コンクールでチューバなTVアニメ動画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画のコンクールでチューバな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月18日の時点で一番のコンクールでチューバなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

82.2 1 コンクールでチューバなアニメランキング1位
響け!ユーフォニアム3(TVアニメ動画)

2024年春アニメ
★★★★★ 4.2 (299)
817人が棚に入れました
高校3年生になり、部員90人超となった北宇治高校吹奏楽部の部長に就任した、黄前久美子。久美子たち3年生にとっては最後となる吹奏楽コンクールを控え、練習にも熱が入る。悲願の「全国大会金賞」は達成できるのか? 部長として踏み出した久美子、高校生活最後の熱い青春を描く!

声優・キャラクター
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
黒江真由:戸松遥
塚本秀一:石谷春貴
釜屋つばめ:大橋彩香
久石奏:雨宮天
鈴木美玲:七瀬彩夏
鈴木さつき:久野美咲
月永求:土屋神葉
剣崎梨々花:杉浦しおり
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

【第13回感想&総括レビュー】未来の僕らは知ってるよ

【第13回(最終回)感想】
初回冒頭。「ディスコ・キッド」が流れるシーン。
久美子の夢の中で展開される、北宇治吹奏楽部の春は見知った光景のようで少しずつ違っていて。
視聴者も何処か違和感を覚える内に、久美子は夢から醒めて現実の北宇治へ向かうという不思議な幕開け。

最終回(※核心的ネタバレ){netabare} ラストで、あの夢は吹奏楽部副顧問の教師として北宇治に戻ってきた久美子の未来のビジョンだった、{/netabare} という答え合わせがされる。
シナリオ自体は原作準拠ですが、初回の久美子が夢であの場面を見るというのはアニオリの脚本、演出。

原作組の私は初回冒頭観て、同じ花田 十輝氏脚本の劇場版『ラブライブ!The School Idol Movie』を思い出し、また仕掛けて来たなとニヤニヤが止まりませんでした。
あの劇場版『ラブライブ!』。{netabare} 主人公の高坂穂乃果は、解散が決まっているスクールアイドル・μ's(ミューズ)の最後に何をすべきか煮詰まっている。
が、答えは穂乃果自身の潜在意識の中に既にあって、
障害を暗示する水たまりの飛び方だって幼い頃に知っていたはずで素質も有している。

悩める穂乃果の前に現れる謎の女性シンガー。
神出鬼没な彼女は穂乃果の未来の姿も思わせ、
穂乃果が持っていた物を引き出し、導く役回りを演じる。
自分のあり方を思い出した穂乃果は、まるで未来の自分に引っ張られるように、
潜在意識の中で水たまりを軽快に飛び越え、μ's最後のパフォーマンスへ進んでいく。{/netabare}

進路は、過去、現在の延長線というだけではなく、
未来の自分から導かれる物だという、ちょっとスピリチュアルな筋書き。

変化球でしたが「青春の価値」とは?という本シリーズのテーマとも合致する好演出でした。
久美子が吹奏楽を通じて出会った人々との関わりを通じて、
久美子自身が潜在意識の中に元々持っていた素養が導き出されていく。


そう言えば、先日、言及した、みどりの石原監督にこのセリフが本作のテーマですと言われたという制作エピソード。
答えはやはり青春は未来への種蒔きという件でした。

青春を生きる者にとっては悲痛な挫折に感じるあの瞬間も、
後々振り返れば糧になっていたりもする。

私は、今回のレビュータイトルに『ラブライブ!』の曲名を引用させて頂きました。
“未来の僕たちはきっと答えを持っているはずだから ホンキで駆け抜けて”
但し、あの曲はμ'sではなく『~サンシャイン』2期OPのAqours(アクア)ですがw

未来に導かれ、懸命にあがく若人は、どこまでも輝かしい。
だから「年を取るとな、若者が頑張っているだけで涙腺が緩むもんなんだ」(by“軍曹”松本先生)

『ユーフォ』が音楽アニメとしてだけではなく、青春アニメとしても味わい深い作品であることを再認識させられた3期でした。



以下、総括レビュー

【物語 5.0点】
単なる3期目というだけでなく、シリーズ全体を締めくくる集大成。
青春の傷みと価値を視聴者にも思い知らせる鬼脚本。


北宇治は実力主義だから、麗奈は特別だから。
熱病に憑かれて立ち回って来た久美子が、
今度は部長として、また逆の立場に立たされて、後輩の頃とは違う気持ちを知り、
人間として成長して、進路を見出していく痛切だが価値ある青春ドラマ。

例えば久美子1年時の麗奈VS香織の公開オーディション。
特別じゃないけど足掻いて納得したかった香織先輩や、
そんな香織を応援し続けた“デカリボン先輩”
正直、私も状況は理解できるけど、何であんなエゴ丸出しで号泣する程、思い入れるのか心情までは共有しきれなかった。
が、3期で先輩と似たような立場を経験するとその痛みが分かる。

3期にはこうした、1期以来の過去シーンと対になるような場面が数多く登場します。
それらの場面はシリーズの思い出に浸るオマージュに留まらず、
3期でアニメ『ユーフォ』全体を総括して大団円を迎えるよう、
逆算して緻密に配置されている。

最終話。(※核心的ネタバレ){netabare} 麗奈が「悔しくて死にそう」で幕を開けた本シリーズが、ラスト「嬉しくて死にそう」{/netabare} で幕が引かれるシリーズ構成も綺麗でした。


衝撃のアニオリ回となった第12回。
私も最初は驚きましたが、振り返って、シリーズ全体の中で位置づけてみると、
{netabare} 特別にならない道を選んだ久美子と、特別であり続けたかった麗奈。
それ故の麗奈の究極の二者択一。{/netabare}
という風に、悔しいけど凄く納得できる、あまりにも“正しすぎる”構成、脚本。

展開については今後も賛否は分かれ続けるでしょうが、内容の濃密さについては、あの第12回は間違いなくアニメ史に残る名回。
視聴者の皆が同意でき心地よくなれるシナリオが必ずしも良いとは限らない。
むしろ視聴者の間で色々と異論も出ること自体が青春のリアルを象徴している。
原作は原作、アニメはアニメ。小説、漫画はアニメの台本ではない。
最後まで原作とアニメが刺激し合い、高め合って来た『ユーフォ』
アニメ作品のありかたにも一石を投じた本作は、物語5.0点に値すると私は確信しています。


シリーズ全体を締めくくるという意図を第12回までで思い知った上で迎える最終回最後のコンクール。
私は、演奏中から結果発表まで泣き通しでしたが、
一番泣いたのは{netabare} 結果発表を受け号泣する“デカリボン先輩”こと優子。{/netabare}
全ての登場人物の心情を再認識し、救済、昇華して迎える大団円。
救われなかったのは強いて言えば{netabare} 久美子との再告白シーンをカットされ、ヘアピンで濁された秀一{/netabare} くらい?w
9年シリーズを追って来た私も感無量でした。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・京都アニメーション

人間ドラマ重視の構成、脚本方針により、作中の合奏シーンが飛ばされて来た3期。
最後のコンクール自由曲もフル尺演奏ではあったのですが、
特盛された、久美子の3年間の回想シーンによるシリーズ総括が優先されましたし。
結局、京アニがフルパワーで合奏シーンを構築できる程、復活できたのかについては疑念が残りました。


人物作画による心情描写については、特に8話以降は圧巻。
泣き顔の大技から、瞳に映る動揺などの小技まで、
原作の小説媒体では拾い切れなかった心理が容赦なく描き込まれており、
こちらは京アニの本領発揮。

人物を描ける兵力は整ったが、楽器を光らせる特殊技能兵はまだ揃っていないということなのか。
相変わらず吹奏楽部員を全員分キャラデザしてくる辺り決して戦力不足ではないと思うのですが。
答え合わせのための劇場版総集編。あっても良いと思います。


放送中YouTube公式にて、毎週各話の制作メイキング映像も配信していた京アニ。
近年のアニメーション制作は手描きの技術だけでなく、
CGや撮影なども重要度を増していると再認識。
大吉山を聖域たらしめているのは、撮影処理で加えられた自然界には存在しない謎の光による心情演出です。


【キャラ 5.0点】
新登場の吹奏楽強豪校からの転校生・黒江真由。
原作購読中、私が“裏ボス”だと認識していた真由。
“裏ボス”というのは換言すれば要するに、原作の真由は本編に組み込まれてない感じがあった。
久美子たちの集大成の当て馬にされた感を抱いたという私の本音の現れでもありまして。

アニメ3期は、その真由をも北宇治の一員として救済してしまったのが白眉。
{netabare} 仲間としてちゃんと泣けた黒江真由。美しかったです。{/netabare}
自分の中で、アニメの真由は“裏ボス”から“真ボス”くらいにはなれたかな?と好感しました。
但し自分にとって、“ラスボス”はやっぱり今回も、{netabare} 自分のわがままを認めよ{/netabare} というアドバイスが容赦なかった、あすか先輩だけですが。


3年になり部長となった主人公・黄前久美子。
北宇治の三年間、三人の部長。
実は私は、原作完結段階で、最強だったのは久美子2年時の“優子政権”だと思っていまして。
“黄前政権”は優子政権の遺産で成り立っていたとの印象を抱いていました。
部長の負担を副部長とドラムメジャーに分散する組閣しかり。
3年生卒業による音の厚みの低下を補うアンコン参加しかり。
優子部長は{netabare} 大会で敗退して陰で涙しながらも直後に来年に向けて{/netabare} 部員に名演説で発破をかける気丈さも持ち合わせていましたし。

ですがアニメにて{netabare} 自らの落選も顧みず「これが今の北宇治のベストメンバーです!」{/netabare} などと部員を鼓舞する久美子の勇姿を見て、
私は、この部長最強だわと脱帽しました。
この点でも第12回の原作改変は計算し尽くされた鬼の一手だったと思います。


そんな久美子を慕い続ける久石奏もまた原作以上の後輩キャラとして期待通り魅せてくれました。
加えて、アニメ3期では釜屋つばめも効いていました。
黄前部長のポジションを取らないでと白眼視される感じで孤立する真由を支え続けてくれた親友つばめ。
3期に先立って、つばめをピックアップしたアンコン編を公開したのは、
単なる準備運動ではなく、意図して組み込んだシリーズ構成だったのだと思います。


【声優 5.0点】
転校生・黒江 真由役には戸松 遥さん。
“ラスボス”あすか先輩役が寿 美菜子さんだったので、
真由は同じスフィアの、豊崎 愛生さん辺りかな?と私は妄想していましたが、
とまっちゃんでした。

その戸松さん。アフレコでは通常、各話ごとに台本を渡される。
“北宇治カルテット”などメインキャストに至っては原作閲覧禁止令まで出される中(※1)、
戸松さんだけには、敢えて結末までシナリオを読ませた上で収録に挑ませる鬼方針(※2)
(俺にはアフレコはもちろん、ネタバレ厳禁のプレッシャーにも耐えられないでしょうw)

真由はセリフ自体は穏やかなのに、どこか引っかかる不穏なムードが醸されている。
真由のあの独特な異物感は、先々のシナリオまで織り込んだ戸松さんの繊細な演技と、素材を引き出すディレクションがあってこそ。


そんな真由の危険性に警戒心を隠さない久石奏役の雨宮 天さん。
今回は語尾の発声をコントロールすることで各キャラとの距離感を表現したとのことで。
穏やかな口調で釘を刺す奏ちゃんの真由先輩への毒舌。胃が痛かったですw

戸松さんに、雨宮さん。
言わずもがなな、黄前 久美子役の黒沢 ともよさん、高坂 麗奈役の安済 知佳さん。
この四者の熱演が交錯する第12回はクドいですが、脚本、作画、演技が極まったクライマックスでした。


新一年生役の新キャスト陣。
アニメのネームドキャラは初担当となる上石 弥生役の松田彩音さんらが、
“三馬鹿”トリオでボケとツッコミを繰り広げ、
緊張感が続くドラマの中で貴重な息抜きスポットを提供する。

