オーディションで学園なアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のオーディションで学園な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月07日の時点で一番のオーディションで学園なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

76.3 1 オーディションで学園なアニメランキング1位
特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~(アニメ映画)

2023年8月4日
★★★★★ 4.1 (138)
504人が棚に入れました
新部長・久美子を待っていたのは、
アンサンブルコンテスト――通称“アンコン”に出場する
代表チームを決める校内予選だった。

無事に予選を迎えられるように頑張る久美子だが、
なにせ大人数の吹奏楽部、問題は尽きないようで……。

様々な相談に乗りながら、部長として忙しい日々を送っていた。

部員たちがチームを決めていくなか、肝心な久美子自身はというと、
所属するチームすら決まっていなくて──。
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

先輩の想いを受け継ぐアンコン編

久美子2年生時、冬の短編エピソード(購読済)の中編OVA化作品。劇場にて鑑賞。

【物語 3.5点】
北宇治高校吹奏楽部の新部長に就任した久美子の初仕事。

アンサンブルコンテストとは小編成による演奏を競う大会。
勝ち抜けば府大会から地方、全国へと進むが、
代表して出られるのは各校一編成なので、北宇治では各々組んだチーム同士で部内オーディションを行うことに。

メンバー分けや、タイトな練習スケジュールに関する諸々。
それなりの地雷原であり、久美子部長の胆力を試すにはうってつけの初舞台。


アンコンについて本作では触れられない原作シリーズ(主に「第二楽章 後編 第四章」)の要素から補足すると。
北宇治のアンコン参加は、先代・優子部長の意志によるもの。
夏の全国吹奏楽コンクール終了後、3年生が引退してから新入生が入るまでの間の音の厚みの低落を補うため。
何より{netabare} 男子校のパワフルな演奏等の後塵を拝した関西大会の雪辱{/netabare} のため。
冬にも何か目標を設定し、部のレベルとモチベーションの底上げを狙った施策。

ついでに言うと、原作にて優子たちは幹部就任当初から次期部長人事の布石として久美子を新入生教育担当に参加させたり、
“黄前相談所”を部内に吹聴したりと暗躍。
(1年生の基礎練習を見続けて来た久美子だからこその“気づき”が、本作でも描写されているのが嬉しいです)

さらに優子らは部長が何でも抱え過ぎたとの反省の元、
部長、副部長に加えて演奏指導等を担当するドラムメジャーの役職を新設し、
麗奈を“入閣”させバックアップ体制を整備。

私にとってアンコン編は優子部長の置き土産を味わうエピソード。
アニメでは描かれませんが、“優子政権”はシリーズ三代の中で一番有能だったと私は確信しています。


多少トラブルはありますが、本作は久美子2年生編と3年生編をつなぐ物語ということで、まだウォームアップといった雰囲気。

ですが、正しいが部員を追い詰めてしまうドラムメジャー・麗奈。
優しいが優柔不断で舐められかねない部長・久美子。

久美子3年生編の原作既読組から見ると、来春予定の3期に向けて、
導火線付きの伏線が着々と張られているようで、早くも胃が痛いですw


【作画 4.0点】
アニメーション制作・京都アニメーション

例の放火事件に関しては同スタジオも取材メディアも触れない方針。
ですが、私はここに言及しないと書けないので、恐縮ですが敢えて踏み込ませて頂きます。

多くの貴重な人材が失われた同事件。
『ユーフォ』に関しては、キャラクターデザインで総作画監督も務めてきた池田 晶子氏。
楽器設定で職人芸と言うべき描写で演奏シーンを支えてきた高橋 博行氏。
特に、このご両人の喪失が大きく、訃報を知った時には、
私も、屋台骨をへし折られて、シリーズ再開の目処など立つのだろうか?と途方に暮れたものです。
前作から4年という月日も再建の苦難を物語っています。

