やなぎなぎで家族なTVアニメ動画ランキング 5

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90.4 1 やなぎなぎで家族なアニメランキング1位
凪のあすから(TVアニメ動画)

2013年秋アニメ
★★★★★ 4.2 (6469)
25616人が棚に入れました
海と地上、そのどちらにも人が暮らす世界。中学が廃校になり、幼なじみと共に地上の学校へ通うことになった海村の少年・先島光が転校初日目撃したのは、大切に守ってきた少女まなかが、地上の少年と特別な出会いをした瞬間だった。

声優・キャラクター
花江夏樹、花澤香菜、茅野愛衣、逢坂良太、石川界人、小松未可子、石原夏織、名塚佳織、天田益男、間島淳司、清川元夢、鳥海浩輔
ネタバレ

ピピン林檎 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

溢れ出る感情の波に幾度も心をかき乱されてしまう、感銘も感動も大きいが視聴に難儀する《名作》

(2019年3月) 制作情報等を追記

◆感情描写の濃度が桁外れに高い作品

私は、恋愛などの感情描写系アニメを視聴するときは、作品中に不意に差し込まれる微妙な心情変化を見逃さないようになるべく集中して視聴するようにしているのですが、本作の場合、多数の登場キャラたちのどんな目線の動きにも手足の仕草にも確りと意味が込められていて、そうした一つひとつの挙動に暗示される各キャラの感情推移を読み取るのに視聴中ずっと頭をフル回転させている状態が続きました。
そのため1話視聴する毎に物凄く疲れて、暫く頭を休ませてから次の話に行く、ということの繰り返しで、これまで本作を余裕を持って視聴できていなかったのですが、3周目を終えた時点で漸(ようや)く、そうした感情を読み取る作業を自分が納得いく程度に終えることができた感じを持てました。
そして念を入れて行った4周目の視聴で、やっと余裕をもって本作全体を楽しめ、かつ自然な感じで感動もできたように思ったので、それに合わせて本作の評価を ★ 4.3 → ★★ 4.7に大幅に引き上げました。
(※1~3周目も視聴中に感動はしていましたが、果たしてその自分の感動が辻褄の合った納得のいくものなのか確証がもてずに警戒しており、本作の総合評価を ★ 4.1~4.3と低めに据え置いていました)
だいぶ苦戦しましたが、頑張って繰り返し視聴して良かったと思いました。

◆起/承/転/結のはっきりしたシナリオ構成

本作は、純粋な日常系の恋愛作品ではなく、①ファンタジー設定と②セカイ系設定を上手く組み込んだ変則的な恋愛感情描写系作品ですが、よく見るとシナリオ構成の基本に忠実に、全26話を以下のように、【起】【承】【転】【結】に上手に振り分けていることが見て取れます(※詳しくは◆各話タイトル&評価へ)。

【起】第1~7話(計7話) {netabare}海村とウロコ様の存在というファンタジー設定が示される{/netabare}
【承】第8~13話(計6話){netabare}地上の異変と海村の冬眠・人の滅びの予告というセカイ系設定が示される{/netabare}
【転】第14~20話(計7話){netabare}5年後の世界に切り替わり海村の3人の冬眠からの目覚めが描かれる{/netabare}
【結】第21~26話(計6話){netabare}登場人物たちの錯綜した恋愛状況が世界の命運と連動しつつ収束していく{/netabare}

◆作品テーマ

ひとことでいえば、{netabare}恋愛感情をもつがゆえの苦悩とその最終的な肯定{/netabare}、を描き尽くすことにあると思います。
この作品テーマは、第5話(あのねウミウシ)での美海と光の会話によく現われます。
{netabare}
美海「もう、あんな悲しいお腹になるのは嫌だ。大好きにならなければ、あんなに苦しくならない。だから、だから美海・・・」
光「大好きにならなければ、好きにならなければ、辛くならない。確かに、そうかも知れねぇな。」
美海「え?」
光「なんか俺も人のこと言えねぇ。好きとか、なんないほうが、やっぱ楽なのかも知れねぇと、思う。だけどよ、誰かを好きになるの駄目だって、無駄だって思いたくねぇ。」{/netabare}

→この会話は最終話で見事に回収されます。

※なお、本作で最終的に肯定される「恋愛感情」とは具体的にどのようなものか?をさらに一歩踏み込んで考察すると本作を一層深く楽しめるようになるのではないか、と思います(※その点、◆本作品に描かれた恋心(恋愛心理)の整理へ)。


◆制作情報
{netabare}
原作         Project-118
監督         篠原俊哉
シリーズ構成     岡田麿里
脚本         岡田麿里(12)、横手美智子(4)、吉野弘幸(4)、和場明子(3)、根元歳三(2)、西村ジュンジ(1)
キャラクターデザイン ブリキ(原案)、石井百合子
音楽         出羽良彰
アニメーション制作  P.A.WORKS{/netabare}


