オリジナルアニメーションでベートーヴェンなおすすめアニメランキング 2

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメのオリジナルアニメーションでベートーヴェンな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月23日の時点で一番のオリジナルアニメーションでベートーヴェンなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

58.4 1 オリジナルアニメーションでベートーヴェンなアニメランキング1位
クラシカロイド(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.2 (90)
338人が棚に入れました
音楽で町おこしをする地方都市に住む高校生・歌苗(かなえ)と奏助(そうすけ)の前に、“クラシカロイド”を名乗るベートーベンとモーツァルトが現れ、2人が奏でる音楽「ムジーク」の奇妙な力で、星が降ったり、巨大ロボが現れたり、騒動が起こる……というストーリー。バッハ、ショパン、シューベルトなどのクラシカロイドも登場する。

音楽はクラシックの名曲をポップス、ロック、テクノなどにアレンジしたものが使用される。


声優・キャラクター
杉田智和、梶裕貴、小松未可子、島﨑信長、鳥海浩輔、能登麻美子、前野智昭、遠藤綾、M・A・O、楠大典、石田彰
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

なかなか楽しくて個人的には好きなんだけど、正直コメントに困るアニメ

2016年10月から2017年3月放送。全25話。第2期が2017年秋放送開始予定です。
本作は続編に繋がる部分を示さず終わったのでストーリーも星評価しています。

一言で言うと、うっすらメインストーリーがあるシュールギャグアニメ。
全体の印象はシュールなNHK番組とサンライズのアニメーションの融合作品という感じです。私はどちらの雰囲気も好きなので、馴染んだ感覚で楽しめました。ロボットアニメみたいな演出もたまにあって凄く笑ったw
結構楽しみにリアタイ視聴していたものの、正直感想に困り今まで放置してしまいましたw

制作側がフリーダムで楽しんで作っているのがわかりそれが良い所でもありますが、嫌いな人もいるだろうと思います。シュールギャグにもシリアスにも振り切っておらず、本筋がわかりやすいと言えないのもちょっと見る人を選ぶかな。


秀逸な服飾デザインと地味なキャラクターデザインが好きで、それにマッチした明るくのどかな背景が個人的には見やすく、ムジークシーンはカラフルかつファンタジックで、そのギャップが映像として良かったです。

音楽は本作のコンセプトでもあり、全体的に素晴らしかったです。ムジークを使ったEDが凝っていて、毎回の見所でした。ムジークのCDとその原曲を収録したCDがNHKから出ていますが、アマゾンのクラシックCD売り上げランキングで結構高い順位につけていたのが何だか面白かったですw
クラシックの原曲を現在活躍中のアーティストが「ムジークプロデューサー」としてアレンジし、それを劇中で使うのが本作の売りで、一人の音楽家を決まったアーティストが担当。
リストのハンガリアンラプソディとベートーヴェンの第九が以前から好きなので使われて嬉しいですね。
サウンドトラックも、一部クラシックのイントロを使用している部分もあったりでとても良かったです。


【良かった所】
{netabare}バッハ様の渋い格好良さ、女の子たちのカワイイだけじゃない可愛さ、パッド君やハッシー、ぎょうな君といったシュールなマスコットも凄く好みでした。

割とはっちゃけた内容の根本にクラシカロイド達の音楽に対する向き合い方も感じられたのが良かったです。
こういうアニメは昔のアニメのように1年以上の長期間毎週放送する方が合っていると思うのですが、分割4クールならこれから意外とそういう感じになるかも?


