Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.8
振り返ってみると、彼女はいつも独りぼっちだった…
この作品の原作は未読です。
前情報は一切ありませんでした。
クリオネの灯り…小さく透明かかったクリオネの身体に、内臓に相当する器官が仄かな灯りの印…
「流氷の天使」「氷の妖精」と呼ばれるクリオネ…
そんなタイトルにちょっぴり儚さを感じながら視聴に臨みました。
この作品の抱えるテーマ…それは1話目から明らかでした。
陰湿で、良い事か悪い事かと問われれば100人が100人悪いと答えるでしょう…
そんな良くないことだと分かっているのに世の中から無くならないのが、この作品のテーマでもある「いじめ」
この作品は2007年にYahoo! JAPAN「ネットの名作!泣けるサイト特集」に選出され、サイトのアクセス総数100万件を突破し、話題となった作品なのだそうです(wikiより)
何故泣ける作品なのか…
誰に感銘を受けたのか…
いじめを楽しんでいる人、いじめられるのが当たり前だと思っている人に感銘も共感もありません。
きっと心の奥底に仕舞っていた心の傷が疼くから、泣けるし感銘ができるのだと思います。
この物語の主人公は、両親を早くに亡くした上、身体が弱くいじめの標的とされた雨宮実ちゃん…
きっと彼女は特別に何かした、という訳ではないのだと思います。
いじめの理由なんてどうでも良い…
一度走り出したら止められないのがいじめ…
そしていじめが始まった途端、立ち位置が綺麗に3つに分かれるから不思議です。
いじめる人、いじめられる人、そして見て見ぬふりをしたり、あおったり傍観する人…
誰もが良くないことだと分かっているのに、止めようとする人が一人もいないんです。
これが社会の縮図だと痛感します。
もちろん、全部が全部社会がこうだとは思っていません。
私の勤めている会社はむしろ真逆ですし、その様な会社はたくさんあると思います。
でもそれは会社の仕組みがキチンと機能しているから…
そして残念ながら学校にその仕組みは存在しないんです。
だって生徒は学校を通り過ぎていく存在なので、何をやっても一過性にしかならないんです。
だから最初の一歩を踏み出すハードルが桁違いに高いんです。
だってややもすると、自分もいじめの標的になるかもしれないから…
いじめの標的になるのがどれだけ辛いことか、ちょっと考えれば分かることなのに…
自分の机に座って俯いている実ちゃんの表情が心に刺さります。
どんな罵声を浴びせられても、じっと耐える事しかできなくて…
誰がこんな自分の学校生活を夢見ていた事か…
絶対に違う…友達を作っておしゃべりをして…笑顔で「また明日ね」と言う
そんな当たり前の生活を夢見ていたに違いありません。
そんな実ちゃんの笑顔が見たいと思っていたのが、幼馴染同士のタカシとキョウコです。
思いはたくさんあります…けれど、いざという時に足が一歩前に出ない時ってあると思います。
実ちゃんに対して二人がそうだったように…
この二人の気持ちも痛いほど分かります。
本当は自分は全然嫌いじゃないのに、口を合わせないと違う人種の様な目で見られるのが怖いから竦んでしまう…
恥ずかしいですが、この経験は私にもあります。
決して人気者になりたい訳ではありません。
自分の存在は普通か別に目立たなくても構わない…
でもいじめられる側に行く抵抗がどうしても拭えなかったから…
だから勇気と笑顔が心底輝いていると思いました。
素敵だと思いました。
でも、その人に予め用意された体内時計ってホント人それぞれ…
まさかそれを突きつけられるとは思っていませんでしたけれど…
あぁ…こういう精一杯の形があるんだ…
奇跡って、ホントに心を救ってくれるんだ…
実ちゃんの最優先事項…
周りはどの様に受け止めるのでしょうか。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
私はレビューを書いている途中、何度も涙で前が見えなくなりました。
オープニングテーマは「クリオネの灯り」
エンディングテーマは「空ヲ飛ブ風」
どちらもakiさんが歌っています。
オープニングアニメで見せてくれた3人の屈託の無い笑顔…大好きでした。
エンディング…歌詞も曲調もどこまでも心に染み入る曲です。
1クール12話で、1話10分枠のショート作品でした。
決して潤沢に資金が投入された作品…という訳ではないと思います。
でも、きっと色んな制約のある中、丁寧を心がけて制作されたのではないでしょうか。
私にとって見て良かったと思えた作品でした。