ミステリーでヨーロッパなTVアニメ動画ランキング 3

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月06日の時点で一番のミステリーでヨーロッパなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

83.2 1 ミステリーでヨーロッパなアニメランキング1位
ACCA(アッカ)13区監察課(TVアニメ動画)

2017年冬アニメ
★★★★☆ 3.8 (834)
3699人が棚に入れました
13の自治区に分かれた王国にあある、巨大統一組織"ACCA(アッカ)"。
かつてクーデターの危機により結成されたACCAは、国民の平和を守り続け100年が経とうとしていた。
ACCA本部の監察課副課長 ジーン・オータスは、「もらいタバコのジーン」の異名をもつ、組織きっての食えない男。
飄々とタバコを燻らせながら、13区を廻り不正がないか視察を行っている。
そんなジーンを見つめる視線、不穏な噂と――おやつの時間。
ジーンの平和な日常は、ゆっくりと世界の陰謀に巻き込まれていく!

声優・キャラクター
下野紘、津田健次郎、悠木碧、諏訪部順一、遊佐浩二、大川透、緑川光、安元洋貴、田中敦子、後藤ヒロキ、上田燿司、前野智昭、八代拓、宮野真守、上村祐翔、中尾隆聖、石塚運昇
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ローマは一日にしてならず、ぢゃ

原作未読


{netabare}“Kokuouheika 99 saino tanjoubi"

ローマ字かよ!{/netabare}

原作はナツメ、監督も夏目、OPAメロはケツメ(?)。OPが終ればおやつの時間。だいぶぬるめの立ち上がりでした。


黒基調のサムネと番組タイトルから受ける印象はなんか固そう。
そんな視聴前の先入観なんてどこ吹く風。オシャレでかっこよくて、でもどこかしら抜けてて、そしてたばことスイーツに満ち足りたお話でした。地上波再放送をきっかけに、途中から配信に切り替え一気に観ました。全12話です。

あらすじ:もともとは別々の国だった13の国が統一されたという経緯のある土地でクーデターが勃発。それを国王は各地方に高度な自治を認めることで平定。13区に分けられたドーワー王国のそれから99年後の世界が舞台です。平定後に発足した“ACCA(アッカ)"と呼ばれる組織の監察課に勤める職員ジーンオータスが主人公の物語。監察課というお役柄全国を飛び回ってます。そして降って湧いたクーデターの噂を耳にするところから物語が動き出し、徐々に巻き込まれていくというサスペンス系統に分類されるであろう作品です。
それでこの所属組織ACCAがなかなかパンチが利いていて、警察・消防・医療その他公共性の高い各分野を一手に担ってる強大な組織なんですが、、、
不採算でも畳めないですよね?収入源はどうなんすかね?そもそも民間に治安組織の手綱を握らせたらダメじゃん、それじゃ傭兵とか民兵じゃないですか(笑)
この設定のせいで第一印象が良くありません。企業(サラリーマン)なのか公共組織(役人)なのかで見立てが変わるからです。公に奉仕する公僕が組織の論理との狭間でどうバランスを取るのか?が面白いのに民間組織設定だと無理が生じるはずなんです。{netabare}案の定、組織の性格上かなんなのか民間ならではの営利目的な描写を匂わせることもなく、いや描くことが出来ずに役人寄りの展開で推移したのでだったらはじめから公務員でいーじゃん、と思いました。{/netabare}
またクーデター解決(鎮圧?)手段が各区の自治の担保って、それってクーデター成功と同義では?としっくりこなかった序盤です。

些末なことでしょう。が、大概そんな些細なところが没入感を削ぐものです。
イケメン二人が主役級。5長官がイケボ揃い。そして毎度のおやつタイムにオシャレな雰囲気。うーん、女子向けかな?
男子には妹(ロッタ)か本部長(モーブ)をあてがっとけば安パイだろうよ。
というアニメかと最初は思ってた節があります。まあそれも最初の2,3話くらいのこと。回を重ねる毎に面白くなっていきました。


なぜなら、ちょっと冗長そうに見えて実はテンポが良かったから。
{netabare}第1話がいい例でしょう。最初の視察地ファーマス区訪問がAパートで終了。だいたい初回なら1話丸々使ってもいいところをそうしません。{/netabare}
ゆったり進んでいるように見えて、原作全6巻のラストから逆算して12話を作りこんだのが容易に想像できます。これは完走した後に振り返ったり2周めいくとわかるかも。伏線やミスリードの宝庫だったりするのです。

“クーデターの首謀者は?目的は?”

この物語のストーリーラインの軸はクーデター騒ぎにかかる人の動きです。謎を提示し情報を小出しにしながら興味を引かせ、その横でおいしそうなものを食べてるロッタちゃん(CV悠木碧)を眺めて楽しむ感じ。シリアスと日常パートの按配が良く、テンポの良さも加わって飽きることはありません。
各区もさすが高度な自治を実現してるだけあって区毎の性格がまるで違います。バラエティに富む各区を眺めることも毎度の楽しみだったりしました。政体でいえば都市国家の集合体みたいな感じかしら?アメリカの州よりも独自性が高く、昔のドイツやイタリアのイメージに近いです。
名残が残っているのはイタリアでしょう。ヴェネツィアはもともと国だったと教科書で習った方も多いかと思います。イタリアも州毎の独自性やプライドが高く、サッカー代表アズーリよりもおらほの町のチームが大事みたいなところがあって、このへんの歴史的経緯も比較文化の観点で面白かったりしますが、本作のドーワー王国はそんな国家です。

