カタルシスで回想なおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのカタルシスで回想な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年08月03日の時点で一番のカタルシスで回想なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

79.7 1 カタルシスで回想なアニメランキング1位
転生したらスライムだった件(第2期)(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.7 (554)
2712人が棚に入れました
「転生したらスライムだった件」は、伏瀬さんによって小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載されたWeb小説を原作としたTVアニメ。異世界で一匹のスライムに転生した主人公が身につけたスキルを駆使し、知恵と度胸で仲間を増やしていく異世界転生エンターテインメントだ。2018年10月から第1期が2クールで放送され、第2期は2021年1月から放送となることが決定している。

声優・キャラクター
岡咲美保、豊口めぐみ、前野智昭、古川慎、千本木彩花、M・A・O、江口拓也、大塚芳忠、山本兼平、泊明日菜、小林親弘、山口太郎、福島潤、田中理恵、日高里菜、春野杏、櫻井孝宏
ネタバレ

Kuzuryujin さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

進化の果てに深化する物語

(2021.4.3最終投稿 2021.8.7改定と推敲)

 第2期 第1部:閑話+全12話 (第24.9話, 第25話~第36話)

 なろう版読了。書籍版、コミカライズは継続愛読中。

 原作ファンである自分にとって、2期はちょうどお気に入りの部分のアニメ化ということで評価ポイントはかなり甘め。コミックと比べてしまうとやや物足りない部分はあるものの、アニメで動き話すキャラたちは第1期と変わらず非常に魅力的。また第1部の全話に関して、重要なポイントは外していないし無駄も少なかったと思う。

 原作を十分咀嚼した、よく練られた構成と脚本だと思える。二回放送延期になったことが、脚本の精査をもたらしたのかもしれない。

 とは言うものの、終盤残り2話のあたりから急に詰め込み感が増して若干不安が湧いた。が、最終的には許容範囲内で収まった。

❮放送前投稿❯
{netabare}
<2020.4.4初投稿分>
{netabare}
 2020年3月22日に公式HPにて発表されたスケジュールは、2020年4月からの転スラ一期再放送の後に

2020年10月 二期 第一部
2021年1月 転スラ日記
2021年4月 二期 第二部

とのこと。なんと、9か月に及ぶ転スラ祭り!

 同期ではログホライズン三期と共に転スラシリーズも今から非常に楽しみにしています。ヒナタがいよいよガッツリ物語に絡む二期。転スラの面白さが加速するだろう。

 ディアブロ、テスタロッサ、カレラ、ウルティマ。スーパーカー由来名の原作の中でも個人的に好きなキャラたち。

 ディアブロは、公開されているキービジュアルでもわかるように二期登場確定。でもその他3名は、1クールでは登場は無理。しかし、上記のように本編は分割2クールの尺なので物語の構成次第では彼女らも登場する可能性があるのも密かな楽しみ。

以下2021.2.17追記

 二期始まって1クール目の丁度半ばの30話まで観て、今期のシリーズ構成は多少の前後の入れ替えはあっても原作を丁寧になぞる方針と受け止めた。この調子だと2クールで最低書籍6巻の最後迄、もしくは途中からペース早めて切りの良い7巻の最後迄が限度かも。

 原作での彼女達の登場は第11巻なので、どう考えても彼女達の今期の登場は無理。こうなるとこのシリーズが3期4期と長く続くことを祈りたい。
{/netabare}
<2020.11.28投稿分>
{netabare}
 2020年5月末、放送・配信開始時期が2020年10月から1クールずれる形での延期発表あり。

第2期第1部が2021年1月から、転スラ日記が2021年4月から、
第2期第2部が2021年7月から放送・配信開始とのこと。

 延期は残念だが、2020年3月発売のコミック14巻限定版付属OADから始まったコミック付属OADは、リムル愛豊かなキャラたちの平和な魔国連邦の日常を描いた、

OAD1「外伝:Mの悲劇?」、OAD2「外伝:HEY!尻!」。

 そしてOAD3以降は、リムルとシズの5人の教え子たちの新エピソードでリムルの教師就任時の強力な原作補完となっている。

 原作:伏瀬書き下ろし完全新作エピソード「外伝:リムルの華麗な教師生活」三部作。(2020.11.27発売のコミック16巻付属のOAD5で完結)

 コメディ要素多めで、なおかつ原作の隙間を埋める独創性が好ましい。リムルのみでなく、アニメオリジナルの魅力ある教師キャラたちとの絡みの中、5人の教え子たちの成長と活躍を堪能できる。

 転スラアニメ1期は、シズ関連描写のアニオリ要素が原作補完で感動アップしたが、さらにこのOADでシズの重要性も深まった。リムルにもちゃんと活躍の場があったし、2期の新キャラも巧く登場させてグッド。そして2期の冒頭に繋がり得るタイミングで終了。

 このOAD三部作のおかげで2期に期待が非常に高まった。来年の放送が楽しみだ。
{/netabare}
{/netabare}
❮各話レビュー❯
{netabare}
◎ 2021年1月初回放送分
★#00-03『24.9 閑話:ヒナタ・サカグチ/25 リムルの忙しい日々/26 獣王国との交易/27 楽園、再び』
{netabare}
<あらすじ>

 三上悟はスライムとして転生してあっという間に二年が経った。

 様々な困難を一つ一つ乗り越え、その転生名リムルの名声は増々拡がり、続々と新たな出会いも生まれる。

 成り行きで興した魔物と人類の共生を目指す国も、順風満帆に発展する。

 異世界でリムルと縁があった故人、シズの遺言にあった地球より召喚された5人の教え子たちの命を救うこともできた。

 そして一時の平和が訪れた。

 周辺諸国との新たな国交樹立とそれらとの交易のチャンス。富国の予感でハッピーな日々。

 しかし、この束の間の安らぎはいつまで続くのだろう?

<波乱の序章>

 アニメと原作では教え子の救済と国交樹立のエピソードは時系列としては逆になる。その結果、国交エピソードは1期ではカットされたが2期で復活した。

 伏線の配置は抜かりないが、敵となる存在はまだ表にはあまり出てきていない。この間に登場したキャラたちは、新旧共に今後重要な役者たちとなろう。

 序破急の構成の妙を感じる。その”序”として活きた4回だったと思う。

 かけがえの無い家族、仲間、場所があるのは幸せなことだ。バカで他愛もない平和な日常も貴重で、いつまでも当たり前にあるとは限らない。やがて訪れる”破"そして"急”の展開で起こる悲劇の悲しみを、より引き立てるために時系列を変えてまでもエピソードを復活させることは必然だったのだろう。

 日常が一旦壊されてしまうと、再び平和に戻るにはエネルギーも時間もかかる。笑顔が消え失せ殺伐とする。ならば先をいそがず、平和の有り難みを噛み締めこの笑顔の一時を楽しみたい。しかし、原作やキャラクターに思い入れがないと話のテンポが悪いと思うかもしれない。

 ところで、ここまで毎回のように登場する大浴場シーンだが、サービスと言うよりキャラたちの親睦を深める人間関係発展の場として有意義に活かしてる。和テイスト満載の露天風呂は、リムルの国の心と富の豊かさの象徴。このシーンはほのぼのとして心地よい。そんな原作とは一味違うアニメの独自性が好ましい。
{/netabare}
◎ 2021年2月初回放送分
★#04『28 謀略のファルムス王国』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルは盟主としての大切な外交後、一旦イングラシア王国に戻った。そして教え子たちの無事な進級を見届け、安心して学園を去る準備を始めた。

 リムルが懇意にする大商人ミョルマイルとの商取引も順調で、テンペストは表面上は相変わらず平和な日常は続く。

 一方、魔王クレイマンの陰謀の影、魔国連邦(テンペスト)の軍事力や技術力を脅威と感じる外国勢の存在。それらが具体的に浮き彫りになり、きな臭さが増してきた。

<風雲急を告げる>

 1期の第24話から今回迄で、2期第1部の物語の必要な役者が全員揃った。次回いよいよ物語が大きく動きだしそう。

 アニメでは、リムルが安心して生徒を任せられる先生キャラクターを独自に追加した。今回僅かに登場のティス先生のこと。

 ティス先生はOAD3-5のエピソードで、リムルと生徒たちの信頼を獲得している。彼女と5名の生徒たちがひとつの危機を共に乗り越えることで、お互いに深い絆が生まれた。

 おかげでリムルは、彼女に生徒たちを安心して任せ、国事のため一定期間テンペストに戻ることも出来た。さらに、今回の引き継ぎ描写が自然になる効果もあったと思う。
{/netabare}
★#05『29 災厄の前奏曲』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルは未だイングラシア王国に赴いたまま。そんなリムル不在の首都リムルで事件は起こった。

 リムルと連絡も取れず訳も分からないまま、魔国連邦(テンペスト)は未曽有の災禍に見舞われた。

 魔王ミリムによる獣王国ユーザラニアへの宣戦布告の速報と難民受け入れの要請が、獣王国幹部アルビスから届くものの、詳細は不明のまま通信は途中で断絶。

 一方、100名ほどのファルムス王国の武装した騎士団の首都への接近の報告がソウエイから届く。

 街中では、冤罪事案を切っ掛けに引き起こされた工作員との戦闘発生で大混乱となった。

 さらに都市内部から、大魔法・魔法不能領域(アンチマジックエリア)と都市外部から、四方印封魔結界(プリズンフィールド)が、ほぼ同時に首都全体に発動される。

 その二重結界は、人間には無害だが魔物には有害なもの。魔法の無効化により外界と完全遮断。魔素が浄化されることにより魔物は弱体化。テンペストにとって非常に不利な状況となった。

 その他様々な要因が絡み合い状況は混沌へと誘われ、その日、平和な日常は一瞬で壊され笑顔が掻き消された…

《躍進のための組曲 その1”混沌”》

<出る杭は打たれる>

 今回のアニメのサブタイトルは、書籍第5巻の第二章のタイトルからそのまま採用され、その章の後半部分を元に構成された脚本だった。(二章前半部の内容は前回で登場) 今回、主人公リムルの出番が全くないのはその影響が大きいと思われる。

 今回、ヨウムとミュウラン、グルーシスのエピソードは今後の物語上必要で、アニメで丁寧に描かれて安心した。

 リムル単独では乗り越えられない大きな試練が待っている。今期、今までは大賢者の出番があまりなかったが、間もなく大賢者とリムルの最強タッグ再び、となろう。

 テンペストの本当の躍進は、打(伐)たれてからが始まり。ずっと平和なままだと国の進歩も緩慢で、場合によっては停滞してしまうかもしれない。物語としても面白くない。逆境をバネに、試練の苦しみあればこそ、その後の達成の喜びは大きい。

 いよいよお待ちかねのキャラクター参加の次回、アニメでどんな作画で動くのかとても楽しみだ。
{/netabare}
★#06『30 動き出す麗人』
{netabare}
<あらすじ>

 テンペストではファルムス王国の手勢により住民被害が拡大。取り返しのつかない事態が起こっていた。

 一方リムルは、生徒たちと名残惜しい別れをしていた。テンペストで起きていることを全く知らぬリムル。

 そしてリムルとランガは、イングラシア王国から少し離れ、空間転移でテンペストに戻ろうとしたが転移出来ない。

 さらに、ソウエイの分身体からの警告があった。そこで初めて危機を覚るが、さらに周りに違和感が拡大すると…いい迷惑な、全くありがたくない出逢い。

 「初めまして、かな? もうすぐサヨウナラだけど」

 問答無用に魔物にとっての天敵との激闘が始まった。

《躍進のための組曲 その2”激突”》

 今回の様々なバトルシーンはキレがあって好い。前回は作画に若干の手抜きを感じたのだが、今回に注力するためだったのかと勝手に納得。第1クール半ば最大の見せ場として申し分ない。

 全く不満がない訳ではないので大甘だが、今回で作画評価を4.5→5.0に上げた。アニメスタッフの健闘を讃えたい。

<聖騎士団筆頭ヒナタ・サカグチ(坂口日向)>

 思えば彼女は1期の第1オープニングから登場しており、ヒナタを本編で描きたかったスタッフの思い入れが今回の作画に反映されてると思う。

 アニメが3期以上続くことが前提ではあるが、この制作スタッフなら彼女は1期のシズ同様、アニメで原作以上に輝く可能性を感じた。

 2期でリムルとの最終決着まで描けるか、尺的に微妙な気がするがどうだろうか。無理やり詰め込まずこのまま丁寧に3期へ繋げて欲しい。

 リムルとヒナタの会話の応酬は、ヒント垂れ流しで視聴者にヒナタをリムルにけしかけた黒幕が誰か、あからさまに暴露していたようなもの。ミスリードできるキャラも存在してないのでバレバレだ。ユウキ・カグラザカ(神楽坂優樹)しかいない。

 ここであえて黒幕をボカす必要はないと思うのでこれでいい。黒幕が誰であるかよりも、黒幕の陰謀を暴き阻止することの方が大切だから。

 今回、冒頭の生徒たちとのお別れシーンで、ようやく第1期本編最終、第23話の最後と連結した。そのためそのシーンは23話の使い回しが多い。

 見比べると見送りにティス先生が遠景でワンカットだけ参加してたり、ユウキの台詞のある部分をカットしたりと23話とは若干の違いがあって面白い。

 次のリムルがランガに跨り駆け去るシーンは完全別もの。23話制作当時、2期制作が決定していなかった可能性が高いと思われる。

 23話ではヒナタは木陰でリムルたちの会話の観察のみ。当時はキャスト未決定ゆえ、台詞は当然無い。リムルたちが走り去った後もその場に留まったままで、襲撃の機会を見逃したかともとれる。

