お祭りで恋愛なアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のお祭りで恋愛な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年09月09日の時点で一番のお祭りで恋愛なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

68.9 1 お祭りで恋愛なアニメランキング1位
そらのおとしもの 時計じかけの哀女神[エンジェロイド](アニメ映画)

2011年6月25日
★★★★☆ 3.9 (523)
2697人が棚に入れました
「平和が一番」をモットーにする少年・桜井智樹は、空から落ちてきた未確認生物“イカロス”“ニンフ”“アストレア”と出会い、平穏な日常は大きく変化していった。そんな智樹の学園生活を、ひっそりと見守っていた一人の少女がいた。引っ込み思案で、恥ずかしがり屋の少女・風音日和。自分とは対照的に、元気に学園を賑わす智樹に対し、密かな憧れを持っていた彼女は、意を決して、智樹のいる“新大陸発見部”へと入部。メンバーたちと交流を深め、友情を育んでいく。そんな矢先、悲劇が日和を襲う。謎に包まれているイカロスたちの故郷“シナプス”からの脅威が襲いかかる!智樹とイカロスたちは、空美町を…そして、悲しい運命に囚われた日和を、救う事が出来るのだろうか。21世紀のアニメーションにセンセーションを巻き起こした「お祭り」「文化祭」「雪合戦」「空飛ぶパンツ」といった「そらのおとしもの」の名場面を、新ヒロイン・風音日和を加えて再構成。熱心なファンも「あのシーンに、実は日和がいた!」という、新鮮な驚きを味わうことができる。また、本作で新たにメインストーリーとして描かれるのが、日和の“新大陸発見部”入部後のエピソード。テレビでは決して明かされなかった“新大陸シナプスの謎”を軸に、大スクリーンならではの壮大なスペクタクルが完全新作映像で描かれる。
ネタバレ

ユニバーサルスタイル さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

天使が想い募らせるラブストーリー

劇場版二作目ももうすぐなので、劇場版一作目である哀女神のレビューを。


今回のお話は今までのストーリーを補完するような形で、より深く根幹に迫っていく、ファンなら見逃せない一作です。


この映画は前半が新キャラ’風音日和(かざね ひより)’の視点で物語を振り返っていく総集編(公式では『エンジェル・ビジョン方式』と呼んでいる)となっており、
今までのアニメを見たことがない人でも話を理解できるように出来ています。

既視聴者も、日和が加わったことで新しい感覚でストーリーを見直すことができたのではないかと思います。


後半からはオリジナルストーリーに入り、日和が智樹達と深く交流していきます。

日和はイカロス以上に初々しく、そはら以上に世話焼きで、そして誰よりも優しい心を持っている。天使のようなヒロインを体現していました。

日和が皆と触れ合う中で友情や恋心に目覚めていく、その移り変わりが大変眩しくて美しくて、今まで以上に新鮮な気分でした。


しかし、その日和自身によって日常が一変しその平和が脅かされてしまう。

いつもエンジェロイド達はマスターによって悲しい争いを強いられ、苦しめられます。
そしてそれを絶対に救ってくれる智樹の存在は、彼女たちだけでなくこれを見ている視聴者にも希望を与えてくれると思います。


最後、智樹と日和のやり取りがこの物語を表しているメッセージとなっています。賛否両論ありそうな終わり方ですが、自分は希望のもてる『そらのおとしもの』が嬉しかったです。


作画は、前半の文化祭の一部CGに違和感があったくらいで他は綺麗だったと思います。特にアップでの表情や戦闘シーンの挙動は素晴らしかったです。

音楽は要所要所で流れる懐メロっぽいBGMが耳に残りました。日和というキャラと見事に合致していたと思います。

主題歌で一番好きなのは『SECOND』ですが、劇中歌として日和が歌う『クレヨン』やblue dropsのエンディングテーマ『そらとまぼろし』も素敵で、どれも聴き逃せません。

一番驚いたのは序盤で流れた『超☆愛合体!!エンジェロボ!!』を歌っていたのが、ベテラン歌手の宮内タカユキさんであったこと。

盛大な無駄遣いだと思います(笑) とてもかっこよかったです。


とても悲しくて切ない物語ですが、キチンと救いが示されている所がそらおとらしくて好きです。

これはある意味新機軸のラブストーリーであると思います。そういった側面からもっと評価されてもいいと思います。


以下個人的名シーン
{netabare}
・イカロスがシナプスから飛び去って、タイトルが現れるシーン
神々しさが画面と音楽から伝わってきました

・日和が新大陸発見部の部室へ勇気を出して向かうシーン
BGMも相まって日和の勇ましさが感じられてよかったです

・日和が智樹達とハングライダーを楽しむシーン
心の底から日和が楽しんでいる様子が声色と表情から伝わってきて、感動的です

・ニンフが一人で日和を止めようとしたとき、それを智樹が制止するシーン
「ダメだニンフ、お前が傷つく」って台詞が男前というか、凄みがあります。

・イカロスが日和と運命を共にしようとしたとき、日和を優しく抱きしめるシーン
ファミレスでの会話から繋がって、「大丈夫、一人きりにはさせないから・・・」の台詞がとても優しいです。

・日和が智樹に別れの言葉をつぶやくシーン
お互い言葉を交わしたわけではないけれど、気持ちは通じ合っている二人。日和の「あなたは覚えてないかもしれないけど私がこの町を好きになったのは、あなたのおかげでした」がジーンときました。


日和、もといゼータが時計仕掛けのエンジェロイドであり、時を止めてしまう力を持っている所にこの作品のテーマが見え隠れしていると思いました。「永遠に終わらない日常」「幻の日常」、これは悪夢でしょうか理想郷でしょうか。
{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 11

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

【レビュー初投稿です】「忘れられない女の子」の物語です・・・(;_;)

この作品は、劇場版単体でもストーリーが分かる様に構成されていますが、より深くこの作品を楽しみたいと思われる方は、1期と2期を先に視聴する事をお薦めします。

2期である『そらのおとしものf』を視聴していた際、主要人物がガンガン物語を展開させる中、智樹をそっと見つめている印象に残った少女がいました。
でも何故彼女が印象に残ったか、その時点では不明でしたけど・・・^^;
彼女の名前は、風音 日和ちゃん・・・この劇場版ではヒロインとして活躍するキーパーソンだったのです。
まさか、ヒロインになるとは思いもしませんでした^^;

物語は、前半部分が総集編で後半にオリジナルストーリーが展開されるのですが、総集編部分も日和ちゃんの視点で見た智樹達の日常が描かれているのですが・・・何といってもビックリなのは、ある想いがあって日和ちゃんが新大陸発見部に入部してくるんです・・・