その松田さんは『ユーフォ』は中学時代に観ていた大好きな作品だったのでとオーディション合格の喜びを語っており。
ここでもアニメシリーズ展開9年という月日の長さを実感します。


【音楽 4.5点】
OP主題歌はTRUEが「ReCoda」で『リズと青い鳥』を除くシリーズ全作完投。
ブラスバンドの音圧に押し負けない声量パワーと、
作品の細かい要素まで取り込む歌詞でシリーズを支え続けたTRUEさん。
「ReCoda」もまた終盤になるにつれ“後悔も喜びも全部歌に”する意義を噛みしめることができる作品解像度の高い良曲でした。
OPアニメも、卒業した先輩も含めて勢揃いしていく構成が素晴らしいです。

ED主題歌も北宇治カルテットが「音色の彼方」でTVアニメ全3期完走。
1期、2期では楽しげなメロディで和ませてくれた同カルテットですが、
3期では中学テニス部時代の葉月など貴重な過去カット等と共に、
過去と未来を繋ぐ感動系青春バラードを合唱。
こちらも余韻が残る良作なのですが、本編で負ったダメージを楽しさで上書きするタイプではないのも事実。
ここは、{netabare} ソリだけにソリを滑って覇を競うw{/netabare} など何があってもボケ倒すエンドカードに丸投げの方向でw


劇伴担当もシリーズお馴染みの松田 彬人氏。
作中演奏シーンこそ少なかったですが、
神経をざわつかせるような松田氏の心情曲群にはゾクゾクさせられました。

松田氏は、作中コンクール自由曲「一年の詩~吹奏楽のための」も戸川ヒデアキ名義で作曲。
春夏秋冬を多彩なメロディで表現する構成は、久美子の北宇治3年間の回想劇にマッチ。
作中やPV等で流れていたあのメロディも「一年の詩」だったのかとの驚きも、
最後の演奏シーンの集大成感を出す一助に。

ラスト結果発表時に、久美子1年時からの歴代コンクール自由曲や「響け!ユーフォニアム」のフレーズを散りばめていく演出も粋でした。

ただ、今回、私はサントラCDは購入しないと思います。
『ユーフォ』サントラもサブスク配信される時代になり、
「一年の詩」も放送翌日に即配信開始されているというのもありますが。
何より今回のサントラには(※核心的ネタバレ){netabare} 久美子&麗奈ソリver.のifも府大会ver.も補完されないからです。
(1期サントラでは香織先輩ソロバーションの「三日月の舞」という救済策もあったのに)
単に収録してないだけの可能性もありますが、各種コラボ、キャンペーンと商魂たくましい最近の京アニを見るに、
天邪鬼な私は、久美子&麗奈ソリを後々の商品展開の切り札に温存しているのではと穿った見方をしてしまいましてw{/netabare}

邪念もあって今回は4.5点止まりということでご容赦下さい。


【付記】
3期も色々と波乱もありましたが、初回から本気モードで視聴するに値する名作でした。
3期連続お気に入り棚直行の作品で、シリーズを締めくくって頂き、
スタッフ・キャスト陣には心から感謝致します。

初回放送の高揚感に居ても立ってもいられず、
この春、私は花見も兼ねて4年半ぶりに宇治へ聖地巡礼にも行って参りました。
久々に見る宇治は変わらぬ所もあり、変わっている所もあり。

アニメ3期もまた、例えばラスト、{netabare} 片付けられたコロナ対策用の?アクリル板{/netabare} など、
移り変わる時代を切り取った“記録映像”としての価値も有した作品でした。
数年後、未来には無くなっているであろう青春の情景を思い出しながら懐かしむのもまた一興。

『響け!ユーフォニアム』
私にとっても特別で何時までも色褪せない名シリーズです。


【参考文献】(※1)「月刊Newtype」2024年7月号
(※2)Febri「『 響け!ユーフォニアム3』 戸松遥に聞いた黒江真由との向き合いかた」


以下、過去話感想。長くなるのでタグに折りたたみ。

【第12回感想】一生忘れられない恐るべきアニオリ回
{netabare}
今月10日発売された「月刊Newtype」7月号。
特集は『響け!ユーフォニアム3』
表紙を飾った“くみれい”の付録ポスターを壁に貼って、悶えながら拝読したスタッフ、キャストインタビュー。

総じてスタッフたちは、久美子は1年生編にて、親友の麗奈と香織先輩がソロを争った際、上手い麗奈が吹くべきだと主張した。
その久美子が今度は部長として、実力が拮抗した真由と、麗奈と吹くソリの座を巡って、似たような立場に置かれる。
このことを想像以上に意識されているなと感じました。
香織を応援していた“リボン先輩”と対になるとスタッフが捉えている
奏は3期でこそ面白いと再認識もしました。

よって、今回、久美子と真由のソロオーディションを深堀りしたアニオリ回自体は想定した構成でしたし、楽しみでもありました。
ですが、内容は私の想像を遥かに越える衝撃回でした。

正直、久美子3年生編原作では、1期、2期ほどの名場面は生まれないと高をくくっていましたが、
ここに来て、響き過ぎて、感情の整理が追い付かないほどの物をぶっこまれました。
脚本・花田 十輝氏、恐るべしです。
{netabare}
甲乙付け難い久美子と真由を部員の前で再オーディションし多数決でソロを選出する。
ここまでなら、麗奈VS香織の再現。
ですが今回えげつなかったのは、久美子部長から滝先生への提案により、
オーディション時、幕で奏者の顔を隠し、音の優劣のみで選択を迫ったこと。
しかも、それを部員たちだけではなく、視聴者にも強いるのが徹底的でした。

ここまで、私も毎回胃が痛い~wとか感想を述べて来ましたが、
言うて、所詮、視聴者は部外者。青春劇を高みから見物するお気楽な立場でした。
ですが、今回の顔隠しオーディション体験により、視聴者も当事者目線に引きずり込まれ、
防具なしで青春の痛みの直撃を受けることとなりました。

そのオーディション、私も全集中で聞き入りました。
親友の麗奈には遠く及びませんが、私もシリーズサントラを聴き込んで来たからなのか、どちらが久美子の音かは、すぐに分かりました。

真由は指揮者の要求や相手のリズムを掴むのが上手いが、悪く言えば冷淡さも感じる、コンクールで点数が取れそうな奏者。
久美子は優柔不断かもしれないが優しく心が温まる音色。

もっとも、そんなユーフォ聞き分けの無駄スキルが無くとも、
どちらの音が良いか挙手した部員の顔ぶれでヒントは十分ですが。

で、結局、
(※核心的ネタバレ){netabare} 部員の票が割れ、最後の一票を託されたドラムメジャー麗奈が、
久美子の音だと分かった上で、より上手いと思った真由を選び、
原作と異なる、まさかの久美子敗北で決着。
その夜、麗奈は久美子を大吉山に呼び出し謝罪。
麗奈は正しいと強がっていた久美子も、最後は死ぬほど悔しいと号泣する。

多くの視聴者もどうせ最後は久美子と麗奈がソリで思い出作って大団円なんでしょ?と予想していたでしょうし、
原作組の私としても、進路選びの整理が付いた久美子が、晴れやかな顔でソリを吹くと信じて疑いませんでした。

ですが、リアリティを突き詰めれば、音楽に関しては音大に進学せず、奏者としてはここまでにしておこうとした程度の久美子が、
気持ちの整理くらいで、常勝・清良女子のコンクールメンバーの真由に簡単に勝てるわけがない。
実力主義を謳う久美子部長の姿勢を支持しながら、久美子がソリ吹かないなんてあってはならないと思ってしまう読者心理と、それに応えた原作プロットってまあまあ矛盾していまして。

こうした原作に残った、私が嫌いでレビューでは基本NGワードにしている言葉を敢えて使えば“ご都合主義”を徹底排除して、
久美子が見てみぬふりしていた真由の心理同様、読者が見てみぬふりしてきた諸々をえぐり出して、
青春の痛切で視聴者を張り倒したのが、今回のアニオリだったのだと思います。

私も、骨太シナリオに、殴り倒された後、整理して振り返ると、
今回の顛末に向けた伏線も着実に仕込まれていましたし、実に“正しい”プロット。
好きか嫌いかは別として、率直に言うと私は悔しいけど、かなり好きって感じですが、
このエピソードで3期も間違いなく名作に昇華したと感じました。
ラスト1回。お気に入り棚空けて待っています。{/netabare} {/netabare}


これ以上、放心状態で書き連ねてもまとまらないので、今回はこの辺で勘弁して下さい。{/netabare}

【第11回感想】窓は間もなく開け放たれるであろう
{netabare}
ネット、SNS上のユーフォ界隈には“くみれいの日”という#(ハッシュタグ)があります。
9月30日に語呂を合わせて、久美子&麗奈のイラストやらを投稿して、カップリングの尊さを称えようという現象なのですが。
今回のエピソードは、{netabare} 大好きのハグするは、別々の道に進むなら今ここで終わりにしてと麗奈が“乙女心”を爆発させるは。
余談ですが、前回、冗談交じりに麗奈の海外留学言い当てた、あすか先輩怖すぎですw{/netabare}
例年より3ヶ月早く“くみれいの日”が来たんじゃないか?ってくらい、くみれいモリモリで、どうもごちそうさまでしたという心境です。


私も、くみれいに悶えるのもいい加減にしてwそろそろ本題を。
{netabare}
第7回の盆休みシーン。アニメスタッフが原作から敢えて削った、
3日目、音大進学した、みぞれの演奏会。
スタッフは、やはり、この久美子が進路を見出していく重要局面で、スライドして使って来ました。

私が、みぞれ登場を確信していたのは、
3期に先立ち公開された『アンコン編』
みぞれが久美子に「窓開けるのが上手で嬉しかった」と謎の言動を残すシーンを、妙に詳細に映像化していたから。

窓を開けるのが上手いとは、換言すれば、他人の心を開くのが上手いということだと解釈できます。
表面上は、久美子が何を言われているのか意味不明な、
みぞれの不思議ちゃんな生態が強調されるあのシーン。
私は、みぞれが久美子自身も気がついていない良さに気がついていることを示唆する重要シーンとして、
3期で必ず伏線回収してくると、脳裏に焼き付けていました。

今回の音大演奏会後、アニオリで久美子が、みぞれ先輩と同じ音大に入ったらどう思うか?と尋ね、
みぞれに、そんな姿、想像できないとキッパリ言われる件。
このやりとりが『アンコン編』の、みぞれと久美子の会話と対になっていると思われ。

要は久美子は楽器吹くより、人の心の窓を開ける道に進みなさいと、みじょれ氏はおっしゃっているのではないでしょうか。


今回は、みどり氏からも「今の毎日は種蒔きみたいなもので、まだ知らない未来の楽しみをいっぱい色んな所に埋めているようなものなんじゃないかな?」との金言も賜りました。
私は、これがもしかして、先日触れた、石原監督に、みどりの、このセリフが本作のテーマですと明かされたというひと言なのではないか?と思えるくらい青春の核心を突いていたと感銘を受けました。{/netabare}


周囲の人々の忠言にも恵まれ、難航していた久美子の進路選びにも道筋が見えて来ました。
久美子が本当の意味で音楽を奏でるクライマックスへ向けて抜群の手応えで、物語は最終盤を迎えます。

窓は間もなく開け放たれるであろう。{/netabare}

【第10回感想】やっぱり『ユーフォ』の“ラスボス”はあすか先輩しかいません
{netabare}
次の大会を前にギスギスが極まる北宇治。
万策尽きた久美子は、2年生編『~誓いのフィナーレ』にて、
あすか先輩から受け取ったひまわりの絵葉書“魔法のチケット”を行使して助言を求めに行く。

ここに来て、原作からの改変も大きくなってきている3期。
“魔法のチケット”も、そして{netabare} 久美子部長の演説{/netabare} も、原作よりタイミングを前倒して、内容も変更しての展開。

尺の都合?と戸惑う向きもあるようですが、
私は原作者・武田 綾乃氏がアニオリの脚本、構成を“誘っている”部分も大きいと捉えています。
小説家として、自作のアニメ化には刺激は受けるけど、アニメ化の台本なんて断じて書かない。
素材は提供するけど、映像作品として料理するのはあくまでアニメスタッフでしょう。

