とまときんぎょ さんの感想・評価
4.7
唄声かさねて
2014年冬作品なのに、画像が無くて残念。
これは本当に美しかったです。
島の景色、暮らし、空の色、花の波。子供達の遊び。
戦争が終わってホッとしたのもつかの間、ソ連軍がやって来て色丹島を占領する。それまでとは違う暮らしを強いられ、先の読めない生活となって…。
日本の子供とソ連の子供が近づいてゆく描写がまた素晴らしかった。
とったとられたの関係でも、そばで暮らしていれば否が応でも文化は影響しあってゆく。
耳で覚えあった歌声を重ねる姿。
壁越しに汽車を走らせるシーンは、目を見張る鮮やかな陰影が走り抜けていきました。
そんな時代でも、身近な物から魔法のように刺激される、子供時代の遊び心が伝わってきます。演出は「ばらかもん」の橘正紀でした。
ここ以外でも、汽車のシーンは映えていて、作品を最後まで引っ張っていきました。
様々な大人たちの存在が極立っていました。
{netabare}漁師として海で死ぬことが自分の人生だと決めていたおじいちゃん。
兵隊が来ても普段通りを毅然として通そうとした先生。
ちゃらんぽらんだけど、いつでも生き抜くことを諦めず、力を分けてくれたおじさん。
責務を背負ってどんな時も背筋を伸ばしていたお父さん。
自分が出来る範囲で助けてくれた異国の人。 {/netabare}
美化はあるのだろうし、原作(「北の国から」演出家の杉田成道 作)のグロテスクな部分は抜きにしてあるらしいけれど。
戦後の復興期のたくましさを描いたドラマはよく見かける中、その恩恵の下に入れずに抑留されたままだった人々も居るのだと、美しさを交えながら語ったアニメ作品です。
絵の色合いは絵の具を拭きぬぐったようなマチエールが重ねられていて、人物の線は柔らかく省略が小気味良いです。アニメにセンスを求める方にも、充分響くものがあると思います。
(Production I.G.制作、キャラデザと作画監督が「四畳半神話大系」の伊東伸高、原画はそうそうたるメンバーです)
「銀河鉄道の夜」のセリフが重ねられた内容でもあります。ラストに流れる、宮沢賢治の詩にさだまさしが曲をつけ、幾人もで唄われた歌も、とても優しく流麗です。
みのるしさんの実感のこもったアツいレビューで観てみましたが、私もおすすめします。d(^_^o)
子供と観ていたので、私はつい泣けなかったのですが、純度の高さに幾度も波が押し寄せました。