この時点でオリジナルから見るとサイドストーリー的立ち位置で物語が進んでいくのですが、この物語がどのように収束していくのか・・・本作品の見どころでした。

登場するヒロインは回を重ねる毎にその魅力を確実に増してきています。
特に、日和ちゃんは恥ずかしがり屋さんで、直ぐ顔を赤らめる・・・そんな彼女ですが、これまでのヒロインには居なかったタイプの女の子なので、色々と新鮮さを感じました・・・

ですが、物語の中盤、溢れ出る想いを抑えきれなくなった日和ちゃんは、大切な言葉が口からこぼれ落ちてしまいます・・・
きっと、シチュエーションもタイミングも彼女の想像とは全然違ったのだろうと思います・・・
だからこそ、日和ちゃんの本気を感じる事のできる場面でした^^

そして、とある日常を描いた独特のほのぼの?とした展開がまだ続いていくのだろう・・・と思っていたのですが、その先に待っていたのは「残酷」そのものでした。

ただ笑っている顔を見ていたい・・・活き活きとした彼の姿を見ていたい・・・ただ傍にいたい・・・
彼女の思いは決して贅沢では無かったと思います・・・
それだけに2度と戻れないと分かった時に感じた絶望感・・・半端無かったです^^;

そこで、彼女の選択は・・・私は間違っていないと思います・・・
きっと同じ立場だったら、私も同じ選択をしていたと思います。
でも、それはちゃんと自我が保てる状態なら・・・です。
(恐らく)そこまで伝えられていなかったであろう彼女の姿は、可哀想で見ていられませんでした。
「哀女神」←エンジェロイドとは流石のネーミングセンスだと思いました^^;

物語も佳境に入り、第1世代のエンジェロイドが登場するのですが、うまく戦えません・・・それも当然だと思います・・・でも、今のままじゃ町が・・・

でも、そんな時に頑張ろうとするのが、知性と感情を積んだニンフなんですよね^^;
賢い彼女は、自ら辛い役回りを引き受けようとします・・・私が心の傷を負えば良いのだからと・・・
でも、そこでニンフに向けられた智樹の一言は、彼の優しさが詰まっていました。
「ダメだ・・・ニンフ、お前が傷付く・・・」
私の涙腺を開放するのに十分な威力を持っていた一言でした(//∇//)

今まで物語の終盤での戦いはエンジェロイドが主体でしたが、今回は智樹も大活躍します。
それは、自分の身の回りで一緒に過ごした人達に向けられた気持ちが溢れていて、とても感動できる展開でした^^;

物語の最後・・・智樹の視線の先には・・・?
彼の本懐が遂げられていることを願っています^^

次は、劇場版『そらのおとしもの Final 永遠の私の鳥籠』が4月26日に公開されます。
前売り券もゲットしたので、劇場に足を運んで感動を味わってこようと思います♪

投稿 : 2024/09/07
♥ : 12

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

天使よ、救い給え

俺は、彼女の事を、忘れない。
初めて「好き」だと言ってくれた女の子の事を一生、忘れない。

◆この作品の内容は・・・
2期でわずかに登場した風音日和がこの劇場版でのメインキャラ。
前半は彼女視点での1期2期の総集編です。
後半からは日和中心のエピソードを展開、彼女は新大陸発見部に入部します。
しかしある悲劇が彼女に起こり、智樹達にシナプスからの脅威が迫ります(゚ロ゚;)エェッ!?

◆風音日和ってどんな子?・・・
幼馴染のそはら、イカロス・ニンフ・アストレアの3人のエンジェロイド。
このアニメにはそれぞれタイプの違うとっても可愛い女の子が登場しますが、この風音日和はごく普通の女の子。
主人公の智樹に対して純粋な恋を抱く清純な女の子です(´∀`)
智樹は彼女に対しても下劣な事をするのですが、日和が恥ずかしがりながらも健気に恋を抱く姿はイカロス達以上に可愛かったかもしれません♪
でも2期で伏線を張っていましたが、彼女には意外な秘密が・・・(゚Д゚≡゚Д゚)ナニナニ?

◆前半の総集編について・・・
普通に考えれば前半の総集編はいらなく、90分間を丸々メインストーリーで制作した方が面白かったと思います。
しかしわざわざ前半を総集編という形にしたのは、日和の視点での回想を描くことによって、日和の心境を視聴者に感じてもらい「日和も新大陸発見部の仲間なんだ」という強い感情移入をしてもらう為ではないでしょうか(・・*)ウーン
その他にも1期2期を見ていない人の為、また3期も制作決定された事ですし1期2期の内容を忘れかけてる人に思い出させてもらうといった狙いもあったのでは?と思います。

◆後半は・・・
相変わらずのおバカなノリは健在┐(´-`)┌ ヤレヤレ
それはそれで楽しいし、なにより日和が可愛い♪
またシリアスなシーンにもなるとその展開に見入ってしまいました。
2期で謎のままだった伏線も少し回収され、意外な事実も判明。
そしてさらに気になる謎を伏線として張っていたシーンもあったので3期が楽しみです♪

投稿 : 2024/09/07
♥ : 22

77.5 2 お祭りで恋愛なアニメランキング2位
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(アニメ映画)

1984年2月11日
★★★★★ 4.1 (398)
1731人が棚に入れました
あたるの通う友引高校は、本番を明日にひかえて文化祭の準備に大わらわ。だが……翌日になってもやはりあたるたちは文化祭の準備をしていた。実は友引高校のみんなは同じ日を延々と繰り返していたのだ。事態に気付いた担任の温泉マークと養護教諭・サクラは原因を究明しようとみんなを下校させるが、無事帰り着けたのはあたるとラムだけ。みんなは何度帰ろうとしても、友引高校に戻ってきてしまう。その間にも異変は起こり続け、ついに財閥の御曹司・面堂終太郎が自家用ハリアーを持ち出して空から現状を確認する事態に。すると、なんとそこには友引町を甲羅に乗せて中空をさまよう、巨大な亀の姿が…!! 脚本・監督を、「攻殻機動隊」の押井守が務めた。本作品の特異な世界観やストーリーは、現在の押井守の世界の原形とも言われている。

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、島津冴子、神谷明、鷲尾真知子、田中真弓、千葉繁、村山明、藤岡琢也

nyaro さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

リメイクにあたり再視聴。原作愛の感じられない改変は不快です。

追記 さて、うる星やつらリメイクということで再度話題作である本作を視聴…といっても30分くらいでポツポツと確認した程度ですけど。で、追記ですけど、やっぱり私は駄目でした。

