ノイタミナで熱いなおすすめアニメランキング 6

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのノイタミナで熱いな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月18日の時点で一番のノイタミナで熱いなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.3 1 ノイタミナで熱いなアニメランキング1位
舟を編む(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (669)
2941人が棚に入れました
三浦しをんさんの小説「舟を編む」が原作。

玄武書房に勤める馬締光也(まじめ・みつや)が、辞書編集部で新しい辞書「大渡海」を編集することになる……というストーリー。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる学者、徐々に辞書に愛情を持ち始める“チャラ男”など個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、神谷浩史、坂本真綾、金尾哲夫、麦人、榊原良子、斎藤千和、日笠陽子
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

色盲の人に色という概念を伝えるにはどう説明したらいいと思いますか?

原作は三浦しをんさんの同名小説。2013年には実写映画化もされたそうです。

辞書の編纂者として抜擢された、生真面目かつ※1エキセントリックな印象の馬締光也(苗字はまじめと読む。そのままじゃないか‥!)と、その同僚で、いかにも世渡り上手な軽~い印象の西岡正志、二人青年を中心に描くお仕事の物語の様です。

耳に心地良い言葉と言うのは簡潔な表現である事が多いもの。アニメとか映画を見ている時に、台詞を聞き逃したり、見逃したりする時、そんな場面には必ずと言って良いほど、独白や会話の中に耳慣れない表現や珍しい単語が含まれるものです。

複雑に入り組んだ言葉の連なりにはそれを口にする人の個性や心情が如実に表れ、時として人物描写をより精彩のあるものとして際立たせますが、一方で不明瞭な表現と取られてしまう可能性を多分に含んでおり、視聴者にとっては優しく無い表現とも言えます。比べるべくもありませんが、それよりもずっと酷いのは、簡潔に表現出来る事柄を難解な言葉で表現するという行為で、これは不合理この上無く、またひどく滑稽なものです。

辞書を編纂するという行為は上記の真逆。言葉の持つ本来の意味、精髄をいかに簡潔な言葉で短くまとめるかに重点が置かれた作業と言えます。

誰が読んでも理解出来る文章を作るというのは簡単な様で難しいもので、誰々だったらどう解釈するのかな?とか、子供だったらどう思うのかな?とか‥、出来得る限り他者との隔てを無くす必要があります。自身を他者に投影するのではなく、他者を自身に投影しなければなりません。独り善がりの表現は禁物なのです。

ブリキ男は過去に知人から「※2色盲の人に色という概念を伝えるにはどう説明したらいいと思う?」と質問された事がありますが、難しい質問だなぁと思った後、ちょっと想像力を働かせて、色盲の人になったつもりで考えてみる事にしました。すると自然と視点は変わり、色という概念を形状や濃淡などの視覚的な認識の一種として広義に解釈する事によって、どうにか説明に至る事が出来たのです。皆さんは"色"をどういう言葉で説明しますか?

作中にて馬締さんが"右"という言葉に与えた定義、これも同様で、"箸を持つ手"や"心臓の無い方"では不十分。左利きの人にも、心臓が右にある人にも、万人に分かる"右"で無くてはなりません。彼の"右"に与えた明瞭な表現、お見事でした。本編にてご確認下され。
{netabare}
馬締さんの"右"の定義、良く考えたら宇宙空間とか他の天体上(系外惑星とか自転していない星とか)では通用しませんでした(汗)壁掛け時計を正面から見据えた時の3時(左なら9時)の方向という言葉で端的に表せますが、エレガントではないですね‥まぁ宇宙で"右"の項引く人なんて皆無でしょうが‥(笑)
{/netabare}
2話の感想とあれこれ
{netabare}
「大渡海」編纂の志、とても崇高なものですが‥優れた辞書があっても言葉の海をすいすいと渡れるのはその辞書を持っている人に限る‥。値段張りそうだし‥。今ではオンライン辞書もかなり役立つし、こういう辞書手に取る人は限られるのかも‥。タウンページの配布とか毎年いらないから、5~6年に1回でもいいから、税金使って各家庭に一冊ずつ国語辞典の配布して欲しいとか思ったりしました。

ちなみに私が今良く使っている国語辞典は「明鏡国語辞典[携帯版]」。2003年出版の定価3000円のやつですが、今だったら中古で何と200~300円程度で手に入る! 古いからってあなどれない、中々のスグレモノなのでオススメです。常にネットにアクセス出来る環境をもっていないので、割と重宝しています。

本はあれこれ読んでいるけど人付き合いの下手な私は、馬締さんに他人とは思えない様な親近感を抱きました。見守っていきたいと思います。
{/netabare}
3話の感想
{netabare}
どんな男だって、夜ベランダで突然女性と出くわしたらびっくりするだろうと思いますが、朝玄関先で会ってもあからさまにたじろぐとは、馬締さん、どういう学園生活を送っていたのだろう? ちょっと気になりました。何というか、好きな子にばったりと出くわした時の高校生並みの反応‥。

作中で描かれた様な一目惚れを推奨する描写は、私的には手放しでは賛同はしかねます。周囲の人達も馬締さんの恋愛に関して全肯定で、当然の様に応援するし‥。なんかサザエさんとか、ちびまる子ちゃんとか、大衆向けアニメで描かれがちな本質の良く見えない恋愛観を見ている様でした。‥本をたくさん読んでいる人って、人の事を良く観察する癖が付いたり、懐疑的になったりする事が多いから、もうちょっとユニークな価値観を持っているのでは? とか思いました‥。

松本先生の辞書編纂に対する姿勢。恋愛も含め、視野を広く持つ必要があるという意見には納得‥でも終幕のテロップの恋についての説明が微妙‥。

「人を好きになり、いつまでもそばにいたいと思う気もち」

"いつまでもそばにいたい"って、相手の事がある程度分かってくればそうなると思いますけど、知り合ったばかりの片思いの段階では、話したり、顔を合わせるのが恐かったり、逃げ出したい気持ちになる事だってあると思います。大雑把過ぎる印象を受けました。

わたしが恋の項を書くとしたら「主に異性に対して抱く病的な好意、または独占欲。」とします‥が、こんな冷たい言葉で綴られたら恋という文字が可愛そうですね(汗)
{/netabare}
4話の感想
{netabare}
今回は西岡さんの有能さが発揮されるお話。この人もまた馬締さんに負けじと劣らず仕事熱心な人でした。「大渡海」編纂中止を阻止すべく奔走します。初回の印象からはとても想像出来ない機転と行動力を見せてくれました。適材適所とは正にこの事。誰かに出来ない事を誰かがやる。そうやって上手いこと歯車が噛み合う様に、人間関係が絡み合ったら世の中もっと円滑に回るのに‥。理想的なチームの一端を見た様でした。

でも西岡さんのやった様な会社の利益に関わる独断専行をしたら、現実ではどうなるのだろう? 私には分かりません。作中の人物の台詞にある様に「ただでは済まない」事になったりして‥。

続く馬締さんと香具矢さんのデートのシーン、偶然と、半ば強引に引き合わされた二人ですが、言葉の分かる異性と会話出来るって事は嬉しい事ですよね‥。二人を応援したくなる周りの大人たちの気持ちも何となく分かってきました。(大人の癖に何を今更‥)

そしてお約束の最後のテロップ、今回は「漸進」でした。

「漸進」の「漸」の文字は水の流れを切って徐々に導き通す事を意味し、そこから「だんだん」とか「次第に」という意味に変わっていったそうです。

作中では「立ち止まらず、少しずつ進む事」とありますが、前回の「恋」に続いてかなり淡白な表現という印象‥。導き通すという所が欠けていますが流れる水のイメージは感じられるので無難な解釈なのかも知れません‥。

言葉の意味を端的に表現する事は辞書編纂において重要な事だとは思いますが、要約が過ぎて本質から外れた意味を持たせると、言葉の精度が落ちてしまう気がします。かと言って複雑過ぎると編纂者の主観が強くなってしまう‥馬締さんの様に活字に耽溺した者のみが持つ微妙なバランス感覚が必要な様です。

「鏡の国のアリス」に登場するハンプティ・ダンプティは、言葉に給料を払えば、その言葉に好きな意味を持たせる事が出来ると豪語していますが、そんな話も少しだけ思い出してしまいました。

※:エンディングの語釈は「三省堂国語辞典」を参考にしている様です。シンプルな語釈で有名な辞書だそう‥。わたしは持ってません(笑)
{/netabare}
5話の感想
{netabare}
馬締さんの恋文は試金石の様なものかも知れませんね。受け入れてくれる人がいれば運命の人、そうでなければ縁が無かったという事‥。自分を偽ればいつか必ず綻びが生まれて後々大変な事にならないとも限りませんので、意外と相手の心を確かめる懸命なやり方なのかも(笑)

揺蕩う(たゆたう)‥ゆらゆらとゆれる。説明これだけでいいんでしょうか? これじゃあ"ゆらめく"と同じ気がします(汗)
{/netabare}
6話の感想
{netabare}
一目惚れに近い感じの馬締さんもそうですが、恋文なのか何なのか分からなかったのに、伝わってきた真剣さだけで「好きです」って言ってしまえる香具矢さんにもちょっと軽薄な印象を受けてしまいました‥。現実ではそうやって付き合い始める人も多いかも知れませんが、ちょっとこの物語にそぐわない恋愛の描き方だった様に思います。お互いの事をまだ良く知っているわけでも無いのに、決断が早過ぎて思慮深さに欠ける印象を受けました。

共振‥前回に続いて他の語に簡単に置き換えられてしまう語釈でがっかり。共鳴と置き換えても差異が全く無い表現でした。言葉を扱う物語なのだからこういう細かいところにも気を使って欲しい気がします。
{/netabare}
7話の感想
{netabare}
大渡海の執筆依頼を受けていた小田先生の原稿が届くお話。

小田先生、伝えられた執筆容量を無視している上に、馬締さんにダメ出しされまくり‥。この人、名声とかはあるのかもしれないけれど能力は甚だ疑問でした。それに人に土下座させて喜ぶ人の精神構造って、小中学生とかのいじめっ子並みに幼い気がします。要はどっちが偉いかという事を確認して喜ぶおばか思考‥。視野が狭い人の様です。

元々商売としての意義は見出せない大渡海編纂なんだから、権威は無くとも若い人の中から優秀な人材を探すべきだった気がしないでもないです。最初から足手まといにしかならないこんな人に頼まなきゃいいのに‥とか思ってしまいました。でも現実ではコネとかで物事が進む事は良くあるので、ある意味リアルな描写なのかも知れません‥。

馬締さんと西岡さんコンビの「西行」修正シーンは、この作品ならではの面白さを見出せて大満足でした。文字の海の中で戯れる二人の姿は素敵なおもちゃを与えられて喜ぶ子供の様でした。

「遍歴する人、流れ者」という拡大解釈を追記するに至った動機については、西岡さんの「この意味を載せれば心強く思う人がいる」という情に偏った意見に依存しますが、客観性をそれほど無視した選択ではないとも思われたので好感が持てました。

ただ今回の山場、西岡さんの小田先生へ向けた止めの一言「地球のコアより固く、マグマより熱い」という大仰な表現については蛇足気味で、あまり心に響きませんでした。こういう"してやったり"な展開自体わたしは好きではありませんが、最後の台詞がバトルものにありそうな大見得なのでさらに残念。人物や作風にそぐわない気がしました。
{/netabare}
8話の感想
{netabare}
馬締さんと香具矢さんいつの間にか結婚してる(笑)というのは置いといて。

終幕近くのシーン、辞書編集部に新しく入ってきた岸部さんの"右"の説明が1話の馬締さんのものと同じだった点には作為的なものを感じました。性別の違いも経験の違いもあるし、あれこれ違っても良かろうと思われました‥。違った説明を考えるのが面倒なのと、それに続く西岡さんの「君、辞書向いてるよ」という台詞を言わせたかっただけの様に邪推してしまいました‥。

お約束の終幕の語釈について、今回は"編む"でしたが、「文章・歌などを集めて本にまとめる」との事。編むには当然他の意味もあるので、いくつかある語釈の内の一つだとして、それでもかなり雑な印象を受けました。

先ず文章と歌という語が並列に扱われているのがおかしいのと、用例もそれに合わせて「辞書を-」となっている所に強引さがあります。

"など"と入っているので文章という語と用例の辞書からは離れて、歌と並べて記すなら"物語"とし(他に"思想"とかもあるけれど‥)、文章という語は完成品を指す語なので後に置くのが適切かと思われます。二つ例を挙げると‥

