101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.1
《全身全霊》アイドルアニメ!
【まえがき】
アイドルに関する独り言が長いので折りたたみw
{netabare}以前、中年になった元・昭和の女性アイドルたちが座談会にて、
若い頃、自分はお菓子作りとか全く興味ないのに、
雑誌プロフィールに趣味・お菓子作りとか載せていたと放言していた件が妙に印象に残っています。
が、私はそこに不快感は覚えません。
何故ならアイドルは虚像を飛ばして人々に夢を与えるものだと思っているからです。
アイドル(英:idol)はラテン語の偶像崇拝(宗教的な堕落を揶揄するニュアンス込)をルーツに持つ語句。
「アイドルはトイレに行かない」と言われた頃の往年のアイドルについては、
時に、アイドルを虚像と換言してまで、ブームの熱狂を相対化する言説がはびこったものです。
私は度々、会いに行ける群ドルより、カリスマ的なソロアイドル(本作でいうと“絶対アイドル”螢)の出現を待望しています。
これは近年の群ドルは距離が近すぎて、ファンもアイドルも現実と虚構の区別が付け辛い。
それに起因して、グループ内外で、嘘の扱いの不器用さから様々な問題が発生している。
手が届かない神格化できる存在に、現実と虚構を明快に線引して欲しいという願望が一因となっています。
まさに嘘はアイドルの核心なのです。{/netabare}
【物語 4.5点】
嘘を見抜ける主人公の男性敏腕マネージャーの登場という初回からシビれたアイドルアニメでした。
嘘付きが禍々しいオーラを放って見えるのではなく、輝いて見えるという設定がまた素晴らしいです。
嘘に塗れたアイドル業界に疲弊して、不人気アイドルTiNgSが所属する事務所に落ち延びて来た形のマネージャー。
ですが、決して全ての嘘を否定しているわけではなく、{netabare}ロケで苦手なピーマンを笑顔で食べる{/netabare}といった、
夢を壊さないための嘘ならば方便として認めている。
ただ、嘘をこじらせて真実を見失い、才能を発揮できずにいるアイドルたちを観察し、
{netabare}「アイドルは正しいことをするんじゃない。やりたいことをやるんだ」{/netabare}
などと的確過ぎる指示、助言(名言)を送ることで、背中を押してやる。
アイドルの核心を見事に捉えた、この設定、パターン。
スタッフたちが自分なりのアイドル論を突き詰めないと絶対に出て来ない。
そのアイドル愛に悶えます。
構成はグループの危機を起爆剤に、5人の主要メンバーを約2話ずつ使って掘り下げる。→転機→まとめ。
という典型的なアイドルアニメ。
が、足腰となる設定が強固なため、見知ったド直球な筋書きでも、心にズドン!と来るパワーがあります。
{netabare}TiNgS→TINGSで完全体{/netabare}という仕掛けもベタですがテンション上がりました。
アイドルアニメファンならば、杏夏→理王の{netabare}劣等感→覚醒{/netabare}コンボが決まる6話までにほぼ確実に落ちると思います。
と言うより、アイドルアニメファンなら見なきゃ切腹ですw
そして、本作で1クールアイドルアニメのメンバー数は5人が最適解との確信が一層、深まりました。
各人のアイドル志望のキッカケを“絶対アイドル”螢のワンステージに集約したプロットも、
シナリオ混線防止の観点からも、シンプルで良かったです。
「シャインポスト」の本当の意味でのタイトル回収もプロットの骨格として機能していました。
【作画 4.0点】
アニメーション制作・スタジオKAI
昨年、アニメ版『ウマ娘』2期のウイニングライブでも魅せてくれた同スタジオ。
放送中コロナ禍により延期を挟みながらも
(お陰様で私はギリギリ最終回までに視聴猛追間に合いましたがw)
CGも交えながら躍動感のあるアイドルステージを死守。
作画カロリーも然ることながら、来春、中野サンプラザにて、
これをライブで再現するキャストさんのカロリー消費量も相当なことになりそうです。
ただ、トップアイドルが絶望する才能などの違いについてはやや演出に頼った感。
そこを作画で伝わるレベルになればもっと突き抜けたという欲は残りました。
泣きの心情描写も手慣れたもの。
特に、涙を嘘で隠し損ねる表情。グッと来ます。
【キャラ 4.5点】
杏夏が「お茶目なジョーク大成功です♪」などと滑っていた序盤などは、
正直、このキャラたちで1クール押すのは難しいのでは?との懸念もありました。
が、彼女たちが見せるキャラクターは、本音をグループ、作品内外に覆い隠すための虚飾。
それらが引き剥がされ、虚実が一体化したアイドルたちの真実の輝きが眩しいです。
良作アイドルアニメに良ファンあり。
杏夏推しの古参ファン・トッカさん(CV.金元 寿子さん)。
推しに貢ぐだけでなく、ちゃんと苦言も送れるドルヲタの鑑。
ただ推しの晴れ姿に撃ち抜かれたら気絶するのがw
{netabare}中野サンプラザでも序盤で敢なく失神w
これ、推しが武道館にいってくれたら死ぬんじゃないかと心配になりますw{/netabare}
その他、勝負どころで、ファンたちがTiNgSを広める力になる描写。
ロケ先の色んな職業の方々が新規ファンになって行く流れも熱かったです。
敏腕マネージャー・日生(ひなせ) 直輝とは違った意味で凄腕なのが日生 優希・社長。
発掘した才能のためなら笑って嘘も付ける食えないお方w
若くしてついている杖の理由。詳述待ってます。
【声優 3.5点】
青春国(なばため)春を演じた鈴代 紗弓さんみたいな歌もいける声優さんもいれば、
聖武 理王(りお)役の夏吉 ゆうこさんみたいに当初から声優アイドルとして発掘、育成された方もいれば、
玉城 杏夏(きょうか)役の蟹沢 萌子さんみたいに現役アイドルからの声優初挑戦もある。
キャラの二面性を演じるには経験不足を感じる場面もありました。
が、アイドルグループ内の嘘も飛び交う悲喜こもごもを捉えた本作においては、
心情を理解しているであろうアイドル経験者の声には、時折、技術云々を越えた説得力も感じました。
某エピソードでは歌唱力も求められましたが見事にクリア。
{netabare}CV.夏吉 ゆうこさんの「Yellow Rose」。デパートで耳にしたら私も思わず足を止めると思います。{/netabare}
ただ、マイMVPは、主人公マネージャーを演じた山下 大輝さんの包容力がある落ち着いたイケボかなと。
【音楽 4.0点】
『ラブライブ!』シリーズ等にも楽曲提供してきた高田 暁氏・作曲・編曲のOP主題歌「ワンダー・スターター」を始め、
アイドルアニメソングとしては、変哲もないメロディ。
が、典型的な歌詞世界に隠された、
エピソードを見届けた視聴者だけが知ってるアイドルの本音。
というプレミア感が付加されれば心に染み込んでくる。
これもベタですがアイドルアニメの醍醐味。いとおかし。
楽曲として好きなのがHY:RAIN(ハイレイン)の「GYB!!」
嘘が上手すぎて自縄自縛するアイドルたちの中にあって、
HY:RAINリーダー・黒金 蓮は、突出して嘘が下手。{netabare}変装{/netabare}も下手w
クールなアレンジに乗せて“Get you back!”と直球で連呼する歌詞に、
不器用さが滲み出ていて、何か癒やされます。