そう言わんばかりに、この先の原作部分は、そのままアニメ化するには、ますます流用し辛い構成になっていて、
それでいて、アニオリで掘り下げたくなるような要素が盛られています。

今回、決意を固めた久美子は1期12話アニオリ回の如く、再び走り出しましたが、
これはあたかも、原作者が投げかけた素材を、オリジナルも交えた全力のアニメ化で打ち返してやるとの、
スタッフの宣戦布告にも思えました。
今後の原作改変、私は結構ワクワクしています。


で、あすか先輩について。
{netabare} 要は久美子はもっとワガママに自分の思う所を語れば良いとの忠言でしたが、
そこへ導く過程で、久美子の良い子の皮を容赦なくペリペリ剥がして行くあたりが、流石のラスボスぶり。

2年生編の奏は“中ボス”くらいで、3期の真由は“裏ボス”といった感じですが、
やっぱり『ユーフォ』のラスボスはあすか先輩しかいないと再認識。

あすか先輩は2期10話で久美子に自分の心に上がり込まれて、あれだけ言われたことを、
根に持っているのとも、恩に感じているとも違う、“響かされた”ことをずっと覚えていて。
“魔法のチケット”渡したのは、後輩への助け舟というだけでなく、
いつか響き返してやるとの執念にも思えました。
ラスボスはただでは倒されません。

それ以上に原作未読組には衝撃と思われるのが、
香織先輩とあすか先輩のルームシェア。

香織は、あすかのことを特別と思っていますが、
あすかは、かつて、香織のソロオーディション前にも駆けつけなかった。
むしろ、とかく悪役になってしまう、あすかとは反対に、
周囲にナチュラルに良い子と捉えられてしまう香織の天使ぶりに対して、
あすかは、含むところがあるそぶりすら見せてきた。

あすか先輩にズケズケと論評され蜂の巣になる久美子に対して、
香織は響き合っていて「羨ましい」とこぼしますが、
ルームシェア後も相変わらず、香織とあすかは付かず離れずの距離感なのでしょう。

そんな二人がどうして同居を?
気になる方は、原作シリーズの短編集『~北宇治高校吹奏楽部のホントの話』「だけど、あのとき」に、
事の仔細が記されているので、おさらいして悶えましょう。{/netabare} {/netabare}

【第9回感想】空気読解力高過ぎな久石奏の独自目線
{netabare}
いよいよ本格的なギスギスモードに突入した北宇治。
顧問・滝先生への疑念が広がる中、
ドラムメジャー・麗奈はついに“滝先生パトロール”まで始め、
副部長・秀一は“元カノ”久美子の苦境を前に、後輩が困惑する位ふて腐れる。
間に挟まれた部長・久美子は自分の気持ちすら整理できずいっぱいっぱい。

各々、自分は正しいつもりでも、自愛や他愛が瞳を曇らせているとは言い切れない難局。
そして、ついに訪れた{netabare} 麗奈の“部長失格”口撃による、くみれいの破局。{/netabare}
ここまで、アニメでも、くみれい描写が凝っていただけに、
私は原作で分かっていてガード固めていたにも関わらず、痛みに悶絶しました。


初回感想にて、私が注目キャラの一人として挙げた久石奏。
ここまでは求くんに対する月永くん口撃が不発に終わり狼狽えるテンプレなどネタも目立っていた印象w
(因みにネット、SNSのユーフォ界隈には、奏と求の恋仲を妄想して同人誌まで出すクラスターが実在しており、
3期はかなりの燃料投下となったと思われますw)

ですが、部の波乱に呼応して、そろそろ奏も本領発揮。
奏は中学時代、部の空気に傷つけられた過去から、
空気を読み解いてポジション取りすることに細心の注意を払って来た娘。
今回の事態に対しても奏は、{netabare} 自らもオーディション落選しながら、{/netabare} 客観的にあり得た話と、広い視野で状況を俯瞰。

久美子部長に見えていない物が奏には見えていますし、
久美子が親友・麗奈や“元カレ”秀一にも言えないことを奏の毒舌の前では言えている。
2年生編の奏は、小悪魔系“中ボス”位の印象でしたが、
3年生編の奏は、鬼の空気読解力を誇る良キャラに化けた、私の中で評価が一番上った人物。

空気読んで色々我慢して立ち回っている奏にとっては、
空気など我関せず振る舞う存在とは相性が悪く、つい毒づいてしまいがち。
求に月永呼びで、ちょっかいを出して来たのも、そのためでしょう。

そんな奏にとっては真由は天敵。
ここまで奏は真由に対しても“ジャブ”口撃を仕掛けていますが、
対・真由への毒舌は、じゃれ合いレベルの?求くんに対するからかいとは比較にならない、
本気の警戒心から来る物。

この先、アニメでも、奏の真由に対する見解が明かされると思われますが、
私にとっては、そう捉えるのか!?と衝撃を受けたシーンだったので、
映像化の時を震えて待ちたいです。


ところで、来る6月27日。
原作小説シリーズ、久々の新刊として、
久美子3年生編の一年のエピソードを描いた短編集『~北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』が発売されます。
ファンとしてはそそる要素ばかりの商品紹介文が踊る中、
私が一番惹き付けられるのが“久美子を慕う奏の視点で一年を描いた物語”の一文。

アニメでも小説でも奏ビジョンには要注目です。{/netabare}

【第8回感想】見えてなかった見たくなかった物に直面する痛みと共に修羅の門が開く
{netabare}
『ユーフォ』3期で特徴的なのは、敢えて深堀りしないで放置しておいた事が、
不意に問題として沸いて出て来てドラマが展開すること。
言い方は妙ですが伏線を張らないことが伏線になっているような脚本、演出なのだと思います。

合宿回となった8話では、久美子がもしかしたら真由に演奏で負けるかもしれないという見たくない現実を、
真由に無邪気に突きつけられて久美子が苛立つ。
久美子は大丈夫なのか?と指摘して来る麗奈や奏を通じて、
集中して音楽に向き合えていない久美子の危ない部分を見える化して空気を重量化していく。

知らなくて良い事もあると蓋をしようとして後になって事態が悪化するのは、
後輩集団欠席回となった3話でも示唆された“黄前政権”の負の傾向。
今回はその短所がいよいよメインストーリーの波乱として噴出する入り口になると思われます。
胃痛に苦しむユーフォ民の皆様。ここからがいよいよ本当の地獄でありますw


ここまでまともな合奏シーンがほとんどない点も3期の特徴。
いや、もっと言えば、先立って公開されたOVA『アンコン編』から、
本格的な合奏がお預けになっていている状況。

これまで、その原因について私は『アンコン編』レビューでも、
復興途上の京アニの制作体制が整っていないのでは?などと述べて来ましたが、
今回見て、これは合奏シーンをクライマックスのコンクール一発のカタルシスに賭ける全体構成なのだろうと予感しています。

久美子が音楽に、今後、音楽とどう付き合っていくのかという将来の問題を直視しない限り、久美子が本当の意味で演奏することはできないし、
みんなの心がバラバラなままでは真の合奏はできない。

この難局を久美子部長がどう打開していくのかが終盤の注目点です。


ところで、先日の、みどりの日にかこつけて配信された『ユーフォ 』「みどりの日ですぅ~生放送」動画にて、
川島緑輝役の豊田 萌絵さんが収録終了後に石原 立也監督から、
みどりの、とある作中セリフの言葉が本作のテーマですと告げられたというエピソードが私はとても気になっていまして。
豊田さんも、だいぶ先のセリフのため、後で答え合わせしたいとのことですが、
この話聞いて以来、私はみどりへのマークを強化しています。

部員を動物に例える独特の観察眼で本質の一端を示唆してきたみどり。
8話でも“仔犬”をおもんばかる、みどりの背中を凝視して一言一言噛み締める私なのでした。{/netabare}

【第7回感想】音に出そうな久美子の進路の迷い
{netabare}
お盆休み回。

夏休みも練習漬けの北宇治高校吹奏楽部が唯一休める三日間となると、
プールも交えた息抜き水着回との印象を受けますが、私にとっては原作組として結構重要な回になると目していたので、気合を入れて視聴しました。

で、今回、アニメでは原作から大きな改変がありました。
ですが私は不快感はなく、むしろこの先どう仕掛けて来るかがますます楽しみになりました。


この盆休みで久美子の心中を占める進路未定の悩みが深まっていく。
そこはアニメでも原作同様。
違うのは三連休なのに描かれたのが二日間だったということ。
描かれなかった三日目というのが、{netabare} 進むべき道を歩む例の先輩の勇姿を拝む、{/netabare}
進路についても吹っ切れた事例を見せる場面。
ほっと一息付ける三日目を抜いたことで、アニメでは進路を巡る久美子の混迷がより色濃くなっている形。
さらには久美子の過去を映す、写し鏡としての真由も真価を発揮し、
より息が抜けない盆休みが描写された印象。


思えば本シリーズは、原作と京アニが互いに刺激を与えながら高め合って来たコンテンツ。
例えば1期第十二回で“上手くなりたい”気持ちを知る久美子アニオリ回を京アニが投げかければ、
原作者が続編で“上手くなりたい”を後輩に伝える久美子を描写して応える。
そのアニメ化では、京アニがそこをさらに深堀りする。
原作に忠実である以上に、理想的な原作とアニメの特別な関係を構築しているのが『ユーフォ』なのだと私は思っています。

今回観ていてボディーブローのように効いたのが、
第4回、久美子が、過去を引きずる求に、気持ちは演奏に出るよと警告した件。
かく言う久美子。進路の悩みと部長の役割に忙殺される中、
今の久美子は“上手くなりたい”ことに集中できているのでしょうか。

1クールに押し込むため求問題解決を第4回に前倒しただけのように見えて、
換骨奪胎して、より焦点絞って心情を描いていく京アニ版『ユーフォ』。
今回幻となった盆休み三日目の内容。
このスタッフたちなら後々、より効果的な場面で使ってくるのかどうなのか?

原作からの変化も刺激に感じながら、後半戦に挑みたいと思います。
{/netabare}

【第6回感想】“後藤夫妻”の穴をどう埋めるか問題
{netabare}
私見では、吹奏楽は最凶の男女無差別級競技だと思います。
体格的に女子より男子の方が肺活量が大きく、出せる音量の差は明らかなのに、
どの高校もA部門コンクールメンバー枠は55名以内。
あっちは男子校で、こっちは女子多いから枠を増やしてというわけにはいきません。
久美子2年生編にて、{netabare} 関西大会で北宇治が男子校の龍聖に敗れたのはリズムを合わせる技術面よりもパワーの差による所が大きいと私は解釈しています。{/netabare}

編成枠が限られる中で、音の厚みをどうやって確保していくのか?
難題クリアこそが北宇治悲願の全国大会金賞達成の絶対条件であり、
この音量確保の点から大変悩ましいのが、昨年まで在籍していた後藤卓也&長瀬梨子。
特に久美子1年生時には2人で北宇治の低音を支える程の技術とパワーを誇った、
チューバ奏者の穴をどう埋めるかという課題になります。
原作では滝先生が、職員室での幹部との会話の中でこの問題に言及したりもしています。

明確に経験豊富で上手いと言えるチューバが鈴木美玲のみという現状で、
技術ド返しで、取り敢えず大きな音を出せるチューバを突っ込むのか。
単純に他の楽器を減らしてでもチューバの人数を補強するのか。
いずれにせよ、後藤先輩らがいた頃の厚みを再現するのは至難。

この観点から、府大会オーディションの顛末や、今回や今後も含めた滝先生の采配を考察していけば、
方針をあまり説明しない滝先生と一部部員との間に吹き始めた隙間風も含めて、
『ユーフォ』3期がより楽しく、胃痛が伴うw人間ドラマに昇華すると思われます。

今回、驚きのコンクールメンバー起用となった{netabare} 釜屋すずめ。
序盤登場時の元・バスケ部アピールは元気娘キャラを強調するネタというだけではなく、
チューバの穴修復“突貫工事”に必須な肺活量の大きさを示唆する伏線でした。{/netabare}
その他、シリーズ通じて丹念に描かれて来た、チューバ初心者・加藤葉月の成長度はどうかなど、
言葉以外も含めた伏線にもアンテナを張って、滝先生の意図の察知に努めていきたいものです。


