ディストピアで小説原作なおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのディストピアで小説原作な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月28日の時点で一番のディストピアで小説原作なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

71.6 1 ディストピアで小説原作なアニメランキング1位
NO.6 ナンバーシックス(TVアニメ動画)

2011年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (1085)
6003人が棚に入れました
2013年、理想都市『NO.6』に住む紫苑は、9月7日が12回目の誕生日であった。だが、その日は同時に彼の運命を変える日でもあった。ふとしたことから、『矯正施設』から抜け出してきた謎の少年、ネズミと出会う。彼を介抱してあげた紫苑だが、それが治安局にばれてしまい、NO.6の高級住宅街『クロノス』から『ロストタウン』へと追いやられてしまう。それから4年、謎の事件をきっかけに彼は様々な事件に巻き込まれ、いろいろな人々と出会う。そして、理想都市が成り立っている裏側にある現実・『理想都市 NO.6』の隠された本質と意図を知っていく・・・。

せもぽぬめ(^^* さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

外部から内容を補完しないと感動できないって・・・(>o<")

■NO.6ってどんなアニメ(*゚・゚)ンッ?
「NO.6」ってなんの事だろう・・・っと思いつつ見始めました!
ジャンル的には近未来SFという事でしたね♪
そして背景はというと、世界が荒廃した後に、人類は6つの理想都市でやむなく生活することになったのです。
そんな6番目の都市「NO.6」では住民を完全管理して住民に安全で不自由のない生活を与える反面、少しでも疑問を持った住民に対しては非人道的な処置を行うような裏の顔を持った都市でもあったのです。
そんな管理社会に疑問をもったNO.6の外に住む住民とNO.6の治安局との対立と、殺人蜂の事件から愛するものを守るために立ち向かう主人公のシオンと、NO.6に憎悪の念を向けるネズミという少年との出会いからお互いに変化する心情を描いた壮大な世界観の物語なのです♪
 
 
■前半までみた感想なのですよ(*^o^*)
1話はプロローグって感じなので、2話でいきなり4年後のお話になっちゃうので本格的な本編はここからですね(>o<")
なので、1話で切ってしまうというのはやめたほうが良いような気がします♪
 
印象的には近未来SFという事で、設定自体はありふれている感じですよね♪
なので、力で押さえつける社会に立ち向かう構図に「またかっ!」って思う人もいるかもしれませんけど、アタシσ(゚-^*)は嫌いじゃないですし、ベタとも言う設定の中でどれだけの個性を表現できるかに注目していきたいと思っています♪
 
そしてこの作品でよく耳にする「BL」やら「ホモ」についてはまったく当てはまらないと思います!
もともとアタシσ(゚-^*)自身が「BL」苦手なので、この作品を後回しにしていた原因だったのですけど、いざ見始めたら何てことはありませんでしたよ♪
シオンとネズミの出会いが、お互い自分では今まで気付いてなかったけど、心の奥底で求めている物を持ってると感じたから惹かれあって、それが「性的な愛」ではなくって「家族愛」的な感情だったのではないかと思いました。
なのでそんな愛を表現した描写がちょっとそれっぽく感じられるのかもしれませんけどね♪
*** 追記 start ***
って思ったのですけど・・・最終回を観て前言撤回です♪
キスシーンの手の添え方は・・・ゾクッと鳥肌が・・・私的にアウトー!!でしたΣ( ̄ロ ̄lll)
*** 追記 end ***
 
とにかく、ちょっとダークで壮大な世界観と、その中で自らの運命に抗うように行動を起こすシオン達の心理描写が丁寧に描かれている印象なので、後半に向けての展開にも大いに期待が持てますね♪
 
ネズミが「シェイクルピア」の『マクベス』が好きだっていう設定もちょこっと注目してみたいです♪
宿命の名の下に自らの野心と罪を正当化して、責任を免れようとしたマクベスの弱さから、自ら悲劇を招いたような内容の物語なので、ネズミがどのように感じて好きになったのかも何気なく注目していこうと思ってます♪
 
後半に向けて、殺人蜂の謎が何なのか、サフちゃんはどうなるのか、そしてシオンとネズミの関係は今後どのような方向に向かっていくのか、見所が多いだけに楽しみですね♪
 
 
■総評(最終回を観終えて♪)
作品としても・・・物語としても・・・残念な結末になっちゃいまいたね(>o<")
全体的に感じた印象は自ら課した壮大な世界観や設定を生かしきれずに終わってしまった感じです!
そもそも、1クールで纏められる内容ではなかったって事でしょうね。
特に最終回を見終わって、(゚Д゚) ハア??って思ったので、色々内容を見直し補完した上でもう一度最終回を見直しました∑(; ̄□ ̄A アセアセ
その上で、パチッ☆-(^ー'*)bナルホドそういうことかって、やっとジーンと感じることができました!
 