 今回とはまるで平行世界のようになってしまったが、今となってはこれはご愛嬌と言うものだろう。
{/netabare}
★#07『31 絶望』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルはヒナタに完敗した。ヒナタはリムルの消滅を目視して討伐完了と判断、その場から立ち去った。

リムルは戦闘途中、自身の分身体と入れ替わることでヒナタを欺くことに成功、実は九死に一生を得ていた。その後ようやく首都に帰還したが、そこは誰もが悲しみに暮れる街と化していて愕然とする。

 しかし大賢者のサポートで冷静な分析と判断はできるのは不幸中の幸い。幹部たちの言動に何かを隠すかのような含みあれど、それはさておき、リムルは慌てず事実確認と情報収集をすることに...。

《躍進のための組曲 その3”悲壮”》

 今回もポイントを絞った手堅い脚本で安心して楽しめた。ここで浮き彫りになるのは、人間の狡猾で強欲な側面と魔物の単純明快な忠誠心の側面の対比。

 王に実力とカリスマさえあれば、配下は忠誠心揺るがず、裏切りの可能性が低い、優秀な人材豊富なら比較的箱庭ゲーム感覚で維持出来るのが魔物国家。対して優秀な人材豊富でも、その強欲性が厄介で、建国と維持の面倒臭さが倍増の人間国家。

 裏切りの心配と苦労ばかりの人間国家だったら、リムルは王の責任を途中で放棄しているかもしれない。

 リムルの為政者としての責任感とやる気の源は、配下のブレない忠誠心。彼はスライムの特性上、子孫は持てない身だがその代わりテンペストの住民全てを家族のように慈しむ。そんな彼が国家安全保障のために何を決断、実行するのかが今後の見所か。

 ところで、魔王クレイマンは毎度必ず回すワイングラスと共に登場。ここまで徹底したテンプレな悪役画は、狙ったギャグか、と思う反面、深読みすると手のひらで踊らされているのは実はクレイマンだ、と暗喩しているともとれる。
{/netabare}
◎ 2021年3月初回放送分
★#08『32 希望』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルはかけがえのない仲間が喪われ絶望しそうになる。しかし、冒険者エレンから一縷の希望が...それは死者の蘇生のお伽噺の類い。

 大賢者はそれを聞き、あとひとつ条件を達成してリムルが進化すれば蘇生も決して不可能ではないと言う。さらに現状の多重結界は、魂拡散防止になり蘇生には都合がいいとのこと。

 リムルに迷いは一切無くなった。かつて出逢ったばかりの魔王ミリムから奨められた存在への進化、しかも蘇生伝承自体もミリム由来のよう。元来、野心の希薄なリムルにとってそんな進化は全く興味ない、と一蹴したことだった。しかし今は最優先で、どんな手段を使っても成し遂げようと決意した。

 失いたくないという一点の想いでリムルは動きだす。布石を打ちながら粛々と、着実に。

 その後、2万の軍隊が首都接近中との報せが届く。それはファルムス王国軍17,000と西方聖教会所属の神殿騎士団3,000の連合軍だった。

 それを知ったリムルは、慌てるどころか穏やかに笑みを浮かべていた。

《躍進のための組曲 その4”黎明”》

 今回も意外性はなくとも安定感がある。25-28話の一見他愛なかった日常描写がここで活き、おかげでリムルに深く感情移入できた。

 さて、祭りのお膳立てが整った。災い転じて福と成すリムルの強運は筋金入りだがそこがいい。
{/netabare}
★#09『33 全てを賭けて』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルは自身の前世を皆に打ち明け、人間と共存する理由を述べた。そして人間との今後の具体的なつきあい方を明確に。

 二度と人間に舐められない国家になると、そしてそのために魔王に進化する、と宣言する。

 その第一歩は、犠牲となったテンペスト住民たちの蘇生。そのためには単なる魔王ではなく、真なる魔王(覚醒魔王)への進化が必須であり、それには一万人以上の生け贄(ヨウブン)獲得が不可欠と判明した。

 そこでリムルは作戦を立案。

 都市の結界維持と見張りのため、都市周辺の東西南北四ヵ所に陣取る先遣隊への反撃は、幹部たちに適材適所で任命、三日後に到着する位置で休憩中の二万の軍勢本体には、けじめの意味を込めてリムル単独であたることにした。

《躍進のための組曲 その5”覚悟”》

 出過ぎた杭になって打たれなくなるため、為すべきことは明解。国民の安全保障のため清濁合わせ飲める、薄情でないゆえに非情に徹底できる主人公リムル。しかもその罪と業を自分だけで被ろうとする。

 彼の一切の迷いも力みも無い、明鏡止水の境地は清々しい。原作で転スラがますます好きになった、リムルが真の王となった瞬間のこのエピソード。アニメはこれが含まれたゆえに、個人的に2期の方が1期よりも高評価になった。

 今回は大賢者の出番なし。おかげでリムルは全てを主体的に決断し、その責任は彼一人が被る潔さがある、と伝わる。謙虚だが他への依存がない彼はとても頼もしい。

 嘗てないリムル無双へ...。次回、テンペストの新たな伝説がひとつ生まれる。
{/netabare}
★#10『34 神之怒』
{netabare}
<あらすじ>

 テンペスト幹部たちの怒りは消せない。仲間を大勢殺し、主リムルをコケにした敵。一切の縛りから解き放たれ持てるスキル全開で、因縁の異世界人との雪辱戦を含む大反撃が始まった。

 一方リムルは、ミュウランと同じアンチマジックエリアを発動させ敵側の魔法を無力化した上で、太陽光とレンズを使った、シンプルだが殺傷効果絶大の大魔法·神之怒(メギド)を仕掛けるのだった...

《躍進のための組曲 その6”降臨”》

 今回の一番のお気に入りは、大賢者によるヨウブンのリアルタイムカウント。原作には無いので新鮮だった。アニメならではの臨場感アップと大賢者活躍中アピールに貢献していた。

 次回のサブタイトルは、書籍第5巻の第4章タイトルと同じ。第4章相当エピソードはアニメでは33話から始まっていたが、次回の35話での3話分で第4章を描き切るということだろう。配分として5章にも入りそう。

 つまり次回、アニメ2期のキービジュアル、外伝のTVアニメ第24話とOAD5でお馴染みの悪魔が本編合流確定。リムルとの初対面が楽しみだ。

<転スラは時々奥が深い>

 主人公による敵側の無差別大量殺戮。これは人によっては釈然としないかもしれない。しかし転スラの場合、今後は今回と同じような敵兵の殲滅があっても、リムルによって死者の蘇生が出来るので選択肢は広がり殺人の後味の悪さは多少は軽減されるのが救いだ。

 他者への思いやりを美徳にする平和な日本に住んでると、支配者の駒に使われてる兵士には罪は無い者もいるから慈悲を、などとつい甘く考えてしまう。

 私心無く民の笑顔のため手段を選ばす自らの覇道を守る。リムルは、怒りで我を忘れることもなく、冷静に粛々と為すべきことをしただけ。無益な殺生をしたとは言えない。

 今回のリムルの行動は、老子の言葉「天地に仁なし、万物をもって芻狗(すうく)となす。聖人に仁なし、百姓(ひゃくせい)を以て芻狗となす」を思い出す。

(天地が優勝劣敗弱肉強食にて万物を自然のなりゆきにまかせることは不仁に見えるが、これこそ本当の仁。それと同様、聖人や君子が人々を自然の成り行きにまかせ、ときには、ワラで作った犬を焼き捨てるようなことをするのは一見不仁だが、これこそ本当の仁である、という意味)

 もしアニメ構成上、テンポ重視で前半駆け足で進んでいたら、原作未読の視聴者の多くは敵側へのヘイト不足で、今回の報復内容に納得しきれなかったかもしれない。

 人によっては退屈だったかもしれない構成。テンペスト側の大義名分の確立のために間違いではなかった、と今回新ためて思った。

<今回、皆殺しが外せない既定事項となった理由>

 今後の国家安泰のために、リムルは人類にとって魔王として畏怖されることは好都合だが、その反面、益ある存在としても認識してもらう必要あった。

 しかし今回のように、たった一人で万単位の軍勢をあっという間に殲滅という真実が世に広まると、リムルは全人類共通の極悪非道の悪者として間違いなく確定される。

 故にそうならないよう、真実をねじ曲げ都合良く改竄する必要があった。そのため真実を伝える生き残り、すなわち目撃者を一人たりとも残すわけに行かない。

 結果、進化に必要な定数以外の残り含めた皆殺しが実行され、生き残りは戦後の交渉に必要な戦犯数名のみとなった。

<三者三様の末路>

 今回は、己が力に溺れ増長してしまった末の因果応報とはいえ、異世界人の三名が最大の憐れだったが、彼らの物語からの退場に関して、原作者は非常に巧いと思う。そこには捻りと工夫があった。

 まずキョウヤ・タチバナ(橘 恭弥)。彼は因縁のハクロウの剣技の報復で単純明快に決着。

 次にキララ・ミズタニ(水谷希星)。彼女のスキルは精神干渉に特化しており、体力は普通で戦闘能力は皆無ゆえにテントで待機していた所、ゲルドによって追い込まれたショウゴ・タグチ(田口 省吾)により絞殺。

 最後はショウゴ。彼は人格的にもスキル的にも、三名内で最も危険な存在。彼はキララのスキルを自身に取り込むためだけに彼女を殺害。その時点でクズキャラレベル最大値。そして、ゲルドによる容赦ないフルボッコで瀕死まで追い込まれ、ここで視聴者はある程度溜飲を下げることができた。

 ところが原作者はさらに一捻り。最終的に彼らの上司ラーゼンが、ショウゴの若い肉体を自身が乗っ取り、スキルも吸収するために彼の心を壊して抹消。ショウゴは、キララ殺害の報いが早くも訪れ、最も救いようのない最期を迎える。

 以上の流れから思うこと。

 キララのスキルの殺傷能力は、他者の精神を支配して自害、もしくは他者を煽動して害するもので、自身は一切手を汚さぬもの。しかしシュラによってそれを封印されたので、テンペストでは結果的に住民殺害は未遂だった。ならば、テンペスト側のキャラに害されるより、同胞に裏切られて害される方が納得しやすい。

 彼女だけは、本人の了承なく勝手に召喚され、日本の家族から引き離された被害者としての側面が一瞬滲み出ていた。しかも、彼女の名前の意味とは真逆の絶望の末路。なんと皮肉な運命。しかも仲間に殺されるなんて…。

 故に、悲劇の拉致被害者として同情してもらえる余地が生まれ、救いが少しはあったと思う。過去の彼女のスキル完遂時の具体的な罪は、アニメでは明示されていないのだから。

 彼女の最期には同情を禁じ得ない。18歳の現代風ギャル、カラメル多めのプリン頭という個性で、充分なキャラ立ちの彼女。ここであっさり退場させたのは、もったいなくも残念だったとさえ思えた。

 それに対してキョウヤとショウゴは、質が悪いことにテンペストの民を弄んで害した。故にハクロウやゲルドに容赦なく報復される資格が十分あった。その末路はまさに自業自得と言えよう。

 ショウゴの最期の流れは、28話の王国での御前会議ではまだモブのようなラーゼンが、実は王国で最悪な曲者だった、と知らしめる効果もあった。結果的に彼の最期は新キャラの紹介も兼ねた、一石二鳥の流れだったと言えよう。

 また仮に、ショウゴより圧倒的に強いゲルドによっての止めでは、ゲルドの弱い者いじめ感が発生して、多少の後味悪さがあったかもしれない。
{/netabare}
★#11『35 魔王誕生』
{netabare}
<あらすじ>

 ごく僅かな時間で敵軍二万は全滅。生き残りは僅か三名だった。

 必要なヨウブンは十分に収穫された。そしてリムルは進化のため急激な眠気に襲われる。そこでランガに、動けないリムルを捕虜二名と共に首都に連れ帰るよう指示。残り一名の捕虜の確保は召喚した悪魔に託すのだった。

 リムルは進化の眠りに入り意識不明。そのため首都帰還後、大賢者が進化したユニークスキルがリムルの代行者となって死者蘇生を実行した。それは"反魂(はんごん)の秘術"と呼ばれる。

 首都ではリムルと魂の繋がりある者すべてに進化の恵みが等しく与えられ、住民一同もまた進化の深き眠りに落ちた。ゆえに、その奇跡の秘術成功の瞬間に立ち会えた者は非常に少ない。

《躍進のための組曲 その7”収穫”》

 今回は、原作コミックのファンにとってダイジェスト感が強い。

 個人的には以下の点でポイントが高く十分に面白かった。

▪原作同様に、アニメでも魅力溢れる悪魔キャラ
▪大賢者の進化過程のCG作画
▪大賢者と智慧之王(ラファエル)の、繊細な声の演じ分け
▪ハーベストフェスティバルの見せ方やまとめ方
▪荘厳な儀式感を壊さぬ”反魂の秘術”の演出、作画
▪ラファエルによるリムル代行の演出、作画、声優の演技
▪ファルムス国王のエドマリスと西方聖教会大司教レイヒムの情けない暗愚演出
▪シオン蘇生の瞬間シーンの、コミックを基本にしたと思われる作画

 以上で100点満点なら78点の満足度。

 次回のサブタイトルはラノベ書籍5巻5章、コミック16巻の第71話と同じ。コミックの69話からの3話分の内容をアニメ1回分に収める、と思われるがどうだろう?

