ギクシャクで三角関係なTVアニメ動画ランキング 5

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画のギクシャクで三角関係な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月27日の時点で一番のギクシャクで三角関係なTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

87.0 1 ギクシャクで三角関係なアニメランキング1位
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(TVアニメ動画)

2020年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (747)
3334人が棚に入れました
過去のトラウマと、独自のひねくれた思考回路によって「ぼっち生活」を謳歌しているように見える比企谷八幡は、ひょんなことから生活指導担当教師、平塚 静に連れられ「奉仕部」に入部する。同じ部に所属する息を呑むほどの完璧美少女・雪ノ下雪乃や、クラスの上位カーストに属するギャル・由比ヶ浜結衣とともに、クラスメイトの人間関係の問題の解決から生徒会の手伝いに至るまで、数々の案件をこなす毎日をすごしていた。季節は移ろい、春。雪乃から最後の依頼を受けた八幡と結衣。3月の卒業式を控えた中、いろはからブロムの協力を求められ…。― 本物を求めた八幡は3人の関係を変えていく。果たしてこの先、彼の高校生活はどんな結末を迎えるのか!?

声優・キャラクター
江口拓也、早見沙織、東山奈央、佐倉綾音、悠木碧、小松未可子、近藤隆、檜山修之、柚木涼香、中原麻衣、井上麻里奈、ささきのぞみ、小清水亜美、堀井茶渡
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

正三角形の三角関係

原作未読


うむ終わった。3期相当『俺ガイル・完』は全12話。1期からの続きもんで足掛け計38話で完結です。
ラノベはやたら長いタイトルが跋扈していて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』例外なく長いやつです。たいていはツカミだけのタイトルで中身は別物ですが、本作は看板に偽りなし。

2期で 「お~青春ラブコメだね~」
3期で 「う~んまちがっているね~」

となることはお約束できますのでうっかり1期2期未視聴の方はぜひ振出しに戻ってここまで楽しみながら歩いてきてくださいね。
ラブコメが大きく動き出した2期最終話を受けての3期はこれまでの群像劇っぽいところからより主人公ら個々人の関係性にフォーカスされます。もう奉仕部+αで三角関係しかやらない勢いですね。
人となりは2期までで明らかになりました。ざっと、理性と感情の化け物が揃っていて理性カテゴリに八幡と雪乃。感情カテゴリに結衣となります。理性の化け物二人の緩衝材としてガハマさんは機能しており、彼女がいなければ早晩奉仕部は崩壊していたことでしょう。では似たもの同士八幡と雪乃の決定的な違いは自意識の有無。面白いのは結衣で1期の頃から成長して自分というのを持てるようになった。自意識それあるーカテゴリでは2期終わる頃には八幡と結衣が入ることになります。
ちなみにこの組み分けは陽乃の「理性の化け物」あらため「自意識の化け物」だね、と八幡を評したことに由来します。

    理性   感情   自意識   {netabare}気持ちを言葉にすること{/netabare}
八幡   ◎    ×     ◎    {netabare}  下手{/netabare}
雪乃   ◎    ×     ×    {netabare}  下手{/netabare}
結衣   ×    ◎    △→○   {netabare}  下手{/netabare}

中庸の△や○が無いといいますか、スキルチャートを作れば歪な五角形ができそうな三人組とみてよさそうです。だからこその面白さが本作の持ち味です。
登場人物もめんどくさいですけど抽象的な会話劇は同じかそれ以上にめんどくさい。自分は物語を紐解くのに登場人物相関図を頭に描きながら楽しむクセがあるんですがこの物語ではこんな感じ。合ってるかどうかはわからんです。違ってたらごめんなさい。

もう一つ。言ってることがわけわかんない時は言ってることよりもやってることを重視してます。言動より行動ってやつ。見当違いも多いですけどね。
{netabare}※漫画喫茶!?では隣同士肩にもたれかかる距離感だったのが、後日公園のブランコでは距離を取って座ってる…みたいなそういうとこ。{/netabare}

さらにもう一つ。概念として面白かった“本物を知りたい”について。
互いを出し切っても崩れることのない関係性みたいなものでした。
自己の欲求を追求すると壊れてしまう関係。これすなわち偽りの関係。
自分を偽って維持できる関係。これもすなわち偽りの関係。
大人であればあるほど、『本物』は遥か遠く手の届かないものであることを痛感させられます。若者も直感的には気づいてる。それでも求めてやまない、やはりこの年代ならではの心情の吐露なんです。

こちらを希求して止まないのが主人公比企谷八幡でした。どうやら折り合いをつけそれっぽいものを手に入れそうなところまで来ています。
同じく希求して止まない(…のだと思う)のがおそらく雪ノ下姉の陽乃。なんとなくこじらせたまんま大学生になっちゃった感ありでこれまで同様にちょっかいを出してきます。


まーあくまで一解釈ではありますが軽くおさらいでもしてから楽しんじゃいましょうという作品。
終わってみて思ったのが八幡、雪乃、結衣の関係って各自二方向に等分のきれいな好意の矢印が出ている正三角形のかたちをした三角関係だというのに気づきました。だいたい矢印は片方だったり短かったりするものを三角関係だと思ってきた人生だったのでこういう関係もあるんだなあと思った次第です。

もしかすると『本物』の関係ってこういうことなのかもしれない。
そんな錯覚を覚える青春ラブコメの秀作です。
別の作品でめんどくさい女性は魅力的だが男性の場合はただただめんどくさいみたいなこと書いて今の今も基本的な考え方は変わりませんが、男女ともにめんどくさくても面白いと思わせてくれた作品でもありました。


なお作中頻繁に出てきた3期のキーワード{netabare}“共依存”{/netabare}は結果的に無視しとります。

{netabare}「うがった見方をすればそう受け取ることもできなくはないくらいの話だ」
「君も雪ノ下も由比ヶ浜もそんな関係性ではないよ。共依存なんて簡単な言葉で括るなよ。君の気持ちは言葉一つで済むようなものか?」

絶好のタイミングでその時に1番欲しい言葉をピンポイントで投下する平塚先生についていけばよし。{/netabare}




※軽めの余談

■平塚センセから浮気しそうになりました

いろはすを凌駕するほどあざとかったのが作り手さんだった気がします。

あざとい?:{netabare}ガハマさんに肩入れしてしまう仕様{/netabare}
CASE1:{netabare}表情の作画カロリー消費っぷりは登場キャラ屈指{/netabare}
CASE2:{netabare}モノローグの度に締めつけられましたよ{/netabare}
CASE3:{netabare}ヒッキーとのデートする時間長かったよね{/netabare}
CASE4:{netabare}CMでまで白無垢着させた上に「わたし今が一番幸せだよ」とか言わせちゃダメ{/netabare}


■めんどくさかったです(褒め言葉)

1.{netabare}1期:「どうせ何を言っても伝わらないし関わらない」と卑屈さが全開
 2期:何を言っても壊れないor何も言わなくても通じ合う関係こそ本物だと信じる
 3期:ごちゃごちゃ言ってないで“伝える”“関わる”努力をする

 こんな若者の成長をこねくり回しながら描いたシリーズといえましょう。{/netabare}

2.{netabare}いろはすの「○○です。ごめんなさい」が段々YES寄りに。周囲の人たちも充分めんどくさい。{/netabare}

3.{netabare}結局「スキ」と言ってたのは我らが平塚静先生だけだったぞ。あーめんどくさ。{/netabare}



視聴時期:2020年7月~9月 

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2020.10.01 初稿
2021.08.01 修正

投稿 : 2024/12/21
♥ : 65
ネタバレ

tag さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

比企谷君、本物は見つかったかな?+裏バージョンレビュー

1期、2期のレビューを更新するうち、3期には裏バージョン(ネタバレ本音バージョン)のレビューが必要と思い。加筆、評価替えしました。
見ていない方は絶対開かないでください。

ここから裏バージョンレビュー
{netabare}
3期通しで見ると、雪乃と八幡の間の関係は、そのセリフ通りに受け取れず、見た目と実態がかけ離れているのではないかと思える部分が多々あります。
見た目は最後にやっと恋人同士ということですが、これも、実質的には婿養子決定と取れなくもないです。以下の1-3期通して二人の関係変化ポイントと“本当の”状態を考察したものです。

1期1話の奉仕部での初対面会話が弾む(見た目は弾んでいないが)時点:
⇒友達承認(セリフは速攻却下だが)
1期、普通は男子と一緒に絶対行かない雪乃が自ら誘って八幡とモールに買い物に行くシーン
⇒友達以上の存在であることを承認(ただ買い物しただけににしか見えないが、一緒に買ったエプロンはずっと使い続ける)
1期12話で再び奉仕部で友達承認を求める八幡を拒否るがウインクで返す雪乃時点:
⇒好意(好き)の表現(再び友達承認さえ拒否ったように見えるが、雪乃のウインクは相当な勇気が必要)
2期設定ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの降下ポイントで袖を指で摘まんだ時点:
⇒雪乃からの恋人認定(単に恐怖から摘まんだようにしか見えないが、その写真は枕元にずっとしまっている)
3期10話でプロム後片付けから帰る八幡の袖を“握って”離さなく、ウルウルした瞳で見つめる時点:
⇒雪乃からのプロポーズ(言葉では別のことを言わんとしているように見えますが、行動は真逆の意思を示している)しかし八幡は優しく立ち去る
3期11話で八幡の5分間告白を受諾時点:
⇒八幡からのプロポーズ受諾(これは言葉と行動にしているので明白)
3期12話のほぼ無双している雪乃
⇒婚約・結婚式(八幡の婿養子入り)と新婚状態(雪乃を束縛する問題は全て解け、素の彼女が出ている、言葉と行動の乖離は消失)

これらは、ハッピーエンドに向かう、ポジティブ面を中心にシナリオを追ったものです。この見た目と本音の乖離が物語を面白くしているのですが、同時に難しくしている面もあります。その難しさの源泉がこの乖離でもあり、ネガティブ面のシナリオです。それを解く鍵が雪乃と陽乃の心理状況にあります。

・雪乃はなぜ、こんなに分かりづらい(面倒くさい)のか?
多分、これが、この物語の最大プロットであり、面白さの源泉です。その割には暗く、苦しいプロットではあります。
家族との関係性に問題があることは陽乃や平塚先生の会話などに1-2期にも表れますが、雪乃の口(特に海浜公園からの帰り道)から語られるのは3期になってです。また、陽乃の口からも語られます(海浜公園の夜、八幡を待ち伏せて)。ここから雪ノ下家の家庭環境、そこから来る、雪乃の心の問題が見えてきます。