「物語、歌などを集めて本にまとめる。」

「物語、歌などを文章にして本にまとめる。」

となりました。まぁ、いつもながら要約し過ぎな気もしますけれど(汗)
{/netabare}
9話の感想
{netabare}
前回に続き製本までの流れを描くお話。

西岡さんのいたずらは端的に馬締さんの性格を伝えようとした試みかも知れませんが、ラブレターのコピーを無断で読ませるって結構ヒドイ気が‥。西岡さんだからしょうがないんですが(笑)

松本先生の"言葉を大事にする"の説明シーン、内容そのものはなるほどと思わせるものでしたが、先の恋文の話の続きとしてみると、流れが間逆の方向に進んでいる様で若干の違和感がありました。馬締さんは例の恋文の中で言葉を大事にしていたのだろうかと‥。

後半、あけぼの製紙の宮本さんが岸辺さんをデートに誘うお話と予期せぬトラブルのお話がありましたが、ドラマ部分はやはり、毎度の取って付けた感があり馴染めませんでした。後者については編纂作業にPCを導入していれば回避出来たかも知れない問題なので、辞書編集部の頭の固さに閉口(汗)作業効率も格段に上がるでしょうに何故そうしないんでしょう‥理由は不明。

文章について、専門書など特定の読者層を想定して編まれた本と違って、辞書やこのレビューの様に、不特定の読者に向けた文章というのは平易な文体を心掛ける事は元より、多くの人にストレス無く読んでもらえるよう、専門用語、難解な表現は極力避けて綴られねばなりません。かと言って平た過ぎる文章には面白みが無いし、情報の詰まった文章というのは面白いもの。やはりバランスが肝要‥。

万人に理解されうる文章にする為には語彙を限定せねばならず、そうすると必然的に表現の幅が狭まり、大まかな意味は伝わっても精密さの欠ける曖昧な文章となってしまいます。逆に馬締さんの恋文の様に知力を総動員して綴った文章では理解が困難になる可能性が生じます。

言葉は生き物と作中にありましたが、その生き物を使って生き物である人間に意志を伝えるという難しさ、今もまたひしひしと感じるブリキ男なのでした。
{/netabare}
10話の感想
{netabare}
大渡海に"血潮"が抜けていたので再チェックというお話。

これまでのお話で既に語られた、未だに用例カードの集積をデータベースとして利用しているという設定にも驚きましたが、今回の24万語の手作業によるチェック作業もかなりきつそうでした。作業量もさる事ながらヒューマンエラーによる問題が次々と出そう‥。時代設定が現代であるという事も相まってPCを利用せずに行う人員を動員しての力技にはやはり前時代的な印象がありました。

日本では辞書などの手書きデータの電子化は80年代あたりから着々と進んでおり、1985年三修社によって発売された日本最初のCD-ROMコンテンツ「最新科学技術用語辞典」を皮切りに、翌々年1987年には「広辞苑第三版CD-ROM版」が発売されていたとの事。当時富士通のワープロ専用機(価格が200万円位もしたらしい)のソフトとして利用可能だったそうです。

現場の事など何も知らないわたしとしては、上記の流れからすると電子化作業は現在ではとっくに完了している様にも思えてしまいますが、実際の所はどうなんでしょう? 近い未来に紙媒体の印刷物自体が無くなる事など、まずあり得ませんが、作業効率の向上や生産コストの削減という観点からすれば、電子化は必然の成り行きとも言えるので、今回の様な時代錯誤とも言える非効率なやり方にはどうしても疑問を抱いてしまいました。

終幕の語釈については特に思う所が無いので今回もはしょります。
{/netabare}
11話の感想
{netabare}
後半の松本先生の死、「大渡海」初版刊行のお話はエピローグ扱いと受け取り、私は前半の松本先生の家の縁側のシーン、延いては荒木さんと真締さんが駅のホームで言葉を交わすシーンをこの作品の終幕と受け止めました。

松本先生の話によれば、日本では辞書編纂に公金が使われた例は皆無との事、それゆえ権威付けや支配の道具として使われる事も無いという‥。以前私はこのレビューで"タウンページの代わりに辞書を配って欲しい"と考え無しに綴ってしまった事がありましたが、いつもながらに浅知恵でした。

日本では一般的な書に関しては、人権侵害や著作権の侵害による出版の差し止めを除き、検閲が禁止されているため、法制度上の発禁は原則として存在しないというのが建前だそうですが、菊タブーだの鶴タブーだのという、いくつかの言論の禁忌に当たるものも確かに存在し、それらを避けなければならない暗黙の了解もある様です。報道についてはその傾向が特に顕著だそうな‥。責任の所在はマスコミ自体にあるそうですが、暴力的なものも含め様々な圧力が掛かる中で公正な記事を書くというのも難しい事なのだと推察されます。

言葉によって綴られる文章の内容については言うまでもありませんが、言葉そのものにまでその様な規制が掛かってしまうと、さらに窮屈この上ない社会になってしまいそうですね‥。松本先生の懸念はもっともな事だと思いました。

「大渡海」出版を待たずして逝ってしまった松本先生でしたが、生前に自分の仕事を引き継いでくれる荒木さん、真締さん、西岡さんを始めとする何人もの人たちと出会えた事は幸運であったと思います。「循環する命の営みほど我々にとって励みになるものはありません。」と話した松本先生は、辞書作りには完成が無い事を誰よりも深く理解してました。世には辞書編纂に限らず様々な未完成品が存在しますが、個人の死により永遠に未完となるものもあれば、引き継がれ完成に至るものもあります。松本先生は引継ぎ先を、命のバトンを渡すべき相手を見つけ、心安らかに息を引き取っていった事でしょう。結果よりも過程に意味があると常々考える私はそう信じます。

人の命もまた、廃れ編み直される辞書の如きに死に生まれ行くもの‥。定まった目的に向かって進む事も時として大事ですが、毎日を悔いなく過ごす様に努める人生の方にこそ真に尊いものがあると改めて教えられたブリキ男なのでした。
{/netabare}

主人公の馬締さんの声を演じるのはサイコパスの槙島聖護役でも有名な櫻井孝宏さん。西岡さん役は、こちらも言わずと知れた人気者、神谷浩史さん。それにしても馬締さんど~りで堂に入った話し方をする訳で‥紙の本とはよほど相性の良い方の様です(笑)朗読とかドラマCDとかの語りが好きな方なら櫻井孝宏さんの淡々とした言葉運びを耳に心地良く感じる事でしょう。

起伏のあるドラマを期待出来る様な作品では無いと思いますが、台詞そのものと落ち着いた作風に魅力を感じました。目に楽しいねこさん作画、丁寧なお料理描写も相まって、最後まで飽きずに視聴する事が出来そうです。

最後まで観終えて、一足飛びで目まぐるしく進む展開には戸惑いを覚える事もありましたが、辞書編纂というお仕事の一端、それに掛ける人々の情熱、真摯さの伝わってくる素晴らしいドラマだったと思います。

アニメのキャラについつい敬称を付けたがるわたしですが、それも極々自然な事と今更ながら確認出来たアニメでもありました。松本朋佑というキャラに対しては"松本先生"と言う呼び方以外は考え付きませんでしたもの‥。本作の落ち着きのある作風を根幹から支える、自ずと敬意を抱きたくなる好人物でした。


※1:奇人、変人と訳される事もあるあまり有り難く無い言葉? 女性名詞"不思議ちゃん"もこれに含まれるらしい。

※2:知人は白と黒しか知覚出来ない全色盲を指していた様でした。

※:"舟を編む"と言う言葉、ちょっと不思議な響きですが、編む様にして作られる舟は実在します。私が知っている限りではアリュート・インディアンの作る伝統的な船"バイダルカ"がそれに当たります。無数のパーツを何本もの紐でしっかりと結わえ付けて作られる、剛性、柔軟性を備えたカヌーで、"バイダルカには間接がある"とまで称されています。

アニメとは全然関係ないけれど、ケネス・ブラウアー著「宇宙船とカヌー」に詳しい描写がありますので、ご興味が湧いた方は是非ご一読を。素晴らしい書です。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 56

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

とっても「ノイタミナ」…。

同名の原作小説があり、そこから実写映画化もされています。が、原作は読んでいませんし映画も観ていません。

良くも悪くもすごく「ノイタミナ」っぽいアニメ作品だと思います。『図書館戦争』や『四畳半神話大系』同様、たぶんノイタミナ枠でしかTVシリーズのアニメ作品として作られることはなさそうな感じです。

でも、ノイタミナは本来そういう枠だと思ってますのでけっこう楽しんで観ていました。CM明けの「辞書コント」も私は好きです(笑)。

あと、作中でやっていた用例採集は楽しそうだと思いました。

ちなみに作中でも紹介された大槻文彦が編纂した「言海」ですが、一応最初は国家プロジェクトで国費が出ていたんですよ。

政府としてのプロジェクトが打ち切りとなりその後、保管されて埃をかぶっていた作成途中の書類を大槻が引き取って仕事を続けて最終的に私費で完成させて出版したという経緯があります。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 45

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「言葉は、言葉を紡ぐ人の心は、自由であるべきです。」

三浦しをんによる小説を原作とするアニメ。

実写映画も話題になりましたよね。
(まだ観ていないので、今度観ようと思っています。)

いやー、期待以上に良い作品でした。

最終話は涙が止まらなくて困りました(´;ω;`)

全11話です。


● ストーリー
玄武書房辞書編集部は、
新しい辞書『大渡海(だいとかい)』を作る計画に乗り出していた。

辞書編集部の西岡正志(にしおか まさし)は、
頼りない営業部の馬締光也(まじめ みつや)に出逢った。

彼は、言葉のいろんな意味を瞬時に、真面目に考える青年だった。

馬締を辞書編集部に迎え、
いよいよ辞書作りが本格的に始まった。


辞書を作る、なんて全然知らない世界だから、
新しく知ることばかりでとても引き込まれました^^

地味な作業が多いけれど、
出来事の描き方がうまくて、ドラマのよう。

とても根気のいる作業でもあり、
実際作中では13年以上の時が流れます。

季節が何度も移り変わり…
たくさんの人が関わって情熱を傾け…

そしてようやく1冊の辞書が完成するのです。

特に、『大渡海』の監修を行っている松本先生の生き様が、
私には一番印象深く残りました。


≪ 辞書 ≫

辞書というのは、
言葉の世界への招待状だと思います。

人と人とが分かり合おうとする限り、
この世に言葉は溢れ続ける。

人が自分の想いを伝えることをあきらめない限り、
この世に新たな言葉が生まれ続ける。

人々が言葉の海に溺れてしまわないよう、
陰から支えてくれるのが、辞書の役目。

自分の知らない言葉と出会える無限の可能性が、
そこには隠れているのですね。


愛用していた電子辞書が壊れてしまってからは、
私も紙の辞書を愛用しています。

本でも漫画でもそうだけど、
紙に触れるのが好きなのです(*´ω`*)

電子辞書だと、
調べたい言葉の意味の正解を探すことだけに集中してしまいますが、

紙の辞書だと、
すべての意味がすぐに目に飛び込んでくるから、わかりやすい。

そしてちょっと視線をずらすと、
すぐそばに違う言葉がたくさん並んでいて、
「こんな言葉もあるんだ。」という新しい発見もある。

この作品を観れば、
きっと辞書に触れたくなること間違いなしですよ^^


≪ 言葉 ≫

毎回タイトルには
ひとつの言葉がつけられています。

その意味は、EDのイントロで紹介されるのですが、
それが素敵…!

なんと話や登場人物の心情を的確に表現した言葉なのか…!としびれる!

