Ellue さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
等身大の宇宙と未来を感じられる神作
原作未読。
宇宙を舞台にした物語と言えば、宇宙人が地球を侵略しに来て戦ったり、
国や組織が機動戦士的なロボットで戦争したりするのをよく観かけますし、
そういったものの方がエンターテイメント性は高いでしょう。
しかし、この作品はそういったものとは一線を画した、派手な舞台設定のない
どちらかと言えば地味な宇宙ゴミを拾う人たちの物語。
未来、いずれは機動戦士的なものが開発されたり、地球外生物が発見されたり、
惑星間を一瞬で移動したりする技術が出てくるのかもしれないけれど
それって私の生きているうちに出来るとは思えない遠い未来の話だとしか思えないですよね?
この作品に描かれる宇宙は近未来のものとして想像出来る範囲のリアリティあるものです。
リアリティがあっても今現在は有り得ない話。
だから、引き付けられる世界設定なんだろうと思います。
この話は近未来が舞台ですけどスペースデブリに関しては
現在すでに問題になっていたりしますし、
まだ宇宙でここまで多くの人が働いてはいませんが、
国際宇宙ステーションとして宇宙に常駐している人も出てきていたり、
作中木星往還の話もありますが、有人宇宙船で火星に行く話は今計画されてますよね。
そういった今現在の延長線上にあるものだからリアリティを感じるのかもしれません。
他にも現実と作中でリンクする台詞やシチュエーションすることは多く、
公式HPに解説があるので勉強してから入るのもいいかも?
ニュースとか聞いてるとたまに耳にする台詞もあったりしますし、
宇宙工学が詳しい人には常識かもしれませんが…私は全然無知なので…
夢を追いかけ、やや独りよがりなところがある主人公・ハチマキと
愛を唱え、人との交わりこそ大事だと主張するヒロイン・タナベが
反発しつつも惹かれあっていく様な恋愛を描いたところの他にも
人類が宇宙に出ることにより発生するかも知れないような事柄を
テーマにして物語を進行させてきます。
宇宙そのものやそれに携わる仕事、開発などの話がメインではなくて
それ自体はただの舞台設定であり、
そこに生きる人達の人間模様をメインで描いていると言うべきでしょうか。
例えば、デブリの回収もそういった舞台設定の一部であり、
それを行いながら派生する人間模様に注目して欲しいですね。
会社や社会、派閥という組織の中、同僚や友達、師弟、家族、恋人など様々な
人間関係を宇宙と言う舞台で描いているのです。
更には宇宙資源をめぐる紛争やテロ、国際格差など
もっと大きな国際的な問題も描かれており、それは今現在も抱える問題なので
考えさせられるものとなっています。
人間模様がメインであるのでキャラクターも個性溢れ、
その交わりも面白かったり、感動したり、時には腹立たしかったりと、
生き生きと描かれているように思えました。
音楽もOP,EDとも作品に非常に合っていて好きです。
作中内のものも主張しすぎず、テーマに合っていて物語を引き立てています。
若本さんがさすがに印象深いですが、声優さん達も渋く、
ベテランらしい素晴らしい演技で魅せてくれます。
個人的にはプロポーズのところや
ノノのエピソードとユーリのエピソードは感動しました。
他にも月から見ると国境は見えないとかエピソードと言うよりは
一つの台詞に感銘を受けることが多くありますね。
作画やテーマを見るとアニメっぽくなくそういったところで
敬遠されてしまうところも正直あるかと思いますが、
非常に深く、丁寧に作られた作品であることがひしひしと伝わってきます。
私達の誰もが知らない世界のはずなのに共感でき、
リアルであると錯覚させることまで出来る素晴らしい名作です。