 今期の区切りをどうまとめるかに注目したい。

 ついにリムルは新たなステージの第一歩を踏んだ。まもなく、この異世界での知名度も爆発的に上がり、交遊関係、活躍の場も、大きく様変わりするだろう。
{/netabare}
★#12 (第1部終)『36 解き放たれし者』
{netabare}
<あらすじ>

 リムルはシオンの膝の上で目覚めた。目の前には戦争以前と変わらないテンペストの顔ぶれが勢揃い。以前と変わらない穏やかな光景が広がっていた。

 魔王に進化したリムルだが、スライムの外見も内面も全く変わらず。変わったことと言えば、リムルの人型時に身長が伸びたことと、テンペストに頼もしくも愉快な仲間が二名ほど増えたことだった。

《躍進のための組曲 その8 終曲”新星”》

 今回は、分割クールならここしか区切りようがない、と思ったところで締めくくられていて概ね満足だった。

 コミックの第69話から第71話の内容を基に構成されたと思われるエピソード。

 23分ほどのアニメの尺に収めるため、かなりのカットや改変があったがポイントは外してなかったと思う。むしろアニメのテンポ感尊重の観点からみると、これくらいはやむを得ないだろう。逆にコミックとの違いを楽しめるほどだった。

 ヴェルドラ復活シーンもかなり簡略化された。原作では、まず元の竜体で復活して、ひとしきり言葉を交わした後の人型への変身だった。アニメでは再会の余韻が楽しめなくて残念。しかし急展開のインパクトがあり、テンポとしては悪くなかった。

 願わくば、2部の初回でうまく事象の前後を入れ換えてカットされた台詞を復活させ、リムルとヴェルドラの再会の、原作の持つしみじみとした味わいを少しでも復活させて欲しい。

<脱皮、そして飛躍>

 今回遂に、後に”新星(ニュービー)”の二つ名を与えられる魔王誕生。リムルと物語に新登場のディアブロと人型ヴェルドラ、そしてリムルと共に進化した幹部たち。

 最高位の悪魔の一柱ディアブロが配下に、守護神ヴェルドラが仲間になった。それすなわち、テンペストは戦略核兵器を手に入れたようなものだろう。

 2部でレベルアップしたリムルたちの躍進に注目したい。
{/netabare}
{/netabare}
❮全話鑑賞を終えて❯
{netabare}
<今期の脚本について>

 転スラ1期と2期のシリーズ構成と全話脚本は、筆安一幸氏

 近年、氏の名前は異世界ファンタジーもののアニメのエンドクレジットでよく見掛ける。氏が構成と全話の脚本を担当した、私が観たことある作品は、「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」、「魔女の旅々」、「神達に拾われた男」。

 以上鑑賞して、原作の持ち味を壊さないのが氏の長所だと思う。良くも悪くも原作通りで、原作を超えるような魅力をアニメに与えるほどではないが、不快なほどの改変は少なく、一定のクオリティーは約束してくれる安心感のある脚本家、というのが氏に対する個人的イメージ。

 転スラに関して、氏の脚本の割り切り方は自分と相性良かった。取捨選択の上手さはさすがプロの仕事と思えた。

<原作とアニメの構成について>

 転スラ1期は、連続2クール全23話で書籍4巻まで進んだが、4巻は途中のカットが非常に多かった。4巻は序章+全8章だが、シズの5人の教え子に関わる以外の部分はほぼカット。丁寧に描かれたのは5章から7章のみで、そこまでが1期の区切り。

 2期の第1部は、書籍第5巻のタイトル「魔王覚醒編」をメインテーマとして構成された。そのため2期では、話の整合性のため、4巻のエピソードの一部が序盤で蘇った。

 まず4巻の序章を初回の閑話に織り込んだ。

 次に本編1話目の25話から27話迄の3話分で、1期で丸々カットの第1章の獣王国の使節団来訪、2章の武装国家ドワルゴンの外遊エピソードを織り込んだ。4巻8章相当の終章は、今期の30話で描かれた。

 獣王国との交流は、今期ミリムの天災から救援を施すだけの国家間の親密度がある、とアピールするために必要。

 外遊エピソードは、特にリムルのスピーチが重要な伏線。ファルムス王国の為政者達が、リムルは世間知らずで無能な君主と誤解させるイベントだから。つまりテンペスト侵攻は、王とその取り巻きの判断ミスがすべての始まりだったで因果関係上、外せないエピソード。

 上記の3話は他にも、ガゼル王が有力なテンペストの後ろ盾であることを強調した。それは2部の伏線となるだろう。

 また、テンペストは他国が羨むほどの国力があることを示したが、それがファルムス王国に目を付けられるきっかけとなった。

 以上、振り返れば3話分の地味な展開も重要な内容だったと思う。

<第2部の予想をするのが楽しい>

 夏クール予定の第2部。原作をどう料理してどこに着地するか今から興味深々。出来れば3期に繋げるつもりで、ゆっくりと丁寧に描いて欲しいものだ。

 1部の構成から予想すると、書籍6巻最後迄進むのは確実だろう。しかし1クールで1巻分のみというのは考え辛い。7巻にも突入する可能性大だろう。しかも、リムルとヒナタが背中合わせの2期のキービジュアルの存在で、2部は7巻のほぼ最後まで描いて区切りを迎える可能性もあり得る。

 その場合、1クール12話程度でほぼ2巻分のエピソードを収めることに。2部は1部以上の原作の簡略化もあるかもしれない。

<余談:レビュータイトルに込めた祈り>

 レビュータイトルにある”深化”のここでの意味とは何か。

 魔王への進化は物語のターニングポイントでこれ以降、リムルの交遊関係のレベルと他国への影響力は格段に上がっていく。その流れの中で、テンペストはある部分で実際に”深化”することで国庫が非常に豊かになり、魔物だけでなく人も爆発的に流入、国として短期間で大発展する。

 そのあたりはシムシティなどの都市育成ゲーム感覚で楽しめたが、ファンタジーならではの発展の要因が非常に面白かった。”深化”による一石三鳥もの結果にリムルと一緒にワクワクした。また、周りから馬鹿にされていた存在に光を与える流れに感動し、その辺は原作で最も好きなところになった。

 但しそれは書籍第8巻半ば以降からのエピソード。つまりアニメは3期がないと味わえない。そのため3期制作の願いをレビュータイトルに込めた。
{/netabare}

投稿 : 2024/08/03
♥ : 13
ネタバレ

ヘラチオ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

2期は結構わくわくしてた

俺つええでも中々の試練が訪れた今作。
毎週楽しみにしてました。

{netabare}何かと理由をつけて侵攻してきた国があり、村人やシオンまで殺されてしまう。生き返らせるために魔王になることを決意するリムル。{/netabare}

他の魔王たちが動き出し、侵攻してきた国への復讐もしていくであろう次のクールが楽しみでしょうがない。

リムルのさらなる進化も期待。


OP
Storyteller TRUE
ED
STORYSEEKER STEREO DIVE FOUNDATION
挿入歌
黎明 TRUE
今作もTRUEの歌声が響く。
STEREO DIVE FOUNDATIONは久しぶりに名前を見た気がする。
どちらの曲もタイトルはstory...なのは偶然だろうか?


以下はアマゾンプライムから引用のあらすじ。
主人公リムルと、彼を慕い集った数多の魔物たちが築いた国<ジュラ・テンペスト連邦国>は、近隣国との協定、交易を経ることで、「人間と魔物が共に歩ける国」というやさしい理想を形にしつつあった。リムルの根底にあるのは人間だったスライム故の「人間への好意」……しかしこの世界には明確な「魔物への敵意」が存在していた。その理不尽な現実を突き付けられた時、リムルは選択する。「何を失いたくないのか」を--ファン待望の転生エンターテインメント、暴風の新章に突入!

第24.9話 閑話:ヒナタ・サカグチ
ヒナタは、「ジュラ・テンペスト連邦国」について書かれた親書を受け取り、リムルの存在を知ることになる…。新章への予感とともに、リムルの歩みを振り返る特別編。

第25話 リムルの忙しい日々
魔王カリオンの治める「獣王国ユーラザニア」との国交を結ぶことになったリムル。相手の使節団を迎え、もてなす準備をしていたが、やってきたのは大型魔獣白雷虎(サンダータイガー)が牽引する、物々しい虎車だった。

第26話 獣王国との交易
一悶着あったものの、ユーラザニアとの国交を結ぶことができたリムルは、続いて武装国家ドワルゴンにて行われる友好宣言の式典へ赴くことに。ところが、自分も同行させて欲しいと駄々をこねるシオンが大暴れして…。

第27話 楽園、再び
ガゼル王との会談と、武装国家ドワルゴンとの二国間友好宣言に伴う民衆への演説。ふたつの大仕事を終えたリムルは、シュナとシオンの目を盗んで、かつてゴブタと約束した「あの楽園」に意気揚々と向かうのだった。

第28話 謀略のファルムス王国
リムルの帰還を控え、宴の準備を進めるテンペスト。そこに、ヨウム一行が新メンバーの魔導士(ウィザード)ミュウランを伴い到着。一方、ファルムス王国では不穏な動きが…

第29話 災厄の前奏曲
クレイマンの指示により行動を起こすミュウラン。そしてもう一つの勢力--ファルムス王国が送り込んだ三人の異世界人が、盟主不在のテンペストに牙をむく。

第30話 動き出す麗人
テンペストが攻撃を受ける中、リムルの前にも刺客が現れる。それは、シズのもうひとりの教え子である、最強の聖騎士(ホーリーナイト)--ヒナタ・サカグチであった。

第31話 絶望
ヒナタとの戦闘で絶体絶命の状況に陥り、最後の手段、暴食者(グラトニー)を発動したリムルの運命は--。その頃、テンペストは悲壮な血と煙に包まれていた…。

第32話 希望
クレイマン、そしてファルムス王国の企みを知るリムル。仲間の命と温かな日常を失い、失意の底で目を伏せるリムルの耳に飛び込んだのは、エレンの意外な言葉だった。

第33話 全てを賭けて
「俺は魔王になろうと思う」--自らにケジメを付け、シオンたちを蘇生させるため、決戦を前にリムルは仲間たちに人間だった過去を打ち明ける。

第34話 神之怒
雪辱戦の口火がきられた。ベニマル達は各々の任務を遂行していく。ハクロウたちも再度ショウゴとキョウヤとの戦いに挑む。そしてリムルの怒りが、ファルムス軍を包みこむ。

第35話 魔王誕生
進化に必要な魂を確保したリムルに「魔王への進化(ハーベストフェスティバル)」が訪れる。強烈な睡魔に襲われたリムルは、取り逃した敵を捕らえるため、悪魔を召喚する。

第36話 解き放たれし者
ファルムス軍を退けて、何とか事なきを得たテンペストだが、問題は山積みで……。そんな中、智慧之王(ラファエル)から「無限牢獄の解析に成功した」と吉報が舞い込む。

投稿 : 2024/08/03
♥ : 13
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

さっくりサクサク3期もさあ来い!

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
異世界転生ファンタジーの超有名シリーズの2期。

スピンオフに3期と、1年間も続けて1つの作品が放送され続けるなんて、今日のアニメ界にとっては稀なことですね。

詳しくは1期のレビューにあるのですが、私は本シリーズの「軽さ」が引っ掛かり、そこまで高く評価していませんでした。でも、ここまで「軽さ」が続くと、もはや作風、長所として捉えていこうと気が変わりました。それもあって、特に終盤は1期より楽しめました。

つまり、「灰と幻想のグリムガル」や「無職転生~異世界行ったら本気出す~」などが、「本格異世界転生ファンタジー」の最高峰なら、「オーバーロード」や「転生したらスライムだった件」などは、「なろう系異世界転生ファンタジー」の最高峰なんじゃないかと思うわけです。

気軽にアニメを楽しむ、娯楽系の作品として、オススメできる作品になっています。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
建国モノは大好物のジャンル。(アニメ版は丁寧さが足りませんでしたが)「まおゆう」なんかは、すごく面白かったです。

本作も、人材や物資を集め、他国と交渉し、時には戦争もするという「建国」要素が一番楽しかったです

あとは、3話のキャバクラ回みたいな、ギャグベースの話は、本シリーズによく似合うと思いました。

そんな中、紫音(メインキャラ)やゴブゾウの死、というドシリアスを入れてきましたが、そこは本作らしく、結局「蘇生」というお手軽仕様。

まあ、その後のハーベストフェスティバルでの大虐殺と、その結果としての覚醒魔王への進化。新たなスキルの大量獲得なんかは、「これぞ主人公最強系」という、壮大且つ爽快な展開。人間側のクズっぷりをたくさん描いてきたため、不快感はありませんでした(そもそも、戦場での大虐殺や、兵士に対する攻撃は、個人的には不快さを覚えません)。

いよいよ、最強クラスの魔王になったミリム。ディアブロ、ベルトラという強大な部下も誕生し、ますます3期が楽しみになってきました。
{/netabare}


【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
閑話 ☆3
1期のおさらい。新作カットがあるだけ良いか。