【付記】3期は佐々木梓の出番が意外にあって嬉しいのですが、これは六華高校編アニメ化の伏線なのか、『ユーフォ』は3期で完全完結なので、外伝は作りませんという免罪符としての佐々木部長のカット多用なのか。
“立ア会”構成員として、何とも胸がざわつく今日この頃ですw{/netabare}

【第5回感想】私も松本先生に進路を相談してみたかった
{netabare}
あがた祭り回。恐らく3期で一番平和になると思われるエピソードでしょうか(これでw)

そんな中でも、{netabare} 久美子部長ら幹部たちは大会ごとのオーディション導入を決断。
黒江“ママ”先輩は、自撮り困難な旧式フィルムカメラで自分だけが映らない写真を撮り始め、
常に主語が“みんな”であることを強調。
(黒江真由は清良女子の時は“みんな”が喜んでくれるから大会ごとオーディション頑張ったと言いますが、
これって要は“みんな”が喜ばなきゃ受けたくないと言ってるようなもので、だいぶ不穏。)
くみれいは、全国大会で自由曲のユーフォ&トランペットのソリを一緒に吹きたいと、ハイリスクな契を交わす。{/netabare}
などなど地雷埋め込みは着々と進み、私の胃痛が収まることはありませんがw

初回感想にて私の注目キャラの一人に“軍曹”松本美知恵先生を挙げましたが、
個人的に3期で密かに楽しみにしていた先生と久美子の進路相談も始まりました。

松本先生には大会では決まって号泣するため、箱ティッシュを持参しているという原作設定がありますが、
この教師、そこまで思い入れるだけあって、生徒たちのことを本当によく見ています。
彼女に3年連続担任された久美子に至っては、
ある部分では、久美子自身よりも久美子のことを知っているのが松本先生と言っても過言じゃないでしょう。

これは私の勝手な持論かつ、かつての恩師たちの顔に泥を塗るようで申し訳ないですが、
世の高校の進路相談など、高ランク大学合格者実績作りのノルマをこなすための発破をかける営業でしかないと思うのですよ。
少なくとも私のいた凋落一途の進学校はそうでした。

面談だけでなく、集会やホームルームで受験戦争を勝ち抜くための激を飛ばせば飛ばすほど、
生徒のモチベーションは落ち、私より優秀だったはずの同級生がどんどん腐っていく。
挙げ句、進路相談室で、大学パンフめくって志望校選びに悩み続ける生徒たちに、そんなことしていても、勉強せねば点数は上がらないとか言い出す。
何でいつまでも進路決めないのか?って言われても、先生方は営業ばかりで進路の相談なんてしてないでしょ?
と内心腸が煮えくり返る思いでした。

愚痴が長くなりましたが、こうした体験を経た私にとっては、
松本先生の生徒の人生に指針を与えようとする親身な進路相談はとても心に染みるのです。

今回も「迷いを怠けの言い訳にするな」などと警告しつつ、
人生など大抵設計図通り行かないから「考えすぎも良くないぞ」と忠言もする懐の深さ。
何より模試の判定ランクで脅しをかけないのが素晴らしいw

原作通りなら、あと1回以上は示唆に富んだ松本先生の二者面談もあるはずで、
1期から久美子が、周りや果てはサボテンと問答するなどw
シリーズ通じて伏線を張った末に導き出される久美子の進路には感動も覚えるはず。

本シリーズの裏テーマ・久美子の進路、松本先生には今後も要注目です。{/netabare}

【第4回感想】求くん問題一挙解決回の是非
{netabare}
求くん深堀り回。
月永求が龍聖学園との間に抱えた問題及び、
“師匠”緑先輩との関係などに焦点を当てる。

3期では1話分に集中的に描写してきた求くん問題ですが、
原作では、作品内時間をじっくりかけて徐々に氷塊していくお話。
原作未読組の方の中には(※核心的ネタバレ){netabare} 求の姉の死{/netabare} という思いがけない重たい話にビックリされた方もいるかもしれません。
原作では、さらに求くんが{netabare} 滝先生に自らの境遇を重ねた{/netabare} 故の北宇治進学など、
もう少し込み入った経緯もあったりします。
(※核心的ネタバレ){netabare} 緑先輩が求の死んだ姉と似ている{/netabare} などの事情についての緑の理解度についても、原作とアニメでは現状異なります。

原作組の方の中には、求くんのエピソードを1話で一気にというのはやや乱暴に感じられる方もいるかもしれません。
因みに、今回、冒頭から盆でもないのに墓参りシーンから始まるのは、
二学期まで求くん問題を引きずる原作より展開を前倒した影響ですw

ですが私は求くん解決編を前半に持ってきたアニメ3期の全体構成はまずまずの良手だと思います。
これから起こる久美子たちの問題と並行して、後輩の問題まで取り扱うのは、
小説という媒体では繊細な群像劇を堪能できて良いのですが、
毎週放送する1クールアニメでとなると、1週間お預けになる要素が多すぎて、焦点が定まらない懸念もありましたから。

特殊ED{netabare} 「愛の挨拶」コンバスのエチュード。{/netabare}
真っ直ぐに音楽を楽しむ緑を見て、今日も良い回だったなと思えた自分がいましたし。

何より、“立ア会”(立華高校マーチングバンドへようこそのアニメ化を待ち望む市民の会)の一員として、部長となった梓の勇姿も拝めて感無量でしたし。


【付記】第4回放送に先立って、NHKラジオFM「吹奏楽の響き」にて『響け!ユーフォニアム』が特集というより50分丸々『ユーフォ』のお話でした。

長年、本シリーズの吹奏楽演奏を提供してきた洗足学園音楽大学教授・大和田先生はお馴染みとして、
ユーフォニアム奏者担当すなわち久美子の奏者としての“中の人”丸山 奈央さんのお話も聞けたのも貴重でした。

芸術文化番組を数多く抱えるNHKならではの番組を横断する『ユーフォ』アピール。
フル尺の楽曲紹介もあるので、
聴き逃し配信。作業用BGMなどにいかがでしょうか。{/netabare}

【第3回感想】強豪校に変貌しつつある北宇治が得る物と失われていく物……。
{netabare}
原作『最終楽章』は前後編。3話でその前編中盤のヤマ場に到達。
{netabare} 1年生たち4人の集団欠席{/netabare} を通じて、
全国金賞に向けて突き進む北宇治から失われていく、
楽しく部活する空気にスポットライトを当てて、
痛みと共に北宇治が着実に強くなっていることを噛み締める良エピソード。

私は、ここを3期の試金石と目していましたが、
部内の異変を察知した久美子部長の動揺を、
松田 彬人氏による劇伴の変調と、傾くアングルも駆使して好表現。

原作消化も1クールで収まる順調なペース。
ここまで飛ばした場面もありつつも、終盤クライマックスでは掘り下げるだけの尺を確保しながら、
ヒタヒタと伏線も仕込まれており、爆発したらどうなることか戦々恐々ですw


視聴者の中には麗奈の“鬼軍曹”ぶりが行き過ぎと感じた方もいるかもしれないので、麗奈推しとして多少の擁護を。

顧問の滝先生が就任した際、述べた方針は、生徒の自主性を重んじる。
振り返れば、久美子1年生時、マーチング練習で激を飛ばしていたのは“軍曹先生”松本であり、
滝先生自らも技術不足を指弾して部員を泣かせたりしていました。

それが今や生徒たち自身が指導役までこなして、北宇治は自主的に上手くなる組織へと進化しつつあります。
今回の部内のヒリヒリした空気も、吹奏楽強豪校の伝統の萌芽とポジティブに捉えることもできると思います。

ですが北宇治の伝統確立はまだ道半ば。
原作シリーズには久美子中学時代の同級生・佐々木梓を主役に、
マーチング強豪校・立華高校(※アニメでは六華)の青春を描いた
『立華高校マーチングバンドへようこそ』がありますが、
そこで描かれる確立された伝統校のスパルタぶりは麗奈なんてもんじゃない鬼っぷり。
練習中泣き出した子に対して麗奈は{netabare}一旦、列から外れるように指示しましたが、{/netabare}
立華は、{netabare} 泣いたら上手くなるわけ?とさらに追い打ちをかけますw{/netabare}

誰も見捨てたくない久美子も、麗奈だってまだまだ成長途上。
何より大人になりたい、なりたいかどうかもイメージしきれていない子供が、
部の幹部として人間にぶつかれば着実にダメージは蓄積していく。

その積み重ねから来る手応えが怖い位ヒシヒシと感じる序盤戦です。{/netabare}

【第2回感想】“ダーク久美子”黒江真由
{netabare}
原作者・武田 綾乃氏は対(ペア)としてキャラを造形する。
冷静で冷めた久美子に、熱く意識が高すぎる麗奈をぶつけて“特別”を意識させる。
適当で面倒臭がりな久美子をカバーする“便利屋”秀一。お似合いの夫婦?
といった具合に各キャラの属性が被らないように“パラメーター”調整しつつ、
凸凹なキャラ同士を人間関係の魔境?w吹奏楽部の中で共鳴させて物語を紡いでいく(※1)

そのため、くみれい、のぞみぞ、なかよし川と、
本シリーズのカップリングは尊さが凄まじいレベルに達するわけですが。

3期より登場する黒江真由は武田 綾乃氏が“ダーク久美子”と“公称”する新キャラ。
久美子が北宇治の吹部で“特別”とも出会わず、上手くなりたいという熱病にも憑かれず。
常に一歩引いた場所で、“良い子”でなぁなぁなまま、楽しく平和ならそれで良いと高校生活を過ごしてきた、もうひとりの久美子が黒江真由(※2)

無邪気に嫌味なく本音をこぼす真由は、うっかり失言メーカー・久美子とはまた違ったタイプの失言王。
鏡面みたいに相手自身の見たくない過去やら自分やらを映し出すピュアな難敵。

そんな真由の片鱗が遺憾なく表現された第2回。
久美子をサポートする幹部、副部長・秀一とドラムメジャー・麗奈もまた、これまで対(ペア)として、
久美子の世界を広げつつも、時に心をざわつかせてきた存在。
幹部トリオの凸凹化学反応の導火線も伏線として着々と張られて黄前政権は波乱ムード?

