シャフトでファンタジーなアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のシャフトでファンタジーな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月10日の時点で一番のシャフトでファンタジーなアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.0 1 シャフトでファンタジーなアニメランキング1位
続・終物語(アニメ映画)

2018年11月10日
★★★★☆ 3.8 (343)
1906人が棚に入れました
高校の卒業式の翌朝。顔を洗おうと洗面台の鏡に向かい合った暦は、そこに映った自分自身に見つめられている感覚に陥る。思わず鏡に手を触れると、そのまま指先が沈み込んでいき……。気がついたとき、暦はあらゆることが反転した世界にいた。

2018/11/10より全国劇場にてイベント上映開始!

声優・キャラクター
神谷浩史、斎藤千和、加藤英美里、沢城みゆき、花澤香菜、堀江由衣、喜多村英梨、井口裕香、早見沙織、井上麻里奈
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

怪奇現象学

シャフト制作。

現代の萌え怪奇絵巻、文学的鬼太郎。
その名も「こよみリバース」である。

大学入学を直前に控えた、
{netabare}阿良々木暦の摩訶不思議な鏡の国の冒険。{/netabare}

原作はあまり心に響かず期待薄でしたが、
独自の絵が付き、音が入り、命が吹き込まれ、
オールスターキャストの豪華な共演が、
娯楽として驚きの仕上がりを見せています。

{netabare}ロリコンサービスショットに、
セクシー羽川猫、表情豊かな斧乃木余接、
艶っぽい臥煙遠江の初登場!?など、
見所満載のシリーズ総決算になっています。{/netabare}

妹だけが変化のない、とある日常を巡り、
街を彷徨い、その謎の核心に迫る阿良々木暦。
{netabare}彼の心残りが原因で、歪み共鳴した異質な世界。
そこから無事に帰還できるのか!?
パロディ、メタ展開、余白を繋ぎ、
最後はツインテールと笑顔の衝撃波である。{/netabare}

やはり楽しい物語ですね、
次なる物語への跳躍でしょう。

大学編があればと期待しています。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 50

ローズ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

鏡開き

高校を卒業した阿良々木暦。
起床して顔を洗うと鏡が奇妙な事に気づく。
鏡の中に入り込み、反転した世界へと行ってしまったのであった。

まずは、鏡について。
日本では鏡は神聖化。
神の依り代として奉られています。
それは何故か。
鏡に映る姿を神と同一化していたから。
鏡=かがみ=「か『が』み」
神の中に我(=自分)を入れています。
漢字表記だと「ネ『我』申」
日本古来の宗教である古神道の考え方の説明でした。

鏡の中の世界が裏側の世界、というのは良い設定ですね。
元の世界へと戻るべく奮闘する阿良々木君。
登場人物は、元の世界の裏側設定の人格が現れています。
表があるから裏がある。
当然の事ですが、案外忘れがち。
鏡というと反射を浮かべる人が多いですからね。

高校を卒業して大学へ入るまでの不安定な時期。
しかも合格発表が、まだ済んでいませんからね。
心に余裕と緊張が同居するごちゃ混ぜな心情。
阿良々木君でなくても不安でしょう。

本作品で、本当に阿良々木君たちの高校生活は終わります。
立つ鳥跡を濁さず。
反省はしても後悔はしないように。
大学生になった阿良々木君を少し垣間見れるのが『花物語』
物語シリーズのファイナルシーズンですが、大学生編があってもいいですよね。
大人姿の八九寺真宵や死んでいる設定だった臥煙遠江、
出番の少なかった老倉育などのキャラにも光を当てました。
鏡だけに「光を当てる」……
阿良々木君たちが関わる怪異譚。
続編を期待しています。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 35
ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

不思議な世界

原作未読 上映時間 約150分

テレビアニメ放送(未定)に先駆けて6話分を劇場版としてひとつに纏めて公開した作品です。

阿良々木 暦が私立直江津高校を卒業して、大学入試の合格発表前の出来事を描いています。朝、洗面所の鏡に映る自分を不思議に思ったあと、その鏡の中に引き込まれたお話です。

