2004年度のサイバーパンクアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の2004年度のサイバーパンク成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月20日の時点で一番の2004年度のサイバーパンクアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.0 1 2004年度のサイバーパンクアニメランキング1位
イノセンス -INNOCENCE(アニメ映画)

2004年3月6日
★★★★★ 4.1 (770)
4249人が棚に入れました
草薙素子(少佐)がいなくなって3年後の2032年。
少女型の愛玩用アンドロイド(ガイノイド)「ロクス・ソルスType2052 “ハダリ(HADALY)”」が原因不明の暴走をおこし、所有者を惨殺するという事件が発生した。被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから公安9 課で捜査を担当することになり、公安9課のメンバーであるバトーは新しい相棒のトグサとともに捜査に向かう。
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

詩のようなアニメって表現がしっくりくる

押井守監督による攻殻機動隊の映画版第2作。
1作目の続きです。

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 → http://www.anikore.jp/anime/1798/

イノセンス -INNOCENCE → http://www.anikore.jp/anime/1864/


前作とよく似た雰囲気です。
オレンジを基調とした美しいグラフィックとBGM。
独特の間が目立ちます。
また、いったん口を開けば高密度な哲学的テーマが飛び出すのも前作と同様です。


正直、かなり難しい内容でした。
次々に出てくる仏典や聖書や偉人の言葉。
そして、映像による数々のトリック。
1回見ただけでは頭がパーン\(^o^)/です。

雰囲気や動きはいいんですけどね。
いかんせんわかりにくい。
何度も見るのを前提にしたほうがいいかもしれません。


今回の主人公はバトー。
ロボットの暴走によって所有者が殺害されるところから話が始まります。
単なる暴走なのか、それとも仕組まれたものなのか?
トグサやイシカワとともに捜査に乗り出します。
それに前作で{netabare}ネットの世界にダイブ{/netabare}した素子(もとこ)への淡い恋心が絡めてあります。

しかし、はっきり言ってストーリーはおまけみたいなもの。
テーマ性と雰囲気が肝ですね。

テーマは、

「人間と人形の違い」

でしょうか。
前作と似た感じかな?

「機械化された人体」と「疑似体験」がカギをにぎっています。
機械化された肉体は、どこまでが「人間」でどこまでが「人形」なのか。
存在する記憶は、どこまでが「現実」でどこまでが「虚構」なのか。
人間を人間たらしめるのは何か。
器なのか、記憶なのか、その両方なのか。
答えは出していませんが、その境界線のあいまいさを説いています。

しかしまあ、難しかったですね(少なくとも私には)。
前作もそうでしたが、それ以上の難解さ。

・難しい言葉をひもとくのが好きな人
・芸術的な雰囲気アニメが好きな人
・攻殻機動隊が好きな人

この3つを満たしている人に向いていると思います。
なんというか、詩を読み解いている感覚になります。
芸術的なのですが、視聴者に優しくない、そんな作品でした。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 53

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

果てしなく続くイノセントワールド

2004年公開の作品で、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の続編。
士郎正宗氏の原作はあるものの、
監督とシナリオを手掛けた押井守監督が好き勝手アレンジしているので、
押井守監督の作品と言ってしまってもいいでしょうw

視聴前から負け戦は覚悟していましたw
押井守監督フリークの友人の「当時視聴して衝撃を受けた(悪い意味で)」という言葉や、
難解な上、娯楽性は皆無という各方面の評判。
従って、視聴に至るまでの心の準備にかなりの時間を要しましたw

で、視聴したわけなんですけど、視聴直後の私のリアルな感想は
「これ、レビューどうしよう?」でしたw
頭の中が真っ白になる位書くことがないw
気が向いたらレビューを書くというのが私のスタンスなので、
別に無理に書く必要はないんですけど、押井御大の作品ですからね。 
視聴前から書くつもりではいたのですよ。

本作に対して批判的な方の感想を抽出すると以下の様なものになるでしょう。

・CGを駆使した映像美は素晴らしい
・ストーリー性は希薄
・詩や哲学を引用した衒学的な台詞回しにうんざり

映像は確かに圧倒されます。
今敏監督の「パプリカ」を視聴した際も感じましたが、前衛的なアート映像のようです。
でも結局それもストーリー性を伴っていないと、
観終わった時に映像しか印象に残らないんですよね。

本作のテーマは「人間と人形の違い」です。
本作のDVDの特典映像に押井守監督と
ジブリの代表取締役であり、映画プロデューサーの鈴木敏夫氏との対談というのがありますが、
この対談を観た方が本作を観るよりも本作のテーマを理解しやすいと思いますw

この対談で押井守監督が語っていることというのは、
人間の身体は言葉から生まれたのであり、言葉によってしか意識されない。
つまり、身体は言葉であり、名付けられたものでしかない。
言葉で語られることのない人間の外側にこそ本当の身体がある。
人間の外側の身体というのはどこに存在するのかといえば、
それは例えば犬であったり、人形であったりする。
人間は自分が失われた身体の代替物を、あるいは犬に求めている。
そして、人形というのは人間が作り出した観念としての身体である。

押井守監督は病的なまでの愛犬家として有名ですけど、
このようなテーマの着想は愛犬との触れ合いの中から生まれたものなのでしょう。
本作では、その本当の身体を汚すのは人間の醜い欲望ということなのですが、
そのアイディアはおもしろいとは思いますが、正直私にはあまり興味を引かないテーマでした。
いや、これももうちょっとストーリー性を伴っていれば
違った反応になっていたかもしれませんが、
如何せんストーリーがひどい、ひどすぎる!!

