タケ坊 さんの感想・評価
4.0
結末を知っている2回目の視聴で、より泣ける感動作
新海誠の自主制作作品が原作で、4話にわたって放送されたショートアニメ。
作品の制作などに新海氏が携わったりしているわけではないが、
もはや今となってはお家芸とも言える空気感や雰囲気、詩的な世界観は、
映像は違えど、まさに新海誠の原点、魅力を感じさせるに十分なものになっていると思う。
「言の葉の庭」が好きな人には是非オススメしたい作品。
物語は彼女と猫(ダル)がマンションで同居しており、
(ルームシェアしていた友達が出て行ったところから始まる)
ダル視点で語りが入り、彼女を描くといった内容。
原作とは彼女と猫、という構図は同じだが物語は全く別ものになっている。
ダルは彼女の抱えている悩みや問題を詳らかに把握しているが、
自分としては何かしたくても、してあげられる事がない。
しかし、年老いた老猫は「最後」に小さな奇跡を起こす(涙)
物語自体は非常にあっさりとしたものでありながら、
(ペットを飼っている人には、より共感、感じるものがあるかもしれない)
過去の新海作品のように、繰り返し視聴したくなる(視聴に耐える)魅力が備わっており、
ショートアニメだが心温まる、感動できる内容で、こういう作品は個人的に大歓迎。
時間が長くても、得るものがない、伝えたい事がよく解らないような作品を観るよりも、よほど価値がある。
こういう詩的な作品の良さを噛みしめる事ができるのは、ある程度の年齢になってからだろうとは思うが。
作画に関しては、30分作品と比べて予算は少ないながら、手抜き感を感じさせない作りになっている。
また、音楽はゴージャスな音作りでないのは明らかだが、効果としては文句無しの仕上がり。
OP,EDは印象的で、作中のBGMもピアノとギターの旋律が非常に耳障りが良く、聴き応えがある。
花澤さんが演じているので、どうしても「言の葉の庭」を想起させるけど、
やはり作品の雰囲気には合っているな、と思う。
また、ラストシーンでは新海誠自主制作の原作を視聴した人なら気付くと思うが、
猫の語り手が代わっている。
これは新海誠への最大限のリスペクト、粋なキャスティングと言えるだろう。
短くても非常に感動できた作品なので、評価は全体的に普段より+0.5点加点させてもらいました。
このウルトラスーパーアニメタイム、という枠は、「旅街レイトショー」なども観たが、
新進気鋭のスタジオやアニメーターが作品を提供する場になっているのだろうか。
個人的には売れ筋を意識しないような作風のものなどを提供してくれる場として好印象で、
今後とも注目していきたいな、と思う。
個人的なことですが、自分の家でも全く同じ黒猫の老猫を飼っている(うちに来て10年近く経つ?)
どこからともなくやって来た迷い猫なんだけど、
家から離れようとせず、飼い主を探すも見つからず結局飼うことに。
自分は猫アレルギーなんで、自分の部屋には絶対に入れないですが(汗)
うちの猫は餌くれ、遊んでくれ、外に出してくれ、と赤ん坊のようにやたらニャーニャーうるさいですが、
我々飼い主の内面を洞察しているのだろうか、と本作を観て思ったり。。
いや、それは無いだろうな(笑)