キャラデザは、テレビアニメ版と同じなので違和感なく観れました。

いつもの阿良々木暦の一人語りがメインで、色々なキャラとの会話劇もたくさんありましたね。{netabare}(まさか神原 遠江(臥煙)さんまで出てくるとは思いませんでしたw){/netabare}

女性キャラがほぼ登場しますが、いつもと違った面が観れました。
{netabare}
成人になった八九寺真宵、レイニー・デヴィル姿の神原駿河、クチナワ口調の千石撫子、ブラック羽川や少女姿の羽川翼、背が低くなった阿良々木火憐、人間の時の忍野忍、ツインテールの戦場ヶ原ひたぎ、表情や仕草が豊かな斧乃木余接、学ランを着た(男性?)忍野扇、そして老倉育さんだけは最初誰だか分からないくらい容姿や性格が変わっていましたねw
阿良々木暦の女子制服姿で真剣に語っているところは、ちょっと笑ってしまいました。
{/netabare}
PG12作品ということで、やたらと下着姿や裸のシーンが多かったですw

化物語の世界を満喫しました。この作品の特徴として、アクションシーンが少なく会話する時間が長く、150分もあるので退屈するかもしれませんね。

テレビ放送はいつになるのでしょうか? 早く観たい方で、化物語シリーズが好きな方は観てもいいのではないかと思います。

ED TrySailさんが歌っています。

最後に、原作の物語シリーズはまだ続いているにゃ~。またTVアニメか劇場で続きを観たいシャシャシャ~。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 28

68.8 2 シャフトでファンタジーなアニメランキング2位
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(アニメ映画)

2017年8月18日
★★★★☆ 3.3 (463)
1781人が棚に入れました
物語の舞台は、夏休みのある一日。花火大会をまえに「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」の答えを求め、町の灯台から花火を見ようと計画する少年たち。一方、クラスのアイドル的存在・なずなに想い寄せる典道は、時間が巻き戻る不思議な体験のなかで、なずなから「かけおち」に誘われることに……。何度も繰り返す一日のなか、なずなと典道を待ち受ける運命は? そして、果たして花火は下から見ても、横から見ても丸いのか?

声優・キャラクター
広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子、花澤香菜、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

夏の日の少年少女

繰り返す、夏のある一日。
とある海辺の町。
花火大会を前に盛り上がる典道と友人たち。
花火って横から見ると丸いの!?平べったいの!?

90年代、新進気鋭の映像作家として名を上げた、
岩井俊二監督の同名実写映画にして出世作。

人生の選択の分岐点をテーマに、
1つの物語で2つの結末を描いています。
{netabare}「なぜ時間が巻き戻るのか」{/netabare}
これは物語を成功へ導く最も重要なファクターだ。

舞台は茂下町、風力発電機が立ち並び、
渡り鳥が羽を休める憩いの渚。
幻想的な夕景と海の上を走る電車。
美しい景観に圧倒されます。
上手く表現できない好きと言う感情。
思春期の少年少女に突きつけられる厳しい現実。
{netabare}「もう1度やり直せれば」と願った先に、
時間の巻き戻しという幻想的な奇跡が起こる。{/netabare}

これは典道が望んだ世界でしょうか?
僕にはヒロインなずなの世界にも思えます。

自転車で駆け下りる海辺の坂道。
飛び込んだプールの水飛沫と夜空に咲く花火。
数々の夏の風物詩が眩しい、
美しくも切ない余韻を残す夏の物語。

これは恋の物語ではなく、
思春期の試練と決別を描いたのではなかろうか。

花火が上がるとき、恋の奇跡が起きる。
涼やかな夏の物語、楽しんで下さい。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 91
ネタバレ

明日は明日の風 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

名作ドラマのアニメ化…心揺さぶる青春恋愛ファンタジー

【視聴前】
この夏の楽しみ、それは終物語の続編とこの映画です。共通点は「シャフト制作」というところです。

岩井俊二の名を世に広めたことで知られるこのタイトル。もう20年以上前になるわけか…。衝撃だったのは主演の奥菜恵。こんな可愛い子がいるんだ…というくらいビックリしたのを覚えています。あれから…時は残酷であるの見本としか言いようがありません。