するすると、ゆったりと流れていくストーリーも心地よいですが、

何より言葉に惹きつけられる。言葉に魅せられる。
言葉の魅力におぼれてしまいます。


● 音楽
【 OP「潮風」/ 岡崎体育 】

OPはアップテンポで楽しい気分になる曲ですね♪

どちらかというと静かである作品の雰囲気とは正反対な気もしますが、
まったく違和感はありません。

むしろ好きです^^


【 ED「I&I」/ Leola 】

こちらはしっとりとしたラブソング。

作品の雰囲気から考えると、
この曲はぴったり♪

歌詞は香具矢(かぐや)さんの気持ちなのかしら…と
思うと、よりうっとり(*´ω`)


● まとめ
辞書作りに情熱を注ぐ人たちのお話。

穏やかで優しくて、
激しくてアツくて、
しんどくて終わりがなくて、
沈んでも沈んでも底が見えなくて。

言葉の海の魅力に魅せられました。

とても好きな作品となりました^^

投稿 : 2024/12/14
♥ : 41

83.7 2 ノイタミナで熱いなアニメランキング2位
ピンポン(TVアニメ動画)

2014年春アニメ
★★★★★ 4.1 (1635)
6639人が棚に入れました
原作:松本大洋(小学館 ビッグスピリッツコミック刊)、監督:湯浅政明、ペコとスマイルの、片瀬高校卓球部に所属する幼馴染の2人が主人公。ペコは卓球は強いが自分の才能に自惚れているところがあり、先輩に対しても挑発的である。スマイルは、決して笑わないことからペコが「スマイル」と命名した。内気で無口だが卓球は強い。2人は中国人留学生を迎えたと噂になっている辻堂学園高校卓球部の偵察に出かけ、留学生のチャイナと対面する。チャイナと試合をしたペコは1点も獲れずに敗北する。
そのころ片瀬高に、髪も眉毛も剃りあげたスキンヘッドの高校生がスマイルを偵察するため参上する。ドラゴンと呼ばれる海王学園高校卓球部の風間竜一である。片瀬高卓球部顧問の小泉丈(バタフライジョー)にドラゴンは、絶対にインターハイで優勝すると宣言する。

声優・キャラクター
片山福十郎、内山昂輝、咲野俊介、木村昴、文曄星、野沢雅子、屋良有作

Key’s さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

クセが強いけどハマれば面白い♪ そこんとこよろしく!

あらすじ

ペコとスマイルの、片瀬高校卓球部に所属する幼馴染の2人が主人公。
ペコは卓球は強いが自分の才能に自惚れているところがあり、
先輩に対しても挑発的である。
スマイルは、決して笑わないことからペコが「スマイル」と命名した。
内気で無口だが卓球は強い。

2人は中国人留学生を迎えたと噂になっている
辻堂学園高校卓球部の偵察に出かけ、留学生のチャイナと対面する。
チャイナと試合をしたペコは1点も獲れずに敗北する。

そのころ片瀬高に、髪も眉毛も剃りあげたスキンヘッドの高校生が
スマイルを偵察するため参上する。
ドラゴンと呼ばれる海王学園高校卓球部の風間竜一である。
片瀬高卓球部顧問の小泉丈(バタフライジョー)にドラゴンは、
絶対にインターハイで優勝すると宣言する。

そしてインターハイが開幕する。



感想

まず作画が印象的
これは好き嫌いは分かれると思うが
個人的には超ハマった

他のアニメにはない独特の作画と演出が特徴です。
受け付けない人はとことん受け付けないでしょうが、
私にとってはどんぴしゃでした。

ストーリーは今のところ王道を地で行くような感じです。
毎回引きが良く、1週間が待ち遠しい。
また、会話のテンポやキレも良さ、


今時こうゆうのは
珍しく新鮮だった
なんか久しぶりに見た感じ
こうゆう作品を求めてたのかも

原作や映画も
あったらしいけど
そっちの方は見てないです
でも友達が言うには
原作の再現がすごいらしい

卓球に関しても
結構リアルに描かれてる
気がします
超能力的な技などないが
それでも凄いことが
わかって面白い

キャラが個性的で面白い!
モブも魅力的なキャラが
多くて良いと思った!
少ししか出番が無いのに魅力的なモブも、
ストーリーに華を添えています
声優の演技もキャラにハマってるし

最初は期待してなかったが
今はハマって
毎週楽しみにしてる作品


そして10話まで見てきて
ペコが超かっこいいですね!
そこんとこよろしく!ハマりそうですw
最初はスマイルが主人公かと思いましたが
ペコとのダブル主人公的な感じなんですかね?

前半ももちろん良かったんですが
後半はさらに良い♪熱い展開ですね!
大体展開はどうなるかわかるんですが
それでも楽しめます!

BGMもそれを盛り上げてて良い感じ!
特に9話のラストが超好きだったな!
10話のBGMが駄目だと言ってる人がいるが
個人的にはスマイルのペコに対する歌だし
楽しんでるんシーンなので合ってるんじゃないかと思うが
賛否は分かれる所かもしれないですね

そしてとうとう後一話
早く続きが見てみたいです!
ラストの試合楽しみ♪


最終話見てきました
思っていたよりは試合の描写は
少なかったですね
でも作画なども充分満足な出来でした

OPの映像が話と合ってて良かったです!
このためのOPだったんですね

そしてそれぞれの
その後のシーンも見れて良かったです
みんな大分成長して・・・

最終話見てから1話見返すと
あれが伏線だったんだと納得
スマイル良かったな~

ペコも風間も結構変りましたね
いやペコはそこまで変ってないのかなw?
最終回までしっかり楽しませてもらいました

個人的には盛り上がりの最高潮は
9話のラストでしたがw
最近見たなかでもかなりの良作でした!

まぁ賛否両論というか
どうしても好き嫌いが分かれやすい
作品なのでそこは少し残念ですが
個人的にはお勧めの作品ですね!

投稿 : 2024/12/14
♥ : 110

魔女旅に出る さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

松本大洋の超名作漫画を湯浅監督でアニメ化

鎌倉にある高校の卓球部を舞台にした青春群青作です。登場人物のほとんどが男性で女性キャラは小さな卓球場を営んでいるお婆さんとちょっよ美人なお姉さんの2人です(笑)なので可愛い女の子がぎょうさん出てくるアニメを求める方は向いてないと思います。原作者である松本大洋の独特な作風を湯浅監督が上手く表現しています。また漫画に登場しないアニメオリジナルキャラや漫画では数ページしか登場しないキャラクターが度々登場したりと漫画とアニメで差別化をした点は良かったと思います。最後にこのアニメの見所は「個性的な登場人物5人の頑張り」です。人が頑張っている姿を見ると元気をもらったり、また明日から頑張ろうという気持ちになりますよね。この作品を通してフィクションでもノーフィクションでもそれは変わらないのだと実感することができました。特に元気がない人、落ち込んでいる人にオススメしたい作品です。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 93
ネタバレ

れんげ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

この作品を手がけてくれた全ての人へ『愛してるぜ!』

2014年4月放送。
ノイタミナ枠、全11話。


【前置き】

『心のなかで、3回唱えろ!!

 ヒーロー見参! ヒーロー見参! ヒーロー見参!

 そうすりゃオイラがやってくる! ピンポン星からやってくる!』


こんな明朗闊達な台詞が清々しい本作は、卓球を軸にした人間ドラマを描いた快作です。

原作は、こちらもアニメ映画化された「鉄コン筋クリート」でも有名な「松本大洋さん」で、1996~7年に連載。全5巻。
でもやっぱり、松本大洋さんの代表作といえば、本作『ピンポン』だと個人的に思います。

連載から4年後には窪塚洋介さん主演で実写映画化もされ、当時かなりの話題作となりました。
(実際にメチャ面白かったです、クドカン&窪塚さんだし。ブクロサイコー!)

私はこの実写映画から入り、後に原作も読みこの独特の松本大洋ワールドにのめり込んでいった人間です。
一時の感情に過ぎることなく、今も心に残り続ける程に…。


さて本作は、更にそれから10年余り経ってからのアニメ化。
しかも、予てより松本さんと交流が深い「湯浅政明さん」が監督に就任。
前情報としては、もう「これでどこから文句が出ようか!」と思うレベルでしたね。
発表時の私は、発狂にも似た歓喜の声を上げたものです。

あの独特の絵柄をクールアニメとしてどう描くのかという不安も勿論ありましたけど、何よりシナリオが1クールで描きやすい量なので、原作通り描けばそれだけで十分に面白くなるという確信もあったのです。

……ただ、そのシナリオが新たな味付けで更に魅力を増すとは…、これは嬉しい誤算でした。


では、勢い余って原作や実写映画まで再視聴しちゃったので、それを踏まえて「ピンポン」という作品と、アニメ版の良さを存分に語りたいと思います。



【あらすじ】

片瀬高校1年で、幼少期から一緒に卓球をしていたペコとスマイルが主人公。

卓球は強いがその才能に自惚れていたペコと、ずっとそのペコの後ろにいた内気なスマイル。
ただ、その卓球の才能は静かに、スマイルにも微笑みかけていたのです。

コーチとの試合からインハーハイ予選、これまで試合に消極的だったスマイルが、その才能の片鱗を見せます。
しかしペコは自身の実力を過信し続け、圧倒的に実力差が合った筈の旧友にも敗北をきすのでした。

コーチから見初められ、メキメキと頭角を現すスマイル。

自暴自棄になったペコは再び、スマイルのヒーローとして彼の元へ返り咲けるのか……。



【論じてみる】
{netabare}
さて、本作で徹底されているのは、『才能があるか否か』だと私は思います。
才能がない者は、どれだけ努力して足掻こうが、その才能という壁に阻まれて超えられない。

「友情、努力、勝利」という謳い文句が少年ジャンプではよくありますが、本作においては全く違います。
必要なのは、才能と、それを育む環境。
まさに、「才能、環境、勝利」という感じですね。

実際、本作は高校卓球を舞台にしていることからも、王道的展開では部員同士の助け合いやチームプレーも主軸となると思うのですが、作中ではそういう描写は全くと言って良い程ありません。
孤高の実力を持つ人間を、周囲は最終的には受け入れて、賞賛するしか無いのです。

この徹底したリアリズムが、この卓球という極限の反射神経が求められる世界では、非常に説得力がありました。


ただ、才能を持った人物だけでなく、その才能を得られなかった者達の、歯痒くもその力に渇望し藻掻く様…。
そしてそれでも、自身の才能の限界を感じ納得せざるを得ない様…。
本作『ピンポン』は、そういう描写を生々しく描いていて、ここが非常に胸を揺さぶられます。

勿論それは、才能に恵まれた勝者側の「孤独と苦痛」も、しっかり描かれています。
この生々しさこそ、私が本作を大好きになった要因でした。



作画は、かなり独特な松本大洋さんの原作漫画を、忠実に再現したと言って良いかと思います。
ちなみに絵コンテは、全て湯浅監督自ら手がけたようですね。

同じ原作者の映画「鉄コン筋クリート」も良かったですが、「ピンポン」は更に漫画のコマ割り的に画面を割って見せる演出もされていて、まるで動く漫画を見ているようで、とても見栄えがありました。
パッと見だけで雰囲気が他の作品と違うというのは、やはり大きな強みですね。
まぁ…、大きな賭けでもあると思いますが。

総じて、一枚重視よりも枚数重視の作画のように感じましたね。
スポーツアニメでは、その方が断然合っている気がします。
最終戦の、キャラだけでなく画面全体がグイグイと動くラリーなんて、もぅ最高でした。

ただ、背景ですら基本的に物差しを一切使わない描き方なので、子綺麗なデザインを好む方には向かないかと思います。

加えて(WUGの時もそうでしたが)、タツノコプロ制作の作画が、所々不安定な回があり、シナリオやゲーム展開に100%集中出来なかったことは、大きなマイナスでした。
原作は、パッと見ではヨレヨレに見えても芯の通ったリアリティ重視の作画であったのですが、アニメでは本気で顔や動きがヨレヨレになっているように感じたシーンが幾つかあり、そこは残念に思えました。

オープニング曲の映像が当初は本編映像の使い回しだった点から見ても、スケジュールが十分でなかったのかもしれませんね。



音楽的な面で言うと、オープニングもエンディングも作風を活かしたテイストで好きなのですけど…。
比べるのも少し如何なものかとも思うのですが私は、劇中のサウンドはSUPERCARが担当した実写映画の方が、頭二つ抜けて好きでしたね。

中でも、頂点であるドラゴンとの対決で流れる「Free Your Soul」という曲は、劇中最高の盛り上がりを見せる曲で、実写映画はこの曲だからこそ鳥肌が立つ程の最高のシーンになったと個人的には思った程です。
この試合のシーンにある

「俺の名前はっ!! 星野!! 裕だ~!! そこんとこヨロシク!!!」

の部分も、映画のほうが音楽的にも演出的にも非常に格好良かったです。
SUPERCARは、アニメでも「交響詩篇エウレカセブン」で劇中音楽を担当されていますので、本作もまたSUPERCARだったら…と、どうしても比べて考えてしまいました。