いつも通り脱線したところで話を戻すと、キャラも脇役含め棲み分けが出来ていて名前もすぐ覚えられました。キャラ紹介は省略ね。


起承転結のある物語は“転”からが勝負だったりしますが、『ACCA』の場合は、その前段も退屈しませんでした。
そしてお待ちかね{netabare}の第8話{/netabare}。わりと早めにバカでかい“転”がやってきます。これ自分がこれまで観た中でもトップクラスの“転”の回です。テンポよく進んで詰め込まれた情報が一気に繋がる感じ。そしてまだまだ明かされない謎を残しつつ結末に期待をもたせる神回でした。
これまだ観てない人いましたらお薦めですよ。残り話数で上乗せしていき結末も納得できる終わり方。ほんと12話あっという間とはこのことだと思います。


以下、ネタバレ所感
■二度おいしい作品
完走してからもう一回リピートしたくなるのではないでしょうか?
{netabare}・「こっちは30年間見てる」(ニーノ第2話)
・第3話の成人祝賀パーティーって孫を一目見たかっただけなのね
・同じく第7話のケーキ屋さんお立ち寄りも孫とお話ししたかったのね
・りんごのケーキが最後出てきて泣きそうになった。ニーノぉ~(第8話){/netabare}
視点をジーンやロッタではない他の誰かに移して鑑賞すると見え方が変わります。

■クーデター騒ぎへの落とし前のつけ方
予想が当たった人も驚いた人も納得の終幕かもね
{netabare}我こそは正義!の推進力は強いものがあるものの、一番やらかすタイミングでもあります。路線がすでに出来上がっている中でのどんでん返し。痛快でした。{/netabare}


思えば、作品を彩ったスイーツ群もバラエティに富む各自治区の描写もサイドストーリーと思いきや、結末を迎えた後に振りかえると意味を持ったものが多くありました。
原作の出来が良いのでしょうか。予想の展開を心地よく裏切られながらハラハラドキドキ、良く練られた良作だったと私は思います。


■オマケ
アッカについてのあれやこれや。
{netabare}私事ですが趣味でイタリア語やってた時期がありました。ビジネスには全く役に立ちませんが、現地のトラットリアで意気投合しワインの一杯を奢られるくらいの実力があった時期があります。
でこのACCA。イタリア語で“H”の読みがアッカなんです。アルファベットで8番目。やけに気合の入った第8話を観了後、一人にやっとした次第です。スタッフの遊び心だったら素敵ですね。

それと、スペイン語やイタリア語などラテン語由来の言語ではHを発音しないものも多く、イタリア人は大の苦手。転じて“H”は取るに足らないもの、なくてもいいものといったニュアンスも。作中のACCAの置かれた立場を表してるかのようです。

最後にもう一つ。中田英寿というイタリアで活躍したサッカー選手がいました。愛称は『ヒデ』。現役の頃は『ナカ~タァ』で現地で通じたものですが、日本では何て呼ばれてんだで返した時に、彼らは『イデ』になっちゃってました(笑)
その彼の現地での情報発信のメルマガだったかがたしか『H(アッカ)』だったと思います。彼の性格からして、自分を取るに足らない者だなんて謙遜するはずもなく、「ちゃんと『ヒデ』って呼べや!」なんでしょうね、きっと。{/netabare}


{netabare}ムールのワイン蒸し(ベルギー)、チーズフォンデュ(スイス)、ドーワーのお城はドイツのあの有名なお城かしら?…といったヨーロッパの装いと、ハレ区は東洋、フラワウ区はアラブとさしずめ万国博覧会みたいなアニメでしたが、自分が抱いたイメージはなぜかイタリアでした。また行きたいな。{/netabare}



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視聴時期:2019年4月~6月 地上波再放送 


2019.06.18初稿
2019.12.09配点修正 +0.2

投稿 : 2024/11/02
♥ : 64

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

静かにゆっくりと進んでいくストーリーは、密室で立ち昇る紫煙のよう…

この作品の原作は未読です。正直最初は視聴を迷いましたが、悠木さんが出演される事を知り視聴を決めた作品です。

物語の舞台はドーワー王国…元々は国王による独裁制の国でしたが、かつて発生したクーデターを機に13の地区による自治制に生まれ変わった国が舞台となっています。

もう一つクーデターで変わったのは、ACCAと呼ばれる民間組織が立ち上げられた事です。
このACCAは、各自治区の運営状況をチェック…つまり監視する業務も行っており、この物語の主人公であるジーン・オータスはその監察課の副課長を担っています。

この監察課の仕事は個人の業務配分量が極端に異なっており、オータスは乗り物嫌いな課長に変わって全13区の監視状況を視察に行くという監察課の中でもハードワークを日々こなしています。

ACCAの業務は基本的に各自治区に身を置き、その地区に密着した仕事を基本としているので、各自治区を飛び回っているのは監察課だけ…
完走して振り返ってみると、これも立派な伏線でしたけれど。

物語の序盤は正直展開が良く分からない…が本音でした。
オータスが各自治区を視察して回る…そして各自治区は文化、生活、環境が全く異なっていて、どの地区もオータスへのねぎらいともてなしを欠かしません。

それだけ監察課が持っている力は絶大である事の裏返し…
まぁ、オータスが上層部に対して虚偽の報告をするとは思いませんが、万が一不正が発覚でもしたら、当該地区にとって有益な事は一つも無い事は間違いありませんので…

それにオータスは物腰は柔らかいものの要所で目が利くんです…
若くして監察課の副課長にまで上り詰めた理由の一つなのかもしれません。

もう一つ、この物語の舞台の特徴は、煙草が極めて高価な価格で売買されているという事です。
具体的な金額は分かりませんでしたが、趣味嗜好の範疇を超えていて富裕層にしか楽しめないモノになっているとの事でした。

