ミステリーで天才なアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のミステリーで天才な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月04日の時点で一番のミステリーで天才なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.8 1 ミステリーで天才なアニメランキング1位
名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊(アニメ映画)

2002年4月20日
★★★★☆ 3.8 (363)
2645人が棚に入れました
工藤優作(コナンの父)がシナリオを提供した新型ゲーム機「コクーン」の披露パーティーに招かれたコナン達。会場で発生した殺人事件の手がかりを求め、コナン達はコクーンが作り出す仮想空間へと入るが、システムは人工頭脳ノアズ・アークに占拠されてしまう。

「日本という国のリセット」を企てる彼は、プレイヤーである子供達が一人もゲームをクリアできなければプレイヤーの脳を破壊すると宣告。コナン達が選んだゲームは「オールドタイムロンドン」。19世紀末の殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑む。

一方、現実の会場では優作たちが殺人事件の捜査に乗り出していた。ゲームの世界と現実の世界。ノアズ・アークがゲームに仕掛けた現実の事件の解決に至る真実とは何か?ノアズ・アークはゲーム世界のどこに潜むのか?

現実世界の殺人者は誰なのか?そして、その動機は?これらの謎に立ち向かうため、工藤親子は二つの世界を隔てた「親子による共闘」を開始する。

声優・キャラクター
高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、田中秀幸
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

AIは「ノアの方舟」伝説たり得ない

仮想ゲーム内の19世紀末のロンドン。
コナンたちが現実世界で起きた殺人事件の手掛かりを探していく、
2002年公開の劇場版『名探偵コナン』第6作。

【物語 4.0点】
『コナン』としても、ミステリーとしても、SFとしても異色。


緻密なミステリーや推理より、
大がかりなシナリオによるドラマ性が追求される劇場版。
本作に至っては、仮想世界なので、
リアルでは絶対に死なない登場人物も“ゲームオーバー”で退場に……。
仮想世界の権限を有するAIによる“介入”もあるので常識は通用しない。


親の血統や地位を笠に着た、今風に言うところの“上級国民”の横柄さも描かれる本作。
それに対するアプローチも変化球で、
本作は、それらを腐敗と断罪して、庶民のストレスを発散する痛快さは提供せず、
むしろ、血筋を受け継ぐ“貴族”たちに、
今後も世の中を背負って立つよう奮起を促す渋い“説教”


人工知能(AI)についても、上記の旧態を打破するための革新として過信はしない。

19世紀末、栄華を極めた大英帝国にも矛盾はあった。
そもそも我々は「ノアの方舟」伝説で腐敗が一掃された世界で選ばれた創造物ではないのか。
今の世の中が汚いからと言って、安易に浄化とか、“リセット”とか言うもんじゃない。

そんな示唆も残して、AIは……{netabare}今は技術悪用の恐れがあり時期尚早と去っていくのだ。{/netabare}


【作画 4.0点】
最後のセル画制作による劇場版『コナン』となった本作。

VRロンドンの霧も、風情のある現象としてではなく、スモッグとして描き、
時代の光としてのホームズ、闇としての切り裂きジャックが求められた、
激しい格差といった歪みも抱えた往時の英国の社会心理まで再現しようという意欲が伝わる。


AIが主催するデスゲーム等、未来テクノロジーのデモとしての華やかさがある一方、
ゲーム内で、博士による秘密道具及び超絶アクションを封じられたコナン君は、
名実ともに頭脳だけ大人の小一に……。
鑑賞者は久々に、この縮んだ身体で追い詰められて行くもどかしさも共有することに。
『コナン』アクション映画としても本作は異色。

但し、某空手少女は本作でも元気はつらつ♪

最後も{netabare}列車アクション{/netabare}で見せ場はあり。


【キャラ 4.0点】
本作の鍵を握る“天才少年”ヒロキ。
出る杭を打つ日本の教育への毒針、本当は友達が欲しい孤高の天才。

犯人役もまた、{netabare}血筋を背負いきれなかった存在{/netabare}として描かれる。

そして、上から目線の“上級国民”チルドレン。

各々テーマ性を内包したオリジナルキャラが物語深化に寄与。


一方でコナン君は親父同様、重度のホームズオタクぶりを発揮し、
ピンチの中でも妙にイキイキ!?
悪党であるモリアーティ教授への愛まで語り出したら、いよいよ重症ですw
今回は推理力よりホームズ知識力に舌を巻く。


【声優 4.0点】
モリアーティ教授(CV.小林 清志さん)、モラン大佐(CV.藤本 譲さん)
切り裂きジャック(CV.速水 奨さん)
などリアル世界だけでなく仮想世界内の敵役までベテラン声優で固める盤石の布陣。

コナン君の親子の絆もテーマの本作。
CV.田中 秀幸さん&CV.島本 須美さん。
工藤夫妻のボイスがVRロンドンの何処で出張ってくるかも注目w

{netabare}父ちゃん、いくら奥さんが好きだからって、
妻をホームズが愛したオペラ歌手に当てはめて、美声披露まで美化するのはやり過ぎやでw{/netabare}

緒方 恵美さんによるセレブ少年グループのリーダーの生意気ボイスも〇
{netabare} 実は真相を隠す煙幕だったりする。{/netabare}


【音楽 4.0点】
劇伴はお馴染みの大野克夫バンド。

いつものコナンのテーマ曲もロンドン仕様?にアレンジするなど、
現実&仮想世界にまたがるシナリオを好アシスト。


ED主題歌はB'z「Everlasting」
孤独の中から絆を取り戻す壮大なバラードと共に、
実写のロンドンの街並みを眺め余韻に浸るひと時。


【感想】
血縁やコネにより腐敗する人間による統治より、
決定のいくらかを人工知能に委ねた方がクリーンな政治ができる。
地方議会レベルではありますが、そうした主張も出ては来ている昨今。

とは言え、その水準まで、AI技術や信頼が高まるのは、
もう少し先になるのではと私は思います。

“家”の宿命を背負った“貴族”の底力も中々の物。
古くて汚いからと一掃するのは勿体ない。

だから二世、三世の皆さんには、どうか“リセット”されないように、
襟を正して奮起して欲しいなと願います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 18
ネタバレ

前田定満 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ヒロキ君が現代の子供達へ本当に伝えたかったことは何か?