久美子部長も俺も胃が痛いよw

【参考文献】※1『響け!ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌』
※2『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ 公式ファンブック』
{/netabare}

【初回感想】3期の注目キャラ。久石奏、滝昇、松本美智恵……
{netabare}
原作シリーズ全巻購読済。

初回から特殊OP&EDでシリーズの有終の美を飾りたいという、
スタッフの本気、熱意、悲願が存分に感じられる上々の滑り出しでした。

主人公の久美子部長や、私の推しの麗奈の鬼ドラムメジャーぶりへの期待が膨らむのは当たり前のこととして、
レビュタイにはその他に個人的に原作で良かったので、アニメでも注目したい登場人物を3人挙げさせて頂きました。

個々の注目ポイントについては、おいおい言及するとして、
この観点から初回冒頭、最初に登場するネームドキャラが{netabare} 松本先生{/netabare} という時点で、
私にとっては先頭打者ホームラン級の手応え。

京アニ並びにスタッフたちは、このアニメが何者なのか何者でありたいのかきちんと考えておられます。

正直、先の『アンコン編』位の出来だったら、
まだ京アニもリハビリ途上なので、多少遠慮して観た方が良いのかな?
とも考えていましたが杞憂でした。

これなら序盤からガチ視聴モードで行けそうです。
私も本気で行きます。{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 52

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

ありがとう久美子 そしてお疲れさまでした。

これは響け!ユーフォニアムの第三部です。初めての方は第一部からご視聴願います。
但し、第二部と第三部との間には『リズと青い鳥』、『劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~』、『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト』もあります。
素晴らしい内容だから多くの方々が視聴され、これだけの作品が作成されたのでしょうね。

この第三部では、全国大会で金賞をとるための黄前久美子(おうまえくみこ)をはじめとした北宇治高校吹奏部部員のたゆまぬ努力と苦悩を描いています。
そして、久美子は最後まで正しさと公平を貫いた立派な部長でした。
その久美子の行動には、いつも感動します。
「ありがとう久美子」と、久美子を褒めたたえたい気持ちでいっぱいです。


久美子はいつも巻き込まれキャラです。
今回は、転校生の黒江真由(くろえまゆ)の登場により、久美子が巻き込まれることになります。
真由は全国大会常連の聖良女子学園からやってきたユーフォニアムの奏者。
高坂麗奈(こうさかれいな)や後輩の久石奏(ひさいしかなで)は、真由のほうが久美子よりも上手だと気づいていました。もちろん顧問の滝先生もそうです。

麗奈が「トランペットのソロの練習をするのでつき合ってほしい」と久美子を誘い、一緒に練習しますが、それは久美子にもっとうまくなってほしいため。麗奈は麗奈なりに久美子をせいいっぱい応援していたのです。
奏も、自分が不幸な状況で泣き出してしまいたいほどなのに、久美子のことを真っ先に気にかけて久美子を励まします。
久美子は、奏からすごく慕われているのですね。

誰にでも優しい久美子は、2年生の頃から多くの後輩の相談にのったり後輩の面倒を率先して引き受けてきたので、今では全ての後輩から慕われています。
こんなに人気者の部長でも、オーディションは公平です。久美子が選ばれるとは限りません。
その公平さは、久美子自身が決めたもの。奏からは「いつも自分で貧乏くじを引いている」と心配されます。

カーテンで吹奏者を見えなくすると、久美子の吹奏を聴きなれていない人達は、誰が吹いているのかわかりません。
でも、聴きなれている人には、わかります。
麗奈だけでなく奏も、それに川島緑輝(かわしま さふぁいあ)、加藤葉月(かとう はづき)、塚本秀一(つかもと しゅういち)も、久美子が出す音と真由が出す音の違いがわかるようです。
久美子と真由のオーディション審査での彼女らの挙手の仕方を見ると、
 ①うまさには関係なく、大好きな久美子を勝たせたい 
 ②音楽に嘘はつきたくないが、大好きな久美子を勝たせるためには仕方ない
 ③久美子のことは大好きだが、音楽には嘘をつきたくない
の3つの気持ちが表れているように見えました。

私が二人の吹く音楽を聴き比べたところ、恥ずかしながら1回聴いただけではわかりませんでしたが、2回、3回と繰り返し聴いていると、
真由の音色は、麗奈の吹くトランペットの音を引き立てているような気がしました。(間違っていたらごめんなさい)


ところで、
物語の中で何度も久美子が吹奏する「響け!ユーフォニアム」は、実に心が和む温かい音色です。
この曲は、田中あすか先輩から久美子へ、そして真由や奏へと、さらにはその後輩へと受け継がれていくのでしょうね。
久美子が教員になり副顧問として吹奏部へ来たとき、この曲が今も受け継がれていたことを知ると、久美子はきっと泣き出すほど感動するでしょう。


話は変わりますが、緑と月永求(つきながもとむ)の関係も、私にとっては結構興味がありました。
二人が一緒に弾いたエルガー作曲の「愛の挨拶 」(コントラバス二重奏)は、まるで二人の気持ちを語り合っているようでした。
緑と求の今後の展開が知りたいです。


最後に
京都アニメーションへの放火事件さえなければ、第三部は、もっと早い時期に放送されるはずでした。
第三部は、私達だけでなく、放火事件で亡くなられた方々が待ち望んでいた作品でもあります。
事件で亡くなられた方々のご冥福を改めてお祈りします。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 39
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

最高の作品の最高のフィナーレ

初めての方は初めまして!
そうじゃない方はお久し振りです!
約2年半振りのレビューになります

お気に入りの作品の最終章、最高の作品の最高のフィナーレに心が震えました
で、どうしてもこの感動を共有したくなってしまったというわけです(笑)

  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆

良く言えば、『この濃密な内容を、よく13話に収めたな!』
悪く言えば、『短すぎ~!』
2クールで、もっとじっくり視聴したかった

これ以外に欠点が見当たらないのが、この作品の最大の欠点(笑)

  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆

本作といえば、原作改変についても触れない訳にはいかないでしょう

大きな原作改変が行われ、話題となったのが第12話
{netabare}ユーフォニアムのソリストが原作の久美子から黒江真由に変更になった件

敢えて原作改変に踏み切った京アニと原作者の勇気は称賛されるべきだ

いうまでもなく、原作通りにアニメ化してしまえば無難である
この作品のファンなら、最後に見たいのは久美子と麗奈のソリである
これは絶対に間違いない
ここで原作改変が行われ、原作の久美子から真由に変更になった
結果、ユーフォファンの間で物議を醸す事となってしまった

正直、私も真由に決まった瞬間に、かなり動揺があった

脚本家の提案に、原作者と監督がどういうする形で改変は行われたらしい
この作品を愛し、育んできた人々のベストアンサーがこの形だったのだろう

ここからは考察
かなり私的な意見なので、飛ばして頂いて構いません(笑)
{netabare}
この物語のスタートは、久美子と麗奈が中学3年生だった時
麗奈が『死ぬほど悔しい』と言って泣き崩れた時が起点となる
高校に進学した久美子は、そんな麗奈に触発され吹奏楽にのめり込んでいく
銅賞で終わった1年生の全国大会
久美子は、悔しそうに見えるけど『死ぬほど悔しい』というほどではない
全国を逃した2年生の関西大会
『悔しくて死にそう』と言って泣き崩れたのは、久美子ではなく奏だった
そして集大成の3年生
ラストには全国金賞が待っている
久美子に『死ぬほど悔しい』思いをさせるのは、ここしかなかったのだろう
そして、久美子は麗奈の前で泣き叫ぶ
『死ぬほど悔しい!』
久美子が、3年前の麗奈に追いついた瞬間

麗奈の『死ぬほど悔しい』に・・・
久美子が3年もかかって追い付いて・・・
ラストは麗奈の『嬉しくて死にそう』で締め括る

溜息が出るほど完璧なエンディングに心が震える{/netabare}

原作改変に踏み切った京アニと原作者の勇気に最大の称賛を贈りたい{/netabare}

  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆

あまり話題にならないけど、ほかにも原作改変は行われている
例えば第1話
{netabare}1年生の新入部員が入部し、今年の目標を決める場面
『全国大会金賞を目標にする』ことを決める、大事な大事な場面

原作では、この場面に真由は参加している
真由の本心は計り知れないけど、真由はこの目標に同意している

ところが本作では、真由はこの場面に参加していない
真由はこの場面の後に久美子と出会い、転入し、入部している。
このせいで、真由の本心が見えづらくなっている

ここからは考察
かなり私的な意見なので、飛ばして頂いて構いません(笑)
{netabare}
『わたし、みんなと楽しく演奏したいから』(第2話より)
入部直前に、真由が久美子に語った言葉

物語のラストまで、久美子にも視聴者にも、真由の本心が見えづらい演出
我々視聴者は知らず知らずのうちに久美子がソリに選ばれることを期待する
「誘導される」といった方が正しいかもしれない
最終的に、更なる原作改変で裏切られるとも知らずに

しかし、視聴し終わって、少し時間をおいて冷静に考えると分かるはず
久美子が悩み、もがき続けてきた3年間
我々視聴者はそんな久美子の姿を見てきた
だけど、真由だって、立場は違えど、3年間悩みもがき続けてきたんだって
我々視聴者が知らないだけで

だから、真由がソリに選ばれても、何ら不思議なことではないと{/netabare}{/netabare}

  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆

最後に、本作の影の主人公・奏について語りたい
私がそう思っているだけだけど(笑)

最初に言ったように、本作の最大の欠点は全13話と短すぎること(笑)
2クールで見たかったシーン
サンフェスの本番の演奏シーン
そして、奏の掘り下げ
{netabare}関西大会向けのオーディションで落選した以降の奏の掘り下げ

ここからは考察
かなり私的な意見なので、飛ばして頂いて構いません(笑)
{netabare}
関西大会、全国大会向けのオーディション
久美子VS真由のユーフォニアムのソリ争いにばかり目が行きがち
だけど、最大の悲劇のヒロインは奏だと思う

奏の落選の理由は『チューバが弱いから』
本来チューバのメンバーは3人の予定だったのに、補強のために1名増員
その枠を開けるために、奏は落選
奏本人は『何となく分かってましたから』(第9話より)って強がるけど・・・

久美子と真由のソリ問題
久美子の立場で言えば、真由より上手くなれば済む話
誤解を恐れずに言えば、久美子は自力で解決できる可能性がある

奏の夢は『最後に久美子先輩と吹きたかった』(第12話より)
つまり、久美子とコンクールに出場すること
残念ながらこの目標、奏1人の力では達成出来ない

解決策その1
チューバ部隊が3人で演奏できるくらいレベルアップする
解決策その2
ユーフォ部隊の2番手以内になる
ただし、同時に久美子も2番手以内になる必要がある
ソリは久美子に吹いてほしいという希望もあるから1位久美子2位奏が理想
現状、ユーフォ部隊の順位は1位真由2位久美子3位奏
1位の真由を久美子と自分が追い抜かないといけない

どちらにしても、自力だけでは解決出来ない
そんな絶望的な状況の中でも、部の目標『全国金賞』に向けて歩み続ける奏{/netabare}

そんな奏の葛藤をもっと、しっかりと見届けてあげたかった{/netabare}

  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆  ☆☆☆☆☆☆☆

最後に・・・
この先、久美子が副顧問として奮闘するさまを見届けたいと感じたのは私だけでしょうか(笑)

素晴らしい作品に巡り会えたことに心から感謝します!

投稿 : 2024/12/14
♥ : 38

91.1 2 コンクールでチューバなアニメランキング2位
響け! ユーフォニアム(TVアニメ動画)

2015年春アニメ
★★★★★ 4.2 (3141)
13963人が棚に入れました
高校1年生の春。
中学時代に吹奏楽部だった黄前久美子は、クラスメイトの加藤葉月、川島緑輝とともに吹奏楽部の見学に行く。
そこで久美子は、かつての同級生・高坂麗奈の姿を見かける。
葉月と緑輝は吹奏楽部への入部をきめたようだったが、まだ踏み切れない久美子。
思い出すのは、中学の吹奏楽コンクールでの麗奈との出来事だった。

吹奏楽部での活動を通して見つけていく、かけがえのないものたち。
これは、本気でぶつかる少女たちの、青春の物語。

声優・キャラクター
黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、寿美菜子、早見沙織、茅原実里、石谷春貴、津田健次郎、小堀幸、藤村鼓乃美、山岡ゆり、日笠陽子、沼倉愛美、久川綾、櫻井孝宏
ネタバレ

scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

文句なしに良い作品でした

第3期最終話まで視聴後追記。

「学生時代に部活動頑張った!」なんて人には、おすすめのアニメです。
また本作を未視聴の方のために、参考になれば・・・。

本作のジャンルは、『青春群像劇』。
高校の吹奏楽部を舞台とした青春アニメです。
魅力的な部員がたくさん出てきます。
お気に入りの部員さんが見つかると、俄然、視聴が楽しくなります!

以下は、おせっかいな注意書きです。必ずしも見る必要はありません(笑)
{netabare}
◎前半は『鬱展開』が多いけど、我慢!
第1期の前半は、後半~第2期のネタ振り。そのため、前半はかなり『鬱展開』が多いです。
「この作品が嫌い」という方の多くは、この『鬱展開』が合わなかったのかな?と・・・。
私も初見の時は第2話で切りそうになりましたが、我慢して引き続き視聴している内に本作の魅力にハマっていきました。
とにかく「前半は我慢が必要かも?」です。

◎百合展開?
第1期の後半以降は百合展開?と思われる展開になります。
私は「百合」というより「女子同士の友情」だと思いましたが、「この作品が嫌い」という方の多くは、この部分に引っかかったようです。
まあ、どちらにしてもそんなに濃い目の百合の話にはなりませんのでご安心を!{/netabare}

さあ、皆さんも第13話のラストで涙腺崩壊してみませんか!

