タイムリープで東京なアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のタイムリープで東京な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月06日の時点で一番のタイムリープで東京なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

91.2 1 タイムリープで東京なアニメランキング1位
君の名は。(アニメ映画)

2016年8月26日
★★★★★ 4.1 (2514)
11504人が棚に入れました
新海誠監督による長編アニメーション。

千年ぶりとなる彗星の来訪を一ヶ月後に控えた日本。
山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。
町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。
小さく狭い街で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会へのあこがれを強くするばかり。

「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい!!!」

そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。
見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の町並み。
念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。

一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も奇妙な夢を見た。
言ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。

繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。
二人は気付く。

「私/俺たち、入れ替わってる!?」

いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。
残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。
しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。
入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。

「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」

辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた…。

出会うことのない二人の出逢い。
運命の歯車が、いま動き出す

声優・キャラクター
神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、悠木碧、島﨑信長、石川界人、成田凌、谷花音

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

奥寺という女の重要性。なぜ前半の主役2人は嫌な描き方なのか?

24年8月再視聴。毎夏に視聴する映画です。評価としては日本アニメ史上1つの到達点を作った歴史的作品だと思っています。面白く、含意が深く、意味のある感動があり、映像表現が素晴らしい映画です。

 この作品の主人公、瀧が「気持ち悪い」という意見が多いそうですね。これは当然で、そう描いているから当たり前としか言いようがないです。

 奥寺をなぜあれだけ重要なポジションに置いたかと言えば、瀧と三葉の変化を描くためです。
 特に瀧ですけど、奥寺のようなモテる大人の女性から見ると、当初の瀧は童貞丸出しの女を過剰に意識したガキでしかないように描いています。だから、三葉が中にインストールされると、その細やかな気遣いや女に対する自然な態度で、奥寺はなかなかいいと思ったわけです。

 結果として奥寺ねらいの藤井司がいますが、彼は女に物おじせずぐいぐい来るタイプですね。これがもう一つの瀧の対比です。奥寺はこの時の藤井司はガキですから相手にしていませんが、かといって普通に友人あるいは恋人候補の様に接しています。これも瀧=気持ち悪いの補強材料です。

 三葉は都会にあこがれる、田舎を馬鹿にした少女です。その態度が皆と壁を作っていたのでしょう。そのコミュニティに参加しようとしません。三葉を馬鹿にしているギャルたちも、悪いように描かれますが一方で三葉にも壁があります。テッシーとさやかの3人は浮いているように見えます。

 そして、その瀧が入れ替わって三葉になったとき、その童貞くさい正義漢が学校では受けて三葉は見直され、たぶん一生懸命バスケットボールに参加し、コミュニティに参加したのでしょう。その結果、モテる様になります。

 ですから、前半の瀧と三葉は気持ち悪い、自分の周囲を見ない人物として描かれています。奥寺=都会=あこがれとなっています。

 結果として、なぜ2人が惹かれあったかという答えがここにあると思います。単なる「あこがれ」を目指していた2人が、入れかわることで相互の理解を深めた結果、いつの間にか相手に感情移入したということでしょう。おかれた立場による苦労を知ることができました。
 また、近い存在でいながら会えないという状況が、お互いの興味を産んだのでしょう。そして、奥寺という女子を通じて2人ともあこがれと恋愛の違いを自覚することになります。その結果、お互いに恋愛感情が芽生えるということです。

 ですから、奥寺にあこがれている瀧は気持ちわるいし、都会にあこがれている三葉は地元では浮いた存在なのでしょう。都会における奥寺を中心においたのはここを描写するためだと思います。

 その奥寺が岐阜に向かうときのダサくて自分勝手な姿。ここも意味があると思います。前半はキラキラした都会の女なのに、その本質はめんどくさい我儘さをもった女性ということです。この時、瀧も三葉ももうお互いを思っていて奥寺のキラキラが消えているという意味だと思います。それを受け入れられる司こそ、奥寺にふさわしいのでしょう。

 瀧が気持ち悪いという意見を聞いて、この辺の構造が言語化されました。たしか女性の意見だったと思うので、正しいとしか言いようがないですね。ただ、そこで気持ち悪くてやめた、はもったいない気がしますけど。

 それとこの映画、2人が名乗らないほうが良かったという意見も結構目にします。私もあそこですれ違う2人を想像します。それはそれで一つの結論です。日頃の自分の中にある寂しさにつながり、現実の我々にクロスオーバーしてくるかも、とは思います。

 ですが、それは今の時代安易な感動ポルノに堕す可能性の方が高い気もします。そして震災文学である以上は、いつ死別するかわからない時代だからこそ、お互い名前を呼びあおう、コミュニケーションをとろう、気持ちを伝えよう、後悔の無い生き方をしようという意味で格段に良かったと思います。

 災害で亡くなった人の分までしっかり運命の人を探そう、恋愛しようという話になったと思います。



以下 23年7月レビュー

何回見たかわからないです。日本のアニメ史に残る名作でしょう。

 夏といえば「君の名は。」本作です。アニメ映画の中でもっとも回数を見た映画で、20回じゃあきかないでしょう。季節問わず見ています。
 過去のレビューをまとめているものの、言いたい事が多くて支離滅裂です。現バージョンは23年7月に書いています。とにかく私が好きなアニメ映画ナンバー1の一つです。


 まず、本作の凄いところは、やはり美しい情景描写が感動を深めるということが筆頭でしょう。2010年代に入って他の作品も、背景美術のレベルはどんどん上がっていました。が、本作のスケールの大きさやカルデラ湖と村の見せ方、彗星の光など圧倒的な美しさの他に、視覚的な新しさがあったと思います。宮水神社や都会ももちろん、この美しい絵が後のアニメにどれだけ影響を与えたかは計り知れません。

 ハッピーエンド…とされていますが、果たしてそうでしょうか。外の視線である我々からは、2人が出会えたカタルシスはもちろんありますが、冷静に考えると2名はお互いを知りません。ただ、朝起きたときの寂しさを埋めてくれる相手を見つけただけです。ここにテーマ性が見えないでしょうか。

 震災を意識した作品です。つまり災害により人はいつ死ぬか分かりません。寂しく孤独な時代です。後悔しないために、運命を感じたりあるいは寂しい人は名乗り合おうよ、という事だと思います。

 ここでもし二人が名乗らないですれ違うのが新海らしさかと言えば、そうではないと思います。というのは「ほしのこえ」を考察して行くと、どう考えても2名はまた会う事ができます。つまり、デビュー作からして、一回時間と空間に隔てられた2名は再会するという話も初期の新海誠は描いていました。

 本作は、へその緒が断ち切られる=一人で生きる痛み、髪を切る=失恋の痛み、そして彗星の落下による死別。そういったことが丁寧に描かれていました。
 そうなると私たちが日ごろ感じている寂しさって、都会で生きていると、赤い糸の存在を忘れてしまっているのでは?だから、出会うチャンスがあればちゃんと声をかけて名乗って見ようよ、好きだと言おうよ、という風にも取れます。
 つまり「秒速5センチメートル」のアンチテーゼですね。


 それと瀧と三葉がいつ好き合ったかです。恋愛とは相互理解、コミュニケーション量です。そして2人は秘密を共有しています。瀧は三葉がクラスで陰口をたたかれているような苦労を知っていますし、三葉は瀧が奥寺先輩が好きな事も知っているし、奥寺に憧れる瀧の事を考えていたのだと思います。
 そこまで濃密な交流を重ねる男女がお互い惹かれ合うのは自然なことだと思います。

 あと三葉の描写ですが、田舎の因習に嫌気がさし特に家族関係で苦労しているからこそ、都会に憧れるという心理が上手く描かれていたと思います。伝統というものに対する拒絶とそれを律儀に守るアンビバレントな性格が、三葉の人間性を深いものにしました。この都会への憧れが瀧への思慕へと変わる焦点にいたのが奥寺先輩です。