自分自身が選ぶ好きな劇場版名探偵コナンはこの作品です。

あらすじ
2年前のニューヨークにて。{netabare}
マサチューセッツ工科大学に在籍する天才少年ヒロキ君10歳が
母親を亡くした後IT産業の帝王トマス・シンドラー社長の養子となります。
そこで天才的な頭脳で人工知能「ノアズアーク」やDNA探査プログラムを開発します。
ノアズアークは1年で人間の5年分成長する人工知能です。
ヒロキ君の意思を継いでいます。
しかし有名になったヒロキ君は多忙な上友達と遊ぶことも禁じられ厳しい監視下に耐えきれず、
人工知能「ノアズアーク」とDNA探査プログラムをネット回線に流し自殺をします。{/netabare}


そして現在。{netabare}
コナン達は父親の工藤優作がシナリオを提供した仮想ゲーム機「コクーン」の完成お披露目会に招待されます。
ちなみに工藤優作さんが提供したシナリオは19世紀のロンドンが舞台になっています。
コナン・ドイルのシャーロックホームズの小説の世界と
実際の19世紀の舞台を混ぜた世界観になっており、
実際に存在した殺人鬼ジャック・ザ・リッパーと戦い勝利するというストーリーです。

そのパーティーには警察の上層部の子供や政治家の2世3世が大勢いました。

そんな中、事件が起こります。
コクーン開発の主任で2年前に自殺したヒロキ君の父の樫村忠彬(かしむら ただあき)さんが殺されたのです。
現場に残されたダイイングメッセージ「JTR」。
JTRとは19世紀のイギリスに実在した殺人鬼「ジャック・ザ・リッパー」の略称。
この事件の解決する鍵は仮想ゲームの19世紀のロンドンの舞台にあると
コナンは事件解決のためにゲームにさんかします。
そんな中第2の事件が起こります。
人工知能ノアズアークがコクーンの回線にを占拠してしまうのです。
ノアズアークは「日本という国のリセット」を企みます。
ゲームに参加する大半は政治家などの2世3世の子供達で、
甘やかされた環境の中育ってきた。
彼らを潰すことで新しい日本を作るという意味です。
一人でもクリアすれば子供達の勝利。
もし全員がゲームオーバーになると脳内に大量の電撃を流すと宣戦布告してきます。
コナン達はこうしてゲーム(19世紀のロンドン)の世界に入ります。{/netabare}


この話はいつものコナンとは少し違い
先に犯人が分かっているというスタイルです。
樫村さんを殺害したのは{netabare}IT産業の帝王トマス・シンドラー社長{/netabare}です。
「彼はなぜヒロキ君を自殺へ追い込み、樫村さんを殺害したのか?」
この動機を映画の中で解決していきます。

またノアズアーク(ヒロキ君)は誰かのデータを借りてゲームに参加しています。
「ノアズアークは誰に化けてゲームに参加しているのか?」
「なぜ共に参加しているのか?」

またノアズアークは本当に2世3世を潰したいのだろうか?
「ヒロキ君は現在の子供達に本当に伝えたかったことは何か?」
この謎が最後に明かされます。


自分にとってイギリスは非常に憧れを持っている国で
この映画を1番に選んだ最大の理由もそれが大きいです。
またチャリングクロス駅や国会議事堂(ビッグベン)なども出てきます。

観るとロンドンに行きたくなります。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ゲーム内での話です。

コナンはパスポートの取得が出来ない為、海外へ行けない。
その為、バーチャル世界であっても、名探偵コナンの中では
数少ない海外が舞台の作品である。
(劇場版では唯一、因みにコナンは最近、ロンドンに行った。単行本の71,72巻に収録されている。)

本作は劇場版で唯一、倒叙形式(始めから犯人が判明している)で、現実での犯行の推理が行われる。これは他作とは一線を画すものだ。(私のコナンマニアの友人は、これが理由で本作を劇場版の中で最低評価している。)
また、新一の父、工藤優作が登場する唯一の作品である。
現実での犯行の推理は彼が行う。
本作の趣旨はバーチャル世界内なので、
コナンは少年探偵団+蘭で、ゲーム内での推理を行う。

以降の「ネタバレ」はWikiから引っ張ってきたあらすじです。
読みたい人は読んでください。核心には触れていません。
{netabare}
江戸川コナン(工藤新一)の父・優作がシナリオを提供した仮想体感ゲーム機「コクーン」の完成披露パーティーに招かれたコナン一行。そのパーティーには日本の未来を担うことになる、警察官僚や政治家の二世・三世が勢ぞろいしていた。そんな最中、殺人事件が発生。コナンは被害者のダイイング・メッセージから、事件の手がかりがゲームの中にあると考え、コクーンに乗り込む。ところが、ゲームスタートの直後にシステムが人工頭脳「ノアズ・アーク」に占拠され、コクーンに乗り込んだ50人の子供達を人質に取られてしまう。

「日本という国のリセット」を企てるノアズ・アークは、プレイヤーである子供達が一人でもゲームをクリアすることができなければ、プレイヤー全員の脳を破壊すると宣告。覚悟を決めコナン達は、5つのステージの中から「オールドタイム・ロンドン」を選択した。19世紀末に実在した殺人鬼・切り裂きジャックを追いかける、命がけのゲームに挑戦する。

一方、現実の会場では優作たちが殺人事件の捜査に乗り出していた。ゲームの世界と現実の世界、次元を隔てた2つの世界でコナンと優作が事件解決に挑む!
{/netabare}

しかし、本作の恐ろしい所は、ノアズアークがどこまでの個人情報を入手していたのかとういこと。なぜコナン=新一が理解できたのか。それにヒロキが自殺してから二年しかたっていないのに、あれだけ成長するとは人工頭脳恐るべし。
また、コナンがゲームに参加していなかったら、確実に全員死んでいたわけで・・・。とまあ、疑問が多い作品だった。
モリアーティの声優が小林清志さん(ルパン三世の次元大介の声優)だったのが良かった。

非常に評価の高い本作だが、コナンとして観るとどうも倒叙形式が鼻につく。またシンドラー社長が頭悪すぎ。
コナンに出てくる犯人は、衝動殺人を犯した一般人でも難解なトリックを仕掛けられるのに、この人は計画犯罪のくせに、足がつく杜撰さが納得出来なかった。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 11

63.3 2 ミステリーで天才なアニメランキング2位
名探偵コナン 沈黙の15分[クォーター](アニメ映画)

2011年4月16日
★★★★☆ 3.6 (274)
1617人が棚に入れました
ある日、朝倉都知事宛の脅迫状が届き、翌日、都知事が開通した新地下鉄トンネルが爆破される。コナンの活躍でけが人は出さずに済んだが、都知事を狙ったテロ事件への懸念が高まる。コナンは、都知事が国土交通大臣時代に関わった新潟県のダム建設を巡って怨みを持つ者がいないか調査に乗り出す。やがてダム建設の村で8年前に起こった交通死亡事故と、同じ日に崖から転落して以来意識を失ったままの少年・立原冬馬の存在が事件の重要なカギとして浮上してくるが…。

声優・キャラクター
高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、渡部陽一、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、山口勝平
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

黒い人影

朝倉都知事に届いた謎の脅迫状…。その翌日、都知事が開通した新地下鉄が爆破されるが、間一髪、コナンの活躍でケガ人を出さずにすんだ。コナンは、都知事が大臣時代に建設したダムの関係者で恨みを持つ者がいないか捜査を開始する。ダムを造るため移設された北ノ沢村を訪れたコナンは、8年ぶりに集まった幼馴染の5人の男女に出会う。8年前の交通死亡事故、ダム建設、そして意識を失ったままの「少年」冬馬、5人には暗い影がつきまとっていた。そんな中、冬馬は奇跡的に目を覚まし、事故当日の記憶を取り戻す…。彼の記憶に残された真実とは?地下鉄爆破犯が次に狙うものは何か?ダムの街を大規模災害が襲う!!というあらすじ。


