ヒューマンドラマで友情なおすすめアニメランキング 5

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのヒューマンドラマで友情な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年07月06日の時点で一番のヒューマンドラマで友情なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

88.4 1 ヒューマンドラマで友情なアニメランキング1位
カレイドスター(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★★ 4.1 (1544)
8200人が棚に入れました
アメリカに、サーカスとミュージカル、マジックを組み合わせたようなエンターテイメントを提供する集団があった。その名を「カレイドステージ」という。
幼い頃に見たカレイドステージに憧れ、単身日本からやってきた苗木野そら(なえぎのそら)は、選ばれたものにしか見えないステージの精霊であるフールが見えるが、新体操しかやったことが無く、演技については完全な素人。しかもオーディションに遅刻して来た上にカロスが特別扱いする為、レイラから完全に敵視されることに…。
しかし、さまざまな試練に遭遇しながらも、持ち前の前向きさと身体能力、そして根性でそれらを乗り越え、やがてカレイドステージの花形、カレイドスターへと変身していく…。

声優・キャラクター
広橋涼、大原さやか、西村ちなみ、渡辺明乃、水橋かおり、櫻井孝宏、中原麻衣、折笠富美子、小桜エツコ、子安武人、下野紘、藤原啓治、久川綾、大森玲子、あびる優
ネタバレ

フーカム さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

スポ魂のようでスポ魂でない傑作!

スポ魂が好きな人にオススメです←タイトルに反するけど許してw見ればわかると思います

幼い頃に家族と見たステージに憧れカレイドステージ(サーカス団)に入団した少女の成長を描いた物語

作品が古いことや全51話ととても長いことからなかなか視聴するのにためらっていたのですが見てよかったと思いました
また、作画も思ったほど古臭さは感じませんでしたし、何より全ての話がまんべんなく面白いためあっという間に見終わってしまいました

彼女のまっすぐさとひたむきな努力に心が動かされ応援したくなり感動させられてしまいました(>_<)
よく見る誰かが死んだり出会えたり別れたりといったものでは無い本当の感動ってこんな感じなのかなって思いました

またOVAも作品のメッセージが伝わるもので物語の補完も出来ていて凄く良かったのでぜひ見てほしい

自分なりの考察感想
{netabare}
この作品のメッセージは前半と後半に1つずつあると感じました
その2つを終番でうまくまとめてくれたように感じます

1つ目は     【夢は信じる者の前に現れる】

これはフール(英語で愚か者の意)を用いてうまく演出している

ここに相当する話が前半では

・マーメイドの主役のチャンスを得た空がリハーサルに失敗し、そのトラウマから飛べなくなってしまいフールも見えなくなってしまった話

・幻の大技に挑む話

であり、空は自分がミスしたことにより、「やって出来ないことはない!」と自信家だったのが死の恐怖から自分を信じられなくなってしまいフールが見えなくなる

そして幻の大技は「死を恐れない」と答えるのではなく「絶対に死なない」と答えたことからフールに資格を認められた
この回答の前者と後者の違いは
前者では死の可能性を認めそれが怖くないと考えているのに対し
後者では死の可能性は絶対にないと自信を持っているのである

またレイラさんに空が質問した内容からも


「もし昨日フールが私たちの資格を認めてくれなかったらどうしようと思ってたんですか?」

レイラ
「考えてなかったわ。当然フールに認められるものとばかり、でも確かに普通は考えるわよね?空は?」


「実は私も…(二人で笑い合う)」

ここからも二人の自信が伺える

そして "フール"とは"幻"であり"夢"そのものの象徴
また "資格"とは"資質","才能","可能性"といった夢を阻むものの象徴でありそれらを信じ切れるかというものであったと考えられる

つまりステージの精であるフールはステージに上がる者の中で有り得ない幻のような夢でも自分を信じ抜ける愚か者にしか見えないのだと思う

最終話では


「レイラさんは正しい。
 争うことがない世の中なんてありえないって私も本当はそう思ってる。
 でもせめてステージの上くらい争いがなくてもいいのにともまだちょっと思ってる」

フール
「挑戦者、冒険者、開拓者。そういった名で呼ばれる者たちは全て愚か者だ。
            誰も目指さぬ夢を追った愚か者を待つのは嘲りか喝采か。」

という流れからも

"絶対に無理だ、危険すぎる、有り得ないなどといった幻のような夢を信じて追う者の前にこそ夢は実現されるのだ"

ということを言いたいんじゃないかな?とおもいました

レイラさんにフールが見えなくなったのは真のカレイドスターの誕生という夢が叶ったからじゃないかなぁ
最後の二人の会話


「私はこれからもレイラさんの夢って思っていていいですか?」

レイラ
「いいえ、あなたはもう私の夢じゃないわ。あなたは私の誇りよ。」

そしてロゼッタにフールが見えるようになりましたが、このとき空にはもうフールがみえなくなったんじゃないかなぁ
↓更新 
カレイドスター 新たなる翼EXTRA STAGE「笑わない すごい お姫様」OVAネタバレ
{netabare}
OVA見てみたらその後も空にはフールが見えていましたね
でも最終話でユーリが「これが夢のゴールか」
それに対してカロスが「夢の始まりだ」といっていることから
空の夢はまだ続いているためフールは見えるという解釈でもいいかなとおもいました、いやむしろ見えていて欲しかった
夢が叶ったら終わりじゃさびしいもんね
だからレイラさんもまた新しい夢を追っているんでしょう

また主役に自信を失ったロゼッタにフールが見えなくなったことからも私の思ってるフールの存在の象徴は合っているのかなぁと感じました
{/netabare}

結局カレイドスター(カロス=美しい、エイドス=形)とは一体何だったのかというと私は

         "誰もが探している夢"

のことなんだと思います
スター(夢)は空やレイラさんのように誰かから受け取り、自らがスターとなり(夢を叶え)ロゼッタやケンのようにまた他の誰かに宿していく。そしてそのロゼッタやケンも誰かにとってのスターになるのだと思いました



二つ目は    【物事(特に争い)の二面性】

これは天使と悪魔、愛と憎しみ、、盲導犬、争いなどを使ってうまく表現している

 まず一番分かりやすい提示として利用された盲導犬の話から

ドナーウォーカー
「この子(盲導犬)たちにとっては相手を喜ばすことが最高に嬉しいことなの
まわりを幸せにするただそのことだけを願っている存在、それがこのこたちを天使だと思う理由
あの頃の私にはみんなの嫌な面しか見えなかったけど、この子たちに会ってから
あーそうじゃなかったんだぁって思うようになったの
ステージに立つものならお客さんを楽しませたい!みんなを幸せにしたいっていう天使の心は
誰もがもっているはずだもの。ただ自分方がもっとうまくやれるという想いが天使の心を憎しみに変える
きっと空はステージを見ながらみんなの天使の心を受け取ったのね。その時の私には見えなかったものだけど」


「そっかぁフェスティバルのときは私にも見えていなかったんだ
ミュートさんたちが仲間たちと夢を語っていたその目に嘘は無かった
他の人たちにはみんな夢があってお客さんを楽しませたいっていう天使の心は皆がもっていて
憎しみも争いもその裏返し…憎しみも愛ってそうゆうこと?それなら!!
天使の技は天使になるための技じゃなくて、みんなの中の天使の心を呼び覚ますための技なのかもしれない
ううん、きっとそうだ!
私は私の中の天使を信じる!皆の中の天使を信じる!天使の技を信じる!」

ここで初めて水上丸太の練習がうまくいく

 続いて天使と悪魔、愛と憎しみについて
これは人物を用いて巧みに表現されていました

・ユーリは危険のないステージを作るという愛が強すぎて他者を蹴落とす悪魔として
・レオンはソフィーへの愛からパートナーを潰す悪魔として

最終話のユーリとレオンの会話
ユーリ
「天使の技は基本的には1人でも演じられる技だ、俺たちはまさにおまけだな。
彼女たちは強い。1人でどこまでも走っていける。
ただ、ときどきほんの少しだけ寄りかかりたくなるときがある。
俺たちはそのときだけ支えてやればいい。それが俺たちの役目だ。」

悪魔とは天使を支える存在ということ

・メイは悪魔から天使になろうとするオディールとして

メイ
「オデットを憎むことでしか愛を表現できないオディール。
ならオデットを滅ぼしたら愛を表現することができなくなるわけよね。
空がステージを降りたせいで気合いが入らなくなった私みたい…
オディールは私…オディールにとっての王子とは私にとってのステージ
オデットに勝とうとする限り王子の愛は得られないオディール…
オディールとオデットの違い…」

ミア
「それはですね、オディールは自分の愛が最も大切なのに対し、
オデットは自分自身よりも王子を大切に思ってるってとこです」

メイ
「自分自身よりステージを大切に思っている空。空に勝とうとする限り私は勝てない」

メイが天使の技習得に苦戦する空を見て

メイ
「自分よりもステージか…もしかして!空あんた…」

ここでメイは空が幻の大技を成功させたときを思い浮かべたのであろうと予想される
そのとき空にとっての王子はレイラさんであり自身よりもレイラさんのことを考えていた
そしてレイラさんの力を借りて導いてもらっていたのだと気が付いたと考えられる

ロゼッタの元へいき共演の提案を持ちかけるメイ

メイ
「あたしクライマックスの技をね、二人技にしようと思うのよ。
何ぼーっとしてるのよ!分かったら練習練習!」

ロゼッタ
「あーちょっと、私出ないっていってるでしょ?」

メイ
「あんたほんとにそれでいいの?空の覚悟は半端ないわ。
例えこの講演を最後に二度とステージに上がれないようなことになったとしてもやり抜くでしょうね。
あたしがカレイドステージに入った時にはもうレイラさんは居なかった…どんなに悔しかったか。
私が今考えている技は1人じゃできない!だからあんたに声掛けてんのよ!
あんたが断れば別の人を探すけど…どうする?」

ロゼッタが承諾し練習に入る

メイ
「あんたの役はオディールを憎しみの迷いの道から導き出す妖精なのよ。
私が表現しなくちゃならないのわ憎しみじゃない…
自分の憎しみに勝とうとするオディール…強い力で導く、誰かの力を借りてでもね…」

ここでメイが思い出したのはレイラさんという王子への愛を
空に勝とうとすることでしか表現できない自分であったと思われる
そんな自分にも導いてもらう力が必要だと考えた
そこで自分の境遇と同じ道を辿るかもしれないロゼッタを共演役に選び
ロゼッタのことを想うと共に力を借りて導いてもらおうと考えたのではないだろうか?


「幻の大技の時も苦しくて苦しくて逃げ出したくなった…
あのとき私が頑張れたのはレイラさんが引っ張ってくれたおかげ!
だけどレイラさんは自分だけの力で頑張り抜いたんだ!誰の力も借りずに!」

ここで初めて空が天使の技を成功させる、つまり自立できた(本物の天使になれた)ことを意味するのだと思う

・レイラさんは天使と悪魔を両方宿す中立のものとして
↓更新
カレイドスター Legend of phoenix 〜レイラ・ハミルトン物語〜 OVA ネタバレ
{netabare}
ここでは新たに "誰かを頼ること" の二面性について描かれていました

【 悪魔 ← 甘え、弱い = 頼る = 信頼、助け合い → 天使 】

このOVAを見てちょっと勘違いしていたことに気づきました
レイラは天使と悪魔を両方宿す中立な者として描きたかったのでは無くて悪魔を一切受け付けようとせず天使であろうとするレイラが悪魔を認めていくというメイとは反対方向の者を描こうとしていたんですね
{/netabare}

空が自分を追い抜くことを望む天使の心と
空を討ち負かし勝ちたいと望む悪魔の心を持ち空と争う

しかしこれらの悪魔は最終的に空という天使によって天使の心を呼び覚まさせられるのだ

そして争うこととは悪い面と良い面の二つの顔がある

【 悪魔 ← 蹴落とす、討ち負かす = 争う = 高みを目指す、守る → 天使 】

争いを象徴するものと言えば戦争だ
だから上記した空の争いのないステージへの最終的な想いや願いは

 "戦争無くして平和は無いのかもしれない
     でも現実では有り得ない幻のようなことだとしても
   せめて夢の中だけではと信じ続ければ
       そんな世界が訪れるのかもしれない"

ってことを言いたいのかなぁと思いました
{/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 34
ネタバレ

watawata さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

カレイドスターを楽しむにあたって・・・・ (注)カレイドスターの再レビューです。

皆さんご存知『ARIA』を手掛けた佐藤順一監督によるオリジナル作品、出世作の一つでもあります。私事ですが、当然の如くサトジュン作品であるが故、期待値を高めに設定をしてしまい、これが面白く無いはずは無いっ‼︎と意気込んで最初に視聴したのが、はや2年前・・・・。述懐すると様々な要因で一度挫折しているのです。正確に言うと1クール手前で中断したまま2年間放置・・・・記憶の彼方から消え去りそうな時、(おい、お前、あの恥ずかしい思いをしてまでレンタルした作品をこのままにして良いのか?完走せねば報われないぞ)との心の声が脳裏に響き渡り、再度1話から視聴を決断した訳です。

え〜さて、本題に入ります。
舞台はサーカス、今まであまり取り上げられた事があまり無いちょいと毛色が一風変わったアニメ、ヒロインが様々な苦労、困難を乗り越えてスターへの階段を駆け上がる際の【成長】と【自立】を描く、王道中の王道のサクセスストーリー。放映されていた時間帯が朝9時台及び夕方17時台と低年齢層を対象にしている為、基本1話から2話完結で起承転結が明解です。

①試練が課される。問題発生。(トラブルオキュアー)
②試行錯誤する。(トラブルシュート)
③特訓実施。問題解決の行動実施。(エンフォース) (極端な訓練、行動に突っ込みを入れる事が出来ます)
④試練を乗り越える。問題解決。(ハッピーエンド)

変則回も多少有りますが、延々と上記の繰り返しです。そこそこボリュームのある内容(テーマ)を無理矢理、単話完結に詰め込んでいる為、単調になり強引な展開が否めません、又弊害として、止め絵及び同じシーンを多用せざるを得ないのも構成上理解は出来るのですが、最初に視聴した際は辟易としてしまい一旦断念・・・。
そして2年経過・・・完走を決意し視聴再開、すると不思議なもので、同じ所にズドンズドンと重いパンチを打ち続けられると、此方も次第に弱り倒れてしまう訳で・・・もうこの展開結末でしか納得出来なくなる、言わば・・・

『ええ~い、控えぃ控えおろう!この紋所が目に入らぬか!先の副将軍水戸光圀様なるぞ!頭が高い、頭が高いぃぃ。』
『はっ、あの三つ葉葵の印籠は・・・へへぇ〜参りました。許して下さいませ〜』

っとまあ、一種の水戸黄門状態に陥るのです。勿論、物語の骨格がガッチリしている事が大前提ですがね。後は製作者側の思惑どうり、作品にのめり込んで行くしかないのです。(自分は1クール必要でしたが・・・^^;)

