オリジナルアニメーションでオリンピックなTVアニメ動画ランキング 1

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73.1 1 オリジナルアニメーションでオリンピックなアニメランキング1位
体操ザムライ(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (238)
714人が棚に入れました
時は2002年。かつては強かった日本男子体操界。体操に人生を注いできた元日本代表、荒垣城太郎(29)は、思うように演技ができなくなっていた。それでも練習を重ねる日々を送っていたが、ある日コーチの天草から「引退」を勧められてしまう。悩む城太郎。それを支える娘の玲。だが、ある『出会い』によって荒垣家の運命は大きく変わっていく。

声優・キャラクター
浪川大輔、小野賢章、本泉莉奈、梶裕貴、堀内賢雄
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

昔の光 今いずこ

オリジナルアニメ 全11話


時は2002年。選手としては旬を過ぎた男やもめ主人公がもう一度花を咲かせようと奮闘するお話。
そして主題歌は2003年リリースの『上海ハニー』。
なかなかこの事前情報(あらすじ)が曲者だったと思います。後続帯の『いわかける!』が肌の露出を隠れ蓑(日本語がおかしい)にしたガチめなスポーツものだったからなおさらに目くらまし。。。


 「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だァー!」


2004年アテネ五輪体操男子団体決勝で28年ぶりの金メダルを獲得した瞬間。真夜中に絶叫した私です。
どうしたってこの史実でのピークを見据えたなにかしらをやるはず!とそんな先入観を持ってた人は私だけではありますまい。
結論先に言うと「違います」。富田選手もあん馬の鹿島選手も出てきませんのであしからず。


①体操競技に向き合ったなにがしか

物足りなく感じます。描写そのものが少ない。アスリートのメンタルもライバルキャラも微妙。
こちらが勝手に2004年の栄光を作中どこか探しているので、ファンタジックな鳥や不法滞在外国人?の設定が必要なのか疑問符がつきます。脳筋を画に描いたような主人公は世界で戦えるようには見えません。期待の新星の「駆逐してやる」な性格についてはもはや“団体金”の持つ団結イメージとかけ離れてしまいます。
体操の作画は想像以上に良かった。鉄棒の回旋ひとつとっても重力を感じられる軌道。“トカチェフ”はトカチェフで“コールマン”がコールマンに見えます。足が開いてたり閉じたりしてる体操にとっては重要でも見た目で微妙な差もきちんと描けてます。これが活かせているかと言われると“否”なのが勿体ない。

正直に期待外れな感じがします。ここで唐突にメンバー紹介

上海ハニーの3人組
 荒垣城太郎(CV浪川大輔):主人公。スーパーポジティブ。玲の父
 レオナルド(CV小野賢章):自称忍者の不法滞在!?なロシア人
 南野鉄男(CV梶裕貴):バンダナ王子。体操界期待の新星

荒垣家の愉快な面々
 荒垣玲(CV本泉莉奈):城太郎の娘。とにかくできた娘
 荒垣マリ(CV田中敦子):城太郎の母。池袋でスナック経営
 荒垣BB(CV山口勝平):南米産の鳥。『たまこ』でいうところのデラマッヅィ
 荒垣知世(CV三石琴乃):城太郎の妻。大女優。亡くなっている


実際のところ体操選手たちよりも城太郎の家族の登場頻度が極めて高い本作。

②城太郎を中心としたホームコメディ

シリアスな体操もののイメージを捨てて、ややファンタジックな親子コメディへと視点をスライドしなきゃいけません。
スポーツアニメとして見るとガッカリするのが関の山。ホームドラマとしてならそこそこ見れるどころかけっこうナイスな仕上がりでした。

{netabare}面白いことに…
奇数回は体操中心のスポーツ重視展開
偶数回は不思議だったりハートウォーミングだったりな日常重視展開{/netabare}

視点の置きどころは難しかった。そうは言っても視点が収まるところに収まってしまえば平気。
ご存知でしたら『つり球』のような緩くて優しい雰囲気にノスタルジーとファンタジーのスパイスを振りかけたあの感じをに近いように思われます。
普段から私は『フラットな心持ちで観ることが重要』と公言しながら全くできてませんでしたよ、とてへぺろな気持ちにさせられた良作です。



※ネタバレ所感

■嗚呼2002年

『上海ハニー』もだし、いきなりコーチがベッカムヘアで登場。日韓W杯なんてのもあったっけ。
ついこの前のように感じるあたりこれが歳を取るということなのかもしれません。
ついでにあまり変わってないような気がするのも加齢なんすかね? 昭和30年~50年はもとより昭和50年~平成7年の20年期間なんて映像で見る限りものすごい変化してるように見えるのですがその頃を経験された諸先輩方も同じ感覚なんでしょうか興味深いところです。