それなら喫煙シーンはさぞかし少ないのでは…と思いきや、オータスが愛煙家なので喫煙シーンは結構な頻度で画面から流れてきます。
そして少し違和感を感じたのは、オータスが喫煙する煙草は人からの貰い煙草が多いんです。
富裕層の娯楽と化した煙草も1本だけならそう高くはないのかもしれません。

ですが、本当の愛煙家なら喫煙する煙草はちゃんと自分で買わなきゃ…と思ったのも事実です。
私は煙草は吸わないので、煙草に高額の税金が課せられても生活に変化は無い…と思っていましたが、この作品を視聴して思ったのは、必ずしも生活に変化が生じない事は無い…という事です。

本当の富裕層しか楽しめなくなってしまったら、喫煙人口が激減してしまいます。
個人的には昔に比べると圧倒的に値上がった印象がありますけれど…
喫煙人口の減少に伴い、税金の収入も比例して下がる事になります。
そうなると、これまで煙草の税金を投入していた部分に穴が開いてしまう事となり、結果的に非喫煙化の人たちにも影響が生じる可能性がある…という構図です。

でもこの作品で印象的だったのは煙草ではありません。
一つは結末に向けたあっと驚く展開と…妹のロッタ嬢です。

あっと驚く展開は本編でご確認頂きたいと思いますが、ロッタ嬢の魅力は是非伝えておきたいところです。
ロッタ嬢のCVは悠木さんなので、演技には期待だけしておけば全く問題ありません。
天真爛漫で少し危なげで思わず手を差し伸べたくなるようなキャラを見事に演じられています。
スイーツが大好き…お兄ちゃんに出張のお土産にパンをおねだりするくらいパンが大好き…
そして何より兄妹ともなんですが、どちらも優しく思い合っているのが手に取る様に伝わってくるんです。

この兄妹の事を考えると不思議な事もあるんです。
例えば、住んでいるのは高級セレブマンションの最上階…
ACCAは民間組織なので、公務員より給料は良いのかもしれませんが副課長クラスでそんな場所に住めるか…と考えると答えはクエスチョンです。

それにオータスもイケメンですが、ロッタ嬢の可愛らしさは群を抜いている上、佇まいも気品に満ち溢れているんです。
そんな二人の魅力の理由も本編で明らかになっていきます。
結構見どころの多い作品だったのではないでしょうか。

1クール12話の作品でした。
完走した最初の印象はとにかく痛快だった…という事です。
やっぱり世の中には完璧な筋書きは無いんだ…
仮にあったとしてもそれが実行できるかはまた別の問題なんだ…
そんな事を感じさせてくれる作品だったと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 29

Progress さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

オシャレな駆け引き

たまにはこういう作品もいいですね。

【どんな作品】
一言で言うならオシャレ。
甘い物やジャンクフード。お酒とたばこ。
主人公は推理力というよりは洞察力が鋭い。自分の事は抜けている。
主人公は大きな陰謀に巻き込まれていく。

【OPから溢れ出るオシャレ感】

この作品の魅力といえば、なんと言ってもオシャレなOP。

オープニングテーマは「Shadow and Truth」
作詞 Konnie Aoki / 作曲・編曲 高橋諒 / 歌 ONE III NOTES

ONE III NOTESというユニットはメンバーの高橋諒氏がACCAの世界観にインスパイアされ「ドーワー王国にもし人気バンドがいたら」というイメージで結成されたユニットだそうです。

最高に乗れる華麗なライミングからの、力強くカッコ良い女性ボーカルへの受け渡しがオシャレな心地良い曲です。

そしてOP映像のカッコよさも語らなければいけません。
この映像、実は伏線があったりすることが回を重ねるごとによく分かります。構図からある人物は重要になってくることが示唆されています。回を重ねると映像に変化があるので、気になる方はチェックしてみてください。

キャラクターの個性もOPで良く表しています。
ジーンならタバコと、制服・・・でしょうか(どのシーンでも仕事をしているという印象です)
ニーノならカメラとバイク
ロッタはケーキと、その姿にハートを射抜かれる男(笑)
他にもACCA監察課の局員が可愛くおやつを食べる姿や、ACCAの5長官と呼ばれる男達の生き様を表したような姿が印象的です。5長官のシーンとその時の曲歌詞とシンクロすると、ドーワー王国に何かしらの不穏な争いがあるようにイメージ出来てゾクっとワクワクしてきます。

【もらいタバコのジーン-登場人物の個性が良く出てる】
さて、この作品は登場人物の個性が魅力的です。

ジーンに関していえば、この世界ではとても高級品である「たばこ」を吸っていることです。それを人目を憚らず吸っていることからいえる彼の性格は、あまり人の目を気にしない。どこか抜けている。そんな彼が「最近、誰かに見られている気がする」という違和感を感じるのは、相当な人数の注目が集まっているという意味として捉えられるかもしれません。

「もらいタバコ」という言葉からも、彼はどこかでタバコをもらっている。裕福な誰かとつながりがある。つまり、それを見たジーンを知っている人は、彼の人間関係にミステリアスな部分を感じてしまうのが、ジーンの魅力なんだと思います。本人は聞かれないだけで、秘密にしているわけではないのが「ぬけている」(笑)
そして、1話の彼は、洞察力が鋭く、監察課に向いている。仕事は真面目だし、寡黙にこなす。ですが自分の事となるとどこか抜けているところがあるので、そのギャップも魅力です。

他の人物についても少し話しましょう。
ジーンの妹であるロッタ。「お菓子」が好きで、楽しそうに食べるその姿に純粋さを感じます。
ニーノはジーンの友達。「カメラ」が好きなのか、良く持ち歩いていますが、彼の職業や立ち位置を良く表している物だと思います。