・家業は姉が継ぐとなっており、自分はほったらかしで、重要視されていない、期待されていない(と思っている)
・期待されていない人生を過ごしていたので、強い承認欲求があり、期待される姉を後ろ姿を追っていた。
・自分は父の職業に興味を持っている。でも、家族に言ったことはないか、言っても取り合ってもらえなかった(しかし、これも承認欲求から来るもので、ほんとに姉、父と同じ方向に行きたいか微妙)
・結局、子供のころからの、ある意味“ネグレクト”で、普通持っているべき最低限の、「家族からの承認、信頼と安心」をもらっていない。心のよりどころがないため、自我が、とても弱く、攻撃されないための鎧をかぶっている。
・姉のコピーを目指すことでしか「自我の鎧=アイデンティ」を保てなかった。それでも満たされることはなく、常に自分(自ら納得したアイデンティティ)を探している。承認不足から自信がなく、これまで作りえなかった。
・これが、対人恐怖や、恐怖から逃れる(自分を守る)ために心とは裏腹の言葉(論理的、攻撃的ストレートトーク)でしか話せなくなった。
・軽度の解離性同一性障害ともいえる。「言葉として出る対人恐怖からの防御をつかさどる」人格1と心の中の本音としての「強く承認、信頼、安心を求める」人格2が同時に存在している。
・本来は一つになって(最終話の雪乃)、感情と言葉が一致し、強固な承認、信頼、安心に基づいてアイデンティティ作りを始める必要がある。最終話の段階でのアイデンティティはまだ形成されていないが、二人で作ってゆく準備はできている。
・そのため、雪乃の反応が劇中で非常に分かりづらい。言葉と心情が別なので、見たまま、聞いたままで理解すると、本音を見誤ることになる。
・一方、正直でストレートな対人関係(=本物)を探し続ける八幡にとってはとてもフィットし、最初の会話で好きになっていた。しかし、だんだんと、雪乃の心の喪失を知り、恋ゆえに、それを埋めて、助けたいと思うようになった。
・初めての相手からの好意を受け取った雪乃は、人格1だけで普段は過ごすのですが、八幡との間では人格2が出て来るようになります。「それが楽しかった。生まれて初めてだった」と3期で述べます。一方、乖離現象が明確になり、これがこの物語の理解を難しくします。3期の乖離は激しく、かつ分かりづらい。
・この乖離現象が端的にでるのは3期最初のプロムの終了後、帰ろうとする八幡を雪乃が追い、袖を掴んで止めるシーンに現れます。言葉では、「だから。。(わたしたちの関係を絶って、結衣の願いをかなえて、自分は大丈夫だかから)」と言うのですが、心の反映である手は、八幡の袖を掴んで放しません。八幡に腕を触られてはっと気づくのですが、それでも放しません。八幡はこの段階ではまだ、自分を何をすれば、雪乃を救えるのか分からないのでそっと指をほぐし、振りほどきます。八幡にゆっくりほどかれた腕を抱えて呆然と立ち尽くす雪乃。もう少しで人格2だけで言葉が出そうでしたが、それでも無理でした。八幡は問題の根深さを強く再認識し、最終章へと向かいます。
・結局、人格が統合されることは八幡の告白までないのですが、人格2を八幡には出せるが故に、返って言葉と心の乖離が頻発するシーンがこの物語には多い。それが2期で関係がどん底まで下がった時に雪乃の言葉「(自分を)分かってくれていると思っていた」に集約されます。人格2が出ているのに、信頼する八幡には理解されていない、やはり自分の心の喪失は埋めてもらえない。しかし、この後も八幡に期待し続けます。このような関係修復と関係破綻を繰り返しが物語を作り出します。
・八幡にとって、雪乃との単なる関係のみが本物ではなく、雪乃の心の喪失を埋め、助け、助けられる関係になることまでが、彼の求める本物であることに、周囲の助けもあり徐々に気づき、ラストの告白へとつながるということを、観衆に伝えたかったのではないかと思います。
・本来、家族が普通に埋めているはずの心の基盤となる承認、信頼、安心を彼が埋めなきゃいけないので、彼は「全部やる」と告白する必要があった。つまり、雪乃の家族になる覚悟を見せる必要があった。
・そして合同プロム終了後の「好き」発言は、八幡の長い長い告白により、雪乃の基本的承認、信頼、安心が満たされ、人格が統合され本当の雪乃になれたことを意味します。

陽乃“も”、なぜ、こんなにめんどくさいのか? ~平塚先生の最終講義、八幡の告白内容の理由へ続く~
・既に分かるかと思いますが、アイデンティティを強固に持っているように見える陽乃もそれは母親から強制されたモノで、自分のモノではありません。そのようにした母親を憎んでいます。
・「いろんな事を諦め、大人になる」と自分に言い聞かせ、雪乃ほど解離性同一性障害にはなっていないように見えますが、症状は同じです。
・葉山との会話で葉山が「そんなに(母親)を憎んでいるの?」と問い「いえ、大好きよ」と言い返します。言葉と心が乖離していることを陽乃は認識しているのでしょうが、一致させられません。
・1-2期では、雪乃に自己・自我の形成の問題を指摘し続ける嫌な存在です。3期では共依存に基づく八幡との関係を絶ち、自己・自我を作りなさいと脅迫します。これらは全て母親との関係における陽乃自身へのメッセージです。八幡を母親と言い換えればよいだけです。妹は自分と同じになってほしくないと思いながら、結局、自分と同じなるよう強要し続けます。ですが彼女も解離性同一性障害です、言葉と本音は違うはずです。
・そんな陽乃を平塚先生は高校時代から知っていて、お互い強い信頼があるようです。海浜公園の夜、タバコを吸う誰かと深酒していますが、これは平塚先生だと推測されます。平塚先生は雪乃と同様に陽乃も救いたいと思っています。劇中でほぼ描かれませんが。平塚先生と飲んだその夜、八幡との会話ではお姉さんとして、「雪乃の考えを尊重してほしい」と言います。同時に「八幡のようなお兄ちゃんが欲しかった」ととも言います。「君は私と同じで酔えない」とも言います。平塚先生との深酒により、いつになく本音をしゃべっています。
・この三つの陽乃の言葉は、「雪乃の心の喪失を埋めようとしているのを理解してほしい。」「自分も同様に喪失している」「君なら私同様、この状況を理解できるよね」と読み替えることができます。
・この後、陽乃はいつもの調子に戻り、「共依存から逃避を辞めるため八幡との関係を絶つべき」と言う論調に戻ります。しかし、最初のプロムの終了後の八幡との会話では、「本物の関係になるため、共依存を乗り越えろ、それが人を傷つけることでも」と言うトーンに変わります。そして最後の言葉は「本物なんて、ほんとにあるのかな?(私も本物が欲しかったな)」です。やっと陽乃の言葉と心情は一致し八幡にメッセージを伝えます。辛うじて、陽乃の本音は「自分みたいな共依存の中でいろんなものを諦め、偽物になっちゃいけないよ」だと取れます。
・この直後、平塚先生による八幡を告白へと誘う最終講義がバッティングセンターであります。八幡は共依存を乗り越える言葉(「全部やる」ことで雪乃の基本的承認、信頼、安心を作る=家族になる)を紡ぐことになります。長い長い告白ですが、言葉のほとんどは、雪乃の心の喪失を埋めるため、自分の全てをささげると、何度も何度も繰り返します。ひたすら“渡す”ことだけです。普通に考えれば、恋愛や家族関係は渡し/渡される関係にも関わらず。それは満たされてからでよいと八幡は思っています。雪乃は普通の「好き」と言う言葉を求めているように見えますが、八幡はしません。何が必要なのか、100%分かっていたのだと思いますし、それには覚悟を見せる必要(何度も繰り返し、雪乃に自分の本心であると安心させる)があることも理解していました。
・劇中では、分かりにくいですが、陽乃と平塚先生の連携プレイです。二人はこの事を事前に話していたのだと思います。

言葉と心の乖離がこの物語のメインプロットであり、それが故に、観衆は、なんで、そう言っていたじゃん?と混乱する。なんとなく、だんだんに素直になってきたねと喜び、最後の八幡の告白と雪乃の幸せそうな笑顔で救わるのですが、背景を深堀すると、中々に重たいものがあることが分かり、物語の理解を深め、また別の面白みを感じることができます。
{/netabare}
”裏”終わり、表バージョンレビュー開始

随分と、時間差で見てしまいました。1期、2期が中々に心に残り、3期は少し嫌な予感というか、2期の感想でも書いたのだけど、完結編は、ただのラブコメかもと思ったと言うのもあります。

結論から言うと、3期はただのラブコメではなく、”表題通り”のエンドロールのような、でもこの物語の主題に忠実なラブストーリーでしたね。悪い意味ではなく。

「本物が欲しい」と告白した主人公。1期、2期にわたる逆説的主人公の動機と行動という伏線があるからこそ、観衆の心に響きます。別に高校生だからでもなく、どの年齢でも、その”本物とは?”と言う問いは人生において、様々な場面で引きずり続けるから。

この完結編では、一気に登場人物たちの恋愛関係に焦点が移ります。ただ二人、この”本物”というものに強く引っかかる、主人公とヒロインたちの中の一人を除いて。

既にオジサン真っ只中の私も、少しの家族のことを考えました。物語中「共依存」というキーワードが出てきます。この共依存、Wikiによると。「アルコール依存症患者とその面倒を見る近親者との、相手がいなければ生きてゆけない、自分が必要とされている事の証、アルコール中毒という病でさえ、その状況を作り出してくれた必要なこと」と言った良くない事として説明されます。例えがアルコール依存症を題材にしているのでこうなるのですが、そうでは無いポジティブな事柄だったらどうでしょう?「共依存」と「恋愛、家族、夫婦、深い友人の間の関係」との違いは実は曖昧です。実際、Wikiでも精神的な病とは述べておらず、そう言う言葉・状況があると、それだけです。自分と家族の関係も「共依存」と呼べばそうだが、そんなに悪いものかねと、自問自答した次第です。(まあ、このワードも逆説的な引っ掛けではあるんですが)

主人公とヒロインの一人は「本物」と言うことを劇中、最も純粋に捉えようとします。なので、「共依存」という言葉にも強く反応してしまう。本物であるためには共依存から脱しなければならないと。

主人公が頬を自分で引っ叩くシーンがあります。そこで彼は、自分の本物の感情を吐露します。この感情は共依存といった”ラベル”を付けて納得する事じゃないと。(このきっかけを作ったのが、劇中、他のキャラから投げかけられた共依存という言葉なのですが。逆説的だな、これがまた。)

「言葉では伝わらない、言葉にしても伝わらない」と言う言葉が劇中頻出するのですが、一方、言葉は人の意識を支配する道具でもあります。「共依存」と言う”ラベル”を貼れば、そして最もらしい傍証が揃っていれば、本当はそうでなくても「共依存」であると信じてしまいます。知識と知恵があるからこその誤解です。今回は、こうした誤解を逆に活用、「ラベルを剥がす」という行為により主人公を一皮むけさせます。彼らしくない、言葉を尽くして、自分の感情を語らせる原動力とします。