私は基本的に娯楽性を重視するタイプですが、
映画に何を求めるのかというのは、人によって千差万別であり、
立脚点の違いによって本作の評価というのも変わってくるものだと思います。

とはいえ、本作だって娯楽性というのを完全に度外視したわけではないと思います。
ただ、作り手のメッセージ性(主張)とストーリー性のバランスが著しく悪いです。
作り手のメッセージ性>>>>>>>ストーリー性では、
例外はあれど、娯楽性なんてまず生まれてこないでしょう。
論語や旧約聖書、哲学者の言葉をこれでもかと引用した
テンポを損なうボソボソとした会話劇も相まって
ひとりよがりの悦に入った作品にしか思えませんでした。

押井守監督フリークの友人曰く
「押井守監督は本当はすべての台詞を引用で済ませたかった」とのことです。
それが本当ならば、「正気か!?」と言いたいところですけど、
思うに、本作の登場人物はいずれも
人間の意識の外側にある本当の身体を持たざる者です。
言い換えると、言葉によって意識される身体の持ち主であり、
言葉に支配されている者たちということになります。
それを際立たせる為の引用ということなのかもしれません。
そして、そうすることによって人間と人形の違い、
つまり人間の意識の外側にある本当の身体というものを、
言葉でなく、感覚で感じて欲しいという狙いがあったのかもしれません。

もうそうなのであれば、おもしろい仕掛けだとは思いますけど、
結局のところ、娯楽性は二の次三の次という作りでは、
「もう自主制作でいいんじゃね?」と言いたくなるのも、むべなるかな、
というのが本作に対する私の印象です。
正直本作に限って言えば、この台詞にはこんな深い意味があるとか、
あの場面に繋がっているとかはどーでもいいです。

鈴木敏夫氏との対談で押井守監督はこのようなことを述べています。
「映画は言葉で語られることによって初めて存在する」

では、私は本作をこう語りましょう。
「莫大な制作費を投じた自主制作的な商業作品です」と。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 52

shino さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

人形と犬

押井守監督作品。

「サイボーグ」
それはもう一つの人間の身体。
イノセンスは押井守が言う、
冷たい身体と匂う身体の物語。
それは人形と犬を巡る物語であり、
人の無垢なる他者たちの物語である。

自分が造られたものではないかという疑い。
自分が人形ではないのかという疑い。
どこまでが私でどこからが私でないのか!?
ここでも押井守は「私」について考察する。

バトーは夜の街を彷徨う。
何故、人は人形をサイボーグを創るのか。
何故、人は自分の似姿を制作するのか。
まるで神のような振る舞いであろう。

身体を巡るフェティシズム。

哲学的に射程の長い壮大な物語でしょう。
これが癖になりだすと監督の術中に嵌る。

今でも異様な熱量で書き込まれた、
街の風景が恋しくなり、また観たくなる。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 44

61.1 2 2004年度のサイバーパンクアニメランキング2位
PARASITE DOLLS パラサイト・ドールズ(アニメ映画)

2004年1月17日
★★★★☆ 3.5 (36)
192人が棚に入れました
 オリジナル・ビデオ・アニメ「バブルガムクライシス」に始まるフューチャークライムシリーズの流れを汲むSFアニメーション。捜査官たちが近未来の都市でうごめく陰謀に立ち向かっていく。監督はTVアニメ「めぞん一刻」の吉永尚之と「キル・ビル」でアニメーション監督を担当した中澤一登。21世紀初頭、関東大震災に見舞われた東京は、ゲノム・コーポレーションによって開発された人造人間“ブーマ”の投入とその活躍で復興を遂げる。そして西暦2034年、発展した都市の中で人間とブーマは共存を保っていた。だが、徐々にブーマを利用した事件が頻発。やがて、ブーマ犯罪を取り締まる高機動対テロチーム“A.D.POLICE”が設置される。さらに、難事件を専門とする特務組織“ブランチ”をチーム内に構成。その捜査官バズは相棒のブーマ、キンボールとブーマ連続暴走事件を追う。すると、彼らはその過程で、ある薬品を入手する。

takumi@ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

アンドロイドの暴走と共存

『A.D.ポリス』の番外編にあたるOVAを劇場用に再構成したものなので
OVAも劇場版も内容はほぼ一緒。
なのでどちらをご覧になっても良いと思うが、
劇場版のほうが多少補足説明されてるのでわかりやすいかも。

時代は西暦2034年。「ブーマ」と呼ばれるアンドロイド的な存在と人間とが
共生する東京だったが、ブーマを道具として利用した犯罪も多発していた。
それらの事件を解決するためにADポリスが設置した特殊任務組織ブランチの活躍を
3つの事件を通して描く全85分ほどの物語。