【ジーンを取り巻く人間と陰謀-オシャレな会話劇】

ジーンは1話で5長官にある嫌疑をかけられ、密かに監視対象とされます。
その嫌疑はドーワー王国を揺るがす計画の物なのですが、ジーンは果たして疑いを晴らす行動を出来るのか?ジーンの知らないところで密かに彼の人間性を探られ「ジーンに嫌疑をかけたのは誰?」「計画の中心人物は?」という猜疑心が常に視聴者の心にあるのが、この作品の魅力です。
オシャレな会話劇に、腹の探りあいや察しあいが含まれ、視聴者を作品の深みへはめさせていきます。

ジーンは色々なドーワー王国の自治区をめぐり仕事をこなすのですが、そこから見えてくるドーワー王国の情勢、自治区による人間や状況の違い等も、世界観にはまる要素になっています。

【最後に-余韻が残る良い作品です】
この作品は再視聴して話の流れを再確認したいことが多いです。
裏で誰が何をやっているのか、登場人物の立ち位置がどうなっているのか。
作品を見ている途中で考えたくなる作品です。
タバコが取り上げられがちですがあくまでそれはジーンを表すキーワードでしかなく、話の中枢である「国を揺るがす陰謀」の影に期待感を膨らませながら、作品全体に感じる大人びた雰囲気を楽しんでいる作品です。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 32

76.6 2 ミステリーでヨーロッパなアニメランキング2位
巌窟王 -がんくつおう(TVアニメ動画)

2004年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (603)
3360人が棚に入れました
パリの青年貴族・アルベールは退屈な日常に飽き、刺激を求めて、親友のフランツとともに、カーニバルで賑う月面都市・ルナを訪れていた。
そのころ、ルナの社交界では東方宇宙からやって来た謎の紳士、モンテ・クリスト伯爵の話題でもちきりだった。オペラ座でモンテ・クリスト伯爵の姿を見たアルベールはその存在感に圧倒され、成金とも怪人とも呼ばれるその紳士に興味を引かれる。やがて、モンテ・クリスト伯爵との交流を深めていったアルベールは、伯爵の妖しい魅力の虜となっていく…。
ネタバレ

ポロム さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

良作SFミステリー

「三銃士」で有名なアレクサンドル・デュマ・ペールの小説「モンテ・クリスト伯」を元にしたアニメ。
脇役の一人に過ぎなかったアルベールを主人公にしたり、
未来のパリや、宇宙を舞台にしたりとSF色を強くしてる。

制作:GONZO 全24話

一部衣装をANNA SUIがデザインしたり、
作画は衣装や模様にテクスチャーが浮かんだり目に慣れるまで独特ですが綺麗です。
愛と復讐がテーマなので、貴族同士の泥沼満載なので人によっては視聴中ストレスが溜まるかもしれない。
精神的に不安になるような背景と効果とキャラが若干いるので、
ファミリーで観たり、お子様と観るのはオススメできないです。
一人でコッソリ嗜むのがオススメ。

衝撃の18話{netabare}
EDで有人操縦式の人型ロボット兵器みたいなのが出てたので気になってましたが、あれは「鎧」と呼ばれるようですね。
突然鎧で戦う場面見たときは「間違えて違うアニメの録画したかな??」と思うほど世界観とマッチしてなかったですw
その鎧の威圧感と不自然さに爆笑してたら、実はアルベールは一服盛られて
フランツが戦ってると気づき表情が青ざめました。

アルベールのことを「友以上に」想い、伯爵の真の姿を見破って警告していたのはフランツだったんですね。
アルベールは潜伏偵察するときも正面から行こうとしたり純粋ゆえの世間知らずでしたが、フランツのような良い友達に恵まれたことは唯一の幸運でしょう。
フランツが惨たらしい死を迎え、アルベールが叫び、唐突に迫るEDには
あまりにも恐怖を感じて・・18話を観た後は何もやる気が出ずベッドに横たわってはフランツのことを考えました。
普段アニメの内用は引きずらないはずですが、次の日の仕事の時さえ落ち込むほどにこのアニメにハマったことに気づいたのです。{/netabare}

OPとED{netabare}
OPとEDがどちらもJean-Jacques Burnelの曲。
洋楽のアニソンって珍しいですよね。
どちらもモンテ・クリスト伯爵/エドモン・ダンテスの心情を歌った歌詞でOPは「WE WERE LOVERS」最終回で和訳付きで流れるので鳥肌です。
EDは「You won't see me coming」ドラム連打から曲が始まり復讐や恨みを綴った歌で歌詞の中に何度も「エドモンダンテス」と入ってることから23話のクライマックスに繋がります。

<親愛なるアルベールへ>
(20話のフランツの手紙がメッセージ性があったので忘れないように一部記したいと思いました)

「君がこれを読む時はおそらく俺はもう傍にはいないだろう
だからプレゼントの代わりに聞いて欲しい
アルベール・・いいか 決して誰も恨むな
俺、思うんだ

愛する気持ちも、憎む気持ちも、
最初は人を思う気持ちから生まれたんだって
悲しいことに思いは時として相手に届かず愛が憎しみに姿を変えることもあるだろう
そんなときは子供の頃を思い出して欲しい
傷ついても傷ついてもまっすぐにしか愛せなかったあのころを

どうか生き続けてくれアルベール
傷つくことを恐れずまっすぐに人を愛して
お前に逢えて本当に幸せだった」

この言葉があったからこそ、アルベールは誰も憎むこともなく
ただ真っ直ぐに生きて、第一話の世間知らずな少年ではなく
誰かを懸命に愛せる人に変われたのだろう。
この作品のメッセージ性はこの手紙の中にあると思う。
予告で言っていた「待て、しかして希望せよ」の言葉の意味を
最終回のエドモンの手紙で知り、今、余韻に浸る {/netabare}

