ぺー さんの感想・評価
4.0
【懐古録】オレンジ☆ロードと私
作品紹介ではなくほぼ自分語りです。
80年代のラブコメといえば必ず挙がるタイトル。
あだち充や高橋留美子は“現代用語の基礎知識”レベルの一般教養だとして、ラブコメの+αを求めるなら女子は少女漫画の豊饒な大地から摂取し、男子は乾いた土地から数少ないものを選ぶか“基礎知識”のみで満足してたと思う。ガキンチョにとって必要なのは「お前はもう死んでいる」か「屁のツッパリはいらんですよ」くらい。思春期で色気づいてもおおむね“基礎知識”の中古本があれば無問題。
小学生だったこともあって正直なところJUMP連載中はむさぼるように読んでた記憶がありません。
漫画『きまぐれオレンジ☆ロード』の印象です。
そんな自分が思春期になって、あれはきっと再放送かなんかだったと思う。ブラウン管(古っ)から聴こえてくるやけに大人びたお姉さんの声とビジュアルをいいなと思ったのが運のツキ。
一時期アニメ雑誌を定期購読してた時がありましてヒロインランキングでも必ず顔を出してたのが鮎川まどかだったと思います。当時“嫁”という概念があったらおそらく自分史上初めてその座に躍り出たのが彼女。南ちゃんや響子さんとは全く違うのだけはわかってるんですけど何が魅力か言語化するのが難しい。なんかそっち行きたいんだけど踏み入れてはいけない大人の領域の象徴みたいな存在でした。
あわせて挿入歌と主題歌のクオリティが高くサントラを持っておりました。
野郎声も悪くないですけどここはやはり和田加奈子さんでしょう。
【OP】鏡の中のアクトレス/中原めいこ
→「キャンセルの電話に嘘の匂い…」大人っぽいっす
【ED】夏の蜃気楼(ミラージュ)/和田加奈子
→ザ・オレンジ☆ロードな楽曲。ずっと鮎川まどかのカット
【ED】悲しいハートは燃えている/和田加奈子
→たぶんこの曲にしっくりきそうな女子高生ヒロイン今の時代いないっす
【挿入歌】サルビアの花のように/和田加奈子
→アレンジが思いっきり80's
【挿入歌】ジェニーナ/和田加奈子
→サルビアと同じく作詞が湯川れい子氏。明菜っぽい。せつないっす
【3期ED】もうひとつのイエスタデイ/和田加奈子
→ルージュの伝言みたいな詞。高校生ですよ
こう挙げてみると高校生にあるまじきアダルティーな楽曲ばかり。そりゃドキドキするわけだ。
キャラに入れ込むとかグッズ(サウンドトラック)欲しくなるとかヲタ気質が具現したのはたぶんこの作品からなんだと思います。加えてスタッフに目配せするのもたぶんここから。
ファイナルファンタジーのシナリオで有名な寺田憲史さんがいるー、とわくわくして、キャラデザの高田明美さんをここで認知して『機動警察パトレイバー』へと流れていった気がします。『エヴァ』で有名な鷺巣詩郎さんですが私にとっては『ふしぎの海のナディア』の人ですね。
あらためてwiki見たら96年の劇場版では京都アニメーションが制作協力していて音楽を梶浦由紀さんが担当してたりちょっと驚きも。
もう一度観たいかと言われると微妙だけど、大事に心にしまっておきたい作品には変わりありません。
■されど時は流るる…
懐かしさも手伝ったのか数年前、『きまぐれオレンジ☆ロード』の単行本を手に取ったことがあった。
{netabare}たいして面白くもなくて一抹の寂しさみたいなのを覚えましたね{/netabare}
エスパー設定とか妹が双子だったとか骨子部分もすこーんと抜けてる自分に気づく。
30年前というのはそういうことなんでしょう。
それでも不良っぽさとあどけなさの同居した大人びてる少女への憧れと共に、終わりゆく夏の夕暮れの記憶というものは自分の中に根付いてるわけで。
いい歳こいてお近づきになろうものなら下手すりゃお縄になるって今でも、私にとって鮎川まどかは大人のお姉さんのまんまそこに居続けるのよね、きっと。
{netabare}「LIKE or LOVE ?」{/netabare}
2020年10月13日 まつもと泉氏逝去の報に触れて
― たとえれば「夏」 いくら年月が流れても
きっと ぼくらは この「季節」を忘れないだろう
4月 まどろむような陽射しの中で
初めて出会ったことや
6月 きらめく光と風の中を
8月 熱い浜辺をふたりでかけぬけて
いったことを
それは 単に 過ぎゆく「季節」ではなく
ともに過ごした「永遠の夏」の時代
夢のような80’s
このときめきは……忘れない ―
(きまぐれオレンジ☆ロード最終巻巻末より抜粋)
視聴時期:-----
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2020.10.13 初稿
2021.08.28 タイトル修正