◆各話タイトル&評価

★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得のいかなかった疑問回

======================= 凪のあすから(2013年10月-2014年3月) ====================

~~~~~~~~~~~~~~ OP「lull〜そして僕らは〜」、ED「アクアテラリウム」 ~~~~~~~~~~~~~~
     ※ まなか・ちさき・光・要・紡(中学2年)、美海・さゆ(小学3年)
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 【起】 第1~7話は、{netabare}海村の4人が陸村の中学に転入したことを切っ掛けとして、彼ら内部や彼らと陸村の人たちとの間に発生する心の揺れ動きを描出{/netabare}
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{netabare}第1話 海と大地のまんなかに ★ 海村の4人の転校初日、まなか・紡の出逢い
第2話 ひやっこい薄膜 ☆ 美海・光、さゆ・要の出逢い、あかりの恋愛事情
第3話 海のいいつたえ ☆ 海村の掟、あかりの男の事情、紡と海村の4人が打解ける
第4話 友達なんだから ★ お女子様の破損事件、さゆの要への思慕の始まり
第5話 あのねウミウシ ★★ ちさきの想いを知ってしまう紡・まなか、美海家出・光への思慕の始まり
第6話 巴日のむこう ★ 光・紡の水泳競争、ちさき・まなかの喧嘩~仲直り
第7話 おふねひきゆれて ☆ 海村と陸村の対立、あかり海村から離れ地上へ{/netabare}
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 【承】 第8~13話は、{netabare}地上の異変~海村の冬眠決定を契機とした海村の4人や陸村の人たちの決断・行動を描出{/netabare}
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{netabare}第8話 たゆたう想いのさき ☆ 美海・光・紡・まなか・ちさき町へ(プレゼント探し)
第9話 知らないぬくもり ★ 地上の異変、紡→ちさき「今のあんた嫌いじゃない」、廃校でハグ(光→まなか)
第10話 ぬくみ雪ふるふる ★★ 冬眠の準備、まなかの想いはウミウシへ、要の告白
第11話 変わりゆくとき ☆ お船引き決定~準備、あかりの決断(結婚・お女子様に)、ちさきの決断(光へ)
第12話 優しくなりたい ★★★ 廃校での告白(光→まなか、ちさき→光)、第1話のリフレイン(まなか・紡)
第13話 届かぬゆびさき ★★ 冬眠、お船引き、お女子様(あかり→まなか){/netabare}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ OP「ebb and flow」、ED「三つ葉の結びめ」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    ※ まなか・光・要・美海・さゆ(中学2年)、ちさき(看護学校1年)、紡(大学1年)
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 【転】 第14~20話は、{netabare}5年後の海村の3人の目覚め、彼らと地上に残された人たちの戸惑いを描出{/netabare}
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{netabare}第14話 約束の日 ★ 5年後の世界(主にちさき・美海の視点から)、光の目覚め
第15話 笑顔の守り人 ★ 光・ちさき再会、美海の光への思慕、紡→ちさきへの希望表明
第16話 遠い波のささやき ★★ 光とのデート(美海・さゆ喧嘩)、美海にエナ、要の目覚め
第17話 ビョーキなふたり ☆ 要・ちさと再会、さゆ・要再会、海村へ(美海・光・要) 
第18話 シオシシオ ☆ 冬眠中の海村の様子、まなか発見~救出
第19話 まいごの迷子の… ★ 大人になった事に気付くちさきと、紡・要の彼女への想い
第20話 ねむりひめ ★ まなかの目覚め(必死に手を尽くす光と揺れる美海の心){/netabare}
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 【結】 第21~26話は、{netabare}海神様とお女子様の伝承をリンクさせつつ、登場人物たちのそれぞれの想いの着地点を描出{/netabare}
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{netabare}第21話 水底よりの使い ☆ OP映像マイナー変更。まなかの異変、ちさきと光たちとの距離・紡との距離
第22話 失くしたもの ★ ウロコ様探し、まなかの失ったもの(人を好きになる心)
第23話 この気持ちは誰のもの ☆ ウミウシの石、紡・光の殴り合い、紡の想いがちさきに伝わる(紡にエナ、海村へ)
第24話 デトリタス ★★★ お船引き再び、ちさきの本心(要へ)、さゆ→要へ告白・完結
第25話 好きは、海と似ている。 ★★ まなかの本心(美海・紡へ)、紡・ちさき完結、美海失恋、お船ひき
第26話 海の色。大地の色。風の色。心の色。君の色。~Earth color of a calm~ ★ 美海の心を知る光・お女子様の心を知る海神様、光・まなか完結、ぬくみ雪やむ{/netabare}
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★★★(神回)2、★★(優秀回)5、★(良回)10、☆(並回)9、×(疑問回)0 ※個人評価 ★★ 4.7


※このように本作は前半のラスト2話(第12-13話)・後半のラスト3話(第24-26話)にそれぞれクライマックスが来るように巧みに構成されていますが、その他の回も万遍なく楽しめる平均点の高い作品となっています。
(前半が詰らなくて後半がグンと面白くなく『とらドラ!』とは好対照)


◆本作品に描かれた恋心(恋愛心理)の整理

私たちがラブストーリーを批評する場合、「きゅんきゅんする」「甘酸っぱい」「純情」というのは常套句ですが、そうした感覚的で曖昧な表現だけでは、恋心(恋愛心理)の分類としては舌足らずであり不明確だと思うし、また本作に描かれた恋を「青臭い」の一言で切り捨てるのはいかにも粗雑な感想だと思います(※もし「青臭い」と断言するならば、どこがどう青臭くて、それとの対比で「青臭くない」恋とはどんなものなのか?が具体的に示されないと説得力に欠けます)。

そこで、ここでは本作に描かれた恋愛模様をより具体的に考察するために、以下の分類を用います。

{netabare}<1> 出逢い方による分類

①幼馴染型 → 海村の4人の場合(光・要×まなか・ちさきの関係)
②ボーイ・ミーツ・ガール型 → 陸村と海村の出身者の間の場合(紡とまなか・ちさきの関係)
③年上への憧れ型 → 陸村の小学生と海村出身の中学生の場合(美海・さゆ×光・要の関係)

<2> 恋の回数による分類

①初恋 → この作品の大部分の恋
②2回目以降の恋 → 無意識のうちに進行してしまうちさきの紡への恋
③その他(既婚者との恋など) → あかりの美海の父への恋

<3> 恋愛感情の内容による分類

①趣味的恋愛感情(※相手の好意の獲得を目的とした駆引き的な恋であり、恋に恋して恋を自覚的に楽しんでいる状態)
②虚栄的恋愛感情(※ブランド品を見せびらかすように恋人を持ちたがること、また人の恋路に嫉妬して燃え上がる恋)
③肉体的恋愛感情
④情熱的恋愛感情(※説明が難しいが、本作で描かれるほぼ全ての恋愛感情はこれに当てはまる){/netabare}

このように本作は、都会から遠いファンタジックな小村(海村も陸村も)で生まれ育ち、世の波風にまだ汚されていない中学2年(13~14歳)の少年少女の初恋という設定に基づき、全26話を通して、①~③の要素をほぼ排除して、④情熱的恋愛感情の描出一本槍で突っ走るという、ラブストーリーとしては些(いささ)か稀な作品となっています。

また、本作で描かれる心理関係のほとんどが、幼馴染の間か、さもなくば年上への憧れとして発生していることも、彼らの④情熱的な恋愛感情に説得力を持たせています。

《一般的な恋愛作品との違い》

これがもし高校生以上の関係で、かつボーイ・ミーツ・ガール型の出逢いだったなら、いきなりの④情熱的恋愛感情の発生には余り説得力がなかったことでしょう。
例えば、あにこれでも高評価の恋愛アニメの代表格『とらドラ!』は、
{netabare}
(1)序盤から中盤にかけて、ヒロイン大河の北村君への恋のときめきや躊躇いを繰り返し描き出していますが、そうした大河の恋心は、実は「駆引きを通して相手の好意を獲得することを目的とする恋」つまり①趣味的な恋愛感情であって、
(2)第16話(すみれさん乱闘事件)を機に大河は自分の恋心の浅はかさを悟らざるを得ず、そして、
(3)第19話で、大河はとうとう自分の本当の恋心は北村君ではなく竜児にあることを自覚するに至り、なおかつ、この自らの恋の成就を目指すのではなく、これを秘匿し押し殺して竜児の恋の成就を密かに支援する側に廻ることを決意する、
{/netabare}
・・・という流れになっていますが、このように大河の恋心が、①趣味的な恋愛感情から、④情熱的な恋愛感情に移行してしまうストーリー展開の巧みさに『とらドラ!』の凄みがあって、それがこの作品が高評価を取っている本当の理由と私は考えています。

この『とらドラ!』の例のように、優れた恋愛作品というのは、アニメ・実写あるいは小説といった表現媒体に関係なく、

(1)①趣味的な恋愛感情、②虚栄的な恋愛感情、あるいは、専ら④肉体的な恋愛感情からスタートした心理的関係が、
(2)いつの間にか、④情熱的な恋愛感情に転換してしまい、本人の意思では簡単に逃れられなくなっている様

・・・を説得力をもって描き出している作品であるのが一般的だと思います。

※因みに、そのような説得力を持ったアニメ作品は、実は結構少ないと私は思っており、例えば、あにこれで「恋愛タグ」に高いポイントがついている作品であっても、その内容をよく見ると、①趣味的恋愛や②虚栄的恋愛の範囲内で終始していて、④情熱恋愛への転換を描くに至っていないものが幾つもあると思います(例えば、『CLANNAD』、『初恋限定』)。

《本作視聴の難儀さの理由と魅力》

そうした一般的な恋愛作品との比較から、本作はやはり、
{netabare}
(1)海村という閉鎖的な環境で自然に芽生えた幼馴染同士の恋という設定、また、
(2)小学3年生の少女の5歳年上の少年への憧れと、少年の5年間の冬眠状態~解除により、本来は恋愛が成立しないはずの関係が“成立し得る関係”に転換してしまう、という現実世界では在り得ない特殊設定
{/netabare}
を巧みに用いて、序盤から終盤まで一貫して、④情熱的な恋愛感情の進行過程の描出だけでストーリーを展開している点で、恋愛作品として特殊であって、

(1)その④情熱恋愛一本槍という特徴から、本作に独特の息詰まるようなナーバスさが発生し(※注釈)、
(2)その結果、私たちは毎話のように視聴に難儀してしまう羽目に陥るのですが、
(3)そのナーバスさ・難儀さは私たちにとって、懐かしくまた切ない感覚を伴ったものでもあって、
(4)結局のところ本作の最大の魅力は、そうした感覚を私たちに思いがけず(かつ繰り返し)惹起させてしまう点にある、

・・・と私は結論づけたいと思います。

(※注釈)もし本作に、①趣味的・②虚栄的・③肉体的な恋愛感情が一定量混在していれば、他作品によくあるように、それらが適度に陽気な冗談や下ネタやおふざけを作品中に呼び込んでいたはずです。

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◆(参考)過去に書いた感想・レビュー

※前述のとおり、私は3周目までは「自分が安易に感動させられてしまうこと」への警戒から本作に対して相当に身構えていて、本作から自分が受ける感動の性質を慎重に見究めようという批判先行の視聴姿勢を取っていました。
以下はその当時の感想・レビューの一部です。

2015.3.10 三回目視聴を完了。
各話評価を追記。総合評価を4.1→4.3に改訂。
1クールに上手く圧縮されていたなら私も本作を名作(総合評価4.5以上)と評価していたと思います。
ですが、2クールはちょっとやり過ぎ感あり(稀に見る美酒も味わい過ぎると食傷気味になってしまう感じ)。
そういう意味では、かなり残念な作品でした。

2014.7.19 二回目視聴を完了。
全体に遊びとかギャグ要素が非常に少なく、重く沈鬱な印象。
この作品は毎話毎話、ほんの一瞬のカットに感情の微妙な変化や発露を盛り込んでくるので、安直な気分で流し見するわけにはいかず、全26話を通しで視聴するのに今回もかなり時間がかかってしまいました。

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※以下は第1回目視聴直後の感想・レビューです。

《岡田シナリオのメタ分析》

{netabare}★岡田シナリオの基本パターン