-------------------------------------------------

原作未読。
作画と演出はさすがの京アニ。
声優陣は若手(だけど実力はある)を主役陣に、他の作品なら主役級のベテランを脇役に配置するなど絶妙。
文句なしに良い作品でした。

{netabare}
主役よりも脇役に感情移入してしまう私としては、一押しは夏紀先輩です。
『夏紀の姿』=『吹奏楽部の雰囲気』
初めは無表情で全くやる気の感じられなかった夏紀の表情が徐々に明るくなり、11話の優子と追っかけっこするシーンなど微笑ましくさえ感じました。

今作のもう一人の主役は香織先輩でしょうか?
せっかくコンクールを前に一致団結していた部員たちが、自分の事を思って分裂し、集中を欠き・・・。
そんな時、滝先生から再オーディションの提案が。
ソロパートを諦めきれない自分の思いと、そんな自分を気遣ってくれる周囲の思い。色々なモノを背負いながら立ち上がったシーンは感動的でした。
3年生の中でも気遣いNo.1の香織は、ソロパートにかける自分の思いのために、そして自分の事を思って分裂し、集中力を欠いてしまった吹奏楽部を一気に立て直すために立ち上がったんだと思っています。
自分だけじゃなく、吹奏楽部のメンバー全員が納得できる形でソロパートを決定できる再オーディションの方法を受けて立ったんだと・・・。

最終話。
滝先生が出発前に話し掛けていた写真の女性は誰?
コンクール会場に姿を見せた少女は?
結果発表を受け大喜びする部員たちとは対照的に一人目を伏せてうつむいたあすかの真意は?

願わくば第2期で明らかにならん事を期待しています!
{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 212
ネタバレ

mio♡美桜 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

Come on!Join us‼︎ & Bravo‼︎(余談3追記)

♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・*゚♫彡。.:・¤゚♫

原作 - 武田綾乃
監督 - 石原立也
シリーズ構成・脚本 - 花田十輝
キャラクターデザイン - 池田晶子
シリーズ演出 - 山田尚子
美術監督 - 篠原睦雄
色彩設定 - 竹田明代
楽器設定 - 高橋博行
撮影監督 - 高尾一也
音響監督 - 鶴岡陽太
音楽 - 松田彬人
音楽制作協力 - 洗足学園音楽大学
演奏協力 - フレッシュマン・ウインド・アンサンブル
音楽監修 - 大和田雅洋
アニメーション制作 - 京都アニメーション
製作 - 「響け!」製作委員会
放送期間 - 2015年4月 - 6月
話数 - 全13話

(以上Wikipediaより引用)

♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・¤゚♫彡。.:・*゚♫彡。.:・¤゚♫


京都アニメーションの新作「響け!ユーフォニアム」

京都アニメーションならではの美しくて繊細な作画と
その中で生き生きと動くキャラクター達。
吹奏楽の魅力溢れる楽器の質感と演奏描写。
ホール特有の臨場感と緊張感。
そして合奏で生まれるダイナミックな高揚感。

アニメ視聴歴の短い私がこの様な事を言うのは大変おこが
ましいのですが、長年に亘って培ってきた京都アニメーシ
ョンの技術がいかんなく発揮されている印象を受けました。

京都アニメーション製作と聞きますと必然とでも言うの
でしょうかやっぱりその作画力に注目しちゃいます。
何気ない街の信号機の押しボタン、音楽室の備品らしい
楽器の傷や黄昏時の公園の背景、夕日や水銀灯が反射し
キラキラと輝く水面。演奏する時の息遣いや指の動き。
何秒も映らないシーンに対してのこだわりと言うので
しょうか、本当に細やかな描画が凄いと思います。
そしてその様な素晴らしい背景の中でそれぞれのキャラ達
が豊かな表情で丁寧に動いています。

私、京都アニメーションの横顔の描き方、けいおんやたま
ラブのレビューでも書かせて頂きましたが大好きなんです。
額から鼻そして唇、顎のライン、つい吸い込まれる様な瞳の
美しさにこの作品でも心を奪われました。
第1話から制作サイドのこれでもかと言わんばかりの熱意が
伝わってくる作画。
まるで映画かと勘違いしてしまうくらいのレベルを維持
しつつ圧巻の最終話までいきます。
凄いです!
ここまで作画に関して書かせて頂きましたが、是非その
目で実際に堪能して下さい。

次にストーリーなのですがお話としては、とある高校の
吹奏楽部の成長物語をヒューマンドラマを交えながら
描いた、ある意味では部活物の王道的なお話です。
しかし高校生ならではの憂い、葛藤、喜び、そして少し
ばかりの恋心を吹奏楽部の成長と共に全く手抜きの無い
リアルな描写で描ききってます。
そのリアルさに何度も心が震え、学生時代の楽しくて熱く
て切ない記憶が蘇りました。
特に吹奏楽部に対しての描き方は吹部在籍者もしくは
経験者も納得の内容だと思います。
そして1クールという短い時間の中でも出来るだけの楽器
の紹介や演奏、お手入れの仕方、吹部内のパート・編成の
説明、全国コンクールまでの仕組みなどの解説もあります
ので吹奏楽未経験の方でも凄く楽しめるかなと思います。
アイキャッチで毎回違う楽器が登場するので、
あっ、これなんだろ?
って興味を持つのも楽しいかもしれませんね。
尺の都合上十分ではないかもしれませんが吹奏楽未経験者
の方でも楽しめる様な配慮がなされている点が凄く嬉しい
です。

どうしても吹部というのは女子率が高いのでキャッキャ
ウフフ、はたまた女子特有のギスギスした関係等想像
するかと思われますが、体育会系並みの練習のキツさや
辛さ、顧問の先生または部員同士の確執、そして音を奏で
る喜びや音楽を通して築かれていく信頼関係や友情等も描
かれていますので学生時代に何か部活に打ち込まれた
方など特に共感出来る部分も多いのではないでしょうか。

アニメのタイプには非現実的でリアルではありえない事を
私達に擬似体験させてくれる楽しさと現実的でリアルで
あり得る事を共感しながら楽しませてくれる作品がある
と思います。
しかしどちらも同じアニメの醍醐味。
この作品は後者の良さが詰まった素敵なシンフォニーです。
少しばかり女の子同士のファンタジーもありますけれど。

胸を熱くさせるセリフの1つ1つ。
葛藤、友情、愛情、情熱のこもったストーリーを盛り上げ
る声優さんの演技もまた素敵です。
メインキャラを務める声優さんは私的に余り存じ上げ無い
方が多かったのですがその周りを固めるベテラン(年齢は
若いですが実力派の方を含め)の声優さんの演技が光って
ます。
エンドロールでおおっ!この人出てたんだ!ってなるのも
楽しみです。

そんな作画、ストーリー、声優陣のバランスのとれた
作品を盛り上げてくれるのが
OPの「DREAM SOLISTER」、EDの「トゥッティ!」
どちらもブラスバンドを取り入れていて、この作品の楽し
さと音楽を奏でる、みんなで合奏する楽しさが凄く伝わる
素敵な曲だと思います。

特に最終話のEDは…これは内緒ですね。是非!

最近視聴したアニメの中で最初から終盤までここまでの
期待感と緊張感を維持したまま視聴したアニメはなかなか
ありません。
ストーリー的な面白さもありますが、人間関係、心情、
音の対比の表現が素晴らしいと思います。

ボキャブラリーの少ない私には多くは語れません。
是非視聴して下さい。
そして感じて下さい。

とここまでなるべくネタばれ無しで感想を述べてみました
けれど、

上手く伝わるかなぁ…ちょっと不安。

でも、私自身初の5点満点の作品となりました

「響け!ユーフォニアム」

音楽とは聴く者の心を打ち震わせ、繋ぎとめる
世界共通の言語。

しっかりと心に響きました。ガチです!


【主要登場人物・出演者】

黄前久美子 - (CV:黒沢ともよ)
加藤葉月 - (CV:朝井彩加)
川島緑輝 - (CV:豊田萌絵)
高坂麗奈 - (CV:安済知佳)
田中あすか - (CV:寿美菜子)
小笠原晴香 - (CV:早見沙織)
中世古香織 - (CV:茅原実里)
塚本秀一 - (CV:石谷春貴)
後藤卓也 - (CV:津田健次郎)
長瀬梨子 - (CV:小堀幸)
中川夏紀 - (CV:藤村鼓乃美)
吉川優子 - (CV:山岡ゆり)
斎藤 葵 - (CV:日笠陽子)
黄前麻美子 - (CV:沼倉愛美)
松本美知恵 - (CV:久川綾)
滝 昇 - (CV:櫻井孝宏)


【主題歌】

オープニングテーマ
「DREAM SOLISTER」(第2話 - 第12話)
作詞 - 唐沢美帆 / 作曲・編曲 - 加藤裕介 / 歌 - TRUE

エンディングテーマ
「トゥッティ!」(第1話 - 第7話、第9話 - 第12話)
作詞・作曲 - ZAQ / 編曲 - 高田暁 / 歌 - 北宇治カルテット
[黄前久美子(黒沢ともよ)、加藤葉月(朝井彩加)、
川島緑輝(豊田萌絵)、高坂麗奈(安済知佳)]

メモリアルエンディングテーマ
{netabare}
「DREAM SOLISTER (Wind Orchestra Ver.)」
(第13話)
作曲- 加藤裕介 / 編曲 - 松田彬人
{/netabare}


【mio's café】
ここからはネタばれの感想となりますので未視聴の方は…
出来ればご遠慮ください。
それでもという方は…Come on!Join us‼︎

{netabare}
良かった、本当に良かったです。
最初はヒロインらしからぬどこかクールでちょっと
ネガティヴな主人公:黄前久美子ちゃんにこの子この先
どうなるんだろうって不安だったけど、見事に変わって
くれましたね。
周りに良き友人、先輩、先生に囲まれて葛藤しながらも
成長し、本当の自分の気持ちに気付いていく様は見事でし
た。
CV:黒沢ともよさんの演技も普段のクールでグタグタな
低音ボイスから気持ちが高揚した時のちょっと上擦った
感じの声まで凄くメリハリがあって素敵でした。
本当にリアルな女子高生らしさが出ていたと思います。

そんな久美子を序盤で支えたのが超ポジティブ思考の2人
のお友達。
加藤葉月ちゃんと川島緑輝(サファイア)ちゃんでした。
でもこの2人のポジティブさ微妙に違うんですよね。
そのあたりの細かい使い分けも凄く上手だったと思います。
葉月ちゃん演じるCV:朝井彩加さん、
緑ちゃん演じるCV:豊田萌絵さん。
多分初めて名前を見る方だったのですが凄くキャラの魅力
を引き出していて良かったと思います。

久美子と最初にお友達になった加藤葉月ちゃん。
序盤のチューバとの馴れ初めは笑っちゃいました。
こうだと決めたら突進するポジティブ要素の他に以外と
感受性が高くナイーブな感じ。
感動しやすく、お友達の為なら頑張れる女の子。
8話告白シーンでの後ろからのカメラアングルで瞬きする
所、橋の上での緑ちゃんと再開して涙が溢れ出すシーン。
切なかったですね。
逆に9話でヘコむ緑ちゃんを励ます姿が愛おしかったです。

そして川島緑輝ちゃん。
「命かけてます!」
「その言葉待ってました!」
なんと前向きなキャラなんでしょう。
あのちっちゃい体でコンバスってのも良いですね。
後ろは振り向かない前進あるのみの超ポジティブ思考。
事あるたびに久美子にハッパかけてくれます。
そんな緑ちゃんでもさすがに9話ではへこんじゃってちょっ
と心配しちゃった。
8話でのいきなり登場した妹の琥珀ちゃん。
「こりゃ、ヤバいね〜」
葉月ちゃんの言葉そのもの。かなりヤバかったです。