物語は2部構成、
1部はヒロインが{netabare} 幻の大技 {/netabare} をサブヒロインと共に{netabare}修得し成功し『成長』する迄の過程{/netabare} のお話。どうでも良い事なのですが {netabare} 幻の大技、幻の大技 {/netabare} と連呼し煽るだけ煽るのですが、最後まで 何故か技名は不明でした。w 意図的な作為をひしひしと感じましたが・・・残念ながら大真面目に言っているのか、笑いを狙ったものなのかは、汲み取ることが出来ませんでした。
っと、話が脱線しました。
ここでは仕事に対する基本的な姿勢と成長が描かれています、新入社員レベルですが・・・、言わんとすることは至極当然な事ばかりです。(あくまで理想像です、現実の社会ではあまり通用しません)青臭いセリフが延々と並べ立てられますが、視線を落とすとストンと胸に入り、ヒロインの愚直な、前向き前のめりの姿勢を己に重ね、仕事に疲れ、嫌気が差し初心を振り返る際は、共感出来るかと思います。

そして2部、{netabare} 天使の技 {/netabare} を演じる事を通して、{netabare} サブヒロインへの精神的依存からの脱却、自分の進む道(理想像)を{/netabare} 見い出す『自立』までが描かれています、まあ管理職手前レベル手前迄です。
ヒロインの抱く理想像{netabare} 競争競技では無く、観客視点であくまでも楽しめるサーカス{/netabare} に対してヒール、ライバル達がアンチテーゼ{netabare} (先ずは個人の演技、満足ありき、その為には競争競技としてサーカスを肯定する認識、観客視点の優先順位は低い){/netabare} を唱えて来ます。以下自分の意見の押し付けです。何方とも正論です、間違ってはいません。仕事を始めて2〜3年目に誰もが通過する課題でもあり、悩むポイントです。但し長期間それなりのクォリティを維持するには、後者が自分には受け入れ易い正論ですね。先ずは自分有りきで仕事のクォリティを高め、継続維持の結果成果が付いて来るのかなっと、この点は作品のメッセージは言わば絵に描いた餅、安直であると考えます。あくまで個人的価値観ですので・・・。

人物の相関関係は明確で、キャラクターデザインを一目見るだけで理解出来ます。
但しこの作品でのポイントは極端なヒールが存在せず、ヒールに対しても行動に対し、納得出来る裏付けが描かれており、尚且つ嫌な役回りを、ちょい役に分散し、ギスギスとした雰囲気を避け、作品全体の暖かい雰囲気を醸し出す工夫もなされています。そして、メインマスコットキャラが語り部、コミカル部、クライマックスでの盛り上げと、何役もこなしており、作品の鍵となります、ただ可愛く無いのでサブマスコットキャラ(オットセイ)が多分後付けで追加動員されたと思いますがw

個人的に重要に感じたのですが、解り易い物語を、さらに解り易くする為に、メインマスコットキャラが、解説及びタロットカード(1部)星座占い(2部)による今後の内容示唆をしてくれます。(タロットカードから星座占いへの変更はやはり、前者が馴染みにくかったのかな?)オマケにアイキャッチでヒロインがサーカスの演技をし、その成功の是非がストーリーにそのまま直結する丁寧さには、作り手のターゲット層(低年齢層)に対する配慮なんでしょうね、細かい点ですが好感が持てます。

総括です。4クールと非常に長いのですが、あらゆる箇所が丁寧に練り込まれれおり(そうでない箇所もありますが)作り手の愛を感じます。ヒロインに自分を重複させて見るのも良し、逆にヒール及びライバルに共感するのも良し、物語の根本を斜め下から穿った見方をするのも良し、純粋に明るく暖かい雰囲気を楽しむのも良し、と骨格がしっかりし、その上に肉付けがなされている作品であるからこそ可能なのだと思います。そして、各部のクライマックスシーンは長い道程を乗り越えた者だけに与えられる、【何か】(人それぞれ)があります、これから視聴予定のみなさん、完走をお祈りしております。


最後に
みんな〜カレイドスターが始まるよ〜。
カレイドスターを見る時には以下の事に注意すると、より楽しめるよ〜。

さてさてさて、

①時々、作画が崩れるけれど10年以上前の作品だから仕方が無い、無い、無い!
暖かく心の眼で綺麗に脳内修正してね。

②絵がよく止まってしまうけれど、大人の事情なので許して欲しい、かな、かな、
かな! これも暖かく心の眼でヌルヌルと脳内で動かしてね。

③同じシーンを何度も使っちゃうけれど、大切な事をみんなに知って欲しいからなん、だな、だな、だな!
決して手抜きじゃないから理解して下さいね。

④強引にお話が進んじゃうけれどもこれは、みんなにいっぱい、いろんなメッセージを伝えたいからなんだ よね、よね、よね!
少し我慢すると慣れるから最低1クールは頑張って見てよね。
・・・・それでも頑張って見ることが出来ないこともある、よね、よね、よね!
そんな時は続けて見ないで、1日おきで見ると、強引なお話の粗が想像で補完されて見やすくなるよ。

⑤やたら画面が眩しく見にくい時があるけれども、サーカスの光の演出上どうしても譲れないことなん、だな、だな、だな!
本当に部屋を明るくして見てね。守らないとポケモンショック(光線過敏発作)が発症しちゃうよ。

⑥カレイドスターは小さいお友達の為に作られたお話なんだ、よね、よね、よね!
大きいお友達が見る時には視線を思いっきり下げて見ると楽しめるよ。

でわでわ


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以下、前レビューになります。こんなレビューですがサンキューして頂いた方々もおられますので、消してしまうのは失礼かと思い、一応貼り付けておきますね。

2012.03.14 03:41 watawataの評価 | 今観てる | 101人が閲覧 | [編集] [削除]
3.7 評価対象: カレイドスター(テレビアニメ)
物語 : 4.0  作画 : 3.5  声優 : 3.5  音楽 : 3.5  キャラ : 4.0

久々に借りるのに勇気のいる作品でした^^
皆さんのレビューが高いので思いきって視聴することに…

いざレンタルしようとGEO(名前を出さないほうがいいのかな?)に行くも見つからず…なくなく店員に所在を聞いた所キッズ少女向けコーナーに陳列しているのを発見…
えっ(少女向けコーナー??!!)

これは……勇気がいる…

今までたいていのタイトルはノンストレスで借りることができたのですが少女向けコーナーとは…
それも、いい歳のおっさんがこのコーナーに向かい立ち止まるにはさすがに抵抗がある。
以前友達に、クラナドを勧めた時にも同じような返答がありました「おいお前、これを見るには少し無理があるぞ、このパッケージものを借りるのなら、エロビデをを借りたほうがましだ。」・・・・・ちなみに友達も勿論結構なおっさんです。

そんなに言わなくてもいいのにと、思っていたのですが少し気持ちがわかるような気がしてきました。
これぞ【ジェネレーションギャップ】とてつもなくおおきな壁でした。(笑)

それでも自分は少し犯罪者なのか?と、訳の解らない自問自答をしながら勇気を出して借りることに…3巻だけですが。

さて10話までの感想です。監督はARIAでおなじみの
佐藤順一監督。キャラクターの練りこみ方は秀逸です。
が、ここまで視聴した感想はどのお話もワンパターンで少し残念な評価です。
ストーリー構成としては1話完結で

①主人公に問題が発生

②問題を克服しようと努力する(その間同僚から執拗な嫌がらせにあう)

③完全なハッピーエンドとはいかないとしてもそれなりの成果をあげて一段落の繰り返し(同僚もそらの努力をそれなりに認める。)
以上の繰り返してす。
これは少女ものの、王道なのかな?
非常に丁寧に作らせているのですが1話完結なので話の展開が早すぎる。
感情移入がしづらい。
2話で前後編位が良かったのでは?
まだ10話も見ていないので、ここまで書いてはいけないと思いますが、現時点の感想です。


また最終話を見終えたら追記しますね^^
でわでわ

投稿 : 2024/07/06
♥ : 28
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

真のスターの輝き、そして、競うことの意味、を問う作品

10年以上前の作品ですが、あにこれでも熱いファンの多い名作アニメ。
全51話と長かったけれど、第39話まで頑張って視聴した結果、見て良かったと思える作品になりました。
特にラスト手前の第50話でかなりの感動を経験。

《内容》
{netabare}
(1)主人公の少女(そら)がカレイドスターになる夢に向かって懸命に努力して羽ばたいていく話(ただし彼女の「真の夢」とは何か、が一歩踏み込んで問われることになる)、であると同時に、

(2)彼女の憧れであるもう一人の主人公(レイラ)が自身のカレイドスターとしてのキャリアを完全燃焼し、後輩の少女(そら)にバトンを託す話でもある。
{/netabare}

放送期間 2003年4月3日 - 9月25日(第1期) 
     2003年10月4日 - 2004年3月27日(第2期)

話数 全51話(但し総集編が2話あるので実質49話) + OVA全3話
(第1期:全26話、第2期:全25話)

表向きの主人公 苗木野そら(16歳)
裏の主人公   レイラ・ハミルトン     

原作 佐藤順一
監督 佐藤順一(第1期) 
   平池芳正(第2期)
シリーズ構成 吉田玲子

※以下は各回の評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×が付いている話は脚本に大きな疑問を感じた回
===============================================================
カレイドスター(第1期)
===============================================================
{netabare}
1 初めての! すごい! ステージ ★ カレード・ステージに出演・合格する話
2 孤独な すごい チャレンジ ★ ゴールデン・フェニックの特訓をする話
3 遠い すごい ステージ ★ ステージを脇から支えるクラウンになる話
4 がんばれば すごい チャンス ☆ 3人娘でシンデレラ公演の魔女を演技する話
5 いつも すごい 遠い家族 ☆ そらの父親が公演を見に来る話
6 小さくて すごい オットセイ ☆
7 笑わない すごい 少女 ☆ ディアボロの天才ロゼッタ登場回
8 つらくても すごい スター ☆ 公演のスター・レイラの誕生日と父親の話
9 主役への すごい 挑戦 × 人魚姫のオーディション。そらが怪我に怯える話
10 主役への すごい 壁 ☆ レイラとは違う人魚姫を演じる話。初めて主役を務める苦しみ。
11 アンナの すごくない お父さん ☆ アンナのサイド・ストーリー
12 熱い すごい 新作 ★★ レイラと新作の競演をするための試練
13 嵐を呼ぶ すごい 競演 ★ パイレーツをレイラと競演する話
---------------- OP/ED 変更 -----------------------------
14 怪しい すごい サーカス ☆ 他劇団での経験。ケンの決意
15 歌姫の すごい 愛 ☆ サラ&カロス回
16 黒い すごい 噂 ☆ 親友まなみ登場。引き抜きによる劇団の危機
17 燃えろ! すごい ミア ☆ ユーリの復讐
18 ユーリの すごい 罠 ☆ 最後の公演。フールが見えなくなる。
19 家族の すごい 絆 ☆ そらの両親の訪米。妹が誕生する話
20 ゼロからの すごい スタート ☆
21 謎の すごい 仮面スター ★ 仮面スターとの競演
22 仮面の下の すごい 覚悟 ★★ 演技コンテスト。急展開。フールが見える
23 幻の すごい 大技 ☆ レイラとの競演が決定。グランド・キャニオンで特訓
24 まだ続く すごい 特訓 ☆
25 ふたりの すごい 絆 ☆
26 傷だらけの すごい 復活 ★ 「幻の大技」。「貴方は私の夢」。第1期完結{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)2、★(良回)6、☆(並回)17、×(疑問回)1 ※個人評価 ☆ 3.8

《幸福な西海岸~掴みはさすがに上手い》

第1話の初めに、{netabare}カレイドステージの入団テストを受けるためにアメリカに到着した主人公そらの様子が描かれますが{/netabare}、いかにも陽気で明るい南カリフォルニアの雰囲気がよく描かれていて、すんなりストーリーに入り込めました。
第2話・第3話も、ドラマチックな展開を織り込みつつ上手に話しをまとめていて納得の出来栄えでした。

《面白いけど違和感も強かった第1期》

その後ストーリーは紆余曲折を経ながらも、主人公そらと彼女の憧れのスター・レイラさんが{netabare}様々な妨害や困難を乗り越えて、「幻の大技」の競演に向けて厳しい特訓を繰り返し、ついにこれを完成させる{/netabare}というスポ根的な王道展開を見せます。
確かに面白かったのだけれど、上の各話評価のとおり、この第1期は★★(星2つ)が僅か2回という、個人的には余り納得できない出来と感じてしまいました。
しかし名作という評判を信じて、我慢して第2期へ。

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カレイドスター 新たなる翼(第2期)
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{netabare}
---------------- OP/ED 変更 -----------------------------
27 スターへの すごい プロローグ(前編) (前半総集編1)☆
28 スターへの すごい プロローグ(後編) (前半総集編2)☆

29 新しい すごい ライバル × レオン&メイ登場回。展開がかなり強引
30 もう一人の すごい 新人 ☆ ロゼッタ回
31 情熱の すごい ライバル ★ 「レイラさんに謝れ!」回
32 氷の上の すごい 対決  ★★ メイとドラキュラ公演のヒロインを争う話。そらの弱点とは?
33 汗と涙の すごい ロゼッタ ☆ ロゼッタの特訓を手伝う話
34 やっぱり すごい レイラさん ☆ レイラを追いかけるのではなく、そら自身の夢を持つ必要を指摘される
35 マリオンの すごい デビュー ☆ キッズ・ステージを作る話。マリオンのデビュー
36 レオンとの すごい 特訓 × サーカス・フェスティバルの特訓。レオンの行動が異常
37 二人の すごい 悪魔 ★ メイの本気が見られる回。「デーモン・スパイラル」
38 天使の すごい 反撃 ★ そらの本気が見られる回。「天使の技」初出
39 惨酷な すごい 祭典 ★★★ フェスティバルの意外な結末
40 絶望の すごい 帰国 ★★ そらの夢がようやく固まる
41 再出発の すごい 決意 ★★ かなり意外な展開。ソフィーとは誰?
42 屈辱の すごい 共演 ★★ 意外な展開の続き
43 ポリスの すごい プロポーズ ★★ そらの演技がもたらすもの
44 笑顔の すごい 発進! ★★ メイの目から見たそら。笑顔の重み
45 レオンの すごい 過去 ☆ 「天使の技」の秘密1
46 宿命の すごい 決斗 × 「天使の技」の秘密2。ソフィーとの約束
47 舞い降りた すごい 天使 ★ みんなの天使の心を呼び覚ます技
48 傷ついた すごい 白鳥 ☆ 争いのないステージ
49 ひとりひとりの すごい 未来(あした) ☆ 最後の試練
50 避けられない ものすごい 一騎討ち ★★★ 競うことの意味
51 約束の すごい 場所へ ★ 最高の喝采。「貴方は私の誇り」。第2期完結{/netabare}
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★★★(神回)2、★★(優秀回)6、★(良回)5、☆(並回)9、×(疑問回)3 ※個人評価 ★ 4.4


《第1期の違和感の原因がはっきりした第39話以降の展開》

ネタバラシはしませんが、頑張って視聴し続けて良かったと感じた第39話(★★★(3つ星評価))
そして、続く第40話から第44話まで、この作品の本当のテーマ(のひとつ)が次第に明らかにされていきます。