さあ、ラベルをはがした主人公は、ヒロインの一人に向き合います。

実は、その前の回のシーンに、ヒロインは、主人公に図らずも接触してしまいます。その時、言葉ではこれまで通り、「関係を終わりにしよう」と言おうとするのですが、(実際は具体的なことは言ってなくて、「だから・・・」と止めている。両義的に取れるのですが。これまた面倒くさいですが脚本と演出の妙技でもあります。)実際のところ、彼女は、行動と表情で「本心=本物」を表してしまうシーン(作画、妙に気合入ってました。まさに両義的な顔をしてました。)があり、主人公は、多分、表情や行動で本心を分かっていて、それでも、その時は優しく拒絶します(この演出も中々!)。これまた、純粋に本物を追求し、ロジカルモンスターならではの反応(共依存を断ち切ることが、彼女のためである。自分は実のところ納得していなくても)で、非常に興味深いシーンです。

さて、ラベルを剥がした主人公のターンです。今度は、主人公がそのヒロインがやったシーンを上書き(これまた憎い演出です)します。しかし、今度はちゃんと言葉にして。でも「共依存」というラベルワードではなく、彼らしい、不器用で、何故かロジカルな言葉を尽くして(都合5分に及ぶ告白シーン)。ヒロインはちゃんと、ラベルワード(共依存ではないですよ。お互い共依存と言う呪縛を解いたからこそ効果を発揮する別のラベルワードです)を言ってと頼むのですが、本質追求&ロジカルモンスターの彼は言いません、いや、言えませんでした。彼には、このラベルワードを使うことに強い抵抗があります。自分の想いはラベルワードでは語れないと。まあ、ここはヒロインが折れるのですが、ヒロインはヒロインで負けず劣らずのパワフルな言葉で返します。

表題通りのエンドロールと申しましたが、物語はその主題に忠実です。主人公の彼らしい、とても誠意を尽くした告白でした。いやはや、自分(私のことです)の時はここまで言葉を尽くしたかな?主人公に負けず劣らずめんどくさい性格と自負していたのですが、反省しきりでした。でも、この物語らしい、「本物の告白」でした。

{netabare}
まあ、告白は、ほとんどプロポーズみたいでしたが、本物追求主義者の彼からすれば、そうなるのは避けられないかなと。そしてそれに返したヒロインもプロポーズ受諾でした。まあ、本物の告白って、やっぱりこれですかね。

追伸:
比企谷君、雪ノ下さんは、ちゃんと「好き」とラベルワードを言ったのだがら、やっぱ、君も、ラベルワードが嫌いでも、ちゃんと言わんとね!
{/netabare}

世の中がコロナですさんだ感じになっている今、ハッピーエンドの物語は良いもんです。

最終話のヒロインのその一人の”破壊力”が凄まじく、もう既にOver50ですが、かなり心と自らの切ない記憶を揺さぶられました(笑い)。思わず、再視聴。少し加筆し、評点を上げた次第です。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 27
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の残余

主要キャストの整理をしておこう。
冒頭から紹介もなくドラマパートである。

多様な価値観が生まれ広がり、
私たちは数多くの選択肢の前で躊躇している。
表現できないものから順々に、
私たちは自己の内に沈殿していく。
そんな葛藤が心に響くのであろう。
人との距離は接続でも切断でも、
間違ってしまえば瀕死の重傷であるのだから。

3話視聴追記。
良質な予感が既に漂っている。
キャラ造形が見事で配置も良い。
{netabare}今始めれば間に合うかも知れない。{/netabare}
きっと誰もが経験した青春の残余なのだ。

雪ノ下の葛藤を物語の軸に、
八幡の故意に間違える青春が描かれる。
{netabare}彼はそれを偽物だと呼ぶ。
大人たちは共依存から脱却し自立した生を願う。
自分であれ、青春であれ、
ここまで冷静に俯瞰できるのだろうか?
繊細な主題が浮かび上がってくる。
間違うことにどんな意義があるのかと。{/netabare}

最終話視聴追記。
もやもやと、燻り続ける青春は、
一定の方向へと道は開けたのであろうか。
{netabare}自分を偽り、思い悩み、悔やみ、
その先で心の隙間に残る貴重なもの。{/netabare}
やはり彼の青春ラブコメは間違えている。

あまりに秀逸なタイトルだと知るのです。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 62

69.9 2 ギクシャクで三角関係なアニメランキング2位
君が望む永遠(TVアニメ動画)

2003年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (554)
2961人が棚に入れました
白陵大付属柊学園3年生の鳴海孝之は、受験生でありながら特に進路も決まらずにいた。
親友の「平慎二」と「速瀬水月」はそれぞれの目標に向かって頑張っていた。そんな2人を見て徐々に焦りを感じる孝之だったが、お互いの関係は、これまで大きな波風が立つこともなく上手くバランスがとれていた。\nそんな彼らの輪の中に、水月の親友で控えめな少女・涼宮遙が入ってきた。
某日、孝之は学校の裏の丘に水月に呼び出されるが、そこに待っていたのは遙だった。そこで孝之はいきなり遙に「好きです」と告白される。彼女を傷つけることを恐れた孝之は、その告白を受ける。
そして運命の歯車は回りはじめる…。

声優・キャラクター
谷山紀章、栗林みな実、石橋朋子、上原ともみ、青木誠、浅井清己、吉田恭子、窪田聡子、ひと美、尼子真理、小林まりこ、川津泰彦、金野恵子、崎山健三、宇和川恵美

雛四季 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

最高の鬱アニメです。

文句なしに最高の鬱アニメでした。
最初の数話はかなりこそばゆい青春を感じれたのですが…。

とりあえず真のOPは必見。鳥肌モノです。

主人公のヘタレ具合に吐き気がして見たくない!っていう人もいるかもしれませんが、逆にそこがいい。
あの人間味ある、弱い孝之こそ君のぞの真骨頂です。

ただ話が重い上にちょっと展開が遅めな気がするので、サクサク見たい人には不向きかも。

個人的には最高ですが人を選ぶアニメでした。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 11

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

僕が望む恋愛もの(改良版)

お勧めシリーズ5作目。
本人の希望により匿名希望氏推薦。

2人の女性の間を揺れ動く可憐な男心を描いたお話。所謂三角関係。全14話。

ドロドロした話が見たいんよと言った時に差し出された一品。
自分は一途な純愛ものよりドロドロした愛憎劇が好きだ。

そういう意味では本作品は十分楽しめたが欲を言えばもうちょい修羅場があれば・・。

序盤、割りと静かな立ち上がりに油断させた所に急襲食らわすようなあの展開。
今が戦国の世ならそこで拙者の首は飛んでたであろう。
正直、結構軽い気持ちで見始めたのだが序盤の衝撃の展開からは先が気になってかなり惹きこまれていた。
とにかくストーリーの展開が抜群に上手くて全く飽きさせない。

こういう三角関係の醍醐味の一つに最終的にはどちらを選んでどちらを切るのか。
切られたほうはどうなってしまうのか、と言うのがあるがこのどちらを選ぶのかが全く予測出来なかった。
結局それが分かったのは全14話中14話目だった。
お前が鈍いだけやとか言わないでくれ。いやそういうことなら程よい鈍感さを持った人のが楽しめるかも。

もう1つの醍醐味に濃密な人間ドラマがある。
無論、所謂純愛ものと言われる作品にも人間ドラマは存在するがドロドロ恋愛だからこそ描ける人間の負の部分の描写があるからこそドラマにより深みが増す。
別に人の不幸と言うか修羅場見てウヘヘと笑いたいだけでドロドロ恋愛ものが好きなわけでは無いのだ。

全体として見てもそれぞれの葛藤、心理描写も秀逸で非常に完成度が高いという印象。
中盤辺りで、こりゃ名作だわと確信。
最終回、選ばれなかった方との最後の別れもその胸中を察すると心が無いと言われた自分ですらさすがに胸に来るものがあった。
こういうのも三角関係だからこそ味わえる感覚。

それと主人公がヘタレ優柔不断という評価がやけに多いのには多少驚きを覚えた。
断言出来るが自分がこいつと同じ境遇に置かれたら大体似たような行動を取るだろう。
これは、ある意味仕方ない。俺はそんな行動は取らないと胸を張って言える男が果たしてどれだけいるだろうか。
言うは易し行うは難し。
この主人公も十分苦しんだ。葛藤もしたのだ。只、良く言えば少し優しすぎただけなのだ。
その主人公も最後には男になった。感動の瞬間だ。
・・別にこの主人公から裏金掴まされたわけじゃない。

脇を固めるサブキャラたちも中々に魅力的だ。
主人公のバイトしてるやけにフリーダムなファミレスの女の子2人も暗くなりがちな物語の一服の清涼剤のような存在だし
店長やヒロイン「水月」の上司も主人公の親友も皆いいキャラだった。

しかしこの中に一際光を放つ人物がいる。
ヒロイン「遥」の妹「茜」だ。
この子がメインヒロインを食ってしまうくらい可愛い。
自分的には、この「茜」と「遥」との三角関係展開も見たかった。
本当に見たかった。何故見せてくれなかったのか。
姉妹のドロドロした三角関係。なんという美味しいシチュエーション。ウヘヘ。。

またこいつは推薦されたからってやたら持ち上げやがってとか思っちゃいけない。
見て頂けたら分かるがこいつは結構な名作。
恋愛ものってやつは、やっぱこうあるべきだと思う。
こういう三角関係から素敵な人間ドラマが生まれるんだ。

三角関係見ると吐き気がするという人以外には強くお勧めしたい。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 46

浩平 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

「人を愛する喜びと苦しみ、そして真実の愛を問う作品」

~あらすじ~
孝之は女友達・水月の紹介で、遙という少女と付き合うことになります。初めはぎこちなかったものの、徐々に恋人らしい感じになっていく二人…しかし、彼らの前にはある運命が待ち受けているのでした。


昼ドラのようなドロドロとしたアニメを見たい方にはオススメです。
またEDでとあるシーンが流れるのですが号泣しました。

OVAでifストーリーの「君が望む永遠-NEXT SEASON」と外伝の「アカネマニアックス」なる作品もあります。
本編を見た後、公式パロディとして見るのが良いかと思います。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 11

76.5 3 ギクシャクで三角関係なアニメランキング3位
イエスタデイをうたって(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.6 (482)
1752人が棚に入れました
大学卒業後、定職には就かずにコンビニでアルバイトをしている"リクオ"。特に目標もないまま、将来に対する焦燥感を抱えながら生きるリクオの前に、ある日、カラスを連れたミステリアスな少女―“ハル"が現れる。彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつて憧れていた同級生“榀子"が東京に戻ってきたことを知る。