1話目 ☆3
転移魔法。基本基本w 建国モノは大好物ではある。拳で分かり合う流れ。

2話目 ☆3
色々、さっくりサクサク進むな。

3話目 ☆4
解毒の刻印魔法。アルコールを消せるようになったか。魔王たらし(笑) そして、キャバクラを楽しむ(笑) こういうギャグベースの方が楽しめる作品だよな。

4話目 ☆4
ジジイ、強し(笑) 戦争か。

5話目 ☆3
ヨームとの心の交流が、まあ、最低限は描けているけどな。

6話目 ☆4
強いな~ヒナタ、というか人間。グラトニー、「飢えるもの」のリスクを背負ってないのがな。

7話目 ☆3
う~ん、メインキャラは誰も死んでない? よくも悪くも、この作品らしいな。

8話目 ☆3
さて、大戦争。どうなるか。紫音、ゴブゾウ、死んだ? この作者が、ゴブゾウはともかく、紫音殺すかな? いやいや、蘇生はやっちゃいかんだろ~。ミリムか。結界の活用。ただ、3%って、全員復活になるの? 急に気楽だな。

9話目 ☆3
人間との共存。相変わらず綺麗だな。

10話目 ☆4
二万人の大虐殺。本当に殺すかな? オーガ達はガチ殺し。女は殺しにくいから、敵に殺させる。再生するから、ボコす。メギド、静かな大魔法だな。逆に迫力あって、個人的には好き。

11話目 ☆5
いやはや、こうなると主人公最強系として面白い。さて、デーモンがどうなるか、だな。デミウルゴスみたいな。

12話目 ☆3
ディアブロ。配下、最強か? ベルトラ解放。ベルトラも擬人化か。戦力がどんどん増強されるな。ディアブロ、ベルトラで、魔王レベル3人?
{/netabare}

投稿 : 2024/08/03
♥ : 28

80.7 2 カタルシスで回想なアニメランキング2位
響け!ユーフォニアム3(TVアニメ動画)

2024年春アニメ
★★★★★ 4.2 (224)
640人が棚に入れました
高校3年生になり、部員90人超となった北宇治高校吹奏楽部の部長に就任した、黄前久美子。久美子たち3年生にとっては最後となる吹奏楽コンクールを控え、練習にも熱が入る。悲願の「全国大会金賞」は達成できるのか? 部長として踏み出した久美子、高校生活最後の熱い青春を描く!

声優・キャラクター
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
黒江真由:戸松遥
塚本秀一:石谷春貴
釜屋つばめ:大橋彩香
久石奏:雨宮天
鈴木美玲:七瀬彩夏
鈴木さつき:久野美咲
月永求:土屋神葉
剣崎梨々花:杉浦しおり
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

【第13回感想&総括レビュー】未来の僕らは知ってるよ

【第13回(最終回)感想】
初回冒頭。「ディスコ・キッド」が流れるシーン。
久美子の夢の中で展開される、北宇治吹奏楽部の春は見知った光景のようで少しずつ違っていて。
視聴者も何処か違和感を覚える内に、久美子は夢から醒めて現実の北宇治へ向かうという不思議な幕開け。

最終回(※核心的ネタバレ){netabare} ラストで、あの夢は吹奏楽部副顧問の教師として北宇治に戻ってきた久美子の未来のビジョンだった、{/netabare} という答え合わせがされる。
シナリオ自体は原作準拠ですが、初回の久美子が夢であの場面を見るというのはアニオリの脚本、演出。

原作組の私は初回冒頭観て、同じ花田 十輝氏脚本の劇場版『ラブライブ!The School Idol Movie』を思い出し、また仕掛けて来たなとニヤニヤが止まりませんでした。
あの劇場版『ラブライブ!』。{netabare} 主人公の高坂穂乃果は、解散が決まっているスクールアイドル・μ's(ミューズ)の最後に何をすべきか煮詰まっている。
が、答えは穂乃果自身の潜在意識の中に既にあって、
障害を暗示する水たまりの飛び方だって幼い頃に知っていたはずで素質も有している。

悩める穂乃果の前に現れる謎の女性シンガー。
神出鬼没な彼女は穂乃果の未来の姿も思わせ、
穂乃果が持っていた物を引き出し、導く役回りを演じる。
自分のあり方を思い出した穂乃果は、まるで未来の自分に引っ張られるように、
潜在意識の中で水たまりを軽快に飛び越え、μ's最後のパフォーマンスへ進んでいく。{/netabare}

進路は、過去、現在の延長線というだけではなく、
未来の自分から導かれる物だという、ちょっとスピリチュアルな筋書き。

変化球でしたが「青春の価値」とは?という本シリーズのテーマとも合致する好演出でした。
久美子が吹奏楽を通じて出会った人々との関わりを通じて、
久美子自身が潜在意識の中に元々持っていた素養が導き出されていく。


そう言えば、先日、言及した、みどりの石原監督にこのセリフが本作のテーマですと言われたという制作エピソード。
答えはやはり青春は未来への種蒔きという件でした。

青春を生きる者にとっては悲痛な挫折に感じるあの瞬間も、
後々振り返れば糧になっていたりもする。

私は、今回のレビュータイトルに『ラブライブ!』の曲名を引用させて頂きました。
“未来の僕たちはきっと答えを持っているはずだから ホンキで駆け抜けて”
但し、あの曲はμ'sではなく『~サンシャイン』2期OPのAqours(アクア)ですがw

未来に導かれ、懸命にあがく若人は、どこまでも輝かしい。
だから「年を取るとな、若者が頑張っているだけで涙腺が緩むもんなんだ」(by“軍曹”松本先生)

『ユーフォ』が音楽アニメとしてだけではなく、青春アニメとしても味わい深い作品であることを再認識させられた3期でした。



以下、総括レビュー

【物語 5.0点】
単なる3期目というだけでなく、シリーズ全体を締めくくる集大成。
青春の傷みと価値を視聴者にも思い知らせる鬼脚本。


北宇治は実力主義だから、麗奈は特別だから。
熱病に憑かれて立ち回って来た久美子が、
今度は部長として、また逆の立場に立たされて、後輩の頃とは違う気持ちを知り、
人間として成長して、進路を見出していく痛切だが価値ある青春ドラマ。

例えば久美子1年時の麗奈VS香織の公開オーディション。
特別じゃないけど足掻いて納得したかった香織先輩や、
そんな香織を応援し続けた“デカリボン先輩”
正直、私も状況は理解できるけど、何であんなエゴ丸出しで号泣する程、思い入れるのか心情までは共有しきれなかった。
が、3期で先輩と似たような立場を経験するとその痛みが分かる。

3期にはこうした、1期以来の過去シーンと対になるような場面が数多く登場します。
それらの場面はシリーズの思い出に浸るオマージュに留まらず、
3期でアニメ『ユーフォ』全体を総括して大団円を迎えるよう、
逆算して緻密に配置されている。

最終話。(※核心的ネタバレ){netabare} 麗奈が「悔しくて死にそう」で幕を開けた本シリーズが、ラスト「嬉しくて死にそう」{/netabare} で幕が引かれるシリーズ構成も綺麗でした。


衝撃のアニオリ回となった第12回。
私も最初は驚きましたが、振り返って、シリーズ全体の中で位置づけてみると、
{netabare} 特別にならない道を選んだ久美子と、特別であり続けたかった麗奈。
それ故の麗奈の究極の二者択一。{/netabare}
という風に、悔しいけど凄く納得できる、あまりにも“正しすぎる”構成、脚本。

展開については今後も賛否は分かれ続けるでしょうが、内容の濃密さについては、あの第12回は間違いなくアニメ史に残る名回。
視聴者の皆が同意でき心地よくなれるシナリオが必ずしも良いとは限らない。
むしろ視聴者の間で色々と異論も出ること自体が青春のリアルを象徴している。
原作は原作、アニメはアニメ。小説、漫画はアニメの台本ではない。
最後まで原作とアニメが刺激し合い、高め合って来た『ユーフォ』
アニメ作品のありかたにも一石を投じた本作は、物語5.0点に値すると私は確信しています。


シリーズ全体を締めくくるという意図を第12回までで思い知った上で迎える最終回最後のコンクール。
私は、演奏中から結果発表まで泣き通しでしたが、
一番泣いたのは{netabare} 結果発表を受け号泣する“デカリボン先輩”こと優子。{/netabare}
全ての登場人物の心情を再認識し、救済、昇華して迎える大団円。
救われなかったのは強いて言えば{netabare} 久美子との再告白シーンをカットされ、ヘアピンで濁された秀一{/netabare} くらい?w
9年シリーズを追って来た私も感無量でした。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・京都アニメーション

人間ドラマ重視の構成、脚本方針により、作中の合奏シーンが飛ばされて来た3期。
最後のコンクール自由曲もフル尺演奏ではあったのですが、
特盛された、久美子の3年間の回想シーンによるシリーズ総括が優先されましたし。
結局、京アニがフルパワーで合奏シーンを構築できる程、復活できたのかについては疑念が残りました。


人物作画による心情描写については、特に8話以降は圧巻。
泣き顔の大技から、瞳に映る動揺などの小技まで、
原作の小説媒体では拾い切れなかった心理が容赦なく描き込まれており、
こちらは京アニの本領発揮。

人物を描ける兵力は整ったが、楽器を光らせる特殊技能兵はまだ揃っていないということなのか。
相変わらず吹奏楽部員を全員分キャラデザしてくる辺り決して戦力不足ではないと思うのですが。
答え合わせのための劇場版総集編。あっても良いと思います。


放送中YouTube公式にて、毎週各話の制作メイキング映像も配信していた京アニ。
近年のアニメーション制作は手描きの技術だけでなく、
CGや撮影なども重要度を増していると再認識。
大吉山を聖域たらしめているのは、撮影処理で加えられた自然界には存在しない謎の光による心情演出です。


【キャラ 5.0点】
新登場の吹奏楽強豪校からの転校生・黒江真由。
原作購読中、私が“裏ボス”だと認識していた真由。
“裏ボス”というのは換言すれば要するに、原作の真由は本編に組み込まれてない感じがあった。
久美子たちの集大成の当て馬にされた感を抱いたという私の本音の現れでもありまして。

アニメ3期は、その真由をも北宇治の一員として救済してしまったのが白眉。
{netabare} 仲間としてちゃんと泣けた黒江真由。美しかったです。{/netabare}
自分の中で、アニメの真由は“裏ボス”から“真ボス”くらいにはなれたかな?と好感しました。
但し自分にとって、“ラスボス”はやっぱり今回も、{netabare} 自分のわがままを認めよ{/netabare} というアドバイスが容赦なかった、あすか先輩だけですが。


3年になり部長となった主人公・黄前久美子。
北宇治の三年間、三人の部長。
実は私は、原作完結段階で、最強だったのは久美子2年時の“優子政権”だと思っていまして。
“黄前政権”は優子政権の遺産で成り立っていたとの印象を抱いていました。
部長の負担を副部長とドラムメジャーに分散する組閣しかり。
3年生卒業による音の厚みの低下を補うアンコン参加しかり。
優子部長は{netabare} 大会で敗退して陰で涙しながらも直後に来年に向けて{/netabare} 部員に名演説で発破をかける気丈さも持ち合わせていましたし。

ですがアニメにて{netabare} 自らの落選も顧みず「これが今の北宇治のベストメンバーです!」{/netabare} などと部員を鼓舞する久美子の勇姿を見て、
私は、この部長最強だわと脱帽しました。
この点でも第12回の原作改変は計算し尽くされた鬼の一手だったと思います。


そんな久美子を慕い続ける久石奏もまた原作以上の後輩キャラとして期待通り魅せてくれました。
加えて、アニメ3期では釜屋つばめも効いていました。
黄前部長のポジションを取らないでと白眼視される感じで孤立する真由を支え続けてくれた親友つばめ。
3期に先立って、つばめをピックアップしたアンコン編を公開したのは、
単なる準備運動ではなく、意図して組み込んだシリーズ構成だったのだと思います。


【声優 5.0点】
転校生・黒江 真由役には戸松 遥さん。
“ラスボス”あすか先輩役が寿 美菜子さんだったので、
真由は同じスフィアの、豊崎 愛生さん辺りかな?と私は妄想していましたが、
とまっちゃんでした。

その戸松さん。アフレコでは通常、各話ごとに台本を渡される。
“北宇治カルテット”などメインキャストに至っては原作閲覧禁止令まで出される中(※1)、
戸松さんだけには、敢えて結末までシナリオを読ませた上で収録に挑ませる鬼方針(※2)
(俺にはアフレコはもちろん、ネタバレ厳禁のプレッシャーにも耐えられないでしょうw)

真由はセリフ自体は穏やかなのに、どこか引っかかる不穏なムードが醸されている。
真由のあの独特な異物感は、先々のシナリオまで織り込んだ戸松さんの繊細な演技と、素材を引き出すディレクションがあってこそ。


そんな真由の危険性に警戒心を隠さない久石奏役の雨宮 天さん。
今回は語尾の発声をコントロールすることで各キャラとの距離感を表現したとのことで。
穏やかな口調で釘を刺す奏ちゃんの真由先輩への毒舌。胃が痛かったですw

戸松さんに、雨宮さん。
言わずもがなな、黄前 久美子役の黒沢 ともよさん、高坂 麗奈役の安済 知佳さん。
この四者の熱演が交錯する第12回はクドいですが、脚本、作画、演技が極まったクライマックスでした。