 この作品、奥寺がキーパースンでした。彼女がいたからお互い好きになったのかも、というくらいです。

 瀧については、正義感とか短気なところ…要するになぜ奥寺にモテないか、を考えるといいでしょう。要するに女性に気を使いすぎるので、本来いい男なのにその遠慮が奥寺にとっては、居心地が悪いのでしょう。女子になって同性として接する=壁がなくなるとモテるようになったという描写も瀧の性格をしる一助となります。

 そして、三葉って中盤のシーンで一回死んでますよね。初めて髪を切った三葉が出るシーンです。そこまで描写はされませんがそこは読み取れます。この時の三葉の心情ってどうだったんだろうって、思いますよね。このシーンがあるからこそ、本作の内容も感動も深まるのだと思います。

 奥寺と瀧のデートを想像して自分の気持ちに気が付いたのでしょう。わざわざ瀧に会いに行った。瀧と出会って何とかつながりは残したけど気持ちを伝えられなかった。髪を切るというのは明らかに失恋を意味しています。

 その落ち込んだ気持ちのとき落下してくる彗星を見て三葉はどう思ったか。やっぱり後悔だと思うんです。せっかく会えた瀧に気持ちを伝えたかった。でも紐を渡しただけ。相手は覚えていない。ここが本当に胸に来ます。

 もちろん最終的に三葉は東京で暮らすことになるわけですけど、ここで死んだ三葉というのは確かにどこかのIFの中に存在したわけです。タイムリープ作品ではこの感受性が大事だと思います。いくら結果が良くても絶望で死んだ人間は存在したことを忘れると、安易な死にもどりの物語になります。この作品はその部分を見事にすくい上げています。この作品はバッドエンドのIFもちゃんと提示されていることを読み取るべきでしょう。

 そして、この瞬間があるのでその後のカルデラでの出会いと奮闘に意味がでてきます。この作品の最大のポイントはこの途中で死んだ三葉がいる、ということです。生きたい、名乗りたい、告白したい。だから、ラストが活きてくるわけです。

 一方瀧です。片割れ時に出会ってマジックで手の平に「好き」と書いた理由ですね。名前よりも気持ちを伝えるのを優先したんだと思います。それはなぜか。東日本大震災で沢山の人が亡くなりました。それは誰の身にもいつ起こるかわからないという衝撃的な事実を、クリエータに突き付けたわけです。パラダイムシフトですよね。だからこそ、つながりを大事にして「告白」しようよ、と。 

 気持ちを伝えられた。名前も出来事も記憶から無くなってゆく。でも喪失感だけある。この切なさも相当なものだと思います。この痛みがあるからこそ2人はまた出会えた。ひょっとしたら瀧が好きだと書かなければ2人の胸に痛みがなかった。そうしたら再会することはなかったのかもしれません。ここは完全な私の妄想ですが、名前がテーマなのになぜ名前を書かないかという点は少し考えたいところです。


 三葉と言うより宮水神社については、彗星の意思なのか人間の防衛本能からかわかりませんが、宮水神社の女たちに運命が与えられた。それが、組みひもであり、口噛み酒であり、へその緒であり、髪であり、運命の赤い糸でした。その辺は中盤の瀧君が口噛み酒を飲むところからちゃんとわかるようなイメージシーンがあります。


 構成ですが、初めのおっぱい揉むシーンがあるので、相互に視点が動いているようで、実は最初の25分くらいずっと三葉視点、そのご瀧視点としばらく視点が固定されます。
 その後、突然ショートヘアになった三葉が出てきて、そして、瀧が旅行にいって…がという構成です。ここで話が大きく動くことになります。
 この構造が非常に良くて、一瞬たりとも目が離せないドキドキ感がありました。

 全体として新海作品は言葉足らずな部分があるのも事実です。ただ、説明不足と言葉足らずは違って、本作は見て感じれば行間が読めます。というより、言葉足らずだから、見た人の個人の体験と重ね合わせて奥行がでるとも言えます。

 
 新海誠氏の作品を並べて見ても、この3作はアニメ作品として格段に出来がいいと思います。「秒速5センチ」「言の葉の庭」などいい作品ではありますが、正直文学などで代替できますし、エンタメとしての完成度を含めて考えればやっぱり最近の3作は全然レベルが違います。
 唯一「ほしのこえ」のスケール感と切なさ、純愛が私はSF恋愛作品として大好きなので、これがこの3作と同じくらい好きです。

 とにかく、新海誠氏の最近の3作品は、エンタメとしての面白さ、壮大さ、純愛、テーマ性、アニメーション表現などの点で格別だと思います。その中でも「君の名は。」は最高かなあ、やっぱり。


 本作を見て感動するのは馬鹿だというコメントを残したマンガ家がいます。新海は大衆に迎合したという評論家もいます。まあ、頭がいい人たちの意見だから、確かに私は馬鹿で大衆マインドなのかもしれません。
 私は馬鹿を自覚していますので、いくら馬鹿にされても結構です。それでも、本作は見て感動した気持ちは素晴らしかったと思います。ですので名作だと断言したいですね。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 31
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

夢の儚さを越えて二人は繋がる。

見終わった後、私は夢から覚めて、まどろんだ時ようなな気持ちになりました。

あのシーンの背景が良かったとか、あそこのスピード感が最高だったとか。
でも、その記憶は、強く「覚えていよう」と思い、まるでこれは面白い夢から覚めた時と同じじゃないかと。

でも、人の記憶は曖昧で、全ての良いシーンを覚えておこうと思っても、次第にディテールが失われていきます。
やがて夢の記憶は、「面白い夢をみた」に代わり、そして夢をみた事をも忘れていく。

時間に対して夢の中の記憶はあまりにも儚い。

この作品はそんな弱い繋がりで繋がった瀧君と三葉の物語です。



感想
{netabare}

【演出】
二人の入れ替わり生活が始まるときに曲が入り場面の切り替わりのスピード感は新海監督らしい演出。

二人の入れ替わり生活とは別に強く印象に残っているのは
時間が100倍速になった感じで都会の光や信号が光を放つシーン。
これは時間の経過を示しているのでしょうが
その綺麗さが強烈に印象付けられました。

また、夢の中の出来事という作品の設定のように
幻想的な美しさが視聴者を夢と現実の境界線に引き込んでくれます。

三葉の人生が瀧に見えたときのシーンもグッと来ました。何でだろう?
人の生き死にに涙もろいのかな。
あのシーンは母親との直接的な繋がり(へその緒)や親との別れ、家族の濃い「人と人の繋がり」を感じてしまったからでしょうかね。

【展開】
「瀧君、覚えてない…?」という三葉のシーンは本当に胸が痛くなりました。
3年後の瀧君にとってはずっと前から繋がっていた。三葉にとってはようやく繋がった。
だけど瀧君はこのときはまだ知らない、三葉は不審そうにこちらを警戒する瀧君に思いを伝えられない。
「二人が会えた」「繋がった」という嬉しさと同時に
勇気がでずに思いを伝えられない三葉の姿に自分を重ねてしまいました。



【キャラ考察】
瀧君がクレーターの上で君の名は!と涙ながらに叫んだ気持ちがわかってしまう。
大切な人に会いたいと、思いが募ると、苦しくて、吐き出したいなにかが心のなかにたまってきて、自然と涙が出てくるんですね。