本作ではクレジットにキャラデザ・池田 晶子氏、楽器設定・高橋 博行氏と故人の名を残した上で、
総作画監督に池田 和美氏(Key原作アニメ、『中二病』シリーズなど)
楽器作画監督に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』にて高橋氏と共に細密な小物設定を担当した太田 稔氏を据え、
旧来の作風継承によるシリーズ存続を目指した模様。


これを踏まえて本作の作画。
課題が浮き彫りになるかもと懸念していましたが、
劇場版クオリティとしては最上級とは言えないまでも、OVAとしては及第点以上。
思った以上に高水準にまとめて来た印象。

楽器描写の方は、金管楽器の光沢含めて奮闘。
今回は特に木製鍵盤楽器マリンバにこだわりを感じました。
内部構造まで見せてみたり、移動、運搬の様子を描き込んだり。
私は見ていてマリンバがだんだん巨大宇宙戦艦に思えてきましたw
こうして一つの複雑な構造物を描き切った自信と経験。
確実に3期における大編成の合奏シーンに繋がると思います。

キャラデザに関しては、今回はまだ久美子2年時なので池田 晶子氏が残した既存キャラの設定を踏襲すればよく、
アンコン編は作画班にとっても丁度よい叩き台になったと思われます。

ただ、これが3年生編になると、新1年生も入部して来て、新規デザインを大量に用意しなければなりません。
今回は身体の一部だけ垣間見せた例の新キャラと合わせて、どう整合性を保って行くのか。
これから真価が問われるのだと思います。


【キャラ 4.5点】
エピソードの重要キャラとして二年パーカッションの釜屋つばめをピックアップ。
マリンバに苦闘する姿を通じて、あくまで音楽アニメとして愚直に行くとのシリーズのアイデンティティを再提示。
“釜屋”の名は3期でも重要になるので覚えておいて損はありません。

また“くみれい”が予想以上に高糖度と言いましょうか高粘度と言いましょうかw
“焦らしプレイ?”も絡めてぶっ込んで来るので、久美子&麗奈推しの方は衝撃に備えましょう。

その他、{netabare} 梨々花のあざと可愛さも増量された奏&梨々花。
ついにコンバス二重奏を披露した緑&求の余人の立ち入れない師弟関係。
相変わらず喧嘩している優子&夏紀{/netabare} など、カップリングの絆はより一層強固に。


葉月、緑輝と“北宇治カルテット”の他の二人の出番が多かったのも嬉しい要素。
{netabare} 「部長は謝りすぎるな」{/netabare} との緑の助言。
“閣外協力”なのがもったいない卓越した人間観察眼です。


引退した3年生もまだ卒業前ということで“南中カルテット”も健在。
それにしても{netabare} 「窓を開けるのが上手い久美子」{/netabare}
みぞれ先輩の視点は独特かつ的確です。


【声優 4.5点】
主演・久美子役の黒沢 ともよさん。
新部長として空回る様を絶妙な塩梅で表現する流石の演技。
そんな妙演に釣られた?麗奈役の安済 知佳さんも安心して、
外面は厳しい、久美子たちの前だけで可愛い所を見せる麗奈のままでいられます。

個人的に一番ツボだったのが、{netabare} 滝先生と親しげに雑談する久美子が、鋭く突き刺さる麗奈の視線を感じて「見るな」とモノローグ連呼する、ともよさんの平坦な演技w{/netabare}


その他のキャスト陣も継続。
不倫騒動で降板作品もあった滝昇役の櫻井 孝宏さんも続投。

同じく不倫騒動で降板が相次いだ鈴木 達央さんを起用し続けた『Free!』の時もそうですが、
プライベートで問題を起こそうが、裏で誰かを泣かせようが、演技には関係ない。
そう言わんばかりに、ゴシップなど意に介さずキャスティングし続ける京アニのある意味冷徹なこの姿勢。
私は断固支持します。