声優・キャラクター
小林親弘、宮本侑芽、花澤香菜、花江夏樹、鈴木達央、坂本真綾、寺島拓篤、洲崎綾、名塚佳織、堀江瞬、小野友樹、喜多村英梨、前川涼子、遠藤大智、大塚明夫、小形満、川島得愛、小林千晃、田中宏樹、西山宏太朗、藤原夏海、本田貴子、諸星すみれ、天海由梨奈、村井美里
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

ゆらぎ(※配信限定エピソードを再視聴して)

アニメーション制作:動画工房、
監督・シリーズ構成・脚本:藤原佳幸、
副監督:伊藤良太、脚本:田中仁、
キャラクターデザイン・総作画監督:谷口淳一郎、
総作画監督:吉川真帆、原作:冬目景

作品タイトルと同じ、10話からのED主題歌が印象的だ。
ブルージーなギターからは60~70年代の薫り。
調べてみるとRCサクセションの
初期の曲のカバーだった。
発売はやはり1970年。
『イエスタデイをうたって』は、
ビートルズの『イエスタデイ』を歌って欲しいと
せがむ少女についての曲だ。
ちなみにビートルズの『イエスタデイ』は、
母を失ってしまった今の自分は、
失ってしまう前の昨日の自分とは
全く変わってしまったという深い哀しみの曲。
『イエスタデイをうたって』という作品のタイトルは、
原作の冬目景が最初に考案したものを
編集者にダメ出しされて思いついたものだった。

主人公は、大学を卒業しても自分探しのために、
モラトリアムな状況を続けている魚住陸生。
いかにも、ひと昔前の人物像だ。
ある日、鴉を連れた少女・野中晴(ハル)と
アルバイト先のコンビニで出会ったことで物語が始まる。

1話ずつの完成度がとても高い。
感情の機微を丁寧に掬い上げていく。
まるでオムニバス形式に感じるほど、
序盤は余韻を残しつつ完結し、次の物語へと続いていく。

ひと昔前の年代を感じさせる時代背景。
携帯電話がなく、黒電話やカセットテープなどの
グッズが懐かしい。コンビニに外人がいない。
若者の思考にも時代性を感じさせる。
自分自身が青春時代を過ごしたころなので、
余計に感慨深くなる。
視聴すると昔の感情が呼び覚まされる。

振り返ってみると、舞台となっている02年ごろは、
バブルがはじけたといえど、
経済的にはまだ安定していて生き方の自由度が広がり、
価値観がより多様化した時代だった。
私たちは自分に正直に生きることを望み、
本当に大切なものを手に入れようとあがき続ける。
自身の心に問いかけ続けるあまり、何もできなくなる。
でも、欲しいものが必ず手に入るとは限らない。
人はどこかで、その望みに折り合いをつけて
いかなければいけないが、それをできる人と
できない人にはっきりと分かれていく。
なぜかと言うと、いつまでも追い続けることが
可能なほど自由度が高いから。
だから、動き出しても、またすぐに
立ち止まってしまうことになる。

そんななかでも人は年を取るごとに
何かを得て、何かを失いながら変わっていく。
2度と戻ってこないものもある。
懸命に生きているときはそれに気づかない。
何かが終わっても、ただ寂寥感だけが積もっていく。
でも、私たちは進み続けていくしかない。

主要人物はほぼ4人だけ。
彼らは皆、長い時間をかけた行き場のない心を抱えている。
物語が動かないため、退屈だと感じる人も多いだろう。
しかし、停滞しているようでも
登場人物の心は、いつもゆらいでいる。

空気感の演出が抜群に優れている。
桜の儚い美しさ。一方通行の想い。
「死」を身近に感じる状況。
哀しみがこみ上げる瞬間。
二度とは戻ってこない日々。
そのときのシーンに応じた劇伴も効果的で、
観ている者の心を動かす。
繊細で大切なものが零れ落ちていく。
目や手の動き、仕種、ちょっとした沈黙。
心を映しているような描写だ。

彼ら4人はずっとゆらいでいるが、
周囲の人々は、決意して前に進みだす。
ハルの同級生の湊航一や陸生の元恋人の柚原チカ。
決着をつけて自身のなかに何かを見出す。
陸生自身も少しずつではあるが前進しようとする。

軸は4人のラブストーリー。
とはいえ、この作品の核の部分は、
陸生と榀子の心情のゆらぎにある。
自分の心の在りかをずっと探っている。
似たもの同士、受け身気質のふたりが
歩んでいく方向を見つけるために
真剣に迷い続ける物語といえるだろう。
そう考えると、納得感のあるラストだった。

陸生の気持ちのゆらぎは、
世田谷線の車内での独白に集約されている。
自分で自分の心が分からない。
正直さ、誠実さを突き詰めようとすると、
自分の本質がゆらいでいくように感じる。
それでは、どうしたらいいのか。
物事を論理的に考えるのではなく、
感覚的に捉えることだ。
自分の心がどこにあるのか。
もっとシンプルに考えるべきだ。

{netabare}ひとつ残念だったのは榀子の心の動きを
描き切れていないこと。
2話からずっと榀子の心模様を
繊細な描写で追ってきたのに、
最後の段階では、井の頭公園での陸生の言葉に
全て任せきりになってしまっている。
アニメを観ているだけだと、榀子がどのように
自分自身に決着を付けたのかが理解できない。
もちろん、想像することはできるが描写不足は否めない。
だから榀子だけが身勝手な女性に見えてしまうが、
個人的にはとてもリアリティがあるし、
現実の人物像もひとりふたりは思い浮かぶ。
作者がどのように捉えているのかは関係なく、
情の深いキャラクターだと思う。
原作は未読なので分からないが、
単純に尺が足りなかった可能性もある。
ラストに向けては、2話分くらいかけて
ふたりのやり取りを突っ込んで欲しかった。{/netabare}

タイトル面から作品を考えると、
ハルが主人公のようにも思える。
そもそも作者が最初に考案していたのは
「ハル」というタイトル。
{netabare}ハルは陸生に近づいたことで、
以前よりも臆病になってしまい、
自分が変わってしまったことを自覚する。
これは『イエスタデイをうたって』の詩にもつながる。
だとすると、この作品はハルや浪の変化を
目の当たりにした陸生と榀子が
それに押し出されるようにして
一歩踏み出そうとする物語とも言えるだろう。{/netabare}

原作の量からすると、1クールでは厳しかった感はある。
ショートアニメ&ラジオドラマで補完しているが、
若干の消化不良感は残った。
ただ、作品は全話を通して、とても丁寧な仕上がり。
それぞれの動きや言葉にリアルを感じる。
懸命に生きている人間の息遣いが聞こえる。

4人が歩み出す先にささやかな幸あれ。
(2020年7月4日初投稿)

原作を読了して(2020年8月9日追記)
{netabare}ここのレビュアーさんから、アニメとは大きな違いがあり、
とても良い作品であることを聞いて原作購入。
つい先日、読了した。

漫画を読んで再認識したのは、
アニメの完成度がとても高いことだった。
漫画を読んだ後に自分のレビューを再読したのだが、
この作品に対して感じたことは、
原作読了後も基本的には変わっていないし、
大切な部分は、ほとんどアニメでも
表現しているのではないかと改めて思った。
もちろん、漫画とアニメとは表現方法が違うため、
コマで感じることのできる微妙な「間」や
心情のゆらぎは、圧倒的に漫画のほうが優れている。
11巻も巻数があるので、登場人物も多いし、
人間関係も複雑になっている。
最初のレビューで書いたように榀子の心情について、
アニメでは圧倒的に描写不足。
しかし、それにも関わらず、私のアニメに対する感想は、
漫画を読んだ後でもほとんど変わりはなかった。
それは、凄いことではないだろうか。
アニメでは、漫画で登場する重要なふたりの人物を
完全にカットして物語を短くしているにも関わらずだ。

例えば同じように原作を短くしたアニメを視聴してから、
原作を購入した『はねバド』という作品がある。
放映時には原作が未完だったので、
全く同じ状況ではないが、原作を大幅にカットして
物語を再構築したことは同じだ。
こちらもアニメは、なかなか面白かったが、
作品としては全くの別物といっていいほど
原作とは違ってしまっていた。
再構築とは普通はそういうものだろう。
しかし『イエスタデイをうたって』は、変わっていないのだ。
作品をじっくり咀嚼して大切な部分だけを残して
アニメとして作り上げている。
スタッフの多くは原作のファンという話を
どこかで読んだが、それは原作とアニメを
両方味わってみれば、とても納得できる。

漫画とアニメにおける大きな違いは「時間の流れ」だ。
この物語のひとつの軸は、陸生と榀子が出会って
別れていくまでの話になる。
長年、片思いしていた陸生が榀子を手に入れながら、
そこで葛藤して別れを決意するまでには、
劇的な出来事でもない限り、それなりの時間や葛藤が必要だ。
ところがアニメでは、付き合ってから、
大した理由もないのにすぐに別れてしまう印象。
じっくり物事を考える陸生の性格からすると、
あり得ない展開ともいえる。
それは榀子についても同様だ。
榀子は、自分の感情と理性の間でずっとゆらいでいるわけだが、
アニメを観ていると、それまでのスローな時間が
最後になって急加速して自身も納得するという
どう考えても受け入れがたい流れになっている。
ただ、これは尺の問題であって、
限られた時間のなかで、スタッフは最良の仕事をしたと
漫画を読んで感じた。

それでは漫画はどうなのか。
アニメ同様、繊細な心情描写を
時おりオーバーアクションを挟みながら独特のリズムで
紡いでいく。バックボーンとして私が感じたのは、
冬目景が大ファンだったという高橋留美子だ。
高橋留美子は、80年代に女性漫画家が少年誌に
連載するという画期的な立ち位置を確立した人物。
同じ女性漫画家として目指す人だったようで、
冬目景も当初はギャグ漫画を描いていたそうだ。
だから、この作品でも若い巻数のころは、
ギャグテイストに共通点のようなものを感じさせる。
それと、何人かの人も指摘していたが、
榀子=響子さんというのは、影響しているだろう。
私が感じたのはハル=ラムだった。
作者は意識していないかもしれないが、
やはり自分の好きな作品の影響は
どこかに出てくるものだ。

また、これは私の勝手な想像だが、
高橋留美子が自身を投影していたのは、
しのぶであり、響子さんであり、あかねであり、
かごめであるのだが、『イエスタデイをうたって』でも
自身を投影して、思い入れが深いのは、
榀子ではないだろうか。
作者自身はインタビューで榀子を「毒」と呼んでいるが、
これはある意味、自虐だから言えるコメントであって、
自分のなかにある「面倒臭い」部分を
抽出した人物像ではないかと思っている。