 私は本作の評価が低く、パトレーバ―2の評価は高いです。その理由は原作の主要なキャラやテーマ性を踏襲しているかどうかです。

 パト2は、特車2課が組織の中では力を持たない、ロボットの性能だけでは真ん中にいられないという部分や、男女の機微などもともとパトレーバーにあったテーマ性がありました。ちょっとズレている部分もありましたが、原作を換骨奪胎したという印象です。

 本作についてはどうでしょう。終わらない日常=ルーミックワールド。楽しい時間は終わらないのを是とした高橋留美子。それを否定した押井守。
 秘めたラムとあたるの感情のつながりを言葉にしてしまったこと。ラムが徹底的な我儘なキャラになったこと。本作はもしもボックス…あるいは独裁スイッチと言ってもいいかもしれません。

 原作改変が悪いのではなく、原作の世界観やキャラ愛が感じられないという点で、見ていて嫌な気分になります。上手く関係者を騙して自分のやりたい事をやった…それはクリエーターの努力として否定しませんが、原作のもっているエッセンスを変えてはいけません。
 カリオストロの城を評価できないのも同じ理由です。面白いかもしれませんが、不快になります。

 自分のやりたい事をやっているのに設定やキャラの魅力や人気にライドしているのが許せないと言い換えてもいいかもしれません。

 キャラの評価を1にしたのは、ラムは好きです。でも、本作のラムはラムではない、という意味で嫌いです。



以下 前回のレビュー

 物語の前半のパートに矛盾がありました。先生が家に帰ると時間が経過していました。坊主のテントも朽ちていました。友引町内にあれば時間は経過しないはずです。友引町の外なら出られないはずです。タイムリープとしてオヤ?という展開でした。
 ここは夢ということであれば、設定上の問題はなくなります。ラムの願望は、あたるや父母、テン、修太朗、メガネと一緒にずーっと暮らしたいということでした。ビューティフルドリーマーのタイトル通りとなります。

 では「祭りは準備期間が一番楽しい」という冒頭の文化祭の部分はどういう意味でしょうか。タイムリープとしてこの文化祭の部分が元祖エンドレスエイトと言われている部分です。映画の後半から非現実的な状況を認知した主要メンバーたちは文化祭の準備ではなく、ラムにとって必要な人間しかいない世界に変わります。つまり、ドラえもんのもしもボックスだったという事です。

 映画の前半であれば、仲間と永遠に祭りの前日を楽しんでいたいというラムの無邪気な願望の話で、まさにエンドレスエイトだったのですが、ここで残酷な現実が表現されます。ラムは忍や龍之介を本当に要らないものだと思っていたということです。2人は不要なモノとして退場させられてしまします。対立はあったとしてもいつもの仲間です。内心ではみんな一緒だから楽しい。前半の文化祭の部分ではそう読み取れます。ですが、ラムは本当はそうは思っていなかったということです。女の残酷さと言えばそうですが、これは本当にラムのキャラとして正しいのか?という疑問を感じました。

 ストーリー構成からいっても後半が冗長に感じてしまいますし、設定的にも時間から夢に視点がチェンジした瞬間、急に凡庸になってしまいました。
 また、謎がある話で絶対やってはいけない、突然登場した人物が犯人であるという禁忌を犯しています。テンちゃんが豚を貰ったというのが伏線なのかもしれませんが、それはこじつけでしょう。正直これは白けました。

 前半と後半の出来の差が激しすぎて、本来、前半だけで企画した話を無理に映画用に引き延ばしたようにしか見えませんでした。
 なお、後半ではラムの切ない願望を語る水族館のシーンは良かったです。

 また、ラムと言えばトラ柄のビキニです。別にエロということではなくキャラとして、作画が奇麗なビキニのラムが映画の画面で動きまわるのをファンは楽しみにしていたと思います。これを作家性で裏切って良いかです。途中、泳ぐシーンでわざわざ普通の水着を着せています。これはうる星やつらという舞台を否定して、押井守ワールドに改変してしまったことを意味しています。キービジュアルでいつものラムを表現しておいて、これは卑怯だと思います。つまり、これはラムの夢でもあると同時に押井守の夢ということです。

 映画として前半の出来は非常によかったです。演出も斬新で当時では画期的だったのではないでしょうか。ですが、後半の出来とうる星やつらという世界観を乗っ取って、自分がやりたい事をやった部分は評価できませんでした。もちろん世間の評判は非常に高いので私の見方が間違っているのかもしれません。
 が、少なくともうる星やつらでは無いのは事実だと思いいます。アニメ史に残る作品として評価が高いですが、それは良い意味だけではなく、悪い意味もちゃんと語られるべきだと思います。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 12
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

現実と虚構の狭間に投げかけられたメッセージの意味とは

1984年公開の「うる星やつら」劇場版の第2作で、監督は押井守監督です。

押井監督フリークの友人曰く
劇場版第1作目も押井監督が担当して、興行的に成功を収めるが、
「媚び過ぎ」という不評の声も一部あり、
また押井監督自身も「失敗作だった」と評しており、
2作目の本作は「だったら自分の好きなように作る」と制作した結果、
ファンどころか原作者の高橋留美子先生からも
顰蹙を買ってしまったそうです。
しかし、皮肉なことに「うる星やつら」ファンとは関係ない映画好きを始め、
業界関係者やクリエーターからは
今なお高い評価を得ている作品となっているのです。

さらに押井監督フリークの友人曰く
同年に公開された言わずと知れた名作「風の谷のナウシカ」を
劇場で観た押井監督は「勝った」と思ったそうです。
この話は本当に眉唾ものの都市伝説レベルの話と
思って頂いても結構だと思います。
私も半信半疑ですしねw

まぁこの作品については各種考察もなされていて
今更私が言うことは何もないのですが、
敢えて言うとしたら、本作は「うる星やつら」をまったく知らない人の方が
余計なバイアスがかからない分、純粋に楽しめるような気がします。

とはいえそれだけでは寂しいのでネタバレありの各種考察を
紹介していきたいと思います。
(自身で考察する程「押井監督」についても「うる星やつら」についても知識はないので。。)


{netabare}まず本題に入る前に一応説明しておくと
虚構(夢)の世界から現実世界に帰還したその先は
本来3階建てのはずの友引高校が2階の虚構の世界!?(そして冒頭へループ!?)
というのが本作のエンディングです。
このことからも本作のテーマは「現実と虚構」ですね。
そしてその両者には大して違いもなく、
はっきりと認識できるようなものではないということだと思いますが、
はたしてこのテーマは誰に投げかけられているのかというのが
本作の最大の考察ポイントです。