三葉の境遇について
母親を幼い頃に亡くしていて、それをきっかけに父親が神職をやめて離ればなれとなっています。
離れて暮らしながらも、政治というなにかと目立つ仕事をしている父親のせいで
学校で本人の意思とは関係なく少し浮いてしまう三葉。
そんな狭い村社会に嫌気が差してどこかに逃げたい気持ちでいる時に起こる入れ替わり。
三葉にとって入れ替わりは逃避になり得た(まさに夢に逃げる)のですが
突然終わる入れ替わりは、夢の終わりであり、それは自分の逃げ場所がなくなったともいえます。
夢の続きが見たくて。そういう気持ち(逃避)、わかります。
東京にいるはずの瀧君に会いに行き、あの日々の続きがみたい。
でも、せっかく会いに行ったのに瀧君は三葉のことを知らなくて、繋がりの喪失を感じてしまった。
(ですか、ここで過去と未来を繋ぐ糸を渡したシーンの懸命さや、その糸が忘れかけた瀧君と三葉を繋げてくれた意味を持つアイテムであることの重要性が「繋がった!」と嬉しさを感じさせます)

その後の三葉の行為は、瀧君への思いをたちきりたくての髪を切る行為だったのでは。(切るということは思いや繋がりをたちきりたいための行為?)(夢の終わりが夏祭りの近くの日、つまり、一般的には夏の終わり近くです。夏の終わりの儚さと夢の終わりの儚さをかけているのではないでしょうか)

また、三葉が夏祭り前に暗い部屋で涙を流すシーンには、喪失感を感じ、失恋等のなにかを失う出来事を思わせました。


その後の彗星の衝突により、三葉は現実の問題と向き合い乗り越えることができました。
瀧君の残した「すきだ」が現実と向きあう最後の勇気をくれたのかもしれません。

そして、瀧くんにとっては、一生忘れられない体験であり
忘れられない繋がりだったのではないでしょうか。
それが記憶がなくなっても四年後も繋がりを求めていた理由かもしれません。
忘れたくないと思っても忘れてしまう、だけどどこかでおぼえているその繋がりのことを。
だから、これはなくなってほしくないという、繋がりの肯定なのではないかな。
【美術】
新海監督の作品は見たり見なかったりなのですが、背景の綺麗さは今作もすばらしかったです。
田舎のゆったりとした風景にはそこに溶け込めそうな気分にさせてくれました。まるで、その場所が自分の帰る場所のような。

都会の朝の風景はどこか孤独だけどエネルギーを感じます。
夕方の忙しそうな風景には少し寂しさがあって、早く帰りたいな、そんな気持ちにさせてくれます。

季節感も夏に始まり、春に終わるという、季節ごとの綺麗な風景を描いてましたね。

最後に桜さく路地の階段で二人が出会うシーンも、優しさと暖かさをリアルに感じてとてもよかったです。


【記憶が失われる設定について】
多くの人がここについて指摘してきました。
ですが、私はレビューの最初に書きました通り、夢だから、でストンと納得しています。
作中で夢をフォローしているシーンがあるのは覚えていますか?
三葉の祖母が三葉(瀧くん)に「三葉、お前、今夢を見ているな」と言う印象的なシーンです。
また、三葉も「夢の中で見たあの人の名前が思い出せない」と言い、友人を困惑させます。
それはそうでしょう。普通のひとはそんなことを非常時でも平常時でも口に出したりしません。
共通認識として「夢の中の内容は忘れやすい」ということがあるからです。
ですので、スマートフォンの中の日記が消えていくあの表現や、
二人が御神体のクレーターで出会うシーンが、
夢と現実の境界線が曖昧な時間や場所を表現していて
見た人間も、夢と現実の境界線にいるようなそういう作品だと思っています。

【朝、目が覚めるとなぜか泣いている】
印象的な導入のセリフです。
二人の繋がりを失ってしまったことを自分の中のどこかが泣いている。
そして、それにとりつかれているようになってしまっている。
私はそうやってどこかに繋がりを探すような感情を現す言葉は知りませんが
自分のどこかに、よく似た感情があると確信があります。
それが、私の心にズキズキとした胸騒ぎを起こしてくれます。

【総評】
色々書きましたが、瀧君と三葉のような10代の気持ちや考え方を上手く描いています。
君の名は。でとめていますが、これは相手への問ですよね。
相手の名前を知らないからこそ尋ねる(訪ねる)。
そして相手の事を知りたいからこそたずねる。
相手の事を知りたいという感情をエネルギーにして伝えてくる作品でした。

また、人と人の繋がりを感じる、もしくは、心の中のどこかにあるつながりを求める感情を肯定する物語だったとまとめさせていただきます。

【蛇足】
三年前の瀧君と三葉が東京でであったとき、二人の糸はどう繋がったのか、一瞬はまりかけました。
二人の糸は絡みあって大きなわっかを作った。そんな思いです。でも始まりはどこかよりも、今と未来の彼らが気になって(笑)

キービジュアルの瀧と三葉が東京の坂で振り返って見つめる絵って
ラストの5年後の二人を、であった頃の高校生の姿に置き換えているのかも?
これが「出会い」の絵なのか「再会」の絵なのかちょっと気になって面白い。

幻想的で儚さのある二人の奇跡の繋がりと、現実の繋がり。
ラストで二人の繋がりを現実の繋がりにすることで生まれる嬉しさ。
なぜだろうか?多分、二人が求めていたその繋がりは、人間が奇跡を信じたい気持ちの肯定だからでしょうか?

{/netabare}

ストーリー考察?(繋がりを軸にストーリーを考えてみました。)
{netabare}
三葉の祖母が、糸に例えて人と人の繋がりを話しました。繋がって、絡みあって、離れて、近づいて、また繋がっていく。その繋がることを結びという。

瀧と三葉の関係もまたそうでした。夢で繋がって、入れ替わりを繰り返して二人の糸は絡みあう。
入れ替わりは突然になくなる。突然糸が切れたように。
三葉のいる場所は時間を越えて遠く離れた場所だった。
真実を目にした時、三葉との思い出は一瞬で消えていき、崖から突き落とされたようなスピードで二人の距離は離れていく。(二人の距離が明確に離れていくことに儚さや悲しさを感じました)
でも、瀧は「そこにいかなくちゃいけない」という自分でもわからない使命感に押され御神体のある場所へ
三葉のいるかもしれない場所へ近づいて行く。(確信のない行動です。しかし、そこには記憶という曖昧な繋がりよりも、もっと深いところでの繋がりを感じます)

そしてまた入れ替わり、二人はお互いを自分の体で出会う。
今まで顔を合わせて話したかったことをいいあって、笑う。(ようやく、もがいてもがいた結果、出会えたという喜びを感じます)

互いの姿が見えなくなって、名前を忘れた瀧は叫ぶ。
「君の名前は!」忘れちゃいけない大切な人を思い出せない苦しさで一杯になる。(本気で相手の事を求めるシーン、記憶がなくなっても、もっと深いところからの欲求です)

名前は思い出せない。でも誰かが大切なことは覚えてて
誰かが思ってくれていることが「すきだ」という言葉からわかる。だから三葉はやりとおせた。

そして時が流れ、あの時間の記憶もなく、あるのはかすかな心残り。
どこかに大切な繋がりがあるような。

冬が終わり春が来る。
二人はまた近づく、自分の中の心残りの先にある繋がりを探して。
そして出会い、ずっと探し続けてきた繋がりだと信じて問いかける。「君の名前は」。
(最初のシーンと繋がる。どこかに特別な繋がりがあるという不思議な感覚。ラストはなんとなくわかるという感情の肯定が、とても心地いい)
{/netabare}


2018年1月3日 地上波放送を見て。
{netabare}
本当は追記する予定はありませんでした。
でも、見たら、自分の中に生まれた何かを書きたい衝動を抑えられなくて、
書こうと思いました。

今回の再視聴で感じたのは、
繋がりが消えることの悲しさでしょうか。
どこか身近に感じていた、繋がりの断絶。
私が繋がりの断絶を感じたのは、福島なんですが、
レビューを社会派にする気はないので詳細は伏せます。