名作映画のアニメ化というと、時かけを思い出しますが、あれは原作ありでさらに中身は全く違うものになっています。これは作品をなぞりながらだというのでこれまでにはないパターンと言えるかもしれません。予告編見ましたが、絵がシャフトだなと感じます。というより、主人公、どこからどう見てもガハラさんだよね…。それもそのはず、キャラデザインは同じ人だった。作中、首を変な方向に曲げたら…。

新房×シャフトなので内容も絵も心配はしていません。自分好みの面白い作品のはずです。が、心配なのは中の人、主役の二人です。予告編ですでに「あれっ?」となっています。特に広瀬すず。すでにキャラデザインと声が合っていないし…。

【視聴後】
この映画を見る前にもう一度実写を見たいと思いレンタル探したけど、もう20年以上前の作品だけになかなか探しきれず…。諦めかけていた時、偶然にもスカパーの日本映画チャンネルで放映していたのでじっくり見ることができました。そしてこの作品を鑑賞。実写を丁寧にオマージュしているなというのが最初の感想でした。アニメ化にあたって、スタッフは実写を細かく分析して、アニメでも通じるところはそのままに、また、原作のイメージを壊さないことを念頭に置いていたのかなと思います。そして、その上で現代の言葉や風景、風俗に当てはめていたと感じました。面白かったのは{netabare}スラムダンクをワンピースにしていたのに、なぜか「観月ありさ」は残したところ。今なら「広瀬すず」でも良いじゃないかと思いますが、これはスタッフの遊び心か、なんなのか判りかねます。{/netabare}

名作と言われる原作ではなかなかアニメになりにくいです。あれは素の子供たちがそのままの姿で演じ、幻想的な部分になり勝ちなところは現実の描写で伝えようとしているとこが良いわけです。が、アニメにするならさらにプラスアルファが必要と思っておりました。そこをうまくファンタジーでまとめたと思います。{netabare}原作では典道となずなは駅舎から帰ることになります。ここからなずなが引っ越すのか残るのかは曖昧なままで終えることになります。アニメでは駅からが本番になっていきます。でも終わりは原作のように曖昧なままで終えるのですが…。{/netabare}それから原作と決定的に違うのは恋愛要素を強めた点。典道となずなの関係は原作では恋しているのかなんなのかをなずなの表現だけで想像させる作りになっています。{netabare}祐介と典道に水を掛けるシーンでのなずなの表情がまさにそれ。アニメでも見事に表現されていました。{/netabare}この辺りは「君の名は。」の影響が大きいような感じもしましたがさて…。

作画はきれいなシャフトという感じです。シャフトの不可思議な描写は控えめにしてます。感心したのはとにかく水の描写がきれいです。ホースからの水の出方が美しすぎて見とれました。それと、なずはどっからどう見てもガハラさんです。ガハラさん好きの自分が言うのだから間違いありません(苦笑)。シャフ度ぎりぎりに抑えた首の角度にしびれました。でも…中学一年生には見えない…。とはいえ、原作のなずなは小学6年生で奥菜恵だったからなぁ…あれも小学生には到底見えなかったし…。それと問題の中の人。広瀬すずは声質はなずなに合っていたと思います(視聴前の前言撤回します)。例え棒でも声が合っていれば納得してしまうので個人的にはOKです。心配していた典道は…う~ん、頑張っていたと思います。でも中学一年生の声ではないよね。周り固めたのがシャフトでお馴染みの方ばかりなので、劣ってしまうのは仕方ないです。

個人的にこの作品は気に入りました。シャフト好きな人(特にefのような作品が好きな人)には合うのではないかなと思います。できれば原作も見ておくとより楽しめるのではないかと思います。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 43
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

蠱惑の球面

元ネタである岩井俊二監督のスペシャルテレビドラマは視聴済み。

球とは実に不思議な形をしています。
どの角度から見ても見える形は同じですが、
見えてる面は視点によって全部違う。

その上、光の加減まで考慮すると球はさらに神秘的。
特に例えばガラス玉のような透過性の高い球体ともなれば、
光の屈折まで加味されて見る視点によって輝き方が目まぐるしく変わる……。
そして、その透き通った球体は、あらゆる光を集めると共に、
球の境界を隔てた人々の視線や思念、願望をも惹き付け誘惑するのだ……。