榀子の「純粋な無自覚」が相手を傷つけるのは、
多かれ少なかれ、人間関係のひとつの形だ。
榀子は世話焼き女房のような性格で、
自分の近しい人の部屋を掃除したり、
料理を作ってあげることを全く厭わない。
それが浪の父親にいつまでも頼られる
原因にもなっているが、
無意識に人の世話をすることで、
相手から好意を持たれてしまう。
しかし、その気持ちに最終的に応えることはない。
確かに考えるとなかなか厄介だ。
陸生が榀子を好きになった銀杏のエピソードも
そういう榀子らしさがよく出ている。

漫画とアニメとの最大の違いは、
陸生と榀子が関係を解消することになった
心情描写だ。漫画のほうが積み上げる
エピソードが長いので、
読者の心にも同じように積もっていく。
陸生がハルを想う気持ち。
榀子の場合は、ライバルの莉緒が登場してからだが、
その複雑な心情は繰り返し描かれる。
しかも、その対比として雨宮とみもりという
幼馴染の関係性もクローズアップされる。
徐々に焦点が合ってくる感覚がある。

決定的な出来事は、陸生の兄の結婚祝いに
まつわる部分で、陸生がキスをしようしたとき。
陸生の手が紙切れにふれることで
ハルに対する気持ちのゆらぎが表現される。
榀子は、表情や仕種によって
我慢のようなものが描かれる。
そういう意味では、陸生の決断は納得できるものだった。
そして、リアクションや表情、
自宅に戻った後の描写によって
榀子の気持ちも明らかになる。
このシーンはよくできているが、
時間的な理由でアニメでの表現は難しかっただろう。

ここまで、ハルのことをほとんど書いてこなかったが、
私が思うに、ハルはラムであってファンタジーなのだ。
どちらかと言うと、こういう子がいたら可愛いなと
思わせるキャラクターで、あまり実在感はない。
高橋留美子は最後までラムのことを
自分では理解できないキャラクターだったと語っている。
それは冬目景にとってのハルと
似たようなものではなかっただろうか。

表向きの主人公はハルだが、
やはり真の主人公は榀子だったのだろうというのが
漫画を読了したときの感想だった。
漫画本編のラストは、榀子が桜を眺めながら
穏やかな表情で歩く姿なのだから。{/netabare}

配信限定エピソードを再視聴して(2023年4月16日追記)

{netabare}放映当時にアニメを補完する物語として
配信限定で観ることのできたエピソードが
改めてdアニメストアで再配信された。
それを観ていて感じたことがあったので追記したいと思う。

この作品のアニメ本編は、分かりやすくするために
原作とは違ってほぼ4人の登場人物に絞っており、
いろいろなことを内省することをメインに構成されている。
私は、この作品を観ていて、
時代背景などから懐かしさを感じていたのだが、
別の側面から捉えると、多くの人々が「常識」と考える
男女関係の在り方そのものが
硬直化していた時代でもあったのだと思った。

この作品の時代背景は2002年ごろだと先のレビューで記したが、
それは作者がインタビューで答えていたもので、
実際にこの作品に通底している時代は、
70年代から80年代ごろではないかと感じる。
そもそも『イエスタデイをうたって』という
古い曲をタイトルにしていることだけ考えても
作者の心のなかにある時代が想像できる。

だとすると、この作品に対する見方も少し変わる。
陸生と榀子は、お互いのことが好きだと思って
付き合い始めるのだが、それは陸生がハルという
年下の少女のことを好きだという感情を
封印するためだったと考えることもできる。
榀子の場合は死んだ恋人の弟で、学校の生徒でもある浪に
特別な感情を抱くことは、社会の常識から外れた行為だと思ったために
陸生からの告白を受け入れたともいえる。
ふたりの男女が「時代の常識」に囚われた結果、
最初から「愛」というものを勘違いしていたのかもしれない。
個人的には、これが2002年という年代なら納得ができないが、
70年代~80年代の時代背景なら妙にしっくりくる。

そのことを象徴しているといえる
配信限定エピソード内にある陸生の独白を紹介しよう。

男女の友情は存在するのか。
そんな答えのない永遠の謎に
大人になれないオレは、自分の感情を誤魔化しながら
自分の都合のいいように生きてきた。

これはオレの悪い癖だ。
自分の好きなカメラだって、諦めるわけでもなく、
ただその欲求をずっと抱えていた。
答えを出すのが怖くて、答えが出るのが怖くて、
結末が怖くて、ずっとこのままでいいと、
いつか忘れてしまうことを待っていたんだ。
それは居心地がいいようで、息苦しい空気が漂っていて。

何かに変化を求めていた。
何かに期待していた。
変化を求めながら、自分から変われない自分が情けなくて、
そんな後ろ向きな動機でしか頑張れない自分を変えようとした。
その結果、自分のことしか考えていなかった結果、
傷つけてしまった。

失ってから気づくような愚か者で、
これからも同じような過ちを繰り返すかもしれないけど、
オレにできる限り大事にしますので、
これからもよろしくお願いします。

ハル:60点。
陸生;え!?
ハル:前半、榀子先生とのことじゃん。
言い訳ばっかじゃん。
大事な私と具体的にどうなりたいかが明確じゃない。
やり直し!

先ほどの独白は、陸生のラブレターなわけだが、
アニメオリジナルの部分。
しかし、このアニメをとても上手く表現している。
今さらこんなことをまた書いてしまう私は、
やはり、この作品のことが好きなのだと思う。
これまで、お気に入りの棚に入れるのは、
自分の総合点が4.6点以上の作品と決めていたが、
この作品は、例外としてお気に入り作品にすることにした。 {/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 87

御宅忍者 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

愛とはなんぞや?

久々に自分が求めていたアニメに出会えました。

時代背景が2000年代で勿論インターネットもあまり普及してなく、携帯電話も無く、実際に会いに行くという時代。だからこそ伝わる心の想いや、悲壮感など。とにかく時代背景を上手く活かしています。

タバコの銘柄が昔だったり、コンビニの品揃いが良い意味で悪かったり、何よりどこでもタバコが吸える時代なので主人公の喫煙シーンにはかなりこだわって作っていたのではないかと感じました。

キャラに関しては全員が良い感じにめんどくさく、良い迷惑と言いたくなるくらい真っ直ぐな青年期と、年頃の大人の汚い所を上手く表現されています。
キャラに苛立ちを覚える度に、動画工房さんの掌に乗ってるな〜と思いました。

キャストの方々達はとてもキャラクターに合っていました。小林親弘さんの声が良い意味でどこにでもいそうな感じですごく聞いていて心地良かったです。

2000年代と言っても、黒電話やおそらくスーファミなど、主人公のリクオは昔の物をずっと使い続けるタイプなんだろうなと思いました。性格を上手く部屋のオブジェクトなので再現していた。

無言のシーンの演出が素晴らしいです。部屋に響く暖房の音、空気、息遣い、という微妙な演出が良いので個人的には是非イヤホンかヘッドホンをして視聴していただきたいです。

曲に関してはOPが無くEDに3つの曲を持ってきている。このOPがあえて無いというのが、またこの作品のお洒落さを引き立てていると感じました。
EDの3曲は個人的にどれもビーフジャーキーのように、聴けば聴くほど味が出てくる曲だなと感じました。どの曲も作品を上手く表現しています。

ですが何より僕が推したいのが"劇伴"です。この劇伴がとても素晴らしかったです。キャラクターそれぞれに特有の劇伴があり、切なさや年頃の男女の物思いに耽るシーンをピアノで繊細に表現されていたり、リクオの朝や仕事の雰囲気を感じるものをアコギで制作されてるものなどがあり、個人的にこの劇伴で作品の半分は決まっていると感じました。未だにサントラを発売していないのが不思議でなりません。

2000年代の青春群像劇というのがまた新鮮で、今の時代の物と比較してみるとやっぱり携帯電話が無いというだけでこんなにも美しさが違うんだなって思いました。もちろん携帯電話がある今の時代を悪いとは言いませんが、携帯電話で欠けてしまった美しさというものがやはりあったのかな。と思いました。
今とは違う2000年代前半の恋愛模様を感じることごでき、さまざま年齢層によって感じ方が違う作品になっています。

ただ漠然と見るのではなく少しの描写に強く力を入れている作品なので、そこを注目して見ていただきたい。

登場人物の強い所、ダメな所、嫌な所、人と人との心を繊細に描いている作品。最後の最後まで「愛とはなんぞや?」というテーマが根底にあることを忘れさせない。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 31
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

(音無響子+関口さとみ)÷2ってどう?

原作未読 18年かけて完結した名作らしい


つくづく携帯電話というツールが青少年の恋愛模様に与えた影響は計り知れないものがあると思う。
コミュニケーションの取り方が今とまるで違う。

 『ポケベルが鳴らなくて』とその主題歌のヒットが93年
 初期費用10万円越えだが携帯電話が小型化したのが94年
 PHSのサービス開始が95年
 それに引きずられて携帯初期費用の下落が起きたのが96年
 契約台数200万台から一気に10倍規模へと拡大した97年
 99年に11桁化へ

私の場合、世の女子はポケベルかピッチ(PHSのこと)かなにも持ってないかみたいな時期に大学入学し卒業年次には皆さんおおかた携帯電話を持ってたかなぁという過渡期に学生生活を送ってます。振り返ってみると移動端末を持ってない女子には独り暮らしでもしてない限りアタックすることは無かったような… 逆もしかりで「携帯持ってない」はひとつの断り文句として通用するようになりもしました。

 “チャンスが失われる”

若者にとっては死活問題。端末が手に入れやすい価格帯になってあっという間に10倍以上の規模となった裏には下心あり。かようにわずかニ、三年で恋愛のルールに大転換が起きたのです。


本作の連載開始が98年1月。構想期間などリアルタイム反映は難しいにしてもすでにNO携帯な恋愛劇はやや時代遅れ感なきにしもあらずなタイミングです。
作者冬目景の生年は1970年。物語の主役が大卒直後のフリーターであって作者とリンクさせるなら92~93年頃と携帯端末勃興前夜の計算になります。原作者が自信をもって世に送り出せる恋愛劇に携帯というガジェットは辞書に載っておりません。単純に消化して落とし込むことができなかったのではないかと思われます。
ディスりではなくて、なんとはなしに肌感覚でNO携帯な恋愛劇を描いた最終世代の作品として貴重なのでは?と思いながらの鑑賞でした。推定'96大卒くらいまでがリアルに感じる恋愛物語と言えましょう。

現在でもやってやれないことはないでしょうが20年も経てば、当時を知る若者は中年/壮年になり恋愛する感覚が追いついていかない部分あるだろうし、リアル若者は取材した上で落とし込む作業が必要なんだろうなあとぼんやり考えてました。
肌感覚でイメージしづらい若人の皆さんでも手っ取り早くどんなものか知る方法はございます。動画とかで『JR東海 X'MAS EXPRESS』のCMをいくつか見てみたらいかがかと。60秒でNO携帯時代の恋愛のクライマックスを垣間見ることができると思います。