……と、所々惜しい面もあるのですが。
それを補って余りある、原作から非常に上手く味付けをされたシナリオ構成は、本作最大の魅力でした。

味付けされたのは主にサブキャラクターのバックストーリーですが、これは松本大洋さん監修の上で新たに描かれたもので、原作ファンの方も違和感無く受け入れやすい…と言うよりかなり好印象だったのではないでしょうか。
(ドラゴンの彼女や彼の生い立ち、チャイナの母親も登場するクリスマス回、スマイルに跳ばされて海外に翔ぶ江上ww、などがアニメオリジナルです。)

映画版では110分程度でまとめなければいけない故に切り捨てられた部分も非常に多かったのですが、本作では多くのキャラクターが原作以上に描かれており、

「ピンポンを深く知るには、原作だけでなくアニメ版も絶対に欠かせない!!」

と思わせてくれ、総じて作品の満足度を飛躍的に上げてくれました。
{/netabare}


では、ここからはキャラクターについて、好きなシーンを交えて語りたいと思います。
(※全部読むと長くなるので、視聴した方が好きなキャラのトコだけでも見て下されば嬉しいですwww)

【ペコとスマイル】
{netabare}
「ボク…先に行くよ、ペコ。」

これは第2話の終わり、コーチとの試合の後にスマイルがペコに行った台詞でしたが、この台詞は、ただ「先に帰るよ」とは、少し違う気がしますね。
ここからインターハイ以降、プレイスタイルが大きく変化していったスマイルを振り返ってみても、これは、

「先に高みへ登って、ヒーローを待っているよ。」

と言う意味合いだったと解釈出来るかもしれません。

そして、当のペコもこのスマイルの本心を、実は見抜いていた事が後に語られます。


『アイツが笑わんくなったんは、オイラの卓球がしょっぱくなってたから…。

 気が付いてたけど知らん振りしてた、ビビって必至に耳塞いでたさ……!』


「格好悪いペコを見るのは嫌いだ。」「再びヒーローとして自分の前に現れてほしい。」と願うスマイルの願望に、ペコは応えられる自信が無かった。
才能に自惚れていた点も勿論あるのかもしれませんが、そういう要因からもペコは練習をサボりがちだったのかもしれませんね。


そう考えると最終話の、2人の試合直前にスマイルがペコに言った

「遅いよ、ペコ。」

と言うのも、ただ「試合会場に来るのが遅いよ。」とは、違う意味合いに聞こえますね。
それは、ペコの

「そう言ってくれるな、これでもすっ飛ばして来たんよ。」

にも、通じます。
直接言葉にしなくても本心が通じ合う、この2人だからこそ出来た見えない信号を出しあうような会話でしたね。

そんな2人の最終戦。
再びヒーローに出会えたスマイルの、本気で戦った試合で見せた最高の【笑顔(スマイル)】は、本作を最後まで追って良かったと思わせるには十分なシーンでした。
{/netabare}



【佐久間 学(さくま まなぶ)/アクマ】
{netabare}
個人的に作中、一番印象強く心に残った大好きなキャラクターです。

王者海王に属するペコの旧友で、彼もまた…昔ペコに憧れた人間の一人でしたね。
まぁ…そんな素振り、基本的に彼は微塵も見せませんけど。

ただ彼は、才能が大きくものを言う卓球において、高みを目指す資格すら与えられませんでした。
それでも、コーチ曰く

「不器用さを絵に書きゃ、即コンクールで入選するってタイプの男だ。」

「10やれと言えば、100でも1000でも続けるような男だった…。」

と称される男で、コーチに心情的に「好き」とも言わせた、(見た目とは裏腹に)実直なヤツなのでした。
作中で彼は王者の先鋒を任される実力を身につけるワケですが、それは彼の凄まじいまでの努力がさせた結果だったのでしょう。


そんな彼が卓球から足を洗うきっかけとなったスマイルとの試合と後の傷害事件は、見ていて胸が張り裂けるような内容でした。
最後にスマイルが言い放った

「それは、アクマに卓球の才能が無いからだよ。

 単純にそれだけのことだよ、大声で騒ぐほどのことじゃない。」

長い目から見ると、アクマにとっては【現実を見る良い機会】だった。
こうまとめてしまうのは簡単で、正論だとも思います…。
それでも、言葉にするのは胸が苦しくなるものですね…、大好きなキャラクターだけに。


彼の良いところは、ここからただ自暴自棄にならず、卓球を避けていたペコに本音を吐露してエールを送ってくれるところでした。


「俺はオマエの才能が欲しかった!!

 戦型もラケットも…、フォームも全部オマエを真似たっ!!!

 でも、オマエにはなれなかったよっ!!!!

 クラスの皆々…、オマエに憧れてた……、俺らにとってオマエは…

 オマエ誰より卓球好きじゃんよっ!!!」


「続けろ卓球。

 血反吐吐くまで走りこめ、血便出るまで素振りしろ。

 ちったぁ今よかラクになんぜ、ヒーローさんよ。」


これは、アクマが自分を「凡人」だと認めたからこそ、ストレートに言えた台詞でしたね。


最後のインターハイでは、アホっぽい彼女ムー子を連れて観戦者として登場していましたが、エピローグでは3人目の子供が産まれると聞き、彼は彼なりの卓球とは違う新たな幸せな人生を送れたことに、嬉しさ…と言うより救われたような気がしました。
不器用だけど、アクマはとても良いお父さんな気がします。



そういえば、副部長の真田がアクマのことをこう言う台詞がありましたね。

「アレは、盲腸腫らしてんラケット振る男たい。

 奴が部屋に貼っとぅポスターば、ワシは笑えん。」

作中で語られることはありませんでしたが、このアクマの部屋のポスターとは、1960年代に活躍した「円谷幸吉さん」と言う長距離ランナーのことです。
(原作では、「円谷幸吉のポスター」とフルネームで真田が言っています。)

幾度の逆境にも負けずオーバーワークを重ね…、悲痛な最後を遂げた選手なのですが、アクマがこの選手の志を常に胸に刻み努力を続けていたことを考えると、より一層アクマというキャラクターに深みが出ます。
ただ…真田の言う通り、彼の姿勢を見ると全く笑えませんけどね。
{/netabare}



【孔 文革(コン・ウェンガ)/チャイナ】
{netabare}
アニメのオリジナルストーリーのおかげで一番人間味が増したのが、このチャイナな気がしますね。
(チャンピオンの重圧を背に戦うドラゴンのオリジナル展開も良いのですが、個人的にはチャイナ推しです。)

彼は、現卓球王国である中国のエリートから漏れ日本で再起を狙う選手である為、そもそも日本でプレーしていることに大きな不満を抱えており、日本人を見て

「お遊戯みてぇな卓球やりやがって、こんなヤツらと打つとはな。」

と小馬鹿にしていました。

ただ、スマイルとの戦いやドラゴンとの敗北の後、彼は自分を見限り心機一転し、異国の部員とも卓球を通じて絆を深めていくのです。
そのきっかけとなったのは、試合後のこのコーチの言葉でした。


『ウェンガ…、君の人生は始まったばかりだ。今スタートラインに着いたところだよ。

 卓球じゃないよ、人生の話をしてる。

 そしてこれはコーチとしての言葉ではない。

 君をよく知る友人としての意見さ。』


笑って「救われるよ…。」と言ったチャイナ。
実はこの2人が、とても深い信頼関係の上で成り立っているのが見えた名シーンでした。


ここから良い意味で、性格が丸くなったチャイナ。
アニメオリジナル要素でもあるクリスマス回で、チャイナの母親が日本に来たエピソードは、彼の人物像がより掘り下げられ好感が持てる作りになっていたように思えます。

母親の手料理(チャイナの好物のワンタン)を、部員皆で手伝うシーンは微笑ましかったですね。
おまけに部員達にカラオケで浜田省吾まで披露して…、良い声出すなぁ…。


2回目のインターハイ。
彼はコーチに、こう言っていました。

「信じられないかもしれないけど、ウチもけっこう強いチームになってきたんだ。

 それこそ、一から赤子に読み書き教えるみてぇにしてよ。」

去年のインターハイの時の台詞からは、とても考えられない台詞ですね。
卓球から少し足を遠ざけて初めて見えてきた、心から信頼出来るコーチと、いつも自分のことを考えてくれる母親の存在が、彼をこうも変えたのでした。


このチャイナの中国語にしても、アニメだからという手抜き感が全く無くしっかりと中国人を起用して好演をされており、総じて彼の描写に関してはアニメでは大満足の出来でした。


ちなみにエピローグでは、日本に帰化し母国の中国を倒したと報じられているチャイナですが、これはアニメオリジナル要素です。

彼がどういった経緯で日本に帰化して、卓球を続けたのか……。
それは、彼の帰化した名前に入れられた【辻堂】(←高校の名前)を見ると、少し見えてくる気がしますね。
{/netabare}



【オババとバタフライジョー】
{netabare}
さて…選手だけでなく、ペコのコーチを務めた「タムラのオババ」と、スマイルのコーチである「小泉 丈(こいずみ じょう)/バタフライジョー」にも、少しスポットを当てましょう。

バタフライジョーに関しては、高校の指導者としては失格極まりない依怙贔屓を見せていますが、その熱意が向けられたスマイルに対しては好転したように思いますね。
キャラ立ちとしても、あの英語教師ならではのルー大柴ばりの英単語を織り交ぜた会話や、スマイルに対しての危険なまでのラブコールは、個人的に大好きでした。
端から見ると、ホントただの危ないジジィですけどね。

ただ、72歳という高齢でありながらその実力は本物で、第2話でのスマイルとの試合でもペコが

「こりゃ、棺桶に片足突っ込んだジイさんのプレイでねぇぞ。」

と言わせるぐらいの卓球を見せてくれるので、これが中々馬鹿に出来ないジジィなんですよね。


「頂上に立たねば、見えない風景がある。」

そう言える程の、かつてのトッププレイヤーの指導は、とても贅沢なんでしょうね。
環境だけで言えば、王者海王の設備とは比べ物にならないですが、スマイルがそれでも海王の誘いを断り片瀬高校に残った理由の一つには、このバタフライジョーの指導に対しての答を示したような気がしました。

「私の知る限り、君は最高のプレイヤーだよ、Mr.月本。」

こう言えるようになるまで、スマイルを指導出来たこのジイさんは、良い余生を過ごせたことでしょうね。
愛情表現とは言えデートにまで誘い出す辺りを見ると、そろそろ頭のネジがオカシイ頃合いだったのでしょうし。



でも指導者としては、ペコを見つめ続けたオババの方が何枚も上手に見えますね。
環境の面からも、途中からは大学のコーチをしている息子にペコを預けはしましたが、卓球場を開いていたその見る目はジジイ以上。
言葉の節々で挟まれるオババの『愛してるぜ!』も、ペコへの深い愛を感じましたしね。

ドラゴンとの一戦では、ペコが防戦の時は「そうじゃねぇだろ。」と、攻めてからは「そうだ!」「そう!」と、熱い視線を送りながらの応援で、本当にプレイヤー思いの良いオババでした。


声を担当されたのは、超大御所である野沢雅子さん。
悟空のような活発な男キャラを演じることが多い方ですが、渋いバァサンを演じられても、これまた非常に声に厚みがあって格好良いのです。

ペコの足腰を鍛え直す石段の指導の時でも

「うっせぇ、黙れ、喋るな、従え、殴るぞ!!」

「アタシをオマエのハニーだと思って、登ってギュッと抱きしめてくれ!!!」

などは、台詞の良さも勿論ですが、声の力でより痛快に聞こえた気がします。
まぁ、言われた当のペコは吐いてましたけど。
(登るがしんどくて……のハズ。)

総じて、野沢雅子さんだからこそ原作以上に印象値の強いキャラクターになったのではないか…と、個人的に思いました。
{/netabare}



【総評】

原作にも実写映画にも無い、新たな「ピンポン」の魅力を引き出せたアニメとなったのではないでしょうか。

監督と原作者が深い交流であるからこそ、ここまでの仕上がりを見せられたとも言えるでしょうね。


自分の中では、シナリオ構成はアニメ、絵は原作、音楽面は実写映画、と綺麗に票を分けた結果となりました。
先でも述べた通り、こう別のメディアを比べ合うのもおかしな話かもしれませんが。
それでも、他の媒体では出来ないアニメならではの良さを活かした内容だったのは、間違い無いです。