新一年生役の新キャスト陣。
アニメのネームドキャラは初担当となる上石 弥生役の松田彩音さんらが、
“三馬鹿”トリオでボケとツッコミを繰り広げ、
緊張感が続くドラマの中で貴重な息抜きスポットを提供する。

その松田さんは『ユーフォ』は中学時代に観ていた大好きな作品だったのでとオーディション合格の喜びを語っており。
ここでもアニメシリーズ展開9年という月日の長さを実感します。


【音楽 4.5点】
OP主題歌はTRUEが「ReCoda」で『リズと青い鳥』を除くシリーズ全作完投。
ブラスバンドの音圧に押し負けない声量パワーと、
作品の細かい要素まで取り込む歌詞でシリーズを支え続けたTRUEさん。
「ReCoda」もまた終盤になるにつれ“後悔も喜びも全部歌に”する意義を噛みしめることができる作品解像度の高い良曲でした。
OPアニメも、卒業した先輩も含めて勢揃いしていく構成が素晴らしいです。

ED主題歌も北宇治カルテットが「音色の彼方」でTVアニメ全3期完走。
1期、2期では楽しげなメロディで和ませてくれた同カルテットですが、
3期では中学テニス部時代の葉月など貴重な過去カット等と共に、
過去と未来を繋ぐ感動系青春バラードを合唱。
こちらも余韻が残る良作なのですが、本編で負ったダメージを楽しさで上書きするタイプではないのも事実。
ここは、{netabare} ソリだけにソリを滑って覇を競うw{/netabare} など何があってもボケ倒すエンドカードに丸投げの方向でw


劇伴担当もシリーズお馴染みの松田 彬人氏。
作中演奏シーンこそ少なかったですが、
神経をざわつかせるような松田氏の心情曲群にはゾクゾクさせられました。

松田氏は、作中コンクール自由曲「一年の詩~吹奏楽のための」も戸川ヒデアキ名義で作曲。
春夏秋冬を多彩なメロディで表現する構成は、久美子の北宇治3年間の回想劇にマッチ。
作中やPV等で流れていたあのメロディも「一年の詩」だったのかとの驚きも、
最後の演奏シーンの集大成感を出す一助に。

ラスト結果発表時に、久美子1年時からの歴代コンクール自由曲や「響け!ユーフォニアム」のフレーズを散りばめていく演出も粋でした。

ただ、今回、私はサントラCDは購入しないと思います。
『ユーフォ』サントラもサブスク配信される時代になり、
「一年の詩」も放送翌日に即配信開始されているというのもありますが。
何より今回のサントラには(※核心的ネタバレ){netabare} 久美子&麗奈ソリver.のifも府大会ver.も補完されないからです。
(1期サントラでは香織先輩ソロバーションの「三日月の舞」という救済策もあったのに)
単に収録してないだけの可能性もありますが、各種コラボ、キャンペーンと商魂たくましい最近の京アニを見るに、
天邪鬼な私は、久美子&麗奈ソリを後々の商品展開の切り札に温存しているのではと穿った見方をしてしまいましてw{/netabare}

邪念もあって今回は4.5点止まりということでご容赦下さい。


【付記】
3期も色々と波乱もありましたが、初回から本気モードで視聴するに値する名作でした。
3期連続お気に入り棚直行の作品で、シリーズを締めくくって頂き、
スタッフ・キャスト陣には心から感謝致します。

初回放送の高揚感に居ても立ってもいられず、
この春、私は花見も兼ねて4年半ぶりに宇治へ聖地巡礼にも行って参りました。
久々に見る宇治は変わらぬ所もあり、変わっている所もあり。

アニメ3期もまた、例えばラスト、{netabare} 片付けられたコロナ対策用の?アクリル板{/netabare} など、
移り変わる時代を切り取った“記録映像”としての価値も有した作品でした。
数年後、未来には無くなっているであろう青春の情景を思い出しながら懐かしむのもまた一興。

『響け!ユーフォニアム』
私にとっても特別で何時までも色褪せない名シリーズです。


【参考文献】(※1)「月刊Newtype」2024年7月号
(※2)Febri「『 響け!ユーフォニアム3』 戸松遥に聞いた黒江真由との向き合いかた」


以下、過去話感想。長くなるのでタグに折りたたみ。

【第12回感想】一生忘れられない恐るべきアニオリ回
{netabare}
今月10日発売された「月刊Newtype」7月号。
特集は『響け!ユーフォニアム3』
表紙を飾った“くみれい”の付録ポスターを壁に貼って、悶えながら拝読したスタッフ、キャストインタビュー。

総じてスタッフたちは、久美子は1年生編にて、親友の麗奈と香織先輩がソロを争った際、上手い麗奈が吹くべきだと主張した。
その久美子が今度は部長として、実力が拮抗した真由と、麗奈と吹くソリの座を巡って、似たような立場に置かれる。
このことを想像以上に意識されているなと感じました。
香織を応援していた“リボン先輩”と対になるとスタッフが捉えている
奏は3期でこそ面白いと再認識もしました。

よって、今回、久美子と真由のソロオーディションを深堀りしたアニオリ回自体は想定した構成でしたし、楽しみでもありました。
ですが、内容は私の想像を遥かに越える衝撃回でした。

正直、久美子3年生編原作では、1期、2期ほどの名場面は生まれないと高をくくっていましたが、
ここに来て、響き過ぎて、感情の整理が追い付かないほどの物をぶっこまれました。
脚本・花田 十輝氏、恐るべしです。
{netabare}
甲乙付け難い久美子と真由を部員の前で再オーディションし多数決でソロを選出する。
ここまでなら、麗奈VS香織の再現。
ですが今回えげつなかったのは、久美子部長から滝先生への提案により、
オーディション時、幕で奏者の顔を隠し、音の優劣のみで選択を迫ったこと。
しかも、それを部員たちだけではなく、視聴者にも強いるのが徹底的でした。

ここまで、私も毎回胃が痛い~wとか感想を述べて来ましたが、
言うて、所詮、視聴者は部外者。青春劇を高みから見物するお気楽な立場でした。
ですが、今回の顔隠しオーディション体験により、視聴者も当事者目線に引きずり込まれ、
防具なしで青春の痛みの直撃を受けることとなりました。

そのオーディション、私も全集中で聞き入りました。
親友の麗奈には遠く及びませんが、私もシリーズサントラを聴き込んで来たからなのか、どちらが久美子の音かは、すぐに分かりました。

真由は指揮者の要求や相手のリズムを掴むのが上手いが、悪く言えば冷淡さも感じる、コンクールで点数が取れそうな奏者。
久美子は優柔不断かもしれないが優しく心が温まる音色。

もっとも、そんなユーフォ聞き分けの無駄スキルが無くとも、
どちらの音が良いか挙手した部員の顔ぶれでヒントは十分ですが。

で、結局、
(※核心的ネタバレ){netabare} 部員の票が割れ、最後の一票を託されたドラムメジャー麗奈が、
久美子の音だと分かった上で、より上手いと思った真由を選び、
原作と異なる、まさかの久美子敗北で決着。
その夜、麗奈は久美子を大吉山に呼び出し謝罪。
麗奈は正しいと強がっていた久美子も、最後は死ぬほど悔しいと号泣する。

多くの視聴者もどうせ最後は久美子と麗奈がソリで思い出作って大団円なんでしょ?と予想していたでしょうし、
原作組の私としても、進路選びの整理が付いた久美子が、晴れやかな顔でソリを吹くと信じて疑いませんでした。

ですが、リアリティを突き詰めれば、音楽に関しては音大に進学せず、奏者としてはここまでにしておこうとした程度の久美子が、
気持ちの整理くらいで、常勝・清良女子のコンクールメンバーの真由に簡単に勝てるわけがない。
実力主義を謳う久美子部長の姿勢を支持しながら、久美子がソリ吹かないなんてあってはならないと思ってしまう読者心理と、それに応えた原作プロットってまあまあ矛盾していまして。

こうした原作に残った、私が嫌いでレビューでは基本NGワードにしている言葉を敢えて使えば“ご都合主義”を徹底排除して、
久美子が見てみぬふりしていた真由の心理同様、読者が見てみぬふりしてきた諸々をえぐり出して、
青春の痛切で視聴者を張り倒したのが、今回のアニオリだったのだと思います。

私も、骨太シナリオに、殴り倒された後、整理して振り返ると、
今回の顛末に向けた伏線も着実に仕込まれていましたし、実に“正しい”プロット。
好きか嫌いかは別として、率直に言うと私は悔しいけど、かなり好きって感じですが、
このエピソードで3期も間違いなく名作に昇華したと感じました。
ラスト1回。お気に入り棚空けて待っています。{/netabare} {/netabare}


これ以上、放心状態で書き連ねてもまとまらないので、今回はこの辺で勘弁して下さい。{/netabare}

【第11回感想】窓は間もなく開け放たれるであろう
{netabare}
ネット、SNS上のユーフォ界隈には“くみれいの日”という#(ハッシュタグ)があります。
9月30日に語呂を合わせて、久美子&麗奈のイラストやらを投稿して、カップリングの尊さを称えようという現象なのですが。
今回のエピソードは、{netabare} 大好きのハグするは、別々の道に進むなら今ここで終わりにしてと麗奈が“乙女心”を爆発させるは。
余談ですが、前回、冗談交じりに麗奈の海外留学言い当てた、あすか先輩怖すぎですw{/netabare}
例年より3ヶ月早く“くみれいの日”が来たんじゃないか?ってくらい、くみれいモリモリで、どうもごちそうさまでしたという心境です。


私も、くみれいに悶えるのもいい加減にしてwそろそろ本題を。
{netabare}
第7回の盆休みシーン。アニメスタッフが原作から敢えて削った、
3日目、音大進学した、みぞれの演奏会。
スタッフは、やはり、この久美子が進路を見出していく重要局面で、スライドして使って来ました。

私が、みぞれ登場を確信していたのは、
3期に先立ち公開された『アンコン編』
みぞれが久美子に「窓開けるのが上手で嬉しかった」と謎の言動を残すシーンを、妙に詳細に映像化していたから。

窓を開けるのが上手いとは、換言すれば、他人の心を開くのが上手いということだと解釈できます。
表面上は、久美子が何を言われているのか意味不明な、
みぞれの不思議ちゃんな生態が強調されるあのシーン。
私は、みぞれが久美子自身も気がついていない良さに気がついていることを示唆する重要シーンとして、
3期で必ず伏線回収してくると、脳裏に焼き付けていました。

今回の音大演奏会後、アニオリで久美子が、みぞれ先輩と同じ音大に入ったらどう思うか?と尋ね、
みぞれに、そんな姿、想像できないとキッパリ言われる件。
このやりとりが『アンコン編』の、みぞれと久美子の会話と対になっていると思われ。

要は久美子は楽器吹くより、人の心の窓を開ける道に進みなさいと、みじょれ氏はおっしゃっているのではないでしょうか。


今回は、みどり氏からも「今の毎日は種蒔きみたいなもので、まだ知らない未来の楽しみをいっぱい色んな所に埋めているようなものなんじゃないかな?」との金言も賜りました。
私は、これがもしかして、先日触れた、石原監督に、みどりの、このセリフが本作のテーマですと明かされたというひと言なのではないか?と思えるくらい青春の核心を突いていたと感銘を受けました。{/netabare}


周囲の人々の忠言にも恵まれ、難航していた久美子の進路選びにも道筋が見えて来ました。
久美子が本当の意味で音楽を奏でるクライマックスへ向けて抜群の手応えで、物語は最終盤を迎えます。

窓は間もなく開け放たれるであろう。{/netabare}

【第10回感想】やっぱり『ユーフォ』の“ラスボス”はあすか先輩しかいません
{netabare}
次の大会を前にギスギスが極まる北宇治。
万策尽きた久美子は、2年生編『~誓いのフィナーレ』にて、
あすか先輩から受け取ったひまわりの絵葉書“魔法のチケット”を行使して助言を求めに行く。

ここに来て、原作からの改変も大きくなってきている3期。
“魔法のチケット”も、そして{netabare} 久美子部長の演説{/netabare} も、原作よりタイミングを前倒して、内容も変更しての展開。

尺の都合?と戸惑う向きもあるようですが、
私は原作者・武田 綾乃氏がアニオリの脚本、構成を“誘っている”部分も大きいと捉えています。
小説家として、自作のアニメ化には刺激は受けるけど、アニメ化の台本なんて断じて書かない。
素材は提供するけど、映像作品として料理するのはあくまでアニメスタッフでしょう。

そう言わんばかりに、この先の原作部分は、そのままアニメ化するには、ますます流用し辛い構成になっていて、
それでいて、アニオリで掘り下げたくなるような要素が盛られています。

今回、決意を固めた久美子は1期12話アニオリ回の如く、再び走り出しましたが、
これはあたかも、原作者が投げかけた素材を、オリジナルも交えた全力のアニメ化で打ち返してやるとの、
スタッフの宣戦布告にも思えました。
今後の原作改変、私は結構ワクワクしています。


で、あすか先輩について。
{netabare} 要は久美子はもっとワガママに自分の思う所を語れば良いとの忠言でしたが、
そこへ導く過程で、久美子の良い子の皮を容赦なくペリペリ剥がして行くあたりが、流石のラスボスぶり。