【音楽 4.0点】
定期的に吹奏楽の定番曲を起用して吹部アニメの矜持を示す本シリーズ。
今回はOPの「オーメンズ・オブ・ラブ」で疾走するメロディの高揚感と共に『ユーフォ』の帰還を宣言。

オリジナル吹奏楽曲「フロントライン~青春の輝き~」は、
焦点となるマリンバの課題を鑑賞者とも共有しやすい。
息を合わせて刻まれる木琴とチューバの成長を噛み締めながら味わいたい一曲。

ED主題歌はTRUE「アンサンブル」
アカペラから歌い出し、どんどん重なって行くブラスバンドにも押し負けない。
変わらぬ声量を生かした堂々たるバラード。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 24
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

最終楽章に向けた、久美子部長のプロローグ

アニメーション制作:京都アニメーション、
監督:石原立也、副監督:小川太一、
脚本:花田十輝、キャラクターデザイン:池田晶子、
総作画監督:池田和美、音響監督:鶴岡陽太、音楽:松田彬人
音楽協力:洗足学園音楽大学、
演奏協力:プログレッシブ!ウインド・オーケストラ
吹奏楽監修:大和田雅洋、原作:武田綾乃

部長に就任した黄前久美子。
最初の大仕事は、アンサンブルコンテストとなった。
これは小編成による大会で、吹奏楽連盟が主催。
全国までの道もある大きなコンテストのことだ。
久美子は、60名を超える部員全員の前に立ち、
「全国大会」の文字が書かれた黒板をバーンと叩いた。
つまり、前部長・吉川優子のパクリである。

今回の物語は、久美子が部長として
自分らしいやり方について悩み、
吹奏楽部をまとめていく話がメイン。
これまでの黄前久美子というキャラクターが
部長という役職に就いて、久美子らしいやり方で
どのように部をまとめるのかが
最大の見どころとなっている。

そのひとつとして描かれているのが、
鎧塚みぞれとのやり取り。
初めて原作を読んだときは
よく理解できなかったのだが、
久美子は、他者の心の「窓を開ける」のが
上手いということなのだろう。
ユーフォ初期の頃は、あらゆる事件に遭遇する「特技」を
持っていたが、そのうちに問題に直面して、
他者の心に入り込んで、なるべく波風が立たないようにしながら
解決に導くことができるようになった。
ここで言う「窓を開ける」とは、「他者の長所を引き出し」たり、
「その人の立場での気づきを与える」ということだろう。

今作での久美子はさまざまなところで「らしさ」を発揮する。
アンサンブルコンテストにおける投票のやり方や、
部の全員があぶれないように編成を組ませること、
加藤葉月に対しての心配り、
釜屋つばめの演奏についての気づきと心のフォローなど、
久美子らしい部長としてのふるまいが確立された印象だった。

また、違った方向から見たこの作品の特徴は、
アニメ発のキャラクターが原作に取り入れられ、
再び、アニメで活躍するところだ。
それは、今作の主人公ともいえる立ち位置の
パーカッションの釜屋つばめと井上順菜。

原作に登場しない吹奏楽部員の名前は、
最初のアニメ化のときに全員のキャラデザを
確定させるために考案された。
知っている人も多いと思うが、
ふたりは、それぞれかまやつひろし、井上順が由来。
グループサウンズに所属していた
ミュージシャンの名前を参考に命名された。
原作に存在しないアニメのみのキャラクターの一部は、
後の原作で著者の武田綾乃が取り入れるという
逆輸入とでもいうべき手法がとられたのだった。
ちなみに、グループサウンズ系の名前は、
ほかにもパーカッションの堺万紗子(堺正章)、
ホルンの沢田樹里(沢田研二<ジュリー>)など
アニメでは多数存在している。