感想とまとめ{netabare}
視聴時、凄くストレスが溜まった・・
一日一話で見てると前半(特に一話目なんて)穏やかな始まりだったけど
後半に進むにつれて貴族同士の泥沼やユージェニーの両親、エロイーズに凄く腹が立った。ユージェニー可哀想すぎる・・。
アンドレア・カヴァルカンティ侯爵が外面良くしてるのに時々悪意に歪んだ表情を見せるのが素直に気持ちが悪くてスタッフの魅せ方がすごく上手いと思った。
毎回語り手がフランス語でシャレオツって思ってたら22話で語り手が巌窟王と知る。
巌窟王+エドモンダンテス=モンテ・クリスト伯爵と知るまでの過程も丁寧で面白い。
ペッポが女装の美少年という設定を途中忘れて、アルベールがユージェニー奪回する20話は心に染みた。最終回でモデルになったのは意外(笑)
最終回でアルベールが苦労の末に大使の秘書となり、ヴァランテーヌとマクシミリアンが幸せそうで良かった。 {/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 41
ネタバレ

Etzali さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

人は愛するが故に笑い、泣き、そして憎む…。それでも僕は…

(2012/9/9:1週目)
{netabare}1話~9話までは引き込まれるように観ていましたが15話までは少し中だるみ感が個人的にですがありました(^_^;)それ以降は食い入るように観れたので良かったです!

フランツの言葉で印象に残ったのは、「愛しさと憎しみなどは人を思う感情から生み出される」ですね。
モンテ・クリスト伯爵の復讐は人を想うが故に起こった事なのかもしれません…

良い作品でした!まだ観たことがない人はぜひ一度観てください(^・^){/netabare}

(追記:2012/11/30 2週目)
25年前、無実の罪を期せられた伯爵が25年後に復讐相手の家族を巻き込みながら復讐を成し遂げる物語です。

内容は復讐劇だけあって、かなり濃いですが主役は伯爵ではなく、アルベール子爵です。

伯爵の復讐ですが、{netabare}「他人の恨みや妬みと言うものは本人の預かりしらぬ所で密かに成長していくものです。本人が幸せであればあるほど」{/netabare}からもわかるように憎しみを強く抱いています。

ですが、{netabare}ダングラールに復讐を果たす際,伯爵(巌窟王)は毅然とした顔をしていたのに対しエドモンは泣き顔だった{/netabare}ので、憎しみだけでなく友人に手を掛ける事に対する悲しみもあったのでしょう。

そんな伯爵の最大の復讐相手であるアルベール子爵に送った言葉が{netabare}「待て。しかして希望せよ」{/netabare}でした。
なぜ、この言葉を送ったのか?{netabare}「悲しい時に想いが相手に届かず、愛が憎しみに姿を変える時もあるだろう・・そんな時は子供のころを思い出してほしい。傷ついても傷ついても真っ直ぐにしか愛せなかったあの頃を」{/netabare}から思うのは、かつての伯爵はアルベールのような真っ直ぐな性格だった事が窺がえます。

復讐事態は伯爵メインで進みますが、もう一つの復讐(伯爵の大きな復讐の過程として利用された)で観られるカヴァルカンティ候(CV:関智一)の演技力にも目を向けてみて下さい。

伯爵の復讐は絶望、憎しみ、畏怖の念に満ちていたかもしれない。それでもアルベールは{netabare}「貴方(エドモン)のように生きたい」{/netabare}と伯爵の{netabare}死に際{/netabare}に言った。

伯爵の真っ直ぐな愛が何時しか憎しみに変わり、復讐という形で幕を閉じたとしても、それでも僕は傷つく事を恐れずに、かつての伯爵のように真っ直ぐに人を愛する…



以下、楽曲の和訳
(検索したら見つかったので勝手ながら拝借しましたm(__)m)
・OP

{netabare}心にもない残酷な言葉
そして嘘もあった

決して貴女を泣かせるつもりなどなかった

でも愛とは私達を弱くする反面
強くもするもの

そしてまもなく

私は完全に貴女に心を奪われた
貴女に溺れ

自分を見失い 貴女に魅了され
翻弄されて 私は茫然とする

すべては思うままに

だから今宵私は歌おう
全ての友への歌を

二度と会うことのない友へも

昔の友
いまでも敬愛する友たち

そしてもう一度会いたい
友の為に歌おう

貴女が私を愛してくれることを
ただ祈る そして
私を信じてくれることを

私と共に笑い 共に泣き
静かなる時を共に過ごしてくれることを祈る

永久の愛を私に

貴女と私は恋人同士だった

二人の夢が潰えたのは
人生のせいではない

そう友の裏切り

そして私達が結ばれることは
もう決してなくなった{/netabare}

・ED

{netabare}私はもはやかつての私ではない

そして、お前の目にするものは、真実と異なっている
 
私はお前に会う為に、こうして宇宙を越えてきた

未知なる物を恐れる事はない

お前は気付かないだろう

お前は気付かないだろう

私の一撃までは!
                                         
私が一人の男だった時、一人の女性を愛した

しかし今の私は過去から来た化物だ
 
復讐は時間をかけ慎重にやるのが効果的なのだ

遠からず全ては私の思惑どおりになるはずだ

お前は気付かないだろう
  
お前は気付かないだろう

私の一撃までは!

お前は気付かないだろう

お前は気付かないだろう

私の一撃までは!

エドモン

私の名を呼ぶがいい

それが私の名だ

エドモン

それが私の名だ!
                   