この作品の肝でもある、『ネズミ』と『森の民』と『エクステリア』と『NO.6』の関係や、と『サフちゃん』と『エクステリア』の間で結ばれた約束など・・・その他たくさんの大切な部分の描写がごっそり抜けているような気がします!!
それと、シオンとネズミの関係も、最後の結末に行き着くまでのプロセスでそんなに力をいれて描く必要があったのかも疑問です、微BL臭と言う中途半端な描写をするならもっとクローズアップするところがあるでしょって“(`(エ)´)ノ彡☆ プンプン!!しちゃいました!!
途中まではよかっただけに・・・あぁ~もったいないって印象です♪
 
それと、原作は読んでないですけど、おそらくこの作品は原作小説で楽しむべきなんだと悟っちゃいましたw
原作小説を読んだことのある人のレビューを読んでみたいですね(>o<")
 
 
■MUSIC
OP曲『Spell』
 歌:LAMA
 ナンバーガール・SUPERCARを知ってる人には嬉しい曲ですね。
 シンセの音色が心地よいオルタナ・ロックでこの曲を聴いてNO.6を観る決意をしましたw
 
ED曲『六等星の夜』
 歌:Aimer
 Aimerさんって1st singleがこの曲だったのですね♪
 ちょっとハスキーなボイスが切なさを感じさせるしっとりしたナンバーです♪
 
2011.09.04・第一の手記
2011.09.17・第二の手記(追記:総評/MUSIC)

投稿 : 2024/12/28
♥ : 61

オオカミ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

きみに出逢えて良かった。

他の方々のレビューを見ると批判的なものと良い評価のものがあり、感想の内容が錯綜していてなかなか見ないでずっと後回しにしていた作品。

原作未読

タイトルだけではどんな話とかジャンルとか全くわかりませんでしたが、ノイタミナ作品、あさのあつこ原作とういうので見る前から面白そうな作品という認識はありました。



声優はとても良くキャラにあっていてとてもよかったです。

キャラは僕的には好感が持てる人ばかりだった。シオンは純粋だが天然で、人を引きつける人だしネズミは、冷酷な部分はあるが、情が深く優しい人なんだなと思った。ヒロインははっきりと何でも言う子だけど、とても優しくしたたかな凛々しさを感じた。

作画の方はまあまあ。キャラ描写や風景も動物も良く、特に動物は自然体な感じで好感が持てます。だが、全11話の中で10、11話は作画が微妙でした。他の話では、文句のある部分はありませんが、その話の戦闘シーンは壮大に描きたいのはわかるがあまりにも雑で少し繊細さがなかった。ネズミの顔とか一瞬あれ?っと思うときがあった程だ。


音楽もとても良かったように思う、作中の歌では7ghostの鎮魂歌や、それでも世界は美しいの歌、Kの作中での歌を思い出させるような感動できるものだと思う。


物語のほうは良く11話でまとめたなと関心する感じだった。内容が深いものだから2クールでも全然良いと思う作品だった。
blと言われる作品だが、あまりあからさまな描写はなく、胸中で秘めている感じだった。No.6という都市に住んでいたがその身を追われて助けられる少年と、No.6を憎み命がけで恩人を助ける少年。いつか敵になるかもしれないからと距離を置こうとしたり、心理描写の方はとてもよかった。僕は特にネズミの心情が好きでした。ヒロインも愛している人への暖かみのある心情にとてもひかれました。ラストの話のネズミとサフの歌のシーンはジーンとなにかくるものがありました。
結構、シオンとネズミ、あとイヌカシは良い台詞をたくさん言っていたのでそこも期待できるところだ。
惜しいのは、最後の方は少し話しを詰め込みすぎてもっとじっくりとみたかったと思える印象でした。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 9
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