作中でも「あーあったあった」の連続。20代半ば過ぎてればなにかしら記憶にひっかかりそうです。

{netabare}・着メロ(笑) 『浪漫飛行』でなんで特殊EDやらなかったんだろう?
・「別に」と吐き捨てるバンダナ王子 ハンカチは2006年夏。沢尻エリカは2007年9月
・『情熱大陸』みたいな振り返りは本職ナレの窪田等さん
・週刊誌の表紙に“タマちゃん” あれも2002年
・トレーニング回で『トップガン』『ロッキー』と子供の頃好きだったんだろう、なラインナップ
・池袋のカラーギャング特集で西口公園を特集してたり…それっぽい人いたり
・採点方式が10点満点だったり『日曜洋画劇場』が健在だったり{/netabare}


■嗚呼日本スポーツ界

“お家芸”と言うのも憚られるくらい失墜した競技がちらほら。体操に限らずバレーボールもメダルから遠のいて久しい頃合い。
さらに97年の長野で日本男子が金を獲ったら日本人に不利なかたちでレギュレーションが変更されたり、単独と思ってたサッカーW杯も共催になっちゃったり。
ストレスが溜まってる自覚は無かったと思います。見ないフリしてるか自信の喪失を認めたくない感じ。ただし知らず知らずに溜まってたのでしょう。

 そんなさなかのアテネオリンピック体操団体男子金メダル

シンクロ・野球・ソフトボールをdisるつもりはないけれど、王道もので久々のオリンピックの団体メダルみたいに感じて大興奮したのです。
もちろんこれで事態が一転したわけではありません。翌北京の柔道競技ではレスリングみたいな双手刈りが席巻してました。それでもたしかに大きな爪痕を残した感のある金メダルでした。

ちょっと期待しちゃうでしょ?
…はい、、、過度に期待した私の言い訳です。

{netabare}風潮でいえば、なにもかも代表に“サムライ”の冠つけるのって芸がないですよね。体操ザムライも昔のたけしがやってた『こんなサムライは嫌だ』に出てきそうなことしかしませぬもの。{/netabare}
{netabare}谷(旧姓田村)亮子選手が出てきた時、“YAWARAちゃん”って呼ぶな!と某漫画ファン一同が叫んだ感覚に近いです。{/netabare}


■ナイスな脇役
・あゆ(CV水樹奈々) 飲食店勤務 マジ有能説

{netabare}引退詐欺を理由に同級生からいじめを受ける玲の様子をレオから報告受けて…
「それさマジで赤壁っつーか ”気付いたらヤッバ!周り火の海”みたいな?」
「風向きって読めねぇことあんじゃん?緊張感ぱないよねぇ」{/netabare}

・滝沢(CV吉野裕行) ちゃっかり有能説

{netabare}うっかりNHK杯に出場してんじゃん、なパリピ{/netabare}


■よくよく考えたら…

監督以外は怪作『ゾンビランドサガ』のスタッフ。不意を衝いてぶっこんでくる伝統芸にも納得です。

{netabare}そもそも話す機会少なめ伝説の女優役を三石琴乃さん。娘役は私にはりりぃ以来の本泉莉奈さん。{/netabare}
なにかしら遊び心満載な小ネタがあると私信じてます。
{netabare}BBが「笑えばええんやで」を連呼した第6話。元ネタと思しき『新世紀エヴァンゲリオン』「笑えばいいと思うよ」も第6話。こんなの探すのけっこう楽しい。{/netabare}
{netabare}玲が「大女優になる」と宣言した重要回の8話。『ゾンサガ』のリリィ回も第8話でした。こじつけだろうがなんだろうが独りでニヤッとできれば秋の夜長にこれもよし。{/netabare}



荒垣城太郎。イニシャルトークするならJ.Aになるんでしょうか?
雨ニモ風ニモ負ケナイ丈夫な心を持ってそうですが、天候と折り合いつけたり堅実に耕すのできないに違いないので農業には向いてないでしょうね。
ここはサムライらしく和風で“荒”垣“城”太郎。…荒城です。

「昔の栄華は今どこに」と始まる歌詞は「月が照らす影は変わらずされど世の栄枯盛衰を照らそうとしてるの?」で終わります。

アテネも忘れかけてた頃合いに不意打ち。

{netabare}伸身の新月面で放物線を描いたのは体操界の新星でした。{/netabare}


リアルとアニメとでムーンサルトの競演。描く放物線はそんなに変わらないのかもしれません。
願わくば2期への架け橋だったらいいのにね。



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

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2020.12.23 初稿
2021.09.23 修正

投稿 : 2024/11/16
♥ : 49
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

ビッグバードは今日も鳴く

制作MAPPA。

2002年の日本体操界、
29歳の元日本代表荒垣城太郎は、
怪我によって成績不振に陥り、
腐らず練習を続けるも引退を勧告される。
だが様々な出会いが彼の運命を変えていく。