このアニメのシナリオ構成・脚本を担当した岡田磨理という方のシナリオは、表面的には色々ヴァリエーションを取りながらも、大雑把にいえば、

==========
A子はB男が心底好きだ。
だがB男は、A子の親友のC子の方に恋をしており、A子にはそのことがよくわかる。
A子も親友のC子が大好きで、彼女の美点を沢山知っている。



A子は、自分がB男に恋しているのと同じように、B男もC子に恋をする権利があると考える。
A子は、B男の恋心を捕らえている親友のC子を羨ましく思い、そしてそのようにC子に嫉妬している自分の心に気づいて、自分を浅ましく醜いと思う。
A子は、B男のC子への恋が実ることが、自分が恋をしているB男にとって一番幸福なことだと思い込む。
こうしてA子は、自分の恋心を押し殺して、B男のC子への恋を実らせるために密かに行動を始める。



ところがC子は、ずっと以前から親友のA子がB男に激しく恋していることを知っており、A子のB男への恋を実らせるために、B男に対して無関心を装うどころか、B男ではなく全然関係ないD男に恋している振りまでして、B男の自分への恋心を挫こうとしている。
実はC子も本当はB男を恋しているのだが、親友A子の恋心を犠牲にしてB男の恋心を受け入れようと時折考える自分の心を醜く浅ましく思い、許せないでいる。



一方、B男は・・・
また、D男は・・・
==========

という複数の男女の恋心が錯綜しループして、それぞれの善意と誤解から軋みと混乱と和解とが繰り返され、こうしたカオス的状況の中から次第に着地点が現われてくる、というパターンを、凡そ踏襲しているように見える。

この「凪のあすから」という作品も、これでもかと畳み掛けるような感じで、こうしたパターンが集積して出来上がっているように見える。

さすがにここまでくると、ちょっと食傷気味で、私の個人的評価は低くしてしまいましたが、でも、やっぱり実際視聴してみたら、相変わらず面白いんだよね、これが。

逆に言うと、なぜ岡田磨理さん以外のシナリオライターが、こうしたワンパターンながら安定的に私たちの心を揺さぶるようなシナリオ・脚本を書けないのか?ということの方が疑問なくらいです。

★岡田シナリオとその他の人のシナリオの違いとは何か?

一言でいえば、登場人物たちが、根本的な部分で、自分の恋心の成就を望むか否か、の違いではないか。

上にも書いたとおり、岡田シナリオの登場人物たちは、

①自分は誰かに激しく恋しながらも、
②自分の恋の対象者は、自分と同じくらいの強さで別の誰かを恋する権利を持っており、あるいは、
③自分とは別の誰かも、自分と同じくらい自分の恋の対象者に強く恋する権利を持っている、

ということに何時も気づいて、結局

④自分の恋心を押し殺して、自分の恋の対象者の恋を成就させることが正しい、という結論に達し、
⑤そのために密かな行動に出て、かつその行動を決して誰かに悟られまいとする、

という行動パターンを踏襲する(しかも一方ではなくほぼ全員が)。

要するに、岡田シナリオの登場人物たちは、他の、言ってみれば趣味的な恋愛感情のやり取りをしている作品の登場人物とは全然違って、アニメ作品でありながら、かなりリアルな情熱恋愛的な行動パターンを取っている、ということになり、そこから岡田シナリオの独特の迫力が生まれるのではないかと考えます。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/16
♥ : 161
ネタバレ

Yulily さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

出会えました!心の底から感動した作品に

物語は海の人と地上の人がいる世界
ある日、海の中学校が廃校になり、光、まなか、ちさき、要の海村の幼馴染4人が地上の学校へと転校する...
海の人、地上の人。いがみあっていた別世界の人たちが出会いそこから物語が生まれていきます。

制作がP.A.WORKSということで映像が素晴らしい。風景、顔の表情、瞳の中に映る心の揺れに至るまで繊細に描いています。
映像を豊かに彩るサウンドを聴いてください、歌詞がまるで情景からあふれでたようです。音楽が醸し出す幻想的な世界に心惹かれます。

海はこの世界の美しさを強く表現しています。圧倒的な存在感で私の心を掴む。
沖へいくにつれて海の色は透明、水色、青、深い青…神秘的な程美しく、波の動きにあわせて太陽の反射した光がきらきら揺らめく、多彩に変化する光や波の表情を見てください。

出会い、友情や恋愛が生まれ、人の数だけ かけがえのない物語がありました。
{netabare}
自分の想う人は違う人を見つめている…
それに気づいていても諦めきれない
ちょっとした言葉に一喜一憂している自分がいて
気付いているからこそ何気ない自分への優しさが辛かったり
それぞれに想いをよせ、交差する気持ち

例えば好きな人が違う子を想っていたら・・
自分が身をひいて応援できますか?
私は、そんな風に思えないかもしれない
頭では分かっていても、きっと心が追いついてこない
心の中で何度「切ないね」って叫んだことでしょう...


一番感動したドラマティックな場面

踏み切りのシーン

さゆから要への告白

「あんたがいない間も、あんたはここにいた!ちゃんと、この真ん中にいた!」

電車が目の前を通り過ぎ、遮断機がゆっくりと上がる

踏切を挟んで、さゆと要

想いを全てぶつけた、さゆがそこにいた。

そして、あの要が涙をながす...
「そうか、僕は、さゆちゃんの中にいたんだね、本当は淋しかった・・・」

5年ごしの気持ちをストレートな言葉で伝え、それを受けとめた要。
心の底から感動しました。

切ないのも、苦しいのも、楽しいのも、全部大切な気持ち…恋なんですよね
{/netabare}
それぞれが想いを抱く恋する気持ち、葛藤、繊細な表現はどこまでも美しく、最後まで泣いたり笑顔になったり、感情を揺さぶられ続けました。
ストーリー、作画、デザイン、音楽、本当に素晴らしい。
この作品に出会えたことに感謝します。ありがとうございました。

最後に、またいつか皆に会えることを願っています!!

投稿 : 2024/11/16
♥ : 145
ネタバレ

とまときんぎょ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

生活感のある景色が綺麗。優しく熱い青春。(全26話)

見れば見るほど背景の描き込みがガツガツしてて面白い。
デザインが凝ってるし、ライティングも時間帯に合わせて美しく変化する。
海の中の木造家屋のアールの入った柱や砂壁、作り棚とそこに乗る荷物、廃校の青い空間、丸窓の電車、サビサビハゲハゲした港町、地上の学校のカラフルな時間割表…
(多分そう何回もは映らなそうな)お葬式シーンの式場の建物まで、現実の生活感と、現実はちょっと違うニュアンスなデザインに丁寧な経年描写が加わえられていて、よく作られた町になっている。


主人公のヒカリ君、高血圧なの?ってくらいキーキー怒りっぽくて、ちょっとなと思ってたんですが

3話で、海での当たり前の暮らしと、地上の人に惹かれてしまった海の人間たちがぶつかる辛い壁について考えた時。
姉ちゃんの気持ち、アイツの気持ち…「きっと本人の方が、オレよりモヤモヤしてるんだろうな…」と思いやる所が、なかなか良かった。


各話 ダラダラとした感想
{netabare}
4話
青春〜な優しく熱いお話。
誰かを思ったがための些細な寄りかかりと、偏見に対する身構えとで、皆でこんがらがってしまって。
守ってくれた存在がいたから、今度は彼らを守りたくて、間違えたところからまたはじめる勇気を、各々持って…。

うーん。河原で殴りあいの末にお前やるな…!的な、熱さ。
EDがなんか演歌っぽくて(違う?)ムーディで素敵ね。

公式によると初めはエラを持ったデザインだったけど若い層に受け入れられにくく、胞衣(エナ)の設定を考えたらしい。童話的に海の中でも何でもアリとのこと。

5話
今回も背景が素晴らしい。
漁港の水面の、日向と日陰の照り返し具合。
海辺の古い喫茶店の、くすんだ壁。
アカリ姉さんがかけてた電話ボックスの、丸っこいデザインと錆感。
ヒカリんちの障子、破れを直してあるんだけど(よくある花形に切った紙を貼るやつ)、ヒトデの形のが貼ってあるの!!きっとアカリ姉さんが直したんだよね。
なんて丁寧な描き込み。

ヒカリとアカリのお父さんの無骨さが、自分、不器用なんでって感じで。不器用な父ちゃんと乱雑そうなヒカリだけになったら、こんなに可愛く修繕してあるお家も荒れてくるんだろうか。

みゆな、ちっこいのに我慢しちゃったんだね。大好きな家族にそばにいてほしい、失うのはもう怖い、それだけだった。

ちさきは何か色っぽいなあ。触ったら花弁が落ちそうな感じで。


6話
皆に当たられてばかりのマナカ。
「まなかはみんなの真ん中なんだな」
かなめは要、ひかりは光、つむぐは紡ぐ、ちさきは?先に行っちゃうの?

「言いたいことは、最後まで言うべき」はまっとうで納得。

スノードームのような不思議な景色からエンディングへ、美しい…。

7話
陸海共同おふねひきを実現させるためにやっきになるヒカリ。
時折、失恋の痛みを受けとめる表情。
またしても大人のけんかを見守る子供たち。

「陸のモンは女までとっていきやがる…」
そうねぇ。陸から海へは、身体的に無理なんでしょうか。

「陸の者と海の者は、言葉が通じるからこそ、伝わらないこともあるんだ」
「個人の、あたしたちの話をしているのに、父さんはいつも、陸と海の話にしてしまう。そこが違う。」

わかっているはずの言葉がわかってない。
今日、理解したことがあるんだ。
プールでの「先生のストライクゾーンは」発言が、私はうまく聞き取れなかったんだ。

せんせいのすとらいくぞーんはドタカメ

ドタカメ?クサガメとかイシガメとかワニガメの仲間かな…
凪の世界オリジナルなウミガメかもしれないな…
デバガメとは関係ないよな…
先生、ちょっと内向的な柔和さだもんな。
亀を愛でてるんだな。
いいんじゃないかなストイックで。
こまめに掃除して生き餌あげてるんかな。ウェルかめ思い出すな〜ザザーン。

そんなホノボノとした納得を越えた今日、発覚した。

ドタカメ=ド高め

フランスで女性の旬の年齢はかなり高いというが、先生フランス式なんか。

***************

ここでまた理解してなかったことが発覚したんだ。
{netabare} 某レビュアーさんと凪の話題で

某「あの建設途中の橋ゲタは、なんの伏線かな?」

私「ん?アレは、シオシシオの神社に続く鳥居じゃないの?」

某「…見返したけど、どーみても高架道路の柱だよ。」

がーん。
見えてるはずなのに見えていない。理解できてない。
そんな要素がここにも…!?
左右非対称なんて、変わったデザインの鳥居だな〜っなんて思ってたよ!!( ゚д゚)
道路や橋の柱にしちゃ書き方細っこいよーな。
最近近所に出来てる北陸新幹線の柱なんか、へらべったくてぶっといぞ。
{/netabare}

しかしそりゃあ、伏線ぽいですねェ。
ウロコ様が気がかりにしているような、何か物事の限度が近づいてるようなこと、ここに通じるのか?

8話
「彼シャツ」って要君、どこで覚えてくるんだい。

みゆなん家、アパートだけどやっぱり内装に味があるね。
何か昭和っていうか…
「おーへやは きたむき くーもりのガラス」って感じの生活感。
海から上がったら陸世界がハイテクでどこもかしこもコピペしたようなコンクリルームだったら、さぞかし味気なくてホームシックになってしまうでしょうね。

今回は街へ行ったので、色んな意匠がてんこ盛りで風景見るのがさらに楽しかった。あの看板などの丸っこい字体、デザイナーが凪用にこしらえたのかな?
シオシシオ、潮鹿生って書くんだ。スガシカオみたいだね


9話
子供たち、海も陸もいい子達…。
そして要も紡も、女の子に絶妙な声かけをするんですね…何故にそんなに大人っぽいのだ。

割烹着のまなか可愛い。

降り積もるぬくみゆきが海の町を白く変えている。
人の姿もなく。
海の生活が危機なのかと思ったら、陸にはもう戻れない危険が…?

10話
壮大な話になってきたー。しかし子供達の不安や抗いの気持ちも細やかに丁寧に語られて。面白くなってきたー!
エンディングの唄が感慨深く響いた。

紡のおじいさん達観している。人間にとっては災いかもしれない海の異変でも、どこかにそれによって得をしたり助けられたりする生き物のしくみもあるのかもしれない。バランスですね。

陸と海のケンカで、女のとりあいの話になった時、海から陸へは行けても、陸から海へはエナがないから行けないから一方的に減るばかりだと感じた。海の新聞記事にも「止まらない人口減少」とあった。それが今回は、エナがあるおかげで生命維持レベルで助かる道がでてきたという。やっかいなネックと思ったものが反転する妙。


12話
眠る前に、伝えたい想い。
みんなかわいいなぁ、今日もちさきはいろっぽいなぁ。
しかし
「私わかっちゃったの、まなかのことが好きなひーくんが好きなんだ、って。」
ちさきさん、不倫してる女みたいなセリフですよ…。奥さんのいるあなたが好きなの的な。
ズブン、こんな年頃時分に恋愛沙汰になった記憶ないんで、いまいち、どうなりたいのかがわからないわ…要くん。
眠ってしまうその前に確かめたい?一歩踏み込みたい?でも人と人の関係は〆切に焦って何ができるんだろう。