しょっぱなの過去シーンで黒い人影が子供を追いかけるのはなんか不自然。
てかトンネル内に人が突っ立ってたら目立つから黒い人影たりえんやろ。
やはり爆発は劇場版らしいなあ。{netabare}地下鉄が飛び出ちゃうのに、人的な損害があまりないのは凄すぎ。

あの爆発から一転して豪雪の村でお祭りに参加。
{netabare}混浴にウキウキできた小五郎が女性だと思って話かけたのは猿。強烈なおばあさんでも良かったのに。{/netabare}

{netabare}ほかの幼馴染の妹ひき逃げについて曝露マンはあっさり死んでもた。護身用のスタンガン…。最初に見せたひき逃げ曝露の記事の裏を実は見ていた。同じ時期に起きた大きな強盗事件。というか同一人物。{/netabare}
戦場カメラマン笑

やはり爆発。てか慣れてるな。
狙撃もう顔隠す気ないやろ。
{netabare}盗んだダイヤモンドを村に隠したのにダムの底に沈んだから取り返そうとたくらむやで。{/netabare}
一貫してずっと悪い奴やったな。テロリストでもないのに、ここまで一貫してクソ野郎はなかなか
{netabare}猟銃であっさり成敗していたけど。あれ?お姉ちゃんがひき逃げの原因作ったんか~い。眼鏡外して髪型変えたのって…。{/netabare}
最後のスノーボードアクション凄いぞ。雪崩やぞ雪崩。まさに沈黙の15分

主題歌はB'zでDon't Wanna Lie

投稿 : 2024/11/02
♥ : 1
ネタバレ

ノリノリメガネ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

シリーズ最高のクズ犯人

シリーズ15作目。このあたりからとても作画が綺麗になってくる。
{netabare}
全体を通し、サスペンスとアクションのバランスがかなり良い具合に仕上がっている。特に冒頭の地下鉄爆破事件はかなり迫力があって引き込まれた。

今回の犯人がなかなかマッドでクズでひどいやつだったのは良かったと思う。
借金作って宝石強盗し、その帰りで飲酒無免許運転でひき逃げし、都知事を地下鉄ごと爆破し、最終的には村一つ消し去ろうとするという、シリーズ中最も救いようのない犯人だったと思う。凶悪すぎてどうかしてるとしか思えない。というかもはや立派なテロ。これほどの重大な事件を引き起こしたのに、その背景には哲学もなく、本人はただただ宝石欲しさのためにやっているというところにかなりの狂気を感じてしまう。
でも、このように犯人をとことんクズに描き、同情の余地も与えないようにしたのは良いことだと思う。あんまり犯人に同情できちゃうと犯罪を正当化しているようにも見えちゃうから。

途中、ゲンタとミツヒコの喧嘩を仲裁するコナンが良いこと言っている。
今作は珍しく少年探偵団と灰原がフィーチャーされた作品。舞台が新潟なので警視庁の面々もほとんど出てこない。
灰原がコナンのボードと相乗りするシーンは灰原好きとしては萌えるものがあるね。

ラストのダム爆破からの雪崩ももはや人智を越えていて、一体どうすりゃこんな芸当ができるのかとツッコミを入れたくなるが、やりすぎなのは毎度のことなので今回は目をつむりましょう。
コナンを捜すシーンはなんだか感動してしまった。

長らく意識不明だった冬馬くんがその重い設定の割りにはあまり本編に関わっていないのは不憫ではあるし、全体的に小ぶりな感じはあるのだが、シリーズの中で考えればまずまずの良作の部類ではないかと思う。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 2

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

生き延びるんだ、絶対に・・・

名探偵コナンの15周年記念作品です。
今作も突っ込みどころ満載ですが、そこは目をつぶって見ましょうね^^;

◆この作品の内容は・・・
今回の舞台は雪山。
「おまえの傲岸不遜な4年間の都政に対し天誅を下す!」
都知事に謎の脅迫状が届き、地下鉄爆破事件が起こります。
その事件の原因を探るべく、新潟県の雪国にコナン達は向かうが・・・。

◆ド派手なアクション・・・
コナンの劇場版作品は「ミステリー」+「アクション」+「パニック」という構成になっています。
特に今作では「アクション・パニック」>>>>>>「ミステリー」。
アクションシーンでは半端なくよく動き、オリンピック選手も顔真っ青になるような程のド派手なスケボー・スノボーテクニックをコナンが披露します(゚∇゚ ;) ス、スゲー!
その分、ミステリー要素は薄くなってしまっていますが、これはある意味劇場版作品として正しい。
TVシリーズと同じ事をやってもしかたがない、せっかく大画面の劇場で上映するのだから、とことんド派手にやって大迫力のアクションを楽しむといったところですね。

◆ゲスト声優陣に・・・
チョイ役ですが、戦場カメラマンの「渡部陽一」が声優をしています^^;
キャラデザもそっくり。
あのゆったりとした独特のしゃべりにちょっと笑ってしまいました( ̄▽ ̄)クスッ
でも、このキャスティングはちゃんと狙いがあったんですよ~。
この作品のテーマは「絶対に生き延びる」。
戦場カメラマンの「渡部陽一」は数々の戦場に出向いており「戦場報道とは生きて帰る事」と語ります。
これは遊び心のある演出でした♪

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17

63.0 3 ミステリーで天才なアニメランキング3位
名探偵コナン 戦慄の楽譜 (フルスコア)(アニメ映画)

2008年4月19日
★★★★☆ 3.6 (246)
1505人が棚に入れました
高名な元ピアニストの堂本一揮が創設した堂本音楽アカデミー。ここで、堂本一揮の門下生3名が死傷する爆破事件が起こった。被害者の一人のバイオリニストの河辺奏子は、近日行われる堂本音楽ホールの完成記念公演に出演する予定だったが、爆破事件で重傷を負ってしまい出演不可能となる。完成記念公演は山根紫音を代役として開くことになった。
事件の翌日、パソコンで爆破事件の記事を読みながら不敵な笑みを浮かべる犯人。「すべては、静かなる夜のために…」。

声優・キャラクター
高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、林原めぐみ、松井菜桜子
ネタバレ

入杵(イリキ) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

一番長いが内容は・・・

本作は劇場版名探偵コナン史上最長の115分作品である。
作品名の通り「音楽」がテーマの本作は、歌手の秋庭怜子とコナン以外の登場人物の活躍は抑制されている。
より、蘭や少年探偵団の活躍も芳しくない。
但し、作品としての完成度は前作や前々作よりも高いだろう。
また、私はあまり好きではない著名人によるゲスト声優は本作からである。山里亮太・坂下千里子・西尾由佳理が出演。

以降の「ネタバレ」はWikiから引っ張ってきたあらすじです。
読みたい人は読んでください。核心には触れていません。
{netabare}
高名な元ピアニストの堂本一揮が創設した堂本音楽アカデミー。ここで、堂本一揮の門下生3名が死傷する爆破事件が起こった。被害者の一人のバイオリニストの河辺奏子は、近日行われる堂本音楽ホールの完成記念公演に出演する予定だったが、爆破事件で重傷を負ったため出演不可能となる。完成記念公演は山根紫音を代役にして開くことになった。