理想が生み出す権力社会に捕らわれた女王蜂を解放するために

2003年から刊行されている、あさのあつこ氏による
近未来SF小説が原作だが未読で、ほとんど予備知識ゼロの視聴だった。

理想都市「No,6」に住んでいた男の子、紫苑が主人公。
2013年、12歳の誕生日を迎えた彼の家に、
矯正施設から逃亡してきた謎の少年・ネズミが侵入。
何の疑いもなく匿い、撃たれた怪我の応急処置をしてやる紫苑と
人間不信のネズミの運命的な出会いから始まり、2話からは4年後の話に飛び、
早いテンポで進みながら、理想都市の裏側に隠された現実が暴かれ、
2人それぞれの目的のため、物語は壮大なスケールへと展開していく。

1話、2話のスピード感と迫力あるシーンにすぐ惹き込まれ、
天然で、天使のような優しさを持つ甘ちゃんな秀才の紫苑よりも、
自然児的な敏捷性と賢さを持つ謎めいたネズミの
生き延びようとする強烈なエネルギーの魅力に
結局最後まで引っ張られたという感じ。

この作品のテーマとして、理想を追求するがゆえの権力社会が生み出す
歪みへの反発と、白か黒か、敵か味方か、壁の内側か外側かという
二者択一的な考えでなく、第3の選択肢もあるという提案、
そして生きていくことへの讃美が感じられた。

第3の選択というのは男か女か、恋愛か友情か、という2分割じゃなく
性別を越えた人間愛と表現したら近いかもしれない感情が
紫苑とネズミの関係や、性別を明かされないイヌカシに見受けられたし
生きていくことへの讃美は、ネズミの言動だけでなく
紫苑が助けた赤ちゃんに込められていたと思う。

そして、No6という市に忠誠を誓わせられ、
少しでも不満を持つと不穏分子とされて排除されるシステムや、
市庁舎の屋根や床の模様が蜂の巣のようなデザインだったり
人間に寄生する蜂や、女王蜂の姿をしたエリウリアスなど
理想都市の成れの果て=権力社会は、なにかと蜂の社会に揶揄されていた。

それから、他のレビューを拝見するとBLと書かれてたりするが、
軽いキス程度でそう決め付けるのはどうなんだろう?
失いたくない大切なものの存在と、
その存在を自分の命をかけても守りたいという感情は、男同士の恋愛だとか
友情という言葉で片付けてしまえるような簡単なものじゃなく
過酷な状況に置かれた中での戦友みたいな、複雑な感情があったように思う。

でなければ{netabare}別々の道を行く{/netabare}最終回のラストシーンに
納得いかなくなってしまうからね。
そもそも、2人は最初から相反する性格だったし、目的も違っていたのだから。
親友のように同じ方向を見るのでもなく、自分にないものを持つ者同士、
相手を観察しながら驚いたり、憧れたりして惹かれていったのだし、
生活を共にすることで喜怒哀楽の様々な感情に気づいて影響しあい、
絆と信頼が深まったものの、それは恋愛感情に限りなく近いとしても、
性的な吸引力ではなかったはずだ。

ちなみに、原作者のあさのあつこ氏は5年前の雑誌『ダ・ヴィンチ』で
この作品について、「私は友情と恋愛の区別ができないからこそ濃密で独特な
感情というものを書いていきたい」とコメントしていたとのこと。

しかしながら全11話では、伏線が回収し切れていなかったり、
謎が残ったままだったり、少々ご都合主義な部分があるのも否めない。
手先の演出から伝わる心理描写や、編み棒などの細かい表現、
いいセリフもたくさんあっただけに、
最後で詰め込みすぎてしまったようなのが、とても残念だし
深く感動できなかったのはそのせいだったんだと思う。
良く言えば、視聴者にその後を想像させるような余韻ある終わり方だったけどね。
そしてAimerの唄うED「六等星の夜」がとても良かった。
原作は面白いのかもなぁと感じるので、機会があったらぜひ読んでみたい。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 35

65.3 2 ディストピアで小説原作なアニメランキング2位
<harmony/>(アニメ映画)

2015年11月13日
★★★★☆ 3.7 (272)
1423人が棚に入れました
優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。13年後、死ねなかった少女トァンが、人類の最終局面で目撃したものとは?