主人公バズの相棒もまたブーマで。
見た目も声も話し方も、ほぼ一般的な人間と同じ。
会話をしているのを見る限り、心的なものは存在しているようだが
その心情の変化や機微はいかほどのものなのだろう。
アンドロイドやドール系の話はけっこう好きなので
そういう未来を思い描く時、夢と希望を感じることも多々あるし
パソコンやカメラですら生き物に感じることがあるその一方で、
なんだか薄ら寒いものを感じずにはいられない。

ちなみに、渋めなOPはスタイリッシュ。
キャラデザ、作画とも一昔前の雰囲気で、好みは分かれそうだが
背景など丁寧に描き込まれていて、きれいだった。
個人的には女性のヘアスタイルと服装が好みではなかったし
メイクも濃すぎて気に入らなかったけれど
おそらくこの作品、海外向けを意識したのかなと。
登場人物見ても、顔立ちや髪型が東京っていうよりは南米っぽかったしね(笑)

この作品、あにこれではまったく人気がないようで
レビューもほとんどないのは少々残念。
『A.D POLICE』や『バブルガムクライシス』がお好きな方はもちろん
攻殻機動隊などの世界観とも近いものがあるので
攻殻好きな方にも一度ご覧になっていただければと思う。
ただし、グロいシーンがダメな人にはオススメできないし
なんせ尺が短く、あまり深くは掘り下げていないため
観る人によっては内容が薄っぺらく感じる場合もあるかもしれない。
とだけ、付け加えておこうと思う。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 19
ネタバレ

manabu3 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

いつの時代も、人は概して排他的なのか

人間と人造人間“ブーマ”が共存する時代のお話。
テーマは、人間と人造人間の共存について。
エログロあり。アニメ映画。

『攻殻機動隊』や『ブレードランナー』のような世界観が好きな人なら楽しめるかもしれない。
しかし、主張したかったことが希薄だった。視聴者が少ないのも納得できる。


■感想
人造人間が社会に普通に溶け込む時代の話ではあるが、彼らに対する差別も未だ残るようである。
顕著なシーンを2つ抜粋。
{netabare}①ある美しい人造人間が道を歩いていた
「あの子、可愛い」と発言した女性に対し、その友人が放った言葉は「どうせ人造人間でしょ」
(さりげないシーンではあった)
②とある女性に愛を告白し、迫る人造人間
告白された女性は拒絶する。「あなた人造人間でしょ!」
駆け付けた警察に対して「早く殺して!」と言い放ち、警察の銃を奪い自ら撃ち殺す。(!)
(でも確かに、告白して迫りくる人造人間は怖かった){/netabare}

いつの時代も、人は概して排他的で保守的な生き物なのだろうか。
この作品においても、上記で抜粋した2つのシーンなどで、
人間が人造人間に対する排他的な姿勢が描写されていた。
今の時代の世界においても、人種、身分、思想、宗教、容姿、肌の色など、
様々なことでそのことが言えるかもしれない。
排他的で保守的であるのが、良いか悪いかは何とも言えない。
何故なら自己保存のためには必要な要素でもあると思うからだ。
恐らく「限度」だと思う。自信はないけど。

何はともあれ、この作品も、人の何かしらの愚かしさを示唆しているのだろう。
ところで、この作品は何故このような排他的な要素(人造人間への差別)を包含したのだろうか。

1)人という生き物はいつの時代も大して変わらず、「いつの時代」も排他的だからか?
2)こうした作品が生まれたのは、「今の時代」を生きる人々が排他的だからか?

その答えはまだわからない。
自分勝手な私だけど、許せる限りで他者を許容をしてみようと思う。
このアニメを見てそう思った。
やはりSFは面白い。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 10

ワッキーワッキー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2

ルビンの盃

■ストーリー■
西暦2034年、東京では「ブーマー」と呼ばれるアンドロイドが開発され、人々の生活を支えていた。その裏ではブーマーを使った売春や破壊活動、テロ行為が起こり、その対抗手段として、高機動対テロ組織「A.Dポリス」が組織された。そのA.Dポリスでも対処しきれない難事件解決のため特殊任務組織「ブランチ」のバズがブーマーの暴走事件の捜査をするところから物語が始まる。

■感想■
作画としては、近未来の話なのにPCや家電が時代を感じさせるものの、リアリティがある人物やブーマーの内部など、丁寧に描かれていてそこまで違和感なく視聴できました。

また、本筋としては、バズのトラウマとブーマーと人間の関係を一巻して描かれていたが、私としては2部構成にするより一部を集中して書いてほしかったかなという感想をもちました。

興味深かった点としましては、ブーマーを人間として観るのか、機械として物と観るのかを真っ向から書いている点です。
徐々に魂があるものとして見ていく主人公たちや、ブーマー自身も自分に機械ではない部分を感じていくといったところが、レビューのタイトルのルビンの盃(心理学テストの向かい合った人物に見えたり、盃に見えたりというもの)のように感じ人間の人間として認識する境界に迫る部分が、興味深かったです。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 3
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