《裏の主人公レイラの望み》

ラスト手前の第50話(★★★(3つ星評価))ではこの作品のもうひとつのテーマが明かされます。
ここが本当の圧巻(クライマックス)。
最終話の第51話が霞んでしまうくらいの出来でした。
素直にこの作品を視聴できて良かったと思いました。

※以下、ファンサービスの後日談等(OVA)

===============================================================
カレイドスター 新たなる翼 -EXTRA STAGE-『笑わない すごい お姫様』
===============================================================
{netabare}
52 次のスター候補ロゼッタと妖精フールの話 ☆
{/netabare}

===============================================================
カレイドスター Legend of phoenix 〜レイラ・ハミルトン物語〜
===============================================================
{netabare}
53 - 2話分(約51分)。後日談+レイラ視点での物語 ☆
{/netabare}

===============================================================
カレイドスター ぐっどだよ! ぐぅーっど!
===============================================================
{netabare}
54 - 2話(約24分×2回)。 (本編のパロディ) ☆
{/netabare}

《総評》

2003~4年制作の作品なので、作画・演出のレベルはどうしても低く、脚本も色々と粗(あら)が目に付いてしまうので、他作品との兼ね合いでそれ程高い点数は付けられませんでしたが、実際に視聴すれば、点数以上の感動がある作品だと思います。
また、作品テーマという面でも、近年の人気アニメ(かつ名作アニメ)である

①アイドルマスター (スターの輝き、リーダーシップとは何か)
②ガールズ&パンツァー (競うことの意味、その最良の結末)

に、それぞれつながるものがある(※なお吉田玲子氏は②ガルパンのシナリオ構成も担当)と個人的には考えており、その点でも experience としての視聴価値の高い名作アニメであると思います。

《後記》  ※(2015.3.10追記)

上記の①アイドルマスター(2011年)、②ガールズ&パンツァー(2012年)は、カレイドスターで描かれた作品テーマが、それぞれより深化し洗練された形で描かれた作品といえると思います(※なお、両作品にはそれぞれ固有のテーマもあります)。

カレイドスターが、

(1)全4クール51話という冗長な部分も多い大作であり、
(2)作画・演出とも現代の目から見ると古臭さが否めないこと

を考慮すると、もしこれから、こうしたテーマの作品を視聴したいと考える方がおられれば、視聴の優先順位としては、①アイマス、②ガルパン、を先とした方がより効率的かも知れません。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 55

80.6 2 ヒューマンドラマで友情なアニメランキング2位
NHKにようこそ!/N・H・Kにようこそ!(TVアニメ動画)

2006年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (1534)
7887人が棚に入れました
大学を中退して4年目の佐藤達広は、ひきこもりとなっていた。佐藤は、自分が大学を辞め、無職でひきこもりであることなど全てが、謎の巨大組織の陰謀であると妄想する。その組織の名はNHK(日本ひきこもり協会)。そんな折、中原岬と名乗る謎の美少女が佐藤の前に現れる。佐藤をひきこもりから脱却させるべく、岬は「プロジェクト」の遂行を宣言。その「プロジェクト」の目的が不明のまま、岬による佐藤のカウンセリングが始まる。

声優・キャラクター
小泉豊、牧野由依、阪口大助、小林沙苗、早水リサ
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ヒキコモリ君の妄想話とナメていたら、意外と確りとした《BMG/青春もの》でした!

※レビュータイトルでネタバレ防止のため、変な略語になってますが、BMG={netabare}Boy Meets Girl{/netabare}のことです。
もっとも、18歳のヒロインはともかく、主人公の方は22歳の青年なので、この表現にはちょっと語弊があると思いますが、一応、物語のスタイルとしては、そう要約するのが一番適当なのではないかと。

◆「もどかしい世界の上で」が流れ出す第13話が転換点なので、初見者はそこまで我慢してね!!

歌手で声優の牧野由依さんのアルバム『天球の音楽』(2006年12月リリース)には、『ARIA』で使われた「ウンディーネ」「ユーフォリア」「シンフォニー」、それから『ツバサ・クロニクル』で使われた「アムリタ」「ジャスミン」「夢のツバサ」といった私の好きな曲が沢山収められているので、そのCDを流しっぱなしにして度々ドライブをしていた時期が以前ありました。

そしてそのアルバムの4番目の曲は、最初は馴染みがなかったのでSKIPすることが多かったのですが、慣れてくると何だかこれも良い曲だなぁ・・・と思い始めて、そのうちその曲がくるとそこだけリピートすることが屡々ありました。

・・・そうやって、別段曲名を調べることもなく何となく曲調と歌詞はだいたい覚え込んでいたのですが、たまたま本作の第13話を見ていたら、そのエンディングに突然、この馴染みのある曲が流れてきて、驚いてようやく曲名を調べたら、これが本作2クール目ED「もどかしい世界の上で」だったんですね。

本作自体も、その第13話が、丁度全24話の折り返し点でありシナリオの転換点になっていて、それまで本作のことを、「情けないヒキコモリ君の妄想まみれの下らないコメディだろう・・・」とナメていた私の心が、第13話での意外な展開と、そこでEDとして初めて流れた本曲によって、一気に揺さぶられてしまい、あとは最終回までガッツリ作品世界に惹き込まれてしまいました。

ラスト2話では、それまで謎だった{netabare}ヒロインの真意と目的{/netabare}が過不足なくきっちり開示され、それに対する{netabare}主人公のリアクションと変化{/netabare}も中途半端ではなく納得できる結末まで確りと描き出され、視聴前には思ってもみなかった《感動》まで味わうことが出来、その直後から1周目の時は早々に「ながら見」になってしまっていた序盤からもう一度確り見直そう、という気持ちになりました。


◆本作は、ヒロインの《ulterior motive(アルテリア・モウティヴ 隠された動機)》に見どころがある優秀作

私がこれまで視聴した作品で、同系列(隠された動機系)の名作/優秀作/人気作としては

(1) 『アイドル・マスター』 (2011年)(25話+劇場版) ※個人評価 ★★ 4.7
(2) 『俺の妹がこんなに可愛いはずがない』 (2009,13年)(31話) ※個人評価 ★★ 4.6
(3) 『四月は君の嘘』 (2014年)(24話) ※個人評価 ☆ 3.9

・・・の3本が挙げられると思います。
要するに、この手の作品は、

<1> 1周目では、我々視聴者は、「視点人物」たる「仮・主人公」の少年(ないし青年(*1))のモノの見え方や心情に沿って、謎めいたヒロインの行動動機や心情を訝(いぶか)しがりながら物語を追っていくしかないのですが、
<2> それらが開示されたあとの2周目では、今度は「真・主人公」たる「ヒロイン」の心情が、各々のシーンでどのように描き出されているのか?を読み取り/確認しながら、物語を再度追いかけていく、

・・・という二重の楽しみ方を出来ることになります。

(*1)『アイマス』の場合は、プロデューサーの視点。

一応、ここで私の意見を率直に述べると、上記の3作品の中で本サイトの総合評点が一番高い『四月は君の嘘』の場合は、該当レビューの方にも少し書きましたが、2周目視聴時点で気づくヒロインの描かれ方が、やはりどこかいい加減で中途半端(※肝心のシーンで急にギャグ調の作画に切り替わって何だか胡麻化された気分になってしまう点が特に・・・)であり、“泣ける”作品としては非常に需要にマッチして良く出来ているのだろう、とは思うけれども、私などが好む“心情描写系”作品としては、いまいち粗雑な出来なのでは?と思ってしまいます(※そのため私の個人評点もそこそこに留まる)。

一方、本作の場合は、いざ2周してみると存外にヒロインの側の《心情描写》が確りしている、というか、気合を入れて見ていなかった1周目では見過ごしてしまっていた彼女の心の動きが、実に細かくキチンと描き出されていることを、あちこちのシーンで確認できて、視聴時の満足度が跳ね上がってしまいました。

⇒ということで、本作の個人評価を、『君嘘』よりはだいぶ高いけど、『俺妹』よりはやや低い、★ 4.4 とします。

※ヒロインには大きく感情移入できたけど、ヒキコモリの主人公の方は色々とマイナス点が多くて、『俺妹』ほどには評価が高くなりませんでした(←それでも最後は{netabare}主人公も頑張ってくれた{/netabare}ので、完走後の後味は悪くないはず)。

《まとめ》
本作は、序盤の主人公のネガティブさに閉口してしまう方が多いと思いますが、そこを何とか我慢して切り抜ければ、中盤過ぎから急に面白くなり、最後は感動も出来てしまって、さらにもう一周したくなる、1粒で2度美味しい《感情描写系》の優秀作と思います。
とくに、『俺妹』や『アイマス』を、途中で飽きてきて断念したくなりながらも、頑張って視聴を続けたところ、途中から急に楽しくなって最後は確り感動できた人には、割と同様の視聴経験が出来る作品として、お薦めしたくなりました。


◆視聴メモ(2周目)

※上記のとおり本作の1周目の半ばまで、「ながら視聴」して視聴メモは全く取っていませんでした(従って以下のメモは2周目時点のものです)。
{netabare}
・第1話視聴終了時点
冒頭のシーンだけでも色々と気づくことが多くて・・・2周目に色々と発見がある作品はやはり名作なのかも?
そして、Aパートの終わりで早くもヒロイン登場←今考えると、本作ってこの第1話から最終話まで《引きこもり青年×動機を秘めた少女》の初対面からの《感情推移》を描いた作品として、実は全然ブレてなかったんだね(1周目視聴時は全然そうゆう展開になるとは想像できませんでした)。
・・・とゆーか、N・H・Kの陰謀って「Nihon・Hikikomori・Kyokai(日本ひきこもり協会)」ではなくて「Naka・Hara・misaKi(中原岬)」の陰謀だよね笑。
1周目は専ら主人公(※正確には視点人物)の側から、そして2周目になるとヒロイン目線をプラスしてより重層的に物語を追える作品と確定!
やっぱりそういう2度美味しい作品は良い!!!
・第2話視聴終了時点
引きこもりがよくSOHOなんて単語知っているな笑。
・第5話視聴終了時点
岬のカウンセリング第1回・・・八百万の神やフロイトの夢分析について岬より詳しい佐藤(←大学中退の22歳と18歳だとそうなるな普通。)
・第6-12話視聴終了時点
何気ないエピソードが淡々と続くが、後から考えると第13話までつなげていくこの一連の展開はなかなか良く出来ていると思う。
・第13話視聴終了時点
岬の意外な本心が噴出してしまう注目回であり、初めて流れる2番目ED「もどかしい世界の上で」も◎(初の★★(優秀回))。
・第15-19話視聴終了時点時点
佐藤がネトゲとマルチ商法に巻き込まれる話。
ここはシナリオの本筋には余りないマンネリ気味の展開で、ちょっと残念(個々のエピソード自体は面白いけど)。
・第23話視聴終了時点
特殊EDは多分ここだけ。流石にドラマチックな展開で2度目の★★。
・第24(最終)話視聴終了時点
佐藤がオカリンに見える!・・・というか、こっちの方が早かったんだね。
第1話冒頭の主人公の夢落ちと重なる内容は◎、ラストはあっさり展開でここも好感を持てました(3回目の★★)。
{/netabare}


◆制作情報
{netabare}
原作小説        滝本竜彦(WEBサイト「Boiled Eggs Online」2001年1-4月連載)
監督           山本裕介
シリーズ構成・脚本  西園悟
キャラクターデザイン 右湊具央、吉田隆彦
音楽           パール兄弟
アニメーション制作  GONZO{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

================== N・H・Kにようこそ! (2006年7-12月) ================

 - - - - - - - - OP「パズル」、ED「踊る赤ちゃん人間」 - - - - - - - - -
{netabare}
第1話 プロジェクトにようこそ! ★ 佐藤達広(22歳、大学中退ニート、ヒキコモリ歴まもなく4年)、N・H・K(日本ひきこもり協会)の陰謀?、中原岬(18歳)との出遭い、公園呼出し(岬のプロジェクト開始)
第2話 クリエイターにようこそ! ★ ヒキコモリ脱出サポート契約の提案、隣人アニヲタ(山崎薫、高校時代の文芸部の1年後輩)、岬との約束(制作ゲームを見せる)
第3話 美少女にようこそ! ★ ギャルゲー事始め、校門前取材(盗撮未遂と岬の意味不明な態度)
第4話 新世界にようこそ! ☆ 山崎との聖地・秋葉原巡礼(ヒロインのキャラ作り取材)、柏先輩との再会
第5話 カウンセリングにようこそ! ★ 続き、中原との契約成立、引きこもり脱出講義開始、ゲームシナリオ作り
第6話 クラスルームにようこそ! ★ 続き、山崎の彼女疑惑、伐々木デザイナー学院見学
第7話 モラトリアムにようこそ! ★ 母親からの上京連絡、岬の恋人役引き受け、初デート
第8話 中華街にようこそ! ★ 母親上京、3人のお食事会(横浜中華街)、芝居からのはみだしデート
第9話 夏の日にようこそ! ★ ゲーム作りの期限、山崎の初恋の思い出、夏祭り(岬との花火鑑賞)
第10話 ダークサイドにようこそ! ★ 岬に惹かれる気持ちと募る疑念、岬尾行、岬への捨てゼリフ(カウンセリング放棄)
第11話 陰謀にようこそ! ★ 柏先輩からの連絡・突然の来訪、先輩との思い出、「天国に一番近い島」オフ会へ
第12話 オフ会にようこそ! ★ 陰気な集団との無人島行き、オフ会の目的判明{/netabare}

 - - - OP「パズル -extra hot mix-」、ED「もどかしい世界の上で」 - - -
{netabare}
第13話 天国にようこそ! ★★ 山崎の岬問い詰め、集団自殺一歩手前、岬の引き留め(本心吐露)
第14話 現実(リアル)にようこそ! ★ 城ケ崎のオフ会メンバー暑海温泉招待、岬の置き手紙、カウンセリング再開、夏コミ失敗、母親からの電話
第15話 ファンタジーにようこそ! ☆ 仕送り半額に、RMT(リアルマネートレード)参戦(ミアとの出遭い)、カウンセリングすっぽかし
第16話 ゲームオーバーにようこそ! ☆ 岬の佐藤リアル引き戻し作戦、ミアの正体・ネトゲの現実(山崎の忠告)、高校の同級生(小林)からの電話
第17話 はぴねすにようこそ! ☆ マルチ商法(ねずみ講)サークル、小林のなき脅し
第18話 ノーフューチャーにようこそ! ☆ クーリングオフ交渉大失敗、委員長宅訪問(トロトロの中の人)
第19話 青い鳥にようこそ! ★ 小林の兄・友一(トロトロ)との決別会話、岬の手料理、マウスロード強制捜査、友一のヒキコモリ脱出
第20話 冬の日にようこそ! ★ 冬コミ間近の追い込み、山崎の個人事情(帰郷決定、七菜子との決別)
第21話 リセットにようこそ! ★ ギャルゲー完成(冬コミ)、山崎との別れ(北海道帰郷)、カウンセリング年末試験(初詣デート、岬とはぐれて)
第22話 神様にようこそ! ★ 続き(柏先輩との別れ、岬の誤解と動揺)、猫の埋葬、意地悪な神様、岬のプロジェクト進行
第23話 岬にようこそ! ★★ 岬のトラウマ、カウンセリング卒業試験合格、新しい契約拒否、仕送り途絶・警備員バイト開始、岬のリストカット・、岬の家庭事情、遺書と失踪
第24話 N・H・Kにようこそ! ★★ 雪の石濱岬の一幕、岬の生家(廃屋)、後日譚(桜の季節){/netabare}
------------------------------------------------------------------
★★★(神回)0、★★(優秀回)3、★(良回)15、☆(並回)6、×(疑問回)0 ※個人評価 ★ 4.4