旗をうまくかっこよく振ってみたくてがんばる、今はそれくらいのことが大事だよね。

14話
五年間。五年間のもたらした変化と、変化しないものと。
ちさきがエロいのはもっと前からの定説ですよ、サヤマートの若。
そうだったの…一人戻れなくなってたの。水面下に戻れなくなる、そういうものだったの?
みんな成長し大人に近づき、おじいちゃんは歳をとり(>_<)…
先生が変わらずホッとする。

そしてやはり背景の美しさったら。

15話
変わってない?変わった?って話だけど、ヒカリは一話の頃からしたらずいぶんイイ感じになってるけどねェ。
みうな(notみゆなと他の方のレビューで知った^_^;)の旗ふり、グッときちゃったよ。旗をふる、って不思議な懸命な行為だね。すごいきれいな旗、補修したんだね。こういうとこ細かい。
紡の、人との間合いの妙な親密さは何でしょうね。人の秘密に触れがちな。要よりも、誰とでも恋愛関係に発展しうるかのようなスペック持ちだぜ…。

16話
みうな弟のあきら、カワイイ。お喋りは単純な単語のみなのね。あかりの夫イタルさん、結婚前は「いたらねぇー」というツッコミのはいってたイタルさん。いたるようになって。出来る夫な落ち着きぶりですね。
みうな、水の中に落ちて…息?!むむっ??
見つからない制服、あの旗入ってたあたりにないのかい?
近頃家の鍵をなくした私にもわかるわぁ、その探し物心。
ヤツも裸で起きてきた!ナチュラルに裸が似合う雰囲気で。
5年ともなると、布地が持たないのでしょうか。


18話
ちょいホラーな回。
埃かぶった眠るオヤジ前で待ち合わせ。そりゃあー怖いよ!ヒカリくん‼
オジョシ様の残骸も…´д` ;何が出てくるかわからないー。
ウロコ様はいけずですな〜。
みうながなでなでしてた、シオシシオのお家の玄関前のウミウシの焼き物の飾りがかわいかったな。シーサーみたいに飾ってあった。

19話
オープニング観てるのが歯がゆかった!
そしてちさきのコスプレ回かっ?!(≧∇≦)
レトロな看護師さんっ!小さくなった制服!パジャマ!団地妻(平素)!
つむぐんちの、夜の砂壁(魚の紋様入り)の情景とか、おじいさんの病室の窓辺の照り返しの景色とか、ハッとさせられるような描き込みがあって、今回も美しかったです。

失って得てプラマイゼロじゃウシシ、みたいなことをウロコ様が呟いていたので、まなかの代わりにみうなをとられるのか?ちさきか?とドキドキしていましたが、そういう人柱なことではないのかな…?

20話
海から上がったちさきの色っぽさにニヤニヤしてしまった自分が気持ち悪かった。

おふねひきの唄を聞かせれば…と漁協にかけ合いに行くから、
すわ、眠るまなかのまわりをふんどしの男衆に取り囲ませて唄わせるつもりか!?とハラハラ。
(そして漁協のホワイトボードに「ゆるキャラ名前案 うみうっしー ウミウシくん」…。)
で、録音ね。はーびっくりした。カセットテープね。カセット…カセットォーー?やっぱりどこか昭和でいいですなー。

本当に切実に想いやってあげられるのか?自信を持てないみうな。裏表じゃなくて、色んな思いが同居するよね…って紡が共感するたぁ思わなかった。
「俺みかん好きなのに誰もわかってくれないんだ。みかんよくね?まじで。この喉ごし。オレンジじゃダメなんだよ。みかんだろ日本人なら。あの薄皮の奥ゆかしさ…手のひらに乗る小ささ。酸味と甘みのまろやかな混ざり具合。追いかけても逃げるようなたおやかな味わい。そう、まるでアイツのような…」
などとは一切語らず、水平線を見据えてみかんジュースを飲む紡であった。


25話
紡…。ちさきが俺のことを好きなのは、間違いない。どう言えば認めるのかを、考えてる。
この色男は驚愕だ。
かなわねぇよぉ〜、要くん。

ひーくんが好き。
この物語は「好き」がどうしてこうウェットに哀しくなってしまうんでしょう。好きは温かくて嬉しいものでもあるはずですよ、若人たちよ。だのになぜ 歯を食いしばり 君はゆくのか そんなにしてまでー

エンディングへと浸るように移るところは鳥肌ですね。この見据えるような音色がとても生かされている。

26話
オラに力をわけてくれ
…的なところもありましたが、大団円。
起きて来た父ちゃんたちが、子供達同様に真っ裸…では なかった、不思議な法則。カワイイ若人の衣服しか、経年劣化しないのじゃ。コレもエナの力なのじゃ。

それにしても海神さまは、とんだコンコンチキな独りよがりですな。オジョシさまは幸せだったんだよォ〜(T ^ T)がっかりしないように記憶とるなんて、余計なお世話な乱暴でしてよ。

終わった後に、まなかとひかり二人だけの落ち着いた時間が流れている様子を見せるところがほほえましかったです。そーかそーか。そう収まったか。{/netabare}



*************
総評

変わる想いと、変わらない想いと。そして人の想いと実際の想いの差異。
眠りのブランクの時間を挟むことで、時の流れの感覚を感じさせた作りでした。
子供達がそれぞれ成長しながらも、みんなの事を考えられる性格で偉いなぁと思いました。
背景や暮らしの描写の仕方がリアルにありそうで、かつユーモラスなアイデアが添えられ、見ごたえありました。美しいものを描きたい!て熱意を感じました。最後数話はエンディングに入るところが鳥肌たつようにハラハラさせられました。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 88

74.7 2 やなぎなぎで家族なアニメランキング2位
神様になった日(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.4 (755)
2236人が棚に入れました
高校最後の夏休み、大学受験を控えた日々を送る成神 陽太の目の前に、ある日突然「全知の神」を自称する少女・ひなが現れる。「30日後にこの世界は終わる」そう告げるひなに困惑する陽太だったが、神のような予知能力を目の当たりにし、その力が本物だと確信する。超常的な力とは裏腹に天真爛漫であどけないひなは、なぜか陽太の家に居候することが決まり、2人は共同生活を送ることになる。「世界の終わり」に向けて、騒がしいひと夏が始まる。

声優・キャラクター
佐倉綾音、花江夏樹、石川由依、木村良平、桑原由気
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

神様の変容

酷評されてはいるが、一般人の感覚では十分楽しめる作品だったと思う。

聞くところによると、本作では「原点回帰」が目指されていたとか。
ゲームをしない自分は、Keyも麻枝准もよくは知らず、
アニメも「Charlotte」「Rewrite」くらいしか観ていないので
「原点」の意味するところは分からないのだが、素人の想像を逞しくすると
あるいは初心に帰って、シンプルで明快なテーマ性をもった人間ドラマを作ってみる、
そんな意図だったのかとも思う。本作には時間を生きる人間の自然な姿が描かれていて
幸福とは何かという、重要なテーマへのシンプルな答えも織り込まれている。

「麻枝准=泣かせ」といった予断を一旦クリアして
ごくありふれた、平凡なヒューマンドラマとして本作を観た場合、
一貫したテーマとして追求されているものが何であるかを考えてみた。


{netabare}ひな、陽太、伊座並さん。
この三人による恋愛コメディが展開される前半パートは
第五話の伊座並さん回で締め括られ、それに続く後半パートでは
ひなと陽太の二人に焦点が絞られるが、テーマ的な次元では前半部と連続している。

キーワードはおそらく、「変化」である。

前半部のひなは無闇矢鱈に周囲に変化をあおる存在だ。
世界の終わりが目前に迫っていることが直接の理由だが、
彼女自身、生まれて初めて普通の生活を手に入れることができた
その限られた時間を謳歌するためには立ち止まっていられないのだ。

ストーリーの軸となる恋愛では、子供時代からの固定した関係を変化させるに至らず、
実は陽太自身もそれほど強くは変化を望んでいなかったふしもある。
むしろそこから派生的に生じたエピソードに「変化」というテーマが濃厚に表れてくる。
ラーメン回などもこのギャグバージョンとして観られそうだ。
勿論、テーマが凝縮されているのは伊座並家をめぐる変化と再生の物語であって、
この第五話は後半への布石と見なすことができる。それは、この回で追求されたテーマが
後半部の陽太とひなの関係の中で再現されているからだ。
そのテーマとは、「苦しみながら変化を受け容れる」というものである。


後半、陽太は変わり果てたひなと再会する。

ひなを連れ帰るために自分たちのことを思い出させようとする彼の懸命の努力は
ひたすら空回りする。この部分のかなり誇張気味の描写が意図するものはおそらく、
まさに神レベルとも言える、ひなのドラスティックな変化を受け容れることができず、
逆に強引に元の関係を受け容れさせようとする陽太の苦悩の表出ではないだろうか。
本来の彼は高い受容性をもっている。それが時間の制限による焦りに加え、
ひなへの感情がすでに恋愛のそれに変わっていることから来る切実な想いが
この醜態を招いてしまっているように思う。


そして、陽太が強制的に退去させられる問題の場面。

ひなの記憶が戻るのはおかしいという点について自分はこう考える。

記憶が戻ったというのとは多分違うのだろう。
レビュアーさんの一人がいみじくも書いておられるように、
脳ではなく心に刻まれている感覚のようなものを想定してみたい。
記憶を失った人でも、特定の恐怖心などで以前の反応を示す場合があるように、
精神ではなく身体的な次元に残存する何かがあるはずだ。

このシーンが第九話の(反転した)再現であることに注意したい。
連れ去られようとしているひなを陽太が必死に追いかけようとした
あの時と同じく、陽太と引き離されて二度と会えなくなる不安をひなは感じていて
その時の恐怖と悲しみの感情がとっさに甦ったと考えられるのではないか。
だから、その同じ瞬間に陽太に対して抱いていた気持ちが同時に反復されて
「ようたすき。」という言葉がこぼれ落ちたのではないか。

「残ってたんだ、あの時の気持ちが。僕たちは今も想いあっているんだ。
 そんな気持ちもわからずに、そんな想いも僕は気づかずに・・・」

彼の自責の念は要するに、ひながとっくに彼を受け容れていたにもかかわらず
自分の方がそれに気づかずにいたということだ。だがそれも無理はない。
ひなにはもはや持続的な自我はなく、断片的な反応を示しているだけなのだから。
それでも、一個の人格の統合性は精神のみではなく、存在全体に関わるものである。
ひなは確かに、自分の存在のすべてを傾けて陽太を受容した。


記憶は失われても想いだけは消えずに残っていてほしい。
それはひなの最後の願いでもあった。
連れ去られる直前にひなはこう言い残していた。

「貴様と過ごしたこの夏は消えてなくなるが、今感じているこの気持ち、
 せめてそれだけは残っていてほしい。そう願うわしがおる。」

ここでさらにもう一つ、重要な要素がテーマに加えられる。
変化を受容すること。それが出来るのは、変わらないものがあるからなのだ。
そして、変わらないものを心に保つことは、さらに変わってゆくためでもある。
伊座並さん父娘にとってのお母さん、それから鈴木少年の束の間の学校生活。
それぞれがかけがえのない思い出を抱きながら変わっていこうとしている。
ひなにもまた、永遠に変わらない宝箱のような奇跡の夏の思い出がある。
作品冒頭で出会ったのは、それらの日々を回想しながら永遠の幸福感に包まれている
心象の中の現在のひななのだろうか。


人生の本質的な相貌である、「変化」の肯定。
これがヒューマンドラマとしての本作が内包するメッセージだろう。

無事帰宅したひなの変化を周囲は自然に受け容れる。
そもそも友人たちのほぼ全員が、直近に変化を経験している点がポイントだ。
陽太はさらに、ひなの変化をまるごと自分の人生に受け容れる決意によって
自分が変わるきっかけをつかむ。

だが、これは決して感動的な結末ではないように思う。
「奇跡は一瞬だから強く光り輝いて見える」とひなの父も言った。
神様ではなくなったひなには、この先の変化はもはや望めない。
陽太はその奇跡をもう一度起こすために自分の人生のすべてを賭ける決意をする。
これはある意味、ひなの父の予言が的中した事態とも言えるのではないか?
二人で夜景を眺めながら陽太がひなにかけた言葉は、ほぼ完全に
プロポーズになっていることに気づいてはっとした。そして見方によってはこれが
慄然とするような残酷なエンドであることを改めて理解したのだ。

終末の風景の中にただ二人だけがいて、荒涼とした世界と向かい合っている、
映画のこのエンディングは、二人の未来を暗示しているようにも思える。
あるいはゲーム原作者らしく、二つのルートのエンドを並置してきたのだろうか。
だとすればこれがこの作品の本当のエンドだと言っていいのかも知れない。
{/netabare}

(初投稿:20021.1.8)

投稿 : 2024/11/16
♥ : 21

御宅忍者 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

何をしたかったのだろうか

この作品はあまりにも物語が逸脱しすぎていて、何がしたかったのか皆目見当がつかなかった。突然にして分かる主人公とヒロインの恋愛関係であったり、伏線臭を漂わせていた発言などは一切回収せず、「ヒロインは何者なのか」といったところがおざなりになっていた。また、キービジュアルにも使い重要人物臭を出しておいたハッカーがシリアス回の駒役というありさま。