事件の翌日、パソコンで爆破事件の記事を読みながら不敵な笑みを浮かべる犯人。「すべては、静かなる夜のために…」。

園子のコネで、堂本音楽ホールの完成記念公演に招待されたコナン一行。しかし、そのリハーサルで出会った天才ソプラノ歌手・秋庭怜子が何者かに命を狙われる事件が発生する。飲み物への薬物混入・ダンプカーでの襲撃・エアライフルでの狙撃と、手段を選ばず玲子を狙う凶悪な犯人。一方で、堂本一揮の門下生がさらに2人殺害されてしまう。

公演当日、コナンと怜子はホールの外を歩いている途中、何者かに襲われてしまう。さらに、公演開始後に堂本音楽ホールで次々と爆発が起こり、ホールの周囲は火の海に包まれる。しかし、ホール内では、完全防音のため爆発に気が付く者はおらず、公演が続けられていた。蘭たちも爆発していることも知らずに、堂本たちの演奏に聞き入っていた。コナンと怜子は意識を取り戻し、佐藤刑事たちのヘリに乗り大急ぎでホールに向かう。果たしてコナンは、犯人の正体を暴き、蘭たちを助けることができるのか!?
{/netabare}

コナンが絶対音感を持っている点(新一は音痴で音楽の成績が悪いはずなのだが)や、二人で電話を掛ける場面は無理があるのではないかと思った。
今回は前作に比べて推理要素が多かったが、まだ捻りが足りないと感じた。犯人は意外な人物で好感だが、犯行の動機が如何せん陳腐で説得力に欠けている点や、終盤の緊張感の無い展開は頂けない。「推理ショー披露している場合か」と突っ込みたくなる。
アメイジング・グレースは大変美しく良かった。
全体としては良い出来(特に音楽)だが、御都合主義(特に主人公補正)の改善と犯行の動機、他の容疑者の詮索をしっかりして欲しかった。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 13
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

タイトルなし

音楽家ばかりを狙った連続殺人事件が発生。殺された者はみな、高名な元ピアニストが率いる音楽アカデミーの出身者であった。彼が作った音楽ホールのこけら落としコンサートに招かれた、コナンたち一行。コンサートの目玉は、バッハが弾いたといわれるパイプオルガンと世界的に有名なバイオリン“ストラディヴァリウス”の音色、そして、絶対音感を持つ天才歌手の歌声であった。しかし、コンサート本番に向けて、数々の不審な事件が起こり始める。そして本番当日。コナンたちが訪れたコンサート会場がいきなり大爆発。一面、火の海に包まれる・・・。というあらすじ。


やはり爆発でスタートすると劇場版らしい。爆発爆発う
今作は灰原哀が冒頭のセリフにも加わっている。

気が強いソプラノ歌手さんのレッスン。いいですね。怒られたいけど、もう少し弱い姿見せてよお。ってめちゃ落ち込んでるう。気が強い女性ほどメンタルが実は弱いとかあるあるか?
人の飲み物を勝手に飲んで毒?が仕込まれていたのか体調不良になったのは笑。

歌声や音が鍵を握ることもある。{netabare}音が爆発の合図になる。あえて外して操作とか。殺すの躊躇しちまうのは割と痛恨のミスでは?殺すつもりはなかったんだね。{/netabare}

リボルバー式の銃で狙撃て凄いな!!音痴なのに、とっさの絶対音感も凄いけど。なんで歌うのだけ無理やねん。
警察カップルの大活躍ですね。

絶対音感が年齢で衰えたせいとか。老化の悲しみや。おじいちゃん色々と切なくなっちゃう。

主題歌はZARDで翼を広げて。神曲です。ただ、歌詞は作品の内容と関係していないですが。
その他にも音楽関係の作品なのでオペラやら多くのクラシック音楽。良き。翼を広げて鳥も飛んでる。もしかしてパイプオルガンといえば教会→天使→翼??
映像はバイオリンを弾く女性とパイプオルガンやら朝霧に包まれた幻想的な雰囲気。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 1
ネタバレ

ノリノリメガネ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

謎が謎を呼ぶ爆発風味の音楽ミステリー

今回はオペラのコンサートに焦点を当てた音楽ミステリー。
{netabare}
真下正義みたいなコンサートの観客が人質みたいになったり、絶対音感をキーワードとして出したり、音楽ミステリーのセオリーは押さえている。

今回は2種類の事件が平行して起き、それがなかなか結び付かず、後半まで犯人が予想できないのでハラハラした。シリーズの中ではしっかりとしたミステリーになってる方だと思う。

後半にかけてのパイプオルガンの音と爆発を関連させたド派手な展開もコナンらしくて良い。さらに、オペラ歌手の歌声を新一と蘭の思い出に結び付けるのも粋な演出だった。
最後の灰原とのナイスコンビネーションで、佐藤刑事の狙撃を演出したシーンもかなりオシャレでかっこよかった。

今回の犯人はかなり身勝手な犯行動機で、マッドな感じが良かった。
ゲストキャラの秋庭さんが結構ナイスなキャラだったのがまた作品を引き立てている。「だって、アメイジング・グレイスは許しの歌だから」って最後のセリフもなんかオシャレ。

全体的に見てもまあまあ及第点はあげられる出来だと思った。

コナンは適度なツッコミ所が楽しいのも特徴的で、今回も声で電話をかけるところは結構笑えた。それにあんだけ爆発起きてるのにやっぱ気付かないもんなのかしらね。

しかし、コナンの犯人には爆弾魔が結構いるけれど、みんなどこで爆弾の作り方覚えてるんだろうね。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 5

75.7 4 ミステリーで天才なアニメランキング4位
ペンギン・ハイウェイ(アニメ映画)

2018年8月17日
★★★★☆ 3.8 (266)
1227人が棚に入れました
小学四年生の少年アオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、大人になったときにどれほど偉くなっているか、見当もつかない。そんなアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”と仲がよく、“お姉さん”はオトナびた賢いアオヤマ君を、ちょっと生意気なところも含めかわいがっていた。ある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか…。アオヤマ君はペンギンの謎を解くべく研究をはじめるのだった。そしてアオヤマ君は、“お姉さん”が投げたコーラの缶が、ペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」“お姉さん”とペンギンの関係とは? そしてこの謎は解けるのか?少し不思議で、一生忘れない、あの夏の物語。

声優・キャラクター
北香那、蒼井優、釘宮理恵、潘めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、西島秀俊、竹中直人
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

この小四男子が大人になるのが楽しみでなりません

原作SF小説は劇場鑑賞後に購読。

ボクは大人になったら保母さんと結婚するんだ。
或いは先生と、或いは看護婦さんとか……。

幼少期の園児、児童の中には、時折、
こうした未来を語るナマイキな小僧がおりますがw
あれは果たしてどういった心情なのでしょうか?