それは、人間の営みの断絶であったり、人の関係の断絶。
繋がりが消えてしまうことへの悲しさ、つらさ。
そういったものが多分糸守町の消滅、三葉と瀧の入れ替わりの終わり、
そういった作品世界の出来事から、私はいつも感じていたこと、
繋がりの断絶を感じていました。

繋がりの断絶と同時に、繋がりを求める声も同時に感じました。

三葉が瀧に会いに東京に出た時も、瀧が三葉の名前を忘れて叫んだ時も、
繋がりを求めるその行動、その思いが、私には、
無くした繋がりを取り戻したい気持ちを感じて、
どうしようもなく、泣いてしまいました。
(すこし安っぽい表現ですが、実際少し泣いてます。
多分泣いた理由は、登場人物達と同じ理由で、
繋がりを求めたから、でしょうかね。
多分これが、共感何でしょうね。初めて実感出来たかも)

こんな瀧君のセリフがありました。
「今はもうない街の風景に、何故ここまで胸を締め付けられるのだろう」
心のどこかで糸守に繋がりを感じている瀧君。
私も、どこかで知らない街の知らない人の営みに、
繋がりは感じないまでも、営みの中にある繋がりを見て、
親近感を感じたりするのです。
それは人と人の繋がり、人と土地の繋がり、繋がりの中で生まれた営み、
そういったものを、私は求めているのだろうし、
大切にしたいし、失いたくないと思うのです。

だから、この作品を再視聴して、このレビューは、
完全に私の感想であるのですが、
私が求めていた繋がりを描いてくれているし、
私が恐れている繋がりの断絶も描いてくれている。

だから、私は、この作品が好きなんでしょうね。



{/netabare}

投稿 : 2024/11/02
♥ : 134
ネタバレ

oneandonly さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

アニメを伝道する好機

世界観:8
ストーリー:8
リアリティ:8
キャラクター:7
情感:7
合計:38

1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。
(シネマトゥデイより)

最近話題として何回か出てきたので、折角なので劇場に足を運ぶことに。そう決めてから、京アニの「聲の形」も上映中であることに気付いて、1日2本の豪華スケジュールを組みました。映画は、昔はよく観に行っていましたが、1日2本観たことは初めてのことです。

「君の名は。」は、午前中の回が満席だったので、「聲の形」→「君の名は。」の順で視聴しました。新海誠監督作品は「秒速~」と「言の葉の庭」を視聴済ですが、どちらも良作となる4点にぎりぎり届かない程度の評価をしてきたところ今回は評判が良く、京アニは「けいおん!!(二期)」で評価を上げたところでしたので、この2作は接戦になるかなと思っていましたが、本作は期待をさらに上回りました(劇場版の尺では過去最高点です)。

作画と楽曲はこれまでの作品の通り素晴らしい上で、映画の尺に合うだけの充実した設定とストーリーになっています。
入れ替わりネタはココロコネクトで経験済ですが、前半に和みの要素としてよいエピソードでした。やはり男は悪いと思っても揉みますね(笑)
入れ替わりが終わってからが本編という感じ。物語の展開がどうなっていくか、最後まで集中して視聴できました。

良作アニメは「時間」を効果的に利用しているものが多いです。タイムリープする必要があるわけではないですが、経年による物語の厚みは基本です。人間は、時間を遡ることができず、過去を振り返ったり後悔したり、そして遅かれ早かれ死ぬ、はかない存在であることの裏返しなのでしょうね。{netabare}この作品でも3年のズレが良い味を出していました。瀧が三葉に出会う前に、三葉が瀧に会いに行くシーンがありましたが、ああいう伏線は好きです(最初どのように描かれていたかは1周だけではよく思い出せないのですが)。

この作品ではさらに、入れ替わりが「夢」であって、その記憶がなくなっていく、という表現をしていたのも特徴的でした。夢を思い出したいのに思い出せない、あの感覚を、大事な人の記憶と結びつけたのはとても切なくて巧みでした。携帯の日記の消え方はちょっと変でしたけどね。{/netabare}

そうそう、リアリティ面では、細かいことを言えば上記のようなものがいくつかあったと思いますが、{netabare}名前の記憶が消えていくように{/netabare}終わる頃にはほとんど忘れてしまいました。それくらい浸れる作品ということかと思います。

興行成績でも今後どれくらいの数字を出せるかも期待大ですが、新海誠監督の代表作と言えるものになったことは間違いないでしょう。

{netabare}最後の二人が出会えるのかというところは「秒速」が繰り返されないかとヒヤヒヤしました。私は心の中で思い切り「よくやった!」と叫びました(笑)。ハッピーエンドが、良い余韻を呼んでいます。{/netabare}

そのほか、「言の葉の庭」の先生が登場していたり、彗星(星)を扱ったところなどにも、過去作品とのつながりも感じられ、新海誠監督の集大成になったのではないかと思います。もちろん、今後も今作を超える作品を目指していただきたいですね。

ヒロインの三葉の名前は、凪のあすから2クールED「三つ葉の結びめ」の影響もあったようです(前向きになれる、自分もとても好きな曲です)。
色々なところでつながっていると感じられることも自分のアニメ道の進歩ですね。

この作品でアニメに興味を持つ方も多いと思います。クールジャパンの代名詞のひとつがアニメだということは多くの方が知っているでしょうが、他にも「君の名は。」クラスの作品があることを、機会があれば伝えていきたいですし、あにこれの方々もそうしたら良いんじゃないかと思いました。(自分が初心者だという方には、私の棚でも見ていってください)

もう1回くらい劇場で観たいと思える作品です。劇場で観ておくことをおすすめしたいアニメ映画です。

(2016.9劇場で鑑賞)

追記(2016.9.20)
{netabare}余韻に浸り、あれこれ考えています。設定について補足したいと思います。まずは、入れ替わりが本人たちにとっては「夢」として感じるものであること(遠くにいる男女が出会う物語を考えつつ、古今和歌集の小野小町の和歌から着想を得たというのもイイですね)。朝起きて自分の人格に戻っていて、相手側の人格に入った記憶は消えているので、当初は訳が分からなくなり、周囲の言動などから、現実として入れ替わっていることを認めざるをえなくなるという流れでした。結果的には素晴らしく機能しているのですが、観客としては、別人格の2人がしっかり自分の意思を持って行動しているのを見ているので、忘れてしまうことに違和感を覚えます。ここを、注意深く見ていくには、1周では心もとないですかね(私も序盤は見落としがある気がします)。

それから、時間描写に特殊性のある作品でもあるかと思います。携帯電話の日記が消えてしまう部分はマイナスとして取り上げさせてもらいましたが、過去改変の可能性を示唆した表現でもあるのかなと思いました。つまり、我々が1本だと思っている時間軸は実は1本ではなく、交差することもあるけれども、その時は我々の記憶や記録物までもが改変されていて、我々に認識できないだけなのではないか、ということです。

また、通常、時間軸は1本であり、パラレルワールドを扱った作品は世界線が平行に並んでいるというもので、別の世界線に移動しても同じ時間というのが一般的ですが、この作品では別の世界線(と言ってよいのかも確信を持てませんが、多分そうかと)が3年ずれています。これは斬新ですよね。光速に近づくほど時間の流れは遅くなるという相対性理論もありますし、時間の経過は常に一定ではないとすれば、時間の流れが世界線ごとに異なっているというのもありじゃないかと思いました。{/netabare}

追記(2016.9.21)
{netabare}RADの主題歌を購入。その中の夢灯篭に「5次元にからかわれて」という歌詞があるのを見て、個人的にはパラレルワールドを描いた作品であると認識してみる。