時代背景の前フリが長くなりました。作品に戻ります。

 『49%うしろ向き、51%まえ向き』

水前寺○子がニコニコしながら歩いてきそうな大きなテーマがまずはそこにあります。
繰り広げられるのは主要メンバー男2名女2名計4人の恋愛劇で登場人物はこちら↓

魚住陸生(CV小林親弘)
野中晴(CV宮本侑芽)
森ノ目榀子(CV花澤香菜)
早川浪(CV花江夏樹)

主役は大卒フリーター魚住陸生(リクオ)♂。その同級生、新卒で高校教諭の榀子(シナコ)♀。シナコの教え子だったが高校中退した晴(ハル)♀。シナコの実家金沢からの縁、浪(ロウ)♂。で、この狭いコップの中でいろいろやり合うわけでございます。
主役はなんとはなしに“陸に住み生きる魚”よろしく居場所がなく所在もなさげな青年。それでも“野”中や“森”ノ目と陸の上に安住の地を求めてるからなのか苦しんでしまう。そんな印象を受けた序盤です。
{netabare}※早“川”ならラクじゃんと腐女子が鼻血出しそうな展開を想像しかけたがあえてスルーしとく。{/netabare}

作品のキャッチコピーから
主役名からの類推(妄想)から
そして作品タイトル“イエスタディ”から

すっきりせず停滞しそうな物語を約束されたようなものであり、事実そんな感じの全12話でした。12話分を俯瞰するとやや途中の説明不足や強引な終幕を残念に感じる一方で、

{netabare}よくもまぁこの短尺で“恋愛の停滞感”を出せたなぁ…{/netabare}

むしろポジティブに受け止めたい。感心することしきりでした。約束された“停滞”はおそらく原作でも鍵になってるんでしょう。そのへんをアニメスタッフが大事に扱っていることを伺わせるような作り方をされてたと思います。

この褒め言葉としての“停滞”を生んだのは明らかに二点。
7割方は主人公らのパーソナリティ。これはネタバレで各人個別に後述します。こっちがやきもきするような優柔不断な二人が中軸なので話が進みません。
残り3割はツールの不備。先述の携帯端末がないことに起因してます。即時そして直接のやりとりが減るためすれ違いが生じやすくなり、当人らの性格もあいまって話が進みません。


 2%前に進んだ(かもしれない)恋愛群像劇


“即断即決”の2020年代を生き抜く私たちにとって、“すれ違い”や“空白”。行ったと思ったら戻ったりのもどかしさを楽しむタイプの作品です。
現実においてはアニメ作品も放送延期が連発したこの時期。
立ち止まって一呼吸したのは作品や業界だけでなく我々もでした。
奇しくもそんな2020年春クールにて、視覚に頼れず音と想像で空白部分を埋めるラジオという媒体を扱った作品だったり、本作だったりが生き残ったのは偶然ではないのかもしれませんね。
例えば空白部分。画面にも映らなかった会えない時間に彼女らがどんなこと考えてたんだろう?とかを想像しながら、深まってく想いだったり徐々にズレてく想いを堪能できる良作だったと思います。



※ネタバレ所感
以下、当方ゲスモード全開でいきます。Wヒロイン評いってみよー!
不快な表現があるやもなので純粋レビュー止まりならここでブラウザバックすることを推奨します。


■(音無響子+関口さとみ)÷2

誰のことかすぐ頭に浮かんだあなたは立派な大人です。そう榀子センセですね。

{netabare}想い人を亡くしたことが重しになってこじれちゃってるのが共通項。気立てが良くて恋愛経験少ないのも似てるかしら。めんどくさいけどかわいいのが響子さんで鬱陶しいのがシナコさんです。{/netabare}
{netabare}そのかわいいと鬱陶しいを分かつものは関口さとみ成分の有無でしょう。関口さとみ自体の説明は割愛。どうぞ『東京ラブストーリー』をご覧くださいませ。シナコは天然というか自分に素直なだけなんですが、リクオを完全にキープ扱いしてますよね。外形だけみると地雷女以外の形容詞が浮かばない彼女の特徴は以下↓

・過去を引きずり過ぎ
 ⇒まだなにも始まってない相手への一方的な恋心だぜ?
・浪を甘やかしすぎ
 ⇒自分の居場所確保のために彼に言うべきことを言わない
・リクオを都合よく利用し過ぎ
 ⇒そのくせ「私が甘えてるだけなのよ」と本人に言ったりする
・自分からフッたのに怒る
 ⇒そのくせ「私たちそんな関係じゃないから別に」と言わずにいられない
・自分から告ったのに優柔不断
 ⇒なんだかなぁ{/netabare}

この上なく強烈な印象を残すキャラクターさんとなってしまいました。ロクなもんではありません。
…と言いながらかくいう私だったらホイホイついていくと思います。

{netabare}そして、「そんなつもりじゃないの…」とフラれる未来を想像して打ちひしがれるまでがワンセット。
普通の男…と言っても自分基準ですがなんといいますか口説けそうだと勘違いしてアタックしかけるでしょう。作中でも複数回チャンスありました(キリッ)。そこを全く行動を起こさないリクオだから良かったかと思いきやところがどっこい。断言してもいいですが「冗談、ゴメン忘れて」という態度をこちらが取ることができればリセット可能とふんでます。そしてこのテの方々は“まだ脈はある”と匂わせる行動を繰り返します。理由は

 考えてそうでなにも考えてないから

前後の行動の因果関係や会話で投げかけられた言葉の意味を理解できていません。他者への想像力の不足。これまで言い寄ってきた男もいたでしょうが亡者バリアが発動し見切りをつけられたいていの男は彼女の元を去っていって久しい。そのくせ異性の気配がないのはそれはそれで淋しいというのが露骨であり、その感情を整理なり処理できてるようには見えません。バリアをくぐり抜けた親族ロウと優柔仲間リクオくらいしかストックがない。逆にくぐり抜けさえしてしまえば言葉悪いけどちょろいです。あとは「こんなに思われてるんだからしゃーない」と自分を納得させたいだけでしょう。

要は“一線越えて上書きしてしまえばいーじゃん”という思想です。作中でもシナコ本人が自分で決断する怖さから判断をリクオに委ねる意思表示をしてましたがそこに乗ることのできないリクオというのがまた作品の味となってました。

と、これまでボロクソに言いつつされど惹かれてしまうやっかいな女性だと思われます。原作者の方女性と聞いて納得したのですが、シナコは女性のめんどくさい部分を詰め込んだような人。そこが良く描かれてます。このめんどくささってそのまんまめんどくさいんですけど一方でめんどくさいのが好きな人もいるでしょう。私なんかそのうちの一人ですよ。
そんな「いいですよね~めんどくさいの」と言い切れちゃうような某アニメに言わせれば南極向きな性格をしている男性陣はおおいに楽しんだらいいと思います。{/netabare}


■少女漫画に描かれた文脈でしか男を知らない人

誰のことかすぐ頭に浮かんだ人は残念なことに私と思考回路が似通ってるかもしれません。
そう晴ちゃんのことですね。

{netabare}まだJK年代だからいいけど早いうちに軌道修正してねという娘さん。カラスを手籠めにしている女性は古今東西、魔女しか私は知りません。{/netabare}
{netabare}家庭環境から妄想する偏見ですけど男女交際のロールモデルを想像できてないんだと思います。自分の“好き”という感情に直面した時に、まがりなりにも次の段階を想像できているのがシナコだとして、ハルにはそれがありません。
それでいて臆病なシナコとは対極的にハルは行動的です。想像してみてください。イメトレなしで試合に臨んだ時の惨状を。もしくはゴールや落としどころを描けずに商談に臨んだらどうなるかを。ハルのやってるのがまんまこれ。下手に行動力のある分ズレたらズレたであさっての方向に行ったまま帰ってこれない怖さがあります。

 一緒にいるだけで幸せ

彼女の好きになった理由が希薄なこともあるかもしれません。高校中退理由もなんだかよくわかりません。シナコに輪をかけてなにも考えてなさそうなのが彼女の危なさ。地雷臭しかしないでしょ?普通。

と、同じくボロクソに言いつつされどこちらも惹かれてしまうやっかいな女性だと思われます。
ただし理由はしょうもないところ。

 {netabare}好意もたれて嫌いになれるわけねーじゃん{/netabare}

ストレートな愛情表現を“素直”であると好意的な勘違いをしかけますが、彼女と一緒に描く未来が見えません。でも見ため可愛い子に好意もたれたらホイホイついていくスケベ心を私は隠さないですよ。
そんな抗えない下心を是とされる男性陣はおおいに楽しんだらいいと思います。{/netabare}



男二名のめんどくささも書くつもりでしたが息切れしました。野郎二人は中学生です。学校で教師を呼び捨てにしてマウント取ろうなんて高校三年生としては稚拙。黙って○○へ行け! …以上です。

ということでもう一度戻って女子二人。要は二人ともめんどくさくて二人とも魅力的なのです。
出来れば両方ともおつきあいしたいとゲスの極みなことを考えているのは私だけでしょうか。皆さんどの子がいいなぁという視点で観てるんでしょうか。その場合誰が人気あるんだろう?
最後に本作で自分だったらこの娘さんが一番いいなぁと思った人と理由をネタバレで挙げときます。
ズバリ当てたらすごいかも(笑)


{netabare}その子はリクオと4か月付き合ったという同級生の子{/netabare}

{netabare}迷わないですね。キタエリさんが声あてしてた娘です。次点はハルのバイト先のお姉さん。理由は↓

・言い寄られると弱いという自分の弱みを理解している
・そしておそらく経験を踏んで対処の仕方も心得ている(はず)
・育ちが良いので本人が遵守してるかはともかく社会常識の判断基準に世間とのズレはなさそう
・職能を理解しなんだかんだ生活するための目途をつけている
・例えばピアノできるのよ、のドヤ感が一切ない。わきまえてる
・居候先にリクオを選んだ選球眼と行動に移せるメンタリティ
・シナコやハルの様子を瞬時に察してフォローにまわれる観察力
・そしておそらく「一線越えてから考えよう」の割り切りの良さに聡明さを感じる


たぶん付き合ってて退屈しないし、結婚したらしたでしっかりするであろうと思われる。{/netabare}



この物語を鑑賞して思ったのは女のめんどくさいはかわいくて男のそれはどうでもいいということ。
次に主役四人組以外の登場人物はわりとまともだったこと。
あと言い忘れてたけど榀子センセなんかの比じゃないくらいこいつはダメだと思ったキャラがおります。さっき最後と言っといてすみません。断トツでした。