2年生編の奏は“中ボス”くらいで、3期の真由は“裏ボス”といった感じですが、
やっぱり『ユーフォ』のラスボスはあすか先輩しかいないと再認識。

あすか先輩は2期10話で久美子に自分の心に上がり込まれて、あれだけ言われたことを、
根に持っているのとも、恩に感じているとも違う、“響かされた”ことをずっと覚えていて。
“魔法のチケット”渡したのは、後輩への助け舟というだけでなく、
いつか響き返してやるとの執念にも思えました。
ラスボスはただでは倒されません。

それ以上に原作未読組には衝撃と思われるのが、
香織先輩とあすか先輩のルームシェア。

香織は、あすかのことを特別と思っていますが、
あすかは、かつて、香織のソロオーディション前にも駆けつけなかった。
むしろ、とかく悪役になってしまう、あすかとは反対に、
周囲にナチュラルに良い子と捉えられてしまう香織の天使ぶりに対して、
あすかは、含むところがあるそぶりすら見せてきた。

あすか先輩にズケズケと論評され蜂の巣になる久美子に対して、
香織は響き合っていて「羨ましい」とこぼしますが、
ルームシェア後も相変わらず、香織とあすかは付かず離れずの距離感なのでしょう。

そんな二人がどうして同居を?
気になる方は、原作シリーズの短編集『~北宇治高校吹奏楽部のホントの話』「だけど、あのとき」に、
事の仔細が記されているので、おさらいして悶えましょう。{/netabare} {/netabare}

【第9回感想】空気読解力高過ぎな久石奏の独自目線
{netabare}
いよいよ本格的なギスギスモードに突入した北宇治。
顧問・滝先生への疑念が広がる中、
ドラムメジャー・麗奈はついに“滝先生パトロール”まで始め、
副部長・秀一は“元カノ”久美子の苦境を前に、後輩が困惑する位ふて腐れる。
間に挟まれた部長・久美子は自分の気持ちすら整理できずいっぱいっぱい。

各々、自分は正しいつもりでも、自愛や他愛が瞳を曇らせているとは言い切れない難局。
そして、ついに訪れた{netabare} 麗奈の“部長失格”口撃による、くみれいの破局。{/netabare}
ここまで、アニメでも、くみれい描写が凝っていただけに、
私は原作で分かっていてガード固めていたにも関わらず、痛みに悶絶しました。


初回感想にて、私が注目キャラの一人として挙げた久石奏。
ここまでは求くんに対する月永くん口撃が不発に終わり狼狽えるテンプレなどネタも目立っていた印象w
(因みにネット、SNSのユーフォ界隈には、奏と求の恋仲を妄想して同人誌まで出すクラスターが実在しており、
3期はかなりの燃料投下となったと思われますw)

ですが、部の波乱に呼応して、そろそろ奏も本領発揮。
奏は中学時代、部の空気に傷つけられた過去から、
空気を読み解いてポジション取りすることに細心の注意を払って来た娘。
今回の事態に対しても奏は、{netabare} 自らもオーディション落選しながら、{/netabare} 客観的にあり得た話と、広い視野で状況を俯瞰。

久美子部長に見えていない物が奏には見えていますし、
久美子が親友・麗奈や“元カレ”秀一にも言えないことを奏の毒舌の前では言えている。
2年生編の奏は、小悪魔系“中ボス”位の印象でしたが、
3年生編の奏は、鬼の空気読解力を誇る良キャラに化けた、私の中で評価が一番上った人物。

空気読んで色々我慢して立ち回っている奏にとっては、
空気など我関せず振る舞う存在とは相性が悪く、つい毒づいてしまいがち。
求に月永呼びで、ちょっかいを出して来たのも、そのためでしょう。

そんな奏にとっては真由は天敵。
ここまで奏は真由に対しても“ジャブ”口撃を仕掛けていますが、
対・真由への毒舌は、じゃれ合いレベルの?求くんに対するからかいとは比較にならない、
本気の警戒心から来る物。

この先、アニメでも、奏の真由に対する見解が明かされると思われますが、
私にとっては、そう捉えるのか!?と衝撃を受けたシーンだったので、
映像化の時を震えて待ちたいです。


ところで、来る6月27日。
原作小説シリーズ、久々の新刊として、
久美子3年生編の一年のエピソードを描いた短編集『~北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』が発売されます。
ファンとしてはそそる要素ばかりの商品紹介文が踊る中、
私が一番惹き付けられるのが“久美子を慕う奏の視点で一年を描いた物語”の一文。

アニメでも小説でも奏ビジョンには要注目です。{/netabare}

【第8回感想】見えてなかった見たくなかった物に直面する痛みと共に修羅の門が開く
{netabare}
『ユーフォ』3期で特徴的なのは、敢えて深堀りしないで放置しておいた事が、
不意に問題として沸いて出て来てドラマが展開すること。
言い方は妙ですが伏線を張らないことが伏線になっているような脚本、演出なのだと思います。

合宿回となった8話では、久美子がもしかしたら真由に演奏で負けるかもしれないという見たくない現実を、
真由に無邪気に突きつけられて久美子が苛立つ。
久美子は大丈夫なのか?と指摘して来る麗奈や奏を通じて、
集中して音楽に向き合えていない久美子の危ない部分を見える化して空気を重量化していく。

知らなくて良い事もあると蓋をしようとして後になって事態が悪化するのは、
後輩集団欠席回となった3話でも示唆された“黄前政権”の負の傾向。
今回はその短所がいよいよメインストーリーの波乱として噴出する入り口になると思われます。
胃痛に苦しむユーフォ民の皆様。ここからがいよいよ本当の地獄でありますw


ここまでまともな合奏シーンがほとんどない点も3期の特徴。
いや、もっと言えば、先立って公開されたOVA『アンコン編』から、
本格的な合奏がお預けになっていている状況。

これまで、その原因について私は『アンコン編』レビューでも、
復興途上の京アニの制作体制が整っていないのでは?などと述べて来ましたが、
今回見て、これは合奏シーンをクライマックスのコンクール一発のカタルシスに賭ける全体構成なのだろうと予感しています。

久美子が音楽に、今後、音楽とどう付き合っていくのかという将来の問題を直視しない限り、久美子が本当の意味で演奏することはできないし、
みんなの心がバラバラなままでは真の合奏はできない。

この難局を久美子部長がどう打開していくのかが終盤の注目点です。


ところで、先日の、みどりの日にかこつけて配信された『ユーフォ 』「みどりの日ですぅ~生放送」動画にて、
川島緑輝役の豊田 萌絵さんが収録終了後に石原 立也監督から、
みどりの、とある作中セリフの言葉が本作のテーマですと告げられたというエピソードが私はとても気になっていまして。
豊田さんも、だいぶ先のセリフのため、後で答え合わせしたいとのことですが、
この話聞いて以来、私はみどりへのマークを強化しています。

部員を動物に例える独特の観察眼で本質の一端を示唆してきたみどり。
8話でも“仔犬”をおもんばかる、みどりの背中を凝視して一言一言噛み締める私なのでした。{/netabare}

【第7回感想】音に出そうな久美子の進路の迷い
{netabare}
お盆休み回。

夏休みも練習漬けの北宇治高校吹奏楽部が唯一休める三日間となると、
プールも交えた息抜き水着回との印象を受けますが、私にとっては原作組として結構重要な回になると目していたので、気合を入れて視聴しました。

で、今回、アニメでは原作から大きな改変がありました。
ですが私は不快感はなく、むしろこの先どう仕掛けて来るかがますます楽しみになりました。


この盆休みで久美子の心中を占める進路未定の悩みが深まっていく。
そこはアニメでも原作同様。
違うのは三連休なのに描かれたのが二日間だったということ。
描かれなかった三日目というのが、{netabare} 進むべき道を歩む例の先輩の勇姿を拝む、{/netabare}
進路についても吹っ切れた事例を見せる場面。
ほっと一息付ける三日目を抜いたことで、アニメでは進路を巡る久美子の混迷がより色濃くなっている形。
さらには久美子の過去を映す、写し鏡としての真由も真価を発揮し、
より息が抜けない盆休みが描写された印象。


思えば本シリーズは、原作と京アニが互いに刺激を与えながら高め合って来たコンテンツ。
例えば1期第十二回で“上手くなりたい”気持ちを知る久美子アニオリ回を京アニが投げかければ、
原作者が続編で“上手くなりたい”を後輩に伝える久美子を描写して応える。
そのアニメ化では、京アニがそこをさらに深堀りする。
原作に忠実である以上に、理想的な原作とアニメの特別な関係を構築しているのが『ユーフォ』なのだと私は思っています。

今回観ていてボディーブローのように効いたのが、
第4回、久美子が、過去を引きずる求に、気持ちは演奏に出るよと警告した件。
かく言う久美子。進路の悩みと部長の役割に忙殺される中、
今の久美子は“上手くなりたい”ことに集中できているのでしょうか。

1クールに押し込むため求問題解決を第4回に前倒しただけのように見えて、
換骨奪胎して、より焦点絞って心情を描いていく京アニ版『ユーフォ』。
今回幻となった盆休み三日目の内容。
このスタッフたちなら後々、より効果的な場面で使ってくるのかどうなのか?

原作からの変化も刺激に感じながら、後半戦に挑みたいと思います。
{/netabare}

【第6回感想】“後藤夫妻”の穴をどう埋めるか問題
{netabare}
私見では、吹奏楽は最凶の男女無差別級競技だと思います。
体格的に女子より男子の方が肺活量が大きく、出せる音量の差は明らかなのに、
どの高校もA部門コンクールメンバー枠は55名以内。
あっちは男子校で、こっちは女子多いから枠を増やしてというわけにはいきません。
久美子2年生編にて、{netabare} 関西大会で北宇治が男子校の龍聖に敗れたのはリズムを合わせる技術面よりもパワーの差による所が大きいと私は解釈しています。{/netabare}

編成枠が限られる中で、音の厚みをどうやって確保していくのか?
難題クリアこそが北宇治悲願の全国大会金賞達成の絶対条件であり、
この音量確保の点から大変悩ましいのが、昨年まで在籍していた後藤卓也&長瀬梨子。
特に久美子1年生時には2人で北宇治の低音を支える程の技術とパワーを誇った、
チューバ奏者の穴をどう埋めるかという課題になります。
原作では滝先生が、職員室での幹部との会話の中でこの問題に言及したりもしています。

明確に経験豊富で上手いと言えるチューバが鈴木美玲のみという現状で、
技術ド返しで、取り敢えず大きな音を出せるチューバを突っ込むのか。
単純に他の楽器を減らしてでもチューバの人数を補強するのか。
いずれにせよ、後藤先輩らがいた頃の厚みを再現するのは至難。

この観点から、府大会オーディションの顛末や、今回や今後も含めた滝先生の采配を考察していけば、
方針をあまり説明しない滝先生と一部部員との間に吹き始めた隙間風も含めて、
『ユーフォ』3期がより楽しく、胃痛が伴うw人間ドラマに昇華すると思われます。

今回、驚きのコンクールメンバー起用となった{netabare} 釜屋すずめ。
序盤登場時の元・バスケ部アピールは元気娘キャラを強調するネタというだけではなく、
チューバの穴修復“突貫工事”に必須な肺活量の大きさを示唆する伏線でした。{/netabare}
その他、シリーズ通じて丹念に描かれて来た、チューバ初心者・加藤葉月の成長度はどうかなど、
言葉以外も含めた伏線にもアンテナを張って、滝先生の意図の察知に努めていきたいものです。


【付記】3期は佐々木梓の出番が意外にあって嬉しいのですが、これは六華高校編アニメ化の伏線なのか、『ユーフォ』は3期で完全完結なので、外伝は作りませんという免罪符としての佐々木部長のカット多用なのか。
“立ア会”構成員として、何とも胸がざわつく今日この頃ですw{/netabare}

【第5回感想】私も松本先生に進路を相談してみたかった
{netabare}
あがた祭り回。恐らく3期で一番平和になると思われるエピソードでしょうか(これでw)

そんな中でも、{netabare} 久美子部長ら幹部たちは大会ごとのオーディション導入を決断。
黒江“ママ”先輩は、自撮り困難な旧式フィルムカメラで自分だけが映らない写真を撮り始め、
常に主語が“みんな”であることを強調。
(黒江真由は清良女子の時は“みんな”が喜んでくれるから大会ごとオーディション頑張ったと言いますが、
これって要は“みんな”が喜ばなきゃ受けたくないと言ってるようなもので、だいぶ不穏。)
くみれいは、全国大会で自由曲のユーフォ&トランペットのソリを一緒に吹きたいと、ハイリスクな契を交わす。{/netabare}
などなど地雷埋め込みは着々と進み、私の胃痛が収まることはありませんがw

初回感想にて私の注目キャラの一人に“軍曹”松本美知恵先生を挙げましたが、
個人的に3期で密かに楽しみにしていた先生と久美子の進路相談も始まりました。

松本先生には大会では決まって号泣するため、箱ティッシュを持参しているという原作設定がありますが、
この教師、そこまで思い入れるだけあって、生徒たちのことを本当によく見ています。
彼女に3年連続担任された久美子に至っては、
ある部分では、久美子自身よりも久美子のことを知っているのが松本先生と言っても過言じゃないでしょう。

これは私の勝手な持論かつ、かつての恩師たちの顔に泥を塗るようで申し訳ないですが、
世の高校の進路相談など、高ランク大学合格者実績作りのノルマをこなすための発破をかける営業でしかないと思うのですよ。
少なくとも私のいた凋落一途の進学校はそうでした。