声優・キャラクター
沢城みゆき、上田麗奈、洲崎綾、榊原良子、大塚明夫、三木眞一郎、チョー、森田順平

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

現代医療の在り方に対する危機感を掻き立てられた作品。政治思想的レビューです。

2015年放送の劇場版アニメ 120分

原作 伊藤計劃 監督 なかむらたかし マイケル・アリアス 脚本 山本幸治
制作 STUDIO 4°C

原作は2008年にハヤカワSFシリーズとして刊行された伊藤計劃の長編小説。

2019年に起こった大災禍「メイルストロム」(世界戦争と未知のウイルスの蔓延)により、
世界は新しい統治機構によって医療経済社会が築かれた。
全ての人類が社会のために健康・幸福であれ、がこの社会の名目である。

舞台は新世界確立から50数年後の日本やバグダッドやチェチェン。
主人公は
霧慧トァン CV沢城みゆき
御冷ミァハ CV上田麗奈

監督のマイケル・アリアスと制作会社は鉄コン筋クリートのスタッフ。

さて、この作品は本格SF小説のノイタミナ系アニメ化と言うことで、
地味に話題になってそれなりの動員は記録したようです。
日本のアニメファンのレベルの高さが証明されて嬉しいことです。

病気の無い幸せな世界と言われれば、同じノイタミナ枠で放送された、
犯罪の無い幸せなはずの世界「サイコパス」を思い出しました。
世界の設定が少し似ていますが、こちらの原作が先発なので参考にされたと思われます。

感想としてはサイコパスを観ていなければ設定の緻密さに驚いたであろうと言う程度です。
現代から続く世界的組織WHO(世界保健機関)が独裁的ではないにしても、
強大な権力を持っていて、「メイルストロム」のような危機に備えています。

医療経済社会に関しては現在進行形なので警告を発する作品かと思いましたが、
それほどのメッセージ性は感じられませんでした。

現代日本に例えれば、国民保健を値上げすることで、絶対多数の下層階級から金を巻き上げ、
癌などの無駄な医療で医療機関に金を回し、一部だけの景気を上げる。
国民保健医療機関は脱税が不可能なので、財務省に金が入り、
下層階級のなけなしの金は医療と言う名のもとに国に吸い上げられているのです。
それでいて日本の医療は先進国中最低レベルです。
金が入るタイプの医療にしか興味が無いからです。
サイコパスにおいても厚労省の肥大化が描かれましたが、現在進行形です。

日本が貧乏になった理由は原子力と医療に金を吸い上げられたため、
資格が紙切れになったのは医師免許に権力が集中したためです。

このSFアニメを観ればこういった日本の現状が思い浮かびますが、
それだけで、作品によるメッセージは見当たりません。
当然ですね、権力が集中しつつある医療には逆らえないからです。

日本は抗がん剤の実験場になっていますが、だからと言って海外諸国がまともとも思えません。
癌の治療法を開発したシモンチーニ博士は抗がん剤マフィアに命を狙われ、
現在はイタリア軍の厳重な保護下にあります。
これただの重曹治療でですよ。

WHOが厳重に摂取を抑制させようとしている「塩」は癌予防薬です。
エイズや新型インフルエンザをばらまいたのがどの組織なのか、
知識人なら常識ですね。

このアニメはストーリーよりもこのような会話をしたくなる作品です。
利権を持っている者、医療関係者や公務員は必死の攻撃を始めます。
それは現代のファシズムと言ってよいでしょう。

癌センターや指定病院を現代のアウシュビッツと呼ぶ人も居ます。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 23

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

すばらしい新世界-Brave New World-

2015年11月27日記載
さっそくレビューを始めていきたいと思います。
今回は伊藤計劃『ハーモニー』の映画を観てきました。
私の個人的感想を徒然と書いていくので、よろしければご参考までにどうぞ。

まずは世界観説明から
2019年のアメリカ合衆国で暴動が起こりました。
それをきっかけとして全世界で戦争と未知のウィルスが蔓延
人類の多くが死に絶えたそれは「大災禍(ザ・メイルストロム)」という名前で後に語られ、その反動か、従来存在していた政府と言う概念は崩壊し、新たな統治機構「生府(ヴァイガメント)」の下で高度な医療経済社会が築かれる世界が誕生します。
そこに参加する人々自身が社会のために健康・幸福であれと願う世界が構築された、優しい牢獄の世界
これはそんな社会に反抗し続けた少女達の物語なのです…