最後に一言。
本作には、確率1%の「N・H・Kの陰謀」が確実に存在する!
そう、それは「{netabare}N(aka)・H(ara)・(misa)K(i){/netabare}の陰謀」なのだ!!!
←この陰謀はアリだと思った(※『俺妹』の桐乃よりもずっとリアリティありそう)

投稿 : 2024/07/06
♥ : 25
ネタバレ

buon さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ああ、売れないわけだ。超怒級ドM専用の名作

これ、痛みを一つも覚えず完走できるヤツはアニオタにいないだろうな。
1話見て「3チャンにしては過激だなぁ」とか思ってたら、民放やんw
これ怒られんかなww
元ネタとして使われているローマ字のとこの風刺とか、なんか込められてるでしょ。
最初は「NHKのお仕事現場をアニメにしました」ってドキュメントっぽい
『働くって素晴らしい♪』って感じのお仕事紹介アニメだと思ってた。
ええ、ある意味、ビシバシ刺激を受けて労働意欲増進、食欲旺盛になりましたとも。

◇小説原作!?、2クール、全24話、一冊だから買っちゃった♪

誰でもこれ観たら何かしらドコかしら痛いだろうな。
四畳半を観たときに感じたものに近い感覚があるが、破壊力が30倍増し。


さて、アニメ業界の購買層のシェアはどんなもんなんだろう?
廃人(引き籠って、資金源が自分以外にある)、
お得意様(働いたお金をほぼ全額アニメ業界につぎ込んでくれる人)、
この層が厚いと売れないだろうね。

魔法使い、童貞、最近じゃセカンド童貞という言葉もあるらしい、
そこら辺の層もどうなんだろう。
ぶっちゃけダメ人間の素養がある人間の方が購買力あると思う。

リア充、あるいはどん底から完全に立ち直った人間に購買力があるとは思えない。
・・・って言うか、完全に立ち直るとか、真人間とかいないけど。
リア充と呼ばれている人もお花畑をフルタイムで漫喫してるわけなじゃいけど。
むむむ、オレは一体何を言っているんだ?? w

要するにダメ人間が買いたくなくなるような作品。


☆あらすじ☆
ニートの佐藤くんが新興宗教チックな女神の岬ちゃんに救済の手を差し伸べられる話。
★そんだけ★じゃないよーw

こういうのを「アニオタへのアンチテーゼ」「現代アニメのアンチテーゼ」とかいうのかな。
ってアンチテーゼってなんだよwググった、命題の反対って、数学か!弁証法って久しぶりだよ!!
使用例はなんか見たことあるからなんとなく分かるが。

思考に支障を来す様な作品だった。
内容は↑に書いてある分の感想を見たらなんとなく分かるっしょ。

ドMにオススメ、あとは岬ちゃんに惚れたら観た方がイイ・・・のかなぁ。
とりあえず、一回観てみな。

ちょっと残念なのが1~5話までエロゲとか変態チックな話がメインなことかな。
それが取っ付きにくさとなってるかも。
あと作画がひどい回が2,3回ある。一応、女の子の出番が少ない回とか選んでそうだから、
オレとしてはあんまり気にならん。ネタと思ってる。

この作品でも言ってたが、挙げられていたのはエロゲだけど、
「消費者は現実なんか求めていないんだよ!」って方にはオススメしない。

それにしても、山崎イイヤツ過ぎるな。なんだかんだで佐藤くんもイイヤツだな。
でも佐藤は完全にニート貴族。タバコに酒に、それだけで少なくとも毎月2万円超えてるだろw


そう言えば友人が言ってたが、
今の社会は「イイヤツが上に登りづらい」って。
オレは「イイヤツは上にいない」って思う。下にもね。ドコでも誰でも住みづらい世の中だよ。


OPすげー好き☆☆☆☆☆ 何、この溢れる名作臭w
EDも好き★★★★★ 虐めたいの? ええ、虐めてください♪
2クール目のEDは牧野さんの歌、こっちもええ♪♪
・・・あの赤ちゃん人間の絵、どこで見たっけなぁ~

ああ、1つだけ言っておかないとな。
{netabare}「ニートになっても、何年待っても、岬ちゅぁんは来ちゃくれないんだよぉぁー!!!」


※完走した人用の感想 → {netabare}

岬ちゃん役の牧野さんて、{netabare}シーキューブのユラ公だったのか(T_T)
・・・イイ声なのに、めぐり合わせで仕事も変わりそうだな。{/netabare}


※※以下、断定口調で述べますが語尾に「気がする」を付けて読んでね♪


この作品の裏を読むと面白いことが三つある。

一つは、誰も死んでないこと。
引き籠りもその素質があるヤツも「死にたい」とか簡単に口にするけど、
こういう人間って大抵は犯罪するようなこともないし、自殺することもない。
よく「自殺する勇気がない」とかいう言葉を耳にするが、
「~する勇気」って、あれ、勇気じゃないから。
本当に死んでしまう人は、悩むことや勇気とか、そういうの通り越して何も考えてないし、
考えられない。
だから考えられる人間は引き籠る余裕がある。

もう一つは、ラスト2話の前に引き籠りを脱出する例が2つあったこと。
1つは、見栄のために働こうとしたこと。
「かわいい女の子に引き籠りと思われたくない」
もう1つは委員長の兄ちゃんがアルバイトしてたこと。
「飯を食わせてくれれば何でもする」
兄ちゃんのが一番強い理由になる。
女の子にカッコ悪く思われたくない、とかの理由もイイ。
「空腹」「カッコ悪い」とかこういうマイナスの方向の動機は実に行動しやすい。
とりあえず佐藤くんは、
バイト先に岬ちゃんがいなかったらあの時点で引き籠り、ニートでなくなったかも。
あの動機付けで続くかは知らん。
ちなみに「岬ちゃんと付き合いたい」とかあまりにも明確な動機だと、長続きしない。
動機は単純で切実な方が、脱する力は強い。

最後は、実は周りの支えが引き籠りを脱するのを阻害していたこと。
単純に山崎や岬ちゃんがいなければもっと早く引き籠りを脱してたかも。
あの天使のような岬ちゃんが佐藤くんの自立を阻害してたかも、
という事実がなんか悲しい。
佐藤くんに関してだけ言えば、
彼自身はダメ人間だがどちらかというとイイ人間。
母さんに罪悪感を感じ、自分の状況をある程度理解していた。
しかも、妙な見栄があって餓死しそうになっても北海道に帰らなかった。
(帰るという選択肢がなかったから、交通費を残すなんてことを考えなかった。)
となると働くしかない、という状況は遠からず来ていた。
岬ちゃんや山崎が食糧支援してたから、飯の点だけでも、窮地からは遠のいた。

こういう見方をすると恐ろしいなw
もっとも、怪しい自殺のお誘い、マルチ商法地獄エンドから逃れられたのも、
あの2人の支えがあったから、という物語としての事実がある。
それに人間的な成長に大きく貢献していた。


この作品は物語として極端ではあるが、引き籠り・ニートについてよく表していた。

引き籠りの脱し方は最終話まで観ても、一話の結論から少しも変わっていない。

最後は岬ちゃんと恋人エンドっぽいけど、結局チューすらしてないし、
幸せなのか、幸せになれるのかもわからない。

ダメ人間同士が傷を舐め合っているだけにも見えるが、
それでも生きている、それで死なないなら御の字じゃん。

何でもいいから働いて生きろ、って単純なメッセージを私は勝手に受け取りました。
曲解して「かわいい女の子と楽しい時間を過ごしたいなら働け」ともw
あ~、オレもかわええ女の子とイチャイチャして~www



小説のプチ感想 {netabare}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小説だと山崎も佐藤くんもかなり末期だなw

アニメの元ネタは1クール分ぐらいしかなくて、
大筋の流れは同じでも、その過程が大分異なるので、アニメと小説で2度楽しめる。
岬ちゃんについて詳しく書かれているから、感情の入り方が変わった。

どっちにしても、凹む内容だwwwww

アニメは、カッコいい山崎とアクティブにダメな佐藤くん、可愛く献身的な岬ちゃん、
2クールでちょっとダラダラだが、エンターテイメント性の富んだ作品。
小説は、末期な佐藤くんとかなりダメな山崎、淡白な岬ちゃん、
1冊だけをサクッと読めて、より無情感を楽しめる作品。時間的にはこっち。

それにしてもアニメの脚本家?さんスゲーな。
よく小説を消化して昇華させたもんだ。
オリジナル要素てんこ盛りなのに、本質的には変わっていない。

小説は挿絵ないし、アニメ観た方が情景が思い浮かべやすいので、
岬ちゃんの可愛さを漫喫したかったら先にアニメを。
先に小説を読むと、きっと主人公と自分、他の登場人物も知り合いに入れ替わるから、
ドM日本代表は先に小説を。

どっちから入っても楽しめると思う★ ヒッヒッヒ

投稿 : 2024/07/06
♥ : 21
ネタバレ

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

「じゃ、また夜に、公園で。」

2話でヤマザキ君がちゃんと出て来るまで
「ひょっとして…この隣人は孤独死していて、ついに主人公は発見してしまうのではないか。夏場だし死体の腐敗もきっとひどい。引きこもりの末路を見た彼は、部屋から出る決心をするのでは…」
という展開を妄想して、ヒヤヒヤしていました。
いや、壁の向こうで同じ曲がループ…というのがそう思わせたのでした。
みさきちゃんも、「本当に存在するのだろうか…彼にしか見えなかったら…」とか。
身構えて見てたのですが、何やら物騒なことを見せそうな雰囲気がビンビン漂っていたのですよ。

内容は、痛い。序盤は特に痛い迷走ですね。
考えたくない事から目を逸らすのに必死になってエネルギーを注ぐ事で、また目を逸らしたい事実を作ってしまう。
横道でも、邪道でも、真剣に楽しめれば、楽しませられれば、それが突破口になることもある!?
目指せ、わらしべ長者。でも、求めることはすぐに等価交換はでき無くて…。

人間万事塞翁が馬、いいと思った事、ダメと思った事も、ゆくゆくはひっくり返ったりもするような話なのかな…?と思いつつ視聴。

序盤。ヤマザキの切れやすさと主人公とのやりとりが、コメディとして楽しいです。
他の方のレビューにもあったれど、仲間の出来方が確かに急かもしれない。こんなに仲間が居るじゃないですか、主人公…。

7話まで
岬ちゃんのプロフィールを知ろうとしないのが不思議だった。どうして相手が自分に興味を持ったのか、気にならないのかな。
{netabare} 「親についた"恋人"という嘘がバレるから知っとかねば」ということで、ちょっと詮索してみるのだけど、岬ちゃんの現実に踏み込みたい訳ではない。
…高校時代の先輩とも、そうだったんだろうね。
ガードが固いんだかユルユルなんだか分からない主人公だなあ。{/netabare}

10話くらいでやっと岬ちゃんのバックボーンが気になり出して、 {netabare}しかし同時に身を引いちゃうのか…。
うーむ。。
主人公が「自分の子供時代のかわいい純真な姿」を思い返すのがなんとも切ないんですが…それは記憶補正もあるかもよー。

岬ちゃんのルートをおいて置いて、先輩へという感じですが、先輩も何か暗いですよ。 {/netabare}
ひょっとして、このアニメの展開は、
「どの選択肢を選んでも他人に委ねる限りはうまくいかない」…っていう話なのだろうか。

12〜13話
どんな暗い話になるのかと思いきや、サスペンス調でドラマチック。そうくるか!てとこが多くて、面白かった。
{netabare}自殺幇助、ダメ絶対の話。お金持ちだけど全てを失ったオジさんの身の上話、もっと聞きたかったけどな。やっぱりそこで「聞いちゃいけなかった…」て引いちゃうのが、サトー君なんだな。

主人公が1人で元気いっぱい空回りする自身の姿に、昔の懸命な学級委員長を思い起こして重ね、その頃からの無関心で怠惰な自分の事を後悔するとか、素直でグッときた…。
しかし、大活躍のお株は、自殺を考え直した眼鏡の医大中退に持ってかれる。そうですよ。遺されたお母さんや子供は、一時ではなくその後ずっと辛いですよ。{/netabare}

16、17話
ああー、やっぱり、「他人に委ねる限りはうまくいかない」流れが来た。{netabare}マルチ商法。

そしてサトーのネトゲー部屋をせっせとお掃除して、オムライス作って待ってる、岬ちゃんの健気さが凄い。おしかけ女房の鑑です。QEEN OF OSHIKAKE。
ネズミ印の商品を大袋に抱えて、満面の笑みでアパートへ帰ってきたサトー君を、待ち構えた二人。
ヤマザキ御奉行の眼鏡が光る。
切っておしまいなさい…!{/netabare}

18話
クーリングオフ大作戦。
{netabare}本当に、ヤマザキと岬ちゃんが居てくれてよかった!!
と思ったのも 束の間…

ヤマザキお奉行の背中の桜が、ネズミに散った…。わぁーん‼{/netabare}

19話
でもやっぱり仲間がいてよかったよ…。
{netabare}
委員長の兄さん、そう来たか…って意外な脱出劇を見せてくれました。
地方へ行けば結構若人は貴重がられますが、先日まで引きこもってた目と鼻の先で頑張ってる姿がミソですね。
(地方での健闘はヤマザキが担うことに…。)

高校時代の委員長の熱心さを思い起こせたことが、自殺幇助の際に主人公の身を助けた一因になっていたと思うんですが、委員長は知らないままでしたね。
{/netabare}
生命維持のための焦りと、
受け入れて見守ってくれる周囲の支えが、自立の支えになるという話。
他人の間で必要とされたいという本人の切実さ、も大事かなあと感じます。

21話{netabare}
マリッジブルーをチラつかせてサトー君を誘う「先輩」、ダメな人だなあ…。良い悪いで見たくないですが、ダメです。
サトー君の深入りしたがらない性分と、これまでで懲りた事もあってか、「不倫してみる?」のお誘いはすぐに断れて真っ当でした。
先輩は、どうあっても心の充足感を得にくい性分なんでしょうか。
難儀だと思う、それは。
しかも妊娠してるって。すぐにおめでとうを言えたサトー君は、やはり真っ当でした。

ヤマザキの家出と怒りっぽさは、保険に自らの人生と値段を決められていた所に起因していたのか…。
ヤマザキの「田舎の人間関係は、酒が呑めればやってけるぜぇ〜!」という報告に、まさか、このままアルコール依存症の流れまでこないだろうな…と心配に。もはや人生の落し穴を探せ!状態です。{/netabare}

23話あたりからは
岬ちゃんとサトー君との間がいよいよ佳境に。
やっと岬ちゃんの故郷について、ふと聞いてみるサトー君ですが、さびしいからそばに居て‼という岬ちゃんの切実な告白に、
やっぱりまた身を引いてしまう。まだまだ心の中のさびしさの実が熟さないんでしょうか。
でもちょっと男の子らしいと思えた。

ここからのラブストーリーはとても丁寧で、終わった時には岬ちゃんとサトー君のカップルが何だか好きになっていました。

ひきこもりがテーマの、回りくどいラブストーリーだったのかもしれない。
同じようなひきこもり・卑屈脱却を描いた四畳半神話大系と比べても、とてもリアルな描写が多くて重い部分もありましたが、コメディの効いたドラマチックな面も多くて見応えがありました。

とても読みづらいレビューになってしまいました。御一読ありがとうございます。でも何か、色々語りたくなってしまう作品ですね。
他の方たちのレビューも面白く拝見できた不思議な作品でした。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 28

81.1 3 ヒューマンドラマで友情なアニメランキング3位
昭和元禄落語心中(TVアニメ動画)

2016年冬アニメ
★★★★☆ 4.0 (901)
4142人が棚に入れました
昭和の落語界を舞台にした噺家の愛おしき素顔と業を描いた作品

師匠と交わした約束を 胸にしまって芸を磨き ついに与太郎、真打に。 射止めた名跡は三代目助六。 八雲師匠の為め、助六の血を継ぐ小夏の為め、 焦がれて手にしたはずなのに、 おのれの落語が揺るぎだす――。 八雲と小夏、二人の中の助六を変える為めの 与太郎の落語とは――!?