緑ちゃんが背中を押して葉月ちゃんがさりげなくフォロー
する。
タイプの違うポジティブキャラの魅せ方がとても印象に
残ります。

そんな2人に割って入るかの様に久美子の心を虜にした
高坂麗奈ちゃん(CV:安済知佳さん)。
凄いですね。
私の中で「高坂麗奈」という「戦場ヶ原ひたぎ様」に
勝るとも劣らないキャラが誕生しました。
第1話でのあの涙。
凄くわかるんです、あのダメ金の悔しさ。
吹奏楽は一人じゃないからこその悔しさ。
皆んなが1つにならなきゃ取れない代表の座、
だけど一つになっても取れない代表の座。
嬉しさも倍なら悔しさも倍だから…
麗奈の気持ち凄くわかるんです。
リアルですね。
(私が現役の時はダメ金という言葉が凄く嫌いでした。
あの評価方法自体今思い出しても酷だと思います。)

私がこの作品を見始めて凄く興味があったのが、いかに
して金に届くまでの吹部に育っていくのかという事と
第1話で訪れた久美子と麗奈の関係がいかに変わっていく
のかという事でした。
第5話が吹部としての大きなきな転換点、そして第8話が
久美子と麗奈の関係の大きな転換点だったと思います。
作画の美麗さに音楽が優しく重なり、私までなんだか
幻想的な夏の夜の夢を見ているようでした。
背後の夜景が透けて見える白いワンピース。
久美子の顔をなぞる麗奈の白くて細い指先。
「特別になる…」
ユーフォニアムとトランペットでの2重奏。
その曲名も

「愛を見つけた場所」…

背景、音楽、キャラのあまりの美しくしさに背筋が
ゾクゾク。
最後のEDまでドキドキしてました。
近年の京都アニメーションの中でも突出した出来だと
思います。
負い目を感じて後ろ向きだった久美子が麗奈の強くて
真っ直ぐな気持ちの虜になった第8話。
好きな人の為なら全てを敵に回しても構わないという覚悟
の第11話。
この2話に共通していた事が好きな人の為なら死をも厭わな
いという気持ち。
高校生にはちょっとオーバーとか百合展開とか思われる方
もいらっしゃるかと思いますが、私にはそう感じませんで
した。
憧れや人を尊び好きになる気持ちは男女の壁を越えたそう
いう物だから。
人生にそう何度もない出会いが高校生の久美子に訪れた
だけだと思います。

そして麗奈と同じ目線に立てた第12話への大きな導火線
だったと。

「悔しい…悔しくて、死にそう…」

第1話での麗奈と同じ言葉を発した久美子のシーンには
見ているこっちまで心が張り裂けそうでした。
自然と涙が溢れました。
久美子が駆け出すシーンからの作画は圧巻です。
この12話での作画に関してちょっと興味深いツイートが
ありましたので。
以前京都アニメーションでアニメーターとして活躍してま
した斎藤敦史さん(現在はフリーとしてSAO、アルドノア・
ゼロ、ガリレイドンナ等のメインアニメーターとして活躍
中)のツイートなんですが、ちょっと引用させて頂きます。

「ユーフォニアム12話、ちょろっとだけ観たけど
どうやったらこんなクオリティになるのか意味が
分からない。無理〜。
演出がどのぐらい手を入れてたのか気になる。」

凄いですね、プロで同業者しかも元京アニの方が見ても
この感想です。

やはり京都アニメーション、凄いです。

メインキャラとモブ的なキャラの区別がつかないくらい
それぞれのキャラが魅力を発揮するのも京都アニメーショ
ンの作品の特徴の一つ。
今回も沢山の魅力的なキャラがいましたね。
当初から私が注目していたのが
低音パートリーダー田中あすか先輩(CV:寿美菜子さん)
新任顧問の滝昇先生(CV:櫻井孝宏さん)
の2人でした。

最初はあすか先輩の弾けたキャラに魅了され(寿美菜子さん
の演技もまたぴったりです)ていたのですが、お話が進むに
つれて見え隠れする過去と影。
リーダーとしての資質を持ちながらみんなとは一線を画す
あすか先輩の本心というのがとても気になりました。

新任顧問として赴任してきた滝昇先生。
私的にはもう何と言っても櫻井孝宏さんの演技が大好きです。
櫻井さんの顔が滝先生になるくらい素敵でした。
クールで優しい仕草で語りかける言葉の中にある熱い
情熱。
時には残酷ともとれる指導方法をとりますが、大事な所
での言葉はさすがです。

色んな言葉がありましたが最終話でのチューニングルーム
からみんなを送り出す時の言葉は最高でした。

「では皆さん行きましょう、全国に」

これで頑張れないわけがありません。
演奏始まる前から私のアドレナリンが噴出しちゃいました。
吹奏楽に対する情熱と生徒への信頼が感じられる素敵な
先生です。
あんまり言うと麗奈に怒られますね。

でも最終話が終わってもあすか先輩と滝先生2人の中にある
過去というか事情みたいなのが一番引っかかりました。
2期あれば明らかになるといいな。

中世古香織先輩(CV:茅原実里さん)は何と言っても10.11
話での再オーディションのお話が胸に残りましたね。
周りをそして自分を納得させ気持ちよくコンクールに向か
えるように敢えての再オーディション。
最終話での麗奈のソロパートを聴くマリア様のような表情
が全てを物語っていました。

小笠原晴香先輩(CV:早見沙織さん)もいろんな葛藤があり
ましたけれど、お話が進むにつれての成長がとても良かった
です。早見沙織さんの独特の鼻にかかったような声が私的に
は高ポイントでした。

一人一人あげていくと大変なレビューになりそうなので
最後にこの人だけはというキャラを。
中川夏紀先輩(CV:藤村鼓乃美さん)です。
私的に最大のダークホースって言い方はおかしいかもしれ
ないけれど、お話が進むにつれて一番魅力的になりました。
ポニテ先輩最強です!
最初の頃はこの先輩なんだかなぁ〜って感じだったんです
けれど、自身の過去の辛い思い出や久美子のトラウマを
取り払い、再オーディションの時も関係修復の為に影で
支えていましたね。
優子ちゃんとの微妙な関係も凄く好きです。
屈託のない笑顔でコンクールに出場するみんなを支える
姿に癒されました。
最終話では感動する葉月ちゃんの肩にそっと手を回す
シーンに思わず涙。
やっぱポニテ先輩最強!そういえば最終話はポニテ祭りで
したね。
私も翌日、久しぶりにポニテしちゃいました。
影響されやすいタイプなので…

もうキャラ紹介だけのなんだかなレビューになっちゃい
そうですけど、それだけ魅力に溢れたキャラがいる作品
という事かな。

最初から最後まで右肩上がりで楽しめた当作品。
中でも特に好きだったのは第5話、第8話、第11話、
第12話、第13話でした。

私の視聴したアニメの最高評価は4.9というのが何作品か
あるのですがあと0.1点というのが今までの壁でした。
凄く面白かった、感動した、泣いたそれでも充分なんです
がこの作品を視聴してその0.1というのがわかりました。

「心が震える」

これが0.1点の答えでした。

最終話でこの答えが出るかどうか、緊張のスタートです。

コンクール当日の朝、いきなり画面から伝わる緊張感。
目覚ましより早く起きてる久美子がまずリアル過ぎま
した。
静かな朝だからこピリピリ張り詰めた空気感という
のが伝わります。
そしてお姉ちゃんとの微妙な感じ…
そんな空気を麗奈との肘の小突きあいで飛んでけぇ〜って
麗奈も緊張してるんでしょうね、ついほっこりほぐしてく
れました。
現在の私のアドレナリン充填率70%

淡々と準備が進みみんなの表情もどこか硬い…
そんな緊張をほぐすかのようにチーム「もなか」からの
プレゼント。
サブメンバーの屈託のない笑顔に癒されます。
またもやほっこり。
小笠原部長とあすか先輩の掛け声でいざ出陣!
それにしても滝先生のタキシード姿、滝シードでした。
かっこいい♡
私のアドレナリン充填率80%

会場に到着してますます高まる緊張感。
もう私までリアルで見ているかのような気持ちの高まり。
あのホール独特の匂いまで再生されました。

館内で流れるアナウンス、チューニングルームでの音合わ
せであたふたする様子、音に共鳴するペットボトルの水。
凄くリアル。
現在、私のアドレナリンの充填率90%

招集がかかりいよいよです。
そして滝先生の言葉

「では皆さん行きましょう、全国に」

先生と生徒の気持ちが一つになった瞬間でした。
私のアドレナリン充填率100% 一気に噴出…
心が震えました。
そうです、最後の0.1点がきたんです。
しかしこれは序章、「心の震え」第1波です。

緊張の演奏開始。もう合奏を楽しむよりも祈るような
気持ちです。
ライトに反射する細かいダスト。
引きと寄りのカメラワーク。
みんなの気持ちのこもった表情。
「全国に行くんだ」
セリフと共に映し出される久美子の表情。
獲物を狙う野獣のような表情に「心の震え」第2波が
来ました。
凄い、この子達…

譜面に書かれたメッセージ、
「絶対金賞‼︎来年一緒に吹くぞ‼︎」中川
「絶対絶対ゼッタイぜったい‼︎全国‼︎」加藤はづき
「久美子ちゃん。次は火星まで手を伸ばしましょう!
行きますよ‼︎」みどり
「全国、行こうね」麗奈
胸が熱くなります。

いよいよ麗奈のソロパート。あの伸びやかな演奏の始まり
私も緊張MAX…
でもその演奏を聴く香織先輩の表情に「心の震え」第3波が
来ました。
色々あったけど今彼女達は演奏を楽しんでるんだ。
充実しているんだ、良かった…

演奏も終盤、みんなの演奏にも力が入ります。
滝先生も渾身の指揮。
フィニッシュ。涙が溢れました…
みんな凄く良かった、本当に…

いよいよ各賞の発表。
この緊張感、凄いです。
湧き上がる歓声と悲鳴、凄いどこまでリアルなんでしょう
みんなの表情に「心の震え」第4波。

最大の関門、代表校発表。
そうですね、言葉は入りません。表情だけで充分です。
素敵な演出に「心の震え」第5波。

もう私、鼻水まで出てきちゃいました…
どうしてくれるんでしょうか…

言葉では言い尽くせない、感じて欲しい作品です。
素敵な演奏、素敵なドラマを見せてくれてありがとう。
彼女達と京都アニメーションに感謝しています。

最後の集合写真、
屈託のない笑顔の滝先生が印象的でした。

あっ最後に一つだけ、立派な音響設備があれば別ですが
最終話だけはヘッドホンかイヤホンで視聴して欲しいです。
是非‼︎



〜凄く余談〜吹奏楽コンクール〜
{netabare}
この作品を通じて吹奏楽に興味を持たれた方がいましたら
是非、近くの地区大会、支部大会等のコンクールに足を
運んで欲しいです。
7,8月に都道府県、8,9月に支部(関西、九州とか)、11月に
全国というスケジュールで毎年行われます。
日にちをずらして小、中、高、大、般という様にだいたい
行われますが、高校生以上の金を狙う方々の演奏の迫力や
美しさたるもの凄まじいものがあります。

そんな中で私が凄く思うのが小学生の部の演奏を聴いて
欲しい事です。
まだ吹奏楽を生で聴いた事が無いという方がいらっしゃい
ましたら、是非近くのホールに騙されたと思って足を運ん
で欲しいです。
小学生と侮る事なかれ、今の子供達のレベル凄いです。
どんなに小編成のバンドでも心に響くものがあります。
子供達の演奏する圧倒的な音楽を体で感じて欲しいです。
是非!