ギャグ、シリアスの両方ともに中途半端。

麻枝さんの脚本はもう厳しいと思います。10年前から言われているように、麻枝さんに関しては曲だけ制作していてほしい。曲だけは本当に素晴らしいです。

キャスト陣も役柄に合っていないような感じがしました。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 18
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

君には期待してない

ある夏の日。突然「30日後に世界は終わる」と告げる一人の少女が現れてのすったもんだ。
こういったへんてこなツカミは大歓迎。多少アニメを観てる層にはおなじみの『KEY×P.A.WORKS』のゴールデンコンビ。独特なクセの強さにハマるとこのコンビが翼くんと岬くんに見えてくるわりと業界でも成功しているカップリングでございます。
当然のように2020年秋期を牽引することを期待されてた作品だったといえましょう。


さっそくの結論。感想は“つまらない”であり、端的にその理由を述べると主人公がダメ。
その前提で以下長々と失礼します。


keyはわりとプロトコルがきっちりしていて前半のドタバタとおおむね3分の2終わったあたり(8話近辺)での超展開。救いなさげなネタを投じてからのやや前向きな内容で終幕。音楽は独自性ありで映像は綺麗。演出面で秀でてるなと感じるところ。
今回も手順は同様でした。悪い意味ではなく、笑点をマンネリだと眉を上げないのと一緒です。

そのため過去の自身の立ち位置が参考になります。これまでの評価は以下

 クラナド3.9
 アフター4.6
 kanon 3.9
 Air 4.2
 AB 4・0
 シャーロット3.9

面白い/普通の分水嶺を4.0に置いており多くがボーダーライン上なのです。アフターストーリーが突出してプラス。見方を変えればムラがないともいえる実績。
完走し良いほうに転ぶと前半のドタバタ劇は「あの時は平和だったよね」となり、パッケージ全体で落ち着くところに落ち着くのですが今回はそうはいきませんでした。
高い要求レベルを求めるとそもそもクールで一つはある4.3点以上の評価に届かないKey作品群。

 共通する弱みはなにか?

尺不足だと考えます。閉じてない群像スタイルの合う作風でキャラの増加は妥当。超展開を支える骨子の説明に時間を割くのも妥当。
そうするとどうしてもキャラの深掘りはできず説明不足に陥ります。ただしこれは構成上やむを得ない二律背反。超展開止めたらそれこそブーイングの嵐でしょう。工夫は見てとれ、尺を使うキャラの“心情掘り下げ”よりも、キャラの持つ“クセの強さ”でのインパクト狙いにやや軸足置いてますよね。

充分すぎる尺をとった『CLANNAD』や1クールなら登場人物を絞り気味だった『AIR』の評価が高いためより一層そう思ってるところがある私です。


 キャラの心情描写に期待してない
 1クールでそこそこまとめてくるだろう


そんな高すぎない私の期待値すら下回ったのは、ひとえに主人公陽太くんのキャラクター性に負うところが大きい。これは好みではないかと。
私が嫌いなタイプ

 {netabare}やる気のある無能{/netabare}

そのまんまでした。花江さんこういうのやらせるとほんとに上手ですよね。さらにさらに、好き嫌いはしょうがなくても作品評価に直結してしまったのには別の理由があります。

それは大黒柱の性格。好き嫌いじゃないですよ。これまではいくらメイン/サブ問わず歴代ヒロインがぶっ飛んでいても、♂は堅実に狂言回しするタイプを配置してたんだと思います。

【歴代♂】
 岡崎朋也(CV中村悠一)
 国崎往人(CV緑川光)
 相沢祐一(CV杉田智和)
 音無結弦(CV神谷浩史)
 乙坂有宇(CV内山昂輝)

下衆いの一人{netabare}(乙坂くん){/netabare}混ざってますがそんな彼すら当時それほど気にならなかったのは、みんな一歩退いてたり、やや皮肉屋だったりどこか冷めてるところが共通していて既視感があったから。
それが本作では前に出てくるタイプへと変貌を遂げて、バランス崩壊の決定打となりました。

いくら「そう来るか!」のびっくり要素がきても
終盤の泣き要素をかぶせてきても


※ネタバレ
{netabare}ひと夏の恋で廃人の人生を背負うと決意し行動するのが意味不明。{/netabare}
{netabare}ひな父のスタンスが至極真っ当できちんとそういった人も描けているのにどうしちゃったんだろう?{/netabare}


茶番劇にしか見えなかった此度のKEY×P.A.WORKSでした。
プロトコル変にいじっちゃって途端につまらなくなっちゃった例になるのかしら。
おそらく大喜利の特番なんかで座布団運びを山田たかおじゃないアイドルにやらせちゃったことで感じる「コレジャナイ」感に近しいもの。
なんだかんだいつもながらの壮大なマンネリを強く期待してたのは私だったのかもしれません。



※ネタバレ所感

■強く擁護する

腹を抱えて笑いました。牛乳飲んでる途中でなくてほんとよかった。

{netabare}第4話麻雀回。
「二色同順」「ドラ隣」「途中まで通貫」「喰い七対子」で腰を抜かす。
アガられるか?のピンチでスキップとリバース。UNOかよ!
やってることは無茶苦茶でルールを無視したゲームは成り立たないのは承知の上で、「二色同順ドラ隣ドラ隣(2300点)」でドヤられたのが心地よかった第4話でした。{/netabare}


■絆(余談)

10年前に感じた嫌悪感。覚悟無き善意の押しつけと言ったら妥当だろうか。

{netabare}奪還するために施設に乗り込むのは構わないんですけど、普通なら施設で療養を続けるべき事案です。
そんなのを超越する情が芽生えるにはひと夏の恋で説明するには強引と思うのは既述のとおり。
後日譚が描かれることはありませんしできません。単独での介護は不可能で必ず家族を巻き込む未来が見えてます。仕事の選択も限られるし仕事中誰が面倒みるの?とかそもそも高校生は養うための収入がありません。子犬を拾ってきてもおかんに「誰が世話するの?」となるわけだし、おかんに怒られるかもと拾う時に迷うものですが、そんなの描いてたら成立しない物語となってます。

リアリティはないし、ファンタジー路線ですら寓話にもならないんですよね。
キャラクターの弱みがもろに出てました。繰り返しますが“やる気のある無能”なんです。10歳満たない子供が同情心から衝動的に捨て犬を拾うことはあるかもしらんし、「毎日僕(私)が散歩に連れてく!」くらいの言い訳は用意するだろうに、それすら微塵も感じさせない高校生というのが自分には致命的でした。しかも犬ではなく人間だもの。

これは覚悟無き善意の押しつけです。
覚悟の定義にもよりますが、気合だけで思慮のない浅い行動をとることを覚悟とは言いませんよね。考えた形跡がなくヒロイックな気分に浸って酔ってるようにしか見えませんでした。{/netabare}


さらに10年前ということで刃をあなたにも突きつける。


{netabare}「絆」「私たちにできること」という機運が生じた10年前。
震災がれきの受け入れを拒否した人少なくなかったですよね。測定して数値がほぼゼロだったと言おうががれき撤去が進まず復興が進まないと言おうが、測定値が信じられないとか漠たる不安とかやらない理由をあげつらった善意の市民。
当時の東京都知事石原慎太郎が四の五の言わず「受け入れる」と決定したのに反感をもった方々もまあ同じ穴のナントカでしょう。文句言うだけの楽な商売です。某体操選手が言ったように「どうやったらできるかを考えてほしい」の数段前にいながらこういうのに限って似非ヒューマニズムをまき散らす。非を認めず他に責を求める。ついでに感謝の意を示さないと怒る。なんで被災した身ながらお前らの感動ポルノに配慮しなきゃいかんのよと思いましたね。
いまさら掘り返して怒る気もないし、日本全国動揺しまくってた時期だとの情状酌量もあるので「当時私はそう強く思ってた」というそれ以上でも以下でもないです。{/netabare}


同情が欲しいわけではなく関心寄せるなら適切な行動を取ってくれという事案。
身近なものなのに身近なものとして捉えることを拒否したアニメ作品と身近なものになった途端逃走した現実の出来事。
災難だったり不幸を目の前にして当事者意識がないのは一緒なのですよ。


プロトコルの変更(主人公♂)で生じたメッセージ(善意の押しつけ)への非共感で沈んだ一品です。



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

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2021.01.31 初稿
2021.09.28 修正

投稿 : 2024/11/16
♥ : 57

87.0 3 やなぎなぎで家族なアニメランキング3位
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完(TVアニメ動画)

2020年夏アニメ
★★★★☆ 4.0 (744)
3318人が棚に入れました
過去のトラウマと、独自のひねくれた思考回路によって「ぼっち生活」を謳歌しているように見える比企谷八幡は、ひょんなことから生活指導担当教師、平塚 静に連れられ「奉仕部」に入部する。同じ部に所属する息を呑むほどの完璧美少女・雪ノ下雪乃や、クラスの上位カーストに属するギャル・由比ヶ浜結衣とともに、クラスメイトの人間関係の問題の解決から生徒会の手伝いに至るまで、数々の案件をこなす毎日をすごしていた。季節は移ろい、春。雪乃から最後の依頼を受けた八幡と結衣。3月の卒業式を控えた中、いろはからブロムの協力を求められ…。― 本物を求めた八幡は3人の関係を変えていく。果たしてこの先、彼の高校生活はどんな結末を迎えるのか!?

声優・キャラクター
江口拓也、早見沙織、東山奈央、佐倉綾音、悠木碧、小松未可子、近藤隆、檜山修之、柚木涼香、中原麻衣、井上麻里奈、ささきのぞみ、小清水亜美、堀井茶渡
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

正三角形の三角関係

原作未読


うむ終わった。3期相当『俺ガイル・完』は全12話。1期からの続きもんで足掛け計38話で完結です。
ラノベはやたら長いタイトルが跋扈していて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』例外なく長いやつです。たいていはツカミだけのタイトルで中身は別物ですが、本作は看板に偽りなし。

2期で 「お~青春ラブコメだね~」
3期で 「う~んまちがっているね~」

となることはお約束できますのでうっかり1期2期未視聴の方はぜひ振出しに戻ってここまで楽しみながら歩いてきてくださいね。
ラブコメが大きく動き出した2期最終話を受けての3期はこれまでの群像劇っぽいところからより主人公ら個々人の関係性にフォーカスされます。もう奉仕部+αで三角関係しかやらない勢いですね。
人となりは2期までで明らかになりました。ざっと、理性と感情の化け物が揃っていて理性カテゴリに八幡と雪乃。感情カテゴリに結衣となります。理性の化け物二人の緩衝材としてガハマさんは機能しており、彼女がいなければ早晩奉仕部は崩壊していたことでしょう。では似たもの同士八幡と雪乃の決定的な違いは自意識の有無。面白いのは結衣で1期の頃から成長して自分というのを持てるようになった。自意識それあるーカテゴリでは2期終わる頃には八幡と結衣が入ることになります。
ちなみにこの組み分けは陽乃の「理性の化け物」あらため「自意識の化け物」だね、と八幡を評したことに由来します。

    理性   感情   自意識   {netabare}気持ちを言葉にすること{/netabare}
八幡   ◎    ×     ◎    {netabare}  下手{/netabare}
雪乃   ◎    ×     ×    {netabare}  下手{/netabare}
結衣   ×    ◎    △→○   {netabare}  下手{/netabare}

中庸の△や○が無いといいますか、スキルチャートを作れば歪な五角形ができそうな三人組とみてよさそうです。だからこその面白さが本作の持ち味です。
登場人物もめんどくさいですけど抽象的な会話劇は同じかそれ以上にめんどくさい。自分は物語を紐解くのに登場人物相関図を頭に描きながら楽しむクセがあるんですがこの物語ではこんな感じ。合ってるかどうかはわからんです。違ってたらごめんなさい。

もう一つ。言ってることがわけわかんない時は言ってることよりもやってることを重視してます。言動より行動ってやつ。見当違いも多いですけどね。
{netabare}※漫画喫茶!?では隣同士肩にもたれかかる距離感だったのが、後日公園のブランコでは距離を取って座ってる…みたいなそういうとこ。{/netabare}

さらにもう一つ。概念として面白かった“本物を知りたい”について。
互いを出し切っても崩れることのない関係性みたいなものでした。
自己の欲求を追求すると壊れてしまう関係。これすなわち偽りの関係。
自分を偽って維持できる関係。これもすなわち偽りの関係。