{netabare}そいつは早川父。

「いい加減解放してやれよ」

突き放してあげるのも大人の役割です。

携帯電話のない恋愛劇を懐かしむことのできた方々はこの父親と同年代くらいではないでしょうか。
どこかしら欠落した四人組にあーだこーだとマウントを取ろうとする前に、はたして自分がこんな早川父みたいな大人になってはいないか自省してみるのもよいのかもしれません。{/netabare}



視聴時期:2020年4月~6月 

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2020.07.04 初稿
2021.03.07 修正

投稿 : 2024/12/21
♥ : 68

72.7 4 ギクシャクで三角関係なアニメランキング4位
俺を好きなのはお前だけかよ(TVアニメ動画)

2019年秋アニメ
★★★★☆ 3.3 (482)
1936人が棚に入れました
ここで質問。もしも、気になる子からデートに誘われたらどうする? しかもお相手は一人じゃなく、クール系美人・コスモス先輩と可愛い系幼なじみ・ひまわりの二大美少女!! もちろん、意気揚々と待ち合わせに向かうよね。そしてそこで告げれれた「想い」とは――……「俺じゃないヤツが好き」っていう「恋愛相談」だった。ハハハ。……やめだ! やめやめ! 「鈍感系無害キャラ」から、つい本来の俺に戻ってしまった。でも、俺はここでへこたれない。恋愛相談に乗れば、俺を好きになってくれるかもしれないからな! そんな俺の悲しい孤軍奮闘っぷりを、傍で見つめる少女がいた。三つ編みメガネの陰気な少女・パンジーこと三色院菫子。俺はコイツが嫌いです。なのに……俺を好きなのはお前だけかよ!! 自分がモブだと気づけなかった主人公と個性的な華々しい女の子たちのちょっと刺激的な学園青春(?)コメディー、ここに始まる!?

声優・キャラクター
山下大輝、戸松遥、白石晴香、三澤紗千香、内田雄馬、三上枝織、東山奈央、斉藤朱夏
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

ゲスを気取ったヘタレに需要無し ※酷評注意

原作未読


うーん、、、小道具の“ベンチ”だけが面白かった作品。
なんならベンチにスポットライト当ててヘンデル『ハレルヤ』でも流せば上方修正してたかも。

原作小説はアンチ学園ハーレムが執筆動機っぽいのですが、少なくともアニメでは「どこが?」って感じでハーレム色は濃かったように思えます。

他のレビューでも吠えてますし、あらためて自分の嗜好を言っとくと、ラブコメはキャラの行動言動で“キュン”と出来るかが評価基準。キモくてもしゃーないです。
二次元の外見に惹かれたり「かわいいからまぁいっかー」となることはまずない。
その視点で本作を捉えると、、、面白くないです。
いくら可愛い(という設定の)女子を逐次投入されたところで「そこじゃないんだよ!」となるわけです。

女子の中ではメインの三色院菫子(CV戸松遥)/パンジーの魅力に引っ張られ完走することはできましたので、需要はゼロではないと思いますよ。以下、ダメな理由。


■取り巻きの女子がちょっと…

パンジー以外浅い。考えたり悩んでたりしてる形跡なしですよね。ビッチだとかアバズレだとか主人公くんに形容されてキャラ付けの努力はしてたのでしょうが、それ以前の問題で思考が現実の女性とは乖離し過ぎていてついていけません。
ひまわり/コスモス/あすなろ/ツバキ/サザンカ等々記号的な存在を超えないため、パンジーとの三角関係発展すら想像だにできなかったし、ひまわり/コスモスに至っては早々に私はモブ扱いしてました。
ラブコメのメインストリームを担える女子がいませんでした。


■ゲスではなくヘタレ

ジョーロがしょぼい。
1.{netabare}その発想はないっしょ
 恋愛マニュアルに沿った行動して、それすら能動的に女の子にアクションをかけるものではない。そのくせ、意に反した反応を女の子がとれば“ビッチ”“アバズレ”認定してしまう典型的な童〇思考。
 実践なきヘタレ野郎っぷりが第1話から展開されてたので正直きつかったです。そう第1話からさっそく無理ゲーでした。{/netabare}

2.{netabare}終盤でもそうなん?
 ホースの進撃からいったん身を引いて土壇場で反転攻勢!への共感ができないできない。
 本件に限らず「あなたは勝てますよ」と他人に担保してもらわないと動けないのはヘタレ以外の何者でもないのであります。{/netabare}


主人公のジョーロくんが策士っぽい設定だったからこそ、それとの乖離が気になった次第です。


■最近の流行なのかもしれませんが…

{netabare}TV放映分での結論が出てません。
終盤の重要キャラ“ホース”の登場も最終話手前の第11話。収拾つけるのは難しいしつけませんでした。{/netabare}

{netabare}“気になるので続編wktk”となるか“は!?だったらみねーよ”となるか。迷うことなく後者ですね。さようなら!{/netabare}



「実践」に勝るものは無し。もちろん書籍から得る「知識」だって糧となることを否定はしません。
リアリティをもって感情を揺さぶる筆力のある者か、エモさ全開でエンタメに振れる筆力のある者の作品を商業ベースでは主流にしてほしいもんです。
たまたまなのかアニメ化されるラブストーリーないしラブコメってこんなのばっか。

童貞か引き籠りが妄想で書いた自己満の作文見せられてるようで耐え難い。浅くて薄くて時間の無駄。


奇しくも自己満足作文ばかりを読んで育つとこうなりましたみたいなのが主人公ジョーロくんと言われればとてつもなく説得力あるんですがどうなんでしょうね。



視聴時期:2019年10月~2019年12月   

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2020.07.11 追記

最終回後、原作者がラジオで「原作知ってれば1クールで収まることないのわかりきってたことじゃないですか」と仰られてたとか。
…たぶんこういうところなんだと思います。


2020.01.08 初稿
2020.07.11 追記

投稿 : 2024/12/21
♥ : 55
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

観終わった

2話までの感想{netabare}
あれ?面白い?
八方美人を演じてたら窮地に陥ったって話…になるのかな?
今後、他人(主人公)を利用するだけ利用して、自分に都合が悪くなると責任を他人(主人公)に押し付ける連中を見返す展開になるのなら結構良いかも?

とりあえず2話での主人公の言い訳は、「オレもサンにパンジーは不釣合いだと思ってたんだ」「『パンジーなんかよりお前の方が良い』と振り向かせられると思った」じゃダメだったんかなー?
と思うが、あくまで俯瞰で見てるから言えることで当事者だと一杯一杯で難しいか。
まぁそれ言ったらラブコメが成立しなくなっちゃうけどね。
ぶっちゃけ「他の女より私の方が良いと分からせてやる・振り向かせてみせる」ってガッツの無いヤツが踏み台に利用した主人公に責任追及するのは身勝手だなぁとは思わなくもない。
他人を責められるほどお前はそんなに偉いのか?と。
ってことで復讐(カタルシス)に対する溜め(フラストレーション)パートだと思ってるんだけど、そうじゃなかったら単なる胸糞なワケで…いやぁどうなるんだろう?という意味では結構次回が楽しみな作品。
とはいえまだ2話なので、これから更に絡み合う話になってくのだとしたら…胸焼け起こすかもw{/netabare}

3話感想{netabare}
良い最終回だった。
2話で懸念してた「これ以上人間関係こじれるようだとさすがに胸焼け起こしそう」も杞憂に終わり、スキっと解決してホントに良い最終回だった。
但しあくまで問題が長引かなかったのが良かっただけで、その内容自体は「?」。
パンジーが実は巨乳の美人で…そこは「おいおい」と呆れ気味だけどまだいい。
巨乳は良くて貧乳はダメってのもよくワカランところではあるけど、問題は「そこまで嫌う?」のがイマイチ共感できない。
そうだなぁ、パンジーは折角ストーカーってことなので、もっと重篤で「期待に背く行動をしたらミザリーされかねない(こんなの私の好きなジョウロじゃない!、と殺されそう)」みたいな、なんか「この人と付き合うのは身の危険を感じる」という所を見せてくれないとあそこまで性格を嫌う理由が分からない。
または虚言癖で「レイプされました妊娠しました責任とってください」なんて言い出しそう、ってことなら関わらないようにする・図書館に行くのを避けるのも納得なんだけど、そうでもない。
これだったら“変態だけど可愛ければ~”のキャラの方がよっぽど付き合いたくないw
ってかそこまで嫌うならそれこそ2話でサンから相談受けた時「アイツだけは止めとけ」と言うでしょー、親友を第一に考えてることの説得力にも関わらない?
なんかトラウマでもあって「他の人は平気かも知れないがオレはどうしてもこういう性格はダメなんだ」って話でも今後あるのかなぁ?

と、自分の2話までの感想を読み返してみて気付いた。
この作品のキャラ達は「心変わりを許容する・期待する」価値観なのかそうじゃないのかがよく分からない。
恐らく物語の最後は「パンジーいいよな」になると思うので、作者は許容する精神でありながらキャラにはそれが無い前提で話を作ってる?{/netabare}

6話までの感想{netabare}
うん、まぁ…こんなだよね。
ジョーロが3話までに迷惑かけられた連中を許したことについては、下心があるんだしまぁって感じ。
そうはいっても…新聞部の言うことを一方的に信じるって、そんなことあるんかいな?
いやあるんだけど…新聞部の言ったことだから間違い無いだろうと思考が止まってるヤツ、そういうヤツが大半であるなら人を陥れ放題だなぁとは思ってて。
ってことで6話は案の定ソレだったってオチで。
そこまではいい、そこまではいいんだ。
ただ…なんでジョーロを良いヤツみたいに演出したがるんだろう。
自分を悪者にして背中を押した?いやいや、普通にガチ怒りしたでいいんじゃね?
記事を無批判に信用させられる新聞部という「権威」を傘に着たというか、その権威に傷がつくというか、場合よっては廃部にまで追い込めそうじゃん、女子ネットワークとはワケが違う。
パンジーに友達作るよう仕向けたのは感謝のお返し?いやいや、体は好みだけど性格が嫌いって話だったじゃん?
今までボッチだったので友達作れば性格変わるかも?と自分好みに仕立て上げようと画策した、でいいじゃん。

なんでそんなにジョーロを良いヤツにしたがるのかちょっと意図が分からない、これは3話の「親友思い」でも引っかかってたことなんだけど。
下心アリアリの下衆野郎だから気にしないで居たのに、良いヤツだとスルーした部分にケチが付くというか…う~ん…。{/netabare}

9話までの感想{netabare}
何やってるんだか分からなくなってきた。
なんかこう、イマイチ考え方に共感どころか理解すらできない。
ジョーロはハーレム目指しておきながら他人(他の女性)が何か下心ある素振り見せたらビッチ呼ばわりなの?
本絡みの一件は、キッズアニメでよくある「一人で抱えないで仲間を頼れ」って前提の元、そうでない行動をした主人公が責められてた…のか?
どうでもいいプライドにしがみついた結果誰かを傷つけたのなら責められても仕方ないけど、誰か傷つけたっけ?
まぁ本絡みに関してはまだ続くのかな?探すのを手伝ってくれた二人はこの後出てくる?{/netabare}

