ブリキ男 さんの感想・評価
3.8
サイボーグ009 悪魔編
「サイボーグ009VSデビルマン」と、タイトルからして昭和臭漂う超強引企画(笑)
冒頭はデビルマンのジンメン編、サイボーグ009のミュートス・サイボーグ編からの抜粋。作品紹介を兼ねたショートエピソードを経て、オリジナルストーリーが展開されます。
デビルマンの原作者、永井豪先生の承諾の元で制作されたアニメではあるものの、同先生は企画段階でちょこっとだけ参加しただけで、本編にはほぼノータッチ。インタビューによれば、アニメと漫画は一緒にならないとはっきり自覚しているため下手に口出しはしないとの事。ごもっとも(笑)
近年発表されたサイボーグ009の続編「009 RE:CYBORG」にあまり好感が持てなかった所為もあって、この企画についても発表時に一瞥しただけで、特に興味を示すわけでもなく、無視を決め込んでいたわたしですが、最近話題になっている「DEVILMAN crybaby」の視聴に先立って、その後では絶対に見られない作品だろうと踏んで、思い切って視聴に至った次第。いざ蓋を開けてみればこれがなかなか面白い!
それもそのはず?ぐぐってみて初めて知ったのですが、監督を務めたのは平成版009「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」や「真ゲッターロボ 世界最後の日」など、石ノ森章太郎、永井豪両先生の作品の映像化をいくつも手がけた経験のある川越淳氏。なんともはや適任中の適任のお方でした。過去に得たノウハウを生かし、両作品の世界観をやたらと壊す事も無く、それらを上手に丁寧に合成しているという趣でした。
作中の雰囲気、全体の大まかな印象としては、サイボーグ009の世界観と構成をベースに、デビルマンの設定を重ねたという感じ。デビルマンが弱め(色々な意味で)。元々サイボーグ009にはSF作品として、オカルト的なものを科学で解明する類のエピソードが多数あるので、一見無茶な試みの様に見えてこれが案外しっくりきました。
原作再現度の面で見ると、ストーリーに占める比重の重さとは裏腹に、ビジュアル的にはデビルマンの方が良く表現されていて、009の方がオリジナリティ強めです。
元々期待度が低かった所為もありますが、意外や意外、原作や過去の劇場版、TVシリーズへの敬意が感じられるオモシロ作品で、ゲームのスパロボやマーブルコミックスのコラボ映画を見る感覚で、気軽に楽しむ事が出来ました。
レイガン一斉射撃とか、ジェット・リンクの加速装置、三段変速などのワードに反応する人なら、きっと童心に返って、見て笑って、小躍りしてしまうはず。
良質のエンタメ作品になっていると思います。
※:タイトルの「悪魔編」はサイボーグ009の「天使編」のもじりです。009にはSF作品ながら、神話や伝説、オカルトを題材としたお話が一杯あります。