演奏会のシーンがない今作において、
いちばん重要な場面は、ほかの演奏者と合わせるコツを
気づかせてあげた久美子が、
つばめとふたりでマリンバを運搬するシーンだろう。
{netabare}これは原作にもあるのだが、
アニメでのシーンは不自然と思えるほどしっかり見せている。
渡り廊下での段差で重いマリンバをふたりで下ろして、
持ち上げていくという何てことのないシーンを執拗に描く。
そして、最後の段差を上げるときに
つばめの意識が大きく変化した会話があり、
つばめが積極的にひとりでマリンバを押していく。
それを久美子が優しい眼差しで見つめるのだった。
久美子部長が大きな仕事を成し遂げたことを示していた。{/netabare}

{netabare}アンサンブルコンテストの結果、
優勝はクラリネット四重奏『革命家』となった。
久美子たちはベストを尽くしたが、
一般投票で2位というものだった。{/netabare}
ただ、今回の小編成での練習によって、
つばめの件を含め、吹奏楽部全体の
強み、弱みがはっきりした。
全国吹奏楽部コンテストに向けて、
とても良い機会となったのだった。

物語のラスト。
久美子が音のする方向に走って何かを見つける。
最終楽章の予感が示された。
2024年の春クールに最後の物語が始まる。
ずっと待ちわびていた作品の結末が
いよいよ放映される。
楽しみで仕方がない。

※約4年前に起こった京都アニメーション放火事件。
甚大な被害を受けながら奇跡的に助かった人を含め、
新たに参加した人たちとともに会社が再建され、
いよいよ待ちわびたシリーズが再開された。
キャラデザに少し違和感を覚え、
作画監督の池田晶子氏がいないことを思う。
また、演出の山田尚子氏が戻ることはない。
裁判が始まり、被告の動機が明らかになり始め、
山田尚子氏への感情が語られるなど、
取り返しのつかない現実に再度痛みを感じる状況。
元には戻れなくても、傷を受けた人たち全員が、
前を向いていける状況になることを願う。
(2023年9月16日初投稿)

投稿 : 2024/11/02
♥ : 27

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

チューニング、OK!

この作品の原作は未読ですが、TVアニメと劇場版は視聴済です。


新世代スタート♪

京都アニメーションが描くのは、吹奏楽に懸ける高校生たちのささやかだけれど“トクベツ”な青春!

武田綾乃の小説「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話」(宝島社)から、人気エピソードを中編アニメーション化!

強豪吹奏楽部の新部長、はじめての大仕事は部内の“調整”!?

総勢65人の吹奏楽部。

主人公・久美子の部長としての日々は、部員たちから舞い込む相談と勃発するトラブルで幕を開ける。

無事に初仕事をやり遂げることができるのか──。

チューニング、OK!


新部長・久美子を待っていたのは、
アンサンブルコンテスト――通称“アンコン”に出場する代表チームを決める校内予選だった。

無事に予選を迎えられるように頑張る久美子だが、なにせ大人数の吹奏楽部、問題は尽きないようで……。

様々な相談に乗りながら、部長として忙しい日々を送っていた。

部員たちがチームを決めていくなか、肝心な久美子自身はというと、所属するチームすら決まっていなくて──。


公式HPのINTRODUCTIONとSTORYを引用させて頂きました。

本作は京都アニメーション放火殺人事件発生後、初となるシリーズ新作となる。
同事件ではキャラクターデザイン・総作画監督の池田晶子や楽器設定・楽器作画監督の髙橋博行など本シリーズの主要スタッフも犠牲となっているが、2名とも引き続きスタッフとしてクレジットされている(wikiより)。

正直、あまり引きずらない方が良いのかもしれません。
きっと、京アニの皆さんは思いを残しながらも前に進もうと必死になっていると思いますので…。
ですが、あまりにも事が大き過ぎて作品を見ると事件が頭をよぎってしまいます。
この記憶が消えることは一生無いと思うので、微力ですが引き続き応援したいと思います。

公式サイトを見たら、きっと気付くと思います。
この作品ならではの、こだわり抜かれた楽器の緻密さと輝き…
教室に差し込む日差しが生み出す陰影が、決して従前とクオリティが変わらないことを物語っています。