(参考)私的次元の数え方
0次元…大きさのない点
1次元…太さのない線
2次元…厚みのない平面
3次元…静止した空間(これを0次元に戻して以降を想像する)
4次元…時間軸のある空間(1次元的な線としての時空=我々の認識する世界)
5次元…複数の時間軸のある空間(2次元的な平面としての時空=パラレルワールド)
{/netabare}

追記(2016.9.23)
{netabare}上記から、私は本作はタイムリープものではなく、時間の経過がズレたパラレルワールドの交錯した世界の物語と考えてみました。

①瀧のいる世界線と、三葉のいる世界線(瀧の世界線の3年前)がムスビの力によって重なってしまい、互いに心と体の入れ替わりが生じた。

②しかし、三葉のいる世界線において三葉が死に、入れ替わりは終わった。ムスビの力がなくなり、存在しないはずの三葉とのやりとりは過去改変により消失する。このため瀧の携帯電話の日記も消えた。

③三葉の「半分」である口噛み酒を飲むことでムスビの力が復活。三葉のまだ生きている世界線とつながり、再度入れ替わりが生じた。

④危機回避の努力の結果、三葉たちが助かり、その世界線と繋がった影響で瀧のいる世界線の過去が改変され、三葉が生きている世界になった。
という感じでしょうか。

小説版は1日で読み終わりまして、文章で読むと正直そんなに凄い作品とは思えなかったのですよね(本当に、映画の内容をそのまま文章にしたという感じのものですが、情感の起伏があまり湧かないのです)。
最高峰の作画と、疾走感や情感の溢れるRADの楽曲と、綺麗にはまった声優と、後半超展開となるストーリーと、感情をストレートに紡いだ心情描写と、夢のはかなさを活かした設定とが高度に融合した、アニメがベストの作品なのだと思います。

本日、9月22日までの28日間で興行収入100億円突破とのニュースがありました。祝!
もう一度見たくなってしまう、高揚感の余韻が強い作品です。
{/netabare}

追記(2016.10.10)
{netabare}最近週末まで多忙となり2回目をまだ観に行けていませんが、多数のレビューを見ていた中で一番良かったものをご紹介。
http://blog.kanjutsu.net/entry/2016/09/09/115947

作家性を捨ててエンタメに振れた、プロデュースの力によるもの、斜に構えた意見も多々見受けられますが、表面的な受けも狙いつつも底辺の深みに魅力がある作品だからこそ、何度も足を運ぶ方がいるのだと思います。
{/netabare}

<2019.1追記>
世界観の配点を1点減点しました(作画によるボーナス点を与えていましたが、他作品との平仄の観点から削除しました)。

(2017.2、2018.4、2019.1評価調整)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 102

72.6 2 タイムリープで東京なアニメランキング2位
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章(アニメ映画)

2024年5月24日
★★★★☆ 3.9 (33)
107人が棚に入れました
「ソラニン」などの浅野いにおによる漫画をアニメーション映画化した2部作の後章。
入試に合格した門出と凰蘭は、亜衣や凛と同じ大学に通い始める。大学では竹本ふたばや田井沼マコトと意気投合し、尾城先輩がいるオカルト研究会に入部する。一方、宇宙からの侵略者は東京各地で目撃され、自衛隊は駆除活動を続けていた。上空の母艦は傾いて煙を上げ、政府転覆をねらって侵略者狩りをする過激派グループの青共闘も暗躍するなど、世界の終わりに向かってカウントダウンが始まるなか、凰蘭は再び不思議な少年、大葉に遭遇する。

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

半端な結末が生み出す不思議なカタルシス。期待以上ですが余韻が薄いかも。

 感想を一言で言えば期待以上にカタルシスが大きかったという感じでしょうか。結末がすべてな気がします。今までの積み上げが意味を持つ瞬間という感じです。いや、意味を失うからいいのかもしれません。

 面白いかと問われると一般的には面白くない…というと語弊はあります。途中から一体どういう物語の着地をするんだろう?という部分に関心が行ってしまいました。それを面白いというのかはわかりません。

 物語は前章でも感じた通り借り物ばかりです。ですので普通に考察していた人は普通に物語の構造は読み取れていたと思います。
 一方含意についてですが、前章で「ドラえもん」「時をかかる少女」オマージュがすごかったですが、後半はどちらかと言えば「エヴァ」が露骨でした。ですがエヴァよりも格段に中途半端です。

 この作品は、その結末の中途半端さ、描かない部分がいいんですよね。要するに人類が続く限り同じことを繰り返すわけだと思います。それが何かハラ落ちというか、胸にきてしまいました。
 となってきたときに結局明確な答えなどない、修正もできない、リセットなんて都合よくできない。誰がいつ死ぬか、何があるかわからない世界で人とつながりを大切にしながら、生きてゆくしかないじゃんという結論になりそうです。

 政府や企業はみんな深く考えているようで、結局場当たり的なところがこの社会の愚かさを適格に表現していた気もします。陰謀論なんて実際はこんなものなんでしょう。

 一方で日常パートですが、都会に生きる生きづらさっていうとそれも違う気がします。生きている方はみんな日常を普通に生きている感じです。好きとか嫌いとか、誰が死んだとかいなくなったのかとか。その感じが重すぎずかといってご都合主義でもなく、非常にその部分にリアリティがありました。
 それを是正しようとしても、結果的にもっと大きな悲劇を生むこともある、というのが前章までの部分です。

 話それ自体は新海誠監督の「君の名は。」「天気の子」のリメイクのような感じも受けます。「君の名は。」を手直ししたような構造ですし、災害ものですから当たり前なんですけど…どうしても助けたい人がいる。文明が子供を苦しめるなら文明など滅びてしまえ、という感じもあります。
 そういう気分をより分かりやすい世界系にした感じはあるんですけど、ただ、世界系と言われるとなんか気分が違うんですよね。選択というより一択というか、積極的に世界なんてどうにでもなれば的な感じがしました。

「インデペンデンスデイ」や「第9区」にUFO的なビジュアルイメージや一部設定は似ているといえば似ていますが、やっぱり本作の方がアメリカの娯楽SFでは到底到達できない人の気分にまでいきつけていると思います。

 最後の方のUFO上のシーン。「未来少年コナン」のギガントとかそういうのを思い出しますが、なんとなくですがそういうすっきりした物語の物語性をどこかで相対化したかったのかな?という気もします。

 総評すると、結論がないような説明がないようなメッセージ性がないようなオマージュの様な中途半端な結末ですが、その中途半端さになぜか非常に深く共感し、納得もし、そして意味不明に感動してしまいました。
 このあと咀嚼してから大人買いしてしまったコミックスを読んで、ひょっとしたら2回目を見に行きます。ただ、この作品は結末の1回目の衝撃がいい作品な気もします。

 前章を見たときにTVシリーズにしたほうが、と思いましたが後半を見ると一気に見た方がいいかもという気もしました。それは結末に向けて収束する感じがいい作品だから、短く見せられても咀嚼しきれない気がしたからです。


追記 原作読みました。

 原作を読みました。意味は劇場版よりわかりやすいです。題名の意味も読み取れたと思います。人類の「希望」をわかりやすく表現していました。ただ、そこまでの部分は劇場版の最後で読み取れるとは言いませんが、想像できる種まきはありましたので、そういうことなんでしょう。

 ただ、私は滅びにもロマンを感じますので、そっちの方向もあり得た方がいいのでオープンエンディングの「開き度」が大きい劇場版の方がよいです。

 トモダチの意味は分かりやすかったかな?劇場版は恋愛メインのような雰囲気はありますが、恋愛は代替可能だし面倒です。大事なのはトモダチですよね、という感じは原作の方が強いです。
 トモダチということと結末の暗示の点で「イソベやん」の意味性はより深かったかなという気はします。