年上の女性に甘えているようで母性依存とは少し違う。
だからと言って恋愛のいろはを知っているわけでもない。
大人になってから初恋の相手は先生だったなどと吹かす人もいますが、
あれは恐らく初恋の域には達していなかったと見るのが妥当でしょう。

そして、思春期を経て、恋を知っていく中で
母性依存以上、初恋未満の経験は、いつの間にか霧散してしまう。
その時、少年の心や周囲に何が起こったのか?
についてはあまり語られることもありません。


本作はそんな幼少期から思春期に差し掛かる少年と年上お姉さんの青春を
生命進化史や宇宙観に絡めたジュブナイルSF作品。

歯科医院に勤務するお姉さんを結婚相手に決めている主人公少年。
彼がまた只者ではありません。

“人類代表”就任を企てる少年の野望は、
夢物語にとどまらず、形にすべく既に計画的に動き出している。

ノートに自身の課題と研究テーマを列記。
(しかもジャポニカ学習帳などのお子様向け文具ではない。
論理的思考やスケジューリングに最適な大人向けの外国製方眼ノート)
解決のためのPDCAサイクルを回して、
日々、着実に“エラく”なっている自負を得ているのです。

けれど、宇宙物理学の知見に触れたり、
一流のビジネスマン、研究者に匹敵する
メソッドを体現した天才児をもってしても、
ようやく知りつつある恋の甘酸っぱさについては、認識しきれない。

知識だけでは感じ切れない。
成長や性徴を経ねば分らない感情が確かにある。
少年の知的生活を強調することで
浮かび上がって来る青春という構図が誠にこそばゆいです。


鑑賞された方の中には、というより多くの方が、
こんなすました主人公少年なんているわけないだろうw
と思われたのではないでしょうか。

ただ、私の場合は、自分も幼少期、ろくに方程式も解けないクセに、
舌で乳歯をグラつかせつつ、
NHKでアインシュタインの業績を優しく解説する番組などを見て、
宇宙の真理を知った気になっていたナマイキなガキだったのでw
本作の主人公少年の言動には共感できる点も多々ありました。
(但し私も流石に、{netabare} 怒りの感情を和らげるために、おっぱいを妄想して幸せになる{/netabare}
などということはなかったと弁明はしておきますw)

SF展開も私好みで思索も捗り、久々に幼少期に戻った気分になりました。
嬉しさの余り……また、劇場版の説明だけでは納得できないこともあって、
鑑賞後、原作購入して延々と考察に耽っている内に、
この夏も終ろうとしていますがw後悔などは全くありません。
脳に清々しい汗をかくこともできた素敵な夏でした。


それにしても、この主人公少年は
これからまさに恋を知り、青春を知ることになるのでしょうが、
別次元とも言える思春期の純情を経た時、さらに大人になった時、
この夏の思い出はどう自己解釈されるでしょうか?
未熟だった自分にのたうちまわったりもするのでしょうか?
今から反応が楽しみでなりませんw


その他、主人公少年だけでなく、同級生の男子一名と女子一名もまた、
初めて知ってしまった恋の感覚に戸惑いながらも成長していく。
三者三様の青春も実にくすぐったかった。良作青春SF映画でした。


以下、ネタバレかつ超絶ロングな考察。

一応ノート形式を気取ってはいます。
眺めていても大した「エウレカ!」も来ない半端な代物ですがw
鑑賞後の思索等にお役立て頂ければ幸いです。

{netabare}
□ブラックホールとワームホール仮説と“世界の果て”

劇場版では、“世界の果て”は遠い宇宙の外ではなく、内側にあるかもしれない。
と示唆された程度でしたが、原作では、かなり多岐に亘る思索があります。

例えば、恒星が死を迎える際に重力で自壊するなどして
空間に穿たれるブラックホール。
光も音も時間や空間さえも飲み込まれ押し潰されると言うこの穴については、
その出口が別の宇宙へ通じているという仮説が提唱されています。

この場合“世界の果て”は外側の辺境ではなく、
内側のブラックホールに存在することになるのです。


□始まりと終わりを繰り返す万物

無から生じた宇宙の膨張と収縮。
混沌と秩序、生と死、進化と絶滅、眩しい朝昼と静寂とした夜、
輝かしい夏も四季が巡れば秋を経て、命が眠る寂れた冬を迎える。

全ては始まり、やがて終わり、また混沌とした始まりへと回帰していく。
本作では盛衰を繰り返す森羅万象という宇宙観が、
少年が知覚する周囲のあらゆる事物、体験にあてはめられます。


□宇宙と海の共通点

原作では海の神秘についても、さらなる言及があります。
深海に至っては並の探査船は圧壊する程の高水圧。まるでブラックホール。
そこにすら棲息する生命体は、宇宙のエイリアンを思わせるグロテクスクな外観。

光や音が地上と異なる性質を見せる水中においては、
さながら宇宙空間を想起させる不思議な非日常的な環境を与えてくれます。
宇宙飛行士も水中で訓練に励むのです。

劇場版では、さらりと流されたプールのシーン。
あのカットだけだと全裸で女子の前に浮上する
少年の奇行を強調するだけのネタシーンと化していますがw
原作だと、あの場面に宇宙と海をつなぎ合わせる感覚を読者と共有する、
貴重な水中体験の描写があります。

後で原作を読んでいて、一番これは映像化して欲しかったなと思ったシーンです。


□コーラと多元宇宙論

お姉さんが投じたコーラからペンギンが発生する。これも含蓄に富んだ表現です。

原始の海から発生した生命が鳥類まで到達する生命進化史の早回しとも解釈できますし、
私の場合は幼少の頃見た多次元宇宙論の泡宇宙のイメージ映像を思い浮かべました。

宇宙は単一ではなく、無数に存在していて、炭酸の泡の如く生まれては消えている……。
コーラの漆黒の液体に泡立つそれらがペンギンへと到達し、また元のコーラ缶に回帰していく……。
一連の描写は宇宙の性質も示唆しているように感じました。

いずれにせよ、ペンギンの発生と消滅もまた、万物の盛衰を暗示しているものと思われます。


□<海>とは何か?

ハマモトさんが発見した膨張と収縮を繰り返す不思議な浮遊球体<海>
この世界に開いた塞ぐべき“穴”との指摘からも、
また上記の考察からも、ブラックホール?と推測したい所ですが、
重力による星の潰滅に由来しないためか、万物を吸い込み圧壊する性質はない模様。

一方でワームホールの如き異次元空間への転移機能は有していて、
<海>の中では物理法則や時空も混沌としています。
劇場版でも“世界の果て”と形容された<海>
原作では加えて「カンブリア紀」の海とも再三強調されています。
多種多様な海洋生物が爆発的進化を遂げては消えていった……。
地球生命史でもっとも多くの可能性が繚乱した時期。

<海>はかの時代の如き混沌への回帰をもたらすのです。


□ペンギンの役割

ペンギンと言う鳥類はまさに生命進化史の天邪鬼。
海の生命が数億年かけて上陸を果たし、翼を獲得し、大空に羽ばたいた……。
その進化に逆行するようにペンギンは、空を飛ぶことをやめ、
翼をフリッパーに変え、生命の故郷である海に舞い戻り、生き生きと泳ぎ回る。
そのクセ、かつての陸棲から海の主と化したシロナガスクジラと異なり、
ペンギンは完全に海棲生物にはならない。
「ペンギン・ハイウェイ」と呼ばれるルートを通って
彼らは海から陸の浜辺へ帰って行くのです。

お姉さんが出すペンギンたちもまた、混沌たる<海>と呼応しながら、
完全に混沌に回帰することはない。
それどころか混沌を振りまく<海>を、
残された鳥類としてのアイデンティティたるくちばしで突いて消してしまうのです。

混沌に最接近しながら、秩序へ舞い戻って来る。
「ペンギン・ハイウェイ」は混沌に背を向ける者たちの進路でもあるのです。


□ジャバウォックの役割

……これには参りました。なにぶん『鏡の国のアリス』の記憶がないものでして……。
こんなキメラみたいな怪物いましたっけ?