黄前部長の初仕事…
4月より本格的に始動する第3期が始まる前に、黄前部長の仕事っぷりを見られた構成は良かったと思います。
彼女らしさが溢れているというのが私の率直な感想です。

最上級生で部長ともなると、背中でモノを語る先輩もいると思います。
昔の職人の様に、師匠の技は見て盗め…みたいな感じ^^;

でも久美子の後輩に対する接し方は、それとは真逆でした。
一つの道を指し示すのは、きっと簡単なんです。
ですが、幾つもの可能性の中から最適な選択肢を後輩に選んで貰おうとすると、そう簡単なことではありません。
幾つもの可能性を提示するって、個人差があるので結構難しいですよね。

そこに寄り添う久美子の姿を見れたのは、彼女自身の成長を感じた一面でもありました。
1年生の時には自分の事で精一杯だったんですから、それを考えると喜びもひとしおです。
この作品を視聴して、第3期が益々楽しみになりました。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

主題歌は、TRUEさんによる「アンサンブル」

約1時間弱の作品でした。
サクッと視聴できるので、4月から第3期を視聴するなら必見の作品だと思います。
一回り大きくなった黄前部長、高坂麗奈との変わらない距離感など、見どころ満載でした。
4月からの第3期は絶対視聴したいと思います。
楽しみに待っていますね!

投稿 : 2024/11/02
♥ : 15

74.7 2 オーディションで学園なアニメランキング2位
劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト(アニメ映画)

2021年6月4日
★★★★★ 4.1 (68)
235人が棚に入れました
「スタァライト」――それは遠い星の、ずっと昔の、遙か未来のお話。この戯曲で舞台のキラめきを浴びた二人の少女は、運命を交換しました。「二人でスタァに」「舞台で待ってる」普通の楽しみ、喜びを焼き尽くして、運命を果たすために。わずか5歳で運命を溶鉱炉に。――危険、ですねぇ。やがて二人は再会します。一人は悲劇の舞台に立ち続け、もう一人は飛び入り、引き離され、飛び入り、二人の運命を書き換えて……キラめきに満ちた新章を生みだしたのでした。もう目を焼かれて塔から落ちた少女も、幽閉されていた少女もいません。ならば……その新章の結末は?「スタァライト」は作者不詳の物語。キラめきはどこから来て、どこに向かうのか。そして、この物語の『主演』は誰か。私は、それが観たいのです。ねぇ――聖翔音楽学園三年生、愛城華恋さん?

声優・キャラクター
小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

凄惨なる青春の滅却処分

【物語 4.0点】
心情説明を非日常的な口上、台詞で表現する様式が確立された歌劇の延長線上にある
“舞台少女”たちが剣戟等も交えて演じる“レヴュー”
その特性を生かして並の青春物では斟酌しきれない思春期心理まですくい上げて、
荒々しいけど、何か見逃せない独特のムードを提供してきた『レヴュースタァライト』

完結編となる本劇場版が題材とするのは卒業前、進路決定に悩む乙女心。
ただでさえ波乱が巻き起こる青春のターニングポイント。
これをレヴューの論理で表現となれば火力は最大化。

卒業までに決着を付けたい、アイツとの心のわだかまりがある。
舞台少女の輝きをもたらした、あの娘との親愛でさえも、
舞台人として次のステージに進むには捨てねばならない枷となる。

構成は前半は各種青春の葛藤の燻り。
愛城華恋と神楽ひかり。メイン二人の幼少期の馴れ初めから運命を再提示し場を暖めた上で、
後半は“ワイルドスクリーンバロック”と称したレヴューの連戦により、
各カップリングのぶちまけられた本音が、熱戦と化す怒涛の展開。

舞台も舞台少女も、
嫉妬も、羨望も、依存も、執心も、
熟れた青春の果実たるトマトも、
約束と運命の象徴たる東京タワーも、

爆  発  だ  !!