多少の不満はありましたが、それでも大いに3ヶ月間楽しませてもらった感謝の気持ちを込めて、タイトルの通り製作者全ての人に、オババみたく


『『 愛してるぜ! 』』


って言いたくなりました。

絵に抵抗が無い方も、むしろある方も、是非このシナリオを思う存分楽しんでいただきたいと思います。
作中の台詞を引用すると

「真夏にカーテン閉めきって、たかが2.7gの玉の行方を必至に追いかける根暗なスポーツ」

に、大の男達が思いっきり必至に向きあう様を描いたのが、本作です。


ではでは、とても長々としてしまいましたが、読んで下さり本当にありがとうございました。



◆一番好きなキャラクター◆
『佐久間 学/アクマ』声 - 木村昴さん


◇一番可愛いキャラクター◇
『ムー子』声 - 栗田エリナさん


以降、どーでもいい話なので、〆ます。
{netabare}
レビュー内でも述べましたが本作は、選手だけでなく高齢者のジジババ2人の格好良さも大きな魅力です。


特に野沢雅子さんのオババの格好良さときたら、私に新たな性癖を刻みつけるには十分な程、魅力的なキャラクターでした。

↓本音↓

◇一番可愛いキャラクター◇
『オババ』声 - 野沢雅子さん



一度でいいので、こんな格好良いバァさんから見初められて、作中のように

「愛してるぜ!」

と、言われたいものです…。


「全く、高齢者は最高だぜっ!!!」
{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 71

92.7 3 ノイタミナで熱いなアニメランキング3位
約束のネバーランド(TVアニメ動画)

2019年冬アニメ
★★★★☆ 3.9 (1130)
5469人が棚に入れました
母と慕う彼女は親ではない。共に暮らす彼らは兄弟ではない。ここグレイス=フィールドハウスは親がいない子ども達が住むところ。至って平穏なこのハウスでささやかながらも幸せな毎日を送る三人の主人公エマ、ノーマン、レイ。しかし、彼らの日常はある日突然終わりを告げた…

声優・キャラクター
諸星すみれ、内田真礼、伊瀬茉莉也、甲斐田裕子、藤田奈央、植木慎英、Lynn、河野ひより、石上静香、茅野愛衣、日野まり、森優子、小澤亜李
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

幸せな一生

アニメーション製作:CloverWorks、監督:神戸守、
シリーズ構成・脚本:大野敏哉、
キャラクターデザイン、総作画監督:嶋田和晃
原作:白井カイウ、出水ぽすか

森の中に佇む、グレイス=フィールドハウスという孤児院。
そこでは12歳までの子供たちが楽しく暮らしていた。
周りとは隔絶された世界。
外部とつながっている場所には鉄製の大きな門。
そのほかは深い森に囲まれている。
優しいママのいるハウスは子供たちの楽園。
里親が見つかった子供たちは、
定期的にハウスから去っていくのだった。

タイトル名はよく考えられており、
ふたつの言葉を合わせたものだろう。
旧約聖書の創世記12章に記されている、
イスラエルの民に神が示した土地である「約束の地」。
そして『ピーターパン』で、
森林の奥地に住み、親のいない
年をとらなくなった子供のいる国「ネバーランド」。
物語のストーリーをイメージしやすくなっている。
「ネバーランド」というと、
マイケル・ジャクソンの邸宅も思い浮かび、
その内実を思うと、さらに印象深い。

主人公のエマ、ノーマン、レイの3人がいい。
ストーリーはもちろんだが、このキャラクターたちが
物語のなかにどんどん引き込んでくれる。
真っ直ぐな性格で頭が良く、運動神経に優れるエマ。
ずば抜けた頭脳を持ち、正しいことを知るノーマン。
冷静な判断力と鋭い観察眼、卓越した記憶力を持つレイ。
彼らの動きや考え方を見ているだけでも楽しい。
いわば、小学生のときのクラスにいた、
何かするたびに驚かされ、私たち凡人を
いつもワクワクさせてくれる同級生たちを想起させる。

3人が互いに想いをぶつけ合い、理解し、
不可能なことをやり遂げようとする。
そして、それぞれに対する複雑な感情を抱えたまま
自らが信じた道を選び取ろうとする。
この関係性の妙が、作品の最も優れている部分だ。

1話からの構成力も見事。
原作の良さはあるのだろうが、
アニメスタッフの力も大きいことが分かる。
大きな流れを1話目で理解させ、
そこから各話ごとに盛り上げていく展開力は出色だ。

良質なハリウッド映画を観ているような感覚。
時代を象徴するような物語も含め、完成度が高い。

幸せな一生とは、どのような人生なのか。
子供たちやママの一生を考えさせられる。

{netabare}最終回でのイザベラの描写が秀逸で、
この時点で物語は完結している。
後のことを描くことが蛇足にならないかのほうが不安だ。{/netabare}
ここまでで実写映画を作っても十分に成立するだろう。

※EDのCö shu Nie 「絶体絶命」がお気に入り。
ピアノの打ち込みとベースが抜群にカッコ良い。
(2019年4月19日初投稿)

投稿 : 2024/12/14
♥ : 97
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

生きていくんだ それでいいんだ

それは田園 こちらは農園 ・・・ふっ

・・・あ、ちょっと待って、{netabare}いやっ、行かないで~、、、{/netabare}な全12話。


原作も未読であれば、ジャンプももう何年も読んでませんね。週刊少年ジャンプの人気連載作品ということで、子供とTV前で待機。
第1話を観終えて彼らは静かに去っていきました。お子様と一緒に視聴するにはご注意ください。我が家でR12指定となった “ほんとに少年向けなんかいな?” な世界観です。


いやぁ毎週面白かったですね。なにせ間髪入れずもう一周しましたから。
導入良し→つなぎも良し→締め最高、、、と1話1話退屈せず、連載継続中ながら12話の尺で綺麗にまとめたことも好感です。結末を知って価値に気づきがちな序盤~中盤を面白く仕上げてもらってほんとにありがとう。2018年冬期の作品群の中でもトップクラスの出来でありました。
続きのある物語に対し早々に2期が決まったことで、今後の楽しみが一つ増えた幸福感もあります。


幕明けの舞台はグレイスフィールド(GF)ハウスと呼ばれる孤児院から。ママ・イザベラのもとで上は11歳までの子供たち30余名が一緒に暮らしてました。
ロケーションは大草原の小さな家。孤児院と聞けばあしながおじさんや若草物語のようなものを事前には想像してました。違うんだけどね。
そこの子供たちのうちエマ(CV諸星すみれ)、ノーマン(CV内田真礼)、レイ(CV伊瀬茉莉也)の3人が物語の主役。・・・それと彼らのみならずハウスの子供たち全員が主役の物語だったのでは?と思えるお話。
6歳から12歳までの間に里子に出されるとママから聞かされている子供たち。うち一人コニーとのお別れの日。別れを済ませた後、ぬいぐるみを忘れてることに気づいたエマとノーマンがコニーに届けようと後を追って。。。

そこから物語は一転。第1話ラストから最終12話までノンストップな子供と大人の心理戦?サスペンス?スリラー?またはホラー?が展開されます。
詳しくは本編で。農園の意味は早々にわかりますので、そこからハラハラドキドキを楽しみましょう。私的今期(2019年冬)のベストでした。


以下、思ったことを五月雨に。※ネタバレ

■ホラーやスリラーではなく心理戦でした
猟奇的な世界観で色濃く印象的だったのは、エマら子供たちとママ・イザベラ(CV甲斐田裕子)、シスター・クローネ(CV藤田奈央)の大人らとの駆け引きです。この腹の探り合いに集中できたのは不要なホラー演出を削いだからなんじゃないかと思ってます。
{netabare}例えば、子供らが謀議している最中に物陰からニュッとママやシスターが登場するような演出は皆無でした。双方に企みを盗み聞きしたり直接知るような描写がありません。状況証拠や間接的な言動からの探り合いに絞ってました。{/netabare}
{netabare}ママもシスターも元はと言えばフルスコア。さらにトレーニングを積んで派遣され実地で鍛えられた猛者です。直接でなくてもなんでもお見通し、一筋縄ではいかないラスボス感を十二分に引き出す効果がありました。{/netabare}


■絶望からの分岐
絶望を知った後にどう分岐していったか?の対比が好きです。
{netabare}言うまでもなくエマ、シスター・クローネ、ママ・イザベラの3名です。
エマ:抗う人。もちろんそこは主人公。けっこう身も蓋もない世界なのにエライよこの子!
シスター:堪えられなかった人。躁鬱の躁。壊れてましたね。選ばざるをえなかった道もイバラの道。自分♂ですがシスターやママやってたら正気を保てる自信がありません。
ママ:受け入れた人。ってまんまですが、シスタークローネが壊れてた分余計に底の知れぬ深い絶望を受け入れたことがわかり、そのことが最終盤効いてきましたね。{/netabare}
{netabare}一周めはノーマン、レイ、エマの3人を中心に観てました。最終回を見届けて今度はエマ、クローネ、イザベラの3人に焦点をあてて。けっしてクローネはネタキャラではないのです。{/netabare}


■イザベラ
{netabare}マンドリンの少年(レスリー)の曲が印象的な本作。イザベラにとってどういった意味を持つのか?
第1話コニーを門まで送る時の鼻歌が初出。第10話ノーマンとの別離。第11話でレイが火をつけた時。せめてもの手向けなのかレスリーの記憶を留めておきたかったからなのか。
ハウスで過ごした記憶の欠片を手離してなかったことに意味があったんじゃなかろうかと思います。{/netabare}

{netabare}「絶望に苦しまずに済む一番の方法は諦めることよ。抗うから辛い。受け入れるの。楽になれるわ。簡単よ。」

{netabare}かつてのイザベラが現在のエマだっていうのが、これまた切ないのでした(語彙力)。頼れる仲間がいたかどうかの差なんです。{/netabare}{/netabare}


■声優さんの演技
あらためてやっぱり声優さん凄いな~と思いました。
ノーマン役の内田真礼さん。ギルダ役のLynnさん。演技の幅って無限に広がるんですね。
それと短いセリフに込められ感情の豊かさでしょうか。※特定シーンのため閉じます。

{netabare}・「うん」エマ
ノーマンと別れの際、絞り出した「うん」その数8回。その短い言葉一つ一つどれも違っていて、ないまぜの感情が伝わってきた名演です。{/netabare}

{netabare}・「いってらっしゃい 気をつけてね」イザベラ
絵と音の力ではないと思うんだよな~。憑き物が取れた嘘偽りない「私のかわいい子供たち」に聞こえました。ダメねこういうの(T_T){/netabare}



次が気になる展開、裏をかいてまたその裏をかいての緊張感の続く化かし合い。
その根底で「絶望」との向き合い方で道の別れた3人に強いメッセージ性も感じました。
OPEDも作品に合った良いチョイスですね。


{netabare}・識別番号は連番ってことはなさそう。意味はあるのか?
・2期は頭脳戦からサバイバルみたいになるんだろうね。趣きはだいぶ変わりそう。
・イザベラ処分されるんだろうな。
・てかノーマン{/netabare}

きちんと謎や伏線は残したまま2期へと繋がるわけですが、もやっとした感情は無く、終わり方含めなんともすっきりした全12話でした。


それにしても、、、
{netabare}ヒーロー願望というか、男は死にたがるというか諦めが早いというか自意識が強いというか。女性の胆力の強さをまざまざと見せつけられた気分になりました。{/netabare}



視聴時期:2019年1月~3月 リアタイ視聴

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2019.09.17追記
《配点を修正》 +0.1

その後他のレビュアーさんとのやりとりでもやっとしたとこが解消しました。あざまーす!
2期前提ではあるものの、そこへの繋ぎ方と一作品としてのまとまり具合に嫌みがないこと。他の作品とのバランスを考慮し加点しておきます。



2019.04.13 初稿
2019.09.17 追記/配点修正
2022.01.30 修正

投稿 : 2024/12/14
♥ : 83
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

原作既読組にとって、この手の作品は・・・?

