ようす さんの感想・評価
3.6
ちいさな英雄たちによる、3つの物語。
スタジオポノックによる、短編映画。
3つの短いお話で構成されています。
あまり良い評判を聞いていなかったので、
期待せず見たのですが、私にとっては当たりの作品でした。
3つともそれぞれ良さがあって、
好きだったなあ。
1つの話が15分程度で、
全部で50分ほどの作品です。
● ストーリー
全作品監督が異なり、
話の雰囲気も作画も全部違います。
『カニ―二とカニーノ』
監督:米林宏昌
カニーニとカニーノは、サワガニの兄弟。
まだまだ半人前なカニの兄弟と、大好きなお父さん。
荒れた川に流されてしまった父を探すために、兄弟は旅に出る。
カニー二とカニーノの家族は、
みんな擬人化されています。
台詞はほぼなし。
というか、すべてカニ語。笑
明確に聞き取れるのは、お互いが呼ぶ名前だけです。
それでも言葉を越えて、表情や声色で、
言いたいことや感情などは十分に伝わってきます。
言葉がなくてもなんとなく言いたいことがわかるのは、
表現のうまさなんだろうな。
水の中の表現が好きでした。
話は短いけど、
兄弟の勇気と父の愛、家族の愛にしっかり感動しました(´;ω;`)
『サムライエッグ』
監督:百瀬義行
シュンは運動が得意な小学生3年生。重度の卵アレルギー持ち。
幼い頃から卵を食べたり触れたりするとアレルギー反応が出て、
救急車で運ばれたことは一度や二度じゃない。
周りには当たり前のように卵が溢れてて、
油断するといつ卵に触れてしまうかわからない。
卵アレルギーの子と、
その母親の物語。
これはぐっときました。
卵が食べられないこと以外は、
周りの子どもと変わらない子。
だけどただそれだけのことが、
他の人と命に関わって異なることが、
どれだけ生きにくいことなのか。
母としても、
一歩間違えたら子どもが死んでしまうかもしれなくて、
周りがその恐怖や重さを理解をしてくれないこともあって、
孤独で恐ろしい戦いと向き合い続ける。
子ども目線でも母親目線でも、
考えさせられる内容でした。
見てよかった作品です。
そして同級生の女の子が可愛くて大好き^^
『透明人間』
監督:山下明彦
僕は透明人間。
服を着て、仕事をして、確かにそこにいるのに、
みんな僕のことが見えないようだ。
言いたいことはたくさんあるのに、誰も存在に気付いてくれない。
これは…強いな。
作品としての重みが。
誰からも認知されない辛さ。
おもりがなければ簡単に飲み込まれてしまうもろさ。
透明人間はたぶん私たちの本質のようなもの。
他人に認知されない時の辛さ、
心の支えがなくなれば簡単に死に向かってしまうもろさ、
誰かに笑いかけてもらうことの幸せ。
この3作品の並びも完璧だと思いました。
まあ、子どもが見ると
最後の「透明人間」は難しくて消化不良かもしれませんが。笑
3つ合わせて1時間に満たない作品だけど、
ものすごく見ごたえがありました。
● 音楽
【 主題歌「ちいさな英雄」/ 木村カエラ 】
この主題歌、作品の雰囲気と合ってなくないですか?
こんなポップな曲、少なくとも「透明人間」見てから聴く曲じゃないw
私の中では曲の良し悪し以前の問題なんですけど^^;
「あーそぼあそぼ♪」な歌詞で
一気に子ども向け感を増してますが、
そもそも3つとも遊んでいる内容じゃないしw
結構真面目なお話だし。
余韻を台無しにされてしまうので、
聴かなければよかったとさえ思ってしまいました。
★3残しているのは、
劇伴は良かったからです。
● まとめ
短編だからか、
あっという間に見てしまいました。
胸にくる、良い作品でした。
生きるって、みんないろいろある。
何かと戦っている。
ちいさな英雄たちに、
生きていく勇気をもらいました^^