声優・キャラクター
関智一、石田彰、山寺宏一、小林ゆう、林原めぐみ、家中宏、牛山茂、山口勝平、加瀬康之、須藤翔、茶風林、遊佐浩二、林家しん平
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

芸道修行と愛憎トライアングル - BLコミック出身作家、畏(おそ)るべし -

「落語」「人情噺」「ホモ/BL(※因みにこれは誤情報です)」といったタグがついている本作を視聴する予定は、元々全くなかったのですが、2016年放送・上映アニメの個人的BEST10を作ろうとして、同年の本サイト作品ランキングを確認したところ、本作が第14位(2017/1/31時点)に入っており、かつ、総合 4.0 (物語も 4.0)という高い評価を取っていたので、これを見ないでBEST10を作るのは拙(まず)いだろう・・・と考え直して、さらっと流すつもりで視聴を始めました。

そうしたら、これが第1話(※実質2話分のスペシャル回)から退屈する暇なしの面白さで、ラスト手前(第12話)の山場+謎の回収もピッタリ決まり、最終第13話は投げっぱなしだった第1話ラストに確り話を繋げて、かつ今後の新展開をも期待させる上手い締めくくり方で、見終わった直後から「これはもう一回、最初から確り見直さなければ・・・」という思いに駆られて、そのまま2周目に突入してしまいました。

そうやって、

(1) 1周目は、全体シナリオの整合性が確り保たれている作品なのか?にとくに留意して完走し(=シナリオ・チェック型視聴)、
(2) 2周目は、今度はシナリオは頭に入っているので、それを踏まえて個々の登場キャラクターが、各々のシーンでどのような心の動きをしているのか?そして、そうした心情が果たして映像として過不足なく描き出されている作品なのか?を見極めることに留意して完走し(=感情描写チェック型視聴)、
(3) さらに念を入れての3周目は、OP/EDや、作品中に登場する小ネタ(落語の演目内容や登場キャラクターたちがふと口にする言葉など)に、何か隠された/見落としている含意がないか?等を慎重に見極めつつ、もう一度、シナリオ&感情描写の両方を総合的に確認していく気持ちで完走して(=総まとめ的視聴)、

・・・結局、見始める前は考えもしなかった3周完走となってしまいました。
こうした3周コンプは、2016年放送のTVアニメでは、『Re:ゼロから始める異世界生活』(※個人評価 ★★ 4.6)、『響け!ユーフォニアム2』(※個人評価 ★★ 4.8)に続いて3作品目で、本作に関しては、

①全体シナリオの整合性が確り取れており、
②個々の登場キャラクターの感情描写も的確で、
③なおかつ、OP/EDや個々の会話に秘められた謎解き・含意も楽しめる、

・・・三拍子揃った《優秀作》と認定して、個人評価を『Re:ゼロ』と同点の ★★ 4.6 とすることにしました。


◆作品内容

本作の原作者(雲田はるこ氏)はBLコミック作家として商業デビューした方とのことですが、本作自体は、決して《ホモ/BL作品》ではありません。

本作の内容を強(し)いて挙げるなら、
{netabare}
①同日に落語名人の師匠に弟子入りし、兄弟分として育った落語家の青年同士の、厳しい《芸道修行》と、
②師匠の妾(めかけ)として彼らに出会った年上女性と彼らとの間に生じる《恋情と執着》の進行過程、
③そして迎える《悲劇的な結末》、を描き切った《濃密トライアングル愛憎劇》
{/netabare}
・・・といったところでしょう。


◆制作スタッフ
{netabare}
原作コミック     雲田はるこ
監督         畠山守
シリーズ構成     熊谷純
キャラクターデザイン 細居美恵子
音楽         澁江夏奈
アニメーション制作  スタジオディーン{/netabare}


◆各作品タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回

============ 昭和元禄落語心中 (2016年1-3月) ============

- - - - - - 与太郎放浪篇 (昭和50年代) - - - - - -
{netabare}
第1話 ★★ 強次の出所、弟子入り、寄席(出来心、初天神)、失態、八雲師匠の長話 ※約48分(2話分){/netabare}

- - - - 八雲と助六篇 (昭和初期~30年代) - - - -
{netabare}
第2話 ★★ 坊(ぼん)と信さんの弟子入り、初高座(菊比古、初太郎)、二人の実力差
第3話 ☆ お千代との逢瀬、満州皇軍慰問と疎開、終戦、寄席の復活、師匠・信さん帰国、二つ目昇格、みよ吉登場 
第4話 ★ 信さん助六に改名、菊と助六の共同生活、菊とみよ吉の馴れ初め(踊り・小唄の稽古)
第5話 ★★ 助六・菊それぞれの嫉妬、菊とみよ吉の逢瀬、美鈴座(鹿芝居、女形(弁天小僧))
第6話 ★★ 何のための落語、菊の開眼(艶笑噺(えんしょうばなし)・廓噺(くるわばなし)・・・品川心中)
第7話 ★ 助六人気と増長・反感、師匠の巡業同行要請、菊・みよ吉の心のすれ違い
第8話 ★★ 上方巡業、鬼灯(ほおずき)市の宵(助六の懸想、菊・みよ吉破局)、落語の将来、先代助六、名跡の重み
第9話 ★★ 真打昇進披露、別れ話と恨み、助六破門、傷心同士の同棲・転落、助六の本心吐露
第10話 ★★ 入門志願(樋口少年)、師匠の過去話(初代助六との因縁)・葬儀、祖谷(いや)温泉(小夏との出遭い)
第11話 ★★ 助六との再会、芸の肥やし、助六の借金返済、子夏の髪切り・野ざらし
第12話 ★ 有楽亭二人会、助六の人情もの(芝浜)、みよ吉との再会、違え心中 ※脚本は良いが演出が残念×
第13話 ★ 小夏引き取り、八雲襲名・落語心中の断、因果、与太郎の真打昇進内定、三代目助六 ※後半は昭和末期~平成初期{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)8、★(良回)6、☆(並回)1、×(疑問回)0 個人評価 ★★ 4.6

OP 「薄ら氷心中」(第3-8話、10話、13話) ※第1話のみEDとして使用(背景は文字のみ)
ED 「かは、たれどき」(第2-9話、11話、13話)


※本作(アニメ第1期)は、原作マンガの第1巻~第5巻途中までの内容を収録。
※2017年1月より放送が始まっている続編(アニメ第2期)は、原作マンガの続き~最終第10巻までの内容を、おそらく幾分改変しつつ収録するものと考えます。


◆視聴メモ

{netabare}・昭和16年(1941年)の時点で、信さん・菊比古とも18歳(1923年頃の生まれ)、そして、みよ吉はその5歳年上なので23歳(1918年頃の生まれ)
・第9話で、みよ吉が、まもなく「赤線(※売春防止法施行以前に公娼認可のあった区画)」が廃止されるので置屋(※芸者を置いていた店)から出なくてはいけない、と言っているので、この時点で昭和32年(1957年)頃(→助六&菊比古34歳、みよ吉39歳)
・第10-11話で登場する小夏は、かなりの才覚があるにも関わらず未だ小学校に通っていない様子なので、この時点での彼女の年齢を6歳と仮定すると、昭和38年(1963年)頃(→助六&菊比古40歳、みよ吉45歳)
・第1話で、助六没後20周年特集の落語雑誌が出て来るので、この時点で昭和58年(1983年)頃(→八代目八雲師匠(=もと菊比古)60歳、小夏26歳、与太郎21歳くらいか?)
・第13話後半は、第1話からさらに10年近く経った後の話なので、平成5年(1993年)頃(→八代目八雲師匠70歳、小夏36歳、与太郎31歳くらいか?)
{/netabare}


◆本作のモチーフ考察 : 歌舞伎の《助六心中》の落語家バージョンを狙った?

落語家といえば、《滑稽噺(こっけいばなし)》を次から次へと繰り出して、ひたすら寄席の客を爆笑させる人、という楽しいイメージが強くて、たまにシンミリとする《人情噺》や、冷やっとする《怪談噺》を語りだすことがあっても、さほど深刻な内容にはならずに適当なところで切り上げてしまうもの、という先入観があって、本作についても、見始めたばかりの頃は、《落語》を題材にした作品ということで、幾らかシリアスな展開があるとしても一定の限度があるのだろう、とばかり思ってました。

ところが、第3話で初めて映像付きで流されるOP「薄ら氷心中(うすらひしんじゅう)」を見て、その曲調や歌詞の醸し出す雰囲気が、自分のそれまで持っていた本作のイメージと大きくズレていて、ことにその映像中の女性の描かれ方が、「心中」を示唆する歌詞とともに半端ない違和感を喚起して、本作の主要キャラクターの一人が、「助六」という落語よりは歌舞伎由来の名前であることと併せて、視聴を進めながら不穏な気持ちになってしまいました。

そして、物語に大きな動き({netabare}※助六が師匠から破門され、みよ吉は菊さんから捨てられてしまう{/netabare})があった第9話の真ん中ほどで、{netabare}失意のまま桜咲く河原を一人歩く助六に、同じく傷心のみよ吉が初めて自分から声をかけるシーン{/netabare}が来て・・・

{netabare}「ねえ、お花見は花川戸に限るわね。・・・・花川戸の助六さんね。」
「あたし、菊さんに振られちゃった。」
「何かあったの?話、聞いてあげる。」{/netabare}

ここにでてくる「花川戸(はなかわど)」は東京都台東区の浅草寺境内と隅田川の間に今もある地名で、とくに花川戸公園は桜のちょっとした名所になっているそうです。
だけど、ここで注目すべきは、{netabare}みよ吉が、わざわざ「花川戸の助六さん」と声をかけたこと{/netabare}で、引用が長くなりますが・・・

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◎助六(wikipedia)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A9%E5%85%AD

『助六』(すけろく)は、歌舞伎の演目の一つの通称。
本外題は主役の助六を務める役者によって変わる。
江戸の古典歌舞伎を代表する演目のひとつ。
「粋」を具現化した洗練された江戸文化の極致として後々まで日本文化に決定的な影響を与えた。
歌舞伎宗家市川團十郎家のお家芸である歌舞伎十八番の一つで、その中でも特に上演回数が多く、また上演すれば必ず大入りになるという人気演目である。
(※以下、省略)

◎すけろく【助六】(旺文社古語辞典)

〔人名〕「助六劇」の主人公。
江戸中期、京都で男伊達(おとこだて)万屋(よろずや)助六と島原の遊女揚巻(あげまき)が心中した事件は、上方(かみがた)では「京介六心中」「助六心中紙子(かみこ)姿」など、歌舞伎(かぶき)・浄瑠璃(じょうるり)の「助六心中物」に仕立てられた。
これが江戸に移され「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」などの「助六劇」として定着した。
江戸では主人公は花川戸助六という侠客(きょうかく)(実は曾我五郎(そがごろう))とされ、江戸っ子の代表として理想化された。

◎すけろく-しんじゅう【助六心中】(精選版日本国語大辞典)

(1) 宝永年間(1704-11)初年に大阪であった万屋助六と島原の遊女揚巻との心中事件。
(2) (1)を脚色した浄瑠璃「紙子仕立両面鑑(かみこじたてりょうめんかがみ)」、歌舞伎脚本「助六心中紙子姿」、一中節(※浄瑠璃節の一流派)「万屋助六道行」などの通称。

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・・・ここまで来て、ようやくOP「薄ら氷心中」のおどろおどろしい曲調・歌詞・映像に合点がいきました。
この後、{netabare}傷心の二人は同棲を始めて、もろともに転落していく{/netabare}のですが、その結末は既にここで暗示されていますね。

以上から、本作は《落語家》の世界を作品舞台としながらも、実際には、《落語》の「滑稽噺」「人情噺」「怪談噺」ではなく、《歌舞伎》の「心中もの」をモチーフとするストーリーを展開させている、という構成になっており、それによって、

(1) 表面上は、「滑稽さ」「人情噺っぽさ」を上手く醸し出しつつも、
(2) その基底部分に、どうにも逃れられない「悲劇性」を潜ませる。

という、両様の魅力を作品に与えることに成功しているように私には感じられました。


現在放送中の第2期にも大いに期待したいと思います。

※2018.8.22 第2期のレビュー投稿。
事前に期待していたほどの出来ではなかったけど、第1期の後日譚としてまずまず楽しめる内容でした(個人評価 ★ 4.1)。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 36

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

大人が酔える本物の味わい深さ

第17回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優­秀賞受賞。
第38回「講談社漫画賞」一般部門受賞。

と、原作漫画が高く評価されているアニメ化作品だが、
これはアニメ化大成功、と言える素晴らしい作品になったと思う。

どうしても、漫画では落語そのものの臨場感や空気感を伝えるのには限界があると思われるが、
(読み手の想像力次第で悪い方向へは行かないと思う)
アニメ化して中途半端なものを作ってしまうと、世界観をぶっ壊してしまう恐れもあるなか、
製作陣の気合いの入りよう、原作へのリスペクトが伝わってくる見事な仕上がりで、
大人だからこそ楽しめる、このような作品が世に出てきたことは非常に喜ばしい。

物語が楽しめるかどうかは、観る人間の年齢や好みによって異なるかもしれないが、
純粋にアニメとしてのクオリティは、全ての要素が高い次元で纏まっているし、
また全13話、1話たりとも退屈しなかった。
これは年に何本もある秀作レベルではなく、素直に傑作と言ってしまっても差し支えない作品だと思う。