本作は原作にもあった花火の見え方のウンチクによる好奇心刺激に加え、
シャフト作画によって全編に散りばめられた円柱、球形への違和感、興味。
それらが心を浮つかせる夏の空気、ヒロイン少女の魅惑的な美しさ等により加速され、
常識や倫理の壁をも超越して行く、真夏の青春アニメ映画。

主人公少年らと共に気持ちよくジャンプするには、
映像全体が醸すムードに憑かれることが必須で、ハードルはやや高めですが、
私としては夏に劇場鑑賞チャレンジした甲斐があった作品でした。



本作は単純に興味を持って観る。のとは別に色々な動機での鑑賞があり得る作品ですが、
以下、それぞれの立場からの見え方を想定してみると……。


①岩井俊二監督作のリメイクを期待して本作を観る。

……これは正直かなり失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}私が思うに原作ドラマは脚本、シナリオ等により賞賛されているだけでなく、
90年代当時の子供の世界。その再現性によるノスタルジーにより、
年々、思い出としても美化され続けている作品。

(例えば{netabare}本アニメ映画だと少年宅でプレイされるゲームは『キラキラスターナイトDX』という
2016年発売のファミコン用新作レトロゲームという恐ろしく懐古狙いなマニアックぶりですがw
原作ドラマではスーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』という大衆向け定番作 {/netabare})

それら当時の流行も取り込みつつ、しょーもない冗談や下ネタを言い合うw
ガキの会話あるあるな掛け合いが醸す、子供の世界にリアリティや説得力があります。
こうした子供の世界に背伸びしてる感を纏わせつつ、
大人の都合と対峙させることにより、物語の推進力と共感度をアップ。
さらに当時15歳の美少女だったヒロイン役・奥菜恵さんを画面に閉じ込めた希少性と相まって、
今なおタイムカプセルのような輝きを放ち続けている原作ドラマだと思います。

対して本作は後世、思い出となり得るような同時代性の強調は控えめ。
(例えば{netabare} スマホが出て来ない時点でタイムカプセルにはなり辛いですし、
松田聖子さんだの観月ありささんだの叫んでいる時点で
原作の時代に対するオマージュの方が勝っています{/netabare})

むしろ本作は花火の見え方というSFファンタジー世界展開の着火点により注目し、
そこからオリジナル要素も広げていくシャフト作品。

加えて本作では何故か主人公少年らを原作ドラマの小6から中1に設定変更していますが、
原作の掛け合いの流れも引きずっているためでしょうか?
少年少女たちの言動が今風でない感じがするだけでなく、
微妙に小学校卒業してない感じが、
原作ドラマ視聴後だと目につきやすく、それらがストレス要素になりかねません。{/netabare}

いずれにせよ、リメイク期待組とのキャッチボールは波乱含みのようです。

もしも原作ドラマ未見で、ドラマ観てから本作観に行こうと検討されている方がおられたら、
私としては是非、そのまま、よそ見をせずに映画館に直行することをオススメします。


②『君の名は。』川村元気氏のプロデュース作として、前年の感動再現を期待して観る。

……これも大分、失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}特に『君の名は。』を気軽なエンタメ作品として楽しんだ方は、
それを期待して本作を観ると事故る可能性がいっそう高まると思われます。

『君の名は。』は何となく観ていても状況は説明してくれるライトな作品でありつつも、
深読みしても得るものがあるコアな作品でもあった、
間口の広いヒット作だったと私は考えていますが、

本作の場合は作画や表情、ちょっとした台詞の違いなどを深読みしに行かないと、
状況すらも把握し難く、物語の迷宮入りと共に、失意の途中下車に追い込まれかねません。

逆に些細な違和感から考察を巡らすことができる方なら価値を見出せると思います。{/netabare}


③シャフト、新房昭之監督のファンとして本作を観る。

……これはまだ割と期待できそうです。

{netabare} そもそも背景絵等が醸すムードが作品を牽引する構造である以上、
まず本作でも相変わらず癖がある作画、構図等に興味を持って鑑賞し続けることが、
作品と折り合うための必須条件。

何じゃ!?このワケわからん絵は~~wとなるか、
あっこれやっぱりシャフトだ(笑)イヌカレーだ(笑)とニヤニヤできるかは、
本作でも満足度を左右する重要な分岐点になると思われます。