精算対象は舞台少女を観劇し続編を欲求する鑑賞者のメタファーたるキリンにまで及ぶ。
もはや鑑賞者も傍観者ではいられず、燃え盛る舞台上に引きずり出される。

そして完全燃焼の先にある新生。

圧巻の青春エネルギーに焼き尽くされる至福。

わかります。

【作画 4.5点】
アニメーション制作はキネマシトラスでシリーズ完投。

延焼する青春パワーはもはや学園地下に潜むレヴューの舞台空間に収まらず市中にまで漏出。
“場外乱闘”となった開幕レヴューでは、{netabare}電車上の激闘で、苛烈な殺戮表現に踏み込むだけでなく、
「私たちはもう 舞台の上」「舞台少女の生と死」「列車は必ず次の駅へ では舞台は」{/netabare}
といったキーワードを舞台演出で暗喩する映像で刻みつける強烈な先制パンチ。

後半のレヴュー連戦では、各カップリングの心象世界が突き抜け、
{netabare}清水の舞台から飛び降りるデコトラ伝説だわ、オリンピックが開幕するわ、{/netabare}
まさに百花繚乱。デザインは複雑化し、作画も高カロリー化するが、
{netabare}10年破られないデコトラを!{/netabare}と意気込む3DCGスタッフなど謎の執念wにより全受け。

盤石な土台の上に“メイン興行”たる華恋VSひかりの王道レヴューが、
{netabare}ぶった切られた東京タワー上部が頭からポジションゼロに突き刺さる{/netabare}
エネルギー有り過ぎな映像で浴びせられる力強い構成。


インパクト大なのは{netabare}アルチンボルド風の静物{/netabare}と化したキリンの風貌。
舞台少女たちが次のステージへ進む糧となる覚悟を作画でも表現し、
燃焼する舞台にさらに薪をくべる。


【キャラ 4.5点】
舞台の夢を追いかける優等生の心理を改めて掘り下げる。

中学時代の華恋に向けられた同級生の評判が象徴的。
舞台少女たちの経歴を表層だけ字面にすれば、
大抵の同年代が進学先すら決められない中、
若くして目標に向けて励む彼女たちは眩しすぎるスタァ。
が、その深層には、ひかりちゃんとの約束だけを支えに舞台に上がり続ける華恋など、
案外子供じみた脆さが混在していたりする。

冒頭、{netabare}ひかりと離別した寂しさが溢れた華恋の演技が、
クラスメイトの胸を打つ{/netabare}場面も、
舞台少女としての輝きの喪失が、新たな舞台人としての輝きを生むという意味で皮肉かつ示唆的。

この青春心理の表層深層がより高解像度で描き分けられたキャラクター造形が、
華恋&ひかりだけでなく、各舞台少女、カップリングまで徹底している。


各レヴューは互いに死力を出し尽くしたシーソーゲーム後に決着する王道バトル。
連れて舞台少女が心の奥底に残った澱(おり)まで出し尽くし、
これが得も言えぬ清々しさに繋がっている。


私の推し・星見純那も、より尊くなり嬉しいです。
有名作家の引用という表層がレヴューで指弾され吹き飛ばされた後に口にした
{netabare}「殺してみせろよ 大場なな」{/netabare}
全く知性も理性もあったもんじゃありませんがw
心の底から吐き出された自分の言葉にはどんな名言よりもゾクゾクさせられます。

【声優 4.0点】
TVアニメ版では、一部キャストらに日常会話の固さ等が散見されましたが、
本作では大分馴染んで来たのか、歌や口上と会話劇(痴話喧嘩?)との往復もスムーズで、
レヴューの完成度向上に貢献。

そんな中、ひかる役の最年長声優・三森 すずこさんの若々しさには返す返す驚かされます。
本作では、華恋役の小山 百代さんとの幼稚園時代の掛け合いも上々。
みもりん、幼女役、あと10年はいけます♪