自分はこの作品を40代や50代の一般人にも自信を持って薦めることができるが、
大人が観て本当に満足できる「質」と「深み」「味わい」を備えた作品は、
ここ数年の「深夜アニメ」では「蟲師」(続章)以来かも知れないと感じた。
2期で物語が完結するだろうということを考慮すると早計かもしれないが、
いずれにせよ、恐らく原作同様「文化庁メディア芸術祭」のアニメ部門でも認められるだろうと確信している。


☆物語☆

タイトル通り、内容は「落語」そのものも見どころの一つだが、
たとえ落語に興味が無くても(正直自分は落語そのものには大して興味はない)
登場人物たちの深い人間ドラマには非常に引き込まれる。

尺を拡大して放送された1話は現在を描いているものの、
(1話の掴みは今期の作品の中でもベストだと思うし、最終話観てからまた観直すとより感動的)
終盤まで主に八雲の過去の回想がメインに描かれている。

菊比古(八雲)と助六、みよ吉との関係は一言では語れない、様々な感情が渦巻いており、
3人共に人間らしい過ちを犯していて、またそれぞれに同情も出来るものであり、
本当に深く絡み合った人間模様が描かれていると思う。

また一方で、八雲と小夏の間にある因縁、八雲(師匠)と助六、
八雲と与太郎の数奇な運命の巡り合わせ、とは...
これは是非本編をご覧頂きたい。

また、各キャラがここぞという場面で、
非常に含蓄のある言葉を語っているので、そこにも注目して貰いたい。

この作品に関しては、あまりネタバレで、あーだこーだと書いてしまうと無粋な気がするので、
(最初は色々書いてたんだけど)
とにかく登場人物達と落語を巡る「想い」「運命」「宿命」「因縁」を観て、
それぞれの立場と心情を慮ってもらいたいと思う。

物語が完結してないし、点数は4.75、ってのがあると良いんだけど、
まぁそんなに出し惜しみしてもしゃぁないし、物語の作り方、設定にはほぼ不満がないので、5点。


☆声優☆

MBSで放送していた「アニマゲ」の中で、この作品を特集していたのを観たが、
一風変わったオーディションで選ばれた声優さんたちは、結果的に落語に造詣のある面々で、
声優としての実力も折り紙つきの精鋭が揃っていて、演技自体も当然素晴らしい。
そして、驚くべきことに、落語の部分も通常のアフレコで録ってるらしい。。

正直ここまで純粋に声優陣の「技量そのもの」が試された作品というのは、
近年でも、というか、アニメ史上でも稀なんじゃないだろうか。
「質」を求めるアニメファンなら声優陣の演技だけでも、
この作品を観る価値は充分にあると思う。

1話の与太郎、後半10話の菊比古、11話の菊比古と助六のコラボ、
12話の助六の想いの込もった熱演には感銘を受けた。
また、2週目繰り返して観てみると、弟子入りした当初のパッとしない落語から、
上達し味が出てくる落語の変化も巧みに演じ分けられていることに気付く。

初見ではあまり何とも思わなかった回の落語も、2回目の視聴では惹きこまれて観ることが出来た、
というのも不思議な感覚だった。。
落語の部分の演技ばかりに注目しがちだが、5話の芝居の場面の演技も実に艶があり見事。

また、みよ吉演じる林原めぐみさんの、円熟味を感じさせる「女」の演技も実に巧い。
これは声のトーンや表現力も含めて、若手の声優には到底演じれない役回りでしょうね。

一聴して判る小林ゆうさんの低音ハスキーボイスは幼女役でも炸裂しており、
正直こんな声の子供居るかよ笑、と思いつつも実に可愛らしく演じられていた。

脇役的な役どころの八雲(師匠)と松田さんの演技も、実に渋く味わいがある。

点数は文句なしに5点、というか今後なかなか5点を付けにくくなった。。


☆キャラ☆

各キャラクターの心情が非常に丁寧かつ繊細に描かれていて引き込まれる。

八雲(菊比古)と助六の対照的な落語への動機、性格が印象的で、
2人の関係性など、きめ細やかな描かれ方は女性作家ならではだなと感じた。
(BL臭が全くしないと言えば嘘になるが、腐女子を引き込むほどのものではないだろう)

最初に出てきた小夏の出番が少なくもの足りないなと思っていたら、
後半に幼女で登場、これが何とも愛らしい。

また、みよ吉のようなキャラは昨今のアニメでは極めて珍しいが、
ラノベ作家なんかが描くリアリティの欠片もない女性キャラとは違い、
(それはそれで良い面もあるんだが)
女性作家だからこそ描ける、「生身の女性らしさ」、愛憎渦巻く内面が非常に良く伝わってくる。

一見すればどうしようもないアバズレだが、
彼女の置かれた境遇、あの時代の女性の立場を考えると、
過ちを犯していることや性格に問題があるとはいえ、自分は彼女にも同情することが出来る。

また八雲(師匠)の背負った名跡の重圧、助六を巡る因縁や後悔、
昔気質な性格も非常に上手く描かれていると思う。

全てのキャラに言えることだが、やはり声優の演技あってのキャラ、
と言うのはこのアニメに限ったことではないが、本作を観て改めて思い知らされた感がある。

点数は5点。自分はキャラの性格が好きか嫌いか、は点数の判断基準には無くて、
そのキャラの掘り下げ具合、心理面がどれだけきっちりと描かれているか、を見ている。
本作でのキャラの描かれ方は非常に丁寧で、観ているこちら側にまで伝わってくる。


☆作画☆

最近の作品は技術の進歩もあり、
デジタルでも非常に凝った手描きのような質感を持った背景描写のものが増えてきた感があるが、
本作でも昭和の空気感や雰囲気をよく伝えるものとなっており、趣があり味わい深い。

またキャラに関しては、落語を演じている場面や、それ以外でも細やかな表情の変化やしぐさなど、
かなり丁寧に描かれていて、作画力があるからこそ、キャラの内面や落語の魅力が伝わってくるのが実感できる。

派手な動きやCGなどは殆ど無く、純粋な作画枚数的にはそこまで多くはないと思うが、
キャラが全話通して巧く描かれているので、自分は全く不満は感じない。

普段付けてる点数から言うと4.25くらいにしたいところだけど、無いのでおまけで4.5。

※やっぱり付けすぎかな、と思ったので4点に直しました。


☆音楽☆

椎名林檎作編曲、林原めぐみが歌うOPは本作の大人な雰囲気にピッタリで、
ハイセンスで個性溢れる楽曲はいかにも「らしさ」がよく出ていて、改めて凄い才能だなと実感した。。

また、歌詞に着目すると、これはみよ吉の菊比古を想う心の内をこれ以上ない、
と言うほど見事に表現しており(もはや狂気を感じる、女の怖さや情念に心を打たれる)、
これは単なるタイアップ曲を越えたアニソンとして、非常に高く評価されるべきものだろう。

それに対するEDはノスタルジーとロマンを感じる、
まるで映画一本観終わった後のような、味わい深さと余韻に浸れる見事なインスト曲でこちらも絶品。

作中BGMは「生音」への拘りが半端なく感じられ、楽器そのものの魅力が存分に伝わってくるもので、
バリエーション自体も非常に多彩で、クオリティの高さに疑いの余地はない。
これは通常のTVアニメと比べると、かなりの予算が掛かっているだろう。

点数は文句なしに5点。


最終話は回想から時間が現在に戻り(1話より時間は進んでいるが)、
終わり方がちょっとこれで終わるには勿体無いな、と思ったところ、
本編後の最後に2期制作決定が明らかになり、既に続編を作り始めているように見受けられたので、
今後には大いに期待したいと思うし、楽しみが増えた。
(予め2期、というか分割はある程度は既定路線だったのかもしれない)

本作はアニメーター自身が観て楽しめる、
本当に自分達が純粋に作りたいものを作った、そんな情熱と新たな挑戦、拘りが実感できる作品だと思うが、
このような作風のものは、今の時代そうそう売れるものじゃない。

商業的な理由で特定の円盤購入層に受けるような、似たようなアニメばかりが量産される昨今、
敢えて大人が観て楽しめる、この作品を「深夜枠」でアニメ化したスタジオディーンには本当に感謝したいと思う。
(NHK辺りが率先して予算を出し制作してもおかしくない内容だと思う)

同時期にディーン制作の「霊剣山」「このすば」と比較すると、どれに力を入れて作っているか、
は火を見るよりも明らかだが、「霊剣山」が中国でのネット配信権で利益をもたらし、
「このすば」が低予算で円盤売上好調、結果的には本作が円盤売れなくても制作費回収できて2期決定、
という流れだとすれば、これは大いに歓迎すべきことではあるが、
同時にかなりの皮肉だといえるかもしれない。。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 21
ネタバレ

アレク さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

落語って、笑いって

時は昭和50年頃八代目有楽亭八雲に弟子入り志願のムショ上がり与太郎から物語は始まり落語とそれに関わる
人達が織りなす漫画原作作品。

一時期寝る前に落語を聞くことが習慣になってたくらいで(飽きてすぐやめちゃいましたが)
落語の知識はほとんど、いや全くないんですがそんなまっさらな状態だからこそ
落語の魅力というのが変な先入観なしで見れたような気がして無知が逆に功を奏することもあるようですね(^^;)

それに加えてこのアニメからは抽象的物言いで恐縮ですが日本的、和的良さというか価値観が
全編から漂ってくる感じで同じ日本人の自分としても見ている間心地いい時間でした。

{netabare}
落語は舞台で座布団に座りながら務めるため所作が限定される、そのうえ漫才のように掛け合いで
空白の時間をつぶすこともできない、しかしそんな制約が逆に工夫する余地となり扇子や手の動き
果ては目つきに至るまで様々な人物を自分に憑依させ掛け合いができない不利も「間」として有効活用し
一幕の劇を創り上げる、そんな自分なりに感じた落語の魅力というものが落語の演目の最中に
登場人物ごとに変わるカット割りやBGMなどの演出的工夫から感じたし
さらに演目を何度も練習していく中でにじみ出るその人独自の芸
同じ演目でもやる人によって独自の魅力が醸し出される再現芸術の醍醐味みたいなのが
何気ない会話に織り込まれていてうなずきながら共感しながら
1話からガッツリ引き込まれていきました。

そんな1話で一番印象に残ったのは与太郎の落語のシーン、題目は「出来心」
さっき書いた演出に加えて舞台前の緊張が、首筋に流れる汗が
無意識に身を乗り出す与太郎の懸命さがノリノリの演出と合わさって
そんな細工って落語好きの方から言わせると邪道なのかもですが
落語ってこんな面白いんだぜといわんばかりの演出は見ていてとても楽しかったです。
さらにそんな与太郎の噺を何度も稽古する姿を見たであろう小夏が気が気でなく見守る様子
下らねぇなんてて軽蔑していたが思わず笑っちまう兄貴
同じ演目でも見る人によって感じ方が違う
与太郎に関わりがある2人ならなおさらですが
観る人の心境によっても同じ演目でも感じ方に個人差がある
ここでも再現芸術の面白み、不思議さが出ていてそれをちょっとした
言動に織り込まれ匂わせてくれる演出の粋さ
このアニメの世界観、好きだなぁ。

そこから話は変わり菊比古の回想になるわけですが
辛苦をなめた満州の慰問を経て他人のために落語をやると決めた助六、
おまえはどうなんだと菊比古に問うが
彼は演目の最中自分のために落語をやっていたと自覚する。

お客とともに盛り上がりライブ感を前面に押し出す助六と完成された領域に客を招き
酔わせる菊との芸の違いがそのまま二人の生き方を分ける、稽古を重ね演目を
自家薬籠中していく過程でその人の個性と不可分に結びつきその人だけの芸となる
ここでも落語というか再現芸術全般の面白さがさりげなく描写されてますが
それよりも強く感じたのは2人の道の分け方が実に自然といいますかどちらを
肯定するわけでも否定するわけでもなく共存している、そんな曖昧さというか自然さを素直に
抵抗なく受け入れてる自分も日本人なんだなぁとしみじみ自覚してしまうわけで・・・

そしてそんなことを思わせてくれる押しつけがましくないが
さりげない言い回しや行動で感じる義理人情の世界観を演出するスタッフの手腕
いやはや脱帽です。ただ舞台が戦前、戦後で落語が主題だから、道具や食べ物が和風のものだから
日本的に感じるというわけでなくそれもあるが古き良き義理人情、白黒つけない曖昧さが美徳の
価値観がこのアニメ全篇から感じられるようでそんなところから和的麗しさを感じるわけで。

師匠の愛人をやっておきながら弟子に色目を使うみよ吉の身勝手さもこの作品にかかれば
この上なく洒脱で粋、普通こういった恋の駆け引きって自分はこざかしさを感じてしまうんですが
声優さんの演技に裏打ちされた嬌態たっぷりに科を作る姿態は何とも妖艶。

特に印象に残ったのは別れ話のシーン
黄昏時、秋風が吹きみよ吉に気付いていながら
素通りしようとする菊比古から始まり互いに決定的な言葉は口にしないが
察しておくれといわんばかりの菊、いやよとみよ吉、
本人たちにとってはそれどころじゃないと思うし物見遊山気分で恐縮ですが
散り際に感じる日本的美意識が魅せる一瞬の抒情は例えようもなく婉美。


菊比古の心理をひるがえって考えればいよいよ師匠にも認められてこれからだというとき
結局色恋より仕事、芸を取ったという事で
森鴎外の小説にありそうな結構ドライな話なんですがこのアニメのフィルターを通すと
ため息が出るほど耽美的、その後のみよ吉が助六に愚痴る身の上話から顔を覗かせる
一抹の寂寥感、これも恋愛ゲームの駆け引きの一部なのか、いや、それすら心地いい
日本古来の萌たっぷり堪能させていただきましたm(__)m

しかしそんな曖昧さ、粋さを美徳とする世界でも必ずしもいいところばかりではなく
みよ吉や助六さらには幼少期の菊比古もそんなしがらみや暗黙の了解に割を食った代表であるわけで
みよ吉や助六は自業自得な部分がないわけではないが思わず同情しちまうのがこのアニメの世界観
声優の演技力に圧巻の助六決意の芝浜もみよ吉には届かず
2人の事故にも似た心中(いや逆か)で回想は幕を閉じるんですが見終わった後は
与太郎の言葉を借りると只々いい気分だったんですが冷静に振り返ると
いい出来事ばかりではなかったし結末もハッピーエンドとは行かなかったと思います。