で、結局、ウィキペディアなどを当てにする羽目になったわけですがw

その中で使えそうかな?と思ったのはジャバウォック退治が、
「言語の存立」を脅かす混沌を両断する比喩であるとの解釈。

陸に出張って来たクジラの如き風貌のそれは、
混沌から秩序を構築する営みを妨害する<海>からの使者。
混沌の穴を塞ぐペンギンにとっては
やはり天敵となる存在だと思われます。


□少年の成長に待ったをかける、混沌回帰の誘惑

少年はお姉さんを未来の結婚相手と決めている。
けれどそれは恋慕の感情を理解できていない、
母性依存以上、初恋未満の幼少期の未熟である。
少年が幼少期を脱し恋とは何かを知れば、
お姉さんとの関係は成立し得ない幼少期の夢想として霧散する運命にある。

生まれて成長していっても、人はやがては死に絶える。
万物はどーせ原始の混沌に戻っていくと言うのに、
遠くの海辺の街など目指す必要はあるのだろうか?

このまま成長もせず、恋も知らず、
将来お姉さんと結婚すると無邪気に思えていた頃の
甘い夢に溺れていても良いのではないか?

混沌への退行という誘惑は、
成長し恋を認識しつつある少年を惑わせ続けます。


□新興住宅街と子供のセカイとお姉さん&ペンギンの行動可能範囲

原作では、主人公たちが暮らす新興住宅地についても多くの言及があります。
少年が引っ越して来た時は、誕生直後の宇宙や原始の地球の如き静けさだった街が、
人口増加と共に活気を得ていく……。

星や銀河が繁栄した宇宙史や、多様な進化が花開いた生命史と重ね合わされた、
ビッグバンのようなエネルギーで膨張を続けるこの街には
お姉さんが出すペンギンの素材ともなり得る特別な力が宿っているのです。

さらに“世界の果て”は内側にあるかもしれないという論理は、
子供たちが行動し、探検できる範囲内に
“世界の果て”はあるという幼少期にありがちな夢想とリンクします。

海辺の街を目指すためにはこの住宅街を、子供のセカイを出て、
外に踏み出さねばならない。

そして奇しくも子供のセカイはお姉さんやペンギンたちが存在できるエリア。
ペンギン・エネルギーが届く範囲ともリンクするのです。



□それでも少年は海辺の街を目指す

混沌への退行という誘惑を振り切って、
少年は秩序を阻害する<海>を終らせる決断をします。

それは恋と知ってしまったお姉さんとの関係。
でも現状では叶わない子供と大人の関係。
それらを一度精算する辛い判断でもあります。

例え、万物がやがて無に帰すものであっても、
少年は進化を続ける存在として、成長を選択し、
内側の“世界の果て”に籠もるより、遠く外側にある“世界の果て”を目指すのです。
子供のセカイを出て、海辺の街へ……。

幼少期を脱して思春期へと、街の安泰と共に、
少年の成長は健全性を取り戻すのです。


□お姉さんの体調と<海>の膨張・収縮とハマモトさん

<海>の拡大と相関関係にあるお姉さんの体調。

加えて私には少年と同級の少女ハマモトさんとの関係も
関連しているように思えます。

ハマモトさんは少年に思春期の健全な恋を体験させるキーになる登場人物。
ハマモトさんと<海>の研究を開始する前は拡大期にあったと言う<海>。
お姉さんも割と元気でした。

この辺りにの関連性についてもデータを整理すれば面白いのでは?と感じています。


□お姉さんの正体と役割

結局、私にとっては、これが一番の謎として残りました。

物体からペンギンを生成する人知を越えた存在であったお姉さん。

世界が混沌に飲み込まれるのを防ぐため生まれた異次元人か?
はたまた、主人公少年がお姉さんと結婚するという夢想が、
夏の終わりに彼女の引っ越しにより霧散する……。
という現実がまずあって、
そこからSFファンタジー方面へ派生した幻想がペンギンを出すお姉さんだったのか?
なかなか明確な答えが見出せません。

ただ、一つ思うのは、お姉さんは素敵な女性であったということ。
幼児、児童の結婚願望を向けられて、
軽くあしらうでもなく、中途半端に悪ノリするわけでもなく、
論理的に思考し研究する少年の可能性にかけて、
自身の謎を課題として提示するという形で、
少年が自力で思春期への成長へ踏み出す契機を与えた。

私は彼女の言動を好意的に受け止めています。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 36
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

『この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?』

アニメ化もされた『夜は短し歩けよ乙女』、『四畳半神話大系』などの森見登美彦による原作小説は、角川文庫(角川書店)で書籍化(原作未読)。第31回日本SF大賞受賞。
アニメ映画は、119分(2018年)。監督は、『陽なたのアオシグレ』、『雨を告げる漂流団地』などの石田祐康。制作は、同監督の作品の他に『泣きたい私は猫をかぶる』、『BURN THE WITCH』などのスタジオコロリド。
(2024.3.29初投稿、3.31一部推敲、「考察を踏まえた感想」を追記)

以前から気にはなっていたものの、感想が人によって結構違うし抽象的。こういう作品は、経験上、刺さる人にだけ刺さるものが多く、自分に刺さるかまで観る前にわからないので躊躇していた作品。が、某レビュアーさんの勧めもあって観始める。

観終わった直後の感想としては、確かに、これは感想が人によって結構違ってきそう。なぜなら、本作には、大きく分けると「現実の話」と「夢のような話」という柱が2つあると感じたからです。
(これを補強する劇中の要素としては、本作に登場する「ジャバウォック」がルイス・キャロル作『鏡の国のアリス』の中で語られる怪物であるということ。なので、本作は、意識的に『鏡の国のアリス』の「(アリスの)夢のような話」と「現実の話」がごちゃまぜになった感じを描いていると思われます。例えば、冒頭のシーンである近くに海のない閑静な住宅街に南極周辺にしか生息しないはずの愛らしいペンギンが群れているという景色も、そういう感じですよね。)

その柱の1つ目である「現実の話」の中心は、本作の主人公であるアオヤマ君の「ぐらつく乳歯」、「にがいブラックコーヒーを我慢して飲む」、「セクシーな年上のお姉さんに憧れる」といったアイコンが示す「大人になりかけの少年のちょっと背伸びした恋」。
おそらく、ここに関する感想が人によって大きく異なることはないでしょう。なぜなら、誰しもが多かれ少なかれ大人への通過儀礼として「現実」に通った「道」(一本道としての「ペンギン・ハイウェイ」)でしょうから。

問題は、もう1つのSF要素のある「夢のような話」の方。
「アオヤマ君は、“お姉さん”がふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。『この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?』」(公式のSTORYから引用)という問いが、アオヤマ君と同時に我々にも投げかけられている。