面談だけでなく、集会やホームルームで受験戦争を勝ち抜くための激を飛ばせば飛ばすほど、
生徒のモチベーションは落ち、私より優秀だったはずの同級生がどんどん腐っていく。
挙げ句、進路相談室で、大学パンフめくって志望校選びに悩み続ける生徒たちに、そんなことしていても、勉強せねば点数は上がらないとか言い出す。
何でいつまでも進路決めないのか?って言われても、先生方は営業ばかりで進路の相談なんてしてないでしょ?
と内心腸が煮えくり返る思いでした。

愚痴が長くなりましたが、こうした体験を経た私にとっては、
松本先生の生徒の人生に指針を与えようとする親身な進路相談はとても心に染みるのです。

今回も「迷いを怠けの言い訳にするな」などと警告しつつ、
人生など大抵設計図通り行かないから「考えすぎも良くないぞ」と忠言もする懐の深さ。
何より模試の判定ランクで脅しをかけないのが素晴らしいw

原作通りなら、あと1回以上は示唆に富んだ松本先生の二者面談もあるはずで、
1期から久美子が、周りや果てはサボテンと問答するなどw
シリーズ通じて伏線を張った末に導き出される久美子の進路には感動も覚えるはず。

本シリーズの裏テーマ・久美子の進路、松本先生には今後も要注目です。{/netabare}

【第4回感想】求くん問題一挙解決回の是非
{netabare}
求くん深堀り回。
月永求が龍聖学園との間に抱えた問題及び、
“師匠”緑先輩との関係などに焦点を当てる。

3期では1話分に集中的に描写してきた求くん問題ですが、
原作では、作品内時間をじっくりかけて徐々に氷塊していくお話。
原作未読組の方の中には(※核心的ネタバレ){netabare} 求の姉の死{/netabare} という思いがけない重たい話にビックリされた方もいるかもしれません。
原作では、さらに求くんが{netabare} 滝先生に自らの境遇を重ねた{/netabare} 故の北宇治進学など、
もう少し込み入った経緯もあったりします。
(※核心的ネタバレ){netabare} 緑先輩が求の死んだ姉と似ている{/netabare} などの事情についての緑の理解度についても、原作とアニメでは現状異なります。

原作組の方の中には、求くんのエピソードを1話で一気にというのはやや乱暴に感じられる方もいるかもしれません。
因みに、今回、冒頭から盆でもないのに墓参りシーンから始まるのは、
二学期まで求くん問題を引きずる原作より展開を前倒した影響ですw

ですが私は求くん解決編を前半に持ってきたアニメ3期の全体構成はまずまずの良手だと思います。
これから起こる久美子たちの問題と並行して、後輩の問題まで取り扱うのは、
小説という媒体では繊細な群像劇を堪能できて良いのですが、
毎週放送する1クールアニメでとなると、1週間お預けになる要素が多すぎて、焦点が定まらない懸念もありましたから。

特殊ED{netabare} 「愛の挨拶」コンバスのエチュード。{/netabare}
真っ直ぐに音楽を楽しむ緑を見て、今日も良い回だったなと思えた自分がいましたし。

何より、“立ア会”(立華高校マーチングバンドへようこそのアニメ化を待ち望む市民の会)の一員として、部長となった梓の勇姿も拝めて感無量でしたし。


【付記】第4回放送に先立って、NHKラジオFM「吹奏楽の響き」にて『響け!ユーフォニアム』が特集というより50分丸々『ユーフォ』のお話でした。

長年、本シリーズの吹奏楽演奏を提供してきた洗足学園音楽大学教授・大和田先生はお馴染みとして、
ユーフォニアム奏者担当すなわち久美子の奏者としての“中の人”丸山 奈央さんのお話も聞けたのも貴重でした。

芸術文化番組を数多く抱えるNHKならではの番組を横断する『ユーフォ』アピール。
フル尺の楽曲紹介もあるので、
聴き逃し配信。作業用BGMなどにいかがでしょうか。{/netabare}

【第3回感想】強豪校に変貌しつつある北宇治が得る物と失われていく物……。
{netabare}
原作『最終楽章』は前後編。3話でその前編中盤のヤマ場に到達。
{netabare} 1年生たち4人の集団欠席{/netabare} を通じて、
全国金賞に向けて突き進む北宇治から失われていく、
楽しく部活する空気にスポットライトを当てて、
痛みと共に北宇治が着実に強くなっていることを噛み締める良エピソード。

私は、ここを3期の試金石と目していましたが、
部内の異変を察知した久美子部長の動揺を、
松田 彬人氏による劇伴の変調と、傾くアングルも駆使して好表現。

原作消化も1クールで収まる順調なペース。
ここまで飛ばした場面もありつつも、終盤クライマックスでは掘り下げるだけの尺を確保しながら、
ヒタヒタと伏線も仕込まれており、爆発したらどうなることか戦々恐々ですw


視聴者の中には麗奈の“鬼軍曹”ぶりが行き過ぎと感じた方もいるかもしれないので、麗奈推しとして多少の擁護を。

顧問の滝先生が就任した際、述べた方針は、生徒の自主性を重んじる。
振り返れば、久美子1年生時、マーチング練習で激を飛ばしていたのは“軍曹先生”松本であり、
滝先生自らも技術不足を指弾して部員を泣かせたりしていました。

それが今や生徒たち自身が指導役までこなして、北宇治は自主的に上手くなる組織へと進化しつつあります。
今回の部内のヒリヒリした空気も、吹奏楽強豪校の伝統の萌芽とポジティブに捉えることもできると思います。

ですが北宇治の伝統確立はまだ道半ば。
原作シリーズには久美子中学時代の同級生・佐々木梓を主役に、
マーチング強豪校・立華高校(※アニメでは六華)の青春を描いた
『立華高校マーチングバンドへようこそ』がありますが、
そこで描かれる確立された伝統校のスパルタぶりは麗奈なんてもんじゃない鬼っぷり。
練習中泣き出した子に対して麗奈は{netabare}一旦、列から外れるように指示しましたが、{/netabare}
立華は、{netabare} 泣いたら上手くなるわけ?とさらに追い打ちをかけますw{/netabare}

誰も見捨てたくない久美子も、麗奈だってまだまだ成長途上。
何より大人になりたい、なりたいかどうかもイメージしきれていない子供が、
部の幹部として人間にぶつかれば着実にダメージは蓄積していく。

その積み重ねから来る手応えが怖い位ヒシヒシと感じる序盤戦です。{/netabare}

【第2回感想】“ダーク久美子”黒江真由
{netabare}
原作者・武田 綾乃氏は対(ペア)としてキャラを造形する。
冷静で冷めた久美子に、熱く意識が高すぎる麗奈をぶつけて“特別”を意識させる。
適当で面倒臭がりな久美子をカバーする“便利屋”秀一。お似合いの夫婦?
といった具合に各キャラの属性が被らないように“パラメーター”調整しつつ、
凸凹なキャラ同士を人間関係の魔境?w吹奏楽部の中で共鳴させて物語を紡いでいく(※1)

そのため、くみれい、のぞみぞ、なかよし川と、
本シリーズのカップリングは尊さが凄まじいレベルに達するわけですが。

3期より登場する黒江真由は武田 綾乃氏が“ダーク久美子”と“公称”する新キャラ。
久美子が北宇治の吹部で“特別”とも出会わず、上手くなりたいという熱病にも憑かれず。
常に一歩引いた場所で、“良い子”でなぁなぁなまま、楽しく平和ならそれで良いと高校生活を過ごしてきた、もうひとりの久美子が黒江真由(※2)

無邪気に嫌味なく本音をこぼす真由は、うっかり失言メーカー・久美子とはまた違ったタイプの失言王。
鏡面みたいに相手自身の見たくない過去やら自分やらを映し出すピュアな難敵。

そんな真由の片鱗が遺憾なく表現された第2回。
久美子をサポートする幹部、副部長・秀一とドラムメジャー・麗奈もまた、これまで対(ペア)として、
久美子の世界を広げつつも、時に心をざわつかせてきた存在。
幹部トリオの凸凹化学反応の導火線も伏線として着々と張られて黄前政権は波乱ムード?

久美子部長も俺も胃が痛いよw

【参考文献】※1『響け!ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌』
※2『劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ 公式ファンブック』
{/netabare}

【初回感想】3期の注目キャラ。久石奏、滝昇、松本美智恵……
{netabare}
原作シリーズ全巻購読済。

初回から特殊OP&EDでシリーズの有終の美を飾りたいという、
スタッフの本気、熱意、悲願が存分に感じられる上々の滑り出しでした。

主人公の久美子部長や、私の推しの麗奈の鬼ドラムメジャーぶりへの期待が膨らむのは当たり前のこととして、
レビュタイにはその他に個人的に原作で良かったので、アニメでも注目したい登場人物を3人挙げさせて頂きました。

個々の注目ポイントについては、おいおい言及するとして、
この観点から初回冒頭、最初に登場するネームドキャラが{netabare} 松本先生{/netabare} という時点で、
私にとっては先頭打者ホームラン級の手応え。

京アニ並びにスタッフたちは、このアニメが何者なのか何者でありたいのかきちんと考えておられます。

正直、先の『アンコン編』位の出来だったら、
まだ京アニもリハビリ途上なので、多少遠慮して観た方が良いのかな?
とも考えていましたが杞憂でした。

これなら序盤からガチ視聴モードで行けそうです。
私も本気で行きます。{/netabare}

投稿 : 2024/08/03
♥ : 45
ネタバレ

青龍 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

制作サイドが鬼だと思っても真由のことは嫌いにならないでください(笑)

武田綾乃による原作小説は、宝島社文庫(宝島社)で刊行中(既刊11巻、原作未読)。
アニメ3期は、全13話(2024年)。監督は、『日常』、『中二病でも恋がしたい!』などの石原立也。制作は、『氷菓』、『けいおん!』シリーズなどの京都アニメーション。
(2024.7.5投稿 7.28一部加筆修正)

人気作しかも続きものの3期ということで、今更紹介する必要もないと思うので、観た前提で感想のみ書いていこうと思います。

観てない方は、是非1期から観てください!


【制作サイドが鬼だと思っても真由のことは嫌いにならないでください(笑)(※ネタバレ有りの感想)】
{netabare}3期のポイントは、なんといっても3年春に吹奏楽の強豪校・清良女子から転校してきた黒江真由(CV.戸松遥)の存在でしょう。

主人公・黄前久美子(CV.黒沢ともよ)と同じユーフォニアム担当、最後のコンクールとなる同じ3年生、圧倒的な才能を感じさせる印象的な初登場シーン、久美子の金色と違う色である銀色のユーフォニアム。

最終的な結末が全国金賞になることは、ある意味『ONEPIECE』でルフィが最後にワンピースを見つけるのと同じ予定調和でしょうから、もう一つの焦点であるトランペット担当で親友の高坂麗奈(CV.安済知佳)とのソロを久美子が一緒にできるか、そこに強烈なライバルの登場です。

この真由という存在、すごく難しい。キャラ本人も終始気にしていましたが、他の部員にも嫌われますが、本作のファンで久美子が嫌いな人はいないでしょうから、視聴者にも嫌われる(笑)

しかも、私はあなたが望むならソロをいつでも辞退するという発言は、作中で久石奏(CV.雨宮天)が突っ込んでましたが、自分の方が実力は上だという自負からくる言葉でもあるので、本心から久美子を気遣っての言葉だとは思うのですが、基本的に上から目線なんですよね(笑)

もっとも、真由は、本作の結末に向けた予定調和をぶち壊すだけではなく、本作の一つのテーマであった「実力主義とそれがもたらす悪い雰囲気との葛藤」と、「久美子の進路」に対して説得力を付与する重要なキャラクターだったと思いました。


【実力主義とそれがもたらす悪い雰囲気との葛藤】
「上手い人が吹くべきだ」というのは、久美子や麗奈が下級生のときからずっと思ってきたことです。でも、それが最上級生になって、最後のコンクールでポッと出の転校生に今まで部内でコツコツ築いてきた立場をいきなり奪われたとしても貫けるのか。

ある意味、視聴者は、そんな展開望んでない。でも、彼女たちの信念は自分たちがコンクールに出るための建前なんかじゃなくて本気だったことを示すための試金石、それが真由という存在だった。
だから、そんな久美子たちの覚悟(あすか先輩のいう“わがまま”)を試すようなキャラをあえて出してきた制作サイドが鬼だと思っても、真由のことは嫌いにならないであげてください(笑)

また、12話のオーディション結果を受けて、久美子が「これが今の北宇治のベストメンバーです」と言ったことにも説得力が増します。


そして、私は、真由という存在をあえて登場させたのであれば、最終的に久美子を勝たせて、彼女を引き立てる役で真由を終わらせるべきではないと思うのです。

『響け!ユーフォニアム』が久美子と麗奈の話であるなら、真由は「引き立て役」なのが正解だと思います。
しかし、本作は、彼女たちだけの話ではなくて、北宇治の吹奏楽部に関わってきた3年間の部員たちのそれぞれにスポットを当てた、それぞれが主人公の群像劇だと私は捉えています。だから、緑とか奏とか各キャラに生き生きとした魅力があった。
そうだとすれば、真由自身も誰かの存在を前提とした存在(脇役)ではなくて、一人の等身大の高校生(主人公)であるべき、そう思うからです。