原作既読。最終話まで視聴。

週刊少年ジャンプは40年近い愛読書です(笑)。
連載開始当初から、緊張感満載のこの作品はお気に入りの作品でした。
お気に入りの作品のアニメ化なので、本作も、とても注目していました。

【原作既読組にとって、この手の作品は?】
原作既読組は、当然、先々の展開を把握しています。
そんな状況の中で、この作品の一番の魅力である『緊張感』を楽しめるかどうか?
そこが、この作品の評価の分かれ目だと思います。
{netabare}
言うまでもなく、私も先々の展開を把握しています。
それでもハラハラドキドキが止まりません。

力のこもった作画。
巧みな演出。
映画のようなカメラワーク。
声優さんの熱演。

全てが上手くかみ合った本作は、『名作』に分類されるべき作品だと思います。{/netabare}

【正直、原作と比べるとかなり話が省略されているんだけどね・・・】
{netabare}全ては、大感動の11話~12話へ繋げるため。
ここから逆算して、必要最低限の物語を紡いでいったという印象です。

エピソードはもっとたくさんあるんだけど、あえて必要最小限のエピソードに絞った。
第2期に回せるエピソードは第2期に回す。

そんな制作陣の苦渋の選択が伝わってきます。{/netabare}

【食用児・・・って、凄い単語ですよね】
{netabare}この単語だけで、この物語の世界観が凝縮されている気がする。
エマをはじめ、子供たちの必死さが伝わってくる。
何かが狂った世の中であることが、ひしひしと伝わってくる。{/netabare}

【ところで、各話のタイトルの意味って分かりました?】
{netabare}各話のタイトル、例えば第1話なら『121045』。
これの意味って分かりました?
{netabare}あれって、『日・月・年』なんですよね。
『121045』=『2045年10月12日』という意味。{/netabare}
要するに、1話から9話までは20日余りしか時間が経過していませんが、9話と10話の間だけでも2か月以上に時間が流れていることが分かります。

この間、エマたちはママだけではなくレイの目も欺き続けたことに・・・。
だから、11~12話にかけて、レイは驚きっぱなしだったんですね。{/netabare}


第2期も期待しています。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 78

59.4 4 ノイタミナで熱いなアニメランキング4位
パンチライン(TVアニメ動画)

2015年春アニメ
★★★★☆ 3.3 (440)
1978人が棚に入れました
「パンツを見たら人類滅亡!?」
とある事件をキッカケに幽体離脱してしまった高校生の伊里達遊太。
自分が住んでいるアパート、古来館で目覚めた遊太は、
突如現れた猫の幽霊、チラ之助から「肉体を取り戻したかったら、
古来館のどこかにある聖典を見つけるのら~」と告げられる。
かくして館内の捜索を始める遊太だったが、
そこで住人である女子のおパンツ様を目撃した瞬間、地球にトンデモナイ災いが…!!
遊太は特殊な霊力を使って住人達の暮らしに干渉。
ときに秘められた謎を解き明かしていったりしながら、人類滅亡の運命に立ち向かっていくことになる。
はたして彼らは最高にハッピーでピースフルな未来を迎えることができるのだろうか!?

声優・キャラクター
井上麻里奈、雨宮天、寿美菜子、釘宮理恵、戸松遥、吉田有里

Baal さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

布面積は 乙女心 反比例

監督・上村泰、MAPPA制作によるオリジナルテレビアニメです。

全12話


古来館に住む伊里達遊太は同じ古来館に住む秩父ラブラと

共にバスジャックに巻き込まれる。そこに正義の味方を名乗る

ストレンジジュースが現れ犯人グループを撃退する。そこに

謎の白髪の青年が現れるが興奮した遊太が覚醒しその男もろとも

海に飛び込む。そしてストレンジジュースに助けられるも

再びパンツを目撃し気絶してしまう。そして気が付くと自分は

古来館に戻っており、更には幽体離脱までしていたのだった・・・


作品タイトルに加えてキャッチコピーが「パンツを見たら人類滅亡!?」

というのでそこを基軸にしたギャグコメディが展開されていく作品

だと放送前はなんとなくそんな感じに思っていました。序盤はバス

ジャックや幽体離脱等が起きているものの当初の予想していた部分が

多めにあったのでバトルの部分もうーん何に使うのだろう・・・と

思っていました。それから3話くらい経つ頃に漸くそれまでなんとなく

散りばめられていたであろう出来事が全く別の所で動いているんだと

感づいていました。

5,6話を迎える頃には3話で感づいていた事が確信へと変わって

いき、そこから見えてくるものにはそれまでの出来事にその瞬間が

より強く詰まっていたのだと思わされました。


どことなくギャグ路線が見えてくるのにどうやってもそのレール

には乗ってこない。どこかそんな事ぐらいでくだらない・・・と

思っている反面、ここまでの繋がりとこれからの繋がりはどこに

向かっていくのかたまらなく気になってくる。そうやって後半、

その先へ進むにつれてどんどんもっと見たいと不思議とそう感じ

させて来る展開でした。


それから登場人物のネーミングがパッと見ても誰でも気が付く様な

つけ方なのに5,6話の展開が見えて来るまで全然気づくことが

出来なかったです。上手いこと作っているなぁと思いました。


曲は特にOPですが後半になってくるにつれてなんか雰囲気だけが

ズレていっているようでした。まあ展開が後半どんどん変わって

いっても私が当初思っていた事はあながち外れる事も少なかったので

それもこのOPあってこそかなと思います。


ニコ生一挙放送で幾度となく最初の方を見ましたがその度に新たな

話数を見ているのでその時々によって同じ物語が違った印象を感じ

ていました。初見の段階で1~4話辺りが退屈に感じていましたが

その先を知った上でまた見ると案外そうでもなかったりという感じ

です。複数回見るつもりなんて当初は想定していませんでしたが・・・


後半からいい感じになっていましたが序盤と言っても4,5話辺り

までためてしまっているので多くの人が途中で切ってしまいそうで

すが2,3話辺りでどこか予想や印象とは違う何かがあると私は

思ったので見続ける事ができ、後半で良くなっていくのを楽しめた

と思います。

◆個人的点数評価 76.989点

投稿 : 2024/12/14
♥ : 33

ローズ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

パンツは地球を救う?

バスジャックに遭遇した伊里達遊太。
正義の味方であるストレンジジュースの下着を目撃する事によって幽体離脱してしまう。
目覚めた遊太の前にチラ之助と名乗る猫が現れて、遊太は地球を救う為に行動する事となった。

物語に関する事を書くとネタバレになりそうになるので迂闊には書けないなぁ。
とりあえず、6話ぐらいまでが話の伏線でしょうか。
視聴する人には途中まで我慢して見てもらいたいです。

タイトルにもなっているようにパンチラというかパンモロのシーンが多いです。
遊太はパンツを見る事によってパワーアップする事ができますが、あまりにも興奮し過ぎると地球が滅亡。
丁度良いパンチラも難しいですね。

始めは、ただのHシーン満載のお色気作品と思うかもしれません。
たしかにパンチラシーンは多いです。
しかし、それは物語を進めていく上での必須事項。
視聴する際には、この点を気をつけないといけないです。

登場人物の名前の付け方には、よく考えたなぁと感心してしまいます。
伊里達遊太(いりだつ ゆうた)……幽体離脱(遊太 伊里達)←名前と苗字を入れ替える
成木野みかたん(なるぎの みかたん)……正義の味方{成木野は読み方を変える}
曳尾谷愛(ひきおたに いと)……ヒッキー、オタ、ニート
台初明香(だいはつ めいか)……大発明家
秩父ラブラ(ちちぶ らぶら)……乳ブラブラ
古来館の住人達はキャラも個性的ですが名前の印象も強いです。
古来館は「こら、イカン。」を元にしたのかな。

地球の命運はパンツにかかっているとバカバカしく思えますが、これはシリアスなシーンを暗くさせない為の作り手側の配慮でしょうか。
軽い気持ちで数話見ようと考えると視聴断念する可能性が高いので、視聴すると決めたら一気観して下さい。
全話視聴して「騙された。」と言われても責任は持てません^^;
あくまで自己責任でお願いします。(無責任ですいませんm(_ _)m)
さあ視聴してハッピーでピースフルな世界へ旅立ちましょう。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 33

ninin さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

タイトルを見るとギャク作品ように見えますが、そうでもありません。

パンチラインとは英語でコメディやジョークなどの「落ち」という意味らしいですが、この作品はそれだけの意味ではないみたいですw

全12話 オリジナルアニメ作品

キャッチコピーは「パンツを見たら人類滅亡!?」

バスジャックのあったバスに乗り合わせた主人公の伊里達 遊太(いりだつ ゆうた)は、正義の味方ストレンジジュースの助けもあってバスジャックしているものたちを撃退します。しかし、遊太はある出来事で川に落ちストレンジジュースの下着を見たことで幽体離脱をしてしまいます。序盤は、元の体に戻るため色々と悪戦苦闘するお話です。

最初は、奇抜なストーリー展開と女の子の下着のオンパレードに、3話まで観てちょっと視聴を止めていました。

キャストさんからのコメントで6話以降から色々な謎が解き明かされていくというニュアンスだったので、視聴を再開しました。

序盤は上記に書いているような内容でしたが、確かに6話から色々と展開が変わってバラバラなお話が繋がっていきますね。

5話までで謎を色々と溜めていた分、6〜12話まではこれまでの経緯とこれからのことが怒涛の展開で進んでいきます。

お話もきちんと終わってますし、すべてがハッピーエンドではないですが、私は最後まで観てよかったと思います。

設定は色々と奇想天外ですが、内容はいたって真面目な作品なので、ギャク作品と思って観るとギャップを感じるかもしれません。

ただ5話まで根気よく観る必要(私はそうでしたw)がありますので、そこまで視聴ができたら最後まで観るのもいいかもしれませんね。

OP しょこたん♥でんぱ組が歌ってます。作詞作曲は前山田健一(ヒャダイン)さんなので元気な曲ですね。
ED こちらは一転、落ち着いたバラードとなってます。曲も好きですが作画も良かったですね。

最後に、この作品の劇中歌は小室哲哉さんすべて作曲しています。色々な引き出しがある方ですね^^

投稿 : 2024/12/14
♥ : 33

63.1 5 ノイタミナで熱いなアニメランキング5位
2.43 清陰高校男子バレー部(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.1 (98)
376人が棚に入れました
東京の強豪中学バレーチームで深刻なトラブルを起こしてしまった灰島公誓は、子供時代を過ごした母方の郷里・福井に転居し、幼なじみの黒羽祐仁と再会。ずばぬけた身体能力を持ちながらプレッシャーに弱い黒羽と、バレーへの圧倒的な情熱と才能ゆえに周囲との摩擦を引き起こしてばかりの灰島はエースコンビとして成長していくが、中学最後の県大会で衝突し、絶縁状態のまま二人は地元の清陰高校に進学する。男子バレー部で待っていたのは、身長163cmの熱血主将小田と、秀才で毒舌家の副主将青木の3年生コンビや日光アレルギーで常に長袖長ズボンの棺野、バレー初心者の大隈をはじめとする2年生たち。山と青空に囲まれた福井を舞台に、弱小男子バレー部が全国を目指す熱い青春ストーリー!

声優・キャラクター
榎木淳弥、小野賢章、梅原裕一郎、伊東健人、蒼井翔太、木村昴、石川界人、天﨑滉平
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

試合にもっと力入れて欲しかった

※前のレビューをだいぶ書き直しました
【感想】
ハイキューと比べちゃうといろいろ残念だけど、面白かったです

ハイキューと比べるとこちらは試合よりも人間関係が中心で、子どもっぽい理由でもめたりするので、キャラクターがいい子すぎるハイキューより高校生らしさはあるけど、戦術も調子悪い選手や足を引っ張っている選手のフォローをどうしようくらいで工夫している感じがなくて、全国に通用するチームには見えなかったです、試合に期待する人には物足りなく思うかも

あと、男子バレー部のパワーがあまり感じられないのも惜しいかなー

中学の時はバレー部で男子バレー部が人数少ないので男女で一緒に練習していたのですが、女子のスパイクは速くないし角度も緩やかなので県選抜の選手のスパイクでも結構拾えます、でも男子バレーのスパイクは一撃必殺で、すごい角度でドーンと重い一撃がくるのでなかなか拾えません
世界の男子プロとかだと最高到達点は4m近くで時速160kmにも達するそうです、想像するだけでも怖いですねー
スパイクが半分以上拾われる女子と違って男子はスパイクをしっかり撃てばほぼほぼ決まります
だから男子は特にブロックとかでなんとか撃たせないようにするわけです

試合の描写見る感じだと、高校の全国レベルには見えなかったです
あれならたぶん私でも拾える
これは作画とか演出のせいかな?