音羽館と歌苗がクラシカロイドと現代を繋ぐ役割を担っていて、その二つがクラシカロイド達を行動させるのはかなり好きな部分でした。
歌苗もクラシカロイドに振り回されるだけにならず、りっちゃんがフォローしたり、女子会回ではっちゃける姿も見られます。

バッハが歌苗に一目置いているのも、物語を進めたりバッハの考えを提示する一助になっていて上手い。
バッハは音楽そのものをすべての人々を繋げる画一的な理想として考えていて、八音たちが成長し覚醒すれば自分と同じ考えに至ると考えていたと思います。でもベトとモツはそれぞれの曲あるいは作曲家や聞き手に別の個性があって、作り方も受け取り方もそれぞれ違っていいと思っている。というか本人たちはそんなこと考えていなくて自分のやりたいようにやっている。
おそらく他の八音もそうだと思うんです。チャイコが最終話でバッハに自分たちに何も言わないことに不満を述べていました。バッハ自身が思っているほど、彼は完璧ではないのですね。言わなくてもわかってくれるとか、自分の考えは正しいとか、団塊世代のお父さんみたいじゃないですかw
ベトとモツの結論をバッハは未熟な考え方として聞く耳を持たず、力でねじ伏せようとします。しかしそこで反対意見を述べて受け入れられたのが歌苗でした。現代人であり、まとまりに欠けるクラシカロイド達と四苦八苦しながら人間関係を築いてきた歌苗だからこそ、バッハの理想に一石を投じることができたのだと思います。

歌苗にはラストでも意外な活躍シーンがあって、作品の中心人物として一貫して描いていると思えてとてもよかったです。


もう一人の主人公ともいえる奏助ですが、良くも悪くもヒドいwでもその分周りに振り回されたり酷い目に遭ったりしていて、憎めない描き方になっていると思います。
こういう点は本作はきちんとバランスを取っているので一つの見所ですね。


それからNHKの子ども番組に私は慣れている方なので思うのですが、本作の狙いって「子どもがどんな形であれクラシック音楽を耳にする機会を増やすこと」だと思うんですよ。これはちゃんと徹底していると思う。前述のとおりCDもそれなりに売れたみたいですし、原曲CDのブックレットが凄く凝っていてそれもNHKらしいなと思います。
アニメの内容はシリアスでもコメディでも子どもに見せるのに不適切でなければそれで良い。ぶっちゃけ子どもにわからないと判断すれば、バイト回での893ネタとか、大人にはヤバく見えるものも割とゆるく入れてしまう。(ただ今はインターネットに触れる若年の子も多いので、このあたりの認識は改めた方が良いのかなあ?と個人的には思う時もあるんですが)
逆にエロに対しては厳しくて、リストのバニーコスがホットパンツタイプの露出の低いものになっているし、ジェンダーの視点で偏りが無いよう、白鳥回では異性も男性同士も女性同士もカップル成立させてバランス取っていたりする。ていうか、これが監督や脚本の悪ノリだとしても私の観てきたNHKは通しちゃいそうな気がするんですよねw
それなりに長いこと教育テレビ見てきて、この辺がいかにもNHKらしいなと思いました。
{/netabare}


【気になった所】
{netabare}6の倍数の話数に本筋に関わるストーリーを挿入していますが、「ブレイク・スルー」と「ちがいのわかるおとこ」はもっと早い話数にしてほしかったかも。お話自体は嫌いじゃないんですが、21話・22話にはもう少し本筋に絡む内容を持ってきた方が、ラストへの流れがもっと良くなったと思います。

音羽館のパイプオルガンの伏線が回収されなかったのが残念なんですが、続編でフォローあるかな?
歌苗の父親が良くも悪くもフリーダムで娘に結構迷惑かけてるのが個人的には気になる。まあ歌苗が強くなってあまり気にしていないようなので良いのかもしれませんが… {/netabare}



かなり好き嫌いが分かれるだろう作品ですが、私は女性キャラの描き方が好みだったこともあってなかなか楽しめました。
2期も視聴しますが、監督など一部の主要スタッフが変わるのでどんな風になるのか読めませんが、クラシカロイドらしい続編になればいいなと思います。(2017.9.21)

投稿 : 2024/11/23
♥ : 11

「ひろ。」 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

確かに評価に困る作品ですねw。

かつて放送当時に1話をお試し視聴した記憶はあるのですが
「何か訳が分からないアニメだな~」と自分の中でパッとせず
実質1話切りしていました。

数週間後、出張先のビジネスホテルでたまたま何話かが放送されてるのを観て
「意外に面白いかも・・」って感じてたけど、結局放置してました。

で、先日何気にTVつけてたら2期1話を偶然視聴することとなり
「あれ?、けっこう面白い??」と興味を惹かれ
再度1期1話を視聴した結果、ハマってしまいました!!。