 劇場版で消化不良を感じている人は読む価値はあります。劇場版ではキャラのエピソードの省略もありました。
 前半の意味性については、構成の関係で原作の方が置いた位置はいいかもしれません。時間をおいて後半を見ると、少々トモダチの意味が希薄になる気がしました。

 ただ、やっぱり劇場でアニメで見た迫力…というのは説得力があります。力業ですけどね。その点でも劇場版の方がいまのところは評価高いです。もう一回通しで見たいですけどね。


再追記 2回目見てきました。

 この作品、オマージュかを探すと結構ありますね。あげるときりがないくらいです。それが意図的なのかどうかは不明ですが、ただそっち系の考察はどうなんでしょう?
 ドラえもんと時をかける少女(かどうかはわからないがループものの救済とその危うさ)についてに注目したほうが考える的を外さないかな、という気がします。

 そして8.31=3.11、トモダチ、今の社会の生きづらさは社会のせいでもあるし自分たちのせいでもあるというような2面性、恋愛事情とか、まあいろいろ考えるヒントはたくさんあると思います。ここまでの作品ですからいろいろ入ってはいるんでしょうし。

 最終的に大場の血は赤かったということと、あの場所で終幕したことで想像を広げてゆけばいい気もします。肝心なのは世界かトモダチかという選択ではなくトモダチ一択だったということかな、という気はします。愛の物語とも言えますがやっぱりトモダチと言ってくれてれてますしね。

 それと改めて、声優さんについては、触れるのを忘れるくらい違和感がないですね。ダブルヒロインともにぴったりの声優さんでした。

 なお、2回目を見るのはどうかな?という気はしました。1回目の衝撃が良かった作品なので、考えながら見るよりも初めての時の感情の動きをそのままにしておいた方がよかったかも。



 そして一番の衝撃。幾田りらさんって、YOASOBIの人なの?びっくりしました。イクラさんって別名なのね。アクアさまの声優さんがエライ美人なのでびっくりしたより驚きました。
 それで声優もできるんだ…才能なのか努力なのか…すごい人がいたもんです。正直この作品の面白さは2人の声優さんの力が大きいですからね…




追記 見て数日は最高の作品だと思ったし、今も出来の良さについては同じ印象なんですけど…なぜか、余韻の減衰が非常に速い気がします。まあ、考えるテーマは描き方はすごかったんですけど、内容的には平凡と言えば平凡です。面白さも1回目の「驚き」に依存するところも大きいですしね。

 2回×2回みて、原作も読んでいろいろ咀嚼して、それほど浅い話だとは思わないんですけど、引っ掛かりがないのかも。それと原作の12巻がちょっとノイズになったかなあ…それもまあオープンエンディングではあるんですけど、SFで考えるとかなり限定されたハッピーエンドなんですよね。

 うーん、むつかしいですね。いったんストーリーの評価の5を4に下げます。

 ただ、です。この映画の価値で再認識しているのは、やっぱり原作を読んでなんですけど、ヒロイン2人の声優さんの掛け合いです。これは原作にはない良さです。素晴らしかった。いままでのアニメヒロインの中でもっとも心地よかったかもしれません。2人ともミュージシャンということで声質がいいのか、音楽的なリズムなのかわかりません。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 8
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

世界を変える想いが主人公特権じゃないが故の興味深い混沌

引き続き原作未読で劇場鑑賞。

【物語 4.0点】
率直に言って、スッキリとは終わらない、凄くモヤモヤする幕引きとの印象を受けました。
ですが興味深いとの感想も得ました。

主人公の“おんたん”こと中川鳳蘭が小山門出を想う気持ちが、
世界に大きな影響をもたらしていたというシナリオ。
本作の場合これが主人公補正の無限チート能力ではなく、
{netabare} “侵略者”から提供された並行世界の別時間軸にシフトする{/netabare} 高度な技術が裏付け。
技術が有限である以上、おんたんの想いが世界を変える力にも限度がある。

さらに、想いで世界を変えたい、一矢報いたいのは、おんたんや門出だけじゃない。

後章、実質3人目の主役ポジだった大葉。
人間のアイドルの身体に“侵略者”の意識を移植した彼もまた、
{netabare} おんたんへの恋慕{/netabare} も交えた想いを原動力に最終決戦に挑む。

“侵略者狩り”集団を率いる小比類巻 健一も、
想い人を喪失した復讐という負の感情から“侵略者狩り”を行い、
人類終了後の新時代主導を目論んだ。
彼もまた、想いで世界に影響を及ぼそうとした一人でしょう。

その他にも、世界にぶつけたい想いを抱えた登場人物は数多くいましたし、
各並行世界に現れる事象というのは、こうした無数の想いが入り乱れて成される。
よって一個人が世界を思うがままに改変したいというのは不毛。
例え、その想いが高度な文明の支援を受けたとしても、
宇宙から、さらに{netabare} 次元越しに存在を瞬時に消滅できる{/netabare} 神の審判レベルに超越した存在が干渉してくれば、大局の主導権は敢え無く奪われてしまう。

やり直しなど無意味とこぼした“侵略者”の警鐘?が、
終盤になるほど重たく鳴り響きます。


個人が世界を変える限界をこれでもかと描写できているからこそ、
世界を決め付ける自称絶対の法則やイデオロギーよりも、
自分にとって絶対なあの人と共に生きることを大切にしよう。
人類終了騒動の顛末と併存する、おんたん&門出のゆる~い日常がかけがえのないものに思えて来ます。

事態は混沌としていましたが、終末を前にした各登場人物たちの想いは整理された良シナリオだったと感じました。

脚本・吉田 玲子氏が私の鑑賞動機の一つでしたが、
人の心を扱う物語をさばかせたら彼女は一級品だと再認識しました。
吉田氏、次は今夏末の山田 尚子監督映画『きみの色』の脚本。
私も終わらない夏休みを夢想しながらw心待ちにしたいです。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・Production+h

巨大円盤とそれに対抗する決戦兵器という想像し易い凄さ、ワクワク感があった前章に比べ、
原理すら想像が付かない未知の存在への畏怖がより強調された3DCG。
黒い護岸ブロックを巨大な浮遊球体として構築したような“ゼロ磁場”から繰り出される超常現象の再現が象徴的。

“侵略者”、人類共に血しぶきを上げて弾け飛ぶなど、
グロ表現も容赦なく、
暴力の是非について鑑賞者に突き付けるのに十二分。

異なる時間軸を行き来したり、覗き見たりしながら、
時系列も前後する複雑なプロット構造でしたが、
碁盤調にワイプする画面演出など、作画の支援もあって、
私は何とか付いていくことができました。
ただ換言すれば、背景、作画からの情報も読み解いていかないと置いていかれるので、集中力は必須です。


【キャラ 4.5点】
大学に進学した、おんたん、門出たち。
平和主義者の竹本ふたばを取り込んでいく“侵略者”保護を叫ぶ集団SHIPと、
それを潰そうとするカウンター勢力など、
我こそが絶対の社会正義だと思い上がるキャンパスの痛い連中も、高解像度で再現。

一方で展開される、おんたん、門出それぞれの恋模様、二人の友情とのコントラストで、
世界を決め付ける絶対のイデオロギーより、個人にとっての絶対であるあの人と一緒にいたいという論点がより明確化。

その流れから、私がずっと追っていたのが、ジャーナリストの三浦太郎。
“侵略者”の扱いを巡り対立を深める両陣営からは距離を置き、
社会正義に血眼になる学生に、
後々、笑い話になることを祈るよと冷めたアドバイスを送る。
だが、彼もまたポジショントークで上手く立ち回っているように見えて、
結局はバランス良く真実を追求する気分を視聴者に与えるコメンテーターという商品を提供、消費される存在に過ぎなかった。
その“商品価値”が毀損されるに及び、訪れた顛末もまた考えさせられるカットでした。