但し作画レベルは背景画等については良好ですが、
人物描写、特にキャラ造形の安定度等については標準レベルなので、
至高の劇場版作画を求める等の過度なハードル上げはオススメできないと思います。{/netabare}



以上、色んな角度から長々と書いてしまいましたがw

簡潔にまとめると本作は普段あまりアニメを観ない層にはあまりオススメできませんが、
コアなアニメファンや、あにこれユーザ等には、
合う合わない、好き嫌いも含めて、是非、感想、考察を聞いてみたい作品だと思います。

例えば核心部分について、私見を述べると……

{netabare}あの夏、最後、典道は平行世界に飛翔したまま戻って来なくなった。
なずなは元の世界に戻って転校し、典道を待ち続けている……。
というのが私の解釈と言うより願望?ですが、如何でしょうか?

典道も平行世界から一応、戻っては来たけど……という見解が多そうかつ、
妥当性も高そうなラストではあったのですが……。
「もしも玉」と平行世界の妖しさに取り憑かれた私としては、
あっさり元の世界に戻って来るのは何か勿体ない感じもするんですよね……。{/netabare}

みなさんの評価、感想……お待ちしております♪

投稿 : 2024/11/09
♥ : 41

63.5 3 シャフトでファンタジーなアニメランキング3位
キノの旅 病気の国 ForYou(アニメ映画)

2007年4月21日
★★★★☆ 3.7 (126)
583人が棚に入れました
人間・キノと言葉を話す二輪車・エルメスが、様々な国を旅しながら遭遇する出来事を味わい深く描き、2003年にはアニメ化もされた人気作品だ。本作は劇場版として2007年に制作されたアニメ。
ネタバレ

おなべ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

鳥を見ると、人は旅に出たくなるんだって

当時「電撃文庫ムービーフェスティバル」の三本立ての一つとして公開されていた作品。
「灼眼のシャナ」「いぬかみっ!」「キノの旅」というようわからんラインラップでした。おまけに製作会社もそれぞれ違います(キノはシャフト)。その中で私はキノ目当てで見て
「やべえ…大型スクリーンでキノ見ちゃってるよやべえ…」とかなんとか高揚感を味わっていました。「キノの旅」の後にギャグテイストの「いぬかみっ!」をやるもんですから、気持ちの素早い切り替えを要しました。




そんな昔話はさておき…
劇場版作品といっても上映時間は約30分。中村隆太郎監督も引継で、声優ももちろんそのままです。劇場版との謳い文句ですが、テレビ版と何ら変わりはありません。
旅人キノと喋るバイクことエルメスのコンビがいろんな国を旅しており、今回は超清潔で近未来的な摩天楼に囲まれた国に行きます。そんな国にある事情とは…。
テレビ版の続きが見たかった方には安心と信頼のクオリティで提供してくれる上、素敵なキノさんを堪能出来ます。作画はかなり変わっていますが、内容や雰囲気自体は相変わらず「キノの旅」です。シナリオ脚本は村井さだゆきさんに変わり小中千昭さんになっています。
監督:中村隆太郎、脚本:小中千昭…一癖も二癖も有るマイナーアニメ「serial experiments lain」のコンビです。このお二方が手掛ける「キノの旅」もとても質のいい作品となっていました。


作画は綺麗になっているものの、ボーンと響く不気味な音楽や、不安を煽る数秒の演出も相変わらず健在しています。
不気味とは程遠いですが、入国審査の際今や深夜アニメ鉄板お約束的存在の不必要なエロシーンがなくて本当に良かった。「キノの旅」にエロはナンセンスですし。スタッフ、有能…ッ!(消毒過程はSF映画「アンドロメダ…」に少し似てるなあと)後半は製作陣が本領発揮したのか、不気味な画面に早変わりします。前半と後半の雰囲気の違いも面白いです。


