数分で本作の美点は凝縮されている。
見事に引き算が生きた澄みきった世界と物語。たまらないほどに愛おしい主役二人。
百合ものだが「マリ見て」みたいな女学校作品ではなく、同性愛の難しさを描いた作品でもない。
そこにあるのはもう喪われてしまったと思っていたピュアピュアなカップルの幸福感のみ。
大きな物語もツイストもないけど、二人の清らかな想いに彩られた世界を見ているだけでニヤニヤすぎて危険域。
それにしても、純粋なこの清らかさを描くにはもう百合でしか出来ない気がする。
男女の恋愛でこんなピュアさの幻想を抱ける時代はもう終わってしまったと思うし、どうしても現実の匂いから脱却し難い。
現実から切れてる上に、本当に小さい話にしたからこそ、ここまでの清らかさが達成できたのだろう。
二人がラブラブしてて、チュチュしてる段階を越えようとしても少しも下世話な厭らしさを感じさせない。この二人ならそうなって自然だなぁ~と心の底から思える、この幸福。
恋愛に関しては、それを扱ったコンテンツにしても今やもう真っ直ぐには描きづらくなっている時代、日本はもうシンプルに恋愛って良いよねぇ~みたいに無邪気さは無くなった時代。
そんな時代でも、だだただ好きな人と一緒にいられるというだけで煌めいている世界に生きている、心から愛おしい二人の行く末を見守りたいって想いは消えるわけじゃない。
適当の別名じゃない、こういうファンタジーの生かし方なら必然性があって良し!。
二人の違いを細部で見せる気配りも良いし、主役二人、特に佐倉さんの演技は本当にすげぇ。こんな引き出しを更に持っていたとは…、恐ろしい娘!。
百合が持っている可能性の大きさを計り損なっていた…、と心から思い知らされた幸せな60分でした。フラグタイムも早く見たいのです。