ブリキ男 さんの感想・評価
4.6
幸福は自覚するかしないかで、その総量が変化するもの
ラノベ電波的な彼女の2巻目に当たる"幸福ゲーム"のアニメ化作品です。
前作に引き続いて主人公は堕花雨と柔沢ジュウのダブルキャスト。※新キャラも何人か加わり、紅-kurenaiとの繋がりも間接的ながら若干強まった印象があります。
作中で描かれる、幸福値という数値の増減で人々の優越感や焦燥感を煽る幸福ゲームのあり方は、金儲け主義の新興宗教やマルチ商法、延いてはソーシャルゲームの手法と似通っており、競争意欲を刺激し、景品やトロフィーを掲げる事で、それに参加する多くの人間にとって不毛で、ごく一部の人間にとってだけ有益な、最悪なシステムを存続させようとする試みです。
{netabare}
作中の雨さんはこういった下等な考えのパターンを良く認知している様で、それの正体を明かした後で「考え付く理由の中で一番幼稚なものを口にしてみただけです。」とあざ笑いを含めた表情であっさりと言ってのけてしまいました。
{/netabare}
幸福の総量については、自身の幸福を自覚するかしないかという心理的な問題を含むので、言い換えれば人によって千差万別であるので、未知数の様にも思えますが、一方で、どこかから奪われて、どこかへと与えられる類のものもあります。
我々人類にとって生存に必要なもの、食事や衣類や住居など、あるいは家電やガスやPCなど、あれば便利なもの、特に先進国に住む多くの人にとっては空気の様に当たり前で、省みる事を怠れば気付く事さえ困難なそれらの恩恵を、全て自然環境から盗んで利用しているものだと考えるならば、そこに住む動植物の幸せを奪って、自分達の幸せに加えているとも考えられるのではないかと思います。
それは我々ヒトのみならず、生きとし生けるものにとって避けられない行為なので、受け入れがたくとも受け入れるしかありません。私達に出来るのは、せめて食べ物だけは絶対に粗末に扱わず、衣類や道具を大切にし、自分の奪ったものに対する責任と、奪った幸福の重さをかみ締めながら生きて行く事だけなのかも知れません。
※:電波的な彼女では紅-kurenaiと共通する設定として、表御三家と裏十三家という特別な家系が存在します。この家系に属する人間の多くは遺伝的理由から、肉体的、精神的に恵まれており、中には生まれながらにして超人的能力を有している者も僅かながら存在している様です。
歪空、堕花、斬島、円堂、崩月、虚村、豪我、師水、戒園、御巫、病葉、亞城、星噛が裏十三家に当たり、この内半数近くが断絶、あるいは廃業しているという設定がありますが、アニメ、原作の両者を含め、歪空、堕花、斬島、円堂、崩月、星噛の現役6家に属すると思われる人物が既に登場している点を見ると、残りの7家は今後作られるかも知れない関連作中にも一切登場しない可能性も有ります。電波的な彼女では堕花雨と光の姉妹、斬島雪姫、円堂円の4名が登場します。光と円は紅にて名前だけ確認出来る、環の道場に通っていた2人かも知れません。裏十三家の人間という事もありますが、そう考えると、どーりで強いわけで‥と納得が出来ます。
斬島と言えば斬彦ちゃんですが、本作を見る限りでは、雪姫は斬彦ちゃん程の人間離れした力を持っている様に描かれてはいませんでした。と言うか、思い返せば紅に登場する裏十三家の人たち、化け物じみた能力持ちの人ばっかりじゃないか‥! そんな中で幾度(いくたび)もの死線を潜り抜け、なおも生き残っている真九朗君ってかなりスゴい。(電波的な彼女には登場しないので分からないけれど生きていると信じたい!)