ですが見終わった後の気分は不思議と心地いい、その理由を自分なり考えてみると
このアニメを見終わった後興味が出ていくつか古典落語を
ググってみたりしたわけでそんなことをやってたりこのアニメの作中で披露される演目を
振り返ってみて気付いたんですが登場人物が全員善人というわけでは
決してなくむしろあさましい欲望とかちょっとした出来心から
端を発しそこから展開する話が多く人間には善人の部分と悪人の部分がある
そんな清濁併せ持つしょうがない性分を持ち寄りながらなんとか日々寄り添いながら生きていく
そんな日々の生活を面白おかしく描写できた深い観察眼と心意気、それが人々の心を打ち
共感を呼び落語は時代を超え愛され続け今日まで伝統として残ってきたのかなーと
そしてそんな人々が織りなす人間模様がこの作品からもまざまざと感じられて
自分がこの作品に引き込まれた理由もそこら辺にあるのかなーと
思えば最初のほうは義理人情が前面に押し出されすぎ
与太郎がすぐ口座に上がれたりちょっと甘いんじゃないの、と思ったりしたのですが
弟子の雑務や辛いところをあえて映さない武士は食わねど高楊枝の精神だったのかもですね。
笑いの中に哀しみがある、いや哀しみを笑いに変える
チャップリンや松本人志さんを引き合いに出すまでもなく笑いの本質って案外そこら辺にあるのかなぁ
なんて自分がどや顔で指摘するまでもなく落語好き、お笑い好きの方にとっては
自明の理かもしれませんが、とにかくそんな自分にとって新しい発見をさせてくれるほどに
夢中になり引き込まれそして心地いい
作品でした。

最後に助六の名を継ぎたいと申し出た与太郎に見せた菊比古の狼狽の表情は
日陰に追いやられた3代にわたる怨念が過去から有楽亭八雲である自分に
追いついてきた恐怖かそれとも・・・

それでもそんな思いすら飲み込みながら今日も人の歴史は紡がれていく
ってこんなところで終わられちゃ続きが気になるに決まってるでしょう!
全然御後よろしくないよっ!ってことで二期はよ(/・ω・)/
{/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 43

68.8 4 ヒューマンドラマで友情なアニメランキング4位
宇宙のステルヴィア(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (306)
1669人が棚に入れました
西暦2167年、地球はみずへび座ベータ星の超新星爆発によって引き起こされた強力な電磁パルスと放射線によって壊滅的な打撃を受けた。だが人類はそこから見違えるほどの復興を遂げた。そして、かつての災厄より189年後に訪れるとわかっていた第2の災厄、すなわち超新星よりの衝撃波の到来に対し、全人類を挙げての防御体制を築き上げていったのである。
そして2356年。遂に衝撃波セカンドウェーブが太陽系に到達しようとしていたその年、人類の生活圏を守る大計画グレート・ミッションのため作られたファウンデーション(宇宙ステーション)の1つ「ステルヴィア」内の宇宙学園に主人公たちが入学するところから本作は始まる。


声優・キャラクター
野中藍、水島大宙、松岡由貴、折笠富美子、田中理恵、斎賀みつき、うえだゆうじ、陶山章央、広橋涼、豊口めぐみ、岸尾だいすけ、檜山修之、進藤尚美、藤原啓治、堀勝之祐、田中正彦、根谷美智子、屋良有作、小杉十郎太、笠原留美、朴璐美

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

心地よい余韻に浸れるアニメ…

はっきりとした色使いのアニメだなぁ…この作品の第1印象はこんな感じでした。
作画もキャラデザも嫌いじゃなかったこの作品の視聴を後押ししてくれたのが野中藍さんの初主演作品だった事です。
野中さんの愛称である「あいぽん」もこの作品の主人公である「しーぽん」が由来になっている事からもお互いに結びつきを強く感じます。

この作品の物語の舞台は西暦2356年…約189年前に地球はみずへび座ベータ星の超新星爆発によって壊滅的な打撃を受けました。
そしてその超新星爆発から189年後の今年…セカンドウェーブと呼ばれる衝撃波が太陽系に向かって到達しており、全人類は総出で未曾有の危機に対処を進めていたのです。

人類はセカンドウェーブに対処すべく宇宙ステーションの一つであるファウンデーションを建設していたのですが、この物語はそのファウンデーションの一つであるステルヴィアにある宇宙学園に新入学制が入学してくるところから始まります。

ここで入学してきた新入生の一人が片瀬志麻…通称しーぽんと呼ばれる女の子…
彼女は宇宙パイロットを夢見てこの学校に入学してきたのですが、最初のうちの成績はほぼ底辺…
それでも色んな人々との触れ合いの中から学び…知って…そして成長していく様が描かれています。

この作品…兎にも角にもしーぽんが輝いている作品だと思います。
顔は可愛らしいですが、スタイルは人並み…口数は多くないのですが時折テコでも自分の考えを曲げない頑固親父の様な一面を持っていて…
人に相談する事は決してなく口を開く時にはもう自分の中で決定している事を告げるだけ…
何より人に対して素直になれない意地っ張り…

こんな風に彼女の性格だけを列記すると、あまり良いところが見当たりません。
それでも彼女は輝いているんです…

それじゃ何が彼女をそんなに輝かせるのか…
それはいつも一生懸命頑張っているから…

必死で考えて…誰よりもたくさん計算して…
負けた時には悔しいといってポロポロ泣いて…
大切な人と同じ目線で物事を見るために歯を食いしばって頑張って…
有事の時には自分の事など厭わず身を挺する事のできる彼女…
そんな彼女の一生懸命に何度も胸を打たれて…何度も涙で前が見えなりました。

間違いなくしーぽんは良い子だと思います。
でもこの作品の良い子はしーぽんだけではありません。
しーぽんを取り巻く同じ予科生の仲間たち…
みんなの立ち位置が抜群なんです。

同じ予科生…という事は仲間であると同時にライバルでもある訳です。
特にこのステルヴィアでは成績の優秀な人とそうでない人との格差がどんどん開いていくんです。
優秀な人は学生であるにも関わらず大切なミッションに参加させて貰えるのですが、そんな選ばれる人間はほんの一握りだけ…
難しい授業にも厳しい訓練にも耐えられるのはそのほんの一握りになりたいから…

でも人って気付いてしまうんですよね…
どうしても越えられない壁がある事に…
どんなに頑張っても絶対追いつけない人がいるって事に…
もう心の中はグチャグチャです…

確かに予科生の仲間同士…全てが順風満帆ではありませんでした。
でもここで彼らはまた気付く事になるのです…
仲間の存在が何より大切である事に…

この作品で繰り返し使われた台詞も印象的でした。
「自分にできる事をやるだけ…」
「ここを次に世代に残すのは我々大人の役目…」
しっかりと見据えるべき物事が眼中に入った台詞だと思います。

この作品は2003年に放送されたものなので、もう14年も前の作品ですがそんな古さを微塵も感じさせない作品だたと思います。
SFというジャンルの好きな方…或いは好みの声優さんが出演されているなら是非チェックして頂きたい作品だと思います。

オープニングテーマは、「明日へのbrilliant road」
エンディングテーマは、「綺麗な夜空」「The end of the world」「Dear my best friend」
全てangelaさんが歌っています。
この作品のオープニングを始めて聴いた時、恰好良すぎて鳥肌が立っちゃいました。
挿入歌としても使用されているのですが、この曲が流れた途端テンションも上がりまくりでした。
絶対に覚えたい曲です。

2クール26話の作品でした。
物語としては綺麗に纏まっていたと思いますが続編があってもおかしくない
展開だったと思います。
この作品もしっかり堪能させて頂きました。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 15
ネタバレ

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

リトル アストロ アカデミア

22世紀半ば過ぎた頃、人類は太陽系に進出し、予測された超新星爆発による宇宙風に備える為「ファウンデーション」と呼ばれる宇宙ステーションを多数運用していた。
ファンデーションにはそこで働く職員を養成する為の学校があり、その予科生に進学した主人公と仲間たちのお話。
SF(風)設定の、学園もの、恋愛もの、成長もの、と言ったところです。
尚、戦争ものではありません。


結論から書くと、惜しい!
SF考証が甘い。学園ものとしても甘い。シナリオが甘ーい!!
企画として良かったのに詰め切れなかった印象です。

【SFとして】
「ファウンデーション」とかもろアシモフだし、全体にハインラインの「宇宙の戦士」にも似てますし、作者はSF好きなのかな?
にしては宇宙で起こる現象が全然リアリティがありません。
{netabare} まずおよそ200年前(丁度現代ごろ)超新星爆発による宇宙線で地球は壊滅的な影響を受けたんだそうで、そこから予測された第2波に備えるのが前半の話なんですが、第2波は宇宙線のみならず、物理的に隕石も多数飛来するそうです。
まず超新星爆発したのがどの星なのか言及ありませんが、太陽に最も近い恒星アルファ・ケンタウリですら、近いと言っても4光年離れています。
そこから何かが放射されてこの密度で降り注ぐって…有り得ないですよね。

第2波処理の「グレートミッション」を概ね計画通り成功させたファウンデーションですが、今度は土星付近に謎の脅威が現れこれが後半のストーリーとなりますが、これが科学考証が全っ然で、対処として一体何をやっているのかが全く分からないので入り込めないんです。

クラークの名著「宇宙の旅」シリーズは科学現象としての宇宙航海と、未知の脅威への対処を楽しむ作品ですが、それは科学的に合理的だから読んでいて楽しいんです。

「ステルヴィア」はそこの所全然及びません。
結局謎の宇宙蝉の正体も不明なままですし、
子供騙しのオカルト現象を描いているだけです。 {/netabare}

まあシンプルに「SFビッグ3」に迫る力量あるアニメ作家などそうそう居ないって事なんでしょうね。残念ながら。


【学園ものとして】
前半はまぁまぁ良かったが全体としてまず凡庸。
それからミッションに私情を持ち込むな!(笑)
{netabare}後半は酷いもんです。
主人公女子と彼氏くんに人類の存亡がかかりますが、そんなストーリーにしなくても良かったと思うんです。
正直地球人類のトップ2がコレかよ!と嘆きたくなります。
2人とも個人の悩みで任務に支障を来しています。
結果的に乗り越えたし、そういう成長ものなんでしょうが、高校生と言うより小学生みたいでした。
話し合おうとするたんびに「もうほっといて!」とか言いながら走り去るの何回やるねん。
ガンダムもそうですが、お子様に人類の命運背負わすのやめて欲しい。
{/netabare}

キャラ評価4にしましたが、これは実際居そうな深みのあるキャラを多数配置してくれた事への評価で、正直ウザキャラが多めでした。


訓練生が成り行きで活躍しちゃう似たストーリーに「ストラトス4」がありますが、そちらの方が成り行きに説得力がありますし、活躍の度合いや任務に注ぐ情熱の点で見応えがあります。
キャラもサバサバしてて魅力的ですし、ビジュアルも迫力ありました。
まだでしたらコレより先にそちらをお勧めします。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 3

ぽぽたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

旧作の魅力を話したい(長文)

野中藍さんの出世作
舌足らずな独特な声は幼さのなかに芯がありますよね
あいぽん演じる片瀬志麻とその仲間たちが、助け合いときにぶつかって
宇宙規模の災害にむかっていく壮大なストーリーでした

今後視聴される方のために
舞台設定についてかみくだいて記します

地球圏からはるか遠くで星が爆発。
その爆発衝撃波が地球に到達して過去に壊滅的被害をもたらします
しかしこの災害はおわっておらず
爆発の第2波がくることが観測されており
対策として地球圏にバリアを建設しております
そのバリアのメンテナンスや、バリア通過した隕石の回収をする人材育成施設が
ファウンデーションと呼ばれる宇宙ステーションにあるんです

ステルヴィアとは第2ファウンデーションのなまえです。
西暦2356年のお話なのですが途方もない未来というより
生活の描写からごくごく先の未来の物語の印象をうけます。

では見所について語ります
まずはキャラクターの魅力
脇役が光る作品です。名作とされる条件は脇役が個性的であること
脇役の心理描写がしっかりなされていることが必須かなって考えております

主人公志麻の親友4にん
志麻の理解者であり、ステルヴィア入所から一緒のアリサ
ほんわかした人柄ながらくらい影のあるやよい
ツンデレ担当優等生ながら努力の人晶

ふだんは仲良くたわむれているんですが心に秘める
「嫉妬」「焦り」「不安」「孤独感」などがしっかり描写されています
高まった感情をぶつけあって喧嘩に発展することもありますが
罵りあえる仲間こそ本物の仲間であろうし
そして彼女たちのわだかまりが解消されて
真のともだちになって行く姿に感動を覚えます

学生を見守る側である教官のおとなたちも味があります
大人が重要な役どころである点はポイント高いです
やるときはやるって大人らしい姿にしびれます
子供しかでないアニメだとどうしても出せない味ってありますよね

ストーリーの魅力
登場人物が同じ目的にむかっていますので
一本道なシナリオで破綻がないんです
主題としてあるのが少女達の成長を描くことでありますので
別の方向をみていた子たちの心が一つになってく過程が
ストーリーをなぞりながら伝わってきます
結末をうやむやに終わらせず納得のできる〆かたにしたのも
気持ちよいですね

ものたりない点
①キャラデザは正直太いな・・・って肉感的ともいえるのでしょうか
丸顔で首もふとい。萌え絵の部類ですが
SFアニメなので、求めるところが違うんでしょうか

②最大の見せ場で迫力に欠ける
史上最悪の災害に立ち向かう過程の描きかたは手にあせにぎるんです
確実性にかける高出力レーザーに最後をたくして
それを発射。
まっすぐ飛んでいって
命中。消滅

こういうシーンって一回回想いれたり
お願いって祈ったりしてたりするメインキャラのカットとか普通
いれませんか?
だらだらひっぱるのもどうかと思いますが
あっけないのもさみしいのです。

投稿 : 2024/07/06
♥ : 7

72.2 5 ヒューマンドラマで友情なアニメランキング5位
茄子 アンダルシアの夏(アニメ映画)

2003年7月26日
★★★★☆ 3.9 (190)
944人が棚に入れました
『茄子 アンダルシアの夏』(なす アンダルシアのなつ)とは黒田硫黄の漫画『茄子』の短編『アンダルシアの夏』を原作として2003年に公開された上映時間47分のアニメーション映画。
【ストーリー】スペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャを舞台に主人公ペペ・ベネンヘリが解雇の危機に直面しながらなおかつ、かつての恋人と兄の結婚という複雑な思いの中にあってもプロ自転車選手として「仕事」に取り組むさまを描く。

声優・キャラクター
大泉洋、小池栄子、平野稔、岡田吉弘、平田広明、坂口芳貞、羽鳥慎一、市川雅敏、筧利夫
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

本格的なロードレースを軸に語られる、男の生き様とは。

2003年、劇場公開。
上映時間47分。


【前置き】

本作は、レンタルショップでは決まってスタジオジブリ作品の棚に収められていますが、制作は「マッドハウス」であり、ジブリは一切関係ありません。
私は、最近まで勘違いしておりました。
制作委員会に、ジブリに関与する企業が多いことが関係しているそうです。

加えて、監督の高坂希太郎さんは『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』等のジブリ作品で作画監督を務めた方で、本映画の原作漫画「茄子」も宮﨑駿監督本人から推されて見たという逸話があります。
もう、同じ棚に置いちゃえってのも、分からなくもないですね。


自転車を題材にしたアニメ「弱虫ペダル」を見始めて半年以上。
思い返すと、そのずっと昔から見てみたいけど機会がなく後回しにしていたのが、同じく自転車を題材にした本作「茄子 アンダルシアの夏」でした。