凄く余談でごめんなさい。
{/netabare}

〜凄く余談2〜リアルユーフォ二アム〜
{netabare}
ご存知の方も多いかと思いますが、昨年吹奏楽界に激震が
走りました。
何が激震なのかというと九州吹奏楽コンクールで長崎代表
の活水中・高等学校が全国コンクールの切符を手にしたん
です。
いゃ〜おめでたいではないですかぁ。
そうなんです。おめでたいんです。

ってそこではなくて、何が凄いかと言いますと、
この活水中・高等学校は九州ではほぼ無名、長崎県大会で
も好成績を残した実績も無く一昨年まで部員不足でコンク
ール出場すらままならない学校だったんです。

そんな学校に昨年の4月に革命が起きました。

九州を代表する吹奏楽の超名門校「精華女子高等学校」
を35年間指導されてきた藤重佳久先生が精華女子高等学校
の定年退職を期に長崎・活水学院の教授に就任。
大学での音楽講義、中・高等学校、大学の吹奏楽部の音楽
監督を兼任する事になりました。

音楽特に吹奏楽は指導者で大きく変わると言います。
私も実際にその様な学校はこれまで幾つも見てきています。

「わかりやすく楽しく、目標を共有する」という指導論を
軸に1980年頃からの創部間もない精華女子を指導し全日本
吹奏楽コンクールには過去19回出場、平成26年には8回
連続・通算10回目の金賞を獲得。マーチングに至っては出
場した15回全てにおいて金賞というまさに吹奏楽界のレジ
ェンド。

就任5カ月での全国出場。
地区大会1回戦負けの常連校がまさかの甲子園という感じで
しょうか?
もちろんこの5カ月の間色々な意識改革、厳しい練習があっ
たと思います。先生を慕って転校してきたり入学して来た
生徒もいるかもしれません。
私立の学校なので施設や楽器にお金をかけたかもしれませ
ん。

でも楽器がいいから、設備がいいから、いい生徒が集まる
からでいい音楽は奏でられないのが吹奏楽なんです。

無名の学校を短期間にここまで成長させハーモニーを作り
上げるのは並大抵の事では無いと思います。
これから毎年藤重先生の指導を受けたいという生徒が全国
から活水学院に殺到するかもしれませんね。

昨年の全日本吹奏楽コンクールは銅賞でしたが、精華女子
高等学校で一つの音楽を作り上げ、活水中・高等学校でまた
新たなる音楽を作り上げようとする藤重先生。

いつか九州吹奏楽コンクール鹿児島開催の時、新しい藤重
先生の音楽聴いてみたいです。
これから楽しみがです♬
{/netabare}

〜凄く余談3〜劇場版公開前に7回目の視聴〜
{netabare}
うん!
何回見てもこんなに心が熱くなれる作品、
やっぱりユーフォです。
何でだろう…
「DREAM SOLISTER」を聴いてるだけで胸が熱くなり
涙が溢れてくる…

やっぱり私にとっては最高の出逢い。

何回見ても感謝の言葉しかありません。

原作・武田綾乃さん、制作・京都アニメーションさん、
「響け!」製作委員会の方々。
制作に関わった数多くのスタッフ、キャストの皆さん。

劇場でまた北宇治吹部のみんなに逢えるのが楽しみです。
{/netabare}
{/netabare}

投稿 : 2024/12/14
♥ : 199

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

意欲作(2016.11.2修正: 演奏は第二のアフレコ)

ストーリーについては既に多数コメントがあると思うので違う観点で。

本作は吹奏楽部のお話なので演奏シーンが多い。下手だった演奏が上手くなっていく過程とか、キャラクター毎の演奏技術の差みたいなものを「演奏自体で表現する」というある意味前代未聞レベルのことをやっている。

単に「主人公はあるいはライバルは天才演奏家」みたいな話ではないのがミソで、いわば楽器演奏が声優の台詞とほぼ同等のポジションといえる。
(2016.11.2追補: 劇場版BDのスタッフコメンタリーで、音楽プロデューサーの斎藤氏がまさにこのことについて話していた。あ、厳密には演奏を先に録るからプレスコですが。)

Blu-ray収録のメーキングなどを見ても場面毎に必要な演奏を収録しているし、作画の面でも楽器のピストンや運指が変にならないようにかなり注意していると思われる。

ロボット物の「メカ作監」にあたる「楽器作監」がいたり、吹奏楽自体を描くとすると本作以上の体制であたることはとても難しいだろう。「京アニだからやろうとしたし、できた」と言えるかもしれないが、後世の作品は本作続編も含めてと比べられると考えると、「大変なものを作ってしまったなあ」というのが正直な感想である。

2016.06.26追記:
そういえば本作では「画面が青枠で囲われていたら、実際に起きた出来事ではなく誰かの頭の中での想像上の出来事」という演出ルールがあって、これが徹頭徹尾キッチリ守られていたのが面白いと思いました。なんと、BD/DVD特典OVAの中でさえこのルールは守られていたりします。

逆に過去の回想であっても、作中世界の出来事であれば色調を変えたりはありますがこの青枠がつかない。これ、アニメの演出として意外と良かったんじゃないでしょうか。

…でも、あにこれのレビューだけでなくネット上で感想とかを読んでいてもこれを指摘した人はいませんね。みんな気づいてますよね?

2016.6.29追記: tvkでの再放送を告知するためタイトル変更
他の局はわかりません、すみません。← 再放送は終わってしまったのでタイトルから削除

2017.3.13追記:
2016年の1期目分に続き2期目分も総集編劇場版公開が決定とのこと。祝!

2017.8.25追記: NHK BSプレミアムでの再放送を告知するためタイトル変更
NHKBSプレミアムにて「響け!ユーフォニアム」の放送が決定しました!

【放送局】
NHKBSプレミアム
【放送日時】
本放送:10月1日より(日)前7:30~7:54(全14回)
再放送:10月6日より(金)後11:45~前0:09

2017.8.26追記:
地上波放送されなかったBD&DVD 7巻収録「かけだすモナカ」も第14話として放送されるようです。

2017.12.19追記:
いよいよBSプレミアムでの放送も12/24が最終回です。その直後に続けて番外編「かけだすモナカ」を放送ですね。

2018.1.17追記:
とっくにNHK BSプレミアムでの再放送は終了していましたが放置していましたので、レビュータイトルから再放送告知を削除しました。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 179

56.8 3 コンクールでチューバなアニメランキング3位
金色のコルダ Blue♪Sky(TVアニメ動画)

2014年春アニメ
★★★★☆ 3.2 (127)
727人が棚に入れました
原作:コーエーテクモゲームス「金色のコルダ3」、キャラクター原案:呉由姫「月刊LaLa」(白泉社刊)、総監督:於地紘仁、監督:名取孝浩、監修:ルビーパーティー、シリーズ構成:大知慶一郎、キャラクターデザイン:藤岡真紀、音響監督:菊田浩巳、、高木礼子、福山潤、小西克幸、内田夕夜、水橋かおり、伊藤健太郎、森田成一、岸尾だいすけ、谷山紀章、石川英郎、日野聡、宮野真守、増田ゆき、佐藤朱、、、

声優・キャラクター
高木礼子、福山潤、小西克幸、内田夕夜、水橋かおり、伊藤健太郎、森田成一、岸尾だいすけ、谷山紀章、石川英郎、日野聡、宮野真守、増田ゆき、佐藤朱、岡本寛志、山本圭一郎、細谷佳正、三浦祥朗、清水理沙、大原さやか、堀内賢雄

ホワイトマウス さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

恋愛だけじゃない、成長のドラマ

春アニメでなかなか見れなかったのですが、ついに視聴しました。あにこれでは評価は低いようですが、私は主人公のかなでが現状を抜け出して成長していく姿と、それをドラマチックにオーケストラ演奏が流れていく映像がとても素敵だと思いました。ほんと、音楽は美しいですね(*^-^*)

ただ、かなでをとりまくハンサム男子が多過ぎて、名前がとても覚えられないですけど(^^;)

(私は、サントラの内容が良くって、さらに演出が良いアニメにはまっちゃう人間です。単純かもしれませんね♪ 以前、私は合唱部に所属していて、オーケストラといっしょに歌ったことがあるんですけど、とっても感動しました。)

この作品に期待しているのは、恋愛は多少描いて頂いてもいいけど、それよりも、かなでの才能が少しずつ開花していく姿をドラマチックに見せて欲しいなと思っています。

それに、オーケストラの演奏、いっぱい聞きたい!

投稿 : 2024/12/14
♥ : 39

にゃっき♪ さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.8

it is better to wear out than to rust out

女性の主人公が高校の仲間とアンサンブルで音楽コンクール優勝を目指す物語。

原作が女性向けの恋愛シミュレーションゲームという事で、女性だけのチームひとつを除いて、チームメイトやライバル校の生徒などイケメンの男ばかり登場する作品で、個人的には髪の色や方言でしか判断できないばかりか、挑発的だったり軟弱で不快なキャラも少なくないので視聴を続けるのが辛かったです。

主人公は特定キャラに恋愛感情を持たないのがお約束なのでしょう。どの男性キャラに誘われても、プールやスタジオなどどこにでもついていきますし、相手の一生懸命には自分も一生懸命に応えるだけしかないのに、相手に負けられない理由があると、動揺していじいじ悩んだりします。

現実問題、確かにわざと負けたり手を抜くことは少なくないです。
会社の付きあいで、上司や取引先と一緒にゴルフに出かけたら、相手の気分を害するわけにはいきませんし、カラオケで歌の下手な人がひとりでもいれば、他の人が歌いやすくなり盛り上がります。
子供相手にわざと負けてあげないと、子供がやる気をなくしてしまうのを心配する親がいるのも普通にある事です。
こんな場合にあってはならないのは、わざと勝たせてもらっていた事が相手にバレてしまう事でしょう。一生懸命を演じて自然な形で負けるのは、勝つ事より遥かに難しいように思います。

音楽コンクールですが、課題曲があるわけでもなく、編成の違ったアンサンブルなのに、トーナメントで二校ずつ対戦して白黒をつける方式です。トーナメントは得点競技だから成立すると制作側がわかっていないのでしょうか。
演奏の出来不出来が演奏者のモノローグや観客に感想を言わせないと説明がつかないのは仕方がないにしても、採点競技を描くのに、主催者や採点者の顔が見えないのも違和感があります。炎天下で練習したり、他人の楽器に平気で手を触れようとしたり、演奏で対戦相手を絶望の淵に落とそうとする演奏家がいたりするのも含めて、制作側にはもっと演奏や楽器に対する理解ある作品を送り出す事に努めて欲しいと思います。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 28

ローズ さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.9

のだめ劣化版乙女向け作品の限界

主人公でメインヒロインの小日向かなで(こひなた かなで)は差出人不明の「お前はここで終わるのか?」という手紙を受け取る。
横浜でコンサートが開かれ、そこで全国規模の高校生が対象になる大会があると発表される。
音楽に力を入れている星奏学園へ転校する事となり、幼馴染と共にオーケストラ部に入り全国優勝を目指す事となった。

オーケストラ単位での演奏で順位を決めるのは難しいと思います。
うる覚えの記憶ですが、金賞・銀賞・銅賞などに表彰するコンクールもあります。
本来は楽しむための音楽なのに、いい順位や金賞のために演奏するのは疲れそうです。
自分にはクラシック演奏の優劣を決めるような音感が無いので、あまり作品に対して感情移入できない事もあるのですが^^;
全国を狙っている吹奏楽部の練習が厳しいは分かるので本来ならスポ根要素もありそうですが、本作品には無いですね。

登場人物は主人公の女性を除いたらイケメンの男だらけ。
元々、乙女向けゲームが原作なので仕方が無いのですが、視聴している人が女性であれば目の保養になるのでしょう。

たしかにヴァイオリンなどクラシックによく使われる楽器が登場します。
ただし演奏している姿と音がバラバラ。
静止画の時もあります。
演奏にあわせて作画をするのは難しい事と分かっています。
予算の少ない深夜アニメにキチンとした作画を求める事は酷というもの。
分かっていても、あえてスルーしてあげましょう。
それにしても演奏中に奏者や観客が別世界へ行ってしまうのには笑ってしまいましたw

甲子園のような1対1の音楽合戦。
オーケストラを全員使わない少人数の演奏。
大会に規定があるのでしょうが、つまらない制約で縛っています。
架空の大会なので原作ゲームの思いのまま。
おかしいと指摘しても、このまま続けるのでしょうね。

調べてみると本作品よりも前にアニメ化された前作があるそうです。
ただ、乙女向けゲーム原作という事が変わらないので、自分は積極的に見る事は無いです。

演奏よりも人間関係や心理状態が重要。
一体、何の為に新しい大会を開催するのか分からなくなる作品でした。

投稿 : 2024/12/14
♥ : 22
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