この観点から、おんたんの兄で、“自宅ネット監視員”中川 ひろしも、
SNS等で意識高い系や陰謀論者が続々沸いて出てくる惨状を嘲笑する、
私が前後編通じて、視点を共有しやすい良キャラでした。

終盤には{netabare} CG映像に取って代わられた荻野総理{/netabare} などディープフェイクの要素も絡んで来たりして、社会風刺は上々。
それらを織り込んだ独特のセリフ回しにも含蓄がありました。

私がツボった、かつ可哀想だなと思ったのが、
{netabare} 高校卒業して晴れて“解禁”となった渡良瀬先生との恋愛がイマイチ進展しないことに苛立った門出の腹いせに、とばっちりでク◯リプを投稿された芸能人の件w{/netabare}


あとは、大学のオカ研会長の“ブロッコリー”尾城先輩。
これ見よがしに空を覆う巨大母艦なんてUFOじゃないとのオカルトの主張。
私も全力で同意しますw


【声優 4.0点】
大葉役の入野 自由さん。
無味乾燥だった“侵略者”が人の想いを知って変わって熱くなっていく過程を好表現。

小比類巻健一役の内山 昂輝さん。
躊躇なく“侵略者”を虐殺する圧倒的な暴力を行使し、
非暴力を主張する“侵略者保護”の学生運動にぬるいとマウントを取る言動。
人間が暴力を否定し続けても尚、惹かれてしまう理由。
正論なんだけど怖いし間違っている気がする。
微妙なさじ加減を、おどろおどろしいボイスを駆使して体現。

実力者声優二人の競演が、後章のクライマックスを引き立てる聞き所。


【音楽 4.0点】
後章ED主題歌は幾田りらfeat.ano「青春謳歌」
主役二人がポジションを前章から入れ替えてのコラボソング。
世界をひっくり返す危険性が醸されていた前作よりも、
ゆる~いギターサウンドがリードする日常系で穏やかに締めくくる。

“人類が終わる”その時のシーンでは、
2015年に原作者が作詞でコラボしたアイドルソング、でんぱ組.inc「あした地球がこなごなになっても」が起用。
こちらも世界が滅びるからって深刻にならず楽観的に過ごす、
本作の世界観を拡張する明るい曲風。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 19

89.1 3 タイムリープで東京なアニメランキング3位
劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ(アニメ映画)

2013年4月20日
★★★★★ 4.1 (2606)
13629人が棚に入れました
「狂気のマッドサイエンティスト」を自称し、いまだ厨二病をひきずる大学生・岡部倫太郎。秋葉原の片隅、「未来ガジェット研究所」で偶然、過去へと送信できるメール「Dメール」を発明してしまったことから、彼とその仲間たちは世界規模の大事件に巻き込まれることになる。

「シュタインズ・ゲート」は、タイムパラドックスにより引き起こされる悲劇と、それに立ち向かう仲間たちの絆を描く物語である。

声優・キャラクター
宮野真守、花澤香菜、関智一、今井麻美、後藤沙緒里、小林ゆう、桃井はるこ、田村ゆかり
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

大事な人がいなくなった世界。その世界を受け入れるのか、抗うのか。

STEINS;GATE劇場版。

6年ぐらい前に視聴してレビューも投稿していたのですが、STEINS;GATEのテレビシリーズを見直したのに合わせて、こちらの劇場版も久しぶりに視聴。

自分が過去に書いたレビューとだいぶ違った感想を抱いたので、こちらのレビューも書き直すことにしました。

テレビシリーズ第1作を見てからの視聴をおすすめします。

設定や登場人物たちがどのような道のりを経て、
現在に至っているかを知っている方が、
より楽しめると思います。

90分ほどの作品です。


● ストーリー
あの夏から1年後。

牧瀬紅莉栖(まきせ くりす)は、久しぶりに日本に帰ってきて、岡部倫太郎(おかべ りんたろう)達と再会した。

ラボでにぎやかに過ごし、
普段と変わらないと思っていた日常。

その中で岡部は様々な世界線の記憶の混濁に苦しんでいた。

そして、 {netabare} 世界と皆の記憶の中から岡部の存在 {/netabare}が、消えた。

何かが世界に足りないと感じた紅莉栖は、
過去へタイムリープすることを決意する。


最初の30分ほどは、ラボメンとの再会や、
おかりんの相変わらずの中二病っぷりを味わうw

こういう時間はおかりんがずっと欲しいと頑張ってきた成果だから、当たり前に思ってはいけませんね。

そしておかりんに起こる異変。
異変を感じ取り、行動する紅莉栖。

本編ではおかりん目線で物語が進行しましたが、
今回は紅莉栖目線の物語でした。

紅莉栖のおかりんへの想いとか、
ラボメンにとってのおかりんの存在とか、

いつもは中二病を冷たくあしらわれているけれど、
みんなに愛されているんだな~と感じられてよかったです。

おかりん優しくていいやつだからね。
みんなの輪の中心にいるのが似合っていると感じました^^

時間は90分でちょうどよかったです。
無駄もなく、かけ足にもならず。

本編ほどわくわくドキドキはしませんでしたが、
十分面白いと思いました^^


でも過去へ戻った紅莉栖の行動がいまいち解せない。
{netabare} なぜキスをする必要があったのか? {/netabare}

確かに強いインパクトではあるけれど、
あれ、事件でしょ?笑

映画公開時はどうだったかはわかりませんが、
現代だと大問題ですよww

下手したら悪い意味でのトラウマになってしまってもおかしくない…。
まあ、美人な女子大生が相手なら、誰にとってもご褒美になるのかしら?w


≪ デジャヴ ≫

作中で語られるデジャヴについての可能性。
別の世界線での記憶ではないかと。

でも私、これ本気で思うんですよね。

というのも、自分がよくデジャヴを感じるから。
デジャヴというか、予知夢に近い感じかな。

悪い夢を見て、
それと同じ場面が現実に起こるの。

「ああ、この後夢だとこうなるんだよね。」とその場では淡々とその場面を受け入れつつ、夢と同じことが起こらないようにただ祈る。

今まで夢の通りになったことはなく、
すべて悪いことは回避されています。

それこそ、別の未来を歩み出したみたいに。

これって、本当にただの記憶のバグなのかしら。それとも偶然?
どうも納得いかないんだよなー。

皆さんにもこんなことありませんか?

誰かとそんな話したことないけど、
私だけが感じていることじゃないと思うのよね。


● キャラクター
キャラがいいですね。

再会シーンや、みんなでにぎやかに過ごす様子を見ていて、改めて思いました^^

ツンデレ紅莉栖の可愛さや、
ロリおかりんの可愛さにやられてました(*´Д`)

ロリおかりんがイケメンでびっくりしたw
なぜ道を誤った…もったいない…。笑


● 音楽
【 主題歌「あなたの選んだこの時を」/ いとうかなこ 】

1期のOPもよかったですが、
こちらもかっこいい♪

1期のOPとは違う曲なのにシュタゲらしいと言うか、
よく合っています。お気に入り^^


【 ED「いつもこの場所で」/ 彩音 】

この曲もよかったな~。

最後に流れる曲として、余韻もばっちり^^


● まとめ
たぶん世界のどこかでタイムマシンの研究は行われていると思いますが、果たして本当に必要なものなのか。

それを考えるきっかけにもなりました。

過去はやり直せないからこそ、
人は前を向いて歩いていける。

でももし過去をやり直せるとしたら…難しいテーマです。

1期と比べるとドキドキ感は物足りなかったですが、
十分満足できる面白さでした。

ラブラブ感は増してましたね(・∀・)ニヤニヤ

ただいちゃちゃするだけじゃなくて、
いいパートナーだというのを感じさせてくれたのがよかったです^^

投稿 : 2024/11/02
♥ : 40

かおーん さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

劇場版の前に小説読んだのは不運か幸運か

---視聴前---
原作ゲームもやってません。普段アニメみない自分が、室内で自転車こぎながらハァハァ(心拍的に)しながらみてアニメにはまったのがこの本編。面白すぎたこの作品の続編なら見なくては!と思ってるのですが。

