あぱぱ さんの感想・評価
4.2
不幸と闇
ご存知ある方は年配であると思いますが、児童文庫版の江戸川乱歩や
横溝正史の小説表紙、楳図かずおの単行本の表紙を見た時と
同じ感覚になる作品。
推測ですが、最初は怖いもの見たさから戻れなくなってしまうような
不思議な世界です。
物語は全体を通して少女ミドリの不幸と、ささやかな幸せが描かれています。
昭和初期の時代設定なので「見世物小屋」という、今のご時勢では
明らかに規制がかかる舞台が取り上げられている。
この物語から何を感じるのかと言いますと
「不幸を抱えた者同士が、さらに不幸な人から幸せを奪いあう」
というような、人間の闇を感じられます。
人の不幸を見るのが好きな方には興味あるかもしれませんが
歪んだ人間像になりかねないのでオススメはしません。
個人的ですが作画や世界観は気に入っています。
中途半端に作り上げた安っぽい暗さより、生々しい暗さは評価できます。
実写映画もR-15でありますので、興味があればそちらも
視聴されてください。
(余談)
児童が読むグリム童話でもありますが
「怖い」「見たくない」「気分が滅入る」
といった感情は過剰に受け入れる必要もないのですが
受け入れることを拒むと気持ちの耐性がつきません。
綺麗な絵空事ばかり受け入れても、恐怖は現実に存在します。
現実で怖い事件などがあっても、真実味(危機感)を
感じなくなってしまったら、恐怖から逃避しているかもしれません。
恐怖という感情は積み重なることが難しいと感じています。
機会があれば適度に恐怖を味わうことも必要かもしれないですね。
恐怖を感じられる人は、自分以外が感じる恐怖を理解できるのでは
ないかと私は思います。