~序盤での印象です~
・杉田さんボイスがいい!。勢いで作品をひっぱっていってくれてる感が^^。
 序盤数話での次回予告の語りは四畳半の主人公彷彿させられたw
 ・・っていうか、後から気付く石田さん、能登さん他、超豪華声優陣!!!。
・今みると、けものフレンズのクラシック奏者版!??。さらにハッシー!!?。
・クラシック音楽のことほとんど知らない自分にとって
 すっごくいい音楽教材のように感じます。布袋さんも参加されてるのですね
 ・・っていうか、後から気付く他にも超豪華アレンジャー陣!!!
 サントラとかあるなら買ってしまうかも・・・。
・すごいカラフルで目まぐるしく変化する「ム○ーク」
 自分が一番好きな某作品のゼロ時間やアプリボワゼ的な魅力を感じてしまう。
 他にも、お屋敷?に夕日が差し込んでくる時間帯の黄色っぽい感じ~柿色っぽい
 色合いと雰囲気も自分が一番好きな同作品を思い出させます。
・EDの絵画的な描写は、ギアスのED思い出しました
 こういうタッチでの表現いいですね!!。

~中盤での印象です~
・何この神作品(音楽の)!!
・チャイコちゃん、幼○戦記だったのですねw
・チャイコちゃんの方言なまり、かわいすぎます!!!♪
 一番のお気に入りキャラになってしまいました^^。

~終盤での印象です~
・なんか中盤以降、本筋を見失っているような・・・
 無理矢理何かでつないでる感というか、ストーリーも雑というか・・
・モツさんのキャラ付けはもちろん必要だと思いますが
 ちょっとしつこく感じてきて、ウ○さの方が強くなってしまった?。
 ギアスでのマオ思い出してしまいました。
・序盤から中盤で感じた「何この神作品(音楽の)」という
 自分の感想を返してほしいw
・作中でアレンジ曲を流すのはもちろん良いと思うのですが
 さっき流れたばかりでまたEDでも流すのは逆効果では??。
 むしろEDでは原曲で流してもらって両面から楽しませてほしいかな?。

~ラスト2話での印象です~
・予想外だけどかなり盛り上がって楽しませてもらいました^^。
・サムライフラメンコ思い出しましたw。いろんな意味で。
 (そういえば杉田さん繋がりでもありますね)
・やっぱチャイコちゃん最高でした!
・ラストは完璧に〆てくれたので、トータルでの満足度は非常に高いものでした。
 終わり良ければ全て良しです!!!!!。


~あとがき~
・今まで持っててもほとんど聴いたことのなかったクラシックCDを
 たま~に聴いてみたりするようになりました♪。
 ムジークと聞き比べることで、それぞれに今ハマりつつあります♪。
 クラシック音楽への興味を持たせてくれたという点において
 本作は非常に素晴らしかったです!!。
・アニメ本編については・・
 神作品になり損ねた作品?、いや、やっぱり神作品!??っていう印象ですw。
 非常~に惜しい感じですが、そういったシュールさを狙って作られている
 と思いますので、作り手さん的には思った通りなのかもですね。
 細かいところでもかなり不意に笑わせてもらいました。
 顔文字の使われ方も大好きでした!。
・まだ1周視聴のみでの感想ですので、さらに2周3周すると
 どんどんいろんな深みが増していく作品のように思えます!!(確信)。
・観てよかったし、結果大好きな作品となりました^^。

・まさかの2期!?で、さらにクラシカロイドが増えてくると思われますので
 登場キャラに関連付けて原曲もどんどん楽しんで知っていきたいと思います!。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 6