まず、オタクに向けられたメッセージであるということ。
この場合、夢邪鬼は押井監督であり、夢はアニメでしょうね。
アニメから卒業して現実に戻ろうとしてもそこにあるのは夢(であるアニメ)。
「夢の中に居てもいいんじゃないの?」というある意味痛烈なメッセージです。
モラトリアムに対する皮肉とも取れますけどね。

次に、もっと狭義的に捉え「うる星やつら」ファンに向けられたメッセージであるということ。
押井監督はあたるとラムのどう見ても相思相愛の二人が付かず離れずを
ぐだぐたやっているような関係を好きではないようです。

もしそうなのであればこういった解釈もできるわけです。
くっつきそうでくっつかないあたるとラムの
まるで文化祭前夜の馬鹿騒ぎのようなラブゲームが延々と繰り返される
「うる星やつら」は虚構。そして本作も虚構。
そこでいくら現実を叫ぼうともそれは虚構。それであのエンディングです。
あたるらしからぬラムへの想いをはっきり口にするという不自然な描写も合点がいきます。
この説だと「うる星やつら」ファンというよりも
「うる星やつら」そのものに対して喧嘩を売っているとも言えますねw

さらにこんな考察もありました。
夢=文化祭前夜を80年代後半のバブルの前夜祭と捉え、
個々人が快楽を享受する夢のような消費生活を抜けだそうとしても
その現実は巨大資本が作ったシステムに組み込まれた夢(のような現実)に過ぎないという
当時の消費社会に対する警鐘であるという説。
作品の考察をするに当たって当時の時代背景を無視することはできません。
夢の様な消費生活なんて現在からではなかなか想像し難いことかもしれません。

どれもこれも本当におもしろい考察です。
最後に押井監督は後にこんな言葉を残してます。
「この世は模倣されたモノたちで満ち溢れている」
これは情報社会における作られたブームに対する苦言なのですが、
あるいは「そんな現実よりも俺が創り出すフィクションの方がリアルだろ」という
当時一監督に過ぎなかった押井監督の魂の叫びだったのかもしれませんね。{/netabare}


本作は「うる星やつら」をまったく知らない人の方が楽しめる気がしますとは言いましたが、
それでも最低限人物相関図くらいは事前に予習しておいた方がいいでしょう。

押井監督の出世作であり、超問題作であり、そして稀代の名作である本作を
是非心ゆくまで堪能して下さい。
そして1カットも観逃してはならないという程集中して観てください。
一見意味のないカットにも深い意味が隠されているかもしれませんからね。
それは疲れるから嫌だという方は視聴後に
考察サイトやあにこれのレビュアーの考察レビューを是非読んでみて下さい。

アニメ好きならこの作品は決して避けては通れない作品の1つです。
この台詞「パーフェクトブルー」のレビューでも言いましたね。
つまりこの後に続く台詞はもう決まっているわけです。
言う必要はないですね。 まぁ要は観てみてくださいってことですw

投稿 : 2024/09/07
♥ : 41
ネタバレ

disaruto さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「虚構」へのアンチテーゼ

押井守監督作品です。
ジャンルはSFです。
押井守の名を有名にした作品ですね。


学園祭の前日に泊まり込みで準備するあたるとラム達。
楽しいながらも、みんなどこか不思議な感覚に陥る。
まるで「終わらない夢」を見ているかのような…。


冒頭の数分でビックリ。
「うる星やつらってこういう話だっけ」と思ってしまいました。
このシーンで完全に作品に引き込まれました。

名作と呼ばれる作品も非常に多い{netabare}「ループもの」。{/netabare}
アニメにおけるその原型とも言われている本作も、非常に丁寧に作られています。


伏線の張り方が上手い。
「一度見ただけでは完全に理解できていなかったんだなあ」ともう一度見ると思い知ります。
{netabare}冒頭のあたるの表情だったり、時計の針だったり、胡蝶の夢に引っ掛けたり、ラムの言動だったり、マネキンを出したり、明らかに現実ではありえない映像の構図だったり、テレビ番組だったり。
冒頭のあたるの表情は「涼宮ハルヒの憂鬱」における「エンドレスエイト」みたいなもんだと私は思っています。
長門の表情が表に出ちゃったバージョン。
知らぬ間に疲れがたまって放心状態に。{/netabare}

あとビビったのが{netabare}ラストシーンの校舎の階数{/netabare}ですね。
二回見て気付きましたが、あれはゾッとします。
{netabare}劇中のセリフによると、本当は三階建て。
虚構の世界と判明した時は、四階建て。
ラストの抜け出したと思われた世界は、二階建て。
ということは、ループから抜け出したと思われた世界は「虚構」ということでは…。
あとラストにタイトルが出てきますが、つまりここからまた始まり、ループするってことでは…。{/netabare}
全体的にホラーのような演出も多く、ヒヤッとさせられるシーンもいろいろあります。
ラムちゃんのキャラ設定からは考えられない秘められた思いを考えると、ちょっと怖くなります。


本作の最大の美点は圧倒的なテーマ性の強さでしょう。
この手の作品って整合性・伏線にはこだわりますが、そこまでテーマ性にはこだわっていないじゃないですか?(私感)
でもこれは異次元にテーマ性が強い。
敵キャラが存在することで、その傾向が強くなっているように思います。
哲学っぽい言い回しも多いですがそこまで難解ではないので問題ないでしょう。

私はこの作品から「虚構の脆さ」を感じ取りました。
「ビューティフル・ドリーマー」の意味って{netabare}視聴者である私たちのことですよね?
アニメやら漫画が好きな人って感性が若いって言いますし。
この作品は「第三者視点」をやたらに強調してくる演出が多いです。
「お前ら卒業しろ」っていい大人な私に語りかけているようでしたw
でもラストシーンを見ると「卒業しなくてもいいよ」って囁いてもいますよねw
私はまだ卒業できなそうですw{/netabare}


難点はキャラの描き方が雑なところでしょうね。
キャラのイメージだけで伝わってくることは伝わってきますが、それにしても描写不足。
本作のテーマ性を合わせて考えれば、それもありっちゃありなのかな。
あと個人的にですが、若干ギャグよりなのが気に入らないw
ここまでやるんだったら、いっその事シリアス一本でやった方が良かったような気も。


総括して、「うる星やつら2」というタイトルのため視聴がためらわれますが、これは価値ある良作だと思います。
「うる星やつら」を知らなくても、いやむしろ知らないほうが楽しめるかと。
「涼宮ハルヒの消失」「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語」が好きならば見るのが吉。
考えを張り巡らせながら視聴してみてください。

