ようす さんの感想・評価
3.6
薄暮は特別な景色だった。だけど、あなたがいる景色のほうがもっと特別になった。
福島県いわき市を舞台とした、
山本寛監督による「東北三部作」の最終章。
東日本大震災によって、
心に負うものがある二人の高校生が主要人物です。
といっても東日本大震災のことが深く描かれるわけではなく、
「体験した」と語る程度のものですが。
50分程度の作品です。
● ストーリー
小山佐智(こやま さち)は高校1年生になった。
高校では音楽部に入り、
小さなころから続けているヴァイオリンを続けることにした。
高校生活の楽しみは、帰り道。
一人で田舎道の夕暮れを味わうことだった。
ある日、いつも帰り道のバスで一緒になる少年から声をかけられる。
美しい夕焼けを描くのにいい場所を探しているのだという。
彼の名は雉子波祐介(きじなみ ゆうすけ)。
彼は震災で帰宅困難区域からいわきに避難してきており、
今生きてるこの場所を書き留めておくために絵を描きはじめたという。
そうして二人はバス停で待ち合せたりLINEをしたり、
距離を縮めていく。
物語に大きな起伏はなく、
薄暮の景色が好きな女子高生の、恋愛と青春を混ぜ合わせたお話。
こういう恋愛したかった、なストーリーでした。笑
なんとなく気になって、
ふとしたきっかけで話すようになって、
どんどん好きになって、
そして…
という展開。
すべてが順調だったわけではないけれど、
恋の一番楽しいところを切り取った感じです。
佐智が主人公なので佐智目線のお話ですが、
雉子波くんのほうが積極的にアプローチしているので、
彼の方に焦点を当てるとより恋愛色強めのストーリーになりそう。
たぶん相当悶えていたと思うよ、彼。笑
≪ 自然の風景 ≫
自然には不思議な力がある。
眺めて、包まれているだけで心を癒してくれる。
佐智は文化祭に向けて四重奏を練習するも、
先輩にできていないところを指摘されてばかりでうまくいかない。
そんなふうにもやもやしたときには、
このバス停の風景に癒されるのです。
私もまさに高校生の時に同じようなことをしていたなあ。
吹奏楽部で、演奏がうまくいかないことなんてよくあることで、
もやもやしたときには河原へ寄り道。
わざと川沿いに帰って遠回りして。
でもそうすると不思議と家に着くころにはすっきりしてるんですよね。
そうして何度心を救われたか。
だから佐智の気持ちはすごくわかる。
残念ながら胸キュンな出会いはなかったですけれど。笑
薄暮って意識して見たことがないけれど、
夕暮れにゆったり眺めてみると心癒されそう。
● キャラ&声優
佐智を演じるのは桜田ひよりさん、
雉子波くんを演じるのは加藤清史郎さん。
二人ともどちらかというと淡々とした話し方でした。
そういうキャラクターでもあるから、
合っていると言えば合っているのだけど、
どうもセリフがすっと心に残りませんでした。
周りのキャラは安定の声優さんたちだったため、
食われがちだったな…。笑
特に佐智の友だちのひいちゃん。
キャラが面白いのもあったけれど、
演じる佐倉綾音さんが力入ってて好きでしたw
演技としてもキャラとしても、
完全に持っていってたよ。笑
● 音楽
【 主題歌「とおく」/ AZUMA HITOMI 】
美しい曲と歌声でした。
「薄暮」というテーマにぴったり。
だけど良くも悪くも普通で、
こちらもあまり印象に残らなくて…。
なんだかもったいなかったです。
● まとめ
全体的に大きな起伏はなく。
がっつり本気に部活しているわけじゃないけれど、
目標に向かってまっすぐで、
本番を終えた達成感というのはいいものですね。
演奏が終わって、
立ち上がってふらつくのとかリアル。
(私もよくやった。笑)
恋愛に関しては、
振り返ってみると佐智は特に何も頑張ってないのよね。笑
{netabare}
気になった相手からアプローチ受けて、
相手に別に思っている人がいるんだと知ってショックを受けて、
でも最後にはあなたが好きだと告げてもらって嬉し泣き。
{/netabare}
恋愛慣れしていない感じの雉子波くん、
頑張りました。
目線が合わなかったり震えていたり、
そういう描写がわざとらしくも見えたけど、
初々しくてなんだか微笑ましくもありました。
障害もなく流れる恋愛ものが好きなら、
この作品は合うと思います。
逆に、困難を乗り越える描写が欲しい人には、
かなり物足りなく感じるでしょうね。
時間も短いですし。
私は嫌いじゃなかったです^^