エドモン

私の名前なのだ!!{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 31
ネタバレ

Ballantine さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

本当に残念だ… 隠れた名作

これだけでも無くせばかなり良かったと思う点
・ホモ臭+女装少年{netabare}(ペッポ){/netabare}
・女性向けを狙ったのかと思わせるキラキラ演出
・23話の {netabare}エドモン・ダンテスへのキス{/netabare}
・テクスチャを使った作画

兎に角ストーリーは素晴らしい出来。
まぁ過剰なホモ演出というか実際ホモは一人でガチホモしいのは無いので男でも十分楽しめる。
ってかちゃんと女の子のヒロインいるので安心して下さい。

ただ如何せん前半のスローペースがキツイかもしれないが
平和な日常→謎が少しずつ判明→後半からの怒涛の結末への流れ
もう兎に角後半の怒涛の流れが面白い。
我慢すればそれだけの見返りはあると思います。
後クズ大人の権力争いやら仮面夫婦やら不倫やらでドロドロします。昼ドラみたいです。総じて親はクズです。ただそこが面白いんですけどね。
後は上記の事柄かな。

もっと突っ込みたい点
・無駄に長くて覚えにくい名前
名前を覚えるのがめんどくさいがまぁフランス人だもんね。
・やたら出演人数が多い
顔と名前と人間関係を覚えるのがry
・人間関係が整理しにくい
まぁ人間ドラマだからしょうがないけど度々wiki見て確認して誰が誰と家族で誰が誰と不倫してるとか確認してるうちにややネタバレ食らったのは痛かった。見てない人は見終わってからwiki見ましょう。


疑問点
{netabare}・なんで少年の女装設定にした?素直に少女じゃダメなの?
・なんで23話でキスした?ハグだけで良かったのでは?これのせいでなんか冷めちゃったんですが…
・なんで23話で親父を置き去りにした?まぁ助けなくても良かったけど母親助かるなら助けたほうがスッキリしない?むしろ親父だけ死ぬなら母親も死んでも良かったのでは?
・23話どうして天井が崩れて崩壊したの?まぁ演出なんだろうけど
・なんでテクスチャとかいうの使った?まぁ後半には慣れてたから気にならなかったけど慣れるのに12話位はかかった。
・どうしてホモ要素を取り入れた?原作もそうだから?フランスなら普通なの?どうして日本風にしなかった?
・フランスってホモ多いの?ほっぺにキスは挨拶なの?
・どうして男のキラキラ演出を入れた?女向けにしたの?それとも煌めいたらいい男に見えるの?
・なんでニューヨークに一緒に駆け落ちしなかった?やっぱホモだったの?伯爵とケリを付けたいからって事でいいのかな?
・前半やたらダレてないか?十数話にまとめたほうが面白かったのでは?
・つかみが足りなさ過ぎない?
・10年程度でのし上がれるのか?
・金の亡者のおっさん何処行った?
・やっぱりペッポは主人公が好きだったの?
・このアニメって知名度高いの?売り上げ上がったの?
・このアニメをダメにした犯人って
友情デザイン - 小林誠?
・巌窟王のフランス語わかんないんだけど?{/netabare}

何はともあれ見どころは後半の怒涛の流れですねぇ~
本当に凄いです。一気にフラグ回収していきます。
そこまでがダレて長いし顔と名前を覚えるのが大変で残念なんですが、8話から解決編へ!12話でムネキュン!頑張って18話まで見れれば泣けるかも?もうその後は怒涛の展開です。
時間があれば是非ともお勧めしたいかもしれない隠れた名作でした。
それからEDマジかっけぇ!

投稿 : 2024/11/02
♥ : 13

67.4 3 ミステリーでヨーロッパなアニメランキング3位
NOIR -ノワール(TVアニメ動画)

2001年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (232)
1760人が棚に入れました
パリで裏の仕事を営むミレイユ・ブーケは、ある日、夕叢霧香と名乗る日本の女子高生から不思議なメールを受け取る。そのメールから流れてくるオルゴールの曲を耳にして、ミレイユは驚愕した。その音楽こそ、かつて家族が惨殺された日、現場で流れていた曲だったからである。
ミレイユは霧香にオルゴールの曲について尋ねるために日本へと飛ぶが、霧香は過去の記憶を失っていた。そして、とある事件がきっかけで二人はコンビを組み、裏社会の仕事人として仕事を始めることになる。ユニットの名は「NOIR(ノワ-ル)」。
様々な依頼をこなすうちに2人は真のパートナーとしての絆に目覚めていくが、そんな彼女達の前に秘密組織ソルダの影が忍び寄る。
ソルダとは一体何なのか?その正体は?そして「ノワ-ル」の名が持つ真の意味とは…?

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「あなたと私の過去への巡礼…」

この作品は2001年春から放送された「銃と少女」をコンセプトとした2クールのオリジナルアニメ作品です。
作品に関する事前情報といえば、音楽を梶浦由紀さんが担当されている事くらい…

梶浦さんといえば、魔法少女まどか☆マギカやソードアート・オンラインといった超人気作の音楽を担当されていますが、コゼットの肖像やPandoraHeartsなど、少しマイナーでも梶浦サウンドを思い切り堪能できる作品が存在します。
そういった事から考えても梶原さん目当てで作品を視聴しても大きく外れる事は無いと思っていましたが、今回も予想通り外れクジではありませんでした。

この物語の主人公は、高校生の夕叢霧香(ゆうむらきりか)…パッと見は普通の女子高生…ですが、彼女には自分の過去に関する一切の記憶がありませんでした。
目覚めた時に彼女の持っていたモノの全ては「ノアール」という単語の記憶と飾りの入った懐中時計だけ…