筒井筒 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

いろいろ、リアルとフィクションの世界の幅がすごい。

音羽博士によってつくられた、人間じゃない生き物クラシカロイドが、有名な音楽家の名前をしていたり、ムジークというクラシックを異能化しちゃうタクトがどこからか現れたり、それによって不思議なことを体験したりするけど、結局、クラシカロイドたちが、ふつうに楽しく、時に厳しくなんかしてる話。
クラシカロイド2より、話題がリアルで真剣だから、こっちを先に見ると、評価が下がってるかも。僕はむしろ、初期のほうが好きかも知れない。クラシカロイドの生態とかわかるから。
あと、クラシックに歌詞がついたり、イメージがつくのは、好き嫌いの激しいところだと思うけど、1期のほうが、しっくりきてる気もするけどなぁ。

話は、音羽館を中心とするドタバタです。

4/10全8巻、観終わりました。
モツとベトの話が中心だけど、最後、ボイジャーまで話は進んで終わる。
ムジークも、クラシックも、どっちもすごく興味が持てました。
すばらしい作品だと思います。見たほうがいいよ。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 5

62.3 2 オリジナルアニメーションでベートーヴェンなアニメランキング2位
薄暮(アニメ映画)

2019年6月21日
★★★★☆ 3.1 (53)
162人が棚に入れました
福島の女子高生―ヴァイオリンだけが取り柄の、どこにでもいる少女。福島の男子高校生―絵を描くだけ、それで生きてきた。震災の影も彼に宿っているのだろう。とある田園風景の中で、そんな二人は出会った。ぎこちない邂逅、それがやがて「恋」へと発展する。それがどんな奇跡を生むかはわからない。儚く散るひとときの夢物語なのかもしれない。でも、彼らは出会った。この土地で、この場所で、世界の息吹を感じながら、彼らは人として生き、価値観を共有し、恋をする。

声優・キャラクター
桜田ひより、加藤清史郎、下野紘、島本須美、福原香織、雨宮天、佐倉綾音、花澤香菜

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

アニヲタよ騙されるな!上品な青春映画に隠されたヲタク要素!!これぞヤマカンの集大成!!!

『blossom』、『Wake Up,Girls!』と東日本大震災以後、東北を舞台とした作品を手掛けてきたヤマカンこと山本寛監督の東北3部作と位置付けられたシリーズの3作目
福島県いわき市が舞台の52分の中篇映画です


福島県いわき市の女子高生、小山佐智は音楽部の所属
文化祭で披露される弦楽四重奏の発表に向けてヴァイオリンの練習に励む日々
高校の帰り道、通学路から少し外れた田園に囲まれた田舎道での夕刻時、佐智はよく一人になりたいと思ってその場所に訪れる
茜色の夕景と、深藍の夜空の間に生まれる緑色の空、薄暮を楽しむ為だ
ある日のこと、自分しかいないと思っていたいつもの帰り道のその場所で、いつも帰路のバスを共にする他校の男子生徒と遭遇する
男の子の名前は雉子波(きじなみ)祐介
美術部の彼は展覧会用の風景画を描いているのだという
その日から誰もいない田園風景で、2人の若者のだけの逢瀬が始まったのだ…


企画立ち上げ当初からクラウドファンディングや仮想通貨での制作費回収を謳い流石ヤマカン、挑戦的だなと思いました
が、出資者向け試写会で完成が大幅に遅れていることが露見すると、正直ちゃんと公開するのか?という不安の方が大きくなり、半信半疑のまま鑑賞することになったのがヤマカンを評価してる身でありつつもオイラの正直な気持ちでした


ですが実際に本編を観てみるとあまりにも完璧な作品だったので暫し唖然


そもそも近岡直さんキャラデザ総作監の美少女が画面一杯に出てくる、というだけで十分価値のある作品なのに!
原画には湖川友謙さんや平松禎史さんや足立慎吾さんや追崎史敏さんもいる!
もはや奇跡ですね、オイラの心配など吹き飛ばすクオリティです
確かに本来アニメートされるべきであろうカットが止め絵になっていた箇所が1,2点ほど観受けられましたが、演出上は気にならないレベルです
もし円盤化のチャンスがあればリテイクされる可能性もあります
今作を機にヤマカンはアニメ制作を廃業する、というのですが正直「辞める辞める詐欺」であって欲しいと思います
だってこれは“アニメが好きな人にしか作れない映画”だからです