さて、ここからは私の感想を書いていきたいと思います。
今回、正直言ってこのアニメはレビューを書こうかどうか大変迷いました。
伊藤計劃作品は全部レビューしていこうと、前回の『屍者の帝国』を観てから固く誓ったのですが、この作品を見てからはちょっと決心が揺らいだ位です(笑)
これは自分の個人的価値観のせいでもあるのですが…
まあ、その理由については下記の方で書いていきたいと思います。
なので、フォローも交えて説明していきますが、今回の『ハーモニー』のアニメ映画に好感を持てた方、百合というよりレズ描写、グロ描写が大好きな方、原作未読の方はもしかしたら納得できない部分も多々あるかもしれません。
なので、この先を閲覧するかどうかは自己判断でお願いします。





では、これより説明していきたいと思います。
大まかな理由として
1.理解する事と共感する事は違うという事
2.レズ描写の増加
3.小説から映画への転換と2に伴って起こる原作改変
この3つが挙げられます。

まず、1から
私は原作既読なのですが、正直に言って、原作を読んだ時は生命主義体制(ライフイズム)もミァハの思想も共感できるものではありませんでした。
何と言うか、ひどく極端なんですね…
生命を社会的公共財として捉える生府(ヴァイガメント)の理念も、ミァハの生命主義(ライフイズム)に対して行うテロ行為も客観的に見たらとても横暴なんですよ。
勝手な考えで人々を動かしているのはどっちも変わらないじゃんと最初に読んだ時は酷く冷めた目で感じていました。
なので、今回の映画で何か心が傾く要因となる物が出てくるか、少し期待して観に行ったんです。
観に行った結果として、私が揺り動かされる事はありませんでした。
むしろ、逆に横暴だと言う自分の考えがさらに強固になった次第です(笑)
うん、やっぱりどっちにも理解は出来るけど共感は出来ない。
しかし、この映画を見てどちらかに共感する人は必ず出てくると思います。
人間の考えは千差万別です。
むしろ当てはまらない自分みたいな奴が異端なのだと思います(笑)
なので、この映画を見てどう感じるか
生府(ヴァイガメント)の理念に共感できるか、はたまた、ミァハの理念に共感できるか、もしくはどちらの意見にも共感できないか自分の眼で見極めてほしい。
その為にもまだ観ていない方は是非、1度は映画館や後に出てくるであろうレンタルなどで観てほしいと私は思いました。

次は2について
単刀直入に言います、原作よりレズ描写が明らかに多いです。
原作では普通だった箇所もレズっぽくなってます。
また、新たに作ったのか、はたまた私が忘れているのか分かりませんが、自分の知らないレズシーンまでありました。
私は随分前に見た某アニメのおかげで、女同士の恋愛に対しては嫌悪感を覚えるまでのトラウマを抱えてしまったので、正直観ててつらかったです…
小説でも百合を1つの土台としてはいるものの、地の文と組み合わせて淡々と表現しているので、そこまで悪寒はしなかったのですが、映像化するとなると恐ろしいですね…改めてそう感じました(笑)
また、グロシーンも結構すごいです。
『屍者の帝国』よりも気持ち悪く感じました、精神的にきます、驚きます、血がドバドバ出ます。
これらが嫌いな人は少し覚悟して観た方がいいでしょう。
ああ、勿論大好きな方はどうぞ期待して観てください。

最後に3について
これがこの映画で1番納得できない部分でした。
1や2については主に私だけの個人的問題なのでいいのですが、この3だけは原作既読の方でも納得できない人は多いかと思います。
端的に説明していきましょう。
まず、説明セリフのオンパレードです。
未読の方はこの映画だけを観て理解できるのか、少し分かりませんね…
あまりにも喋っている場面が多いので、聞き逃すとストーリーが把握できなくなるかもしれないです。
映画として表現するにあたっての工夫があまり感じられないような気がしました。
ただ、小説をそのまま映像化しただけのような…
まあ、これは原作自体が説明の多い小説ですし、演出を吟味した結果なのだとしたらしょうがない事なのでしょう。
次に重要なシーンが結構抜かれています。
最初に上映した『屍者の帝国』も重要なシーンは抜かれていますし、映画では登場していない人物も数多くいました。
しかし、あの映画は再構成と言う形で未読の方にも分かりやすく伝わるよう工夫した結果、牧原亮太郎監督版『屍者の帝国』として生まれ変わったのです。
この点に関してはただ、素直に拍手を送りたいです。
さて、『ハーモニー』の映画はそれとは逆に原作を忠実に作りました。
ただ、その結果、フォローの回りきれていない部分があったように思います。
最初の物体は何なのか?
意識が消失すると言う細かい意味とは?
最後に登場した人物は一体誰なのか?
あんなにキャラクター達が喋っているのに、説明不足な点が多いですからね…
改めて、映画化するにあたっての難しさを感じたような気がします(笑)
まあ、しかし、やはり原作全てを映像化するのは不可能な事
2時間で収めるならば、所々カットしなければいけない箇所もあるかと思いますので、これもまた、しょうがない事でしょう。