また、この作品は会話の「間」がとても良い。
原作の少々説明調な台詞を上手いこと改変させていました。キノと少女イナーシャが会話するシーンが比較的長いものの、原作より取っ付きやすい会話になっています。
会話の中穏やかな表情でイナーシャと話し、いつになく優しいキノが見れたことが印象的でした。キノ役前田愛(女優)さんの配役は度々物議を醸しますが作中の台詞で
「農業、したい?」「いつ、知り合ったの?」「早く治る薬が出来ると良いね」
等、イナーシャに語り掛ける声がとても優しそうでした。もう前田愛さん以外マッチしそうにありません。エルメスの声は…やはり私には合わなかったようです。
普段は冷静で他人に基本不干渉なキノが、積極的に行動します。キノの行動理由や心情がわかりやすいエピソードなので劇場作品に選ばれたのかもしれません。
{netabare} 彫刻で創った鳥の配達を承諾したキノに、何気にイナーシャが「わあっ」と言いながらキノの腕にしがみついて、はっとなって直ぐに離れるシーン。何気ない数秒のシーンが丁寧で良いです。キノって意外と好かれることも多いですね(笑)。キノの達観した価値観は確かに憧れるもんがあります。{/netabare}


前半のほのぼのとした中で見せた伏線が後半に繋がっていき、最後はハッピーエンドとは言い難い形で物語は締められます。視聴者に問い掛けるようなラストが「キノの旅」の作品の醍醐味でしょう。見た後ポカーンと放心してしまいました。戦闘シーンがちょっとしかなかったのはちょっぴり残念でしたが、若干数分の戦闘は緊張感が漂いました。BGMに頼らずとも魅せてくれる演出は流石です。
{netabare} ローグはもう既にイナーシャの近くにいるんですよ、地下の病室の標本として…みたくな台詞が強烈でしたね。酷い国だなあ…とは毎度ながら思いますが、幸福は誰かの犠牲の上で成り立っている、そんな皮肉めいたメッセージが感じられました。{/netabare}



タイトルは原作にはなく作中に出て来る台詞です。この台詞はテレビ版でもちょくちょく出るのですがちゃんと劇場版にまで生かしている展開に感動致しました。アニメオリジナルでこういうのを良い例っていうんですねえ…。
画面上派手なものはなく、静かに落ち着いた作品なので退屈に感じてしまう方もいそうです。それでも最後まで見たら何かしら印象に残ることがあるのではないでしょうか。手短い時間の中、沢山の要素をギュッと詰め込んである良作です。

私はこの「キノの旅」の退廃的な雰囲気が好きでたまらんのです。テレビ版のレビューでも書いた通り中村隆太郎監督が逝去されているので難しいのでしょうけど、アニメの方も年に数回でいいからOVA等で製作してくれないかなあと願望を抱いております。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 10

アリス★彡 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

病気の国

■病気の国


「キノの旅」の映画。「灼眼のシャナ」と「いぬかみっ!」と一緒に上映されました。
ラインナップの作風がちょっと違う気がしますね。灼眼のシャナがダークチックな作風なので、ギリギリ合っていると思います。

作風は「キノの旅」のレビューでも書いたと思いますが、もう一度書きますね。
この作品の面白さというのは、世界観とテーマ性の溢れる残酷な描写です。
ディズトピアに含まれるのでしょうか。

一種の極論を仮想世界に描いています。それによって現実世界を揶揄する。
寓話的な手法なのでしょうか。そういった作風なのです。

主人公のキノは現実主義者な上に、傍観者です。そのため、テーマを受け取る私たちは、自分たちで演出を感じ取って、何が伝えたかったのかを考えなければいけません。

物語はバットエンドのものもあり、ハリウッド脚本術から引用すれば、エンターテイメントの基本に沿っていないのですが、そもそもエンターテイメント性を求めた作品ではありません。大衆受けを望んでいるわけでもないですから。
ハッピーエンドになれて飽きた方にはおすすめかもしれません。

前作とは制作会社が変わっています。化物語やニセコイなどでお馴染みのシャフト。しかし、絵本チックな事には変わりありません。
幻想的な世界観は健在で、メッセージ性も含まれています。





http://matome.naver.jp/odai/2136397406926476301
NAVERのURLを貼るのはどうかと思いますが....。
猟奇的なものが含まれているので、閲覧は注意してくださいね。
(NAVERより引用)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%BA%BA%E4%BD%93%E5%AE%9F%E9%A8%93
(アメリカ合衆国における人体実験より引用)

人体実験は昔から行われていた事があったそうです。

★人体実験の例(wikiより引用)