ヤマカンは「アニヲタは観に来るな」と煽ったそうですが、とんでもない!
アニヲタであればあるほど気付くであろうヤマカンのアニメへの、そしてヤマカン自身の作品への愛、そんなものが今作には詰まっているのが受け取れます


まず一番の目玉となる弦楽四重奏の演奏シーンが特に目に付きますよね
ライブシーンというのはヤマカンの十八番ですからもちろん観応えがあります
それに文化祭のモブの中にはどこかで見覚えのあるキャラ達の面影がw
音楽部の部員は某アイドルとそっくりの姿も観受けれるw
主演には子役出身の桜田ひより、加藤清史郎を配して等身大の高校生感を出しつつも、脇を固める声優陣はヤマカン作品の常連ばかりw


アニメが好きでなければこんな映画は作れませんって
ヤマカンは今作の構想を20年前から温めていたそうですが、「いわきを舞台にアニメを」という話が持ち上がった時にふとこの構想を思い出したそうです
いわきは美しい、これは事実です
そしてその形を、アニメ映画という形に残す意味が、震災後だからこそあるのだと今作は教えてくれます
アニメ、というのは時として目で観る現実の風景以上の印象を視聴者に与えることが出来てしまいます
震災後の、今のいわきの姿を、いつか変わってしまうかもしれないこの風景を、アニメとして残すことの意義を感じ取れる映像だと思いましたね


そして何より、今作はどんな人が観ても良い話だ、と感じ取ることが出来る上品な青春映画に仕上がっています
これを最も評価したいと思います
当のいわきの人達が不快に感じるような作品であっては駄目ですからね
オイラも池袋シネリーブルで今作を観ましたが、びっくりするぐらい客がいないんですよw
今作はもっと評価されるべき!と強く感じました

投稿 : 2024/11/23
♥ : 9

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

簡単には言い表せない福島の空模様と青春の心模様と

ショートアニメ『blossom』(岩手県 未見)
『Wake Up,Girls!』(宮城県仙台市 全作視聴済)
に続いて福島県いわき市を舞台した山本 寛監督・東北三部作の中編劇場アニメ。

形容し難い青春の諸々(幼少期の被災体験も含む)を抱えた
バイオリン少女と絵描き少年が夕暮れ時の福島の空の下、
互いの芸術表現も通じて曝した心を触れ合わせて交流を深めていく。


【物語 4.0点】
詩的で文芸的。かつ、こっぱずかしいくらい古風。
主人公少女のモノローグが主導するシンプルな構成。

同じ風景を共有した少女と少年の恋慕への発展など、
青春アニメはおろか、実写映画でも絶滅危惧種ではないかと思うほど、
失われた王道を驀進する。


被災地が舞台ではあるが、真実を暴いてやろう等という、ゴシップ趣味は希薄。
聖地巡礼効果も目論み、“明るい”福島を描いたという本作においては、
震災も少女と少年のトラウマも表面上は克服されたように見え、
被災者もこの世界に価値と居場所を再発見しようとする心の復興の段階。

帰還困難区域からの避難者であるという少年の過去についても
言葉でハッキリと説明されることはない。


バイオリンの音色や絵画、空模様に反映された心模様を読み解くことが求められる。
多分に感性に訴えかける内容。


【作画 4.0点】
人物作画はソースは潤沢じゃないけど、伝えたい心情を表情に込めることは出来ている。
けど、やっぱり十分な制作体制で作画安定度を高めた登場人物を見てみたかった……となる。
お馴染みの山本 寛監督&キャラクターデザイン・総作画監督・近岡 直氏のタッグ。

特筆すべきは美術監督に起用されたMerrill Macnaut氏。
仙台市出身の日本人でショートアニメ動画の自主制作経験もあり。
薄暮の空に色付いた“緑色の光線”まで描写した絵画的な背景美術は、
この世界にまだ残された価値を再認識させるのに十二分な説得力を持つ。