本格的なロードレースを描いていると聞いていたので結構な期待をしながらの視聴でしたが、その気持ちには応えてくれたかな、と思います。



【あらすじ】

舞台は、スペインの「ブエルタ・ア・エスパーニャ」と呼ばれる、ヨーロッパの3大自転車ロードレース。
本作は、それに出場する主人公、スペイン・アンダルシア州出身の『ペペ』の葛藤と生き様を描いた作品となっています。

この主人公ペペは、プロのロードレーサーとしてスポンサーを抱えて「仕事」に取り組む傍らで、同日に開かれる昔の恋人と実兄の結婚に、複雑な気持ちを抱えていました。


【論じてみる】
{netabare}
47分という短い時間の中で描かれたのは、ロードレースを通しての人間でした。
「人間がロードレースをしているところを描く」
というより、
「ロードレースをしている人間を描く」
と言えばいいのでしょうか。
勿論、ロードレースの内容自体も、かなり本格的だったのですけど。


ペペの葛藤とは裏腹に、結婚式に参加する皆はペペの試合模様が気になっていました。
新郎新婦も、それは例外ではありません。

ペダルをこぐペペも今や、その兄達と後腐れがあるわけじゃない。
仲が悪いわけでもない。
ただ、今の自分は、自分なりに精一杯走り続けるのみ。

現場をよそに結果のみでしか判断しないスポンサーをなだめながらも、監督はペペに

「スポンサー様に、プロのレースを教えて差し上げろ。」

と激励を送ってくれます。
それに対し、ペペはその心に秘めた意志を吐露するのでした。


『監督、アンタに教えてやりてぇ。

 プロってのは、仕事以上のことをやっちまうヤツだって。

 そうでなきゃ……そうでなくちゃ…

 産まれた土地から、出ていけないだろう。

 俺は遠くへ行きたいんだ!!』


…………う~ん。。。
やっぱりちょっと、引きずってもいたのでしょうね…。

声優を務めたのは俳優の大泉洋なさんですが、この方の声はどの作品でも安定して上手いですね。
(あくまで俳優としては…で、本業の方とは比べられませんけど。)
{/netabare}


【ロードレース】
{netabare}
本作のロードレースは、2ペアのチーム戦。
作中で繰り広げられた戦略や駆け引き、抑揚する車体の作画は、見応え抜群でしたね。

元々、ペペはエースを引っ張るアシスト選手である為、集団から先を走ることで追う選手を引き連れて、小さな集団を形成する戦略を立てます。
これは、最終的にエースを勝利させるため、先のその小さな集団のペースを更に上げて、集団内のライバルをふるい落とすことが目的だったりするんですね。

全く無知の頃は、体力だけがモノを言うスポーツかと思いきや…、いやはや…なんという騙し合い。
奥が深くて面白いですね。


しかし、先を走っていたその集団からペペが脅威でないことがバレ、2回目の先走りには付いてくる選手は誰もおらず。
ペペは、独断での走行を余儀なくされるのです。

後続に戻れば、もうそこから先に出る体力はない。
しかしそれは、灼熱の中で風除けもおらず一人体力を減らす、レースでは自殺行為とも言える無茶な走行となりました。

そんな中、エースが不慮の落車でリタイアとなり、ペペはアシストする相手すら奪われるのです。

監督は、この状況を打開する唯一の手段として、ペペに苦渋の決断を言い渡すのでした。

「そのまま逃げ切り、勝ちに行け!」

と………。


途中に入る実況は、まるで自分が実際のロードレースをテレビ越しに見ているかのような生々しさで、レースの臨場感を飛躍的に高めていたように思います。

ただ、その冷静な分析は

「コイツ!、少しはペペの気持ちも組んでやれよ!」

なんて気持ちにもさせられましたけど。

こう思った瞬間、

「あぁ、ボクは今…この作品を楽しんで見ているんだなぁ。」

と実感しました。
{/netabare}


【総評】

スペインの情緒あふれる情景を存分に描きながらも、自転車競技に向き合う一人の人間がしっかりと描かれた良作となっておりました。
ただ、前提として47分で魅せる作品なので、大作と比べたり過度な期待も禁物ですが。

自転車の動きについても、風を受け流すようにと集団がウェーブのようになる並行運転や、僅差を詰める為にギリギリのコースラインを抉るように走る様など、絵としてもしっかり魅せてくれました。
そして最後の最後、「諦めたら終わり」の根性のスプリント勝負は、やっぱり一番熱くさせてくれました。

続編のOVA「茄子 スーツケースの渡り鳥」も、またの機会に見てみようと思います。

ではでは、読んでいてありがとうございました。


◆一番好きなキャラクター◆
『ペペ・ベネンヘリ』声 - 大泉洋さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『メグロ(黒猫)』声 - 猫さん


以下、「おなら」について。(どーでもいい話なので、〆ます。)
{netabare}
作中、ドーピング検査の為、検査員の前で尿検査を行うシーンがあるのですが、

主人公ペペは、そっちより先に後ろから放屁し、検査員を巻き込んで変な空気を作り上げておりました。


この時の屁の音は、実にリアリティがありましたね。

尿の時のヤツは毎度、甲高く小奇麗な音色を奏でるものです。


たまにお尻が、力みor緩み過ぎて、本命が顔を出す場合も……。。。


あの時ほど、自分が人間のクズだと思った時はありません。
{/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 32
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

少しおっさんの味

ふといつも映画をレンタルする場所で、この水彩画チックなこのタイトルが目に付き視聴。

物語は、自転車ロードレースのプロレーサーとなって世界を飛び回っているペペが、地元で開かれる「ブエルタ・エスパーニャ」という大会に出場する折、ペペの兄アンヘルの結婚式が地元で催されており、結婚式の打ち上げ会でペペを応援します。

まず、所感ですが・・・
多分、わかる年齢なら噛み締めるように頷けるようなものなのだろうけど、
私には少し早かった。
私もわかるようになりたいなあ、とちょっと憧れてしまう、そういう大人の、もといおっさん向けの作品です。
{netabare}
では、なぜそんな感想になるのでしょう。
まず、導入で、ペペの友人であるフランキーが登場します。
エルナンデスとの会話で、フランキーは独り言のように答えます。
「俺の夢はアイツに託したんだ」
物語中盤からわかるのですが、ペペは村を出たいと思っていました。
「プロ仕事以上の事をしちまうのがプロだって。でなくちゃ そうでなくちゃ 生まれた土地から出て行くことは出来ないんだ 俺は遠くに行きたいんだ」
フランキーは、夢はあったけれども、外の世界に出られなくて、地元から離れられなかった。夢を諦めた。
だからこそ、フランキーは外に出られたペペに夢を託す。
フランキーとペペの関係は、夢を諦めた人、縛られた世界から外に出ようと必死にもがいた人ほど二人の関係性が味わい深く感じられるような、情熱と諦めを秘めた関係なのです。
これは、渋い・・・


次に、ペペの故郷(ふるさと)への帰郷。
プロのレーサー、一人前になったペペは、仕事で地元に「来た」だけです。
そんなペペを、地元の村の皆は応援してくれる。
偏屈なエルナンデスの店で、アンヘルの結婚式の打ち上げで。
地元の名産の茄子漬けと、それによく会うビールを飲んで。
エルナンデスは村を愛するがゆえに、外に出て行ったペペを毛嫌いしていル風に装ってますが、いざレースが始まれば、誰よりもペペを応援する声が大きい。
エルナンデスが地元を愛する心と、ペペを応援する心は反発しあうものでしょうか。
夕日の中、レース後のストレッチで走るペペを見ながら、エルナンデスはアンダルシアの歌を歌います。
「君を待つよ、何もない故郷 アンダルシア」
この曲はふるさとを離れた、外に出て行った人の事を思うふるさとを愛する人の曲です。
故郷に残った人と、故郷を離れた人。
たとえ故郷がやせ細った土地であったとしても、私は故郷を愛しているし、
例えば、良く子供の頃から付き合っていた君が故郷から離れても、
君が帰ってくることをいつでも待っているよ。
とそんな風に受け止めました。故郷を愛する心と、故郷を捨てた人を待つ心、それが同居している曲なのです。
む、胸が締め付けられる・・・

あの曲をエルナンデスがあの場面で歌うということは、いつでもペペの帰りを待っているということなのかもしれませんね。


そして、ペペと兄弟の話。
兄のアンヘルは結婚式の参列者に「俺の弟はプロレーサーなんだ」と言い、テレビに向かってみんなでペペを応援し始めます。
レースが進んでいくごとにペペとアンヘルの兄弟の昔話が進みます。
兄弟で競い合うように自転車を取り合い、青年になればロードレースで競い合い、そして恋人で競い合う。
そこには、この兄弟の変わらないありようを感じました。
自転車では弟がロードレーサーへの夢を掴み、兄はその夢を諦める。
恋人では兄が勝ち、弟は爆発させたいような、ふるさとを出て行きたい気持ちを募らせる。
兄は弟に自転車の夢ではの羨望を抱いていつつも、恋人ではやり返す。これで引き分けだなと、若かった時の事をおじさんに語るアンヘル。
それでいて、アンヘルはペペを敵視しているわけではなく、弟との自然なコミュニケーションとして、ペペと競い合うことを理解しています。

ペペの中には外に出たいと言う気持ちゆえに、故郷に反発する心がありました。
ですが、最後に故郷の味の茄子漬がホテルの夕食で出てきます。
チームのメンバーがナイフとフォークで食うのを見て
「しらねえのか?これは、こうやって食うのさ!あむ」
と地元の食い方を教えてやるペペ。
ペペは自分の中にあった故郷を肯定するようになった。
兵役中に兄に想い人をとられたあの夜の自分の「ここを出て行ってやる」という故郷にも向けられた悔しさ交じった心に、何かが雪解けたようなラストでした。
心地良すぎるラストでした・・・

EDに流れる忌野清志郎の曲も調子が良すぎて後腐れがなくて最高でした。



夢を諦めたこと、外に出て行きたいということ、そういった挫折や衝動を味わった夏を、大人になってから回想し、今を生きている人達を描いています。
そういった経験を整理できるほどの歳を重ねるほど、この作品の渋さがわかるんだろうなあと、憧れを持って締めさせて頂きます。
ラテンの楽曲に乗った情熱的でストイックなレース描写も含め、濃密な46分なので、とても良い作品です。 {/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 31
ネタバレ

ヲリノコトリ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

ジブリが自転車レースのルパン映画を作った感じ

【あらすじ】
自転車ロードレース、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に出場したチーム「パオパオ」のアシスト選手が過ごした1日。

【成分表】
笑い★☆☆☆☆ ゆる☆☆☆☆☆
恋愛★☆☆☆☆ 感動★★★★★
頭脳★★☆☆☆ 深い★★☆☆☆

【ジャンル】
自転車レース、スポーツ、感動、苦悩

【こういう人におすすめ】
自転車ロードレースの知識ある人、ジブリ作品をすべて見ているといいながらまだこれを見ていない人、弱虫ペダルで自転車を知り、「その次」を探している人。

【あにこれ評価(おおよそ)】
71.1点。「自転車乗り必見の隠れた名作」といった様子。

【個人的評価】
これでロードレースの存在を知り、弱ペダで知識を鍛えなおして再挑戦した結果、すごい作品だと知った。そしてしばらくyoutubeで本場の動画を漁ったりした。続編もあるよ。
『自分のお気に入り』

【他なんか書きたかったこと】
{netabare}  これ意外と知られていないんですかね?
 まだ観ていない方、ジブリ映画一本見逃してるくらいの感じですよ!
 45分映画なのでさらっと見れます。

 視覚的な雰囲気はジブリ映画、ルパン映画のそれであり、この作品の作画が肌に合わないという日本人はいないんじゃないかというくらい見慣れた雰囲気のアニメです。
 対して内容は、ジブリ映画やルパン映画とは毛色が全然違います。舞台はスペインの自転車ロードレース、ブエルタ・ア・エスパーニャで、レースの雰囲気や土地の風景、風習はかなり細部まで再現されています。相当の自転車バカたち(褒め言葉)にしか作れないアニメです。
 しかし、関係者が自転車バカすぎて、専門知識の説明がほとんどないため、自転車レースやスペインに関する知識がないとストーリーは所々ちんぷんかんぷんです。これを最初に観た時の、高校生の私はそうでした。
 私はその後、「弱虫ペダル」(アニメ・漫画)をみて自転車レースに関する知識を得ました。それからこの映画を見るとストーリーの細部が分かってさらに面白いです。
 さらにレースの内容より複雑なのが主人公の心境です。もはや複雑すぎて言語化できない心境でしょう。これに関しては直接観て感じ取ってください。

 私の知る範囲で、わかりにくい専門知識についていくつか補足します。にわかの知識なのでちょっと間違ってるかも。

・地面に書かれた文字
{netabare}  自転車レースでは、地面に白線で応援メッセージを書いて選手を鼓舞することがあります。venga(ベンガ)はスペイン語で”さあ!”などの相手を促す意味で使われ、「venga pepe」だと「それいけ!ぺぺ!」的な感じになります。
{/netabare}

・集団の方が速度が速いの?
{netabare}  基本的に自転車レースでは空気抵抗さえなければほとんど脚力をつかわないで進めるので、集団で走って、前の人の起こす風に乗って走る方が有利です。なので基本は、集団に先行して独走するより、できるだけ巨大な集団にいて足を休めていた方が終盤に有利になります。「足を休めることができる」=「無茶しても後で休憩できる」ということで、集団の方が体力温存できる上に速いです。 {/netabare}

・「お前ら少しは前を引け!追いつかれるぞ!」
{netabare}  自転車レースではチームが協力し、状況によっては別チームのメンバーも協力し合い、順番に風の抵抗を受ける先頭を走って速度を維持します。疲れたら後ろに下がり、別の人に先頭を任せるわけです。自分が楽しようとしてほかの人ばかりに先頭を任せると、その人たちが疲れてしまい、自分のいる集団のペースが落ちて自分の不利益になります。 {/netabare}

・「今日はなんとしてもギルモアに勝ってもらう」
{netabare}  以上を考慮して、チームの中で最終局面に強いエースを決め、その人には出来るだけ前を引かせないようにして体力を温存させる戦略が一般的です。そして逆に、チームの中で、優勝することを考えずエースを勝たせるために終盤までエースの前を走って引っ張ってあげる、アシストと呼ばれる選手が必要となるわけです。主人公ペペの役割がこれです。 {/netabare}

・「ゴールまであいつのお供は自殺行為っす」
{netabare}  集団をぶち抜いて超加速することをスプリントと言い、この能力には個人差があります。このアニメでは、先頭集団では赤ジャージのチョッチが最もスプリント力があるようです。しかし後方集団にいる黒ピンクのジャージのベザルという選手はそれよりさらにスプリント力のある選手のようです。こういうスプリント力のある選手と一緒にゴール前に来たのでは最後の超加速で勝てないわけですから、それまでに疲れさせるか、集団から置き去りにする必要があります。 {/netabare}

・続編に出てくる「アウター!?」
{netabare}  「アウター」は自転車の変速に関する用語で、インナーからアウターに変えるとペダルは重くなり、タイヤの回転数は上がります。急な坂道を登るなら普通はペダルを軽くするためにインナーを使います。 {/netabare} {/netabare}

投稿 : 2024/07/06
♥ : 28
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