大人であればあるほど、『本物』は遥か遠く手の届かないものであることを痛感させられます。若者も直感的には気づいてる。それでも求めてやまない、やはりこの年代ならではの心情の吐露なんです。

こちらを希求して止まないのが主人公比企谷八幡でした。どうやら折り合いをつけそれっぽいものを手に入れそうなところまで来ています。
同じく希求して止まない(…のだと思う)のがおそらく雪ノ下姉の陽乃。なんとなくこじらせたまんま大学生になっちゃった感ありでこれまで同様にちょっかいを出してきます。


まーあくまで一解釈ではありますが軽くおさらいでもしてから楽しんじゃいましょうという作品。
終わってみて思ったのが八幡、雪乃、結衣の関係って各自二方向に等分のきれいな好意の矢印が出ている正三角形のかたちをした三角関係だというのに気づきました。だいたい矢印は片方だったり短かったりするものを三角関係だと思ってきた人生だったのでこういう関係もあるんだなあと思った次第です。

もしかすると『本物』の関係ってこういうことなのかもしれない。
そんな錯覚を覚える青春ラブコメの秀作です。
別の作品でめんどくさい女性は魅力的だが男性の場合はただただめんどくさいみたいなこと書いて今の今も基本的な考え方は変わりませんが、男女ともにめんどくさくても面白いと思わせてくれた作品でもありました。


なお作中頻繁に出てきた3期のキーワード{netabare}“共依存”{/netabare}は結果的に無視しとります。

{netabare}「うがった見方をすればそう受け取ることもできなくはないくらいの話だ」
「君も雪ノ下も由比ヶ浜もそんな関係性ではないよ。共依存なんて簡単な言葉で括るなよ。君の気持ちは言葉一つで済むようなものか?」

絶好のタイミングでその時に1番欲しい言葉をピンポイントで投下する平塚先生についていけばよし。{/netabare}




※軽めの余談

■平塚センセから浮気しそうになりました

いろはすを凌駕するほどあざとかったのが作り手さんだった気がします。

あざとい?:{netabare}ガハマさんに肩入れしてしまう仕様{/netabare}
CASE1:{netabare}表情の作画カロリー消費っぷりは登場キャラ屈指{/netabare}
CASE2:{netabare}モノローグの度に締めつけられましたよ{/netabare}
CASE3:{netabare}ヒッキーとのデートする時間長かったよね{/netabare}
CASE4:{netabare}CMでまで白無垢着させた上に「わたし今が一番幸せだよ」とか言わせちゃダメ{/netabare}


■めんどくさかったです(褒め言葉)

1.{netabare}1期:「どうせ何を言っても伝わらないし関わらない」と卑屈さが全開
 2期:何を言っても壊れないor何も言わなくても通じ合う関係こそ本物だと信じる
 3期:ごちゃごちゃ言ってないで“伝える”“関わる”努力をする

 こんな若者の成長をこねくり回しながら描いたシリーズといえましょう。{/netabare}

2.{netabare}いろはすの「○○です。ごめんなさい」が段々YES寄りに。周囲の人たちも充分めんどくさい。{/netabare}

3.{netabare}結局「スキ」と言ってたのは我らが平塚静先生だけだったぞ。あーめんどくさ。{/netabare}



視聴時期:2020年7月~9月 

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2020.10.01 初稿
2021.08.01 修正

投稿 : 2024/11/16
♥ : 65
ネタバレ

tag さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

比企谷君、本物は見つかったかな?+裏バージョンレビュー

1期、2期のレビューを更新するうち、3期には裏バージョン(ネタバレ本音バージョン)のレビューが必要と思い。加筆、評価替えしました。
見ていない方は絶対開かないでください。

ここから裏バージョンレビュー
{netabare}
3期通しで見ると、雪乃と八幡の間の関係は、そのセリフ通りに受け取れず、見た目と実態がかけ離れているのではないかと思える部分が多々あります。
見た目は最後にやっと恋人同士ということですが、これも、実質的には婿養子決定と取れなくもないです。以下の1-3期通して二人の関係変化ポイントと“本当の”状態を考察したものです。

1期1話の奉仕部での初対面会話が弾む(見た目は弾んでいないが)時点:
⇒友達承認(セリフは速攻却下だが)
1期、普通は男子と一緒に絶対行かない雪乃が自ら誘って八幡とモールに買い物に行くシーン
⇒友達以上の存在であることを承認(ただ買い物しただけににしか見えないが、一緒に買ったエプロンはずっと使い続ける)
1期12話で再び奉仕部で友達承認を求める八幡を拒否るがウインクで返す雪乃時点:
⇒好意(好き)の表現(再び友達承認さえ拒否ったように見えるが、雪乃のウインクは相当な勇気が必要)
2期設定ディズニーランドのスプラッシュマウンテンの降下ポイントで袖を指で摘まんだ時点:
⇒雪乃からの恋人認定(単に恐怖から摘まんだようにしか見えないが、その写真は枕元にずっとしまっている)
3期10話でプロム後片付けから帰る八幡の袖を“握って”離さなく、ウルウルした瞳で見つめる時点:
⇒雪乃からのプロポーズ(言葉では別のことを言わんとしているように見えますが、行動は真逆の意思を示している)しかし八幡は優しく立ち去る
3期11話で八幡の5分間告白を受諾時点:
⇒八幡からのプロポーズ受諾(これは言葉と行動にしているので明白)
3期12話のほぼ無双している雪乃
⇒婚約・結婚式(八幡の婿養子入り)と新婚状態(雪乃を束縛する問題は全て解け、素の彼女が出ている、言葉と行動の乖離は消失)

これらは、ハッピーエンドに向かう、ポジティブ面を中心にシナリオを追ったものです。この見た目と本音の乖離が物語を面白くしているのですが、同時に難しくしている面もあります。その難しさの源泉がこの乖離でもあり、ネガティブ面のシナリオです。それを解く鍵が雪乃と陽乃の心理状況にあります。

・雪乃はなぜ、こんなに分かりづらい(面倒くさい)のか?
多分、これが、この物語の最大プロットであり、面白さの源泉です。その割には暗く、苦しいプロットではあります。
家族との関係性に問題があることは陽乃や平塚先生の会話などに1-2期にも表れますが、雪乃の口(特に海浜公園からの帰り道)から語られるのは3期になってです。また、陽乃の口からも語られます(海浜公園の夜、八幡を待ち伏せて)。ここから雪ノ下家の家庭環境、そこから来る、雪乃の心の問題が見えてきます。

・家業は姉が継ぐとなっており、自分はほったらかしで、重要視されていない、期待されていない(と思っている)
・期待されていない人生を過ごしていたので、強い承認欲求があり、期待される姉を後ろ姿を追っていた。
・自分は父の職業に興味を持っている。でも、家族に言ったことはないか、言っても取り合ってもらえなかった(しかし、これも承認欲求から来るもので、ほんとに姉、父と同じ方向に行きたいか微妙)
・結局、子供のころからの、ある意味“ネグレクト”で、普通持っているべき最低限の、「家族からの承認、信頼と安心」をもらっていない。心のよりどころがないため、自我が、とても弱く、攻撃されないための鎧をかぶっている。
・姉のコピーを目指すことでしか「自我の鎧=アイデンティ」を保てなかった。それでも満たされることはなく、常に自分(自ら納得したアイデンティティ)を探している。承認不足から自信がなく、これまで作りえなかった。
・これが、対人恐怖や、恐怖から逃れる(自分を守る)ために心とは裏腹の言葉(論理的、攻撃的ストレートトーク)でしか話せなくなった。
・軽度の解離性同一性障害ともいえる。「言葉として出る対人恐怖からの防御をつかさどる」人格1と心の中の本音としての「強く承認、信頼、安心を求める」人格2が同時に存在している。
・本来は一つになって(最終話の雪乃)、感情と言葉が一致し、強固な承認、信頼、安心に基づいてアイデンティティ作りを始める必要がある。最終話の段階でのアイデンティティはまだ形成されていないが、二人で作ってゆく準備はできている。
・そのため、雪乃の反応が劇中で非常に分かりづらい。言葉と心情が別なので、見たまま、聞いたままで理解すると、本音を見誤ることになる。
・一方、正直でストレートな対人関係(=本物)を探し続ける八幡にとってはとてもフィットし、最初の会話で好きになっていた。しかし、だんだんと、雪乃の心の喪失を知り、恋ゆえに、それを埋めて、助けたいと思うようになった。
・初めての相手からの好意を受け取った雪乃は、人格1だけで普段は過ごすのですが、八幡との間では人格2が出て来るようになります。「それが楽しかった。生まれて初めてだった」と3期で述べます。一方、乖離現象が明確になり、これがこの物語の理解を難しくします。3期の乖離は激しく、かつ分かりづらい。
・この乖離現象が端的にでるのは3期最初のプロムの終了後、帰ろうとする八幡を雪乃が追い、袖を掴んで止めるシーンに現れます。言葉では、「だから。。(わたしたちの関係を絶って、結衣の願いをかなえて、自分は大丈夫だかから)」と言うのですが、心の反映である手は、八幡の袖を掴んで放しません。八幡に腕を触られてはっと気づくのですが、それでも放しません。八幡はこの段階ではまだ、自分を何をすれば、雪乃を救えるのか分からないのでそっと指をほぐし、振りほどきます。八幡にゆっくりほどかれた腕を抱えて呆然と立ち尽くす雪乃。もう少しで人格2だけで言葉が出そうでしたが、それでも無理でした。八幡は問題の根深さを強く再認識し、最終章へと向かいます。
・結局、人格が統合されることは八幡の告白までないのですが、人格2を八幡には出せるが故に、返って言葉と心の乖離が頻発するシーンがこの物語には多い。それが2期で関係がどん底まで下がった時に雪乃の言葉「(自分を)分かってくれていると思っていた」に集約されます。人格2が出ているのに、信頼する八幡には理解されていない、やはり自分の心の喪失は埋めてもらえない。しかし、この後も八幡に期待し続けます。このような関係修復と関係破綻を繰り返しが物語を作り出します。
・八幡にとって、雪乃との単なる関係のみが本物ではなく、雪乃の心の喪失を埋め、助け、助けられる関係になることまでが、彼の求める本物であることに、周囲の助けもあり徐々に気づき、ラストの告白へとつながるということを、観衆に伝えたかったのではないかと思います。
・本来、家族が普通に埋めているはずの心の基盤となる承認、信頼、安心を彼が埋めなきゃいけないので、彼は「全部やる」と告白する必要があった。つまり、雪乃の家族になる覚悟を見せる必要があった。
・そして合同プロム終了後の「好き」発言は、八幡の長い長い告白により、雪乃の基本的承認、信頼、安心が満たされ、人格が統合され本当の雪乃になれたことを意味します。

陽乃“も”、なぜ、こんなにめんどくさいのか? ~平塚先生の最終講義、八幡の告白内容の理由へ続く~
・既に分かるかと思いますが、アイデンティティを強固に持っているように見える陽乃もそれは母親から強制されたモノで、自分のモノではありません。そのようにした母親を憎んでいます。
・「いろんな事を諦め、大人になる」と自分に言い聞かせ、雪乃ほど解離性同一性障害にはなっていないように見えますが、症状は同じです。
・葉山との会話で葉山が「そんなに(母親)を憎んでいるの?」と問い「いえ、大好きよ」と言い返します。言葉と心が乖離していることを陽乃は認識しているのでしょうが、一致させられません。
・1-2期では、雪乃に自己・自我の形成の問題を指摘し続ける嫌な存在です。3期では共依存に基づく八幡との関係を絶ち、自己・自我を作りなさいと脅迫します。これらは全て母親との関係における陽乃自身へのメッセージです。八幡を母親と言い換えればよいだけです。妹は自分と同じになってほしくないと思いながら、結局、自分と同じなるよう強要し続けます。ですが彼女も解離性同一性障害です、言葉と本音は違うはずです。
・そんな陽乃を平塚先生は高校時代から知っていて、お互い強い信頼があるようです。海浜公園の夜、タバコを吸う誰かと深酒していますが、これは平塚先生だと推測されます。平塚先生は雪乃と同様に陽乃も救いたいと思っています。劇中でほぼ描かれませんが。平塚先生と飲んだその夜、八幡との会話ではお姉さんとして、「雪乃の考えを尊重してほしい」と言います。同時に「八幡のようなお兄ちゃんが欲しかった」ととも言います。「君は私と同じで酔えない」とも言います。平塚先生との深酒により、いつになく本音をしゃべっています。
・この三つの陽乃の言葉は、「雪乃の心の喪失を埋めようとしているのを理解してほしい。」「自分も同様に喪失している」「君なら私同様、この状況を理解できるよね」と読み替えることができます。
・この後、陽乃はいつもの調子に戻り、「共依存から逃避を辞めるため八幡との関係を絶つべき」と言う論調に戻ります。しかし、最初のプロムの終了後の八幡との会話では、「本物の関係になるため、共依存を乗り越えろ、それが人を傷つけることでも」と言うトーンに変わります。そして最後の言葉は「本物なんて、ほんとにあるのかな?(私も本物が欲しかったな)」です。やっと陽乃の言葉と心情は一致し八幡にメッセージを伝えます。辛うじて、陽乃の本音は「自分みたいな共依存の中でいろんなものを諦め、偽物になっちゃいけないよ」だと取れます。