私はAmazonプライムで100円増しのHDレンタルで視聴しましたが、
それに見合うだけの物はありました。


【キャラ 4.0点】
ちゃんと生理も来る主人公のバイオリン少女。自身の置かれた青春の状況を、
かじった文学等も元にして自問自答するだけの感受性を持つ。

言葉じゃ吐き出せない諸々を少女は音楽で、少年は絵画で表現する。
こんな芸術的アウトプット回路を保有する高校一年生……。


記号化された萌えキャラやイケメンとは真逆のベクトルでの非実在感。
だが、だからこそ本作には現実では心に引っ掛かってなかなか出て来ない物を
具現化する夢があるのだと思います。


深夜アニメの形式美が恋しい方の拠り所として?
一応、主人公と同じ部活の女友達“ひいちゃん”(CV.佐藤 綾音さん)が、
非モテ・アイドルオタクの現実逃避等を放言してくれたりはしますw


【声優 3.5点】
ヒロイン役に桜田 ひよりさん。相手少年役に加藤 清史郎さん。
共に子役としてキャリアを積んできた俳優をメインに据え、
脇を“ちゃんとした声優”(しかもかなり豪華)で固める布陣。

メインの演技はたどたどしいが、確立された“ちゃんとした声優”の好演の中で、
初心な少年少女像を浮かび上がらせるという狙いは成就しており、
“ちゃんとした声優”以外のアニメは認めん
という風潮に対するカウンターにはなっている。

でも、やっぱりメインの演技は拙いけれども。


【音楽 4.5点】
バイオリン演奏が特徴の本作。
心が荒れ模様の時にはしっかり乱れる演奏シーンで青春の機微を好表現。
劇伴もバイオリンをふんだんに取り込み追随する。

ED主題歌はAZUMA HITOMIさんの「とおく」。ピアノベースの静謐なバラード。
“辛矢 凡"氏の歌詞世界で淋しさの中にも、しっかりと希望の花が咲く。


【感想】
夕焼け空をいつまでも眺めていたくなる……。
そんな、すっかり忘れ去ってしまっていた大切な気持ちを思い出させてくれる、
心地よい余韻が残る作品でした。

あとは心の損壊防止のためにも、
何でもいいから感性は磨いておいた方がよいとも思いました。

正気に戻りたい時に、心の片隅に確保して置きたい一作です。

投稿 : 2024/11/23
♥ : 23
ネタバレ

ato00 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

そんなファンタージは幻です。

約52分の映画です。
震災といわき市に惹かれて視聴しました。

{netabare}いわき市は、昔仕事でよく行った街です。
福島市に住んでいた私は、浜通り経由で通っていました。
あの沿線の人たちは・・・今でも心を痛めています。

震災直後、仕事で一週間ほど福島市に泊まりました。
旅館には浜通りから避難した家族も。
あの人たちは今どうしているんだろう。
節電により暗かった福島市の夜とともに、今でも時々思い出します。{/netabare}

この作品は、震災を前面に押し出していません。
しかし、震災によっても連綿と時は流れ、確実に日常は続いている。
人は過去の縛りを解き放ち、未来を見据え今を生きなければならない。
ということを暗に示していると感じました。

晩夏の薄暮のエメラルドグリーンの空。
美しい風景をバックに繋がる男女高校生の恋慕。
その想いを面映ゆくまた頼もしい気持ちで観ていました。

話は変わって、{netabare}主人公さっちんの友人たちがつわものです。
さっちんは、自分の世界を持つ静かな女の子です。
その対極はひいちゃん。
騒々しいの権化です。
それをなだめるリナ。
オタク気質ですが、包容力があり観察眼は鋭いです。

ひーちゃんとリナのテンポの良いやり取りが楽しい。
それに、今時の女子高生って感じが自然でした。
エンドロールを見て納得。
声優さんはあやねると天ちゃん。
そりゃ、巧いはずだ。
ついでに、先輩は花澤さん。
豪華さに得した気分です。

ラストは幻想的な星空と気恥ずかしい行為。
ピュアに当てられ、私はしばらく立ち直れませんでした。
ただし、薄暮には美しい星空は見えません。
だから、ファンタジーを観たってことにしておきましょう。{/netabare}

投稿 : 2024/11/23
♥ : 12
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