ostrich さんの感想・評価
3.9
誰得ではあるけれど、「特別な一本」にもなり得る作品
パチンコを知らない方のために、ストーリー原案である
パチンコ海物語のパチンコ業界における立ち居地を
アニメ業界に例えてみると「サザエさん」や「ドラえもん」。
つまり、その業界を代表するド定番ヒット作品です。
ヘビーパチンカーの私は、当然、よく打っていましたし、
本作(アニメうみものがたり)の存在を
パチンコ雑誌辺りの情報で、リアルタイムで認知してはいました。
でも、だからってアニメ版を観たいと思うか?
といえば、まあ、否。
アニメ作品のタイアップで成功したパチンコ、パチスロは、
エヴァンゲリオンを代表に、多々ありますが、逆はなかなか難しい。
私の感触に過ぎないけれど、パチンコファンとアニメファンって
実はそれほど重複していないと思います。
あるいは、アニメをフックに若年層のパチンコ海物語ユーザーを
増やそうとしたのかもしれませんが、
同系統の企画が続いていないところをみると、
これまた成功したとはいえないのでしょうね。
私もリアルタイムでは鑑賞せず。
で、今頃になって鑑賞してみたところ、
まさかの美少女戦士もの!
とりあえず、パチンコファンとしては、
アニメ制作スタッフがパチンコのエッセンスを
取り入れようとしている姿勢が見えるのには好感を持ちました。
大当たり図柄の魚たちが敵として登場したり、それらが浄化される際、
パチンコの「泡演出」のイメージが出てきたり。
…まあ、正直、誰が喜ぶのかよくわからないサービスですが、
私は少し喜びましたよ。
でも、「泡」があるなら「魚群」を出さなきゃ、とも思うかな。
あと、作品のキーワードになっている「愛してる」という言葉。
これはパチンコメーカーから、パチンコ海物語を
20年近く愛しているパチンカーたちへの返答と解釈し、
私はこれまた少し感動しました。
でも、そういう解釈をする人は、やっぱり少ないよな。
と、以上が一パチンカーとしての率直な感想。
やっぱりタイアップ企画としては誰得感が否めません。
ただ、アニメ単体の出来はかなり良いと思いました。
物語を一言で言えば「ひと夏の体験を通じた少女の成長物語」。
ジュブナイルものとして手堅い作りになっています。
特筆する部分としては全編にわたる沖縄方言。
アニメで沖縄方言に触れるのはとても新鮮でした。
方言+ジュブナイルといえば
ジブリの名作「海がきこえる」がありますが、
内容は全然違うけど、雰囲気はわりと似ているかもしれません。
あと、音楽の使い方。
本作では激しいテンポの曲や
不安感をあおるような曲を全く使用していません。
バトルシーンやシリアスな展開もあるのですが、
そこにも美しい旋律の曲を被せているのが印象的。
どんな意図があるのかはっきりとはわかりませんが、
結果として、全体的に「バトルもの」っぽい雰囲気が後退してます。
(よい意味で、です)
本作は主人公と敵対する「セドナ」の設定を含めて、
非常に寓話的なので、そういう雰囲気にしたかったのかな。
総じてとても良心的な佳作かと。
余談ですが私にとって、前述した「海がきこえる」は、
思春期真っ只中の夏休みに観て以来、
なぜか心の片隅に残り続けて、
何年かに一回無性に観たくなる作品になったのですが、
本作も、その人の見るタイミングによっては
そういうものになり得ると思います。
まあ、私は思春期をとっくに過ぎたしがないパチンカーなので、
残念ながらそうはなりませんでしたが、
思春期真っ只中の方にはわりとオススメしたいかも。
…あ、でも、パチンコは18歳になってからな。