【音楽 4.5点】
複数の作曲者が劇伴にて舞台を金管で砲撃しつつ、大作揃いのレヴュー曲も構築。
レヴュー曲はシンフォニック・ロックを軸に、
民族音楽風、人情(任侠)歌謡曲まで幅広くカバー。
曲中でも転調、緩急を交え、二転三転するレヴュー展開に好対応。
一応、加藤 達也氏は“爆発”、藤澤 慶昌氏は“燃やし”と分担された感じだったそうですが、
いずれにせよ可燃性危険物であることに変わりはありませんw

ED主題歌はスタァライト九九組「私たちはもう舞台の上」
ドロドロが除去された後に、舞台少女の未来を高らかに歌い上げる千秋楽・卒業ソング。
しかし、EDアニメ担当めばちさん。『虹ヶ咲~』でもそうですが、
素朴なイラストで波乱の青春を締め括るストッパー能力には安定感があります。

あと、音楽とは少し違いますが、
華恋&ひかりの馴れ初めで、{netabare}園児たちがカスタネットで同じリズムを取る遊戯をきっかけに、
二人も友情のリズムを掴んでいく。{/netabare}
こんな演出よく思いつくなと感心しつつ、幼女も堪能したw思い出のシーンです。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 4

芝生まじりの丘 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

レヴュースターライト(映画)について

[感想]
それなりに面白かった。
あれこれ演出で遊んでいるが、個人的には神楽ひかりの変身シーン的なアレを作ってくれたりとか、もっと演出を面白くできるような気もした。


[蛇足]
レヴュースタァライト(映画)はテレビ本編に対するファンサービスの付録である。これは映画自体が目的となるような映画オリジナル作品と異なる点である。ファンサービスの付録であることそのものは一つの主題となっている。
ファンサービス、付録としての特色を生かし次のような試みがなされる。
* 各登場人物の見せ場を作ること
* 作品のファンは多くの場合キャラクタのファンであるのでキャラクタに見せ場を作ることで喜ぶし、逆に一度も好きなキャラクタに見せ場がなければ損をした気分になる。ファンサービスという都合上、人気なキャラクタに見せ場を作るのが一つの目的になる
* レヴュースタァライトでは各キャラクタの未来やレヴューが描かれることでこの目的が達成される。
* テレビ本編で描きたりなかった事柄を補填すること
* テレビ本編で設定やテーマについて描きたかった部分が尺の都合や構成上カットされてしまうことがある。これを補填する役割を果たす。つまりディレクターズカットとしての役割
* レヴュースタァライトでは愛城 華恋の過去編がこれにあたる。ひかりと二人の思い出がテレビ本編で十分描けていなかったのを補填する役割を果たしている。
* テレビ本編で描かれたものに対するアンチテーゼ、対照するもの、ifとしてのもの
* テレビ本編では全体の構成上の統一感を持つために主題から離れたり、ifに時間を割いたり、筋が撹乱されることは避ける。一方で付録においてはこのようなしがらみがなく、自由に展開することができる。また本編に対する返報として見ることができる。
* レヴュースタァライトではたとえば皆殺しのレヴューがこれに当たる。これは一切の血が描かれないテレビ本編に対するアンチテーゼとしての現実を示す。あるいは、各レヴューにおいて勝敗がテレビ本編と反対になっていることもそうである。それにテレビ本編で構築されていた様式美、ルールがいくつか破壊されている。たとえばバッジの破壊が敗北を意味しないことがそれである。
* 物語は劇の後も続くというテーマ
* これは作中明言されているものなので割愛するが本編の続きならではのテーマといえる。

スタァライトとは何か。
## 作中劇の名前としてのスタァライト
無論スタァライトとは作中で登場する劇の名前である。
星を掴もうとして戦い、傷つく物語は無論アニメ本編の物語を象徴的に語っている。
この象徴的隠喩をもう少し深く語ることができる。