しかし、これだけは言わせてください。
ラストシーンを変えたのは流石にどうでしょうか?
原作では霧慧トァンという1人の女性が御冷ミァハという女性の影をある種の執念で追い続け、最終的にはミァハからの独立、明確なトァンという1つの個へと至る物語でした。
しかし、この映画では最初から最後までトァンはミァハの事しか考えていません。
その結果、ミァハという自分に指針を与えてくれた親の如き存在から離れ、前に進んでいくトァンの成長というカタルシスがろくに感じられなかったのが心残りでした。
そして、最後に彼女はミァハに対して自分の答えを出す為にある行為をします。
その行為をした理由となる答えも原作とは変えられ、しかも原作の方が好きだったので、これもまたちょっと心残りでしたね…


以上を持ちまして、個人的感想を終了したいと思います。
ここまで長々とした駄文を読んでくださってありがとうございました。
今回は少し毒の強いレビューとなってしまったので、ちょっと残念です。
しかし、ここで1つ言っておきたいのですが…
この『ハーモニー』映画の全体的出来としては決して悪い訳ではありません。
上手く原作をまとめているなあと感じる部分もありましたし、改変でよかった箇所もありました。
恐らく、この作品は映画と小説、両方見て初めて完成する作品なのだと思います。

「事実は小説よりも奇なり」と言う言葉があります。
現実に起こる出来事は、作られた物語の中で起こる事よりも不思議で面白いものだという意味の諺です。
正直、私自身にとってみればあまり実感のない言葉でした。
その意味についても本当にそうだろうか?と首をかしげている普通の一般的な現代人です。
現実よりも小説の方が面白く感じる時もあるし、そんな考えに至るには、毎日、充実した日々を過ごすしかない。
だが、そんな幸福に溢れた生活などあり得ないと、その言葉を最初に学んだ時は斜に構えた眼で見ていました。
しかし、この映画を見てから、その諺の意味が少しだけ理解出来たような気がします。

よく考えてみると、この諺は決して現実と物語を分けてはいません。
物語は現実と断絶して存在している訳ではない。
確実にそれは読者にも何かしらの影響を与え、その結果、変わらない日常が変化していく人も中にはいます。
「影響」と言う言葉で片付けるにはあまりにも強い力
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を読んで自殺者が急増するように
坂口安吾の『堕落論』を読んで若者が新たな価値観を植え付けられるように
物語に感化された御冷ミァハから影響を受けた霧慧トァンのように
そして、伊藤計劃という個人の作品に没入している私達のように……
その結果、彼らは、私達はどのような方向へ導かれていくのか?
それは誰にもわかりません、歴史もしくは観ている我々、傍観者が判断するしかない事でしょう。
ただ1つだけ言えるとするならば
その力こそが現実を面白くさせる1つの起爆剤になるのではないかという事

それはこの映画からも同じことが言えます。
あなたは『ハーモニー』を観て、どんな影響を受けるでしょうか?
もしくは何も感じずに終わるでしょうか?
しかとこの目で確かめる為にも、この映画1度は見るべきかと存じます……

ここまで読んでくださってありがとうございました!!

