でこぽん さんの感想・評価
3.9
過去ではなく未来へ向かって生きてゆく
これは主人公にとっては、ほんのひと夏のできごと。
でも、現実世界では…
ウラシマトンネル。これは過去で失ったものを手に入れることができる魔法のトンネル。
トンネルに入ると過去へ行くことができるそうです。
但しトンネルの中と外とでは時間の流れが違います。
トンネルの中ではわずか数秒の時間でも、トンネルの外では数時間も時間が経過します。
主人公は塔野カオル(とうの かおる)。彼は過去のできごとにより笑顔を失った高校生。
彼には、とても仲の良い妹がいました。
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こんなことがあったら、誰でも笑顔を失います。
だからカオルは、未来を向いて生きていません。
彼の願いはたった一つだけ。ネタバレレビューを読む
そんな彼が駅で出会った転入生の花城あんず(はなしろあんず)。
彼女も決して笑顔を見せない女の子。
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その二人が偶然見つけたウラシマトンネル。
このトンネルをめぐって物語は進行します。
トンネルの中で咲き誇る紅葉が幻想的で、とても奇麗でした。
二人とも無口で笑顔を見せませんが、お互いに相手を思いやる気持ちが十分に伝わってきます。
だから、この物語は意外と優しい物語です。
私は、ウラシマトンネルよりも、カオルの心の葛藤にいたく感情移入しました。
亡くなった人は、決して戻って来ません。
喧嘩をした後で後悔して、今度謝ろうと思っても、その人は、そのときまでに生きていないかもしれません。
だから、仲の良い人と喧嘩をしたときには、すぐに謝ったほうが良いですね。