けみかけ さんの感想・評価
4.7
『トイ・ストーリー』っぽく始まっておきながら・・・?ペットにまつわる悲喜交々を毒っ気たっぷりで送る傑作コメディ!吹替でどうぞ!!
『怪盗グルー』シリーズのイルミネーション・エンターティメントが手掛けた6作目の3DCG長篇映画
ニューヨークに一人暮らしする女性、ケイティに飼われる小型犬のマックス
マックス達が暮らすアパートにはマックスの他にも大小様々なペット達が生活していたが、ペット達は飼い主達が留守の時、実は好き勝手し放題の野放し状態だった
あるものは主人のご馳走を頬張り、あるものは部屋間を勝手に移動し、またあるものは大音量で音楽を流してパーティーを開く・・・
そんな中、飼い主ケイティを心から愛しているマックスの元にケイティが超大型犬のデュークを引き取ってきてしまう
マックスは餌やお気に入りのベットを奪われ立場を追われる
何とかデュークを追い出そうとマックスは姑息な罠でデュークを嵌めようとするのだが・・・
とまあ、ここまでは『トイ・ストーリー』っぽいなと思う方がほとんどだと思います
マックスとデュークは誤ってニューヨークのど真ん中で迷子になってしまい、帰宅する術を助け合いながら模索するのですが、そんな最中に彼らが出会うのが人間から捨てられた「元ペット軍団」を率いるウサギのスノーボール
このスノーボール、見た目に反して凶暴かつクレイジー
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』の殺人ウサギを思わせつつも、そもそも“snow bunny”ってのはコカイン常習者を表す隠語だそうで(笑)つまりこのスノーボールもそういうキャラとして描かれています
ウサギなのに自分らを捨てた人間への復讐を誓い、「人間を皆殺しにする」と高らかに宣言する様は狂気染みてるのに滑稽で笑いが止まりませんw
こうしたブラックな暗喩、風刺の効いたギャグがてんこ盛りなのが本作の特徴
極めつけは人間の身勝手で都会に連れ込まれ、あげく捨てられた猛獣がマックス達のせいで死んでしまうという描写があることです
ここは大一番の笑いどころなのですが、あまりに酷い目に遭うのでこれを単に可哀想、不謹慎だ、としてしまう人にはあまりこの映画はオススメ出来ない
よく動物愛護だのと掲げて過剰な抗議行動に出る人がこの映画を観たら怒り狂うことでしょう
ちなみに自身も猫を飼ってるオイラから言わせて貰うが、(フィクションでアニメーションであることを前提に)このシークエンスは本当に爆笑モノでした
え!?殺しちゃうのwwwってな具合
犬を飼っていれば経験あるであろうイタズラの数々、猫を飼っていればあるであろう独特の仕草なども丁寧に描かれているので単にペット好きの方が楽しめる内容ではあります
“動物”ではなく、“ペット”を描いてる点が今作のポイントなのです
近々に公開された似たような映画の『ズートピア』の世界には人間がいないので人間に飼いならされた犬や猫は存在しない設定でしたからね
だからむしろ犬、猫が観どころなんです
あと仲間を引き連れて闊歩するマックスの姿にN-Tranceがカバーした「Stayin' Alive」を流すとか誰がどう観ても『サタデー・ナイト・フィーバー』のパロですよ
劇中では北米ヒットチャートを賑わした名曲が次々と流れたり、数々の映画パロディが映し出されます
メインテーマはTaylor Swift、さらにPitbullが流れたと思いきや、Macklemore&Ryan Lewisの「DOWNTOWN」ときた
この辺りは『ミニオンズ』が往年のロックで固めていたので現代のヒットポップスを中心に揃えたという感じでしょう
ある種の音楽映画としても十分楽しめます
ちなみに日本専用に家入レオが楽曲提供したそうですがあくまでイメージソング扱い、ということで映画には一秒たりとも使われてませんのでご安心を(笑)
さらにマックスの失踪にいち早く気付き、仲間を集めてマックス捜索を開始するポメラニアンのギジェットがめちゃくちゃ可愛い(そして強いw)
濃ゅいキャラ達の中で全く埋もれていない存在感を放つヒロインです
そして今作で最も褒め称えたいのが何といっても【日本語吹替版の完成度の高さです】
主役のマックスとデュークの二匹にはお笑いコンビ、バナナマンこと設楽統と日村勇紀
もともと声優経験豊富な二人ではありますが、今回の二匹は二人の為に用意されたのでは?とカンチガイするほどの嵌り役っぷりで諸手を挙げて絶賛したい
さらに脇を固めるのが超豪華声優ばかりでディズニーやポケモンを突き放す勢いです
ヒロインのギジェットに沢城みゆき、発狂ウサギのスノーボールに中尾隆聖、野良猫のオゾンに山寺宏一、仲間達を導く老犬ポップスは銀河万丈といった様に名前だけで痺れてしまうような名優ばかりです
で、これはネタとしてぶっこまれたんでしょうがw
老いて少々病んでる鷹のタイベリアスに宮野真守が起用されてるのに、何故か芝居はチョーさんのモノマネみたいになっているw
さらにモルモットのノーマンは声が甲高く加工されたキャラなのにまさかの梶裕貴であるw
本人も「これ僕じゃなくてもいいんじゃw」と言ってるし、何故に“犬や猫”の映画に“亜人と巨人”を連れてきたのかは意図不明w
こんなんで釣れる客がいるのか疑問ですが、面白かったのでオイラ的には賞賛するしかない
先にも言った通り、あまりにも毒っ気が強いんだけどド直球で笑えて楽しめる作品になってます
ペットと元ペットの争いを描きつつ、普通なら動物は大自然に返した方が伸び伸び生きてけるよ、というオチをつけた方が定番な気もします
『ルドルフとイッパイアッテナ』がそーゆー映画でしたよね
が、この映画の場合、というか今のニューヨークはペットにとっても暮らし易い街になりつつあるそうです
だから結果的に野生よりむしろペットとして生きた方が幸せなんだよ、なんてオチが付いてしまうんですわ
そこが面白い!
一方劇場では洋画パロディや深刻なテーマ性など解るよしも無い小さな子供達も一緒になって大爆笑してました
一見して子供向け・・・などと切り捨ててしまう人には分からないでしょう
ぜひ洒落の分かる人に強く薦めたい映画です