・この直後、平塚先生による八幡を告白へと誘う最終講義がバッティングセンターであります。八幡は共依存を乗り越える言葉(「全部やる」ことで雪乃の基本的承認、信頼、安心を作る=家族になる)を紡ぐことになります。長い長い告白ですが、言葉のほとんどは、雪乃の心の喪失を埋めるため、自分の全てをささげると、何度も何度も繰り返します。ひたすら“渡す”ことだけです。普通に考えれば、恋愛や家族関係は渡し/渡される関係にも関わらず。それは満たされてからでよいと八幡は思っています。雪乃は普通の「好き」と言う言葉を求めているように見えますが、八幡はしません。何が必要なのか、100%分かっていたのだと思いますし、それには覚悟を見せる必要(何度も繰り返し、雪乃に自分の本心であると安心させる)があることも理解していました。
・劇中では、分かりにくいですが、陽乃と平塚先生の連携プレイです。二人はこの事を事前に話していたのだと思います。

言葉と心の乖離がこの物語のメインプロットであり、それが故に、観衆は、なんで、そう言っていたじゃん?と混乱する。なんとなく、だんだんに素直になってきたねと喜び、最後の八幡の告白と雪乃の幸せそうな笑顔で救わるのですが、背景を深堀すると、中々に重たいものがあることが分かり、物語の理解を深め、また別の面白みを感じることができます。
{/netabare}
”裏”終わり、表バージョンレビュー開始

随分と、時間差で見てしまいました。1期、2期が中々に心に残り、3期は少し嫌な予感というか、2期の感想でも書いたのだけど、完結編は、ただのラブコメかもと思ったと言うのもあります。

結論から言うと、3期はただのラブコメではなく、”表題通り”のエンドロールのような、でもこの物語の主題に忠実なラブストーリーでしたね。悪い意味ではなく。

「本物が欲しい」と告白した主人公。1期、2期にわたる逆説的主人公の動機と行動という伏線があるからこそ、観衆の心に響きます。別に高校生だからでもなく、どの年齢でも、その”本物とは?”と言う問いは人生において、様々な場面で引きずり続けるから。

この完結編では、一気に登場人物たちの恋愛関係に焦点が移ります。ただ二人、この”本物”というものに強く引っかかる、主人公とヒロインたちの中の一人を除いて。

既にオジサン真っ只中の私も、少しの家族のことを考えました。物語中「共依存」というキーワードが出てきます。この共依存、Wikiによると。「アルコール依存症患者とその面倒を見る近親者との、相手がいなければ生きてゆけない、自分が必要とされている事の証、アルコール中毒という病でさえ、その状況を作り出してくれた必要なこと」と言った良くない事として説明されます。例えがアルコール依存症を題材にしているのでこうなるのですが、そうでは無いポジティブな事柄だったらどうでしょう?「共依存」と「恋愛、家族、夫婦、深い友人の間の関係」との違いは実は曖昧です。実際、Wikiでも精神的な病とは述べておらず、そう言う言葉・状況があると、それだけです。自分と家族の関係も「共依存」と呼べばそうだが、そんなに悪いものかねと、自問自答した次第です。(まあ、このワードも逆説的な引っ掛けではあるんですが)

主人公とヒロインの一人は「本物」と言うことを劇中、最も純粋に捉えようとします。なので、「共依存」という言葉にも強く反応してしまう。本物であるためには共依存から脱しなければならないと。

主人公が頬を自分で引っ叩くシーンがあります。そこで彼は、自分の本物の感情を吐露します。この感情は共依存といった”ラベル”を付けて納得する事じゃないと。(このきっかけを作ったのが、劇中、他のキャラから投げかけられた共依存という言葉なのですが。逆説的だな、これがまた。)

「言葉では伝わらない、言葉にしても伝わらない」と言う言葉が劇中頻出するのですが、一方、言葉は人の意識を支配する道具でもあります。「共依存」と言う”ラベル”を貼れば、そして最もらしい傍証が揃っていれば、本当はそうでなくても「共依存」であると信じてしまいます。知識と知恵があるからこその誤解です。今回は、こうした誤解を逆に活用、「ラベルを剥がす」という行為により主人公を一皮むけさせます。彼らしくない、言葉を尽くして、自分の感情を語らせる原動力とします。

さあ、ラベルをはがした主人公は、ヒロインの一人に向き合います。

実は、その前の回のシーンに、ヒロインは、主人公に図らずも接触してしまいます。その時、言葉ではこれまで通り、「関係を終わりにしよう」と言おうとするのですが、(実際は具体的なことは言ってなくて、「だから・・・」と止めている。両義的に取れるのですが。これまた面倒くさいですが脚本と演出の妙技でもあります。)実際のところ、彼女は、行動と表情で「本心=本物」を表してしまうシーン(作画、妙に気合入ってました。まさに両義的な顔をしてました。)があり、主人公は、多分、表情や行動で本心を分かっていて、それでも、その時は優しく拒絶します(この演出も中々!)。これまた、純粋に本物を追求し、ロジカルモンスターならではの反応(共依存を断ち切ることが、彼女のためである。自分は実のところ納得していなくても)で、非常に興味深いシーンです。

さて、ラベルを剥がした主人公のターンです。今度は、主人公がそのヒロインがやったシーンを上書き(これまた憎い演出です)します。しかし、今度はちゃんと言葉にして。でも「共依存」というラベルワードではなく、彼らしい、不器用で、何故かロジカルな言葉を尽くして(都合5分に及ぶ告白シーン)。ヒロインはちゃんと、ラベルワード(共依存ではないですよ。お互い共依存と言う呪縛を解いたからこそ効果を発揮する別のラベルワードです)を言ってと頼むのですが、本質追求&ロジカルモンスターの彼は言いません、いや、言えませんでした。彼には、このラベルワードを使うことに強い抵抗があります。自分の想いはラベルワードでは語れないと。まあ、ここはヒロインが折れるのですが、ヒロインはヒロインで負けず劣らずのパワフルな言葉で返します。

表題通りのエンドロールと申しましたが、物語はその主題に忠実です。主人公の彼らしい、とても誠意を尽くした告白でした。いやはや、自分(私のことです)の時はここまで言葉を尽くしたかな?主人公に負けず劣らずめんどくさい性格と自負していたのですが、反省しきりでした。でも、この物語らしい、「本物の告白」でした。

{netabare}
まあ、告白は、ほとんどプロポーズみたいでしたが、本物追求主義者の彼からすれば、そうなるのは避けられないかなと。そしてそれに返したヒロインもプロポーズ受諾でした。まあ、本物の告白って、やっぱりこれですかね。

追伸:
比企谷君、雪ノ下さんは、ちゃんと「好き」とラベルワードを言ったのだがら、やっぱ、君も、ラベルワードが嫌いでも、ちゃんと言わんとね!
{/netabare}

世の中がコロナですさんだ感じになっている今、ハッピーエンドの物語は良いもんです。

最終話のヒロインのその一人の”破壊力”が凄まじく、もう既にOver50ですが、かなり心と自らの切ない記憶を揺さぶられました(笑い)。思わず、再視聴。少し加筆し、評点を上げた次第です。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 27
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の残余

主要キャストの整理をしておこう。
冒頭から紹介もなくドラマパートである。

多様な価値観が生まれ広がり、
私たちは数多くの選択肢の前で躊躇している。
表現できないものから順々に、
私たちは自己の内に沈殿していく。
そんな葛藤が心に響くのであろう。
人との距離は接続でも切断でも、
間違ってしまえば瀕死の重傷であるのだから。

3話視聴追記。
良質な予感が既に漂っている。
キャラ造形が見事で配置も良い。
{netabare}今始めれば間に合うかも知れない。{/netabare}
きっと誰もが経験した青春の残余なのだ。

雪ノ下の葛藤を物語の軸に、
八幡の故意に間違える青春が描かれる。
{netabare}彼はそれを偽物だと呼ぶ。
大人たちは共依存から脱却し自立した生を願う。
自分であれ、青春であれ、
ここまで冷静に俯瞰できるのだろうか?
繊細な主題が浮かび上がってくる。
間違うことにどんな意義があるのかと。{/netabare}

最終話視聴追記。
もやもやと、燻り続ける青春は、
一定の方向へと道は開けたのであろうか。
{netabare}自分を偽り、思い悩み、悔やみ、
その先で心の隙間に残る貴重なもの。{/netabare}
やはり彼の青春ラブコメは間違えている。

あまりに秀逸なタイトルだと知るのです。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 62

84.7 4 やなぎなぎで家族なアニメランキング4位
ブラック・ブレット(TVアニメ動画)

2014年春アニメ
★★★★☆ 3.8 (2572)
15389人が棚に入れました
突如、現れた異形の寄生生物「ガストレア」。赤く輝く目と圧倒的な力、そして桁外れの再生能力を持つ彼らの侵攻に、人類はなす術もなく大敗を喫する。国土の大半を失った現在、人類は彼らが唯一弱点とする金属「バラニウム」で作ったモノリスで囲われた、狭い「エリア」の中で、ガストレアの脅威に怯え、隠れながら生きることを余儀なくされていた。そんな中、生き残りをかけた人類のささやかな抵抗として組織されたのが、ガストレアへの対抗手段を持ったスペシャリスト集団「民間警備会社」――通称、民警。そのひとつ、天童民間警備会社に所属する高校生・里見蓮太郎は、相棒の少女・藍原延珠と共に、東京を壊滅に追い込まんとする、危険な企みに巻き込まれていく――。

声優・キャラクター
梶裕貴、日高里菜、堀江由衣、黒沢ともよ、小山力也、悠木碧、甲斐田裕子、豊崎愛生
ネタバレ

Appleモンキー さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ロリっぽい...BUT...

悲しい設定だよね。
{netabare}感染源として、敵でもあり、味方でもある{/netabare}っていうのは。。。
えんじゅがかわいいだけに、今後どういう展開になるか期待!ですね^^

■第2話
{netabare}
「呪われた子供たち」への扱いがヒドイですね。
長老さんいい人だ^^
{/netabare}

■第3話~第12話
{netabare}
木更さんが最後に謎の闇落ちに・・・(笑)
カゲタネがラストで登場してアツかったですね!
{/netabare}

投稿 : 2024/11/16
♥ : 81
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scandalsho さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ロリになった覚えはないんだけど・・・。

延珠ちゃんを初め、少女がたくさん出てきます。
{netabare}
彼女たちは“呪われた子供たち”と呼ばれ、市民から激しく迫害されています。
時には殺害されるほどに・・・。

ところが、彼女たちはその人間離れした身体能力を活かし、“イニシエーター”として、市民を守るために戦います。
{/netabare}
ロリになった覚えはないんだけど、彼女たちに心奪われずにはいられませんでした。
{netabare}
後半で、延珠ちゃんの友人たちの命が、一度に奪われます。
{/netabare}
ロリになった覚えはないんだけど、思わず涙が溢れ出してしまいました。


コメディとバトルがバランスよくミックスされた内容。
全13話と短目なので、一気に見れると思います。

バトル好きで、アニメで泣きたい方にはお勧めです。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 75
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101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

戦慄のロリ

あらすじ
{netabare}西暦2021年……ウイルス寄生生物「ガストレア」により人類壊滅。
人類は、ガストレア避けの「バラニウム」製の巨大金属壁「モノリス」
に囲まれた東京エリアなど、僅かな生存領域で命脈を保っていた。

敵に対抗し得るのは、ウイルスと抑制因子を体内に宿した少女「イニシエーター」と
指揮する「プロモーター」のコンビのみ。

「民間警備会社」のプロモーター少年・蓮太郎は、イニシエーターの延珠と共に、
裏で大人たちの陰謀渦巻く戦いへ、足を踏み入れていく……。{/netabare}

同名ライトノベル(未読)のアニメ化作品。


【物語 4.0点】
原作4巻分を1クールでということで、ややハイペース。
心情や状況を想像で補う場面もあり。
ただ、その中でも要点は押さえ、
ラストも{netabare}第三次関東会戦{/netabare}という区切りまで描く良好な“俺たた”エンド。


この種の人類存亡を賭けた崖っぷちで尚、
人間社会が汚いのはいつもの光景だが、
本作は少年少女&ロリの純心との対比が徹底しており、一層、醜さが際立つ。

ロリコン紳士はしばしば、ロリに現実にはない清浄な世界を夢見たりするが、