「フィクションには、本には、言葉には、人を殺す事のできる力が宿っているんだよ、すごいと思わない?」
伊藤計劃『ハーモニー』p.224,早川書房


2016年1月24日追記
いまから語るのは、
〈declaration:calculation〉
〈pls:敗残者の物語〉
〈pls:脱走者の物語〉
〈eql:つまりわたし〉
〈/declaration〉 [ハーモニー]
と言っても、この映画については1年前に概ね語り尽くしましたね…
今作の批評も、今思えば感情に任せて書いた文章でございます。
しかし、よく考えたらそのスタンスは現在の自分と未だに変わっていないというか、未だによく行っている事に書いていて気付きました。
自分の理性的であり合理的な部分を占める成長は、この先「闇」しかないのかもしれません(笑)

しかし、この『ハーモニー』と言う映画
観ていてつくづく考えてしまうのは、社会を構成していく難しさです(ディストピア小説なので当然と言えば、当然の話なんですが)
より良い社会に住みたいと思う事は万人において普遍的な共通性ですが、しかし、その社会的「善政」が万人に良い効果をもたらすとは限らない…
構成員である人々誰もが「善性」であれば、社会は幸せになるのか?
『ハーモニー』と言う作品はそんな問いにも深く言及しているようです(まあ、私が1番好きなキャラはキアンなんですけど(笑))
しかし、社会は無理でも世界なら…
2人ぼっちの世界なら…
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彼女が死んでいく間、私は誓った。
天国とまではいわないけれど、できるかぎりここを、この場所を良くしてみせるよ、と。
彼女はそれを聞くと、にっこり微笑んだ。
そうね、天国とはいわないけれど、天国の隅っこくらいまではたどり着きたいわね、と。
それが彼女の最後の言葉だった。
伊藤計劃『The Indifference Engine』「フォックスの葬送」より
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さて、前作『屍者の帝国』から始まり、今作で分岐点を迎えた長いプロジェクトは来月の「終わりの始まり」を上映する事によって、遂に終焉を迎えます。
ここまで至る道は1年以上に亘った大変長い物でしたが、何、なんて事ありません。
人間の魂に及んだ解答が1年と少しで解明されたんです、こんなに短い物は無いでしょう…
しかも、どうやら深夜に『屍者の帝国』と『ハーモ二ー』が放送されるそうですね、こんなに嬉しい事は無いでしょう…
私も深夜放送で「終わりの始まり」に至るまでの雄姿をもう1度拝見し、それから最後の戦場、ジョン・ポールとの戦いへ臨みたいと思います。
そして、「伊藤計劃」の全てが揃ったその時はもう1度全体を観るとしましょう、読みましょう!!
「物語…それは死してなお、この世界にあり続ける技術」

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さあ、行進しよう、とぼくは穏やかに呼びかけた。
のろまも、せっかちも、思い思いに。
足並みなんてばらばらでかまわない。
のっぽも、ちびも、僕らは歩く。
丘を下って。
人の営み、生活の匂い
それを運ぶ涼やかな風の上方へと。
伊藤計劃『The Indifference Engine』「The Indifference Engine」より
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投稿 : 2024/12/28
♥ : 15

米麹米子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

中々に重いお話ですぞ

HTML書式風味?で始まる未来の光景からは
想像つかない程にラストは濃厚。
脳医学ちょっとかじってれば
理解できると思うけれども、別に知らなくても
他に見所は沢山あるので問題無し。

中1の時の自分の思考や言動をなぞっているようでしたよ
ミァハ

思考停止
いわゆる考えるのをやめた☆
ようなちょっと想像するとラストは怖いのですが

憎しみ・恨み・怒りのエネルギーというのは絶大なもので
生きる力に変換できるほどの威力を持っています。
相手を殺すか自分が死ぬかの二択と思われがちなのですが
実は3の道があります。
これがベリーハードモードで
死んだがマシと思えるほどの苦痛

脳みそって良くできていて
失った機能をサポートしてくれる場合もあるのね
シナプスが勝手につながる感じ?
これがミァハの言うところの意識の覚醒だと思うんだけど
痛みも苦痛も意識下で認識してないと
認識してないととるわけ
何も感じない訳でもなく緊急避難的に
なかったことにするか自我を殺して
何も感じないようにもできるわけ。
すごいよね、脳みそ。

葬式があるだけマシというか
健全なのかな
死をまだ身近で感じられる分
そんな事を考えながら見ていたのでした。

マイケル・アリアスとSTUDIO4℃
鉄コンコンビですね。
「Ghost of a smile」
主題歌は EGOIST

意識に思いをはせられる哲学的な一品です
カテゴリーはSFになるんだろうけど。

投稿 : 2024/12/28
♥ : 24
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