最終回?までの感想{netabare}
ありゃー、参ったね。
最終回の終わり方についてあれこれ下書き書いてたのだけど、そうしてる間に同期放送作品の“星合の空”の最終回が放送されて、そっちのがもっとアレだったらしい。
そっちの作品は私は1話で視聴切っちゃってたんだけどね…見続ければ良かった?
ってことでゴチャゴチャ書いてた下書きもどーでもよくなっちゃったw
それにしても今期ちょっとヤバいの多くない?
これまた他の作品の感想で触れたけど「ちゃんと締めてるだけマシなのかも?」という、我ながら基準がもう訳ワカラン。

と、とりあえずこの作品に関して言えば、3話まで見れば良いんじゃないかな?
そこから先は見ても見なくてもいい。
個人的に一番期待してたのは、前半パンジーが余裕ぶっこいてるポジションだったので、それが吠え面かく展開来ないかな~と思ってたのだけど…実際それに近い展開にはなったのだけど、その一方で今度はツバキという余裕ぶっこいてるポジが登場しちゃって。
じゃあ次はツバキが吠え面かく展開を…となるだけで、キャラの役割が変わっただけで構成は一緒なのを繰り返してる様に感じてしまった。
表現が辛辣すぎるかもだけど、引き出しが少なすぎじゃね?と。
主人公の心変わり自体はそれがテーマだろうからいいとしても、他のキャラの心変わりっぷりはなかなかついてくのが難しかった。
でも最後の恋敵を蹴落とすための裏切り投票は「ですよねーw」って感じで笑えた…のだけど、それがよりにもよって「続く」でウラがあるような無いようなで素直に受け止められない。
なんでこんな作りにしちゃったんだろう…それでも“星合の空”に比べればマシなのかなぁ?と思うと…う~ん…。{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 15

三毛猫メリー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

お前だけか?

2020.10.28 視聴完了。

タイトル通りだったのは最初だけでしたね~
面白い入り方なので期待したけど・・・

山下大輝さんは上手だし女性声優たちも頑張ってたのにね。
都合よく新キャラ出てきて都合よく問題が解決されていく。
窮地にたち後に誤解だとわかり和解、そんなパターンばかり。
一番引いたのは女子グループが
あれだけ悪口言ってたのに・・・所。
誤解解けてもああはならないのでは?
愛の反対は無関心とよく言われますが
では嫌いの反対は本当に好きでいいのか、ちょっと考えてしまった。

そんなに嫌われるのは嫌ですか?
全ての人に好かれるなんてそもそも不可能なんですよ。
作者のメンタル弱そうだね、まあ頑張ってください。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 9

60.6 5 ギクシャクで三角関係なアニメランキング5位
かしまし ガールミーツガール(TVアニメ動画)

2006年冬アニメ
★★★★☆ 3.4 (152)
924人が棚に入れました
主人公である大佛はずむは、幼馴染である来栖とまりの励ましで片想いの相手である神泉やす菜に勇気を振り絞って告白したものの、その告白は拒絶されてしまう。
近所の鹿縞山に一人登り、傷心を癒そうとしていたはずむだったが、巨大な宇宙船の墜落に巻き込まれてしまう。
宇宙船に乗っていた宇宙人は、地球人に対して自分のミスを詫び、はずむを治療したことを告げる。しかし同時に、その治療の過程ではずむが女になってしまったことも告げる。そして、この変化はもはや修正不可能だという。
女として学校に通うことになったはずむだが、一度は告白を断ったはずのやす菜ははずむに対して積極的にアプローチをかけてくるようになる。そしてとまりも、そんな2人の様子を見ていて弟分だと思っていたはずむに対して自分が抱いていた本当の気持ちに気づくのだった。
こうして、3人の少女たちの奇妙な三角関係が始まった…。

声優・キャラクター
植田佳奈、堀江由衣、田村ゆかり、浅野真澄、小野大輔、新谷良子、藤原啓治、水谷優子

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

性転換ラブコメ

ある日、自分の性別がいきなり変わったら・・・。
なかなか興味深い設定の作品でした。

◆この作品の概要は・・・
とある事情から、主人公の男の子が宇宙人によって女の子に性転換されてしまうお話。
タイトルの「かしまし」の意味は「姦し」の字からもわかるように「女はおしゃべりで女三人集まればやかましい」という意味であるらしく、女になった主人公と幼馴染の女の子と主人公の好きな女の子の、奇妙な三角関係の百合?ラブコメです。

◆この作品の見どころは・・・
普通なら性転換されたら元に戻る事を考えてもおかしくないのですが、当の本人はその気がないのか・・・。
始めは戸惑うものの、第2話からは女の子としての仕草や、女の子の下着の付け方を教えてもらったりして、普通にこの状況を受け入れている模様。
元男の子とは思えない女の子の可愛らしさが見れます。
女となった主人公の奇妙な感覚の三角関係が楽しめました。

◆ストーリーは・・・
後半に行くほどコメディ感からドロドロ感になっていきます。
それと同時に、結局このまま女としていくのか?それとも最終的には男に戻れるのか?という先の読めない展開も楽しめました。
しかし、TV放送の最後はいただけない。

◆声優陣は・・・
大佛はずむ :植田佳奈(Fate/stay nightの遠坂凛)
来栖とまり  :田村ゆかり(ひぐらしのなく頃にの古手梨花)
神泉やす菜 :堀江由衣(Kanonの月宮あゆ)
摩利あゆき  :浅野真澄(乙女はお姉さまに恋してるの御門まりや)
曽呂明日太 :小野大輔(ハルヒの古泉一樹)

◆あのね商法・・・
この作品のTV放送最終話からこの言葉がアニメ業界に生まれました。
TV放送アニメの最終回をセルDVDにのみ収録し、DVD購入を促すやり方。
いわゆる「結末を知りたければDVDを買え」という商法です。
当然このやり方は視聴者からかなり反感を買ったらしいですけどね。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 20

ワタ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

姦しくも百合百合しくもない、ふつーの恋愛もの

「女三人寄れば姦しい」と言うけれど、全体的に落ち着いた雰囲気の恋愛ストーリーです。
というわけで、タイトル詐欺である感は強い。

一番の問題点は、主人公(はずむ)が元は男であるという設定がほとんど活かされなかったところにあります。
ある日突然、自分の性別が変わってしまったことに対してあっさり受け入れてしまってるのは正直どうなんだと。
この点に関しては、敢えてはずむの葛藤を描かないことで、
周囲の戸惑いをクローズアップさせる効果を狙ってるのだと思いましたが。
実際、物語当初はその狙いが上手くハマっていたし、
性転換されたはずむを初めて見た時の、両ヒロインの対照的な反応は印象に残るものでした。
(戸惑う表情を見せるとまりと、ちょっと嬉しそうな表情のやすなの対比)

ところが、三角関係が本格化してからは、はずむが女であることの作劇上の意味を見出せなくなってしまった。
同性であるが故の葛藤とかそんなものは一切なし。男であっても十分成立してしまう物語なんですよね、これ。
話自体は悪くないんです。両ヒロインがはずむに惹かれる理由にも納得できる。
この手の話が好きなら、そこそこ楽しめるかと思います。

はずむが優柔不断な性格なのはこの手の話の宿命なんで、しょうがないっちゃしょうがない。
ある意味つらい立場にいるはずむに同情して、甘やかしてしまった両ヒロインにも責任はある。
もっとも、はずむは「女の子同士だからって甘く考えてた」という独白をするのだけど、
仮に男のままだったとしても同じ事態を引き起こすとしか思えないわけですが・・・w

結局、作者がやりたかったことって百合恋愛やキャッキャウフフではなく
あくまでオーソドックスな恋愛物であって、でも普通にやると味気ないから、スパイスとして主人公を女にしてみたと。
はずむを「萌えキャラ化」することによって、
この手の話でありがちな主人公への批判を軽減させる狙いもあったのかもしれません。

ただ前述の通り、話自体は悪くないものの三角関係物のテンプレであるため、
特異な設定を作中で活かしきれなかったこともあり、観終わった後であまり心に残るものはなかった。
本作を取り巻く話題が「あのね商法」の一件ばかりというのは、残念だけど納得できてしまいます。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 25

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「かしましってどんな物語?」「えーとあのーごにょごにょ・・間違えました!」

2006年放送のテレビアニメ 全12話+1話

原作 あかほりさとる 監督 中西伸彰 構成 花田十輝 制作 スタジオ雲雀

大佛はずむ 植田佳奈 来栖とまり 田村ゆかり 神泉やす菜 堀江由衣

コミック版、アニメ版、小説版とメディア展開された物語で、
それぞれのメディア的特徴によってストーリーが大きく違う。
はっきり言って、テレビ放送前提のアニメ版は最も規制が強く描き切れていないと思う。

異星人によって強制性転換された元男性のはずむ(高校3年生ただし途中で2年生に変更かも)が、
幼馴染のとまりや同級生のやす菜との恋を描いた青春劇。

この設定の場合、当然主人公の体の変化に伴う心の重大な葛藤が描かれるはずで、
小説版ではメディアの特性上、集中してシリアスに描かれる。
コミックではTS嗜好の読者向けに可愛いはずむの苦悩が中心だが・・・
テレビアニメ版では性の葛藤は極力避けて、3人の百合描写が中心になった。

3人の少女の物語でも特にかしましいわけでも、百合シーンに萌えるわけでもない中途半端な出来のように思えてしまった。
時代性でテレビ放送の限界かなとも思いましたが、
現実はマイノリティーをターゲットにしたら売れないだろうという大人の事情のようです。
性転換されたはずむは嬉しそうで、それはそれできっちり描いたら萌えるのにと思いましたが、
主になるのはやす菜の心の傷による男性恐怖症。
これに適合するようにはずむは女になったような物語になりました。
3人の少女の気持ちを繊細に描いたことは確かなのですが、
3つのメディアを制覇しない限り理解するのは無理な作品になったと感じます。

この制作姿勢以外はいろいろ良くできた設定だと思ったので、
小説版を中心にLGBTの問題に切り込んだ問題作として作り直すのは、
やっぱり無理なのかな。

本編はwebラジオです。ニコニコで聞けます。
姉御肌の堀江由衣とキモ意地悪姉御の田村ゆかりが年下の植田佳奈をいじる展開ですが、
当時ですでにアラサーなので滅茶苦茶にはならず楽しめますね。
タイトルは堀江由衣の質問に植田佳奈が頭真っ白になった答えです。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 19
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