ハイキューにはそういったスパイクやサーブの重みが感じられたけど、2.43には感じられなかったです、試合やってるシーンも短いですし

バレーは身体能力の差が出やすいスポーツなので心も折れやすいし、レギュラーの枠が少ないので人間関係でよくもめる(-_-;)
部内で起きている問題も、実体験しているのですごくよくわかる
経験者の人が話を書いているってのは感じました、もっと試合シーンに力が入っていればよい作品になったかも

【高校バレーの実情】
地方の高校バレーの強豪校は県大会を何連覇もしているのは当たり前で、男女ともに中学の時に県選抜だったメンバーが揃っているので他のチームが勝つのは難しい
そんな男子バレーボール部の実態がちゃんと反映されているのは良いと思いますけど、エンタメとしては一強とその他大勢ではイマイチ盛り上がらないかも

【キャラクター】
灰島がまるでハイキューの主要キャラ影山(ポジションと能力)と月島(外見と性格)と日向(髪の色)を混ぜたようなキャラクターで、ここまで似てると比較してくれって言ってるようなものよね

主人公はともだち思いなのはいいけど、無神経な発言が多いのと精神的に脆くて、灰島よりこっちのほうが性格に問題アリかな
高校生らしいけど

【一つ許せない描写が9話にあって】
{netabare} 福井の至宝って言われているスバルが、女の子からもらったチョコレートをその場で食べて食べ終えたゴミを投げて後輩によこし、捨てさせるのは態度悪くて引いた

これが福井の至宝がやることなのでしょうか?
「俺は福井の期待を背負ってる」みたいなこと言って悦に浸ってカッコつけてたけど、こんな姿みたら県民もガッカリでしょう

ハイキューにも白鳥沢の牛島君が彼みたいな格上のライバル校の絶対エースというキャラ付けですが、至宝っていうのは牛島君のような心技体兼ね備えた選手のことを言うと思います

{/netabare}

【音楽】
OP曲は結構好きです。スポーツにかけた青春を「麻痺」と表現したところもセンスあって面白いと思います


【各話で思ったこと】
1話
{netabare}
最初ゆにが灰島に話しかけた時にバレーやっていることも話しているのに興味ないみたいな反応だったのに
一緒に練習やろうとしただけで態度が豹変するのはなんでかなー?
どうせ根暗な俺と一緒に練習してくれるやつなんていないって勝手に思ってやさぐれてたの?
それなら最初から愛想よくしたら?

幽霊部員状態だった部員が復帰してきて毎日練習一生懸命やるようになる流れが不自然かな
1クールだしこんなところに時間費やしている場合ではないんでしょうけれど

{/netabare}

2話
{netabare}
地区大会の予選が参加校少なくて予選免除
県大会が1・2回戦で準決勝 上位3校が北信越
参加チーム少ないですね
北信越大会って言うのは多分、石川富山福井新潟長野かな?

試合の動きを見た感じだと、地区大会レベルかなって思いました
たぶん作中の強豪校、守りが残念なので女子の強豪校にも負けますよ
中学編は、いくら地方でも県大会レベルならもう少しレベル高いんじゃないかと思います
でも部活練習風景を見た感じだと人数少ないのが残念ですが強豪校の練習って感じはしました

{/netabare}

5話
{netabare}

灰島の過去の話についてはうまく消化できたみたいで良かった
ただ、暴力事件の真相を話さなかったのは色々と雑だなと思った

バレーは心折れやすいスポーツなんですよね
アタッカーだと特に身長の差がとても大きいですから
挫折とか部員同士の衝突が多くなるのも無理もないかな

それをどうやって技術でカバーするかが面白いところなのですけどね
{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 26
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

二人のバレーボール

原作は小説らしい

福井県を舞台にした高校バレー男子の話。弱小校に有能な転校生がきて県の強豪校をジャイアントキリングするぞーみたいなやつです。
タイトルの『2.43』は春高でのネットの高さ2m43cmのことらしく予選だと2m40cmなんだそう。県予選と違うレギュレーションにする意味ってない気がするのでなんか不思議です。

小説原作だと内面描写が面白いのが多い印象です。女性作者のスポーツものだと『風が強く吹いている』という良作があるのでそれくらい内面に向き合ってほしいと期待しての視聴でした。
バレーボールだと私は未視聴の『ハイキュー』みたいな比較対象があってその辺楽しめる方も多いのではないかと思います。

蓋を開けてみたら…うーんどうなんでしょう???
内面描写というより競技中のシーンが楽しい作品といったところでしょうか。
団体競技ですからせめて自チームのスターター6名を有機的に絡ませることが肝だった気がします。これが残念ながら主人公格2名に傾斜しすぎでした。題材をバレーボールとする意味がありません。

・バイ(セクシャルじゃないよ)の関係に焦点絞って楽しむならOK
・試合運びに手に汗握るならこれはこれでOK
・競技に向き合いすぎて味方に刃を突き付けるセッターと能天気なアタッカーという相性も◎
 {netabare}※中田久美と大林素子の組み合わせを想像すればよいです{/netabare}

スポーツものとしてそこそこ楽しめる佳作です。水泳や陸上のような個人競技ならなお良かったかも。



※余談

■二番煎じ?

『ハイキュー』知りませんが、比較対象とされてしまう宿命から逃げられないとは思います。
二番煎じ感を象徴するのが主題歌ですね。OPはAdoさん風でEDはセカオワ風に聞こえなくもないというわたくし。いや耳に残る良曲ではあるんですけど。


■ノリきれなかった理由1:バイの関係を深掘り

主人公チームメンバーの作品への関与度合いを◎→○→△→×で示すとこうなります。

【七符清陰高校の面々】
◎灰島公誓(CV小野賢章) セッター(183cm) 中学から福井に出戻ったカミソリセッター
◎黒羽祐仁(CV榎木淳弥) ウィングスパイカー(186cm) センスの塊だがメンタル弱げ。灰島と幼馴染。
○小田伸一郎(CV伊東健人) ミドルブロッカー(163cm) 主将。熱い!だが小さい。
△青木操(CV梅原裕一郎) ミドルブロッカー(193cm) 副主将。小田に誘われバレーを始めた。
×棺野秋人(CV蒼井翔太) ウィングスパイカー(181cm) 病弱設定。詳しくはよくわからない。
×大隈優介(CV木村昴) ミドルブロッカー(187cm) 元ラグビー部。詳しくはよくわからない。
×内村直泰(CV梶原岳人) ウィングスパイカー(175cm) 2年生ということ以外よくわからない。
×外尾一馬(CV若林佑) リベロ(170cm) いたっけ?

せめて自チームは最低限△くらい欲しいところ。1話分×メンバーらのキャラ回あれば景色は違いました。小田と青木なんて良い素材だったのに勿体ない。花道と流川だけ目立つ湘北みたいな感じでした。
ライバルの全国常連福蜂工業高校に至ってはエースの三村統(CV石川界人)とマネジャー越智光臣(CV天﨑滉平)ともはや選手でもなく。裏方に焦点絞るアイディアを面白いと捉えても良いのですけどこのへんは好き好きでしょうね。

{netabare}クライマックスの決勝戦についても、実際問題として清陰2名対福蜂1名で戦ってるようなもんだから、だったらビーチバレーでいーじゃん!と。そんで舞台も北陸から沖縄に移して降り注ぐ陽光のもと水着で…ってどっかにあった気がする。{/netabare}


■ノリきれなかった理由2:ユニくんの勝者のメンタリティ!?

プレッシャーに弱すぎるのがなんともかんとも。後半の覚醒を良しとする以前に全国目指すチームのエースとしてはその資格すら持ってないように見えた私。
県全体のレベルや層が薄いから仕方ないと咀嚼してもよいのだけどなんか煮え切らん。
緊張とは練習量や質が追いついてない弱小校ほどするもんだと思うのです。強豪校だと「これだけやってきたんだから」を拠り所にしびれる場面でアドレナリンが出てくると思われ、それでもやらかしてしまう危うさみたいなのが若狭…じゃなかった若さが持つ輝きというものなんじゃないかしら。

 お前練習してねーだろ

って匂いがぷんぷん。ただでさえ予選に向けた練習だったりプロセスを省いて「こいつらすごく頑張ってきたよな」がない構成なので、ユニくん筆頭に全国レベルのセッターが一人加入してみんな調子に乗ってイキりだしただけのように見えてしまう。
勝利してもカタルシスがないのです。



ユニ役榎木さんはオーディションに臨むにあたり福井出身の親戚に指導を仰いだとか。
『ちはやふる』で福井弁の方言監修されてたあの方でしょうか。
ついでに主人公二人の名前をもじって“ユニチカ”コンビということで実在した女子バリボーチームのなんかしらオマージュがあったものと信じてます。



視聴時期:2021年1月~3月 リアタイ視聴

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2021.04.14 初稿
2021.12.12 修正

投稿 : 2024/12/14
♥ : 24
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

壁井ユカコ氏・原作小説、待望のアニメ化

原作小説はsecond seasonを集英社文庫版で購読中。

【物語 3.5点】
1クールで{netabare}福井県代表決定戦の決着{/netabare}という区切りまでやり切る。

そのため原作の1stシーズン(文庫本4冊相当)から、
展開、個別エピソードなどを切除し、押し込む。
文芸としての良さを出し切るには尺不足で、
スポ根アニメ風に、無難に締めざるを得なかった感。

ただ、スポ根としても、爽やかさより、心情重視で、
北陸を舞台にした文芸の湿っぽさが先に立つ作風故、
スカッとしたい方は折り合えない可能性。

シナリオの転換点に派手さがないのも文芸原作ならでは。
ここも高校の三年間は、大人が25歳から28歳になるのとは違う密度がある。
大人たちにとっては取るに足らないことも、少年たちにとっては一大事。
といった描写が視聴者に伝われっていれば、これもまた青春と納得できるのですが、
色々、端折った内容で、原作未読組に、届いたのかどうか……。

下手したら、何でこんなことで?結局、引っかき回したいだけなの?となりかねない。
そのリスクが一番大きい脱落ポイントが第5話。
正直、原作既読組の私から見ても、重要シナリオなのに雑だと思いました。


そこを乗り越えれば、終盤、上々の試合描写に酔える。
高校生如きが考え抜いたプランなど、
嘲笑う勝利の女神という皮肉な展開も含めてビターでグッド。

ただ、スピード感重視のため、
作中バレーの専門用語を詳説なしで乱発するスパルタぶりも原作同様w


【作画 3.5点】
アニメーション制作・david production

背景美術は冬の北陸・福井の曇天などを描き込み、
早々、晴れ間が差さない青春の度し難さをフォロー。

人物作画も、決してソースは潤沢ではないが、
ここはキャラデザ・総作画監督の高橋裕一氏らのスタッフ陣が、
試合に賭ける執念の表情、動作等に注力。
最後の{netabare}一撃に賭けた三村統は鬼気迫る描写でした。{/netabare}

印象的なのはCGも交えて再現されたボール。
時にバトル漫画で殴打された顔面の如く、
表皮を波立たせながらコートに叩き付けられるなど、
多彩な“表情”で魅せてくれたMIKASAの公式球が作画面の影の“MVP”


【キャラ 3.5点】
キャラの掘り下げという点で、構成のあおりを受けたのは清陰の二年・棺野。
個別回を飛ばされた上、関連キャラである荊(いばら)ちゃんは人物ごと削除……。
棺野も、フードを目深に被り、時々、女子バレー部で練習したりしていますが、
決して怪しい者ではありませんw(特殊な事情はありますが)

ただ、棺野はまだ思い切ってキャラ整理された清々しさもありますが、
ダメージが大きかったのは主人公の黒羽祐仁(ゆに)でしょうか。
フィジカルに恵まれながら中々バレーに本気にならない。
特に前半部はストレス要因にもなる懸念。

ここも、彼は地元の名家・黒羽家の“本家のボンボン”として、
街の何処行っても注目され、その煩わしさ、甘さから、何事にも打ち込めず、
親戚で不良の頼道に寄り道しているという心情が斟酌されていれば、
共感はできなくても理解はできるのですが……。