どうでもいいですが、{netabare}「叛逆の物語」を見た後にこれを見たのでいろいろと比較したくなりました。
文章はとりあえず書いたのですが、まとまりが皆無になったので“惜しい”ながらも割愛しました。
“押井”だけにねw{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 33

69.2 3 お祭りで恋愛なアニメランキング3位
うる星やつら 完結篇(アニメ映画)

1988年2月6日
★★★★☆ 3.8 (70)
438人が棚に入れました
キュートな宇宙人・ラムと超女好き高校生・あたるが巻き込まれる奇想天外な現象や事件を描いた、高橋留美子の同名漫画をアニメ化。本作は、原作の最終話を元にストーリーが作られている。監督=出崎哲。撮影監督を「おじゃる丸」の大地丙太郎が務めた。ある日、黒ブタの馬車に乗った黒づくめの少年“ルパ”がラムの前に現れる。彼は曾祖父さん同志が決めたラムの許嫁だと名乗り、ラムに指輪をはめさせる。その瞬間、ラムの特殊能力はなくなり、彼女はルパにさらわれてしまう。ラムが連れていかれた先は、闇の宇宙。そこではラムとルパの結婚式の準備が進められていた。あたるはラムを救出するために闇の宇宙へ向かうが、ルパの巧みな妨害工作によってラムとケンカしてしまい、結局彼女を置いて地球に戻ってしまう。ところが、地球で起こった間抜けな事件の解決策として、ルパの持つブタが必要になり…。ラムはブタを提供する条件として、初めて出会った日と同じ鬼ごっこを要求してくるのだった!

声優・キャラクター
平野文、古川登志夫、神谷明、島津冴子、鷲尾真知子、千葉繁

◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

ラムとあたるの歴史的異次元ラブコメ完結編(仮)届け愛の電撃ショック!

1988年上映の劇場版 うる星やつら 第五作目 完結編ですが最終編ではありません

原作 高橋留美子 監督 出崎哲 脚本 金春智子 制作 マジックバス

1981年から1986年まで218回にわたりテレビ放送され、
劇場版も4作作られた「オタアニメのレジェンド」の原作版の完結編の映画化。

マジックバスは杉井ギサブローが設立した制作会社で主にグロス請けで現代でも活発に活動しています。
配給会社の東宝は「完結編」とすることで製作を了承した作品。
なぜなら、同時上映作品が「めぞん一刻 完結編」なので。

初の原作付き劇場版と言うことで、
作者特有の取っ散らかったキャラコメディになっていますが、
個人的には原作にやや難ありという感想です。

過去劇場版で何度も観たようなシーンの連続が原作コミックの最終章では、
作者の発想の貧困さを露見しているように思えます。
その劇場版も、本作未登場のクラマ姫編を金春さんが何度も脚色したものが多く、
本作もその路線ではがっかりです。
ちなみに、次作「いつだってマイダーリン」も同様。
作者が「ビューティフルドリーマー」の発想に嫉妬したのも当然かな。

この作品のアニメーションとしてのレベルは年代を考慮すると相当優秀です。
現代でもストレスなく観れる作画レベルで、
やや太めのキャラですが、体重が感じられる高度な出来です。
監督の出崎兄は無個性っぽく見せながら、各キャラに生命を与えられる、手練れ監督です。
名監督である弟の「エースをねらえシリーズ」で唯一監督を請け負った「新エースをねらえ」でも生命感が躍動しています。

個人的な評価としては、
押井守に奪われたうる星やつらを高橋留美子と金春智子が取り戻したが、
物語的には何も進展させられず、出崎哲監督の名演出に助けられた。
と言う感じです。

アニメ「うる星やつら」は多くの人がかかわった長期作品ですので、
制作側にもいろいろドラマがあったことが伝わっています。

原作でさえ最初は、お馬鹿ヒーロー「諸星あたる」の地球を狙う宇宙人撃退物語だったものが、
最初の侵略者「ラム」が戻ってきて主人公に居座ると言う破綻ぶりです。

それでもなお、「うる星やつら」はコミック界、アニメ界に燦然と輝く名作中の名作。
私も数十年に渡ってこの作品を愛し続けています。
物心つき始めの頃から知っていて、死ぬまで愛し続けるであろう作品は、
これと、「ゲゲゲの鬼太郎」だけかも知れないです。

ネガティブな意見はこのくらいにして、この作品最大の見どころは、
ランちゃんのUFOでしょうかw
初期の頃のラムのUFOはどうなったのかな?
弁天、お雪の活躍もいいです。レイさんはどうでもいいです。
宇宙戦闘の作画はなかなか凝ってまして監督と制作会社の実力がうかがい知れます。

先にも書いた通り、生命の躍動する人物画は、
ラストの輝くばかりのラムとあたるのシーンにスーパーノヴァの如く炸裂します。
素晴らしい部分もイマイチな部分も含めて、
これが「うる星やつら」の完結編(仮)。

永遠のヒロイン「ラムちゃん」完全復活の日を信じて、
今回はやや厳しい意見になりましたが評価点は平均以上です。

出崎哲氏制作のエンドロールには涙が溢れました。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 15

レッツマゲマゲ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

あれ…なんか安心してる俺がいる…

昭和を代表する人気アニメのひとつではないでしょうか。

それにしてもなんて内容のないオチのない漫画なんだと当時から思ってましたがそれでも毎回楽しみに観ていました。

楽しければいいじゃない的な、なんてバブリーな頃の作品なんでしょう。


なんでもないお祭り漫画として私の中で完結するはずのこの作品が、そうはならずに今も記憶に刻まれる名作となってしまいました。

それもこれもこの「うる星やつら 完結編」にてガッツリハートを鷲掴みにされたからなんですが。

当時初めて買ったこのマンガの単行本が最終巻である34巻だったのですが、うる☆には珍しく丸々1冊通したストーリーになっていました。この34巻をそのまま劇場版完結編にしたのがこの映画ですね。

だいたい毎回1話読み切りのドタバタだったのに…どうしたことだ!?でも最後まで読みきったあとすぐにレンタル屋に走ってアニメでも完結編を鑑賞しました。

この完結編これだけ観ても楽しめるのでしょうが、それ以前からの「しょうもないやり取り」からみていた方がより完結した感を味わえます面倒臭い話…(汗)

平行線のようで時には距離が近づいたかと思うとやっぱり特に代わり映えのない日常を過ごしていた「あたるとラム」ですが、やっぱり最後ってどうなるの?どうなったの?って気になるところでしたからね。

いや~そうなったか!ってゆうか
そうなの~!!ってゆうか

でもなんかこの作品らしい最後で…
あれ?なんか安心してる俺がいるってところに落ち着き、ひとまずこの作品に終止符を打つこととなりました。

昔のアニメですし、ここだけ観てみる?とゆう感じもあるので今更新規でオススメまではしません。

オールドファンが昭和ノスタルジーにちょっと触れたい時に手に取るアニメ作品といった感じでしょうか。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 1