ロリを戦士として容赦なく社会の汚泥に放り込んだら、
むごたらしい惨事を招くという好例。

呆れるのは、風前の灯にありながら、尚、存在する“平和ボケ”
それが、人類を守り戦う少女たちに対し、
“呪われた子供たち”と忌避するムードに拍車をかけていること。

巨大ガストレアによる人類殺戮など、使徒による天誅とすら思えて来る。


こんな人間たち、救う価値などあるのか?
主人公少年たちの葛藤に終始、胸を掻き毟られる。


【作画 3.5点】
作画はCGも含めて標準レベルだが、グロも交え作品の持ち味は引き出す。

ウイルス感染により超進化を遂げたガストレア寄生生物との戦い。
アクション作画も超高速移動と大跳躍で挑む少女たち等を描写し、
一般人が立ち入れないバトル領域を演出。

背景美術も「モノリス」に囲まれた生存域の異様に加え、
一般人が暮らす呑気な中心部と、戦闘の爪痕が廃墟として残る外周区を描き分け、
矛盾を孕んだまま、滅亡へ転がり落ちていく終末感をアシスト。


【キャラ 4.5点】
主人公少年・里見蓮太郎。
上でふんぞり返る大人には舌鋒鋭く批判を浴びせ、
下で虐げられた“呪われた子供たち”には慈悲をかける。
弱きを助け強きを挫く、典型的なラノベヒーロー像。

作品によってはガキだな……と鼻白むこともありますが、
本作に関しては、胸クソ展開で、
主人公が怒りを代弁してくれるのが本当に大きいです。

ヒロインズは、中々ハイレベルなロリラブコメ展開で誘惑して来ますがw
このグダグダも、凄惨な現実の中で正気を保つため、
懸命に紡いできたロリだと分ると、かけがえのない日常だと思えて来ます。


【声優 4.0点】
主人公・蓮太郎役は梶 裕貴さん。理不尽な運命への抗いをぶちまける。
この種の沸騰ボイスを提供させたら一級品。


彼を取り囲むロリボイスは、ややマニアックだが百花繚乱。

一人称「妾(わらわ)」の延珠役に日高 里菜さん。
昼夜の緩急が激しい夜行性ロリのティナ役に黒沢 ともよさん。
何でも斬りたい病んだロリの小比奈役に悠木 碧さん。

など各種ロリボイス取り揃えておりますw


もう一人のメインヒロイン。「民間警備会社」社長兼、JK剣士の木更役に堀江 由衣さん。
最後の{netabare}復讐闇堕ちボイス。悪を裁くのは正義ではなく絶対悪。
哀しいシーンでしたが、今後の主人公との対決も予感させられ、ゾクゾクしました。
まったく、大戦が一段落した後くらい、穏やかに終わってくれよ~。{/netabare}


その他、蓮太郎に人類を見限るよう甘言する
蛭子影胤(ひるこかげたね)役の小山 力也さんなど、
方々から渋い毒ボイスも聞こえ、油断できません。


【音楽 4.5点】
劇伴担当は鷺巣 詩郎氏。
決してオーケストラ音源を多用して迫力を出す構成ではないが、
象徴的なBGM「Crisis Point」では運命を呪詛するような電子音と混声コーラスで、
しっかりと精神を侵食して来る。


OPは、fripsideの「black bullet」
ストリングスと混声コーラスなど挑戦的なアレンジ。

EDは、やなぎなぎさんの「トコハナ」。他、挿入歌もあり。
マントラのコーラスで始まる滑り出しが大胆。

両曲とも、主人公・蓮太郎の生き様を補強する優秀な主題歌。


【感想】
正直、放送当時は、人類が壁に囲まれるの飽きて来たし……。
といった感じで、何となく避けていた作品。

ガストレアが侵攻して来る2021年も間近に控え、
いい加減、覚悟を決めて観てみたら、
ロリが悲惨な目に遭う描写などに打ちのめされました。


原作者は本アニメ化後、体調不良による長期“冷却”期間に入ったまま音沙汰無く、
続編は絶望的と思われますが……。
もう十分戦い抜いて来た、少年少女とロリっ娘たちに、
どうか安らげる場所を与えて欲しい。そう願わずにはいられません。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 27

69.8 5 やなぎなぎで家族なアニメランキング5位
終わりのセラフ 名古屋決戦編(TVアニメ動画)

2015年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (821)
4976人が棚に入れました
新宿攻防戦にて、優一郎はミカエラと再会を果たした。しかし、ミカエラはその身を吸血鬼へと変貌させていた…。「家族」を救うため、仲間を守るため、知識と力を求める優一郎は、吸血鬼を人間に戻す方法を模索すると同時に、鬼呪装備の訓練に邁進する。一方、グレンは暮人に呼び出しを受け、衝撃の事実を告げられる。「1か月後、吸血鬼の本隊が東京に攻めてくる」。暮人は吸血鬼に対し先手を打つため、グレンに名古屋へ赴くことを命令。貴族殲滅作戦の火蓋が切って落とされる!!

声優・キャラクター
入野自由、小野賢章、中村悠一、櫻井孝宏、早見沙織、岡本信彦、石川界人、井口裕香、悠木碧、前野智昭、鈴木達央、鈴村健一、遠藤綾、細谷佳正、種﨑敦美、石川由依、小野大輔、嶋村侑、山村響、永塚拓馬、梅原裕一郎、古木のぞみ、日笠陽子、平川大輔、石原夏織、加藤英美里、星野貴紀
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

終わる頃にはシラフ

原作未読 ※基本スタンスは前半1クールめレビューにて


名古屋決戦につきましては古今東西ドラゴンズVSジャイアンツの名勝負以外認めてません。立浪の一塁ヘッスラに魂が震えたあの日。当時の指揮官両名とも鬼籍に入られましたね。そういえば大豊選手も(涙)。すでに歴史の一ページとなった伝説のあの夜。

分割2クールの後半。人間が絶えかけ吸血鬼が跋扈する世界での両者の闘いの物語2クールめです。人間VS吸血鬼の対立構図はそのままに、吸血鬼同士/人間同士、はたまた鬼や天使と入り乱れてのくんずほぐれつの様相を呈し深みが出てくるかどうかの勝負どころです。
槙原 - 斎藤 - 桑田の見事な完投リレーで興奮したい視聴前でした。ドラキチだけどここは譲る(^_^;)


雰囲気は良いです。劇伴いいなと思ったら鶴岡陽太さんをEDクレジットでお見かけしました。そして音楽のみならず終末ディストピア感がよう出てます。ある日突然ウィルスが…の事情もあり、街の建造物が朽ち果て蔦が絡んでるような背景美術。前半クールは新宿・渋谷・表参道、この後半クールでは海老名SAからの名古屋全般と、往時の面影を感じながら見慣れた景色のアナザーヴァージョンを楽しむことができました。
OPはfripSide「Two souls -toward the truth-」
EDはやなぎなぎ「オラリオン」
有名どころですね。OPは人気ユニットの量産品。いつものAメロBメロそしてサビのファルセット。使いまわしのコード進行が悪いとは言いませんが作品から浮いてる気がします。
EDはイントロ勝負の出オチ感。単体曲だとメロディーラインも綺麗なんですが …ファンには申し訳ないけど人気アーティスト使ってみました感が先行してるOPED両曲です。

いいところは良さげな雰囲気ってとこだけかなぁ。
こんな世界だからこその仲間との絆や家族愛。圧倒的な実力差を前にしての絶望感。正邪入り乱れた末の明かされる真相。どれもこれも中途半端でした。


■中途半端な絆や家族愛。絶望

{netabare}軍規守ったところでな世界だし猪突猛進イキリ主人公で活路を見出す意味はあるかもしれない。細かいところですが「敵の名前は覚える必要ないけど仲間はしっかり覚えてるぜ」カチコミ前のちょっといいシーンかのように描かれてたアレが嫌。
敵の情報を軽視して行き当たりばったりで突っ込むのは阿呆といいますか、置かれた状況が状況なんで勝てない戦の勝率を上げるために全方向に力を注いでほしいところでした。絶望要素足りなくて戦闘が茶番のように見えるのです。
イキリの悪い部分なんでしょう。家族だ絆だ言ったところで足を引っ張れば家族は死ぬし絆は絶たれることを想像できないのでしょうか?とつい思ってしまいます。{/netabare}

{netabare}ミカもねぇ。頑なに人間の血を摂取することを拒んでるわけです。人間としての矜持を守りたいからこその行動でした。それで人間好きかと思いきやゆうちゃん以外の人間にはまるで興味なし。忌み嫌ってる節さえあります。
一貫性が無いんですよ。それでも無きゃ無いなりに人間or吸血鬼の葛藤がミカにあれば良いのでしょうが感じられませんでした。勿体ない。{/netabare}


■明かされる?真相

{netabare}明かしてないままぶつ切りエンド。判断しようがない。{/netabare}



繰り返しになりますがダークな雰囲気に心地よく酔えそうな気配はあったのに!そんな作品でした。



視聴時期:2020年1月~3月 地上波再放送

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2020.03.13 初稿
2020.09.28 修正

投稿 : 2024/11/16
♥ : 30

kooodain さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

人類と吸血鬼。終わりのセラフ。そして優とミカエラ。家族の話。

1期とは打って変わって?戦闘力の安定度が増します。
そして吸血鬼との対峙も増えその能力も上がっています。
そして1期から変わらず『家族』というのを主題に置いています。
そこだけは変わりません。

2期は更に優とミカエラの関わり方、関わり合い。優と新しい家族。
そして終わりのセラフの真相…。
物語の核心にどんどんと近づいていきます。
その代りにより戦闘が多くなりますが心理描写が減るわけではありません。
物語の深度に合わせてより深く心理描写が増えます。
なので1期と比較にならないほどに面白さが増しています。

あとやぱりシノアちゃんが面白お茶目可愛いです^^
それだけで私はもう満足ですww

冗談?はさておきとりあえず1期異常に面白さが増しています。
ですので1期を見た方は是非是非最後まで!!
面白さの根本は基本的に1期と変わらないので書くことはこの程度です。

▼物語の評価
物語は更に面白くなっていきます。
そして構成や何も1期と同じく何も変わらない良さがあります。
そして真相に近づくのでより面白く引き込まれます。
▼作画の評価
作画は前よりも金がかかっているのかより良かったように感じます。
遠景時の描写もほとんど改善されているように思えました。
▼声優の評価
1期と変わらず。
▼音楽の評価
OPは現代のバトル物っぽさがありますが1期と比較するとチープになった感じです。
あっても居ないように感じます。軽すぎます。
EDは曲が非常に良いです。個人的に神曲候補ですw
作品の終末感も取り入れつつバトル物としてのEDとしての役割もしっかりとこなしています。
完璧な盤石のEDと言えるでしょう。
BGMは相変わらずです…。
更に声とBGMの相克が起こっている箇所が何点かあってBGMが邪魔になっていました。
▼キャラの評価
1期と同じくシノアちゃんが最高です。

投稿 : 2024/11/16
♥ : 7
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

壮大な世界観を、まとめてどーーんと、巴投げ(笑)

[文量→中盛り・内容→感想系]

【総括】
吸血鬼×バトルというアクションもの。少年漫画原作らしく、熱さがあった。やや漂う腐の気配をスルーできれば、充分に楽しめるかと。

《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
1期は、人間対吸血鬼、という分かりやすい対立軸を中心に、個々のキャラクターのトラウマなどに触れつつ、仲間の絆を深めていくという、(良くも悪くも)王道展開が見処だったと思います。

2期は、そこに、鬼対人間やら、鬼対吸血鬼やら、吸血鬼対吸血鬼やら、人間対人間やら……最後には神様というか、天使? も出て来て、「BASTARD!!‐暗黒の破壊神‐」的な、混沌かつ壮大なドラマになってきました。

個人的には、こうした複雑な話は嫌いではありません。が、設定をばらまくだけばらまいて、最終的には、なんらまとめることなく力業で放り投げてました。正に、巴投げを食らった(ことはないけどw)気分です。3期、やるんだよね?

1期と比べると、前衛と後衛の役割分担をするなど、バトルには工夫がみられるようになりました。ただ、いちいち「仲間の為」「家族の為」と連呼するので、なんか逆に、白々しく感じました。

一方でグレンは、どこまでも利己的で、でも仲間から慕われる、ジャイアン的なキャラで結構好きでした。ただ、しょっちゅう負けますがw 多分グレンは、自分の(肉体的、精神的、技術的)弱さを十分に自覚していて、それでも目的の達成を目指していて、だからこその「使えるものは何でも使う」スタンスなんでしょうね。「家族、家族」と連呼するユウちゃんよりは、好感がもてました(そういう意味では行動原理が「ユウちゃんのため」オンリーのミカも、まずまずでした)。

まあ、評価的には1期とさほど変わらず「面白いわけではないが、つまんなくもない」です。ここまで見ちゃったから、3期あったら一応観るけどね。
{/netabare}

投稿 : 2024/11/16
♥ : 34
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