2003年度のオートバイTVアニメ動画ランキング 1

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75.7 1 2003年度のオートバイアニメランキング1位
キノの旅(TVアニメ動画)

2003年春アニメ
★★★★☆ 3.7 (639)
4025人が棚に入れました
『キノの旅』の世界には様々な「国」(実態は都市国家)が世界中に散在している。「国」はそれぞれまったく違った文化をもっており、技術的な格差もきわめて大きい。
しかし、各国とも言語は統一されている様子(ただし、1巻「平和な国」では隣国と「言語も違う」と書かれている)。
たいていは高い城壁に囲まれており、城壁内は各国の法律が機能して比較的秩序が保たれている。しかし、城壁の外は盗賊などにも遭遇することがある無法地帯である。
ネタバレ

sukesuke さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

レールの上の三人の男 -On the Rails- について

ストーリーがとても良かった。
各話毎に旅する国が変わっていき、テンポのいい構成。
それでいて、とても深い内容の物語ばかりなのだ。
よって、好きな回は何度か見直した。

2003年なので、いまから十五年も前のアニメ。
やはり作画については見劣る。そして声優の棒読み感。
主人公などの重要なキャラは、まぁまぁ棒読みじゃないのが救いだろう。


さて、あまり書かない感想を書くまでに至った経緯は、
第5話 レール上の三人の男の回 のせいだ。
グーグル検索で感想ブログなどを見ても、いまいち……いや、私が読みたい解説がないのだ。
よってエゴだが、私がここに書き記そうと思った。
きっと私のように感じた人は、私だけじゃないはずだ。
是非、これを読んだ数奇な人は、このアニメの5話まで観てほしい。



以下ネタバレ。
見た人にわかる程度に書く。
                                      
                                      
       {netabare}                              
                                
                                      
                                    
                                  
まず、登場する三人の爺さん達は、全員無意味な仕事をしているが、全うに働いてる事を念頭に置いて欲しい。

一人目のレールを磨く爺さん。
その爺さんの仕事の経緯を聞いたあと、キノが以前旅した国の話しをする。
仕事をしなくていい国だけど仕事をする、という国の話しだ。
それを聞いた爺さんは無意味な事だと捉えた。
爺さんは最後に問いかける。
「ああ。旅人さん。旅人さんは、どこへ――行かれるのかな?」
この言葉の後、意味深な演出と同時にキノの戸惑いの表情が映ってAパートが終わる。

二人目三人目の爺さんも、ほとんど同じ経緯を辿る。
ここでも「ああ。旅人さん。旅人さんは――」(どこへ行かれるのかな)
という爺さんの言葉に同じ意味深な演出が入っている。



この演出はキノの旅について、無意味な仕事を続ける爺さん達と同様、無意味な事だと暗示していると私は解釈した。



そして二度三度とみると、深い気づきへと辿り着いた。
仕事をしなくていい国に出てくる男の話しだ。
しなくてもいい仕事だが、その辛さに応じてポイント(富)が与えられるため、仕事をしなければいけないと教えてくれる。

男は「人をぐうたらにしない何かが人生に必要なんだ。それが仕事だよ」と言う。
それを聞いたキノは皮肉る。「この国での暮らし、気に入っていますか?」と。
キノは爺さん達と同様、この国の仕事は無意味だと感じたということだ。

しかし、この国の話しはキノの旅を擁護している。
ぐうたらにしない何かとは、キノの旅に当てはまるからだ。



我々視聴者は、爺さん達の無意味な仕事や、仕事をしなくてもいい国の話しを無意味だと強く感じた。(はずだ)
さらに演出効果によって、キノの旅も無意味じゃないのかと暗示された。

つまり何が言いたいのかというと、皮肉にも我々やキノや爺さん達に無意味だと揶揄されていた、仕事をしなくてもいい国。
それだけがキノの旅を必要な事だと言ってくれているのだ。
なんてことだ。{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 4