月夜の猫 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

一生続く痴話喧嘩♪

タイトル道理「うる星やつら」の劇場版シリーズ完結篇。
1988年2月6日公開。

劇場版『うる星』シリーズでは唯一の原作付き作品で、
最終章「ボーイミーツガール」をほぼ忠実にアニメ映画化
している。(wiki抜粋)

ある日、ラムは黒い服を着た老人に「お前を嫁にする」と
言われる悪夢にうなされるが・・

ラムは空飛ぶ豚に乗る男・ルパに拐われてしまう。
あたるたちは救出に向かうが…。


劇場版の中で最もTV版の雰囲気に近いかな?
物語も簡潔で単純明快なラブコメになっている。
キャラデザなど微妙に雰囲気が変わっている。

あれ・・やはり恋愛モノに弱いみたいだ・・面白い♪
良い最終回ではありませんかw

「うる星やつら」放映開始10周年記念として後に劇場版
「うる星やつら いつだってマイ・ダーリン」が有るけどw


諸星あたる - 古川登志夫
ラム - 平野文
ルパ - 塩沢兼人
カルラ - 井上瑤
ラムの曾祖父 - 北村弘一

面堂終太郎 - 神谷明
三宅しのぶ - 島津冴子
テン - 杉山佳寿子
お雪 - 小原乃梨子
弁天 - 三田ゆう子
ラン - 小宮和枝
レイ - 玄田哲章
因幡 - 鈴置洋孝
藤波竜之介 - 田中真弓
竜之介の父 - 安西正弘
サクラ - 鷲尾真知子
錯乱坊 - 永井一郎

ラムの父 - 沢りつお
ラムの母 - 山田礼子
あたるの父、ウパ - 緒方賢一
あたるの母 - 佐久間 夏生
メガネ、記憶喪失装置 - 千葉繁
パーマ - 村山明
カクガリ - 野村信次
チビ - 二又一成
温泉先生 - 池水通洋
校長先生 - 西村知道
コタツネコ - 西村朋紘

投稿 : 2024/09/07
♥ : 0

71.1 4 お祭りで恋愛なアニメランキング4位
サイダーのように言葉が湧き上がる(アニメ映画)

2021年7月22日
★★★★☆ 3.7 (76)
279人が棚に入れました
17回目の夏、地方都市⸺。コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないよう、いつもヘッドホンを着用している少年・チェリー。彼は口に出せない気持ちを趣味の俳句に乗せていた。矯正中の大きな前歯を隠すため、いつもマスクをしている少女・スマイル。人気動画主の彼女は、“カワイイ"を見つけては動画を配信していた。俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、ショッピングモールで出会い、やがてSNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。ある日ふたりは、バイト先で出会った老人・フジヤマが失くしてしまった想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って⸺。物語のクライマックス、チェリーのまっすぐで爆発的なメッセージは心の奥深くまで届き、あざやかな閃光となってひと夏の想い出に記憶される。

声優・キャラクター
市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一、井上喜久子

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

沢山の大切なもの

この作品は、自分の言葉を伝える事が苦手なチェリー君と自分の出っ歯にコンプレックスをもつスマイルちゃんのひと夏の物語。

まず、アクションシーン?
ビーバーのデパートでの逃走劇は躍動感が凄く本当に飛んで跳ねてって言葉がまさにその映像に出ていましたね。
動きが面白く楽しく見えましたが、流石にリアルであんな逃走劇すると大問題ですねww

チェリー君の母が腰を痛めて、パート先の施設に休みの間に息子のチェリー君が代打でお手伝いするのですが、その施設に居るお爺さんはレコードの空箱?ケース?を持っているのですが、肝心の中身がないのです。

そのレコードは、お爺さんにとって、特別な忘れたくないけ忘れてしまいそうな物で、そのレコードを探していたのです。

それは、死別した妻の歌った曲だったのです。
これは探しちゃうよね。
だってさ、大切な人が居なくなってしまうと10年、20年、30年、と経つと、その人が存在した事は覚えてるけど、その人の仕草や声や笑顔が少しづつ記憶から失われてく……

でも、その人が残した物があるのなら?
それは、きっとその人の掛け替えないのない宝物になる。
それが今回はレコードだった。

チェリー君もスマイルちゃんも、そんな気持ちが解るから必至にネットで探して、ヒントになりそうな場所を走り回り探し回る。
そして、2人はそのレコードを見つけだす!
でも、そのレコードを聞く前に、レコードが波打っていて直そうとスマイルちゃんが、パリンッ!って割っちゃった‪(͒ ⸝⸝•̥𖥦•̥⸝⸝)‬

多分、それでも皆は多分許してくれた。
何故なら、スマイルちゃんが、大変な中、探してくれたのを知ってるから……
だから、きっとお爺さんも。

でも、そうじゃないんです。
大切な人の大切な想いを、知ってるスマイルちゃんは、それでもレコードを接着剤で何度も何度も修復しようとしますが、全然くっつかなくて……なんか凄く解る……

やっとの思いで探し出したレコードを自分が割ったとなれば、どれだけ自分を追い込むか、周りが許してくれても自分が自分を許せない……
だから、中々直らないレコードに涙して、お爺さんにも謝るしかなくて……謝っても罪悪は消えないしレコードも戻らなくても謝るしかなくて……
でも、形だけはスマイルちゃんは直します。
凄く頑張ってたんだなぁ〜と凄く感じたシーンでした。

でも、実は、いかにも灯台もと暗しって言葉が似合う場所に2枚目のレコードを発見www
私も、スマイルちゃんが割ったシーンの次の施設の場面でレコードの裏面と同じものを発見!
ある!ある!あるじゃん!ってなりましたw
だれよwレコードをあんな改造した人w
結局、お爺さんは自分が改造した事を忘れてたのねww


さて、スマイルちゃんはコンプレックスを抱えています。
誰でも多分コンプレックスって抱えてるものだと思います。
スマイルちゃんは、そのコンプレックスが嫌いで人前でマスクを付けたり、口元をかくしてご飯を食べたり、時にはダイエットと言って皆と食べなかったり。

でも、チェリー君は、そんな彼女のコンプレックスを好きだと言ってくれます。
コンプレックスって多分簡単に受け入れられないからコンプレックスなんだと思います。
多分、これはチェリー君だから彼女は最後にそれを素直に喜べたのかな?って。