こういう事があったということだけ知ってもらえればいいので、ザッと読み流してくれれば有難いです。

ヨーロッパ
エドワード・ジェンナーによる種痘の実験
マックス・フォン・ペッテンコーファーのコレラ菌自飲実験
ナチス・ドイツの人体実験
ヨーゼフ・メンゲレによる、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所での一連の実験

アメリカ
ミルグラム実験
アメリカ軍が実施した核戦争を想定した兵士の被爆演習(1946年から1962年までの計11の作戦で1030発の核爆弾が使用され、数十万もの兵士が被曝した)
アトミック・ソルジャー
スタンフォード監獄実験
タスキーギ梅毒実験(w:Tuskegee syphilis experiment、1932年から1972年にかけてアラバマのタスキーギで貧困層の黒人性病患者約400人が生体実験の対象として未治療のまま放置[3]。1997年にクリントン大統領が謝罪。)
グアテマラ人体実験(1946年から1948年にかけてグアテマラにおける、アメリカ政府(公衆衛生局、国立衛生研究所)によるペニシリンの薬効確認のための梅毒集団接種[4])
MKウルトラ計画(LSDを使った洗脳実験)

日本
華岡青洲による全身麻酔の実験
九州大学生体解剖事件
新潟大学におけるツツガムシ病原菌の人体接種問題
731部隊(石井四郎が主導し、十数年にわたって多くの国籍にわたる1000~3000人とされる捕虜に、ペスト菌や炭疽菌、性病を感染させたり、冷凍、空爆、生体解剖、水だけで生きられる期間などを実地検証した日本の特殊部隊。データはアメリカにわたり幹部は戦犯にならなかった)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E4%BD%93%E5%AE%9F%E9%A8%93
(引用元)



現在は動物実験でウィルスや薬品のテストが行われています。その有り難みを知るためのお話と考えても良いかもしれませんね。

今の社会において、普通なら国がこんなことするはずはありませんよね。裏社会関係でこういう話を聞いた話があります。しかし、表立ってそんなことは考えられないですよね。(もしかしたら、私の知識が足りないだけかもしれないけど)

どちらかというと、昔の発展途上国や中世などでありそうです。中世については詳しくないので語ることが出来ないです。「人体実験が過去にあった。それで問題になった」ということだけ触れらればそれで良いです。


曲解すると、ネット恋愛のお話と解釈が出来そうです。キノの行動は作者の現実主義者的な考えを反映している行為ですよね。
「真実を伝えなければ良いのに伝える」ということをしていますからね。

この作品は不幸を見せることによって、その行為は正しかったのか、間違っていたのかを考えさせるようなシーンを作り出す、それに優れています。
「正しい、間違っている」というのは社会によって変わる上に、環境によって変化しますから、とても難しいです。

それを踏まえた上で、キノの傍観者的な振る舞いはよく出来ていますよね。視聴者に結論を委ねるといった意味合いで、「それ」を投げ出します。

私は、人体実験の面の悪い面を描いたと解釈しています。しかし、何も感じなかった人もいるかもしれません。その上、最後に女の子は助かっていますから、「犠牲はあるけれど、助かる」と解釈してもおかしくないのです。

他人の不幸などを気にしない方なのであれば、一人の犠牲で住民が救われる方を選ぶでしょうね。一人を殺して。
「平和を選ぶのか、それとも一つ家族を選ぶのか」
もちろん、今の社会では権利は保障されているのでそういったことは起きないと思いますが....。あくまで例え話。

それなので、テーマを解釈するのは視聴者なのです。

どの作品にも、テーマは視聴者が受け取るものだということは変わりありません。
ただ、この「キノの旅」は特にそれが強いのです。キノが自分から主張しません。
視聴者が感じ取らなければいけないのですね。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 10

Seabream さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

誰かの幸福の裏には誰かの不幸がある

外界から一切隔離された,清潔な国のお話.
一見幸せそうな国だが,その国では,とある難病が問題となっている.
そして,外界を開拓するために外にあるという開拓村の存在とは.

はたしてこれはGOOD ENDなのかBAD ENDなのか.
現実はこういうものということでしょうか.
アニメ映画というくくりですが,30分と短いのでサクッと見られます!

投稿 : 2024/11/09
♥ : 6
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