そんな彼女の前に現れたのは銃を持った刺客の数々…
もちろん目覚めたばかりの彼女は銃を持った屈強な男たちに追われる理由なんか分かりません。
ただ一つ分かっている事といえば「自分が殺らなきゃ殺られてしまう」事だけ…
でも不思議と彼女には対処すべき技が身体に染み付いていて、次々と襲い来る刺客を次々と返り討ちにしていくんです。

「自分の過去を取り戻したい…」
こう考えるのはごく自然の摂理だと言えるでしょう…
彼女はパリで暗殺代行業を営むミレイユ・ブーケに一通のメールを発信するのです。

メールを受け取ったミレイユは、頭を金槌で殴られた様な衝撃を受けました。
メールから流れてくるオルゴールの音色はかつて両親の持っていた懐中時計のメロディーと同じだったから…
ミレイユの両親は、ミレイユがまだ幼い頃に何物かによって暗殺されていたのでした。
だからミレイユの頭の片隅には「両親の敵討ち」が離れる事はありませんでした。

日本に渡り霧香と接触したミレイユでしたが、霧香の持っていた懐中時計以外、彼女の敵討ちを進展させる情報を得る事はできませんでした。
「自分の過去を取り戻したい」霧香と、「両親の敵討ちしたい」ミレイユはお互いの利害関係が一致することから、パリで共同戦線…暗殺ユニット「ノアール」を立ち上げ物語が動いていきます。

銃自体の扱いに長けたミレイユと、全身とありとあらゆるモノを殺傷道具にしてしまう霧香とのコンビは最初はチグハグでした。
この作品の見どころの一つは、この暗殺ユニットの成長していく様だと思います。

ミレイユはこれまでずっと一人でした。
相手の事を考えながら生死を掛けた殺し合いなんてできる筈がない…
だってもしもの時の足枷になる…

確かにミレイユの考え方もある意味では正しいと思います。
有事の際のリスクを最小限にするという事においては…
でも「ノアール」での活動を通してミレイユはリスク以上のモノを手に入れたと思います。

活動の幅とバリエーションが広がり、戦闘時におけるリスクを分け合うことができるから…
誰とでも…という訳にはいかないと思います。きっと霧香とミレイユだからこそ、色んなモノを分かち合えたんだと思います。
お互いがお互いの背中を預けるに足るスキルを身につけている…これってやっぱりどんな場面でも大切な事なんですね…

二人が自分たちを「ノアール」と名付けたのは、かつての偉大な暗殺者の伝説にあやかったからでした。
でもこの世には「真のノアール」が存在する…という事実が明らかになった以降、物語の転がり方がこれまでと比べてだいぶ異質に変化したと思います。

これまでは二人の仲を育んできました。
でも、二人の間に様々な横やりが入る様になったんです。
それは物語の核心に近づいているから…

霧香とミレイユへの下に執拗に繰り返し送り込まれた刺客の数々…
全ての免罪符の様な「真のノアール」の存在…
それぞれに意味があり、それらは1本の糸で繋がっていました。
全ての手札が揃い、そして大鉈が振り下ろされる…
物事の真実と二人がどう向き合うのか…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、ALI PROJECTさんの「コッペリアの柩」
エンディングテーマは、新居昭乃さんの「きれいな感情」
オープニングの旋律はかなり独特で一度聴いたらフレーズが頭から離れない系の曲でした。

2クール全26話の物語でした。
しっかりと物語が完結している事が素直に嬉しく思えます。
アニメの持つ販促性の高さも理解できますが、やっぱり腰を据えて制作頂いた作品は確実に見応えが増すと思います。
過去作の視聴も細々ですが、これからも継続していきたいと思います。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 14

雀犬 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

黒百合物語

【概要】
 2001年春-夏に放送された全26話のオリジナルアニメ。dアニメストアで視聴しました。ノワールとは「黒」を意味するフランス語。

 パリに住み裏社会で名を馳せる殺し屋ミレイユ・ブーケ、記憶を失い本名すら忘れてしまったが超人的な殺人術を身に付けている夕叢霧香(ゆうむら きりか)。2人が出会い、暗殺ユニット「ノワール」を結成し「過去への巡礼」を始める美少女ピカレスク・ロマン。

【感想】
 序盤は1話完結形式で、2人の過去にまつわる話はじわりじわりと進行する。話が動くのは後半からですね。今のアニメに比べると台詞が少なめでスピード感に乏しく、同じシーンの繰り返しも多いので一気見はしんどいかもしれない。

 見所はやはりガンアクションでしょうか。色々凝った演出で楽しませてくれます。ただ後半はやや単調になります。ガンアクションの宿命か、当たると致命傷になってしまうので、当然のことながら主人公の2人はなかなか弾が当たらないんですよね。黒服に何人囲まれようが、弾を平然と交わしていきます(笑) 引き金を引くのを躊躇って取り逃がす場面が敵も味方も多すぎるんですが、これもピンチの場面ではそうせざるをえないガンアクションのお約束というものか。あと、放送当時は表現規制が厳しかったのか撃たれても流血することがなく、やや違和感あり。

 メインストーリー(真相)は引っ張ったわりにやや平凡な印象を受けた。マスターキートンにようにヨーロッパの文化・風習・歴史あるいはミリタリ蘊蓄を盛り込んで話に厚みを持たせた方がよかったかもしれない。

【作画】
 背景は良く書き込まれており、ヨーロッパの街並み・景観・自然はデジタル作画にはない絵画的な味わいがあって素晴らしい。

 キャラデザインはちょっと古い感じがします。あと目の大きいキャラと小さいキャラの差がありすぎるようにも思う。終盤に霧香が覚醒して目つきが鋭くなるのだけど、ややギャグっぽくなってしまった感があります。あと、アイキャッチが超ださい。