好きな人が、自分の嫌いな物を好きだと言ってくれたら、それは自信に繋がるのかもしれません。
例え、見知らぬ誰かに受け入れられなくても……例え、自分では中々受け入れなくても、きっと好きな人のその一言なら、そんなコンプレックスな自分と向き合える力になる。



チェリー君は言葉の表現が苦手な男の子
そんな彼は、唄?俳句?を書くのが好きでSNSや俳句?唄?の教室みたいな場所で唄を作っています。
それは文字で自分の気持ちが伝えやすいから。
ですが、唄の先生がチェリー君に自分の創った唄を人前で詠ませるシーンがあります。

この唄の先生はこの時だけの登場ですが、結構好きになれたキャラです。
チェリー君からすれば先生は苦手な事をやらせただけに感じるでしょう。

やらされた側からすれば、放っておいてよ、ウザイなぁ、余計なお世話!と思うでしょう。
私も昔は本当にそれ思いました。
苦手な事を押し付けられて、やりたくない事やら習い事なら、やらされてきました。
当時は嫌いな事をするから苦でよくサボったり逃げたりしました。

ですけど、大人になる事に時間が過ぎ去る事に、それは克服しなければならない事でした。
チェリー君もそうです。
自分の気持ちを素直に伝えるのは難しい事です。
でも、伝えなければいけない事は山ほどあります。

チェリー君はどうして文字で伝わる唄をわざわざ声にだして言わなければいけないのかと、先生に文句を言います。
先生は「声に出して伝わる事もあるでしょう」
と言います。
誰かに、伝えて知ってもらうって大切な事で、黙っていても伝わる事なんて中々ないし、伝わっても伝えたい事の半分も伝わらずに終わることもあります。

優しさは一定値を超えると甘さに変わります。
嫌な事を無理矢理させる事はよくありません。
でも、苦手な事を遠ざけるばかりでは、その人の為にはなりません。
その人を想うなら、苦手な事にチャレンジするチャンスってのを与えてあげる事も優しさだと思います。
だから、先生はそのチャンスを作ってくれたのかな?と。

そして、先生は唄の先生です。
先生はチェリー君の唄にチェリー君の感じた気持ちが凄くピュアに表現されている事に感動したのかな?って思いました。
そう言うのは、第三者じゃなくて本人が読む事でより強く綺麗に伝わるから、人前で読ませたのかな?ってww
唄を聞いて皆さんが拍手をくれました。
それは声に出して伝えたからでしょう。

そして、チェリー君は引越しをするのですが、引越しの前日まで、スマイルちゃんに引越しの事を話してなかった…………(*꒪꒫꒪)

あぁ〜……ダメダメだよ‪(͒ ⸝⸝•̥𖥦•̥⸝⸝)‬
しかも、スマイルちゃんはいきなりの事で、それをチェリー君の母から聞くオチがつく……
確かに、言い出せないのも解るよ。

でも、相手側に立ったらさ、別れの日がわかっていれば、もっと沢山の時間を共有したりさ、思い出作りしたりさ、その別れの時間までの時間をもっと大切に使えたのにって思っちゃう。

お別れパーティしたりさ、行きたいところに一緒に沢山行ったり、自分の気持ちも伝えられたかもしれないのに……

でも、伝えられないのだ。
チェリー君は言葉で伝える事が苦手だから……
お別れ……言葉にしないと伝わらない事の1つ。


そして、引越しの日に彼のスマホにスマイルちゃんのお祭りのライブ配信が流れる。
それは、2人で一緒に花火を見ようと約束していたお祭り。

そして、スマイルちゃんは彼に沢山の気持ちを伝えようと皆に協力してもらう。
チェリー君もそのメッセージを見て車から降りて走り出す!

彼は祭り会場に行くもスマイルちゃんを見つけられない……そこで、ヤグラに登り身体全体に恥ずかしさMaxで真っ赤かで、マイクをとる!


ステージで何かをした事はありますか?
トークでも歌でもいい何かをした事はありますか?
あの瞬間って緊張と恥ずかしさで心と喉が凄く震えて今自分が凄く震えている事を痛感しませんか?
それを、言葉を伝える事が苦手なチェリー君が必至に伝える!
自分の作った唄をひたすら大きな声で伝える。

それは、周りの人には意味不に聞こえるかもしれない……興味なんて示して貰えないかもしれない……花火が始まると皆、チェリー君を無視して花火をみる。
ただ、1人以外は……

それでいい!
チェリー君の愛の告白は……
チェリー君の気持ちは……
勇気を出して伝えたい言葉は……

たった1人だけのもの。
他者になんて理解されなくても、伝えたい人に伝われば、それだけでいい!
それだけで、苦手な事にチャレンジした意味になる!
それ以上のものは必要ない。

この作品を見て感じたのは。
自分のコンプレックスに悩んだとして好きになれなくて、嫌気がしても世の中生きていれば、いつかは、そのコンプレックスを好きになってくれたり理解してくれる人が現れて、いつかは克服出来るかもしれない。

苦手な事に立ち向かうのは嫌だし怖いけど勇気を振り絞った先にあるのは幸せかもしれない。
自分の苦手を逃げる理由にしないで立ち向かう事で、チャレンジして良かった、頑張って良かったって思えるかもしれない。

そんなメッセージがあった気がします。

投稿 : 2024/09/07
♥ : 14
ネタバレ

merolin08 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

「分かりやすさ」と「作画」◎

【はじめに大まかな感想】
・全体的に分かりやすい
・作画いい
・劇中歌が素敵

 キービジュアルに一目惚れして遅ればせながら視聴しました。コミュニケーションが苦手で俳句でしか自分の思いを表現できない主人公「チェリー」と、出っ歯がコンプレックスでマスクが手放せないネットアイドル(?)「スマイル」との一夏の思い出。結論から言うと雰囲気で楽しめない人は評価が下がっちゃうかもという印象です。