## 悲劇の象徴としてのスタァライト
スタァライトという作中劇は悲劇である。ゆえに、スタァライトとは悲劇の象徴である。
スタァライトすることを目指し愛城は努力を重ねたわけだが、その目標であるスタァライトとは始めから「悲劇」であることが予告され、明言されていたのだ。

## 遠くに光る星としてのスタァライト
スタァライトという名は星の光を表す。幼少の頃に見た遠くに見える美しい光、それがスタァライトという劇だった。
子供の愛城は「青空の向こうへ」を演じながら、青空の先にある星の明かりに向かって走るのだ。
星=「遠くにある光」、というモチーフはそのまま外国(=遠く)にいる神楽"ひかり"のことを隠喩するモチーフでもある。

## 「スターの煌めき」としてのスタァライト
もっと直接的にスタァライトとは「スターの煌めき」である。
「スタァライトする」とはスターとして他者を眩しく思わせることである。

## メタフィクションとしてのスタァライト
特に映画においてはメタフィクションとしての要素が強く出る。
「スタァライトする」とは劇中劇としての「スタァライト」を演じるという意味であると同時に、アニメーション作品としての「レヴュースタァライト」を劇中劇として自覚的に演じることである。

投稿 : 2024/11/02
♥ : 0

もやし さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

異彩を放つメディアミックスコンテンツの最終章と新たな物語の行方

今やアニメコンテンツはアニメ単体ではなく「ゲーム」・「ライブ」・「舞台」など、メディアミックスと呼ばれるコンテンツは当たり前となっている。

ただ、このタイプ作品のアニメは良い意味でも悪い意味でも平凡な作品に終わってしまうことが多い。どこかで見たような当たり障りのないアニメ。メディアミックスのアニメと聞くとそんな印象を持って第1話を見る機会が多い。

だが、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」はそんなメディアミックスコンテンツの中でも異彩を放つ作品という事はTVアニメ1話を見れば誰もが知ることだろう。本作の監督の古川知宏さんは「輪るピングドラム」や「ユリ熊嵐」など、幾原さんの作品に携わる機会が多かった事もあってか、スタァライトは幾原節を感じる壮大なスケールで描かれるバトルシーンだ。キービジュアルだけ見て軽い気持ちで見たら度肝を抜かすことになるだろう。制作会社は「メイドインアビス」なども手がけたキネマシトラスだ。

先程も言ったが、メディアミックスの話は比較的平凡な物になりがちだと私は偏見で思っている。それはスタァライトも同じだ。本作の舞台はトップスタァを目指す高校を舞台にしており、劇場版では3年生となったメインキャラクター9人が卒業に向けて足を踏み出すという内容だ。

どんな未来に進めばいいか?悩むという設定は100万回見てきたかもしれない。ただ、この平凡な物語でもアクション・背景・演出を壮大にするだけでここまで見応えのあるものになり、圧倒されてしまう。劇場版という事もあってか、バトルシーンのスケールはTVアニメの頃よりも格段に上がっていた。

バトルシーン以外にもキャラクター同士の魂を込めた掛け合いや、それを彩る挿入歌の出来も素晴らしい。声優陣はTVアニメの頃と比べると見違えるほどに成長している。そんな所が垣間見えるはメディアミックスという形態の良い所かもしれない。

非常に情報量が多く、見終わった後は頭がパンクしそうになるかもしれない。家に帰り落ち着いてパンフレットを読むと頭の整理されるだろう。

恐らくスタァライト…少なくともアニメはこれで終わりだ。メディアミックスという形態の中でここまで力の入った作品は稀有な例であり、私はスタァライトはもっと評価しても良いと思うのだ。時代は変わりメディアミックス作品は今後も沢山出てくるだろう、こんな意欲的な作品がまた見れる事を私は願っている。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」 TVアニメに続いて、劇場版も大変素晴らしい作品だった。

投稿 : 2024/11/02
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