【音楽】
・オープニングテーマはALI PROJECT「コッペリアの柩(ひつぎ)」
・エンディングテーマは新居昭乃「きれいな感情」

 とにかくOP曲が耳に残ります。気が付くと「♪コッペリアの柩~♪」が脳内で無限再生されるので注意が必要。「ロッテリアのひつじ」に空耳するという声もある。ED曲はあまり印象に残らず。

 そして梶浦由記さんの音楽が最高に良いですね。ムードたっぷりで曲数も豊富。中でも戦闘時にかかる「salva nos」は必聴。

【百合】
 「ノワール」は深夜アニメにおける百合の古典としても知られています。暗殺者コンビ、ミレイユと霧香が紡ぎ上げる奇妙な絆に注目して見るべき作品です。

 すでにヨーロッパの暗黒街を舞台に「裏の仕事」を引き受け名も上げていたミレイユが霧香をパリまで連れていき一緒に生活し世話をするという保護者的な関係で始まる。
 
 2人で仕事をこなし死線をくぐるうちに強い信頼関係が生まれ、霧香はミレイユに対して親愛の情を深めていくのですが、実は戦闘能力にかけては霧香の方が数段上で、実際にミレイユはピンチを霧香に助けられる場面も多く次第に霧香に対してコンプレックスを抱くようになるのです。

 そこに「真のノワール」を名乗る第三の女、キリエが加わりますます混沌としてくる。やがて真実を知った後、非情な試練が2人待ち受ける…

 仕事のパートナー以上の存在でありながら、親友でもなく、姉妹でもなく、恋人でもなく、「ノワール」という固有の名称でしか表現できない関係性。殺し屋として罪を重ね続け、他の道を選べぬ呪われた少女にとっての唯一つのよすが。うーん、これこそが至高の百合なのかもしれないな。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 16
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

絡まった2つの謎と2人の殺し屋の乙女。脚本と音楽が素晴らしい良作です。

 2001年時点で暗殺者がヒロインになるアニメは極めて珍しかったと思います。マンガでは「あずみ」がありました。アニメは女性のバディものガンアクションで「ガンスミスキャッツ」があるくらいでしょうか。この後「ガンスリンガーガール」などが登場します。

 本作は、毎話「ノワール、其は古よりの定めの名、死を司る二人の乙女、黒き御手は嬰児の、安らかなるを守り給う」という詩の朗読があります。これがなかなか良くてOPから含めて作品に入り込んでゆきます。

 1話。時計そして音楽をモチーフに記憶を無くしたJKとフランスの美人殺し屋ということが一気に説明され、あっという間に引き入れられます。

 2話以降、この記憶をなくしたJKと美人フランス人殺し屋のバディものとして、2クールで話が展開します。時に本筋と関係ない話も入りますが、1話の脚本として内面描写や郷愁を感じさせる出来で、引き延ばし感や中だるみ感は感じませんでした。

 アクションシーン、特にピンチの場面の描写に若干時間的間延びがあり、ツッコミを入れたくなりますが、これは古いアニメの演出なので極めて短い時間を詳細に描写しているものとして受け入れましょう。

 2クールものですし、内容がシリアス寄りですので一気見には向きません。「刺激」や「緊張感」は麻痺が来るので、段々退屈すると思います。1日1、2話。多くても3話くらいで余裕があるときに見た方がいいと思います。

 で、後継の「マドラックス」と極めて雰囲気は似ています。作画、演出、アクション、音楽性、展開、キャラ配置など。ですが、本作にマドラックスのような難解さ、オカルトはあまり感じません。
 その割には、ガンアクションものとしてもそうですけど神秘感や、死と隣り合わせのアンニュイな雰囲気が出ていました。

 脚本が秀逸で展開、謎解きについて物語、構成がよく練られていました。初めの詩や時計・音楽、そしてパリの雰囲気が上手く活きていたと思います。

 謎部分は見てのお楽しみですが、要するに宗教原理主義、歴史の裏、暗殺者として生い立ち、少女と女性は最後どうなるのかを見極める話です。
 クールそうに見えて、実は2人とも友情や家族愛に隙があるのがキャラに感情移入できる要因になっている気がします。

 で、最後の謎部分です。
{netabare} 最後の最後で、傷ついた霧香に肩を貸すミレイユは「パリに帰って熱いお茶が飲みたいわ」といいます。この時、ミレイユは光ったような霞がかかったような雰囲気になります。
 そして銃声が2発轟きますが、違う音です。最後は壊れた時計とは2人の時間が止まると言う意味と、ソルダではなくなるという意味でしょう。その前の灯りを自分でともすというミレイユの言葉や、霧香の怪我、組織があえて見逃したことから言っても、2人が自決あるいは撃ち合った=運命に翻弄された人生を初めて自分で選択する、ということだと受け止めました。 {/netabare}
 作品の根底に流れる無常観、アルテナ・ソルダの両方に対する自分たちの解答、殺人行為の清算と言う意味でもそういう結論がしっくりくると思います。

 アクション要素の他、絡まった2人の謎解きとどうやって2人の殺し屋の乙女が生きてきたかという運命について考えてしまう作品でした。テーマ性は重視せず、運命についてのモヤモヤを咀嚼するのがいいと思いました。そこがラストの解釈になってくると思います。
 エンタメ性を保ちつつ、殺伐とした世界観と詩情を融合させて、最後には感動と言うよりも、切ないながらも納得の行く作品になったと思います。素晴らしい脚本でした。

 音楽はOP、EDもいいですけど、BGMも聞かせました。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 7
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