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

「人は誰でも空を行く鳥を見るとさ、旅に出たくなるそうだ…。」

10年ぐらい前だったかな、原作が流行っていたのを覚えています。

当時の私は「ラノベなんて邪道!」と思っていたので、まったく関心がなく。

アニメ化もしてたのかーと知り、アニメを観るようになってからはずっと気になっていた作品でした。

アニメを観終わり、流行っていた当時、なぜ原作を読まなかったのか、とひどく後悔しました。

偏見は自分の人生を不毛にするなあと反省しました。

全13話です。


● ストーリー
モトラド(二輪車)のエルメスと旅をするキノ。

1人と1台が、いろいろな国を旅するお話。

「人の痛みが分かる国」「本の国」「平和な国」など、

ちょっと不思議な国々を短編小説のように訪れていきます。

キノたちの滞在期間は3日と決まっている。

その3日で見えてくる、その国の本質や人々。


淡々とした、物静かなストーリー。

だけどものすごく惹きつけられました。

ファンタジー要素が強いです。しかし、それ以上に伝わってくる人間性。メッセージ性。

寓話的な要素も非常に強いです。

☆寓話…比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭す事を意図した物語。

↑私はこの作品で「寓話ってこういう作品を言うんだ。」とわかりました。笑


物静かで不思議な雰囲気が漂う中、

内容はなかなかむごくて無常です。

しかし、どこか現実の未来の世界を見ているような。

未来の世界、人間のエゴ、きれいごと、理想、闇、隠された本性…。

そんな本質が深くぐっさりと描かれています。

どんなにきれいな理想の世界を追い求めても、

結局世界は救われないんだなーと思ってしまう。

完璧な人間や完璧な世界なんて存在しない。そんなもの無理なんだ。

だからこそ世界は美しい。

救われない世界の、儚い美しさが心にしみました。


この作品を観始めたとき、心が現実に帰ってこれませんでした。心が旅に出てしまいます…。旅に出たくなります…。

このなんともいえない不思議で魅力的な世界が心をとらえて離しませんでした。

これでキノがイケメンだったら、間違いなく私は現実に戻ってこれませんでしたね。そんな自信があります(笑)


● 作画&声優
作画と声優さんは気になるところがあります。

好きになれない、もしくは、観るのをやめてしまう人もいるでしょう。

私も初めはちょっと抵抗がありました。

作画は我慢するとして、

声優さんは聞き続けていると、これはこれで味があるのかなーと思ったりもします。

エルメスの声と話し方だけは最後まで好きになれませんでしたが。笑


マイナスポイントがもったいないですが、

それを上回るストーリーだけで私は十分満足でしたよ。


● 音楽
【 OP「all the way」/下川みくに 】
この曲大好きです!たまりません。

旅する2人にはぴったりの、心地よい曲。

この曲を口ずさみながら原付乗ると旅に出ている気分になって最高に気持ちいい。笑

OPを観てすぐにこの作品が好きになりました^^

EDも旅の夕暮れを連想させる、いい感じの曲でした。


● まとめ
作画等にはくせのある作品ですが、

私は大好きになりました。

これは原作を読まないといけない。

旅物語が好きな人には間違いなくおすすめしたい作品です^^

投稿 : 2024/12/21
♥ : 33

もちすい さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

あなたにとっての“本当の蒼い空”ってなに?

主人公で旅人であるキノが相棒のエルメス(二輪車)と世界を旅するお話で、そのキノを視点にして、国毎に多種多様で一風変わった文化や風習、価値観を描く、という寓話的な物語です。

キノは、ただの視聴者の視点であり、あくまでも傍観者という立場なので、各国を旅しますが干渉はしませんし、基本的に大活躍したりするわけでもありません。

そして、この構図が、視聴者に対して、強くて明確なメッセージ性はないけれど、何らかの波紋を投げかけます。


『キノの旅』は、こんな感じの構造の作品で、人によっては“厭世観たっぷりの人間批判がテーマ”と感じる人も多そうですが、私としては、観た人を考えさせるということ自体がテーマになっていると考えます。

多くの評価されてるような作品において。
難解なテーマ、深い考察をして理解できないと面白くならない。
描かれているテーマに共感、登場人物に感情移入できないと
感動できない。

このように、どんな名作と言われる作品でも、それを楽しめないものに対して排他的な側面を持ちますが、この作品は、視聴者に考えさせること自体が目的で、それを実にわかりやすく、とてもシンプルに描いているので、少なくとも人としての道徳感を形成しているものならば誰しもが平等に「それについてどう思う?」というテーマを(それに対してのリアクションを自分の中で言語化できるできないは別にして)共有できるのではないでしょうか。

・厭世的で観ていて気分が悪い
・キノの達観した人生観に憧れる
・何が言いたいのかよくわからない

などなど、他にも様々な感想があるでしょうが、この作品のテーマはそれらをすべて包んでいるわけです。

面白いとか面白くないとか、そういうことじゃなくて、こういった“作品の持つテーマを誰しもが平等に共有できる”という理由から、この作品を高く評価しています。


なんか変なレビューですいません。
すごく好きな作品なので、
「もっと多くの人が評価してくれたらいいな」
という願望全開のもと、“押し売りセールス”みたいなレビューになってますw

投稿 : 2024/12/21
♥ : 22
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