Witch さんの感想・評価
3.7
「あだち充テンプレ」ながらも毎回違う面白さを描ける手腕はもはや”名人芸”だが・・・
【レビューNo.88】(初回登録:2023/10/7)
コミック原作で2023年作品。全24話。
あだち充といえば我々の世代だと「レジェンドクラス」の漫画家なんですが・・・
今のレビュー状況があまりにも寂しいので、ちょっと何か書いてみようかと。
あとタック二階堂さんやレオン博士さんのレビューに刺激を受けたのも大きいかな。
(ストーリー)
明青学園中等部2年生の立花投馬・立花走一郎は同年同月同日に生まれたが、血
の繋がらない兄弟である。母を亡くした投馬と父を亡くした走一郎・妹で1年生
の立花音美の3人は、7年前に両親の再婚によって義兄弟となったのだ。
投手として優れた才能を持ちながらも、中学時代は(理不尽な)部の方針もあり、
不遇の時を過ごした投馬だったが、(こちらも優れた捕手)走一郎とともにその
まま明青学園高等部に進学。
そこでは1年生からエースを任され、チームも夏の東東京大会を順調に勝ち上が
っていく。
準決勝でプロ注目の左腕三田を擁する東秀高校と対戦。息詰まる投手戦で延長の
末、最後は投馬が3塁への悪送球でランナーをかえしてしまいゲームセット。
投馬達の夏が終わる。
(1期のおさらい)
2期はその後から春になり2人は進級、音美も無事同高へ進学(吹奏楽部へ入部)
中等部から夏野・赤井遼らも野球部に入部して、2度目の夏を迎えるのだった。
(評 価)
・「あだち充テンプレ」ながらも毎回違う面白さを描ける手腕はもはや”名人芸”
・ひょうひょうした性格で大して恵まれた身体でもないに、何故か凄いストレ
ートが投げられる主人公。
・お決まりのヒロイン(それにタッチ以降はダブルヒロインがテンプレ)
・主人公に理解のある有能な捕手
・多くを語らない寡黙な強敵スラッガー(H2の橘英雄はよくしゃべったかw)
等主人公は毎回判で押したような顔で、そしてこれも見覚えのある同じような
キャラ設定等、表向きは「あだち充テンプレ」ともいうべき作風なのですが、
「タッチ」から始まり、「H2」、「クロスゲーム」そして本作とそれぞれに
違う面白さを魅せてくれるのは、もはや”名人芸”の領域です。
同氏作品では「タッチ」が神格化されてる感がありますが、個人的には「タッ
チ」よりも後発の作品になる程より洗練されている感があり、そっちの方が好
みなんですよね。
作風には少し古さもありますが、今なお第一線で活躍してる同氏にはリスペク
トですね。
・「タッチ」から30年後の世界
「明青学園をもう一度、甲子園に連れて行ってください」
との担当編集者からの希望を受け連載が決定したのがスタートだったようで、
「タッチ」の上杉達也を擁して全国制覇を成し遂げてから30年後を舞台とし
て、物語が描かれています。
物語には達也や南といった主要キャラは今のところ出てませんが、勢南高校の
西村は同校の監督となり「親子鷹」で息子と甲子園を目指すライバルとして、
また原田は「記憶喪失の放浪者」としてこの2期から登場します。
それに明青学園といえばライバルの須見工業高ですが、今は健丈高校と名前を
変え、明青学園同様長い低迷期を迎えますが、小宮山監督が最強スラッガーの
「赤井智仁」を見い出し、一足先にチームの立て直しに成功しています。
この「明青学園×健丈(須見工)で決勝を!」
というのが、当時を知る作品内のオールドファン(それに当時の視聴者にも)
最大の悲願になりそうな感じですね。
しかし、当の選手達は生まれてすらいない訳で、周りの大人達の熱狂ぶりとは
裏腹に、意外と冷静な目でみている点もこの作品の面白いところ。
あと物語としては達也より後の世代
・澤井圭一:走一郎・音美の父親(没)
→ 達也以来の天才投手として明青学園を引っぱったが、試合中の事故で
選手生命を絶たれる
・大山吾郎:もう一人のヒロイン(マネージャー)大山春夏の父親
→ 現明青学園の監督で当時の捕手
・立花英介:投馬の父親
→ 当時の控え投手
という関係から今に至るという流れになっています。
・いつもの「ラブ」「コメディ」「野球」に「家族愛」が加わった
・「ラブ」
一応兄妹ですが義理になるので「走馬×音美」は結婚もできる訳で、無邪気
だった2人が年頃となった今、その心境はどう変化していくのか。
また「走一郎×春夏」も今のところ脈なしですが、今後どうなるのか。
そして異色の組み合わせ「赤井智仁×三田亜里沙」も面白くなってきました。
(ただ全体的にテンポが悪いのが気にかかる)
・「コメディ」
昔何かで読んだ記憶だと同氏は「落語の間」をコメディの原点にしてるそう
で、きちんと基本を押さえているから奇をてらわなくても、同氏のコメディ
には「安心感」があるんですよね。その妙技今だ健在という感じです。
・「野球」
本格派野球作品と比べたら情報量が各段に少なく難しいことはやっていない
んですよね(ここの配球はとか・・・)。それでも今までのノウハウの蓄積
から野球作品としてもしっかり面白さを保っている。
この辺りやっぱりさすがだなっと。
・「家族愛」
元々「陽あたり良好!」や「みゆき」などで家族愛にも定評のある同氏です
しね。本作は再婚同士という少し複雑な環境ながらも、本当の血の繋がった
家族のような温かな光景がしっかり描かれています。特に父親英介は投馬・
走一郎の試合には必ず応援に駆けつける熱の入れようで・・・
でもこの家族に大事件が起こります!!
結局そうやってストーリーを動かしてくるのか・・・
それに立花一家だけでなく
・「赤井智仁×遼」のこちらも義兄弟
・「大山吾郎×春夏×別れた妻」の親子・夫婦関係
(1期では「二階堂耕三×大輔」の親子関係や「三田浩樹×亜里沙」兄妹等)
本作は他作品以上に家族に焦点を当てているのかなというのを感じます。
また同氏は「性格の悪いキャラ」の使い方が抜群に上手いです。
本作だと「二階堂大輔」「三田亜里沙」が該当するですが、嫌な役回りを演
じるも最後には愛すべきキャラにちゃんと育てている、人物描写が下手な作
品には見習って欲しいところですね。
ただ1期は中学時代から1年夏の大会までの24話構成、この2期も2年の夏までの1年
間を24話とテンポのいい作品とはいえないところが・・・
(秋・冬はかなり省略されてるので、事実上春からの半年足らずなんだよな.
まあ野球作品だとチーム作りや大会で勝ち上がるとどうしても長くなるのです
が、それを差し引いてもちと冗長感はありますかね。)
それに家族愛成分が多いためか、お得意の恋愛にも支障が出ている感じが・・・
同氏的には大事に育てたいといった思い入れがあり、長い目で見守って欲しいと
いう感じなんでしょうか。
随所にあだち充の持ち味は出ている作品だと思いますが、たしかに今の時代の好
みとズレがあるようにも感じますね。
しかしタックさんもおっしゃる通り、なんだかんだと視聴しだすと面白いんだよな。
最後に刺激を頂いたタックさん、レオンさん、アザ━━━(*゚∀゚*)ゞ━━━ス!!