そして、その謎については、劇中で明確な答えらしきものが提示されておらず抽象的な表現にとどまっている。
したがって、その解釈についての具体的なイメージや、そのイメージをどう具体的に説明するかは、その人の個人的な経験などが色濃く反映されることになるため、人によって大きく異なってくる。また、抽象的なだけに色々な解釈の余地があるとも思いました。


とはいえ、考察好きとしては、綺麗なお姉さんに挑発されたんじゃ黙っていられないということで(笑)、これから「ネタバレ全開で考察」していこうと思います(以下、興味のある方のみ、お付き合いいだだければ幸いです。)。


【「お姉さん」とは?】
{netabare}そもそも「お姉さん」には名前がないので、抽象的な存在であることが匂わされています(※マンションの表札も見えない)。
したがって、それだけでも「お姉さんは具体的な存在を持った人間ではない」といえそうです。

これを「現実の話」の文脈で考えるなら、特定されていないので、男の子の憧れの存在として、みんなが想像する「お姉さん」のアイコンという意味も含まれているのでしょう。

そうなると、問題は、やはり「夢のような話」の文脈における「お姉さん」の存在理由(正体)でしょう。


【「海」と「ペンギン」と「ジャバウォック」と「お姉さん」との関係】
これを考えるには、まず「海」と「ペンギン」と「ジャバウォック」と「お姉さん」との関係を解明する必要がある。

結論からいえば、これらはすべて「海」から生まれた存在(もしくは、結局のところ「海」と同じもの)だと考えます。

「お姉さん」は、「ペンギン」と「ジャバウォック」を生み出すことができる。そして、「お姉さん」は「ペンギン」をたくさん生み出すと疲れることから、「ペンギン」は、「お姉さん」自身がエネルギーを消費して生み出したことになります。また、「ジャバウォック」は、「お姉さん」が「この世界に未練があった」ことから無意識に生み出された存在でした。

さらに、「海」から離れると、「ペンギン」も「お姉さん」も存在できなくなるという描写、「海」の膨張と収縮に「お姉さん」の元気が連動しているという描写から、「お姉さん」は、「お姉さん」が「ペンギン」を生み出したのと同じように、「海」から生み出されたものだという推測ができます(もしくは、結局のところ、目的に合わせて形を変えて生み出されただけであって、本質的にはすべて同じものなので連動しているとも考えられます。)。

加えて、2002年にスティーヴン・ソダーバーグ監督によって映画化された、ポーランドのスタニスワフ・レムによるSF小説『ソラリス』に「海」が出てくる(ここで『ソラリス』がいきなり出てきますが、劇中でアオヤマ君がスズキ君をからかうためについた嘘が「スタニスワフ症」でした。)。

この『ソラリス』、簡単にいうと、惑星ソラリスの衛星軌道上にあるソラリス・ステーションで、そこにいないはずの人間が現れるという奇妙な現象が起こり、その謎を主人公が解明していくというお話。そして、その謎の人間は、{netabare}そこにいた研究員の記憶をもとに「海」が生み出した人間のコピーでした{/netabare}。

という本作の元ネタから考えても、「お姉さん」は、「海」が生み出した存在だといえそうです。{/netabare}


【「海」ってなに?】
{netabare}じゃあ、「海」ってなに?って話になると思うわけですが、結論からいえば、元ネタの『ソラリス』から考えても、「海」とは、我々では完全に知覚・認識できない「未知の存在」(高次元の存在、地球の意志、ライフストリーム(FF7)、神、宇宙人、オーバーロードなど)なのだと思います。


もっとも、「未知の存在」では説明になっていないので、もう少し考察を進めるなら、劇中で、アオヤマ君は、「海」について、時空を歪めるので、この世界に存在してはいけない「穴」みたいなものだと言っています。

また、物語の終盤に、お姉さんとアオヤマ君が「海」の中に入ると、そこには我々の世界と似てはいるものの違っているようにも見える異世界が広がっていました。

そうすると、この「穴」は、SFでは定番設定ともいえる「ワームホール」ということになりそうです(そんなものをアオヤマ君が生身で通過できるのかについては、真面目に考察しない方向で(笑))。


【「穴」の存在理由】
では、そんな「穴」がなんであるのかという話になってくる。

「穴」を修復するために「お姉さん」によって生み出された存在が「ペンギン」でした。だから、「ペンギン」は「海」を破壊しようとする。

もっとも、「お姉さん」が生み出した「ジャバウォック」は、「ペンギン」を食べる。これは、「お姉さん」がペンギンを生み出す理由と矛盾するのですが、「お姉さん」がこの世界に未練があり、修復が完了すると目的を果たして消えてしまうため、無意識に生み出されてしまった存在のようです。
(また、「お姉さん」が「ペンギン」や「ジャバウォック」を生み出せることは、「海」と同じ存在としての「生命の母」のメタファーということになりそうです。そうすると、いやらしい意味ではなく、母性のアイコンとして「お姉さんのおっぱい」を強調することにも意味が出てきます。)

じゃあ、「ペンギン」・「ジャバウォック」と「穴」はどういう関係なのか。

ヒントは「ジャバウォック」にありそうです。なぜなら、こいつは怪物なんですが、実は『鏡の国のアリス』では存在が語られるだけで実際に出てこない。だから、形が決まっていない。そこで、本作のジャバウォックをみると、異形ではあるものの、その原型は「クジラ」だと思われます(実際、一部の歯クジラはペンギンを捕食します。)。

そして、先程の「ペンギン」。実は、クジラとペンギン、この2種には共通点がある。

それは、進化の過程で、海から陸に上がって、再び海に戻ったというところ(劇中でも、終盤でそういった内容がイメージされるシーンがある)。また、ペンギンは海から餌をとり、クジラはペンギンを食べるという食物連鎖がある。
さらに、「海」のあった森は、円循環するように空間が歪められていました。あと、「海」にあたると人工物が自然に戻されるような描写がある。

そこで、これらは、あえていうなら「全ての生命はその母である海に戻る」、「円循環」、「万物の流転」のアイコンといえるでしょうか。

そうすると、上で書いたように、結局のところ、「海」と「ペンギン」と「ジャバウォック」は本質的に全部同じものだと考えられるので、これらは、「海」という1つの意志に従っていると考えられる。
そして、上で導いた「全ての生命はその母である海に戻る」が「海」の普遍的な意志なのだと推測できます(「海」に意志がないとみるなら、「相対性理論」のような普遍的な法則でしょうか。)。

したがって、「未知の存在」である「海」は、人類が円循環から外れそうなので、「穴」によって人類を「海」の普遍的な意志である「全ての生命はその母である海に戻る」を強制実行(人類にとっての、終末思想、地獄、最後の審判、終わり、死、世界の果てなど)しようとしていたと考えられます。


【「穴」と「お姉さん」との関係】
その強制実行に際して、「お姉さん」は、その「海」の意志を地球で実現するための「代行者」、「天使」、もしくは、その判断の正しさを担保するための「審判者」として「海」に用意された存在だったといえそうです(なぜなら、「海」を消滅させる能力、すなわち、強制実行を中止する能力を持っていた。)。