不意打ち気味にカウンターである。
B級の仮面を付けたA級と見た。
シリアスな展開の中に気の抜けた演出。
絶妙なぬるさはクドカン的なノリである。
オフビートな笑いを響かせ、
感動局面に月面宙返りで着地を決めるのか。
空気も読まずガアー!!ガアー!!と、
ビッグバードは今日も鳴くのである。

3話視聴追記。
再生のドラマとして中心軸があり、
そこからの演出の緩急が絶妙に響いてくる。
キャリアの成否に関わらず見応えがあります。
後はキャラに奥行きがでればなお楽しい。

最終話視聴追記。
途中、少し褒めすぎたかと不安になるも、
{netabare}高難度演技の如く見事に着地を決めた。{/netabare}
レオはもっとやれたキャラだとも思う。
ED曲が物語と調和していますね。
少年の憧れが目標に変わり、
いつの日か追い付き追い越すその日まで、
きっと夢ってそんなものでしょう。

ガアー!!

投稿 : 2024/11/16
♥ : 42

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

男子体操競技の話(作中の世相が古くてちょっと懐かしい)

== [下記は第5話まで視聴終了時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第5話まで観終わった時点で、このレビューを書いています。

NUMAnimation(ヌマニメーション)というテレビ朝日系列で今年新設された枠で放送されています。この枠での前作が『イエスタデイをうたって』であったりと地味目なお話を放送する枠かと思いきや、この枠で『イエスタデイ~』と本作の間がエヴァTV版のセレクション放送だったり、次作として予定されているのが『ワールドトリガー』であったりとかちょっと良くわからないことになっていますが、それはとりあえず本作とは直接関係のないお話ですね。

本作はオリジナルテレビアニメです。作中年代はスタート時点で2002年で、2000年にシドニーオリンピックが開催され2004年にアテネオリンピックが開催されると言っているのは史実通りですが、登場人物は主人公の新垣城太郎も含めて架空の人ですね。

オリンピックのメダリストでありながら故障で成績が低迷して、コーチから引退を言い渡された主人公が再起を図ろうとするお話です。

ちなみに体操といえば『ガンバ! Fly high(フライハイ)』という作品がありますが、私は原作を読んだだけでアニメは観ていないので本作とのアニメ作品としての比較はできません。

主人公が子持ち(玲(れい)という名の娘がいる)のおっさんだったり謎の忍者かぶれ外国人レオナルドが現れたり、南野鉄男をはじめとする若手選手にろーとる扱いされたりと、地味ながらもわりと面白く観ています。

けっこうギャグっぽい感じもありますが、真面目に体操をしそうにも思われます。最終的にどっちに舵を切るんでしょうか?

作中の女子高生がたぶんPHSじゃないかと思われる電話を使っていたり、その電話で「ギャル文字」を使ったメールのやりとりをしてたりといったあたりは、2002年当時の世相を反映したものだと思います。(なお、城太郎はギャル文字を読めない模様…。)

そして、ビッグバードの知能レベルが謎…(笑)。
== [第5話まで視聴終了時のレビュー、ここまで。] ==

2020.12.22追記:
第11話(最終話)まで視聴終了。

基本的には一度は引退まで考えた主人公の新垣城太郎がもがきながら、城太郎に惹かれて来日したレオ、そして体操界の若手であり時代を背負って立つだろう南野鉄男に背中を見せるといった構図のストーリーです。

現実の世界では個人総合にこだわり続けた内村航平が種目別の鉄棒に活路を見出し現役続行を表明していたりしますが、結局のところ競技生活というのは誰かに言われてやめる物ではなく、自分がやめることに納得したときにやめる物ということなんでしょうね。

特に第一線で戦ってきた人々は、自分の思う通りのパフォーマンスが出ないからやめるという人もいれば「まだまだやれることはある」と思って現役を続行する人もいます。

競技は違いますがサッカーのカズ(三浦知良)選手なんて、いったいいつまで現役選手なんでしょうね。もうそのことがレジェンドという気がします。

作中描写では、競技が10点満点なのがちょっと懐かしい感じでした。ちなみに現在の体操競技は「満点」の天井がなく、技の何度や出来栄えで加点されていくと15点台が出たりします。

そういえば2週間ほど前でしたか、今年の全日本選手権もなかなか面白かったですよ。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 39
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