まみあな さんの感想・評価
4.8
鑑賞するたび理解が深まり、感動できる
本4thシーズンは、「特別でないただの一日」から「薔薇の花かんむり」までの実にコバルト文庫10冊に及ぶ原作小説をアニメ化したものでございまして、ヒロイン福沢祐巳さまが一学年下の松平瞳子さんにロザリオを受け取らせて姉妹の契りを結べるか否かというお話がメインストーリーでございます。
「マリア様がみてる」シリーズを構成する各エピソードのなかには、明らかにアニメーションのほうが原作よりも洗練されているものがございます。原作での過剰な心情の発言や行動の記述を省略している箇所がアニメには見受けられ、それにより原作の欠点を上手に補っている、と申せましょう(「春」のラストで祥子さまと祐巳さんが仲直りするシーンなど。原作では仲直り直後祥子さまがわざと厳しい口調で話しているが不要。アニメには無い)。斯様に、アニメによる省略が原作の欠点を補っているが故に、わたくしは、アニメシリーズが原作に極めて忠実である点が素晴らしいと感じております。
本4thシーズンを構成する逸話は全て、上述のメインストーリーが分かることを念頭に原作から選ばれております。ナレーションや登場人物による「報告」によるエピソードは原作には詳細に書かれているものでして、長さの関係で割愛したようでございます。学園祭での細川可南子さんや茶話会での内藤笙子さんに関わる逸話は、彼女たち脇役のプロフィールとして解釈しておくに最小限必要と申せましょう。
それでも、細部とくに祐巳さまと瞳子さん、さらに二条典子さんの心情の動きは、原作に接しておりませんと、一回鑑賞しただけでは分かりにくいかもしれません。そこの辺りが分かると、殿方でももらい泣きが可能でございましょう。
絵柄は綺麗です。特に祐巳さまが愛らしくも美しく描かれています。OP音楽は変わりましたが、BGMは前シリーズまでを踏襲しており、雰囲気を崩してはおりません。
最後に、本4thシーズンの残念なところを。
・第7話冒頭、女学園の御聖堂でのごミサの、祭壇および司式司祭の登場場面に、以下の不正確な作図が見られたところでございます:・ 祭壇の横幅が教壇サイズであり、不足です。・ミサを行う際の祭壇の上面の白い布と左右の燭台が描かれておりません。・クリスマスミサの司式司祭の祭服は白ですが、黒に描かれております。・通常、ミサでは司式司祭の入堂の際は会衆は起立してこれを迎えます…。これらは、製作時に周囲のカトリック信者に一言確認すれば防げたことでございます。儀式描写を軽視した結果と申せざるを得ません。
・松平家の家屋が、幅の広い階段が中央にあるなど、個人の邸宅の設定としても豪勢過ぎると感じました。
・薔薇の館(生徒会役員室)で志摩子さんが祥子さまから意見を求められて発言する時にいちいち起立するのは不自然に思われます。志摩子さんも正式な役員であり、また、祥子さまとは最早単に学年の違いだけの上下関係であり、生徒会としての付き合いの長いお二人は「生徒会仲間」になっているので、起立までさせるのは過剰な演出と思われます。