そうすると、「お姉さん」は、人類代表の賢いアオヤマ君が円循環の「道」(「ペンギン・ハイウェイ」)から外れることなく、破滅の道を選ばないと判断したことになりそうです。

もっとも、今後、アオヤマ君が努力を怠れば、再び「穴」があくかもしれないですし、ペンギン・ハイウェイの先にいるはずの「お姉さん」をどう解釈するかは、「海」を具体的にどう解釈するかによっても変わってきそうです(例えば、「海」を神と考えるのか、宇宙人と考えるのかなど)。

このあたりは、個人の宗教観なども関わってきそうですし、これが正しいなどと言うつもりもないので、参考までに見ていだければ幸いです。{/netabare}


【「お姉さん」の記憶は本物か?】
{netabare}あと触れておきたい謎としては、「お姉さん」がもっていた記憶の謎でしょうか。

まあ、「お姉さん」自体が人間ではないので、彼女自身が経験した本物の記憶ではないでしょうね。

もっとも、元ネタである『ソラリス』で「海」が他人の記憶をコピーして人もどきの存在を生み出していたことから考えると、別の誰かの実際の記憶のコピーである可能性が高い。例えば、かつて海に飲み込まれてしまった人の記憶などでしょうか。{/netabare}


【考察を踏まえた感想】
{netabare}劇中で、唐突にアオヤマ君の妹がお母さんが死んでしまうと泣いていたり、お父さんが「世界の果ては意外と近くにあるかもしれない」(つまり、「海」の存在の暗示)といっていたりするので、何か意味があるんだろうとは思ったんです。

しかし、抽象的な話なのでそもそも難しいとは思うのですが、他の劇中の要素をあわせても「穴」の存在理由を導くには、「未知の存在」に対する興味といった正の要素が強く恐怖といった負の要素が弱いと感じたので、ちょっと遠いかなあというのが率直な感想です。文字では気にならなかったであろう部分も、映像として解像度があがると、その分の情報量を足す必要が出てくる。

出しすぎるのも論争のもとになるのですが…、もう少し映画監督として色(自己流の解釈)を出しても良かったのかもしれませんね。{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 6
ネタバレ

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

世界は研究すべき”不思議”で満ちている!

原作:「ペンギン・ハイウェイ」既読
 著:森見登美彦
  (代表作「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」「有頂天家族」等々)

『他人に負けるのは恥ずかしいことではないが、昨日の自分に負けるのは恥ずかしいことである。一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりもえらくなる。…今日計算してみたら、ぼくが二十歳になるまで、三千と八百八十八日かかることがわかった。そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。…えらくなりすぎてタイヘンである。…結婚してほしいと言ってくる女の人もたくさんいるかもしれない。けれどもぼくはもう相手を決めてしまったので、結婚してあげるわけにはいかないのである。
 もうしわけないと思うけれども、こればかりはしょうがない。』(原作抜粋)

毎日学ぶことをモットーに、日々ノートを片手に世界に対する研究を重ねている優秀だけどちょっとスケベな愛すべき阿呆小学生の主人公と、謎多きお姉さんを中心に据えた、不思議なファンタジーSF作品。

森見作品にあるまじき優秀な小学生が主人公であるが、内在する阿呆さは”らしい”主人公でもある。美しい「お姉さん」の不思議な力に関する研究を進めていく中で生まれた謎が謎を呼ぶ作品であり、青春を感じさせる爽やかな作品でもあった。

途中冗長気味で、退屈に感じられる部分もあったが、総じて森見さんの描き難いオリジナリティーあふれる不思議な世界観を、精一杯うまく映像化していることに大変満足できた作品であり、面白さ、熱さ、美しさ、そして切なさが見事に融合された良作であったと思われる。
(ちなみに自分は泣きました。アオヤマくんは泣かないことにしているのに…。)

森見ファンはもちろん、ちょっと変わったアニメ映画が観たいなら、ぜひともチャレンジしてみてほしい作品である!

以下項目別ネタバレ付き感想
{netabare}
物語:4.5
 森見×上田誠は心配の必要なし。
 謎が謎のまま残ったことを残念に思う意見が散見されるし、その意見には大いに共感できるが、この不思議な世界を説明するのに十分な言葉はこの世に存在しないと思うし、誰もが納得する答えはきっとない。
 世界に空いた穴である<海>”広がる世界の果て”を埋めるためのペンギンであり、そのペンギンを生むお姉さんはきっと人間ではなかった。<海>がなくなれば<海>エネルギーで存在しているペンギンやお姉さんは消えてしまう…。主人公が立てた仮説はこんなところであろう。そして、主人公以上にお姉さんの真理に近づいた人間もまたこの世にはいない、とどまるところ現状人知では手には負えない問題なのである。
 これらは原作において”素敵な”父の言う「解決しないほうがいい問題」であり「理不尽なこと」であった。

 ただし、ぼくは決してあきらめていない。

『ぼくは世界の果てまでたいへん速く走るだろう。みんなびっくりして、とても追いつけないぐらいの速さで走るつもりだ。世界の果てに通じている道はペンギン・ハイウェイである。その道をたどっていけば、もう一度お姉さんに会うことができるとぼくは信じるものだ。これは仮説ではない。個人的な信念である。』

声優:3.5
主人公「アオヤマくん」を演じたのが北香那。演技がぶれずに想像以上にフィットしたキャスティングであった。
お姉さんは蒼井優。こちらは評価が分かれるかもしれない。演技力は流石であったが、アニメ声に毒された自分には、もう少し綺麗な声であててほしかった気がする…。
ウチダくんは釘宮であったこともあり、可愛すぎかよ!もしかしてヒロインよりも…なんて思ってしまったり。
その他お父さんを演じたのが西島秀俊…!棒演技ではあったものの、暖かい声はやはり素敵であった。

キャラ:4.0
アオヤマくんとお姉さんは安定として、脇を固めるキャラ達も素敵であった。ハマモトさんなんて可愛いじゃないか!
個人的には原作からお父さんがお気に入りだったりする。
いじめっ子のスズキくんと一緒に遊べるようになったのも良かった。

作画:4.5
素晴らしい。難しい世界観を見事に映像化しているし、演出も申し分なし。

音楽:4.5
主題歌は宇多田ヒカルの「Good Night」。最高にマッチしていて、エンディング中に席を立つ人が極端に少なかったように感じた。

最後にぼくとお姉さんに明るい未来があることを祈って、原作の最後の素敵すぎる文を引用したい。

『ぼくらは今度こそ電車に乗って海辺の街に行くだろう。
 電車の中でぼくはお姉さんにいろいろなことを教えてあげるつもりである。ぼくはどのようにしてペンギン・ハイウェイを走ったか。ぼくがこれからの人生で冒険する場所や、ぼくが出会う人たちのこと、ぼくがこの目で見るすべてのこと、ぼくが自分で考えるすべてのこと。つまりぼくがふたたびお姉さんに会うまでに、どれぐらい大人になったかということ。
 そして、ぼくがどれだけお姉さんを大好きだったかということ。
 どれだけ、もう一度会いたかったかということ。』

{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 17
ページの先頭へ