どらむろ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「皆殺しの富野」監督の鬱ロボットアニメ。不朽の名作です!
富野由悠季(当時は喜幸)監督が機動戦士ガンダムの少し前に制作したロボットアニメ。
鬱。とくかく鬱過ぎるッ!!!!
凄まじいまでの虐殺と鬱展開の嵐。「人間爆弾」の悲劇が痛ましい…。
ストーリーは重厚で、主人公達が迫害されたり、大勢の仲間を失っても尚戦い続ける。
鬱アニメが苦手な人には絶対にオススメ出来ないけれど、ロボットアニメ好きならば必修科目と言える不朽の名作。
私的に、泣けるアニメ五指に入ります。
{netabare}『物語』
基本フォーマットは70年代マジンガーZ以来のスーパーロボットアニメ。
だが主人公達・神(じん)ファミリーはヒーローではなく、守るべき地球人に迫害される立場だったり、敵ボスの目的が侵略では無く「人類抹殺」そのもので、凄まじい犠牲者と惨劇が繰り広げられる等、とにかく、鬱展開。
ここまで悲惨だと心が折れそうになるが、主人公の神勝平は一人でなく、神(じん)ファミリーが家族ぐるみで立ち向かう為か、主人公が全てを背負わねばならないワケでは無い事が、まだ救いだったように思う。
その意味で「神ファミリー」で戦っていた意味は大きい。
前半繰り返される地球人からの非難や迫害は辛いけれど、家族・仲間と一緒なら乗り越えられる!
悪のガイゾックを倒す事は正しい事だろうし、勝平にとってはザンボットで敵を蹴散らすのが楽しいという無邪気な側面も、必ずしも悪い事じゃない。
本作が鬱展開ではあっても過剰に胸糞悪くならず、スーパーロボットバトルの爽快感もあったのは「神ファミリー」のお陰なのではなかろうか。
※人々を守る為に戦っているのに迫害される作品で2014年度に「ブラックブレッド」があるが、悪意や矛盾をほぼ一人で背負い込まねばならず苦しんだのと比較すると、勝平に神ファミリーという強固な組織と仲間が居てくれた有難味を実感する。
勝平達を非難し続けて来た人々とも、きちんと理解と信頼を結んでいく展開も、ザンボットがこれ程の鬱アニメであっても、根底の部分では共感と感動出来る理由。
また勝平にとって、地球人の中に守りたい人が居てくれたのもポイントか。
ブスペアのアキとミチ(アキは人間爆弾にされてしまったが)
香月組の悪友達とも一時は敵対するも和解出来た事も、最終回に希望を持たせてくれる大事な要素であろう。
どんなに悲惨な事や誤解があっても、人と人との絆はそれを乗り越えられる。
鬱展開の中でも、そんな希望の芽を感じさせてくれた。
本作の代名詞「人間爆弾」
そのあまりの非人道的な悪意に、ただただ戦慄するのみ。
視聴中、一言の言葉も、呼吸すら止まる思いだった。
アニメで、ここまでやるのかと…。
アキとの死別は、胸が締め付けられる程悲しかった。
再開した少女と悲劇の死別する展開ではラーゼフォンのブルーフレンドと双壁を為す悲劇だった。
終盤は大切な家族や仲間達が次々と散っていく。
ベタだとは思えない。
最終話で宇宙太と恵子が死んでいくシーンは、涙が溢れて止まらなかった。
これ程の悪逆非道なガイゾックが、実は地球人こそが害悪で滅ぼすべき存在と判定したコンピューターであった、衝撃の事実。
散々、人類の醜い側面を描かれてきた為、無視出来ない説得力がある。
敵ボスから「お前は何の為に戦っているのだ? あそこ(地球を指差して)に居る者達は誰もお前達に感謝していないではないか」(な感じのセリフ)を言われ、答える事が出来ないシーンが重かった。
余談だがジャンプ漫画「ダイの大冒険」で敵ボスの大魔王バーンが主人公ダイに言ったセリフを思い出す(ダイ大の方が後発だが)。
ダイの出した答えは模範的にして哀しいモノであったが(脱線なので詳細は原作をば)
勝平は問いに応える事が出来なかった。
しかし、ラストを観れば、全ての答えが雄弁に語られていた。
大切な家族や仲間を大勢失ってまで、戦い抜いてきた事が、決して無駄では無かったと…。
ここで流れるエンディングテーマが全てを物語っていて、涙が止まらなかった。
凄惨な鬱展開ばかりではない、人を信じて愛する絆、未来への希望。
地球という星も、捨てたもんじゃあない。
そう思わせてくれた。
『作画』
日本武者風味なザンボット3はカッコ良い上に、バトルも中々の迫力。
作画自体は決して綺麗とは言えないかもだが、人間爆弾にされた人々の列など、理屈抜きに心に迫る迫力があった。
勝平の父の最期にお遊びの映像入れてるのは残念だが、まあ些細な事だろう(意識して観ないと気付かないし)。
『声優』
主人公・神勝平を演じるのは、ドラえもんで有名な、大山のぶ代さん。
ドラえもんのイメージが強いが、勝平の子供らしい無邪気さと残酷な運命背負って戦う辛さを遺憾なく演じておられた。
特に人間爆弾にされたアキを救う事が出来なかった無力感と悲しみで絶叫するシーンは、圧巻!
大山さんの名演がこの不朽の名作を支えていると思う。
大山さん御自身は「もうこんな残酷な役はやりたくない(といった内容)」と仰っているが、お気持ちは分かるものの、ファンとしては複雑な思いです。
スーパーロボット大戦でも勝平を演じて欲しかった…。
その他も好演揃い、勝平の父の源五郎役の岡部政明さんも、最期鬼気迫る迫力だった。
『音楽』
OPは普通のスーパーロボットソングだが、ED「宇宙の星よ永遠に」が圧倒的名曲!
ラスト、2番が流れるのは、反則的に涙が止まらぬ感動。
「輝けぼくらの星よ、永遠に輝け」
全編通して残酷で辛い戦いの末勝ちとった、明日への希望。
そんなテーマを完璧に語りかける名エンディングだった。
戦闘シーンのBGMも、中々の迫力。
『キャラ』
神ファミリーという一族ぐるみで魅力的なキャラクターが揃っている。
ヒロイン・神北恵子ちゃんかわいい。
子供たちだけでなく、親世代、祖父母の世代まで、一丸となって戦うのが良かった。
父親がカッコ良かったり、古き良き家族の絆が大事なテーマとなっている。
また彼らを迫害してきた地球人も、次第に理解と絆を深めていき、決して悪い人達では無かった。
残酷な中でも性善説を信じたくなる、良いキャラ多かったように思う。
あと、敵ボスのキラー・ザ・ブッチャーはコミカルさと凄惨極まる残虐性を合わせ持つ名敵役。{/netabare}