子育て忙しく映画館に行けないので、12月3日のDVD発売を待とうと思ったんですが、楽天ポイントが余ってたのでkoboで小説上下巻を買ってみました。

アニメ25話(未放送?)から小説はスタートします。映画は、25話は含まれないようです。ので、25話を見てから映画を観たほうがよいでしょう。

えと、小説の内容のほうはひどいです。クドい。わかりにくい時系列を説明しようとしてなのか、、、またその解説かよ、お前は進撃の巨人のオープニングか?みたいなループを感じます。そして、文章が致命的に下手。文体にキレもなければ明瞭さもないので感情も緊迫感も、登場人物の愛らしさもなにも伝わらないという駄作。

本編では映像だけで楽しめた、あのブラウン管工房、ドクペの群れ、夏のうだつような暑さのなかに回る扇風機、妙に美味そうな牛丼、きらびやかなメイドカフェに輝くコス。
こういったものが、文章でまるで再現出来てない。というより風景描写や心理描写等の基本的な技術が抜けてる。

メイドカフェ2号店はどんな感じなのよ?
助手のタイムリープ、どんな顔してんの?それは好奇心?それとも意地?
岡部の苦しみを理解して、自分も苦しむ描写が薄いくて解らなくね?
科学者の意地と、女である自分。その表現ってもうすこし掘り下げないとじゃね?

この作者はもうすこし他人の文章を読んだ方が良いですね。

このおかげで、本編で上げられまくったハードルがガッツリ下がったので、DVDがより楽しめそうです。そういう意味で、小説から入るには意味があるかも。

「私は小説を読んだが、読んでいなかったと観測させろ。あのとき読んだ、あの本は、設定本なのだ。自分を騙せ。世界を、騙せ!」
と努力中。

映像視聴後に再度編集予定

---視聴後---
いや、まじで。小説版を先に読まない方がいいです。2ch開いてたらネタバレみちまったよチクショウ的な感じが・・・。
小説版を読んでいないと自分を思い込ませ、内容忘れた世界線に移動したつもりだったんですが、リーディングシュタイナーが邪魔をしてくれる・・・。

が、それでも楽しめました。
さすが劇場版、作画は最高です。キレイな映像で楽しめます。
この作品と、「はたらく魔王さま!」が並行作業だったとは・・・恐れ入ります、WhiteFox。

声優さんもスバラシイ。小説版ではイマイチ(いや、まったく)伝わらないクリスの感情がビシビシ来ます。アニメ制作側に愛された作品ですね!
TV版22話、勝利宣言前のタイムリープ、クリスが部屋に駆け込んでくるところに重ねてるんですねー。こういうところが小説だとまったくわからんw

今回の主役はオカリンではなく、クリスです。
岡部の追い求めたシュタインズゲート世界線を尊重し、過去改変は行わないと決める、科学者としてのクリス。岡部と共に生きていきたい乙女としてのクリス、その葛藤。そして彼女が選ぶ「選択」とは。

小説のほうが、未来でオバサンになったクリスと、バイト戦士の関係がどうだったのか、クリスオバサン騙して、命がけでタイムマシン使って、乙女クリスの願いを叶えようとした鈴羽の思いとかが書かれています。

小説版では、タイムリープ前に鈴羽が来たことの理由として、ずっと先の未来、クリスもダルも40歳だっけか?そのくらいになって、急にオカリンのことを思い出した、それでタイムマシンを作った。と説明されています。クリスはその年になって急に思い出した岡部を、やはり大切な人、なぜ忘れていたのかと思い悩み、タイムマシンを作り、封印する。それを見てられなかった鈴羽は、、、。


シュタインズゲートは最高傑作ですね。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 16

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

いくつもの世界線を越えてきた彼らの物語は、ついに劇場へと収束する…

この物語は、本編トゥルーエンドの"その後"に起こる事件が描かれています。
まゆしーが死なず、紅莉栖が生きているこの世界…
たった一つの答えに辿り着くまで、岡部は幾度となくタイムリープを繰り返してきました。
タイムリープする度に精神的負荷が身体を蝕み、心がボロボロに引き裂かれながらも正解への歩みを止めなかった狂気のマッドサイエンティスト…

未来に起こるであろう最悪を回避し、みんな一同に集える世界線…
岡部が願ってやまなかった幸せな時間が過ぎている…
あの事件から1年後の世界が今回の物語の舞台です。

そんな中、アメリカの研究所から紅莉栖が1年振りに戻ってくるところから物語が始まります。
久々の再開…岡部も紅莉栖も嬉しくない筈がありません。
それなのに顔を見るなり言い合いが始まるんです。
全く…お互い素直じゃないところは相変わらずですね。

そんな中、突如、過去の記憶がフラッシュバックする「変調」が訪れます。
でも、最初は変調だと気付きませんでした。
何故なら、その様な光景は本編でも度々見かけたからです。
だからその変調は、これまでと一緒で暫くすれば元通りになると思っていました。
ですが、事の重大さを知るまでに多くの時間は必要ありませんでした。

次の瞬間、広がっていたのは違和感だらけの世界…
いつもと変わらない日常…ただし、大切なモノがごっそり抜け落ちていることに誰一人気付かず、元から何も無かったことになってしまった世界…
手に入れるために必死に足掻いた結果が代償と烙印を押された世界…
今回そんないびつな世界で一人奮闘するのは、牧瀬紅莉栖です。

元々の存在を無かったことにする…
世界線が移動したのなら可能性がゼロではないのかもしれません。
でも人の記憶って不思議…
ひょんなことから、これまで欠落していた記憶を呼び起こすことだってあるんです。
紅莉栖の場合は、マイフォークでしたけれど…

そんな世界でも強く生きる…
意志を強くもって紅莉栖は日々を過ごしてきました。
でも、川の流れのように流されて今に行き着いた訳ではありません。
固く禁じられていた過去改変まで行って現状を打破しようと懸命に足掻きました。
それでも、事態を収束できないばかりか、過去改変による精神的負荷が半端ないことを身をもって思い知らされるんです。

自分の大切を守りたくて…取り戻したいから過去に行くのに、目の前で起こるのは自分が一番見たくない惨劇の光景…
自分の無力さを思い知らされて…心がポッキリ折れない筈がありません。

それでも一歩踏み出す…
そのきっかけをくれたのは、ラボメンのデジャヴという名の優しさでした。
だって、あれだけずっと一緒だったんです。
元から無かったことになんて絶対できないんです。

紅莉栖は本懐を遂げることができるのか…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

元々嫌いじゃありませんでしたが、この劇場版で紅莉栖に対する株は右肩上がりです。
天才と言われるだけあって、普段はあまり取り乱したりしない彼女…
唯一表情を変えるとすると、彼女の琴線に触れた時に発動するツンデレ成分くらい…
でもこの劇場版ではこれまで見てきたどの作品より人間らしさ…彼女の本気を感じることができます。
そして最後の台詞の「やだ。」はトドメの一撃…
これで彼女に色々持っていかれた気がします。

主題歌は、いとうかなこさんの「あなたの選んだこの時を」
エンディングテーマは、彩音さんの「いつもこの場所で」
どちらもメチャクチャ格好良い楽曲です。
志倉千代丸さんの作る曲は私好み…ということが最近分かってきました。

上映時間89分ですが、時間を感じさせない濃密な内容に作品に仕上がっていると思います。
私にとってゼロの視聴に弾みを付けてくれた作品であると共に、視聴して良かった…と本気で思えた作品でした。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 26
ページの先頭へ