 まずはストーリー。俳句という取っつきづらいテーマですが、劇中に出てくる俳句はあえて一般の人にもわかりやすいように作ってるっぽいですね。同様に、起承転結の「転」の部分は重要なポイントをガッツリ見せてくれるのでキャラの心情変化なども追いやすく、かなり見やすい構成になっています。考察たくさん系もいいですが、個人的にはこうやって見る人を意識して作られた作品には好感を持っちゃいますね。テンポもよく、ほのぼのした雰囲気がとても好みでした。
 逆に展開の目新しさという点では少し薄いかな、という印象です。個人的にアニメはエンタメ全振りで見るタイプなのでメッセージ性とかはあまり気にしないのですが、アニメ映画はそこを重要視する人も少なくないと思うので、そういう層にはあまり向かない作品かもしれないです。
 ストーリーで気になった部分を一つだけ、個人的には「ラストがちょっとなぁ…」という印象でした。 {netabare}チェリーが「君が好き」と、はっきり言ってしまったところ。ど素人ながら、俳句の良さって間接的な表現っていうのも一つあるんじゃないかと思うんですよねぇ。"I love you"=「月がきれいですね」と似た感じといいますか。「やまざくら~」の俳句で思いは伝わっているのに、そこ直接的な表現する必要あったかな(しかも公衆の面前で)。このラストシーンで俳句の趣が損なわれたというか、俳句好きのキャラ設定と整合性が取れていないように感じてしまいました。あとスマイルのコンプレックスに対する意識は本筋中の本筋だったので、もう少ししっかり描いてほしかった気はします。{/netabare} とかグチグチ言ってますが、ラストの細かい部分に目を瞑れば全体的なストーリーは綺麗にまとまっていると感じましたし満足してます。

 次にこの作品の一番の褒めどころ「作画」。冒頭でも触れましたがキービジュアルが好き、と感じた方は映像だけで見る価値ありです。キャラデザが可愛いのはもちろんのこと、建物などオブジェクトのビビットな色使いや、影の境界に主線を入れる画法など、特殊な作画が随所にちりばめられていて目が楽しいです。あと、スマイルの洋服に結構力が入ってるんじゃないかなと感じました。何種類も出てきたし、どれもユニークで可愛かった!安定感も含めて文句なしの作画だったと思います。

 あとは細かいところですが、劇中歌がとっても素敵だったので注目です。キャストは原作映画お決まりの主要キャラゲスト声優パターン。これについては永遠に賛否両論なテーマだと思いますが、個人的には全然気にならなかったですね。特に杉咲花さんやっぱ上手だなぁ、蒼井優さんと同じ匂いを感じるぞ…!主人公の市川染五郎さんについても、最早なんとなく本業じゃない感じが「アニメ映画見てる!」って感じがしてよくないですか?(笑) 映画のゲスト声優文化意外と嫌いじゃないんですよねぇ(というか見てるうちにそういう体になった笑)。

 まとめの前に小言なんですが、主人公のニックネームね。冒頭でがっつり「チェリーボーイ!」って呼ばれるけど、最後まで童貞がどうのってシーンはないんかい!下ネタ0だったしファミリー層への意識はあったんだろうけど、主人公の性格のメタファーならやんわりでも触れて欲しかったし、結局視聴者の注意を散らしただけだったような。どんな意図だったんだろう(´σ `)?
 という感じで、要所に気になるところはありつつも全体を通したら「観てよかったな」と感じられる作品でした。特に作画が気になる紳士淑女の皆さんにオススメです!

投稿 : 2024/09/07
♥ : 7
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

最高にエモくて面白いラブストーリー。ただ2つの見過ごせない点あり。

 夏ですし、今テレビ番組で一番好きなのがプレバトの俳句コーナーということでこの作品再視聴ですね。

 この作品見始めは色調がビビッドすぎるのと、動きが多すぎ、騒がしい演技と効果音で、なんじゃこりゃ?となります。

 が、キャラデザと構図と動きがいいのと、田舎のショッピングモールという、地方においてそこがすべての人が集まる場所という舞台設定が秀逸です。地方社会のコミュニティーとしての機能が言外できちんとでていました。当然文化の発信地でもあります。そういう部分を感じるのが心地よかったです。だから出会いもあったわけで。

 そして、特に2人が一緒にショッピングモールから帰る夕方の風景が、なにか胸に刺さります。同じ道を何度も2人で通る描写がイコール2人の時間の積み重ねにもなっていました。

 また、キャラ造形が比較的スムースに物語の中で説明されるので、いつのまにか面白くなってゆきます。

 色彩の変化には注目すべきでしょう。どんどん淡く彩度が落ちて行くのがとても良かったです。音も静かになって行きます。

 俳句と動画配信者の組み合わせ、人前で話すことと容姿のコンプレックスの対比、老若男女の組み合わせに、声がでかいレコードを探す老人を組み合わせることで、昔と変わらない恋心を見事に描き出していました。

 と、時をこえた2つのラブストーリーに関しては非常に良かったです。最近「耳をすませば」に深く感動しましたが、本作もそれに劣らず感動しました。それとショッピングモールとスマホ、SNSという題材だけに、より身近な物語だったのも良かったと思います。

 で、2点気になるところがありました。これはちょっと物語や作画の良さではカバーできませんでした。一つは俳句と物語の結びつきといいますか「サイダーの様に」だったかです。

 ヒロインスマイルが感動するショッピングモールの帰り道の俳句とか、キーとなる山桜の俳句などとても良かったし、エピソードとも絡んで上手かったと思います。

 ただ「サイダー」というのは俳句がどんどん湧き上がってくる様子だと思うのですがラストの主人公の{netabare} 告白はサイダーの様に…だったかですね。なんか真っ赤になって一生懸命俳句を詠む姿は、もう少し別のものだった気がします。俳句は文字だ、という主人公の主張とあいまって、 {/netabare}本当にいいラストなのは間違いありません。
 言葉を変えると、夏のイメージの重ね方が強引な気がすると言った方がいいかもしれません。

 それと大貫妙子さんの歌です。もちろんシュガーベイブ時代からみんなの歌まで皆好きなんですけど、さすがにもっと若々しい声の歌い手さんじゃないとなあ。あの初々しい少女に合ってましたか?
 ここも容姿と恋愛は関係ない、可愛らしさとは人それぞれだというメッセージが、{netabare}主人公の俳句を読み上げるという告白と重なって、ヒロインがマスクを取って笑うカタルシス {/netabare}になっているので最高でした。ですが、大貫妙子さんでは声がベテランすぎです。


 評価です。作画はいいです。最高です。キャラも同じく性格から内面、感情の動きまで丁寧に描けていました。が、音楽はまあ減点ですねえ。4までかなあ。それとストーリーの「サイダーのように」がやはり見えませんでした。これは大きすぎる部分なので4にしておきます。

 が、主観的には物語にはかなり感動しました。キャラは主人公2人含めて皆良かったです。そして、アニメーションの良さは「ああアニメ映画を見たなあ」という充実感になりました。90点!という感じでしょうか。

 それと劇中、画面に出てくる俳句は、全部拾いきれてないのであとで見返すかもしれません。発見があれば追記をします。

 なお、 ラストは{netabare}引っ越しはするので、一旦は離れ離れですよね?その後はご想像にお任せしますでいいのかな? ただ、SNSでいっぱい俳句を投稿することでしょう{/netabare}

投稿 : 2024/09/07
♥ : 10
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