もっとも、そう描いた方が「お話としてきれい」、一貫性がある、筋が通るというだけの話であって、そうじゃなきゃアカンとまでは思いません。


【久美子の進路】
さて、最後のユーフォニアムのソロオーディションのシーン。私、3回聴き直しましたが(笑)、1回目の方がトランペットとうまく調和していると感じました(耳に全く自信はありませんが、相手の感性に合わせられるのは、同じような感性がないと出来ないので才能だと思います。)

あのシーン、麗奈も言ってましたが、聴く人が聴けば誰が吹いているのかわかると思うんです。現に久美子の方がいいといっていた塚本や奏は揃って2回目に手を挙げていましたから。
そうすると、どちらが吹いていたか分かっていた麗奈も私情を捨てて1回目の方がいいと判断していたくらいなので、投票結果は僅差になってましたが、実際は、「真由の方が実力は上だった」のだと思います。

これが久美子が音大に行かず、高校教員に進路を決める決定打というか、そういうストーリー展開にした説得力にもなっていると思うんですよ。
(※この辺が色々と忖度した結果なのかオブラートにくるみすぎで、すごくわかり難くなっている。
わかりやすくするためにあえて単純にいうなら、久美子は、突然入ってきた転校生に努力では越えられない才能の壁を見せつけられて、薄々感じていた自分の才能の限界に気づいてしまった。
これを裏付けるかのように、音大に通っている才能のあった高校の先輩に「あなたと一緒に演奏するところは想像できない」といわれて、一瞬残念そうな反応をした後に、久美子は「そうですよね」と受け入れています。また、「死ぬほど悔しい」のなら、ソロオーディションの前に死ぬほど練習すればよかったと思うわけですが、そういう描写がなぜないのか。どっちも引き下がっている。
それは真由の方が才能があったと考えると色々としっくりくる。視聴者が観たいものを観せず、リアルを突きつけてくるわけですから、残酷だとは思いますし、だから、わかりづらくしているとも思います。)

久美子自身を特別な才能を持った存在として描きたいなら、特別な才能を持つ麗奈とソロを一緒にやって、音大にも行くという流れになるのでしょう。しかし、アニメでは、そうしなかった(※原作では第12話のソロオーディションの結果がアニメと逆のようです。)。

だから、アニメ製作者サイドは、久美子を特別な才能を持たない、あくまで視聴者に寄り添う、等身大の「普通の人」として描きたかったんだろうなと。
つまり、久美子は特別な存在なんかじゃないんだから、あなたも久美子みたいに一生懸命に何かに打ち込めば、きっと久美子みたいな素敵な青春を送れるよ!という視聴者を激励するメッセージがそこに込められていると思うわけです(私の青春はもう既に終わっていますが(笑))。

「普通の人」の話(実際にそうかどうかは置いておきます)で、あれだけの感動作なのですから、本当にすごい作品だと思います。


※賛否あるところについて、私は、仮に真由を登場させなかったのなら、久美子と麗奈がソロをして全国金賞をとる世界線で良かったと思いますし、それが視聴者が最も望んでいた結末だとも思います。
しかし、真由を登場させてしまった以上は、「ファンの立場を抜きにすれば」、真由が久美子に勝つ世界線の方が物語として全体的に筋が通ると思っています。
おかしな話と思うかもしれませんが、私は、ある意味、今まで書いてきた理由でアニメは原作以上に原作に忠実であったとすら思うので、京アニの選択を尊重したいと思います。{/netabare}


【黒江真由について思うこと(※2024.7.7追記)】
{netabare}個人的には、つかみどころがなくて真由の存在にすごい違和感がありました。

その一番の理由は、真由が久美子に対して執拗にソロを辞退すると言うところ。
真由が本当にみんなと楽しく演奏したいと「だけ」思っていたのであれば、久美子本人に直接それを言って久美子とギクシャクする必要がない。例えば、真由が滝先生に直接事情を説明して、オーディションは受けるけどソロに選ばないでくださいと言ってスマートに身を引けば済む話。
だから、真由が「物語の都合でわざわざ波風立てるように敢えてソロを譲ろうかと久美子に言っているわけではないという理由が必要」なんです。これがないと、ただの嫌味なやつに見えてしまう。でも、12話のエピソードから考えれば、真由はそういう悪女ではないし、自分の演奏にも相当のプライドをもっている
まあ、途中で転校してきて、いきなり本音で語り合えるような仲にはなれないでしょうから、お互いに向き合うのが遅すぎたというエクスキューズはできますが、もうちょっと真由の内心を小出しにしても良かったんじゃないかなあと。もっとも、真由がずっと意味ありげな行動をしているので(特にカメラの件)、早急に答えを求めず答え合わせをする感じで見直すとジワっと来そうではあります。

あと、久美子と真由の実力は、本当に紙一重の差だったんでしょうか。少なくとも真由が久美子より実力が上でないと、ソロを譲る譲らないという話自体が成立しない(お互いに確信まではなくても、そうなのかもしれないというくらいの共通認識がないと成立しない話だと思うのです。)。だから、本当に紙一重なのか疑問が生じる。現にアニメだと麗奈は、はっきりと二人の実力差を感じている。
だから、滝先生が二人の実力差を感じていないのに、麗奈がそこまで実力差を感じた理由も本来は必要になる。しかも、全国金を取るため、滝先生を信じると麗奈が言っていたにも関わらずなんですよね。

なので、個人的には、物語としての真由の存在理由は理解できても、どうしても久美子のライバルとして用意された感じがしたので、キャラの描き方として完成度が高いと思えなかった。私は、オーディションの結果は、上で書いたように本作のより大きなテーマにリンクするのでアニメの結果でいいと思っています。が、原作小説の結果を変えるなら、余計に3期を通じて、もう少し真由の内面に光を当てるべきだったと思うんですよ(真由に対する風当たりがより強まるわけなので、視聴者を納得させるためにも、そこに対してもっと配慮が必要だったんじゃないかなと。)。

その辺が、私が本作を物語、キャラ、声優で満点としなかった理由です。キャラの描き方の完成度の問題なので、本作が名作であるという私の評価に変わりはありません。
ただ、真由のキャラクターの描き方の完成度がもっと高ければ、真由の存在がここまで物議を醸すこともなかったと思います。{/netabare}

投稿 : 2024/08/03
♥ : 15

「ひろ。」 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

クオリティ高すぎて、他のアニメ作品が観れなくなってしまうほど圧倒的。

>1話まで視聴して
1期・2期視聴済です。劇場版等はおそらく未見と思う。。
←それらがどういう時系列になっているのか等も把握できておらず、復習必至?><。

でも、心配ありません。
本作シリーズはどこから観始めてもまったく問題ないでしょう。

自分自身もしばらく本作シリーズの視聴から離れてしまっていて
2期終えた時点までの、おぼろげな視聴記憶程度しか残っていませんでしたが、全く問題ありませんでした。


うわー、いつの間にか3年生になり、かつての先輩たちは既に去り
部をひっぱっていく立場になっているのですね!。
で、さらに部長!!?。
もうこれだけでもドキドキできますね。
新たな下級生とのこれからの多くのあれやこれやが観られると思うだけでワクワクも止まりません。
あいかわらず1話ごとのラストの引きも神!!。

やっぱ好きなアニメ作品の続編は、すべて同じ制作会社・スタッフで作られてほしいな~。
本作を他社で・・なんて絶対無理っしょw。ありえない!!!。


なんというか、1画面、1画面ごとのすべての画面全体が、完全にこだわりぬいて
その作品独自のアニメ世界で統一されて描ききられている!。

背景描写にしても、単に実写的な写実的な取り込み的なモノではなく
ちゃんとそのアニメ作品の世界のアニメ描写にブラッシュアップされている地続きの世界。アニメ的な世界。

こうなってくると、なんの違和感もなく、安心してその作品のアニメ世界に没入できちゃいますよね!。


今期も多くのアニメ作品が多くのアニメ会社さんによって作られて放送されていますが
本作のクオリティを見せつけられてしまうと、継続視聴できる作品はかなり絞られてしまいます。
本作の出来と比較してしまうことは、もはや”酷”?、”罪”?ですね。


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>6話まで視聴して
5話、神回でした。

何?、あの光と影の魔術!!!!。
感情表現まで内包されていて、釘付けにされちゃうじゃないですか!・


6話まで観たけど、事前情報で刷り込まれていたほど黒江真由に黒さを感じられないので
久美子の反応が、むしろ1高校生の人間味として、リアリティ感じてしまいます。

黒江真由がそもそもなぜ転校してきたのか等、心の内は計り知れないのですが
少なくとも、好きな楽器演奏をしていて、それがきっかけで部にスカウトされて
確かに演奏能力は凄いのかもだけど、ほとんど知らない人たちの中に飛び込んできた彼女にとって
どうやったら周りと仲良くなれるのか、不安の方が大きいんじゃないかな?。

そうなると、石橋を叩くように、考えられる可能性をオープンにして
「ほんとにそれでもいいの?」って確認とるのは自然な気が・・。
自分がもしその立場だとしても、そうなってしまうと思う。。

たしかに余計な一言が出てしまうけれども、高校生だったらそんなもんでしょ。

もっと自然に周りから受け入れられてもいいような気がする。
(個人的な戸松さんびいきはもちろんありますが、あえてそれは差し引いてw)


本作は主に主人公である久美子目線で描かれてしまうから
黒江真由に何か悪意めいたものがあるかもしれないようにも感じられる演出となってますが

もう少し、本音でぶつかりあえるような関係になれたら理想なんでしょうね。

・・でも、そうなれないところが本作3期の醍醐味なんだと強く感じさせられる細部に渡る神演出!!。

久美子個人としての想い、部長としての立ち位置、高坂麗奈との絆・約束を果たしたい想い。

いろんな葛藤が久美子の中で渦巻いてしまってるんでしょうね。


表面的には良い部長でもありたいと思ってしまう一面もあると思いますが
それとはまた別の感情も抑えられない・・。

そういったあたりの演技を、黒沢ともよさんは、絶妙の神演技されてると思います!。

間の取り方もそうだし、何か引きずるような感情表現など・・。

(比べてはいけないと思いますが、ゆるキャン△3期の演技とは、全くの別物ですね)。

ここが自分にとってはとてつもなく面白いです!!。


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>10話まで視聴して
10話、またまた超絶神回でした!!(スタンディングオベーション)。

9話までのギスギス+不穏+不和ムードから、10話の視聴すらも一瞬ためらわれましたが
10話ラストではナチュラルに涙が出てしまっていました><。

黒沢さんの演技がすさまじい!!(超絶誉め言葉)。
次回予告の、あのお決まりのセリフですらココロ揺さぶられる!。


黒江真由って原作ではどのようなキャラ付けされていて、どのような言動されてるのか逆に気になりますw。
アニメから入った自分にとっては、黒江ではなく白江でいいような印象^^。
ラスト手前のあのセリフも嫌味とかではなく、素直な表現だと思える。

レギュラーに定数が限られるいろんな競技においては、やはりレギュラー争いが必須ですよね。
少し前までは争うほど対象パートの部員数がいなかった環境から、いきなり強力なライバルが加入してくる。

自分が応援している日ハムにおいても、トレードや現役ドラフトなどで新たな選手が加入し
レギュラー争いが過酷になる・・。

でも、ライバルがいない環境よりも、良きライバルがいる環境の方が間違いなく双方が成長できますよね(理想論)。
ただ、そんな綺麗ごとだけで納得できるほど感情はコントロールできない・・。
二十歳を超えたプロ選手とかならなんとかできそうですが
まだ学生である主人公たちにとっては、処理しきれない事案・感情なんだと思います。
だからこそ、そこを乗り越えていく今回の10話。たまりませんでした!(誉め言葉)。
 

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>最終話まで視聴して
アニメスタッフ様方は悩みに悩み抜いた末だと思いますが、大きな素晴らしい決断をされましたね!。
そしてそれも許容して包み込んでくださる原作者様!!。どちらも最高です。


自分は正直、3期を観始めた時点で、黄前さんが部長している時点で大事件でしたw。
実際、部員同士の仲を円滑にしたり、バラバラになりそうな意見や事情を
うまく解きほぐし、同じ方向を向いて士気をあげていくという面、その他においても適任でしたよね♪。

現実の吹奏学部での人選は、どのように選ばれるのだろう?。
立候補?、顧問推薦?、部員推薦?、多数決??。
個の演奏技術、集団をまとめる能力?。
どちらも両立してるのが理想だとは思うけど、現実ではどうなんだろう?。


自分は原作は読んでませんが、原作どおりの終わり方であった場合
何か肩透かし的な感想になってしまっていたような気がします。

自分は最後の目隠しオーディションで
1回録画を見て聴き比べただけですが
正直2人の違いは全くわかりませんでしたw。

吹奏楽の演奏における良さとはなんだろうか?。
正確な演奏であること?、強弱などのメリハリ?、伸びやかな響きだったり?。
アレンジとかしちゃダメだろうから、感情込めすぎたりするのもNG?。
ミスしたりとか音がビビったり出てなかったりはもちろんNGだとは思いますが。

まあ、音の良しあしについて深く考えてみたところで意味はないと思う。


若者たちが、青春の大切な時間のほとんどをつぎ込んで
1つの目標を目指し、ぶつかりあい、悩み、時にはすれ違ったりしながらも
各々が成長し、選択し、未来へと進んでいく素晴らしい物語であったと思います。
 

投稿 : 2024/08/03
♥ : 24
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