もう一方の主役・灰島公誓(きみちか)はバレー馬鹿な部分も含めて“舌好調”♪

そんな生意気な一年の才能と正論に賭けた小柄なキャプテン・小田や、
甘やかさないが認めてはいる長身の青木の凸凹三年生コンビ。

壁となるライバル校の“英雄”三村統(すばる)とマネージャー。

この辺りは“カップリング”含めて掘り下げも良好。


【声優 4.0点】
祐仁……榎木 淳弥さん。青木……梅原 裕一郎さん。統……石川 界人さん。
など豪華男性声優陣が、キツいが温かみがある福井弁の掛け合いを繰り広げる、
県内高校バレー界隈に、
東京から帰って来た灰島……小野 賢章さんが
標準語の言葉のナイフで切り込んでいく構図。

彼女はバボちゃんか~などと方言で突っかかる祐仁に、赤面する灰島w
バレーではえげつなくても、高校生はまだ子供。
男の子って可愛いな~と私を錯乱させる程度にはBLにも訴求する?演技w


【音楽 4.0点】
劇伴は菅野 祐悟氏。小気味よいギターサウンドが大会を好アシスト。

体育館床にボールが弾む音、シューズが鳴る音など、効果音にも臨場感あり。

OPはyamaさんの「麻痺」
バンド&ブラスのコンビネーションが心地良い快作♪
歌詞世界はどちらかと言うと祐仁と親和性が高い。

EDはシンガーソングライター・崎山 蒼志さんの「Undulation」
研ぎ澄まされた個性的なボーカルで、青春を達観したようなエッジの効いたメッセージを放つ。
どこのオッサンなんだろう?と思いきや、御年なんと18歳!若くして悟り過ぎでしょうw
因みに40歳になったら出家したい願望をお持ちだそうですw



以下、放送前の勇み足長文。長いので折りたたみw

{netabare}
ライトノベル作家の登竜門・電撃小説大賞。
かつてその大賞を二年連続で女性作家が制した時期があります。

2003年(第10回)が有川 浩氏。
そして、その前年(第9回)が壁井 ユカコ氏です。

ゼロ年代の同賞は、本当に凄い新人を続々と発掘していましたが、
その中でも、特に、このお二人は文体から既に新人離れしていて、
これは、一介のラノベレーベルの人気作家で収まるスケールじゃない。
電撃文庫もとんでもないことになって来たな。
と、興奮したことを今でも覚えています。

その後、両人はラノベ界から文芸界へと活動の場を移して行きましたが、
有川氏が“大人向けのライトノベル”を志向して、
ヒット作、映像化作品を量産し、一般に認知されていったのに対して、
壁井氏は、ドロリとした描写もあってか?
ここまでアニメ脚本経験はあれど自作の映像化はなし。


ところが今年に入って、壁井氏の小説がついにアニメ化されるらしいと聞き及び、
浮き足だった私は、2012年よりWEB文芸サイトで連載されているという
この高校男子バレー部の青春小説シリーズを手に取り、
久々に壁井ワールドへと足を踏み入れました。


ストーリーは中学時代からの業を抱えた登場人物が高校で……というスポ根の王道。
一方、描写は相変わらずドロっと重たい壁井節。
ザラリとした文体から、アクション描写(本シリーズではバレーの描写)は、
読者のイマジネーションを信じたスピード重視のキラー“トス”を。
心情描写は、心に一体どんな重しを抱えてささくれたら、
目に映る風景がそんなに歪んで見えるんだ。
という主観視点でネットリと。

大体、人物名からして灰島だの黒羽だの、棺野だの荊(いばら)ちゃんだの。
心に土足で踏み込んだら返り討ちにされそうな、
危険な雰囲気がピリピリと伝わって来ます。

で、毒沼に引きずり込まれて悶えている読者のハートに、
試合の流れを読むセンスは抜群なのに、人間関係の空気は読まない
訳あり天才セッター・灰島 公誓(きみちか)の剥き出しの毒舌鋒が突き刺さる。


そんな毒々しいムードに吸い寄せられたのか?
2021年1月よりフジ「ノイタミナ」他で、
david production制作により放送予定の本作には、
シリーズ構成に黒田 洋介氏、
音楽に菅野 祐悟氏など濃い面子が集結♪

ただ、2021年冬もまた深夜アニメは激戦ムード。
そもそも、男子高校バレーの青春アニメ枠には既に、
某ジャンプの人気作が君臨し需要を満たしており、
弱小高校が強豪校相手に下剋上を目指す本作のベタなシナリオ同様、
商業面の戦前予想は苦戦必至……。

原作の醍醐味であるドロっとした心情描写を斟酌できなければ、
変哲もないスポ根物で終わりかねない。
だからと言って、練り上げられた選手各々の過去について、
一人一人ジックリ、ネットリ掘り下げていたら、
ろくに大会もできないまま放送が終わってしまう。
脚本、構成等、良作へのハードルも低くはない。


大体、何で舞台が福井なんや?
そう首を傾げていた私は失念していました。

福井県と言えば、スーパーエース・ガイチこと中垣内 祐一氏(現・全日本男子監督)の出身地。
福井のご当地マイナーアニメと舐めてかかると、
青春の葛藤など諸々詰め込んだバックアタックに吹き飛ばされる!?

黒を纏った奴らがどんなコンビネーションアタックを繰り出してくるのか?
私も引き続き原作小説をめくる指関節をポキポキ解しながら攻撃に備えたいと思います♪{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 22

68.3 6 ノイタミナで熱いなアニメランキング6位
バクテン!!(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (121)
344人が棚に入れました
笑ったぶんだけ高く、泣いたぶんだけ強く」中学生活最後の夏、『男子新体操』と出会い、強烈に魅せられた少年「双葉翔太郎」。私立蒼秀館高等学校(通称:アオ高)に入学した翔太郎は、男子新体操部の門を叩く。そこには、個性的な先輩たちと、中学男子新体操のスター「美里良夜」がいた。何か一つのことに懸ける、熱い青春の日々。ときに挫折し、すれ違うも、共に仲間と過ごす毎日の中で、一生懸命一つの目標に向かって、チームでひた走る姿を描く「スポ根×青春群像劇」。この春、情熱を懸けた本気の青春が、始まる――

声優・キャラクター
土屋神葉、石川界人、小野大輔、近藤隆、下野紘、神谷浩史、小西克幸、鈴村健一、杉田智和、斉藤壮馬、山下大輝

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

バクテ…ン がしたいです!

オリジナルアニメ


取り扱うのは“男子新体操”と馴染み薄いやつ。
と言いながらローカル局で青森大学の男子新体操部を紹介してたのは覚えてます。
私の記憶が正しければシンクロ男子映画『ウォーターボーイズ』流行時の文脈で紹介されてた気がします。今回は同じ青森の青森山田高校男子新体操部が監修だとか。

ふとしたきっかけで競技に触れ、バク転の美しさに感動し男子新体操にチャレンジしていく双葉くんが主役。仲間たちと共に切磋琢磨していくスポーツものです。
いたって平凡ではありますけど、以下の2点「東北」と「作画」で他と差別化できる気がします。


1.東北にフォーカス

主人公高校の部の仲間たち

 双葉翔太郎(CV土屋神葉)
 美里良夜(CV石川界人)
 七ヶ浜政宗(CV小野大輔)
 築館敬助(CV近藤隆)
 女川ながよし(CV下野紘)
 亘理光太郎(CV神谷浩史)
 志田周作(CV櫻井孝宏)
 栗駒あさを(CV佐倉綾音)

これ見て「イケボ集めた女子向けか!?」となる前に注目は苗字ですかね。すべて宮城県を中心とした地名から取られてます。どうやら震災きっかけの東北関連プロジェクトだとか。
もともと男子新体操が強めな土地柄ですし、無理くり聖地需要を起こしたみたいなあざとさも特に感じません。とっても自然。


2.いろんな意味で作画

映像見てるだけで楽しいです。
『Free!』『ユーリ!!! on ICE』に連なる目が楽しい作品です。ありえないアングルやエフェクトかませるのはアニメーションだからこその素晴らしさがあります。それを体感できます。

・グルグル回りまくるMATRIXアングル
・床下から捉えたかのようなアングル
・カメラにぶつかるだろう近接アングル

広角レンズで撮影したような演出もありました。どれもこれもVFXで多額の金かけないと無理ゲーな表現です。作画作画と五月蠅いこと普段は言いませんけど、「だからアニメ観てるんだよ」の一つの理由になりうる画でした。


たしか『Free!』『ユーリ!!! on ICE』も女性監督だったような。こちらは監督違うみたいですが、キャラデザ、作監さんは女性っぽい。綺麗なもん観れますよ。
男子ばかり出てくるアニメだと条件反射的に待ったかけたくなりますが、そしてそんなこんな男いねーよな作品多くて辟易もしますが、本作は軽めなテイストです。
気にならないか目を瞑るかとりあえず映像楽しむくらいの気持ちで臨まれたらよろしいかと思います。ストーリーは凡庸ですがお釣りがくるはず。

平均点でみるより秀でた一芸に身を委ねる作品。
それに俺たちみんなガキの頃はバク転したかったじゃんと遠くを見ながら目を細めときます。



視聴時期:2021年4月~2021年6月 リアタイ

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2021.07.02 初稿
2022.05.26 修正

投稿 : 2024/12/14
♥ : 28

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

男子新体操は未知の分野

== [下記は第5話まで視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第5話まで視聴し終わった時点で、このレビューを書いています。

採点競技も含めてテレビのスポーツ中継はわりと好んで観ている方だと思いますが、新体操って本当に「観てるだけ」で採点基準とか技とかをほとんど気にしないでこれまで観てきた数少ない競技です。
(他の競技はたいてい基本ルールくらいは知っている。)

ましてや男子新体操なんてほとんど観る機会のなかった競技で、このアニメを通じてやっと基本の基本がわかりつつあるという感じです。で、どうやら男子は女子とは違いボールやバトンなどの器具とかは用いず、身体運動のみの表現なんですね。

ごくごく大雑把に捉えると「体操の床運動を集団で動きを揃えてやる」というイメージの競技のようです。

この作品では主人公を含めてメンバーや指導者は男子ばかり、ごく少ない女子としてはマネージャーと主人公の妹くらいしか出てこないので、女性キャラ目当ての需要には全く応えない作品です。

ただ、個人的にはタイトルになっているバクテンを始め競技中に行われる技やその練習方法などに興味が持てることと、ストーリー的にわりと普通の高校部活スポ根物というところで高めの視聴モチベーションを保てています。

たぶん最終話まで観ると思いますが、男子新体操という内容に関心がない人にはお勧め出来ないお話であると言えそうです。
== [第5話まで視聴終了時のレビュー、ここまで。] ==

2021.6.25追記:
最終話まで視聴終了しました。

「劇場版制作決定」とか放送終了直後に出てきていた気もしますが、一応地区大会という区切りを迎え、このTVシリーズとしての締めはできているのでそれはそれでアリだと思います。
(でも、私はたぶん映画館に劇場版を観に行ったりはしません。)

ストーリー的に特に超展開的な点もなく、悪く言えば平凡なアニメですが特段悪いところもなかったんじゃないかと思います。

並み以上の出来のスポ根もので、ほとんど知らなかった「男子新体操」という競技を理解する機会を与えてくれたので、個人的には観て良かったと思いました。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 21

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

洗練されたモーションでお上品な爽やかスポーツアニメ

男子体操部アニメ。
キャラクターの口調や性格など、全体的に女性向け作品の特徴が強く出ていますが、BLではないので男性でも楽しめると思います。

全体的にお上品な感じでちょっとマジメすぎる。
スポ魂の暑苦しいアニメを求めている人はちょっと違うかな。
気になったのは主人公のなよなよしたしぐさとしゃべり方。

作画は良い時と悪い時の差が結構あり、特に引いた場面で人物画の手抜きが目立つことがあるが、競技が始まってからの手先から爪先まで洗練されたモーションの美しさと集団での統率のとれた動きは素晴らしく、それだけでも視聴する価値がある。

これは物語というより芸術作品としてみるのが正解かも。

キャラの髪の毛が派手なのと、仲間同士の慣れあい多めの作風、キャラの口調の印象で軽い雰囲気に感じるので、好き嫌いは分かれそうだが、競技部分のデキが非常にいいので、ぜひ見て欲しい。

嫌な感じのキャラクターとか、不快な展開もあまりなく、終始爽やかなスポーツアニメで、最後まで安心してみていられた。

もうちょっと熱さが欲しいところだが、素晴らしいスポーツアニメだと思う。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 20
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